女子会

 

 安田も風呂だと思い、リノたちが戻ってくるのを待つことにした。安田は、ぶつぶつと独り言を言い始めた。「今頃は、男根に手を合わせているころだな。まったく、女子というやつは、気楽なもんだ。でも、あの男根のおかげで、リノは、俺をゲットできたのかもな。今では、俺は、セックスの拷問にあっている。男根の神を冒涜したたたりかもしれん。これからは、俺も、女子運がよくなるように、手を合わせるとしよう」

 

 鳥羽はじっと安田のたわごとに聞き入っていたが、時刻はとっくに9時を回っていた。やはり、重要な密会は、真夜中に行われるのは間違いないように思えた。「思ったより、バカ騒ぎが長引いたんですね。もうそろそろ、戻ってきてませんかね。もう一度、電話してはどうです?」うなずいた安田は、桔梗の内線番号をプッシュした。呼び出し音が3度なると受話器からリノの声が飛び出した。「はい、こちら離れの桔梗ですが」

 

 安田は、リノの声を聴いてほっとした。「おい、俺だ。リノ、お願いがあるんだ。マリリンがさみしがっているみたいなんだ。さっきから、リノがいないもんだから、さみしそうな声で、ニャ~ニャ~鳴いてるんだ。それで、今から、マリリンをそっちに連れて行っていいか?ネコ嫌いな女子はいるか?」リノが即座に返事した。「ちょっと待ってね、みんなに聞いてみるから」リノは、みんなにマリリンがやってくることを伝えたが、だれも反対しなかった。

 

 「みんな、歓迎してるみたい。マリリン、連れてきていいわよ。そいじゃね」安田は、ニコッと笑顔を作った。「うまくいきそうだ。ネコ嫌いはいないそうだ。今から、作戦開始だ」安田は、鳥羽の胡坐で寝ていたマリリンを受け取り、部屋を出ていった。しばらくして戻った安田は、ちらっと見た部屋の様子を話し始めた。「マリリン、歓迎されたぞ。みんな、かわいいといって、なでなでしてた。みんな、浴衣姿で、色っぽかったな~~。でもな、校長、すっぴんで、別人かと思ったぞ。やっぱ、女は、化け物だぞ。鳥羽、気をつけろ」

 

 

 

 鳥羽は、密会の内容が気にかかっていた。うまく録音できることを祈っていた。「あとは、録音がうまくいくことを願うだけですね。マリリンがリノさんの脚もとで寝てくれることを祈りましょう。ワクワクしますね、先輩。早く、明日にならないですかね」確かに、安田も録音内容に関心はあったが、どんな内容であれ、自分たちには関係ないことだと予想していた。「まあ、そう、焦るな。聞いてからのお楽しみだ。校長の話だ。所詮、悪だくみに決まっている」

 

 

 

               密談

 

 校長は、11時を確認するとリビングで騒いでいるみんなを和室に呼び寄せた。「みんな、こっちに来て」みんなは、ついに重要な密談が始まると思い、神妙な顔で和室に向かった。リノは、リビングのソファーでぐっすり寝ているマリリンを起こしてはいけないと思い、スリッパの音をさせないように忍び足で行った。全員部屋に入ると校長は、ふすまをパシッと閉じた。和室のテーブルの周りに正座したみんなは、校長の顔をじっと見つめた。校長は、目を輝かせ、話し始めた。

 

 「今日、みんなに集まってもらったのは、ぜひ、協力してほしいことがあったからなの。なるべく、みんながわかりやすいようには、話すけど、何か質問があれば、遠慮なく言ってちょうだい。みんなも知っていると思うけど、日本の中心は、東京から福岡に移ったの。ということは、福岡で重要な会議が頻繁に行われるということ。そこで、彼らの情報をいち早く入手できれば、マフィアに先手が打てる。

 

 そこで、私が、できる限り会議をさしはら温泉で行うように根回しする。でも、議員たちもマフィアも用心するはず。そこで、リノが、議員らしき団体のにおいがすれば、すぐに、団体名と参加者名をゆう子に報告してほしい。ゆう子は、小島に即座に報告する。私が、これはくさいと判断したら、小島は、予約された部屋にボイスレコーダーを取り付けに行く。宿泊が終われば、それを小島が回収する」

 

 校長は、早口で一気に話した。「ここまではいい。何か、質問は?」リノが手を挙げ、質問した。「議員とはっきり明記されると、議員の会議だとわかるのですが、宿泊客の氏名だけだと議員かどうかの判別がつきません。そういう場合は、どうすればいいんですか?」校長は、よい質問だと思いマジな顔つきで返事した。「議員、マフィア、企業役員連中は、一般客を装って極秘にやってくるはず。議員かどうかわからない場合、怪しいと思ったお客の指名をゆう子に知らせてちょうだい。ゆう子は、小島に知らせる。あとは、私がチェックして、小島に指示します」

 

 校長は、話を続けた。「この仕事は、危険が伴うわ。だから、7人が、うまく業務分担して、危険を避ける必要があるの。だから、みんなの力が必要なの」横山が、手を挙げて、質問した。「一か月後には、私は、アメリカに帰ります。お役に立てませんが」校長は、横山にも大切な役割があることを話し始めた。「横山にも大切な役割があります。横山には、アメリカのトップ大学の研究状況を調べてほしい。その情報を北原に送ってほしい。北原は、小島に送ってちょうだい」

 

 横山が、言語について触れた。「英語で情報を流すんですか?それとも翻訳しますか?」校長は、即座に返事した。「可能な限り、翻訳してください。こちらでは、わからない専門用語があると思うから」横山は、うなずいた。校長は、ちょっと間をおいて話を続けた。「できれば、国防相とCIAに関する情報があれば流してください。それと、麻薬関係も。今後、麻薬の密輸が増加すると予測されているから」

 

 さらに、校長は北原の業務について話し始めた。「北原は、中継以外に日本の大学の研究について調べてほしい。今後、日本の大学もアメリカの大学と共同して化学兵器の研究をやるはず。くれぐれも、警戒は怠らないように」ほかに、何か質問は?」校長は、峰岸に目線を向けた。「峰岸は、警察内部の情報を流してほしい。手に入れた情報をタイムリーに小島に流して。北原が手を挙げた。「校長は、これらの情報をどうなされるのですか?誰かに売られるのですか?」核心を突いた質問をされて校長は、真剣なまなざしで答えた。

 

 「もはや、日本は、アメリカの後を追うように麻薬国家に突き進んでいます。また、人身売買の拠点になることも予想されます。麻薬はマフィアだけでなく、CIAの収入源でもあるのです。このまま日本が無防備であるなら、日本も麻薬で崩壊するでしょう。だから、我々が戦わねばならないのです。みんなが集めた情報は、ある方に流します。でも、その方の正体を明かすことはできません。私を信じて。この情報は、決して悪用はしない。命がけで手に入れた情報は、必ず日本の防衛に使います。みんな、信じて」

 

春日信彦
作家:春日信彦
女子会
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