チッチとミーコ( 1 / 29 )
猫にふられる理由
猫は本能で生きている動物だから
自分の行動に理屈をつけることをしない。
行動に理屈をつけることをしないから
のんびりと人生を考えることもない。
人生を考えることがないということは
裏返せばそんな暇はないということになる。
つまり猫はその時その時の行動に
人生のすべてを賭けているわけで
だから今日はこのくらいにしておこう
などと言って手抜きをすることもなければ
やろうかな、どうしようかな
などという優柔不断な行動をとることもない。
猫はすべてに真剣勝負なわけだから
「猫は本能で生きている動物だから
自分の行動に理屈をつけることをしない…」
などと勝手に猫の人生を考えているような
暇な人間を相手にする暇を
持ち合わせてはいない。
チッチとミーコ( 3 / 29 )
チッチとミーコ
日が暮れてしばらくすると
アイツが黒い箱からゆっくり
ゆっくり降りてくる。そして
オレを見つけると、決まって
『チッチ』と舌打ちしやがる。
舌打ちをした後アイツは決まって
『ミーコ』と言っている。どうやら
オレに付けた名前のようだ。
だけど、オレはオレであって
ミーコではない。絶対違う!
しかし何でオレがミーコなんだ。
ミーコ顔でもしてるんだろうか。
そんなヘンテコな名前はやめてくれ。
付けるならもっと気の利いた
英語の名前を付けてくれよ。
とはいえこのままでは悔しいな。
そうだ、オレもアイツに変な
名前を付けてやろうじゃないか。
何にしようかな。やっぱり
チッチと言うからチッチがいい。
あ、チッチが帰ってきた。
いかん!見つかってしまった。
『ミーコ、ミーコ』と近づいてくる。
「馬鹿チッチ、糞チッチ。どっか行け。
ミーコなんて二度と呼ぶな!」
オレは声に出して言った。
間違いなくチッチは馬鹿だ。
オレの言うことがわかってない。
あっそこまで来た。わっ満面の笑みだ。
「失せろチッチ。気持ち悪い!!」