大人のピアノ

大人のピアノ きゅうじゅういち 偽造調書

「今回篠崎さんを拉致した藤井組というのは、千葉の暴力団なんですが神奈川県警でもずっとマークしてる組織なんですよ」

 脇田はたった今婦人警官が持ってきてくれたインスタントコーヒーを朝子にも勧めながら、自分も砂糖を入れてカップをかき回した。

「そうなんですか」

「ええ。拳銃の密売を全国的にやってましてね。こういう言い方が適当だか分からないのですが、日本の密輸拳銃の総元締め、総輸入代理店みたいな存在なんです」

「元締め…ですか」

「ええ。ご存知でしたか」

「いえ、まさか」

「あっはっは。そうですよね。冗談ですよ、一般の方がそんなことを知ってるわけないんですが、まあ警察関係者の間では知らぬものはない事実なんですよ。篠崎さんが監禁されてた海神の藤井の城に日本じゅうの密輸拳銃がいったんプールされてます」

「そんな場所だったんですか…」

「ええ。ハンドガン、つまり携行できる小型拳銃だけでなく、マシンガンやらバズーカ砲まであるそうですから自衛隊の弾薬庫が市街地のど真ん中にあるようなものですね」

 そんな場所に自分は監禁されていたのか…。朝子は一睡もできないなか武志がそっと手を握って肩を抱いてくれたあの寒々とだだっ広い和室を思い出した。

「そういう話はもちろん雑談などでは出なかったですよね」

「はい…。もちろんです」

「すると、食事なども一応きちんと出たわけですか」

「はい。こう言ってはなんですが、意外だったんですけどすごく丁寧に扱ってくれたと思います」

「ほう」




 脇田は適当に笑いを交えながら三十分ほど事情聴取を行った。捜査一課フロアの角にある応接室の広いテーブルの隅の方では、寺村が顔を上げずに脇田と朝子のやり取りを書き取っていた。

 事情聴取の初めの方で脇田がちらっと言っていた武器の総元締めとしての藤井組。朝子と武志の救出を目的とした調書作成のはずだったが、脇田の話は手を替え品を替えその周辺を行ったり来たりしているように思えた。

「そうすると、拳銃の話などはまったく耳にしなかったということですか…」

「はい…。あの…」

「どうしました?」

「この事情聴取は、武志さんを救い出してくれるためのものなんですよね」

 どうも途中から顔も上げずに自分のペースでただひたすら調書を書いている寺村のことが気になって、朝子は思い切って寺村にも聞こえる声で脇田に聞いてみた。

「もちろんですとも」

 脇田は朝子安心させるあのスポーツマンらしい邪気のない笑い顔を返してよこした。

「でも、さっきから違う話が多くなってきたような気が…」





 朝子がそういうと、寺村が初めて顔を上げた。

「調書の下書きができましたので、お嬢さんに目を通していただいて、よろしければ捺印していただきたいのですが」

 結局寺村は一度も質問することなく、横で聞いていたにせよ、まるで自分の世界にこもって作文をしていたことになる。そういうものなんだろうか、という疑問が湧いたが朝子は一礼をして寺村から薄手のB5縦書きの紙に書かれた寺村筆跡の調書の下書きを受け取った。

「…なんですか、これは」

「何ですか、ってお嬢さんの供述を元にした調書ですよ」

「でも…」

 朝子は混乱してすがるような目を脇田刑事に向けた。

 脇田は調書を見ようともしなかった。そこ書かれている内容については見るまでもなく知っているという顔だった。

 二人が喋ったことを寺村が書き写したのであればその通りなのだが、寺村から受け取った文書には「私、篠崎朝子は…………」から始まっていたにもかかわらず、まったく喋っていないことが書かれていたのだった。




「あの…あたし脇田さんとこんなことお話ししてませんよね」

 あさこはそう言って、脇田に寺村の持ってきた朝子が書いたことになっている調書を見せようとした。

「筆跡ですか?いいんですよ。『私、篠崎朝子は…』から始まってると思いますが、そういう代筆は認められてます。ですので左手の人差し指で捺印していただければ結構なんです」

 脇田は軽く受け答えた。

「そうじゃなくて、この私が書いたという調書内容です。これを読むと私が藤井組長と若頭の三浦という人と一緒に狭い人がやっと一人通れるような廊下を抜けて、巨大な音楽ホールのような射撃場、その奥の何万丁もピストルが隠してある秘密弾薬庫に案内されて、自慢げに藤井組長の話を聞いて、藤組長は自分でもそこにあった銃を試射して私にも無理やり撃たせようとした…そんなことがたくさん書いてあるんですよ」

 朝子は言い知れぬ不安を感じて一気に調書内容をぶちまけた。寺村は不気味な顔をして笑っている。目の奥に隠れていた狡猾で人の裏を見透かして楽しむような光が表に出てきていた。これが寺村という人間の本性なのだろうか。

「ほう、そうですか」

 脇田はそう言ってあの朝子を安心させる笑い方をしたが、実際に調書を手に取ろうとはしなかった。

「見てください」

 朝子がすがるようにして脇田に調書の下書きを渡そうとすると、脇田の顔から頼みの綱の笑顔がすっと消えた。

「おかしいですね、今私とそういう話をしたじゃないですか、自分も拳銃を撃されそうになって怖かったって」







「……」

 朝子は自分の顔から血が引いて行くのを感じた。

『二人はグルだ。あたしは何かの陰謀にはめられようとしている』

 眩暈がしそうになって深呼吸をしようとして顔を上げた。

 寺村が不気味に笑っていた。

 その横で脇田も笑っていた。

 正義の味方のあの笑顔ではなく、寺村とそっくりの笑い方だった。






つづく

大人のピアノ そのきゅうじゅうに 暗黒の舞台裏

「結局捺印してくれましたけど、朝子お嬢ちゃん泣きながら帰って行きましたね」

 脇田は朝子の捺印の入ったでっち上げの調書をヒラヒラさせながら笑った。

「まあ、しょうがねえだろう。刑事ドラマじゃまるでお茶汲みの女の子にコピーとってくれって頼むみたいに令状請求だ!とかやってるけど現実は甘くねえ」

 寺村はそう言いながらもやはり上機嫌だった。

「令状取るのって一苦労ですもんね」

「ああ。まあしかし今回は写真や証言なんかの添付書類が揃ったからすぐに出るだろう」

「そうですね。人が一人しか通れない道を通って音楽ホールのような射撃場とかバッチリですね」

 脇田は愉快そうだった。

「ああ、ばっちりだ。何せ俺が実際に何度もあそこに行ってるんだからリアリティも間違いねえよ」

 寺村も声を上げて笑った。

「ただし寺村さんが調書を書く訳にはいかない」

「そうともよ。何せ俺があそこに通ったのは、二年しかいない予定のキャリア署長の出世のため。目的は拳銃摘発の成績アップの段取りだもんな」

「世も末ですね」

「おめえが言ってどうするんだよ」

「まったくです」


 二人はしばらく肩を揺すって笑っていた。




「しかしよ、署長のあの言葉はすごかったな。あれぞまさしく悪党だぜ。所詮叩き上げの俺たちの悪事なんてたかが知れてる」

 寺村は脇田をねぎらうように肩をぽんぽんと叩いた。

「ああ、あれですね。『拳銃は目の前から消せばいい。同じようにヤクザも目の前から消せばいい。あとは野となれ山となれ』でしたっけ」

「そうそう、それだ。とにかく拳銃は日本になくても無理やり検挙用に輸入して発見したふりして消せばお手柄。ヤクザは組を解散させて存在を消しちまえばお手柄っわけだ」

「ええ。首なし拳銃上げても輸入してるやつも一緒に検挙しなきゃ意味ないのになと思ってたけど、現場の刑事はそんなことは考えなくていいってハッキリ言ってくれて頭クリアになりました」

 脇田はすっきりした表情で言った。

「そうさ。同じようにヤクザ追い込んでそいつが目の前から消えてくれりゃ、中国人とつるんでマフィア化しようがハングレとつるんでおれおれ詐欺やろうが関係ねえってわけだ」

「最近じゃ幽霊化するとかいうらしいですね」

「いいじゃねえか、幽霊が悪さしても俺たちの管轄外だ。そいつらが別のところでどんなに悪いことしようが俺たちには関係ねえよ」

「そうですね」





 寺村は冷たくなったインスタントコーヒー飲み干して満足そうに続けた。

「物事の善悪は署長たち偉いさんが決めてくれりゃいいんだ」

「その方が現場は気楽ですもんね。間違っても王様は裸だとか言っちゃいけないし疑問も持っちゃいけない」

「そうさ。へんに善悪なんて考え始めると、藤井組の坊ちゃんみたいにあれこれ悩んじゃって、覚せい剤に溺れたりするわけだ」

「あれ、そんなこと言っちゃって。ヤクザになりきれない坊ちゃんに自分のやってることの善悪に悩むようにし向けたり、補導した息子の将来メチャクチャにしてやるとかで脅したりしながら、一方で覚せい剤コンスタントに渡して短期間で中毒に追い込んだの寺村さんのくせに」

「そういやそうだったな」

「さらに藤井組の情報とかも流させてすっかりスパイにしちゃって。コカイン欲しさに父親も仲間も裏切って。それでストレスがまた溜まっちゃってまたコカイン」

「あの人もねえ…ダメだって、自分で中途半端にもの考えちゃ」

「カタギの時の商社マン時代も結局企業のコンプライアンスでアレコレ悩んじゃったらしいですね。会社の利益のためにお客さん自殺に追い込んだり。それも上司が暗に指示したり、同僚も成績上げるために平気で競ってやってたとか」

「ああ。コカイン打ちながらそんなこと言ってたな。まあ実際にかなりエグい話だったけどな。警察だけじゃなくてどこも狂ってるな」

 二人は顔を見合わせて苦笑した。





「じゃあオレ、そろそろ令状請求に裁判所行ってきますね」

「ああ、頼むよ。令状持って藤井組にガサ入れてあの組一気に潰しちまおう。拳銃キャッシングの時代はそろそろ終わりだ。今はヤクザごと潰した方が成績もいいらしいからな。平成の刀狩りより暴力団対策法がトレンディだ」

「しかしすんなり落城しますかね、あの城」

「銃撃戦でも起きるかもなあ」

 寺村が人ごとのように言った。



「やですね、オレ」

「やだよぉ、俺だって。だから県警本部経由で本庁にSAT出してもらうように申請もしとくさ」

「それがいいですね。危険なドンパチは警察が誇る特殊急襲部隊に任せて、所轄の俺たちは弾の当たらないところで適当にチョロチョロしてましょうね」

「ああ、それが一番だ」

「じゃ、行ってきます」

「おう、頼むぞ」

 見送った寺村も応接室の照明のスイッチを消して部屋を出た。





 二人が出て行ってだれもいなくなった暗がりの応接室。

 朝子が座っていた椅子の前のテーブルには、二人の名刺がそのまま置かれていた。

 







つづく

大人のピアノ そのきゅうじゅうさん 捜査本部の影で

「今回の事件の捜査本部、少し雰囲気違いますね」

 捜査令状の手続きが無事終了し、脇田は再び署に戻って寺村と廊下でタバコを吸っていた。

 神奈川県警川崎市の武蔵小杉署四階の大会議室入口には「暴力団台湾料理店拉致被害事件捜査本部」という物々しいついたてが置かれて、招集された捜査員が頻繁に出入りし始めてにわかに慌ただしさを増していた。

「そうだな、普段は捜査本部長が神奈川県警の刑事部長で副部長がうちの武蔵小杉署署長と捜査一課長で決まりなんだがな。千葉からもお偉いさんが出張って来てる」

 寺村が相槌を打つ。

「いえ、確かに今回は事件発生がうちの管轄で踏み込む先が千葉ですから、管理する側も大所帯になってますけど、それだけじゃなくって…」

「ひな壇には座ってないが、SATとSITの部隊長も捜一の課長と一緒に作戦立案の要だからな。前の方でそうした怖い部隊の人間が数人いる。物々しい感じはそれだろ」

「はい…」

 確かに今回は刑事課の合同捜査だけでなく、人質救出のためのSIT及び、武装解除制圧を目的としたSATの役割分担もある。今回の事件では、救出までの交渉の段取りを神奈川県警のSITが担当し、その後武装解除が必要な状況に陥れば千葉県警の特殊急襲部隊SATが任務を遂行するという。

 同じ県警本部内でも刑事部に属するSITと警備に属するSATの連携に指揮官は気を使う。今回のように川上部分を神奈川県警が行い、川下部分を千葉県警が担当するというのはお互いのメンツをかけた争いがさらに事態を複雑にする部分があった。しかし事件発生場所の管轄所武蔵小杉署にこうして捜査本部が設置されている中、SATの最重要守備施設である成田国際空港を域内に抱える千葉県警は全国の県警の中でもSATのプライド意識が異様に高く、現場での主導権争いには一歩も引く構えを見せなかった。






「まあ、しかし実はそれだけじゃない。なかなか脇田も鋭いな」

「あ、やっぱり何かあるんですか」

「ああ、さっき署長に呼ばれたんだがな、今回は警察庁の上層部の方から今や警察組織のアキレス腱というか恥部とでもいうべき藤井組の拳銃摘発裏システムをこの世から消し去ってしまえ、という命令が下っているらしい」

 寺村がにやけたような、それでいて黒光りする得体の知れない闇を秘めた目で脇田を見た。

 藤井組の長男をシャブ中にして神奈川県警に有利になるような拳銃の横流しシナリオを成功させた寺村は、一介の巡査長という階級にもかかわらず署長と直に話をすることができる。寺村はその手の自分しか知り得ない情報を脇田に話すとき決まってこうした表情をした。

「そうすると、あの全ての横流し拳銃の製造番号を控えているというデータベースもろとも破壊せよっていうことですか」

「そうだ。あんなものが裁判所で明るみに出たら日本警察は一巻のおしまいだ。だから千葉県警のSATはかりに人質の斎藤武志がすんなり無事に救出できたとしてもそのまま突入して、重火器をふんだんに使って城ごとすべて吹っ飛ばすという密命を帯びている」

「うわ、おそろし。死人がいっぱいでますね」

 脇田はまんざら冗談でもなさそうに眉をしかめた。

「ああ。できれば人質以外全員綺麗に射殺してしまえということだ」

 寺村はまたあの笑いで肩を揺すった。

「無抵抗でもですか?テレビとかで中継されたらヤバくないですか」

「そこは天下の千葉県警SATがうまくやるということだろう」

「いやあ、警察を的に回すと恐ろしいですなあ」

 他人事のように言う脇田に寺村は上機嫌に笑いかけた。

「そうさ、具体的にはこの寺村様をなめたのがいけねえんだよ」

「寺村……さま…ですか」





 冷やかしと揶揄のこもったニュアンスで脇田は苦笑してみせたが、話しているうちに気分が高揚してきた寺村はそれには気づかぬ様子で饒舌をやめることはなかった。

「ああ。こういうことにならねえように、藤井の長男にデータベースを消去するように言ってたんだがな、結局うんと言わなかった」

「まさか、あのホテルで注射器片手に風呂場で死んでたっていうのは…」

「俺がやった」

 さすがに脇田の肩を抱くようにして小声で言ったが、寺村の顔はまるで大物の俺を舐めた報いであると言わんばかりだった。警察権力とそれをバックにした個人の力を混同する悪徳刑事が大抵そうであるように、寺村はそうした混同が引き起こす常識感覚の麻痺、消滅というものにすでに無頓着になっていた。

「あれまあ」

「聞きてえか、俺がどうやって藤井のボンボンを落としていったか」

「ええ、まあ…」

 脇田は軽く受け流しながら、この危険人物と今後どこまで付き合っていいものか、そろそろきちんと考えておくべきだな、との思いを新たにした。

 寺村はそんな脇田の心中に思い至るはずもなく、全員招集がかかる前のいっときの暇に任せて、とうとうと自分の手柄話を話し始めた。






続く

大人のピアノ そのきゅうじゅうよん マージナルマン

 寺村が憑かれたかのように脇田にしゃべり始めた時、藤井城でも藤井が息子の思い出を語り始めていた。

「なあ、武志」

「はい」

「俺は不思議でよ、警察の奴らが」

 武志は無言で唾を飲んで頷いた。藤井はテーブルの上に並べられている突撃ライフルを無造作に持ち上げ、スコープ越しに武志に喋りかけたている。弾丸が入っていないとはいえ、重量感のある銃器は武志に圧迫感を与えた。

「いや、警察というよりうちの息子が世話になった商社ってやつもそうなんだろう。なんで昨日まで信じてたものがひっくり返っても、そこにいる奴らは平気な顔してそれに順応できるのか」

 藤井の疑問はある意味ナイーブで、あたかも素朴な中学生か高校生の疑問のようにも聞こえたが、その感覚は口にしないだけで誰し持ち続けている疑問のようにも武志には思えた。

「息子さんのことは分かります。もちろん俺には会社勤めの経験はありませんけど、学校なんかでも昨日までボス猿だったやつが一日でスクールカーストの一番最下層に転落なんていうのはあり得る話ですから」

「スクールカーストってなんだ」

 藤井は耳慣れない言葉に興味深そうに武志に訊いた。武志は曖昧で絶対的なその上下関係が実体化した意識の鎖について藤井に説明した。

「なるほどな、警察や会社組織に場合にはそこに階級やら役職やらも絡んでよけいがんじがらめだ」

「はい。でも…」

「ヤクザ組織にはないんですか」

「うむ。ヤクザの場合にはそれこそ親が白と言ったら黒いものでも白くなる。それは堅気以上だろう。でもな、こう言っちゃなんだが、それはホントに白く見えるんだよ、親分の言ってることだったら」

 横で聞いていた三浦が我が意を得たりとばかりに、晴れやかな顔で何度か頷いた。

「そうだよな、三浦」

 それに気がついた藤井が三浦に話しかけた。

「マジックですよ。それまでのあやふやな世界がビシッと見えてくるんです。親分がこれは白だっていうと、灰色だったものが真っ白に見える。そういう時は不安も恐怖心も何もかも消し飛びます」

 三浦は藤井に返事をしながら武志にも目線を遣った。



「なあ、三浦」

「はい」

「タケシは…ああ、ややこしくていけねえな。俺の息子の方のタケシはどうだったんだろう。藤井組の仕事をやらせるようになってから、あいつは会社を辞める直前までのノイローゼみたいな表情は無くなっていったように見えた。拳銃横流しの組織を構築する仕事は犯罪かもしれねえが、悪と割り切ってやる仕事は善のふりをしてそれ以上の悪さをする警察や企業よりもマシじゃねえのかって、あいつの表情見ててそう思ったんだが」

 藤井は自分の思いをうまく言葉にすることができず、もどかしそうだった。

「ぼんさんはそこを悩んでいました。ご自分のことをマージナルマンだって言ってました」

「なんだ、それは」

「私もぼんさんに聞いて見たんです。それでぼんさんの苦しさも想像できたんですが、神奈川県警の寺村は、そこをうまく利用してぼんさんを精神的に追い詰めていったように思います」




 寺村が追い詰めていったというところに藤井は反応し、ライフルをテーブルに戻した。

「聞かせろ、そのマージナルマンってのを」

「はい」

 三浦が藤井、南方、武志の三人に順番に視線を向け、静かに話し始めた。





続く
ゆっきー
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