女子会

 鳥羽は、密会の内容が気にかかっていた。うまく録音できることを祈っていた。「あとは、録音がうまくいくことを願うだけですね。マリリンがリノさんの脚もとで寝てくれることを祈りましょう。ワクワクしますね、先輩。早く、明日にならないですかね」確かに、安田も録音内容に関心はあったが、どんな内容であれ、自分たちには関係ないことだと予想していた。「まあ、そう、焦るな。聞いてからのお楽しみだ。校長の話だ。所詮、悪だくみに決まっている」

 

 

 

               密談

 

 校長は、11時を確認するとリビングで騒いでいるみんなを和室に呼び寄せた。「みんな、こっちに来て」みんなは、ついに重要な密談が始まると思い、神妙な顔で和室に向かった。リノは、リビングのソファーでぐっすり寝ているマリリンを起こしてはいけないと思い、スリッパの音をさせないように忍び足で行った。全員部屋に入ると校長は、ふすまをパシッと閉じた。和室のテーブルの周りに正座したみんなは、校長の顔をじっと見つめた。校長は、目を輝かせ、話し始めた。

 

 「今日、みんなに集まってもらったのは、ぜひ、協力してほしいことがあったからなの。なるべく、みんながわかりやすいようには、話すけど、何か質問があれば、遠慮なく言ってちょうだい。みんなも知っていると思うけど、日本の中心は、東京から福岡に移ったの。ということは、福岡で重要な会議が頻繁に行われるということ。そこで、彼らの情報をいち早く入手できれば、マフィアに先手が打てる。

 

 そこで、私が、できる限り会議をさしはら温泉で行うように根回しする。でも、議員たちもマフィアも用心するはず。そこで、リノが、議員らしき団体のにおいがすれば、すぐに、団体名と参加者名をゆう子に報告してほしい。ゆう子は、小島に即座に報告する。私が、これはくさいと判断したら、小島は、予約された部屋にボイスレコーダーを取り付けに行く。宿泊が終われば、それを小島が回収する」

 

 校長は、早口で一気に話した。「ここまではいい。何か、質問は?」リノが手を挙げ、質問した。「議員とはっきり明記されると、議員の会議だとわかるのですが、宿泊客の氏名だけだと議員かどうかの判別がつきません。そういう場合は、どうすればいいんですか?」校長は、よい質問だと思いマジな顔つきで返事した。「議員、マフィア、企業役員連中は、一般客を装って極秘にやってくるはず。議員かどうかわからない場合、怪しいと思ったお客の指名をゆう子に知らせてちょうだい。ゆう子は、小島に知らせる。あとは、私がチェックして、小島に指示します」

 

 校長は、話を続けた。「この仕事は、危険が伴うわ。だから、7人が、うまく業務分担して、危険を避ける必要があるの。だから、みんなの力が必要なの」横山が、手を挙げて、質問した。「一か月後には、私は、アメリカに帰ります。お役に立てませんが」校長は、横山にも大切な役割があることを話し始めた。「横山にも大切な役割があります。横山には、アメリカのトップ大学の研究状況を調べてほしい。その情報を北原に送ってほしい。北原は、小島に送ってちょうだい」

 

 横山が、言語について触れた。「英語で情報を流すんですか?それとも翻訳しますか?」校長は、即座に返事した。「可能な限り、翻訳してください。こちらでは、わからない専門用語があると思うから」横山は、うなずいた。校長は、ちょっと間をおいて話を続けた。「できれば、国防相とCIAに関する情報があれば流してください。それと、麻薬関係も。今後、麻薬の密輸が増加すると予測されているから」

 

 さらに、校長は北原の業務について話し始めた。「北原は、中継以外に日本の大学の研究について調べてほしい。今後、日本の大学もアメリカの大学と共同して化学兵器の研究をやるはず。くれぐれも、警戒は怠らないように」ほかに、何か質問は?」校長は、峰岸に目線を向けた。「峰岸は、警察内部の情報を流してほしい。手に入れた情報をタイムリーに小島に流して。北原が手を挙げた。「校長は、これらの情報をどうなされるのですか?誰かに売られるのですか?」核心を突いた質問をされて校長は、真剣なまなざしで答えた。

 

 「もはや、日本は、アメリカの後を追うように麻薬国家に突き進んでいます。また、人身売買の拠点になることも予想されます。麻薬はマフィアだけでなく、CIAの収入源でもあるのです。このまま日本が無防備であるなら、日本も麻薬で崩壊するでしょう。だから、我々が戦わねばならないのです。みんなが集めた情報は、ある方に流します。でも、その方の正体を明かすことはできません。私を信じて。この情報は、決して悪用はしない。命がけで手に入れた情報は、必ず日本の防衛に使います。みんな、信じて」

 

 北原は、うなずいたが、ゆう子が手を挙げた。「校長のためなら、やってみます。でも、リノは、仕事に追われ、峰岸は、駆け出しの婦人警官です。横山、北原は、学生です。活動する時間も限られています。それでもいいのですか?」校長は、うなずいた。「みんなのできる限りの力を貸してもらえればいいの。当然、危険を伴うわけだから、それなりの報酬は、約束します。むしろ、みんなは何も知らないほうが、安全なの。ほかに、質問は?」

 

 質問がないことを確認した校長は、締めに入った。「今回の話は、決して他言しないこと。すべての連絡は、今、言ったルートを使うこと。直接私に連絡してこないこと。小島が情報を集約し、私が小島に指示を出します。そうすれば、私たちの存在は、表面化しません。日本のために、一致団結して頑張りましょう」話を締めくくった校長は、ふすまを開いて話をオープンにした。リビングのソファーでは、花提灯を膨らませたマリリンが笑顔でぐっすり寝ていた。

 

 

春日信彦
作家:春日信彦
女子会
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