女子会

 ゆう子は、マシュマロのような真っ白いお尻をプルンプルンと振るわせながらみんなを置いて湯船にかけていった。湯船には、すでに多くの女性が男性運がよくなるようにと祈願していた。楕円形の湯船の中心にある光り輝く紫色の亀頭を持つ朱色の巨大男根が、ハーレムを作るように迷える女性に囲まれていた。彼女たちは、男性運がよくなるようにとひたすら手を合わせて祈願していた。亀頭の下の部分には、ご神示が金色の文字で彫り込まれていた。「この男根の神に祈願せよ、必ず願いが叶う」

 

 ゆう子を先頭にみんなもドボンドボンと股間をおっぴろげて無作法に湯船につかると早速、手を合わせて祈願した。リノは、ハル君が浮気しませんように。ゆう子は、ファンが増えますように。横山は、避妊に失敗しませんように。北原は、イケメンと付き合えますように。峰岸は、三島が振り向きますように。小島は、金持ちの彼氏ができますように。校長は、やす君のインポが治りますように。それぞれ、わがままなお願いをした。

 

 そのころ安田は、鳥羽の胡坐の上で寝込んでしまったマリリンにチュ~チュ~のにおいをかがせ、必死に起こしていた。マリリンは、いったん寝付くとなかなか起きなかった。気持ちよさそうな寝顔を見つめ鳥羽が話し始めた。「なかなか起きませんね。このままそっと運びますか?とにかく、リノさんの近くで寝てくれれば、録音はできますから」安田も起きそうにないマリリンを見て、このまま運ぶことにした。

 

 「マリリンがさみしがっているといって、抱っこして運ぶことにしよう。いつもリノと一緒に寝ているから、うまくいくと思うんだが、もうそろそろ、騒ぎも収まったころだろう。ちょっと電話してみるか」安田は、内線電話で桔梗(ききょう)の部屋番号をプッシュした。しばらく、呼び出したが誰も出なかった。「出ませんね。風呂じゃないですか?今頃、みんな、裸になってるんですね。ゆう子姫も」

 

 

 安田も風呂だと思い、リノたちが戻ってくるのを待つことにした。安田は、ぶつぶつと独り言を言い始めた。「今頃は、男根に手を合わせているころだな。まったく、女子というやつは、気楽なもんだ。でも、あの男根のおかげで、リノは、俺をゲットできたのかもな。今では、俺は、セックスの拷問にあっている。男根の神を冒涜したたたりかもしれん。これからは、俺も、女子運がよくなるように、手を合わせるとしよう」

 

 鳥羽はじっと安田のたわごとに聞き入っていたが、時刻はとっくに9時を回っていた。やはり、重要な密会は、真夜中に行われるのは間違いないように思えた。「思ったより、バカ騒ぎが長引いたんですね。もうそろそろ、戻ってきてませんかね。もう一度、電話してはどうです?」うなずいた安田は、桔梗の内線番号をプッシュした。呼び出し音が3度なると受話器からリノの声が飛び出した。「はい、こちら離れの桔梗ですが」

 

 安田は、リノの声を聴いてほっとした。「おい、俺だ。リノ、お願いがあるんだ。マリリンがさみしがっているみたいなんだ。さっきから、リノがいないもんだから、さみしそうな声で、ニャ~ニャ~鳴いてるんだ。それで、今から、マリリンをそっちに連れて行っていいか?ネコ嫌いな女子はいるか?」リノが即座に返事した。「ちょっと待ってね、みんなに聞いてみるから」リノは、みんなにマリリンがやってくることを伝えたが、だれも反対しなかった。

 

 「みんな、歓迎してるみたい。マリリン、連れてきていいわよ。そいじゃね」安田は、ニコッと笑顔を作った。「うまくいきそうだ。ネコ嫌いはいないそうだ。今から、作戦開始だ」安田は、鳥羽の胡坐で寝ていたマリリンを受け取り、部屋を出ていった。しばらくして戻った安田は、ちらっと見た部屋の様子を話し始めた。「マリリン、歓迎されたぞ。みんな、かわいいといって、なでなでしてた。みんな、浴衣姿で、色っぽかったな~~。でもな、校長、すっぴんで、別人かと思ったぞ。やっぱ、女は、化け物だぞ。鳥羽、気をつけろ」

 

 

 

 鳥羽は、密会の内容が気にかかっていた。うまく録音できることを祈っていた。「あとは、録音がうまくいくことを願うだけですね。マリリンがリノさんの脚もとで寝てくれることを祈りましょう。ワクワクしますね、先輩。早く、明日にならないですかね」確かに、安田も録音内容に関心はあったが、どんな内容であれ、自分たちには関係ないことだと予想していた。「まあ、そう、焦るな。聞いてからのお楽しみだ。校長の話だ。所詮、悪だくみに決まっている」

 

 

 

               密談

 

 校長は、11時を確認するとリビングで騒いでいるみんなを和室に呼び寄せた。「みんな、こっちに来て」みんなは、ついに重要な密談が始まると思い、神妙な顔で和室に向かった。リノは、リビングのソファーでぐっすり寝ているマリリンを起こしてはいけないと思い、スリッパの音をさせないように忍び足で行った。全員部屋に入ると校長は、ふすまをパシッと閉じた。和室のテーブルの周りに正座したみんなは、校長の顔をじっと見つめた。校長は、目を輝かせ、話し始めた。

 

 「今日、みんなに集まってもらったのは、ぜひ、協力してほしいことがあったからなの。なるべく、みんながわかりやすいようには、話すけど、何か質問があれば、遠慮なく言ってちょうだい。みんなも知っていると思うけど、日本の中心は、東京から福岡に移ったの。ということは、福岡で重要な会議が頻繁に行われるということ。そこで、彼らの情報をいち早く入手できれば、マフィアに先手が打てる。

 

 そこで、私が、できる限り会議をさしはら温泉で行うように根回しする。でも、議員たちもマフィアも用心するはず。そこで、リノが、議員らしき団体のにおいがすれば、すぐに、団体名と参加者名をゆう子に報告してほしい。ゆう子は、小島に即座に報告する。私が、これはくさいと判断したら、小島は、予約された部屋にボイスレコーダーを取り付けに行く。宿泊が終われば、それを小島が回収する」

 

 校長は、早口で一気に話した。「ここまではいい。何か、質問は?」リノが手を挙げ、質問した。「議員とはっきり明記されると、議員の会議だとわかるのですが、宿泊客の氏名だけだと議員かどうかの判別がつきません。そういう場合は、どうすればいいんですか?」校長は、よい質問だと思いマジな顔つきで返事した。「議員、マフィア、企業役員連中は、一般客を装って極秘にやってくるはず。議員かどうかわからない場合、怪しいと思ったお客の指名をゆう子に知らせてちょうだい。ゆう子は、小島に知らせる。あとは、私がチェックして、小島に指示します」

 

春日信彦
作家:春日信彦
女子会
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