チッチとミーコ

チッチとミーコ( 3 / 29 )

チッチとミーコ

日が暮れてしばらくすると
アイツが黒い箱からゆっくり
ゆっくり降りてくる。そして
オレを見つけると、決まって
『チッチ』と舌打ちしやがる。

舌打ちをした後アイツは決まって
『ミーコ』と言っている。どうやら
オレに付けた名前のようだ。
だけど、オレはオレであって
ミーコではない。絶対違う!

しかし何でオレがミーコなんだ。
ミーコ顔でもしてるんだろうか。
そんなヘンテコな名前はやめてくれ。
付けるならもっと気の利いた
英語の名前を付けてくれよ。

とはいえこのままでは悔しいな。
そうだ、オレもアイツに変な
名前を付けてやろうじゃないか。
何にしようかな。やっぱり
チッチと言うからチッチがいい。

あ、チッチが帰ってきた。
いかん!見つかってしまった。
『ミーコ、ミーコ』と近づいてくる。
「馬鹿チッチ、糞チッチ。どっか行け。
ミーコなんて二度と呼ぶな!」

オレは声に出して言った。
間違いなくチッチは馬鹿だ。
オレの言うことがわかってない。
あっそこまで来た。わっ満面の笑みだ。
「失せろチッチ。気持ち悪い!!」

チッチとミーコ( 4 / 29 )

ああ、寒い

街がどこかに流れて行く
街がどこかに流れて行く
お前の夢の場所はここじゃない
お前の行き着く先はここじゃない
そうつぶやきながら
街がどこかに流れて行く

街がこんなにちんけだから
街がこんなにちんけだから
癒やしてくれる猫さえも
いなくなったじゃないか
おかげで人も減ったじゃないか
街がこんなにちんけだから

華やかな彩りのネオンは
見た目だけのイルミネーションに変わり
温かさのなくなった街を映し出す
夢も見られなくなった街を映し出す。
青と白だけの無機質な
寂しい街を映し出す

街はきっと凍えているんだ
街はきっと凍えているんだ
あの時の夢はいつか終わったんだ
だから今は現実の生活に思いを馳せるんだ
気がつかないうちに気温が少し下がったんだ
だから街が凍えているんだ

チッチとミーコ( 5 / 29 )

お猫のブルース

猫にとって人間というのは
迷惑極まりない存在なのである。
だから空腹時以外の飼い猫は
人間に近寄っていかないし
いついかなる時も野良猫は
人間には近寄っていかない。

いったん人間に捕まると面倒だ。
のどをなでるし、鼻を押すし
肉球を触るし、腹をさするし
尻尾をつかむし、フラッシュたくし、
すぐに抱き抱えようとするし
好き勝手な名前で呼ぶし・・

猫が必要としているのは
誰にも邪魔されずに
ゆっくり寝られる時間だ。
猫が必要としているのは
誰にも干渉されずに
のんびり出来る空間だ。

だからオモチャ扱いにして
時間や空間を邪魔してくる
人間の子供を嫌うのだ。
だからいつもジッとしていて
時間や空間に干渉してこない
年寄りのそばが好きなのだ。

猫にとって人間というのは
実に鬱陶しい存在なのである。
だから空腹時以外の飼い猫は
人間に近寄っていかないし
いついかなる時も野良猫は
人間には近寄っていかない。

チッチとミーコ( 6 / 29 )

コーヒーのカンカン

駐車場の白い線の上に
コーヒーの缶が置いてある。
誰が置いたのかは知らないが
ご丁寧に真っ直ぐに立ててある。
思うに、缶を投げ捨てないあなたは
缶を投げ捨てない程のいい人なんだ。
そんなにいい人なんだから
そこを歩く猫がつまずかないためにも
もう一歩だけいい人になって
ゴミ捨てに捨ててきて下さいな。
樹田真太
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