~勇者が行く~(2)

本編( 5 / 10 )

第二部:外伝(弐)

外伝(弐)

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔1〕
俺の名は凱空。初代「赤錬邪」として名を馳せた、現職「勇者」の12歳児だ。
仲間達と別れた俺は、天帝の使者に言われた通りタケブ大陸へとやって来た。
急がねば。「勇者」として、一刻も早く「魔王」の呪縛から人民を解き放たねば。
凱空「ほぉ、ここが「帝都:チュシン」か…。なんだか無駄に広いな…。」
〔帝都:チュシン〕
世界に六つある王国を束ねる強大な権力、そして広大な領地を誇る都。
中でも王宮は特に広く、犬のおまわりさんすら道に迷う。
凱空「ダメだ、広い…広すぎる!このままじゃ助からん!俺は、どうすれば…!」
凱空は尿意がヤバい。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔2〕
「魔王」に襲われる前に「尿意」に襲われた俺は、慌ててトイレを探して回った。
事態は急を要する。一刻の猶予も許されない。少しのタイムロスさえも命取りだ。
よし、こうなったらズボンは先に下ろしておこう。これで少しは稼げるはずだ。
あとはもう、最悪トイレじゃなくても気にすまい。人にさえ見られなければいいのだ。
凱空「う、うぐぅ…おぉっ!奥にそれらしい部屋発見!」
バンッ!(扉)

少女「!!?」
凱空「!!!」
少女「・・・・・・・・。(着替え中)」
凱空「・・・・・・・・。(パンツ一丁)」
少女「・・・・・・・・。(硬直)」
凱空「・・・・・・・・。(凝視)」

フッ、彫像か…脅かしやがって。
思いっきり「皇女」だった。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔3〕
随分と洒落たトイレだなと思った奥の間は、なんと「皇女」の部屋だったらしい。
だが、気づくのが少々遅かった。我慢の限界で、既に用を足してしまった後なのだ。
皇女「きっ…キャアアアアアアア!だ、誰か!誰かぁーー!!」
凱空「む?呼んだか?」
皇女「アナタだけは呼んでませんの!!」
凱空「よく見るとかなり豪華な部屋だが…ここは何の部屋なんだ?」
皇女「許せませんの!「皇女」の部屋に無断で入り込むだなんて…!」
凱空「皇女?お前が皇女なのか?確か名前は…「皇子(こうこ)」だったか。」
皇子「し、しかも私の目の前で、お、お、おしっ…は、恥ずかしいですのー!」
凱空「大丈夫、俺は気にしてない。」
皇子「こっちが気にしてますのっ!」
凱空「俺の名は凱空。お前からの使者に呼ばれて来たんだが…。」
皇子「知りませんの!いいからとりあえずチャックを閉めてぇー!!」
バンッ!(扉)
兵士「ど、どうされましたか皇子様…ハッ!誰だ貴様は!?」
凱空「俺は凱空。チャックは全開だが一応客だ、心を込めて接客してくれ。」
兵士「…わかった、ついてこい。」
凱空は投獄された。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔4〕
客間に通されるのかと思ったら、牢獄に入れられてしまった。気づくのが遅かった。
まったく…。俺は魔王を倒しに来たんだ、こんなことしてる暇は無いというのに…。
凱空「やれやれ、わざわざ赴いた客にこの扱いとは…。お前も酷いと思わんか?」
声「!! …ほぉ、私の気配に気づくとは…意外にもタダ者ではありませんな。」
凱空「お前は誰だ?いや、誰でもいい。とにかくここから出してくれ。」
老婆「私は皇子様専属の執事「洗馬巣(セバス)」。「セバスちゃん」で結構ですぞ。」
凱空「…甘栗?」
洗馬巣「あんまりです!確かにシワは多いですが、食べ物に間違うのはどうかと!」
凱空「まぁどうでもいい。まずは出してくれ。早くしないと魔王に滅ぼされるぞ?」
洗馬巣「ご安心を。魔王は現れはしましたが、今は「メジ大陸」に居ますゆえ。」
凱空「なに?だがその割には警備が厳重だぞ?蟻一匹通さないほどじゃないか。」
洗馬巣「ええ。それなのに平然と皇女の部屋まで辿り着いたアナタは何者ですか。」
凱空「魔王じゃないとすると…なんだ?何にそんなに怯える必要がある?」
洗馬巣「もう一つの脅威です。あの恐国…「魔国(まこく)」の王子が現れたのです。」
凱空「ま、魔国…?」

~その頃、帝都護衛軍本部では…~
兵士A「うぎぁあああああっ!!
少年「・・・・・・・・。」
兵士B「き、貴様ぁ…!目的は何だ!?なぜこの国を襲う!?」
少年「…目的? フフッ、天帝の力を頂きます。逆らえば皆殺しですよ。」
兵士C「くっ…そんなことさせるかぁー!!ぐぁあああああっ!!

少年「力が要るんですよ。私を…この「凶死」を越える力が。」
魔界出身じゃなかったのか。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔5〕
帝都を脅かす強敵…それはなんと、若き日の凶死だった。
狙った獲物は逃さない男、「死神の凶死」…。

皇女を追い詰めるのに、そう時間は掛からなかった。
~皇女の部屋~
(「ぎぇええええええええっ!!」)
(「うわっ、やめ…うわぁああああああっ!!」)
兵士「くっ、なんて奴だ!この扉が破られるのも、時間の問題か…!」
皇子「うぐっ、えぐっ。みんなが…みんなが死んじゃいますの…!」
兵士「皇子様、お逃げください!ここは私どもが食い止めますゆえ!」
皇子「イヤですの!皇女である私が、国民を置いて逃げるなんてできませんの!」
凱空「まったくだ。」
皇子「アナタはなんで逃げてこれてますの!?」
凱空「フッ、安心しろ。俺は肝心な時には居ない男だ。」
皇子「それはそれでイヤですの!アナタは何者!?目的は何ですの!?」
兵士「ハッ!さては…貴様も死神の手の者だな!?成敗してくれる!!」
凱空「なっ!?ま、待て!話せばわかる! 必殺、「話せばわかるぞキック」!!」
兵士「え゛っ…ばぼふっ!!
凱空のえげつない攻撃。
側近の兵士をブッ倒した。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔6〕
危ないところで、なんとか兵士を退治できた俺。相変わらずのナイスタイミングだ。
凱空「キマッた…我ながら怖ろしいほどにキマッた…。」
皇子「ひ、酷すぎますの!なんでも暴力で解決しようなんて最っ低ですの!!」
凱空「まったくだ。」
皇子「アナタに言ってますのっ!!」
凱空「やれやれ。皇女は血統がいいと聞いていたが…とんだデマだったようだな。」
皇子「えっ…?」
皇子は兵士の方を見た。
なんと兵士は煙のように消えた。
皇子「えっ?えっ?な、何がどうなりましたの…!?」
声「…へぇ~。まさか私の「幻魔術」を見破る人がいるとは…ねぇ。」
音も立てずに凶死が現れた。
皇子「あ、アナタ…アナタが死神ですのね!よくもみんなを…!!」
凶死「少々驚きましたよ、皇女。多少は頭のキレる傭兵もいたようですね。」
凱空「フッ、実はマグレだとは口が裂けても言えん状況だな。」
皇子「言っちゃってる!思いっきり言っちゃってますの!」
凶死「死に行く者に名を尋ねるもまた一興…。アナタの名は?」
凱空「俺か?俺は「勇者:凱空」。この世に、悪がある限り…!」
凶死「ある限り?ふふっ、まさかこの私を倒すとでも?」

凱空「特に何もしない。」
皇子「してほしいのっ!!」
相変わらずヤル気は無かった。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔7〕
気づいた時には背後にいた、謎の少年「凶死」。今までに会ったことのないタイプだ。
凱空「お前が「死神」?見るからに俺より若いようだが…。」
凶死「4歳ですが何か?まさか、無駄に歳だけとっていれば優れているとでも?」
凱空「いや、いくら俺でも本人を目の前に…なぁ?」
皇子「なんでこっちを見ますの!?同い年ぐらいの人に言われたくありませんの!」
凱空「で?コイツに何の用だ?嫁に貰いに来たにしては随分と荒っぽい登場だな。」
凶死「力を得るためですよ。「天帝」には不思議な力があると聞きましてね。」
皇子「ッ…!!」
凱空「なるほど、「不思議ちゃん」なのか。」
皇子「その言い方は違うと思うの!」
凶死「ところでアナタこそ何なんですか?皇女とは一体どういうご関係で?」
凱空「フッ、放尿シーンをも見せ合う仲だ。」
皇子「見せ合ってないのっ!!あ、アナタが勝手に見せただけですの!」
凱空「とにかくまぁ、乗りかかった船だ。好きにさせてやるわけにはいかんな。」
凶死「へぇ~…面白い冗談ですねぇ。」
凱空「さぁ来い。死神こそが、最も死に近いということを教えてやる。」

キマッた…今日もキマッたぜ…。
凱空はまだチャックが開いている。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔8〕
キメ台詞も華麗にキマッた。ボロが出る前にさっさと決着をつけるとしようか。
凱空「最後だ。泣いて謝るチャンスを一度だけくれ。」
皇子「えっ!あげるのではなくて!?」
凶死「ふふふ、随分と強気な人だ。でも武器も持たずにどうするおつもりで?」
凱空「フッ、達人は得物を選ばん。お前ごときチビッ子相手なら、コレで十分だ。」
凶死「やれやれ、そんな燭台で私に挑むとは…無謀ですねっ!」
凶死は〔突風〕を唱えた。
凱空はヒラリとかわし、燭台を振り下ろした。

凶死の頭は砕け散った。
皇子「きゃっ、きゃあああああ!頭が!頭がぁーー!?」
凱空「俺は「勇者」。基本的に何もしないが時々やり過ぎる。」
皇子「やり過ぎにも程がありますの!しかも何故そんなに冷静ですの!?」
凱空「さすがは死神だ、とっても斬新な技だな。」
皇子「技なはずは無いのっ!!」
凱空は発想がおかしい。

 

〔突風(とっぷう)〕
魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
激しい風を巻き起こす魔法。街角で使うとミニスカートの女性にボコられる。
 

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔9〕
強いのかと思えば、アッサリ一撃で砕けた凶死。少々腑に落ちんがまぁ気にすまい。
凱空「完璧だ…。これならいつでもプロの「スイカ割ラー」になれるな。」
皇子「そんな職業ありませんの!この人殺しぃー!!」
凱空「ん~、だがなんだか拍子抜けだな。 口ほどにも無さすぎて…ぶぼあっ!!
痛恨の一撃。
凱空は窓の外までフッ飛ばされた。
皇子「なっ、なんで!?なんでいきなり…ハッ!アナタは…!」
凶死「おや、「幻魔術」は初めてですか?口ほどにも無いのは彼の方でしたねぇ。」
皇子「そんな…! ゆ…勇者の人ー!お願いですの!戻ってきてぇー!!」
凶死「無駄ですよ。この高さから落ちたんです、恐らく即死でしょう。」
凱空「そりゃ可哀想に…。」
凶死「フッ、まぁ私に挑んだ時点で…って、えぇっ!?」
凶死のキャラが一瞬崩れた。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔10〕
危ないところで、なんとか攻撃を回避した俺。初めて見る技だが今のが幻術か。
凶死「た、確かに命中したはず…。もしやアナタも幻魔術を…!?」
凱空「幻術?アレは「空蝉(うつせみ)の術」だ。俺は魔導士じゃないんでな。」
皇子「「勇者」が「忍術」使うのは問題無いの!?」
凶死「この私を騙すほどの忍術…よほどの師を持つと見える。」
凱空「フッ、「通信教育」だ。」
皇子「そんなのありますの!?」
凶死「…ふっ、あははは!参りましたね、どうやら私の勝てる相手ではないらしい。」
凱空「む?なんだ、諦めるのか?随分とアッサリ引き下がるじゃないか。」
凶死「別に無理して皇女を狙う必要は無いのです。私が欲しいのは「力」ですから。」
凱空「…なるほど。代わりに俺に力を貸せというわけだな?だが何のために?」
凶死「詳しい話はその時に…ではダメですか?」
凱空「ん~、まぁいいだろう。俺は細かいことと常識は気にしないタチだからな。」
凶死「助かります。逆に私の力が必要な時は、いつでもお貸ししますので。」
凱空「フッ、俺には必要無いさ。そうだなぁ…俺に子でも出来たら頼もうか。」
凶死「わかりました。その時は是非。」
勇者の悪夢が予約された。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔11〕
凶死の降参により、事態は収束した。必要以上に空気の読める奴で助かった。
正直、コイツの真の実力は計り知れん。これ以上争うのは得策じゃないだろう。
凶死「では、私はそろそろ帰るとしましょう。幻術って意外と疲れるんですよね~。」
皇子「だ、ダメ!逃がさないの!みんなのカタキ…見逃せるわけありませんの!」
凶死「…ふぅ、この国では人を眠らせるだけで罪人ですか?乳母も大変ですねぇ。」
皇子「えっ!?眠らせ…って、じゃあ全てが幻術だったってことですの…?」
凱空「凶死よ、ちょっと待て。行く前に少しだけ聞きたいのだが…。」
凶死「メジ大陸の「魔王」について…ですね?」
凱空「お前は「王子」と聞いた。こと魔国の王子なれば、その情報は深かろう。」
凶死「名は「終(おわり)」。年の頃は15・6。それ以上の情報は、残念ながら…。」
凱空「…いや、十分だ。ありがとう。意外と役立たずだなんて全然思ってないぞ。」
凶死「な、なんだか凄く不本意ですが…今日は去ります。ではまた、「その時」に。」
凶死は去っていった。
バンッ!(扉)
兵士「皇子様ー!ご無事ですかー!?…ハッ、貴様は…!」
皇子「私は大丈夫ですの! い、一応この方が…その…。」
凱空「俺は凱空。チャックは未だ全開だが一応客だ。心を込めて接客してくれ。」
兵士「…わかりました。ではコチラへ。」
凱空は投獄された。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔12〕
凶死撃退の噂は、瞬く間に帝都中に広まった。
凱空は英雄として崇められ、帝都護衛軍の「兵士監督官」に任命された。

そして、半年が経った。
帝都に着いて、半年が経過した。今は護衛軍で兵士達の訓練を監督している。
本来ならばすぐに旅立ちたいところなのだが、わけあって今は足踏み状態だ。
それに、ここの警備は貧弱すぎて放っておけない。俺が鍛え直してやらねば。
~帝都護衛軍・訓練場~
凱空「コラそこー!振りが甘い!そんなスピードじゃかすりもせんぞ!?」
兵士A「す、すみません!うぉおおおおおっ!」
凱空「あとお前もだ!そんな甘い守備で守りきれるとでも思っているのか!?」
兵士B「ハッ!申し訳ありません!」
凱空「今度の敵は強敵だ!みんな気を引き締めてかかれ!!」
兵士達「は、ハイッ!!」
週末に野球大会がある。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔13〕
夕暮れ時、俺はこの世で最も高いという塔の頂上に来ることが多かった。
遠方より来たせいか、遙か遠くを眺めているだけで妙に心が安らぐからだ。
凱空「アイツらは、今頃どうしてるんだろうか…。」
声「ガ~イク♪ またここに居たのね。そんなにこの塔が気に入ったの?」
凱空「…皇子か。この場所は他の何よりも高い。友のいる島すら見えそうでな。」
皇子「そう…。 あ、ところでどうですの?兵士達は順調に強くなってる?」
凱空「フッ、安心しろ。みんなだいぶ飲めるようになったぞ。」
皇子「何を強くしてるの!?お酒なんか鍛えても意味ないの!」
凱空「それより何しに来たんだ?こんな街外れ、皇女が来るような場所じゃないぞ。」
皇子「べ、べべ別に意味なんか無いの!ちょ、ちょっと空が見たくなっただけなの!」
凱空「む?どうした、なんだか顔が赤いが…収穫時期か?」
皇子「リンゴじゃないの!! …あ、そうそう!大事なお知らせがあったの!」
凱空「悪いがもうじき戻らねばならん。用があるなら早めに済ませてくれ。」
皇子「あ、うん。あのね、来月にね、「武術会」があるの。で、凱空…出てみない?」
凱空「武術会か…まぁ賞品にもよるな。俺は堂々と金品に目が眩むタイプだ。」
皇子「しょ、賞品は!その!いいと思うの!きっと凱空も気に入るの!だから…!」
凱空「よし、ならば出よう。俺の参加を手配しておけ。」
皇子「あ…うんっ☆」

金か装備か…どちらにしろ腕が鳴るぜ。
賞品は「皇女」だ。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔14〕
一ヶ月が経ち、皇子の言っていた武術会が明日に迫った夜。事態に動きがあった。
コンコン(ノック)
声「凱空様、大事なお話がございます。洗馬巣と二人、よろしいでしょうか?」
凱空「む?その声は…あの時の使者か?ということは…よし、入れ。」
ガチャ(開)
紳士「お察しの通りです。「魔王」に関する謎、重要なものが幾つかわかりました。」
凱空「そうか、よくやった。で、状況はどんな感じだ?」
紳士「最悪です。古代神…「魔神:マオ」が憑いているという説が浮上しました。」
凱空「神…だと?なんだその偉そうな存在は?生意気な!」
洗馬巣「およそ五百年前…大戦の末、海に封印された伝説の化け物です。」
凱空「神…大戦…。初めて聞く話だが、入手元はどこだ?」
洗馬巣「私の思い出です。」
凱空「何歳なんだ!?お前も立派な化け物じゃないか!」
洗馬巣「私も異星の出身ゆえ、他の方よりほんの少しだけ長生きなのですよ。」
凱空「だが何故だ?その神とやらは封印されたんだろ?」
洗馬巣「ええ、確かに「肉体」は。ですが奴は、直前に「精神」を切り離したのです。」
紳士「まだ調査の段階ですが、恐らくは「転魂の実」の能力かと。」
〔転魂(てんこん)の実〕
食べた者の魂を、体から離脱させることができる果実。
魂だけでは何も出来ないが、相手に同意があれば他人に憑依できる。
自分の体に戻るまでその効果は継続する。
すでに絶滅しており、今では絶対に手に入らない。
凱空「真の敵は精神体か…厄介だな。魔導士の力が要るが、見つかったか?」
紳士「東へ向かってください。「大賢者:無印(むいん)」がアナタを待っています。」

東か…。長い旅に、なりそうだ。
凱空は西の空を見ている。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔15〕
武術会当日。だが俺は参加するつもりは無かった。状況が変わったからだ。
魔王の正体が掴めた以上、グズグズしてはいられない。すぐにでも旅立たねば。
コンコン(ノック)
皇子「…どなた?少し待って、いま着替え中で…」
凱空「わかった、終わるまで見てる。」
皇子「ってキャアアアアア!なんで既に中に居ますの!?今のノックの意味は!?」
凱空「お別れを言いに来た。急な話だが、旅立つことになったんでな。」
皇子「えっ…ど、どういうこと…? ハッ!まさかアナタ「魔王」と…!」
凱空「ああ、デートの約束があるんだ。」
皇子「下手な言い訳にも程があるの!バカにしないでほしいの!」
凱空「探させてた有能な仲間も見つかった。これ以上の足踏みは世界が危険だ。」
皇子「だ…ダメ!だって今日は武術会の日だもの!今日だけは絶対にダメなの!」
凱空「悪いな。だが他の奴らも頑張る、俺がいなくても十分に楽し…」
皇子「ダメなの!だって…だって私、優勝者と結婚することになってるのっ!!」
凱空「なっ…!?」
皇子「私、凱空が好き!凱空以外の人と結婚するなんてイヤなの!だから…!」

凱空「…言ったろ?俺は「肝心な時には居ない男」だと。」
皇子「えっ…。」
凱空「俺は「勇者」だ。進むは茨の道…俺の地図に「恋路」という道は無い。」
皇子「そ、そんな…!イヤ!イヤなの!行かないでぇ!!」
凱空「泣くな皇子。お前はもっと優しい男と結婚し、元気な子を産め。 サラバだ!」
皇子「凱空ぅーー! いやぁああああああ!!」

すまん、皇子…!!
凱空は窓の外へと消えた。
皇子「うぐっ、えぐっ。バカ…凱空のバカ…! ここ、30階…。」

凱空「うぉおおああああああああっ!!?
こうして再び、凱空は旅立った。

これが皇子との、永遠の別れとも知らずに。

 

第三章へ

本編( 6 / 10 )

第二部:第三章

第三章

 

2-121:仲間〔13歳:LEVEL17〕
春。 13歳になったらしい僕と愉快な仲間達は、順調に旅を続けていた。
目指すは五錬邪の本部。でもかなり距離があるらしく、歩きだと相当掛かりそうだ。
勇者「ハァ、ハァ、疲れた…。やっぱ何か、乗り物にでも乗らない…?」
盗子「ちょっとぉ、しっかりしてよ勇者~。乗り物は怖いからもうイヤだよ~。」
勇者「あ、ところでジャック。次の街「モレンシティ」へはどのぐらいで着きそう?」
盗子「えっとね…ってだから「盗子」だってば!もう何度言わせればわかんのさ!」
勇者「わからないから言ってるんだ!!」
盗子「わーん!なぜか理不尽にキレられたよー!」
姫「泣かないで盗子ちゃん。李夫人も根はいい人だよ。」
盗子「誰の奥さんだよ!そんな他人にキレられたらもっと納得いかないよ!」
勇者「ご、ごめんアレキサンダー。僕は少し焦っているのかもしれない。謝るよ。」
盗子「ぐすん…。う、ううん、いいの。わかってるから早く次の街へ急ごうよ。」
勇者「…うん。 パーティーは三人、戦力不足は否めない。仲間を探さないと…!」

~その頃、噂の「モレンシティ」では…~
女「きゃぁああああ!イヤ!離してぇーー!!」
ロボ「グヘヘへ!騒イデモ無駄ダ人間!この街デハ俺達ロボットガ正義…」
少年「おっと、待ちなロボ公。レディに対するその態度…見過ごせないぜ。」
ロボ「アン?誰ダ貴様ハ!?ヤンノカコラ!!」
女「あ、アナタは…?」
少年「フッ、俺か? 俺は「勇者」。俺が来たからには安心していいぜ、ベイベー!」
なんちゃって勇者が現れた。

 

2-122:秋話〔13歳:LEVEL17〕
三日ほど歩き、僕達はやっと「モレンシティ」という街に到着した。とっても疲れた。
噂では、ここはロボット技術が行き過ぎ、逆にロボに支配されてしまったんだとか。
恐らく何かしらの戦闘に巻き込まれるんだと思う。その前に強い仲間を見つけたい。
勇者「なんとか仲間を探そう。でも弱い奴らはいらない、欲しいのは強い奴らだ。」
姫「勇者君があと二人ぐらい居ればいいのにね。」
盗子「あっ!そういえば姫、秋に「ミルシティ」で聞いた「ニセ勇者」の話覚えてる?」
姫「うん、サッパリ覚えてるよ。」
盗子「どっちだよ!サッパリなのか覚えてるのかハッキリしてよ!」
勇者「ん?ニセ勇者?秋に一体何があったの…?」
姫「勇者君の名を騙り、財宝を奪って逃げた不届き者がいたんだよ。許せないね。」
盗子「かと言って急にシッカリされても戸惑うよ!」
勇者「ニセ勇者か…。でもなぜ僕の名を?僕はそんなに有名人なのか?」
盗子「私は「指名手配」の線を疑ってるけどね。」
勇者「し、失礼な!僕がそんな悪人なはず無いじゃないか!訂正してよ!」
姫「そうだよ盗子ちゃん。疑うのは良くないよ。」
勇者「いや、そこを訂正されるとちょっと…。」
姫「まぁとりあえず、お昼にしようよ。私お腹すいちゃったよ。」
勇者「えっ、あ…う、うん。」
もうじき夜だ。

 

2-123:遭遇〔13歳:LEVEL17〕
姫ちゃんの要望により、食事をとることにした。思えばまともな食事なんて久々だ。
ガラガラ…(開)
勇者「こんばんはー。三人なんだけど席は空いて…」
ロボA「ヨ、ヨクモ仲間ヲ!人間ノ分際デ生意気ナッ!!」
勇者「!?」
少年「フン!職も名も「勇者」である俺に挑んだキミ達が悪いのさ、エネミー!」
盗子「えっ、勇者!?今アイツ「勇者」って言ったよ!あの覆面の奴!」
勇者「うん、僕も聞いた。でも今は状況が状況…助太刀するよサンコン!」
盗子「う、うん!そだね!!」
勇者の攻撃。

覆面少年に100のダメージ。
少年「ぶぼはっ!?
勇者「僕の名を騙るとは何事だー!!」
盗子「ってそっちの助太刀なのかよ!その判断は人としてどうなの!?」
少年「ぐっ…!な、なんだキミ達はいきなり…って、ブラザー!?えぇっ!?」
盗子「へ!? ぶ、「ブラザー」って…アンタまさか…!!」

博打「フッ、久しぶりだなベイベー達。俺に会いたくて追ってきたのかい?」
覆面少年は「博打」だった。

盗子は驚いた。
勇者はキョトンとした。
姫は構わず注文した。

 

2-124:乙女〔13歳:LEVEL17〕
店で戦っていた少年は、どうやら僕らの旧友らしい。なんだか言動がキザでウザい。
博打「すまないが詳しい話は後だ、とりあえず今は手を貸してくれブラザー!」
勇者「嘘をつくな!僕は孤高の一人っ子だと聞いた!」
博打「いや、そういう意味のブラザーじゃ…。」
姫「ブラジャーが手を貸してくれるなんて初耳だよ。」
博打「き、キミの方が激しく勘違いしてるな姫ちゃんベイベー。」
姫「…試してみる価値は、ありそうだね。」
盗子「無いから!こんな所で外しちゃダメだから!乙女としての恥じらいを持って!」
博打「お、おお俺は別に気にしないぜベベベベイベー?」
勇者「…ぶばっ!(鼻血)」
盗子「む、ムッキィー! 死ねー!男なんかみんな死んじゃえー!!」

ロボA「(チラッ)」
ロボ達「(…コクッ)」

ボゴッ!ボゴスボゴスッ!!(殴)
盗子の願いは叶いかけた。

 

2-125:牢獄〔13歳:LEVEL17〕
油断した隙を突かれ、ロボ達にやられてしまった僕達。気づけば囚われていた。
ここは一体どこなんだろう?見た感じでは牢屋か何かのようだけど…誰の?
盗子「わーん!しこたま殴られたよー!男女平等にも程があるよー!!」
勇者「くっ…!僕としたことが戦闘中に油断してしまうなんて…!」
博打「仕方ないさブラザー…。ブラザーとブラジャーじゃブラザーに勝ち目は無い。」
勇者「…ハッ、そうだ!姫ちゃんは!?そこの看守!姫ちゃんは無事なのか!?」
看守ロボ「安心シロ。ロボトハ イエ、女ニ暴力ハ振ルワナイ。」
盗子「あ、アタシは!?ねぇアタシはなんで!?」
博打「いや、さっき普通に女を襲おうとしてたぜコイツら…?」
看守「ニンゲン コトバ ムツカシネ。」
盗子「ホントにロボなの!?そんな人間の卑しい部分までコピーする必要性は!?」
勇者「いいから答えてくれ!姫ちゃんをどこへやった!?」
看守「イヤ、ソノママ普通ニ食事シテタガ…?」
勇者「…彼女のド根性に乾杯したい。グラスを二つ…あ、お前の分も入れて三つ。」
盗子「今は乾杯とかしちゃう状況じゃないから!てゆーかアタシのぶん無くない!?」
博打「ところでこれから、俺達をどうするつもりなんだいエネミー?」
看守「黙ッテ待テ。全テハ我ラガ父…「ドクター・栗尾根(クリオネ)」ガ決メル。」
勇者「!! ど、ドクター・クリオネだって!?」
盗子「えっ!知ってるの勇者!?」

なんて珍妙な名前なんだ。
「勇者」が言うな。

 

2-126:一切〔13歳:LEVEL17〕
僕達を捕らえたロボの親玉は、「ドクター・栗尾根」という変な名前らしい。
さっきのロボの発言からして、この都市を支配してる黒幕に違いない。倒さないと。
盗子「ね、ねぇ勇者。なんとか逃げられないかな?看守はどっか行っちゃったし…。」
勇者「いや、親玉に会おう。僕らは殺されず生かされた…何か意味がありそうだ。」
博打「まぁ安心しなよ盗子ベイベー。いざとなったら俺が全員倒してやるぜ!」
盗子「無理だよ!アンタ雑魚じゃん!「勝負師」なのに素人よりも運弱いじゃん!」
博打「オイオイ、それは三年も前の話だろ?今や俺の予想的中率は100パーさ。」
盗子「えっ、この三年で何があったの!?いつの間にそんなに強く…」
博打「思った逆に賭ければ、バッチリだぜ!」
盗子「100パー外れるんじゃん!」
勇者「じゃあ一応お前は強いんだよね?なんでわざわざ僕の名を騙ったりしたの?」
博打「ギャンブルの世界に「守り」の文字は無くてね。仲間が必要だったのさ。」
勇者「なるほど、一切…一切ほかに頼れる友達が一切いないと。」
博打「いや、そんなに「一切」を強調されるとヘコむぜブラザー…。」
勇者「あ…ご、ごめん。何気ないんだ。」
博打「いや、そこは「悪気」を否定してくれないと全然フォローに…」

そんなこと言われても。
悪気はあった。

 

2-127:交渉〔13歳:LEVEL17〕
一時間ほど待たされた後、僕達はドクター栗尾根の部屋へと通された。
敵か味方か…それ次第では戦闘もやむを得ないけど、できれば穏便に済ませたい。
栗尾根「イヒヒ。よ、よよよく来たな小僧ども。こ殺さず生かしたのは他でもな…」
勇者「ありがちな前振りに付き合っている暇は無いんだ。本題に入ってほしい。」
栗尾根「くっ…うう噂通り無礼な小僧だ。よ、よしいいだろう。そ率直に言おうよ。」
博打「いや、「言おうよ」とか言われてもさドクター…。」
盗子(う~ん…。どっかで聞いたような口調だなぁこのお爺ちゃん…。)
栗尾根「い、言うぞ?言っちゃうぞ?ズバリ!!…ズバれば…ズバる時…?」
盗子「ズバれよ!! 自信なさげにもったいぶるなよ!いいからさっさと言って!」
栗尾根「うぅ…そそその~…「孫」を…孫を捜してほしいのだ。我が最愛の孫娘だ。」
勇者「…悪いけど、僕らにはもっと大きな役目があるんだ。関係無い仕事は…」
栗尾根「い、いや!ある!まま孫は「先輩」を追うと言って出て行ったそうじゃん!」
博打「先輩って…まさか「学園校」のかい?だがなんで俺達だと思うんだドクター?」
栗尾根「き貴様だ。以前、ま孫からき聞いた話にで出てきた奴に、よよよく似てる。」
盗子「えっ、アタシ!?何て言ってたの?あ、やっぱ「とっても可愛い☆」とか??」

栗尾根「ワキから茶を出すと。」
盗子「アタシじゃないからそれ!!」
栗子のトラウマだった。

 

2-128:捜索〔13歳:LEVEL17〕
ロボ博士に捜索を依頼された孫娘は、僕達の後輩だそうだ。メイガンも知っていた。
栗尾根「た、頼む!孫を捜してくれ!ささ最近、この街の近くで似た子供が…!」
勇者「断る。お前はこの都市を支配していると聞く。悪に手を貸すつもりは無いよ。」
博打(…ど、どうしちゃったんだブラザーは?何か悪いものでも食ったのか?)
盗子(ううん。むしろいいのを何発も食らったみたいでさ…。)
栗尾根「ち、ちち違うんだ!わワシではアイツらの暴走をと止められねぇでさぁ!」
勇者「暴走?でもさっきの感じだと、ロボはお前の言うことを聞きそうだけど?」
栗尾根「あ、ああ。確かに、聞く…だけ。」
盗子「ナメられてるんじゃん!ホントにアンタが作ったの!?」
栗尾根「い今では看守ロボや一部のロボしか、あ相手にしてくれん。 だが…!」
勇者「でも、孫なら食い止められる…そう言いたいんだね?」
栗尾根「うむ。あの子には、ふ不思議な力がああるのか、みんなし従うのだったよ。」
盗子「ん~。どうする勇者?断っても戦闘にはならなそうだけど。」
勇者「ロボを自在に操る女、栗子か…。探す価値はあるかも…しれないね。」

~その頃、近隣の「ルッシュ村」では…~
栗子「あの!す、すすすみません!えと、人を…人を捜したりしちゃってまして…!」
女「あら、人捜し? 誰を捜してるの?顔の分かる何か、持ってるかしら?」
栗子「あああの、その、ああ憧れの…その…先輩で…ち力になりたくて…その…。」
女「う~ん。でも写真も無いんじゃちょっとわからないわねぇ~。」
栗子「え、えと…えと…あっ!あ、アレです!あああんな感じですっ!」
栗子はチワワを指差した。

 

2-129:聞込〔13歳:LEVEL17〕
栗子を探すことにした僕達は、目撃情報があったという「ルッシュ村」へと向かった。
食事中だった姫ちゃんも戻ったけど、パーティーは4人…。人捜しには心もとない。
とりあえず手分けして捜すことにしよう。片っ端から聞き込みをして回るしかない。
たとえ時間はかかろうとも、引き受けたからには全うしなければ。「勇者」として!
勇者「えっと、人を捜してるんだけど…。」

栗子「は、はい…?」
一瞬だった。

 

2-130:人間〔13歳:LEVEL17〕
村に着き、最初に話しかけた少女…このアタフタっぷりはロボ博士に似てる。
栗子「うぇっ!?ゆ、ゆゆ勇者先輩!?何がどうしてどうなっちゃいましたか!?」
勇者「やっぱりお前が栗子だったか…。 オーイ!見つけたよみんなー!!」
栗子「え、「やっぱり」…?見てわわからない程に私は変わっちゃりましてか?」
盗子「あっ、栗子!? って早っ!普通こういう時ってもっとこう色々と…」
栗子「わー!!のの飲めません!い今はお茶菓子がきれてるんでそのっ!!」
盗子「誰が出すか!!どう見たって人間じゃん!茶菓子の前にアタシがキレるよ!」
勇者「…人間?」
盗子「失敬な!真顔で聞き返されると本気でヘコむから!」
博打「そうだぜブラザー。そりゃ多少ウザい所はあるが、人間は人間…」
盗子「うっさいよ!人間かどうかの話に「ウザさ」を持ってくる意味がわからないよ!」
姫「うざくたって いいじゃないか にんげん…だよね?」
盗子「人間だものー!!うわーん!!」

まったく…。話が進まないじゃないか。
勇者は〔転嫁〕を覚えた。

 

〔転嫁(てんか)〕
勇者:LEVEL20の魔法。(消費MP30)
責任やダメージの対象を別対象に移し変える魔法。よく政治家が秘書に使う。
 

 

2-131:新手〔13歳:LEVEL17〕
栗子を見つけたので、僕達はモレンシティへと戻ることにした。早い仕事だった。
栗子「そ、そうですか…。勇者先輩は記憶が混乱しまくりまくりんなんですか…。」
盗子「ところでさ、アンタは何で追ってきたわけ?誰に用があったのさ?」
栗子「うぇ!?いい言えませんですよ!け賢二先輩が気になるだなんてそんなっ!」
盗子「言ってる言ってる!これ以上ないほどに言っちゃってるから!」
姫「賢二君…いい子ちゃんだったのにね…。」
栗子「えっ、故人!?なぜに故人的扱いなんでありましょうか!?」
博打「まぁ気にするなよ栗子ベイベー、俺がいるさ。ホラ、街が見えてきたぜ?」
勇者「とりあえずロボ博士の元へ行こう。今後の話はその後…えっ!?」
勇者は街の異変に気づいた。
ロボの残骸が多数転がっている。
勇者「な、なんだコレは…!? オイそこのロボ!誰にやられたの!?オイ!」
ロボ「ホ…細身ノ魔剣…鉄仮面…ガキ…。ミンナ…一瞬…デ…。(ガクッ)」
栗子「わー!ろ、ロボットさーん!目ぇひんむいてくださいー!えーん!!」
盗子「いや、「ひんむけ」って…。 でも、一体誰がこんな…。ちょっと酷くない?」
勇者「何者かが動いている。脅威は…五錬邪だけじゃないのかもしれない。」

~その頃~
少年「どうでやんした「覇者(はしゃ)」の兄貴?腕試しの感触はどうで?」
鉄仮面「うむ。まだ少し慣れんが、だいぶ掴めた感はある。秒殺だったよ。」
少年「さっすが「魔神の剣」でやんすね。どうです?アッシらだけで攻めやすかい?」
鉄仮面「焦るな「門太(モンタ)」、まだ早い。 ”奴”の元へ戻るぞ。」
勇者の勘は当たっていた。

 

2-132:密偵〔13歳:LEVEL17〕
街に戻ると、ロボ軍はほぼ全滅していた。鉄仮面の少年…果たして敵か味方か。
でもまぁとりあえず、結果的には街は解放されたわけだし、今回は良しとしよう。
勇者「約束通り、栗子は見つけてきたよ。ま、制御すべきロボはもういないけど。」
栗尾根「お、おおおっ!さ捜したぞ!お前がカクリを出たと聞いてかからもう…!」
栗子「わっ!くく苦しいですお爺ちゃん!あ、あと言いにくいけどお口臭いッス!」
勇者「…じゃ、僕らはもう行くよ。戦士の世界に「安息」の文字は無いんでね。」
博打「だね…って、どこへだっけ?そういや俺はキミらの目的を知らないんだ。」
勇者「ん?そうだったっけ? すまないけどビッチ、説明を頼めるか?」
盗子「ホントにすまないって思うなら名前覚えてよ!ムキィー!」
盗子は渋々状況を説明した。
栗子「ふぇ~。な、なんか不自然なぐらいそ壮大なお話になっちゃりますねぇ~。」
博打「ふ~ん。で?何か有力な手掛かりとかあったのかい盗子ベイベー?」
盗子「あ~。一応それっぽい地図は持ってんだけどさ、古代文字が読めなくて…。」
勇者「だから、とりあえず今は五錬邪を追ってるんだよ。他にアテが無くてね。」
博打「なら…「ローゲ王都」に行かないかブラザー?前に面白い話を聞いたんだ。」
姫「じゃあ私がツッコミを担当するよ。頑張って引き立てるよ。」
博打「いや、そういう面白さを語る気は無いんだ姫ちゃんベイベー…。」
勇者「面白い話…どういう話なの?」
博打「胡散臭くもあったがね。「邪神:バキ」封印の地…その謎がどうとかさぁ。」
盗子「じゃ、邪神!?マズいよ勇者!もし先に五錬邪が見つけちゃったら…!」
勇者「わかった急ごう。絶対に奴らよりも先に…むっ!?誰かいる!!」
博打「…そこかっ!!」
博打はトランプを投げた。

盗子の額に命中した。

 

2-133:音速〔13歳:LEVEL17〕
微かに感じた誰かの気配。でも博打の攻撃は失敗…多分逃げられたと思う。
盗子「うっぎゃー!! 痛い!痛いよ!アタシが何したってんだよー!」
博打「す、すまない盗子ベイベー!柱の陰に誰か居たから俺は…!」
盗子「柱って逆方向じゃん!なんで180度投げ損ねられるのかを知りたいよ!」
勇者「もういない…逃げられたね。五錬邪一派の可能性もある、今すぐ向かおう!」
博打「ま、マジで?かなり遠いぜ?何十日…いや、歩きじゃ何ヶ月かかるか…。」
栗尾根「なならばアレに乗ってい行くがいい。わ我が自信作、「音速車」だい。」
〔音速車〕
ドクター栗尾根が完全機械制御化に成功した、超高性能小型車。
対障害物センサー搭載で、安全な走行が可能となっている。
最高速度は確かに速いが、「音速」と呼ぶのは調子に乗りすぎだ。
勇者「いや、悪いけど遠慮するよ。乗り物には悪い思い出があってね。」
栗子「だ、だだ大丈夫ですよ!わ私がご一緒しまうまっすから!整備ししますから!」
栗尾根「なっ!な何言ってるんだ!そそんな危険な場所行くなんてバカだけだぞ!」
勇者「それは…僕らへの「挑戦状」と受け取ってもいいのかなジイさん?」
栗尾根「あ゛。」
栗子「わ私は平気だから!お願いだから行かせちゃってよお爺ちゃん!お願い!」
栗尾根「・・・・・・・・。」

姫「…わかったよ。行きなさい。」
栗尾根「わかっ…って、えぇっ!?」
姫はジイさんの見せ場をかっさらった。

 

2-134:報告〔13歳:LEVEL17〕
目的地も決まり、急がなきゃならない理由もできた。早いとこ出発しなければ。
勇者「さぁみんな、早速出発するよ。準備はいい?栗子もいけそうな感じ?」
栗子「えっ!?は、ははハイ!じ人生は冒険だと思いますよっ!!」
盗子「どういう意味!?「逝けそう」なの!?もしかして「逝けそうな感じ」なの!?」
博打「ま、まぁ諦めようぜ盗子ベイベー。急ぐためには他に手は無さそうだし。」
勇者「博打の言うとおりだよボンゴレ、もっと落ち着いて。 ホラ、姫ちゃんを見なよ。」

姫「このネジは…いいよね?」
栗子「わー!どどどれも抜いちゃダメでちゅよー!!」
勇者は不安になった。
~その頃、五錬邪のアジトでは…~
兵士「赤錬邪様!勇者一行を見張らせていた密偵から、電報が入りました!」
赤錬邪「む?あのガキどもがどうかしたのか? よし、五・七・五で伝えろ!」
兵士「えぇっ!?は、ハイ!その…ローゲ国・神の手掛かり・あるのかも!」
赤錬邪「わかりづらい。」
兵士「そ、そんなっ!」
赤錬邪「ローゲか…桃錬邪が近いな。 すぐに伝えろ、奴らより先に入手しろとな!」
兵士「…は、ハッ!」
その晩兵士は悔しくて泣いた。

 

2-135:順調〔13歳:LEVEL17〕
モレンシティを発ち、三日が経った。今のところ意外にも快調に進んでいる。
ロボ博士の計算が確かなら、もうじき「ローゲ王都」に着く頃だと思うんだけど…。
勇者「だいぶ走ったね…。見たところ順調そうだけど、調子はどうなの栗子?」
栗子「じゅ、順調ですよ!とととてもブレーキが壊れてから五時間とは思えませぬ!」
盗子「えぇっ!?全然順調じゃないじゃん!ここまで来れたのが奇跡なんじゃん!」
博打「違うぜベイベー。「奇跡」ってのは不幸じゃない、幸せのために起こるのさ。」
盗子「今はそんなキザなセリフが意味を成す状況じゃないから!」
姫「あ~、今のはキマッたね博打君。なかなかヤルね。」
博打「フッ、照れるぜ姫ちゃんベイベー。褒めたって何も出ないぜ?」
姫「…と、見せかけて?」
栗子「わー!ののの飲めませんですー!!」
盗子「なんでアタシを見んのさ!?出さないってばっ!!」
だがスピードは出まくってる。

 

2-136:王都〔13歳:LEVEL17〕
ブレーキが壊れたまま、さらに走ること一時間。王都っぽい大都市が見えてきた。
このギマイ大陸は一国統治。だから一応、ローゲ国内にはずっと居たことになる。
でもやはり、「王都」となると何かが違う。かもし出す雰囲気というか、なんというか。
僕は王都に来たのは初めてなのだろうか?それとも他国ではあったのだろうか?
王様に頼まれ、ドラゴン的な何かを狩りに行ったこととかあったのだろうか?
偉そうな王様に、「死んでしまうとは情けない!」とか言われたりしたのだろうか?

そんなことを考えながら僕は、遠ざかる王都を眺めていた。
誰も何も言えなかった。

 

2-137:省略〔13歳:LEVEL17〕
結局、制御機能を無理矢理壊してなんとか止まることができたのは数時間後。
車は外壁に激突し、みんな重傷。その後、歩いて戻ったら一日かかってしまった。
やっぱり乗り物は怖い。でも、今回はまだマシだったと安心した自分がもっと怖い。
勇者「…というわけで、この扉を開ければ多分「王の間」になるわけだけど…。」
盗子「どういうわけで!?なんかメッチャはしょってない!?話飛び過ぎだよ!?」
姫「ページの都合だよ。」
盗子「なんだよそれ!わけわかんないし仮にそうでもそれは言っちゃダメだよ!」
姫「ぶっちゃけ説明が面倒なんだよ。」
盗子「それはもっと言っちゃダメだよ!」
勇者「仕方ない…。じゃあ栗子、ここに至るまでの経緯を簡単に説明してあげて。」
栗子「えぇっ!?えと、とりあえず邪神の王様が知る手掛かりが旅のセオリーで!」
盗子「むしろ難解になっちゃってるから!王様が邪神扱いになってるから!」
博打「神の手掛かり…こういう思わせぶりな情報は大抵キングが知ってるもんさ。」
盗子「だ、だからって許可も取らずに不法侵入はどうかと思うけど…。」
勇者「事態は急を要する。 不法侵入なんて、後で話せばわかってもらえるさ。」
盗子「ん~、まぁそっか。そだよね。」
勇者は父の過去を知らない。

 

2-138:異変〔13歳:LEVEL17〕
王は何かを知っていると思う。でも、僕らがここへ来たわけはそれだけじゃなかった。
一見何事も無いように見えた街の空気は、何かがおかしかった。静かすぎたんだ。
気になって王宮まで来てみたんだけど、兵士の一人も見かけない。明らかに変だ。
勇者「僕の読みに間違いが無ければ、この中で何かが起こっているはずだ。」
姫「大丈夫だよ勇者君、謝ればきっと許してくれるよ。」
盗子「誰も怒ってないから!そういう意味じゃな…」
声1(「貴様ぁー!ブッ殺してやるーー!!」)
盗子「わー!怒ってるぅー!!」
勇者「良かった、まだ生きてる奴がいる!さぁ、すぐに助太刀に向かうよ!」
声2(「や、ヤメろ!ヤメてくれ!も…桃錬邪様ぁああああ!!」)
声3(「ギャアアアアアアアアアアッ!!」)
勇者「なっ…!?」
盗子「えっ、桃錬邪様!?どういうこと!?仲間割れか何かってこと!?」
博打「どうするブラザー?同士討ち希望なら待つのもアリだぜ?」
勇者「行くに決まってる!誰であれ、無駄な血は流させちゃいけないんだ!!」
勇者は扉を開けた。

血に染まった桃錬邪が見えた。

 

2-139:侵略〔13歳:LEVEL17〕
中から聞こえた悲鳴。慌てて扉を開けると、そこには血まみれ桃錬邪がいた。
でも、それは返り血などではなく、彼女自身の血で…既にグッタリとしていた。
勇者「ど、どうしたんだ!?お前は桃錬邪なのか!?それとも赤錬邪か!?」
盗子「勇者!この状況でその問いはシャレんなんないよ!」
栗子「はわわわ!へ兵隊さんもみなさん血祭りワッショイショイですよぉ…!」
桃錬邪「う゛…はっ…!…初代…や、凱空のガキ…か。 …逃げな、勝てない…。」
勇者「か、勝てないって誰に!?というか逃げろって…お前は敵なんだよね!?」
桃錬邪「フッ…死に際ぐらい…正気に戻るさ…。だから早く…”奴”が来る前に…!」
声「なんでぇ…ここぁ随分と客の多い王室だなぁオイ。おちおち便所にも行けねぇ。」
一同「!!?」
桃錬邪「チッ…グズどもが…!」
勇者「だ、誰だお前は!?お前なのかこんなことしたのは!?」
男「あん?先に仕掛けたのはそっちだぜぇ?ま、先に居たのもそっちだったがなぁ。」
博打「ゆ、ユーの目的は何だい?できればキツい争いは避けたいんだが…。」
男「ククッ、目的は話すと長ぇ。だが俺様の趣味が「皆殺し」ってのは教えてやるよ。」
盗子「わーん!先生とわかり合えそうな人が出てきたよー!悪魔が来たよー!」
勇者「…そう、なら仕方ない。この「勇者」が、正義の名のもとに貴様を倒す!!」
男「勇…者?ギャハハハ!傑作だ、この星にゃまだそんなのが居たたぁな!」
勇者「こ、「この星」…?お前は一体何者なんだ!?」

男「俺様か?俺様は「ソボー」。悪ぃが「宇宙海賊」の正義は、この俺様自身だ。」
賢二のせいで来たっぽい。

 

2-140:生変〔13歳:LEVEL17〕
桃錬邪の軍をアッサリ滅ぼした、新たなる敵「海賊:ソボー」。とっても偉そうな奴だ。
盗子「ど、どうしよう勇者!前に賢二が言ってたよ、超有名な極悪人だって!」
勇者「でも海賊が…単身で?しかも街を襲った様子が無かったけど…。」
ソボー「たまにはのんびり、一人旅もいいもんだ。まぁ街は見飽きたら消すがなぁ。」
博打「強者ゆえの余裕か…だがそんなのはこの俺が許さないぜキャプテン?」
ソボー「…あ゛?」
博打「ぐっ!ま、まさかこんな時に持病の「深爪」が…!」
盗子「肝心な時には昔のまんまかよ!ちょっと期待したアタシがバカだったよ!」
博打「ち、違う!違うぜ!俺は昔の俺じゃない…いくぜ「ロシ銃・ルーレット」!!」
〔ロシ銃(ガン)・ルーレット〕
具現化した銃で、自分と相手を交互に撃つ。
弾を何発込めるかによって、その威力は変わってくる。
リスクを背負った技なため、与えるダメージはそれなりに大きい。
盗子「な、なんかヤバそうな技じゃない!?大丈夫なのアンタ!?」
博打「言ったろベイベー?思った逆に賭ければ、俺の読みは100%当たると!」

ズガガァン!!
(撃)
博打はパタリと倒れた。

 

2-141:職業〔13歳:LEVEL17〕
博打は一撃で倒れた。でもおかしい、確かに彼は敵に向けて撃ったのに…なぜ?
博打「ぐっ…はっ…!!」
勇者「だ、大丈夫か博打!?しっかりして! どうなの姫ちゃん、助かりそう!?」
姫「…午前中です。」
博打「そ、それを言うなら「ご臨終」…って、まだ生きてるから…回復を…。」
ソボー「ロシ銃か…なかなか面白ぇ技だなぁコレぁ。ありがたく頂いとくぜぇ。」
栗子「えぇっ!?なななんで海賊さんが同じ銃を持っちゃってはりますか!?」
勇者「それに「頂く」って…まさかそれで打ち返したっていうのか!?」
盗子「ハッ!もしかして宿敵と同じ「好敵手」ってヤツ!?「海賊」じゃないの!?」
ソボー「あ?「宇宙海賊」ってなぁただの肩書きだ。俺様の真の職は「技盗士」よぉ。」
〔技盗士(ぎとうし)〕
対峙する相手の技を盗み、自分の物にすることができる上級職。
「好敵手」が「反射」なら、「技盗士」は「記憶」の職である。
勇者「…だ、大丈夫!この僕が本気を出せば、どんな敵だっておっちょこちょいだ!」
盗子「「ちょちょいのちょい」だよね!?てゆーかアンタ確か剣も抜けないんじゃ…。」
勇者「フッ、抜かりは無いよ。前の街で新しい武器を買っ…って宿に忘れてきた!」
勇者はおっちょこちょいだった。

 

2-142:味方〔13歳:LEVEL17〕
せっかく武器を買ったのに、なんと忘れてきてしまった。結構高かったのに…!
勇者「くっ…!思い切ってリンダの腕輪を質に入れたというのに…!」
盗子「え゛ーっ!?なにしてくれちゃってんのさアンタ!後で殺すよ!?」
栗子「わわ、私がななんとかしちゃいますよ!出ればいいのさ「機関土偶」!!」
〔機関土偶(カラクリどぐう)〕
その場の土からカラクリ人形を作り出す。
材質は土なので、雨が降ると面白いことになる。
土偶「ポポ…ポポパポポプパポ…。」
ソボー「弱そうな奴だな…。だが「技盗士」は「コピー」じゃねぇ、俺様が使えば…。」
土偶2「ギョガー!ギギャゴゴグガー!」
栗子「わー!もももっと強そうなお方がご登場ですかー!?」
盗子「や、ヤバいよ勇者!コイツなんでもアリだよ!」
姫「とんでもない敵だね。」
盗子「アンタの方がなんでもアリだけどね!」
勇者「やはり僕がやるしか無さそうだね。博打、その剣を借りるよ。」
盗子「だ、ダメだよ戦っちゃ!下手したら使った技盗まれちゃうんだよ!?」
勇者「安心しろアポカリプス、僕は記憶喪失…技なんて覚えてない。」
盗子「もっと不安なこと言わないでよ!」
勇者「だ、大丈夫。こういう時は、頼もしい味方が現れるのが世の常だよ。」
盗子「んな他力本願な「勇者」なんて聞いたことないよ!それにそんな都合よく…」
ソボー「いや、そうでもないみたいだぜぇ? 誰だよ、そこに居るのはぁ?」
盗子「えっ…?」
声「…ほぉ、まさか気づかれておったとはなぁ。油断したわ。」
盗子「わー!? そ、その声はまさか…!!」
ソボー「名を名乗れよ。覚える気ぁサラサラ無ぇが、聞くだけ聞いといてやるわ。」

スイカ「フンッ、弱者に名乗るスイカは無いな。」
喜んでいいのか悪いのか。

 

2-143:開戦〔13歳:LEVEL17〕
ピンチに現れたのは頭がスイカな変な人で、またもやバーバラの知り合いらしい。
前の先生な人は強かったけど、この人はアテにならなそう。というか敵っぽい。
勇者「み、見るからに怪しい人め!何しに来たんだ!?お前は敵なのか!?」
スイカ「我はスイカを砕きし者。荒ぶるスイカ魂に導かれ、やって来たのだ。」
ソボー「この俺様に気づかれず、こんな近くまで来るたぁテメェなかなかヤルなぁ?」
スイカ「フッ、割られぬために気配を殺す…それがスイカの本能よ。」
盗子「どっちなんだよ!割る側なのか割られる側なのかハッキリしてよ!」
ソボー「ターゲット変更だ。テメェの技はうまそうだぜ。」
姫「残念だけどまだ旬じゃないよ。」
盗子「スイカの話じゃないから!まぁ気持ちはわかるけども!」
スイカ「己が力に溺れし者よ。その邪なスイカ、我が棍棒がサビにしてくれよう。」
ソボー「ケッ、偉そうだよテメェ!焼きスイカにしてやるぁ!火炎魔法〔炎殺〕!!」
スイカ「甘いわぁ!スイカ流棒術、「猛烈バックドロップ」!!」

ガキィイン!!
効果音がおかしい。

 

〔炎殺(えんさつ)〕
魔法士:LEVEL35の魔法。(消費MP33)
敵一体を取り巻き焼き殺す炎の魔法。焼きが足りないと客からクレームがくる。
 

 

2-144:展開〔13歳:LEVEL17〕
意外にもスイカの人は強く、二人の強さは拮抗していた。全く展開が見えない。
二人「うぉおおおおおおああああああっ!!」
キィイイン!
ガキィィン!
ザシュッ!
ズバッ!!
キィン!
ギッ、ギギギギィ…!
チュィン!

ズォオオオオオッ!
ササッ!
ダンッ!
ガィイイイン!!
キン!キン!カキン!キュィン!

ズバシュッ!!
いろんな意味で展開が見えない。

 

2-145:変態〔13歳:LEVEL17〕
二人の戦闘は小一時間ほど続いたけど、まだ終わりが見えない。僕の出番が無い。
勇者「あのスイカの人…敵だったんだよね?前からあんなに強かったの?」
盗子「う、ううん。よくわかんない。でもとりあえずインパクトは無駄に強すぎたよ。」
栗子「あっ、なななんか様子が変わりやがりましたよ!どどうしたでしょか!?」
二人の動きが止まっている。
ソボー「…なぁオイ、ぼちぼち遊びはヤメにしねぇか?カタぁつけようやぁ。」
スイカ「いいだろう、望み通り本気で参ろう。でなくばヌシのスイカは砕けまい。」
ソボー「ったく、この俺様に技ぁ盗む隙を与えねぇたぁ…厄介な変態野郎だぜぇ。」
スイカ「フッ、コチラこそ先程の非礼を詫びよう。久しく見ぬ強きスイカよ。」
ソボー「おっと、ならいい加減名乗りやがれよ変態。 俺様はソボーだ。」
スイカ「…剣を棒に持ち替えて、幾年月…。 今一度思い出すか…」

スイカ「「剣豪:秋臼(アキウス)」、そう呼ばれたあの頃をな。」
歴史上の偉人は変態だった。

 

2-146:手助〔13歳:LEVEL17〕
なんと、あのスイカ男は過去の英雄だったらしい…んだけど、とてもそうは見えない。
盗子「ガッカリだよ!勇者親父といい、なんで伝説の戦士は変人ばっかなんだよ!」
勇者「すまない栗子、弁護士を手配してくれ。」
盗子「冷静に怒んないでよ!なんか切なくなるよ!」
栗子「そそそんなことより助太刀した方がよくなくなかったりしませんですか?」
盗子「あっ、そだよね!いま五分五分なんだから手助けすれば絶対勝ちだよね!」
姫「じゃあ私がなんとかするよ。勇者君、目隠しある?」
盗子「どっちの味方する気だよ!アンタ思っきし割る気じゃん!」
勇者「でも手助けとは言っても、あのスピードについていける人間なんて…」
桃錬邪「こ…ここにいる…じゃないか。アタシに、任せな。」
勇者「も、桃錬邪!?でもお前は…!」
桃錬邪「フッ…、せめてもの罪滅ぼしさ。凱空にも…悪かったって伝えといてよ。」
姫「ダメだよ桃ちゃん。いま動くと死んじゃうよ。」
勇者「行っちゃダメだ桃錬邪!正気に戻ったんなら、生きて罪を償えばいいさ!」
栗子「そそそうですよ!ホントに悪いのはく黒幕の人とかなんですよね!?」
盗子「死んじゃったら終わりなんだよ!?無理はしちゃダメだよ!」
桃錬邪「アタシは、本気なんだ。」
勇者「桃錬邪!!」

桃錬邪「でも…そこまで言うなら。」
一同(あ、あれれっ!?)
桃錬邪は期待を裏切った。

 

2-147:空気〔13歳:LEVEL17〕
止めても行くのかと思ったら、結構アッサリと思いとどまっちゃった桃錬邪。
やはり僕が行くしかなさそうだ。死ぬかもしれないけど、挑むのが「勇者」だと思う。
勇者「というわけで、いい加減僕が活躍してもいい頃だと思う!みんな援護して!」
盗子「そうだよね頑張ってよ勇者!アンタ最近サボり過ぎだよ!」
勇者「確かに記憶を失って以来、僕は何もしていない。でも今日は…(ブォッ!)」
魔法弾が勇者の頬をかすめた。
勇者「…今日は、これで勘弁してやる。」
盗子「どれでだよ!?アンタ記憶と一緒に度胸まで忘れちゃったの!?」
勇者「ふ、フザけるな!お前のことは忘れても度胸は忘れないよ僕は!」
盗子「アンタこそフザけるなよ!アタシのことだけは死んでも忘れないでよ!」
栗子「ちょ、チョイとお待ちあれ!またお二人が止まりやがったですよっ!」

ソボー「・・・・・・・・。」
ヒュゥゥウウウウ…(風)
スイカ「・・・・・・・・。」

盗子「わっ!なんかシリアスモードだよ!状況と絵が合ってないよ!」
勇者「シッ!この勝負…次に動いた瞬間に決まる。空気を乱しちゃダメだ。」
姫「そうだよ盗子ちゃん。ちょっとのキッカケでまた動きdへっくち!」

ス&ソ「うぉおおおおおおおおおお!!」
姫がGOサインを出した。

 

2-148:決着〔13歳:LEVEL17〕
姫ちゃんが出したキッカケで二人は動き出した。これが最後の攻防になると思う。
スイカ「食らうがいい!「刀神流操剣術」…」
ソボー「死ねぇ!「蛇頭剣技」…」
スイカ「百の秘剣、「百刀霧散剣」!!」
ソボー「あーあー…、名前なんだっけ!!」
ズバシュッ!!(斬)
盗子「えっ、なに今の!?肝心な場面を適当にやっちゃった!?」
栗子「でででもヤバいッスよ!スイカさんが斬られちゃりましたですわ!」
スイカ「ぐっ、不覚…!やはり歳には勝てぬか…!」
姫「やっぱり鮮度の問題だね。」
ソボー「ギャハハ!これで終わりだぁー!…なっ、何しやがる放しやがれっ!」
桃錬邪がソボーを掴んでいる。
桃錬邪「こう見えてアタシ寂しがりでね。悪いけど…一緒に死んでくれるか?」
勇者「も、桃錬邪!?お前いつの間に…!」
スイカ「悪く思うなよ女、ワシとて桃を割るのは趣味ではないが…好機は逃せん!」
ソボー「ち、チクショウがぁあああああっ!!」

ズババババシュッ!!(連斬)
スイカ割り魔人、会心の一撃。
桃錬邪ごとソボーを切り裂いた。

 

2-149:遺志〔13歳:LEVEL17〕
桃錬邪が命懸けでソボーを押さえつけ、なんとかソボーを撃破することができた。
ソボー「お…覚えてろテメェらぁ…。いつか、必ず、ブッ殺…グフッ!」
勇者「なんて奴だ、あれだけの技を食らってまだ息があるなんて…。」
スイカ「フッ、峰打ちだ。」
盗子「嘘じゃん!これでもかってくらい斬ってたじゃん!」
桃錬邪「ぶふっ…!ハァ、ハァ…。ヘッ、やって…やったぜチクショウが…。」
姫「喋っちゃダメだよ桃ちゃん。もうじき助けが来るよ。」
栗子「姫ちゃん先輩は!?せ先輩にしか回復はできないような気が…!」
桃錬邪「凱空に…伝えてくれ…「”奴”に気をつけろ」…て…さ…。(ガクッ)」
栗子「も桃錬邪さん!?”奴”って誰で!?肝心な部分がオブラートに包まれれ!」
桃錬邪は思わせぶって逝った。
勇者「桃錬邪は…ダメだったか…。せっかく正気に戻ったみたいだったのに…。」
姫「とっても悲しいよ。だから…桃ちゃんの遺志は私が届けるよ。」
勇者「彼女は最期に何て?」
姫「勇者君…。」

姫「今日のオヤツは、要らないよ。」
姫は聞き違えていた。

 

2-150:発見〔13歳:LEVEL17〕
ソボーは気絶し、そして桃錬邪は旅立った。犠牲はあったけど僕らの勝ちだ。
勇者「終わったね…。 さぁ、本来の目的は王だ。早く捜して話を聞こうよ。」
盗子「あっ、でもまだ油断はできないよ!このスイカ、いつも喧嘩売ってくるし…!」
スイカ「フン、安心しろ。ワシが求めるは強きスイカのみ…今のヌシに興味は無い。」
勇者「なっ!?どういう意味だ!?この僕が雑魚だとでも…!?」
バンッ!(扉)
兵士A「貴様らぁ!この「王の間」で何をしている!?な、なんだこの血の海は!?」
兵士B「オイ見ろ!あそこに国王様が倒れてるぞ!早く救護班を!」
スイカ「おぉ、兵士どもか。ちょうど良い、このスイ海賊の始末は任せるぞ。」
兵士A「う、動くな!この見るからに怪しい奴め!」
スイカ「ぬ?」
盗子「…まぁコレが人として当たり前のリアクションだよね。」
スイカ「やれやれ、これだからスイカの多い街は好かん。 帰るとするかな。」
勇者「ま、待て!さっきの言葉を撤回するんだ!」
スイカ「焦るな弱きスイカよ。いずれヌシも、全てを知ることとなろう。ガッハッハー!」
スイカは窓の外に消えていった。
勇者「くっ、逃げられた!」
兵士A「集えー!衛兵、集まれー!!」

しかも、この状況で。
勇者は逃げ出した。

 

2-151:影者〔13歳:LEVEL17〕
言い訳の言葉が見つからなかったので、僕らはそそくさと逃げ出すことにした。
ソボー達が倒したのか他には衛兵がいなかったようで、うまく逃げることができた。
勇者「ふぅ~。脱出には成功したけど…また振り出しに戻っちゃったね。」
栗子「ややっぱり例の「邪神の地図」を解読しまくりまくるしかないんでしょかね?」
老人「邪神の地図ぅ?お前さんらまさか、あの伝説の地図を持っておるのかね?」
盗子「わっ、なんだよお爺ちゃん!急に出て来て普通に参加しないでよ!誰!?」
老人「こう見えても私ぁ「国王」じゃ。頭が高いとか高くないとか。」
盗子「えっ!?でも国王ってさっき上の部屋で倒れてた人だよね!?」
国王「そりゃ影武者じゃ。で?ホントに持っとるのかな?力になれるやもしれんぞ。」
盗子「あるにはあるけど…半分だけだし解読方法も全くわかんないんだけどね~。」
国王「あ~、「血」じゃよ。人の血に浸せば、地図に点が記されるという話じゃて。」
勇者「なっ!?じゃあ半分でもそっちに点があれば用を成すんじゃないか!」
盗子「じゃ、じゃあ早速試してみなくちゃだね! あっ、でも血は…?」
勇者「まさか…こんな形で別れることになるなんて…。(チラッ)」
盗子「なんでアタシを見てんの!?」
というか致死量は要らない。

 

2-152:紛失〔13歳:LEVEL17〕
やけに普通に現れた国王から、なかなか有力な話を聞くことができた。
勇者「仕方ないから血は僕が少し出そう。早く地図を出してよブルックリン。」
盗子「あっ、うん。わかってるんだけど…その…あれ?なんで無いの?あれっ!?」
姫「…そんなにお腹すいてたの?」
盗子「食べて無いから! えー!なんでー!?この前までは確かにあったのにー!」
栗子「そ、そういえばさっきから博打先輩が見えないような気がしないでもなく…。」
勇者「なにっ!?ま、まさか…!」

~その頃~
博打「フッ、相変わらず甘いベイベー達だ。余裕でミッション・コンプリートだぜ。」
密偵「さすがです博打様。そして先日はありがとうございました。」
博打「まぁ気にするなブラザー。さ、とっとと上に報告するがいいさ。そして行こう。」
博打は裏切り者だった。
~そして、五錬邪のアジトでは…~
兵士「赤錬邪様!勇者一行を見張らせていた密偵から、電報が入りました!」
赤錬邪「む?あのガキどもがどうかしたのか? よし、Hip Hop調で伝えろ!」
兵士「えぇっ!?は、ハイ!その…Hey Yo!地図にアクセス!結果はサクセス!」
赤錬邪「わかりづらい。」
兵士「そ、そんなっ!」
赤錬邪「そうか、やっと地図が…。 よし、皆を集めろ!最終段階に入るぞ!」
兵士「…は、ハッ!」
その晩兵士は実家に電話した。

 

2-153:再会〔13歳:LEVEL17〕
恐らくは博打の裏切りにより、僕らは手掛かりを失ってしまった。なんてことだろう。
こうなったらやはり、奴らのアジトに向かうしかない。何らかの動きがあるはずだ。
勇者「まだ博打が逃げて間もない。急いで五錬邪のアジト方面に急ごう!」
国王「五錬邪か…。確かタケブ大陸の入口、「シジャン王国」を乗っ取ったとか…。」
栗子「し、ししシジャンなら頑張れば夏頃には着きますですよ!急ぎましょ!」
盗子「あのさお爺ちゃん、タケブ大陸ってどう行けばいいのか知ってる?」
国王「北へ向かうがよい。北の「終末の丘」…その先にタケブに繋がる港がある。」
勇者「終末の…丘? なんか、前にどこかで聞いたような気が…。」

~その頃、噂の「終末の丘」では…~

父「母さん…随分と久しぶりになってしまったな。悪かったと思っている。」
黒錬邪「大丈夫、気にしてない。」
父「いや、今のはお前にじゃなくて墓に向かってだなぁ…。」
黒錬邪「息子にこの地のことは話したのか?噂じゃ今はローゲ国にいるようだが。」
父「一応な。まぁ記憶が戻れば来るだろう。ローゲからなら多分、夏前には…」
声「そうか、アイツが来るのは夏か。」
黒錬邪「!?」
父「なっ、その声は…!なぜお前が…!?」

鉄仮面「フッ。 久しぶりだな、親父。」
親父には隠し子がいたのか。

 

2-154:才能〔13歳:LEVEL17〕
ローゲ国王に言われた通り、僕達は「終末の丘」という地を目指すことにした。
聞いたことのある地名だ。もしかしたら、僕の記憶を呼び覚ます鍵があるのかも…。
勇者「今回は乗り物は使わないよ。急がば回れだ。」
姫「甘いね勇者君。私は急いでらくても回られられ。」
盗子「嘘つくなよのんびり屋!てゆーかまずロレツが回ってないよ!」
栗子「でででも先輩方、こんな地図ごときだけで行けちゃいますかねぇ?」
声「大丈夫、この先の道は俺に任せてくれよ。」
盗子「え…? あっ、アンタは確か前に…!」

マジーン「また会ったな勇者。そろそろ来る頃だと思ってたぜ。」
マジーンが現れた。
勇者「お前も…僕の知り合いなのか?でもゴメン、名前も覚えてないんだ…。」
マジーン「き、記憶喪失!?マジかよ…。 ま、まぁいいさ、気にするなよ。」
勇者「いつか必ず思い出すよ。だから待っててくれ、えっと…じゃあ「マジーン」で。」
ネーミングセンスは固定だった。

 

2-155:到着〔13歳:LEVEL17〕
再会したマジーンは極度の方向音痴で、僕達は何度も道に迷わされた。
途中からは無視して進み、おかげでなんとか夏前に「終末の丘」に到着できた。
勇者「まったく…。お前がいなければもっと早く着けていたような気がするよ。」
マジーン「す、すまねぇ…。今度こそはイケると思ったんだが…その…。」
盗子「にしてもさ、なんか随分荒れ果てた所だね~。一帯がボロボロじゃん。」
勇者「何かわけありっぽいね、聞いてみようか。 ねぇ婆さん、ちょっといい?」
老婆「あ~、少し前のことですわ。それはもう、激しい戦いがあったんですわ。」
盗子「まだ聞いてないよ!?先走るのは人生だけにしてほしいよ!」
栗子「たたた戦いでなんスか!?丘を全壊させちゃうなんてなんてハタ迷惑な…。」
老婆「黒装束と鉄仮面…いかにも怪しげな二人が暴れて、こうなったのですわ。」
盗子「鉄仮面!?それって前にロボ軍を全滅させたっていう奴じゃない!?」
勇者「それに黒装束って…まさか黒錬邪!?じゃあ父さんは一体…!?」
老婆「あぁ、そういやその近くで胸を刺された男が…」
勇者「なっ!?そ、そんなバカな…!」

老婆「普通に漫画読んどりましたわ。」
勇者「それこそバカなっ!!」
シリアス感が一気に薄れた。

 

2-156:血縁〔13歳:LEVEL17〕
僕らがローゲ王国を発った頃、この丘には父さんと愉快な強敵達がいたらしい。
勇者「そ、それで!?最終的にその戦いはどうなったの婆さん!?」
老婆「あ~、その後「警察士」らが来てゴチャゴチャやっとる間に消えとりましたわ。」
栗子「けけ警察屋さんが動くなんて…。みなさん捕まっちゃったんでしょかねぇ?」
老婆「ところでアンタらは何?こんな寂れた丘に何の用で来なすったん?」
勇者「悪党を倒しにタケブへ行くんだ。僕の中の「勇者」の血に導かれてね。」
盗子「まぁ主に受け継いだのは「魔王」の血だけどね。」
老婆「!? も、もしやアンタは前魔王…あの子の…「終(おわり)」の息子かい!?」
勇者「僕は記憶喪失。そんなこと聞かれても思い出せない。」
盗子「いい加減思い出せよ!アンタは元魔王の子で、アタシは「盗子」なの!」
勇者「…そうか、僕はホントに魔王の子なんだね…。」
盗子「あ…ま、まぁ思い出せないのはしょうがないよね。これから覚えていこうよ☆」

勇者「ありがとう、パブロ。」
盗子「うわーん!!」
勇者もいい加減しつこい。

 

2-157:現実〔13歳:LEVEL17〕
どうやら僕は、本当に魔王だった女の子供らしい。さすがにショックは大きい。
でも揺るがない事実なら今さら騒いでもしょうがない。気にしないことにしよう。
勇者「ところで婆さん、さっき「あの子」とか言ってたけど…母さんと知り合いなの?」
老婆「!! …わ、ワシぁ、何も知らん。何も知らんですわ。」
姫「月日の流れは残酷だよね。」
盗子「そんな急にはボケないから!なんかわけありでしらばっくれてるだけだよ!」
老婆「ほ、ホレ。お探しの港はこっちですわ。早く行くがいいですわ。」
マジーン「オーイ勇者ぁ、あっちになんか村があるぜ?メシにしようや。」
老婆「い、イカン!終のせがれはダメですわ!あの村に近づいちゃイカン!」
姫「ミカン!」
栗子「えっ!?あ、え、う…や、ヤカン!」
盗子「何がしたいんだよアンタら!」
勇者「どうやら、僕の母さんは相当恨まれているみたいだね…。」
老婆「悪いことは言わん、素直に立ち去りなされ。行けば絶対傷つきますわ。」
勇者「…行こうみんな。僕には知らなきゃならない真実があるらしい。」
老婆「なっ!?わかっとりますのか!?アンタが思っとるほど現実は…!」
勇者「わかってるさ。現実がいかに…(チラッ)…厳しいものかというのは。」
盗子「なんでこっち見ながら言うんだよ!!」
勇者もまた厳しかった。

 

2-158:故郷〔13歳:LEVEL17〕
老婆の制止を振り切り、僕らは丘のふもとにある村へと向かった。
何があるかはわからない。でも「勇者」として、逃げるわけにはいかないんだ。
~ギマイ大陸:ケンド村~
マジーン「こ、ここは…まさかあの噂の「ケンド村」じゃねぇのか…!?」
勇者「ん?何か知ってるのマジーン?」
マジーン「前に聞いたことがあるぜ。前魔王、終の故郷…それが確かこの村だ。」
勇者「そ、そうだったのか…。どうりでどこか見覚えがあると…!」
盗子「嘘つくなよ!アンタの生まれは遙か遠い島だから!」
栗子「まま魔王さんが生まれやがった村なんて…け結構ヤバげじゃないですか?」
姫「きっと毎晩が血の晩餐だね。」
盗子「おっかないよ!イメージ的にわからないでもないからおっかないよ!」
村人A「ん~?どうしたんだ旅のガキども?こんな辺鄙(へんぴ)な村に何か用で?」
勇者「あ、聞いてくれ村の人。僕は魔王の…」
盗子「ちょっ、待ってよ勇者!いきなりそんな…!」
村人A「あ゛ぁ!?「魔王」だぁ!!?」

勇者「「魔法」の勉強に来たんだ。」
勇者は瞬間的に誤魔化した。

 

2-159:魔法〔13歳:LEVEL17〕
このケンド村は、僕の母さんが生まれ育った村らしい。怖い村なのかもしれない。
でも出会った村の人は、「魔王」という言葉に不快そうな反応を示したし…う~ん。
村人A「ほぉ~、じゃあ兄ちゃんらは、魔法の勉強のために世界中を旅しとると?」
勇者「そ、そうなんだ。見た目はバラバラだけど、実はみんな魔法使いなんだ。」
盗子「う、うん!メチャメチャ魔法使いだよ!ねぇ姫!?」
姫「うん。魔王の遣いだよ。」
一同「Σ( ̄□ ̄;)!!」
村人A「…嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。この村でその単語は使わん方がいい。」
マジーン「まぁ地元から魔王が出たんだ、そりゃあ良くは思ってねぇだろなぁ。」
村人A「!! …知っとって来たんか。なら話は早ぇ、これ以上は聞かんでくれ。」
勇者「いや、そうもいかないんだ。なぜなら僕は魔王の…」
村人A「あ゛ぁ!?」

勇者「「魔法」の勉強に来たんだ。」
勇者は無理を承知で誤魔化した。

 

2-160:創作〔13歳:LEVEL17〕
その晩は村人の家に泊めてもらうことになった僕達。意外にもいい人で助かった。
ホントは聞きたいことが山ほどあったけど、空気的にどうにも切り出せなかった。
~寝室にて~
盗子「う~ん、どうする勇者?なんとか聞き出す?それとも聞かずに旅立つ?」
勇者「…わからない。 とりあえずマジーン、知ってることを全部話してくれない?」
マジーン「わ、悪ぃ。俺も詳しいことは知らねぇんだ。結構謎の多い話でさぁ。」
姫「じゃあ私が適当に考えるよ。こう見えても絵本作家になるのが夢だよ。」
盗子「考えるのかよ!知りたいのはそんな嘘…って、「療法士」はどうしたの!?」
姫「昔々あるところに魔王さんがいて、何人か生け贄にしました。」
盗子「しかも「サスペンス」じゃん!」
勇者「…よし、やっぱり話を聞きに行こう。このままじゃ眠れそうにない。」
盗子「や、やめようよ勇者!下手してバレたら睡眠どころか永眠だよ!?」
勇者「大丈夫だよジュゴン。根拠だって、ちゃんとあるんだ。」

「村人」に殺される「勇者」なんて、聞いたことがない。
なんとも頼りがたい根拠だった。

 

2-161:説得〔13歳:LEVEL17〕
やっぱり話を聞きたくなった僕は、家主である村人の部屋を訪れた。
聞き方さえ気をつければ、きっと彼も話してくれるはずだ。しっかりやろう。
コンコン(扉)
村人A「…入りな。多分来るんじゃねぇかとは思っとったよ。」
ガチャ(開)
勇者「お邪魔するよ。用件は…わかってるみたいだから言わなくてよさそうだね。」
村人A「「魔王:終」について聞きたがる奴は、たまにいるしな。見りゃ気づくわ。」
盗子「じゃ、じゃあ話してくれるの?意外にもすんなりと…。」
村人A「イヤだね。この話は他言するなってのが、村の掟なんでな。」
栗子「そそそこをなんとかお願いしますですよ!大事なことなんスよ!」
村人A「何て言われてもダメなものはダメだ!」
勇者「お願いだ!」
村人A「断る!」
姫「お礼は弾むよ。」
村人A「さて、何から話そうか。」
結構あっさり落ちた。

 

2-162:無理〔13歳:LEVEL17〕
しばらく考えた後、村人は語り始めた。それは僕にとっては辛い真実だった。
村人A「俺ぁ見たんだ。奴ぁ…奴は魔王になるために、仲間を生け贄にしたんだ。」
盗子「い、生け贄!?さっきの姫の嘘話が当たっちゃってるし!」
姫「盗作疑惑に関しては、ノーコメントだよ。」
勇者「…う、嘘だ!そんな話は嘘っぱちだ!」
村人A「嘘なもんかよ!俺は思うね、あんな奴ぁ生まれてこなきゃ良かったんよ。」
勇者「ッ!!!」
盗子「ちょっ、ちょっとそれは言い過ぎなんじゃないの!?いくらなんでも…。」
村人A「あ?んなこたねぇさ。奴ぁ「魔王」になったんだぜ?人間のクズさ。」
勇者「き、貴様…!僕の…僕の…!」
村人A「ん?なんだい、お前の何がどうした?」
勇者「僕の母さんを、悪く言うなっ!!」
盗子「わー!ゆゆゆ勇者ー!?」
村人A「か、か、か、「母さん」だとぉ!!?」

勇者「「魔法」の勉強に来たんだ。」
どう考えても無理があった。

 

2-163:舞踏〔13歳:LEVEL17〕
思わず感情的になってしまい、不覚にも村人に僕の正体がバレてしまった。
でも罪の無い村人を斬るわけにはいかない。悔しいけど逃げるしかないようだ。
というわけで僕らは、港へと急いだ。今ならまだ深夜便に間に合うかもしれない。
村人A「待てー!待ちやがれー!絶対船には乗らせねぇぞーー!!」
勇者「急いで!もう出港寸前だけど、チャンスだよ!乗れば逃げ切れる!」
盗子「ダメだよ勇者!なんか張ってる奴らがいるよ!さっすが田舎、情報早いよ!」
村人達「逃がさねーぞクソガキどもがー!!」
勇者「くっ、仕方ない!こうなったら僕が残って足止めを…」
栗子「ここっここは私に任せちゃってくださいな! 踊ってよ「機関踊草花」!!」
〔機関踊草花(ダンシング・フラワー)〕
野生の草花を加工し、カラクリ草花に変換したもの。
見てるとなぜか踊りたくなる。
機関技師が踊っている間、その効果は持続する。
マジーン「こ、これは…花か?一瞬でこれだけのモンを作り出すって…スゲェな。」
栗子「ささ、さぁみなさん!レッツ・ダンシーング!踊り狂えばいいんですよぅ!」
村人A「なっ、なんだよコリャ!?体が勝手に…!」
栗子「い行っちゃってください先輩!わわわ私のことは気にせずにぃー!」
勇者「く、栗子…。」

いや、そう言われてもさ。
勇者も踊りに夢中だ。

 

2-164:別離〔13歳:LEVEL17〕
栗子が出した変な草花の力により、急遽小さなダンス大会が開催された。
盗子「わっ、もう!やめたくても止まんないよー!なんなんだよコレー!?」
勇者「踊ってちゃ進めない、でも花が止まれば囲まれる…。一体どうすれば…!」
姫「甘いね勇者君。腰は、こうっ!だよ。」
勇者「な、なるほど。こうっ!か。」
盗子「どうでもいいからなんとかしてよ!!」
栗子「わーん!ごめんなさいー!わ私が浅はかでしたよー!!」
姫「大丈夫、私がなんとかするよ。 むー!あのお花ちゃん…「無視」!!」
姫は〔無視〕を唱えた。
奇妙な光が勇者達を包む。
盗子「…おっ、やるじゃん姫!なんか花の踊りが全然気になんなくなったよ!」
勇者「よし!姫ちゃん、栗子、マジーン、今のうちに行くよ!」
盗子「アレッ、アタシは!?アタシにも効いてない今の魔法!?」
栗子「わわ、私は無理ですよ!いいから置いて行っちゃってくださいなー!」
勇者「なっ…何を言ってるんだ!お前だけ置いて行けるはずが…!」
マジーン「オイ勇者!もう出発しちまった!でも今ならまだ飛び乗れるぜ!」
村人A「ま、待てー!逃げんじゃねぇよコラー!お礼も弾まれてねーしー!!」
栗子「け、賢二先輩に会ったら伝えてください!わ、わた、わた、わたた…わーっ!」
勇者「くっ…!」

何て伝えればいいんだ!
勇者は混乱している。

 

〔無視(シカト)〕
魔法士:LEVEL14の魔法。(消費MP16)
指定した対象を無視できるようになる魔法。度が過ぎると学級会で問題になる。
 

 

2-165:出航〔13歳:LEVEL17〕
栗子が犠牲になってくれたおかげで、僕らは無事に乗船することができた。
今からなら、夏にはタケブに着けるらしい。早く行って神の復活を阻止しなきゃ!
勇者「なんとか逃げられたね。結局、大雑把な話しか聞けなかったけど…。」
マジーン「まぁ、縁があればいずれわかるさ。気持ち切り替えて行こうぜ。」
案奈「あ、皆様ァ~。大陸船にご乗船いただき~誠にありがとう~ございまァす。」
盗子「わっ、わー!なんで!?なんでまたアンタがガイドなの!?怖いよ!」
案奈「タケブ大陸にはァ~「帝都:チュシン」~、「シジャン王国」などがあり~…」
盗子「ってシカトかよ!そんな急いで説明に入る必要性がどこにあんのさ!?」
案奈「この先にはァ~多分「黄泉の国」も見えまァす。」
盗子「だからかよ!黄泉って「あの世」じゃん!またそんな危険な運転なの!?」
案奈「それでは~本日の気まぐれ船長より~、一言ご挨拶が~ございまァす。」
盗子「「気まぐれ船長」て!そんな不安な存在に人生任したくないよ!?」
放送「みなさんこんばんは。私が今日の船長を適当に務めるよ。 呼ぶ時は…」
盗子「「適当に」て!ホントに気まぐれな船長さんかよ!」

放送「気軽に「姫ちゃん」でいいよ。」
一同「えぇーーっ!!?」
船はシージャックされた。

そして船は、黄泉の国へと進んでいく。

 

外伝(参)へ

本編( 7 / 10 )

第二部:外伝(参)

外伝(参)

 

外伝:賢二が行くⅢ〔1〕
変な魔獣に食べられて、もうダメだと思った僕ですが、起きたらまだ生きてました。
でも周りの景色に見覚えがありません。ここは一体どこですか?みんなは一体…?
賢二「う、うぅ…。この部屋は…誰の?なんで僕はベッドに寝て…?」
どうやらここは誰かの部屋のようです。 近くの窓からは、外の様子が見えました。
賢二「あ、もう夜なんだね。なんだか今日は、星がキレイだなぁ~。 特に…」

特に、「地球」が。
三度目の宇宙だった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔2〕
その後しばらく途方に暮れていると、部屋に女の子が入ってきました。
この家の人に違いないです。ちゃんとお礼を言わなきゃいけません。
少女「わっ、起きてる!起きてます!良かった!良かったですねホント良かった!」
賢二「アナタが助けてくれた方ですね。ホントありがとうございました。 えっと…?」
少女「ん、名前ですか?ボクは「召喚士」の「召々(しょうしょう)」!好きに呼んで☆」
賢二「あ、ハイわかりました召々さん。 僕は賢二って言います。決して賢…」
召々「お母さーん!「賢者様」が来ちゃったー!!」

あぁ…また…。
召々はせっかちだった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔3〕
今度こそはと思っていたのに、早速勘違いしてくれちゃったせっかちな召々さん。
弁解しようと努めたのですが、「村を案内するよ☆」と連れ出されてしまいました。
このまま村に着いたらまた、えらいことになります。なんとか早く誤解を解かなきゃ。
召々「よぉーし!じゃあ行くよ賢者様!飛ばすから舌噛まないようにね~♪」
ブルゥン…ブルルルルゥン!!(エンジン音)
賢二「えと、さっきも言ったんですけど僕が賢者だとか村では…。」
召々「あ、うん!わかってるよ☆言わなくてもボクわかってるから大丈夫!」
賢二「えっ…あ、ホントですか?いや~、良かったです。てっきりまた勘違いを…」
召々「すっごく「照れ屋さん」なんだよね賢者様☆ わかるわかる!」
賢二「気持ちいいぐらいわかってないんだけど!?」
召々「でもビックリしたよ~。「獣の森」のド真ん中でフツーに寝てるんだもーん。」
賢二「いや、だから話を聞いて!僕は賢者じゃ…って、前見て前ぇーー!!」
召々「アハ☆平気だよ~。ボク人の話はたま~に聞こえないみたいだけど目は…」

ズゴンッ!(撥)
バアさんが鮮やかに宙を舞った。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔4〕
話の見えない召々さんは前も見えてなくて、勢いよくお婆さんを跳ね飛ばしました。
賢二「わー!すすすみません!だ、大丈夫ですかオバ…」
老婆「(ギロッ)」
賢二「…お、お嬢さん。」
老婆「う、うぐっ…こ、こんな激しいアタック…何年振りぢゃろか…☆」
賢二「こんな瀕死状態でなにトキめいてるんですか!?しかもアタック違いですし!」
召々「アハハ☆面白いおバアちゃんだね~♪もっかいヤッてもいいかな~?」
賢二「どう考えてもダメだから!謝るどころか追撃の一手ですか!?」
召々「ぶー。賢者様ってばお堅いんだからー。」
老婆「む…?お前さん、賢者なのかぇ?いやぁ、その若さでなんとまぁ…生意気な。」
賢二「いや、生意気なとか言われても!僕は賢者だなんて…! …あ゛。」
村人A「な、なにぃ!?賢者だぁ!?オメェが賢者様かぁ!?」
村人B「オーイみんなー!賢者様が来てくれたどー!」

今のは…僕が悪いんですか?
村人達の耳が悪い。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔5〕
いつの間にか村に着いていて、気づけばまた「賢者」で広まっちゃっていました。
村長「いや~、わざわざ遠くの星からお呼びした甲斐がありましたわ。」
賢二「呼ばれて飛び出てゴメンなさい。いやいや、呼ばれてないんですが…。」
召々「ん?な~にわけわかんないこと言ってんの賢者様?ホラ、食べようよー☆」
村長「いや、お前は食うなよ。お前のために用意したご馳走じゃないから召々。」
召々「アハ☆ 面白いお爺ちゃんだね~♪そんな言葉誰に仕込まれたの?」
村長「なんだそのインコ的な扱いは!?お前が生まれる前から「村長」だから!」
老婆「んぐ、むぐっ…で?わざわざ賢者を呼んで、何ぉさす気なんよお前さんら?」
召々「なんかすんごい食べっぷりだねこのお婆ちゃん。部外者とは思えないね♪」
賢二「うん…とても「被害者」とは思えないよね。」
村長「実は賢者様には、最近現れた「蛮族」どもを倒してほしいのですよ。」
老婆「あ~あ~、そんなの任せりゃええ。こう見えてこの子はヤル子ぢゃよ。うん。」
賢二「えっ、なんでアナタが引き受けてるんですか!?さっきの復讐ですか!?」
村長「おぉ!本当ですか!そりゃ助か…ところでアナタはどなたですかな?」
賢二「あ、いや、この人はさっきちょっと…」

老婆「「彼女」ですぢゃ。」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
とんでもない復讐だった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔6〕
なぜかお婆さんが勝手に引き受けてしまったので、僕は「蛮族」を倒しにいくハメに。
でも一人じゃ…と言ったら、召々さんとお婆さんがついてくることになりました。
今度こそ神様は、僕に「死ね」と言っているような気がしてなりません。
賢二「えっと…みなさん改めましてヨロシクです。一秒でも長く…生きましょうね…。」
亀「おぅ!ヨロシクな坊主!俺もついていくぜぃ!」
賢二「あ、こちらこそヨロ…って、えぇっ!?なんで亀さんが喋ってるんですか!?」
老婆「ワシの「契約獣」でな、魔獣「トルタ」の「亀吉(かめきち)」と言うんぢゃ。」
賢二「け、契約獣…ですか?噂で聞いたことがあるようなないような…。」
召々「えー、そんなことも知らないのー?じゃあ「召喚士」のボクが教えたげるね☆」
〔契約獣〕
普通の召喚獣とは違い、契約に従い半永久的に居続けるタイプの召喚獣。
「武器化」、「防具化」、「魔法化」などの特殊能力を持つものが多い。
契約に職業は問われないが、一生に一体としか契約できない。
ただし、契約獣の側も相手を選ぶので、誰しも得られるとは限らない。
賢二「ほぇ~。召喚士じゃなくても魔獣が呼べるなんて知らなかったな~。」
召々「一体だけね。召喚士はさ、一時的にだけどMP消費で何種も呼べるんだよ☆」
賢二「いいなぁ~。僕と契約してくれる召喚獣もどこかにいるのかなぁ?」
老婆「あ~、やめときな。契約代償はMPぢゃないし、子供にゃチョイと危険だよ。」
賢二「へ?そうなんですか? じゃあ代償は…?」

老婆「「生気」を食らう。」
バアさんの方が危険だ。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔7〕
雑談しながら半刻も進むと、「蛮族」がいるという「トリーナ村」に辿り着きました。
賢二「えと、とりあえず作戦を立てましょう。慎重に、できるだけ平和的な策を…」
召々「オーイ!出ておいでよ蛮族たちー!賢者様がブッ倒しに来ちゃったよ~♪」
賢二「は、話を聞いてぇー!!」
亀「見ろよ賢坊、あそこの旗…。ありゃ流れ蛮族「野蛮家族」のモンだぜぃ。」
賢二「野蛮家族…?なんか意外とアットホームな感じの名前ですねぇ。」
亀「一度目ぇ付けた敵は、家族もろとも惨殺するらしいぜぃ。」
賢二「世の中そんなに甘くは無いって、わかってたはずなのに…。」
召々「んじゃさ、あの旗のある建物にみんな居るのかなぁ?扉ブチ破ってもいい?」
賢二「だからなんでそう突っ走るんですか!?ブレーキは故障中ですか!?」
老婆「まぁ気にするでないよ賢坊。どうせ倒さにゃならん敵ぢゃないかい。」
賢二「いや、それはそうなんですが…。」
亀「ならホラ、お前も言ってやれよ。「お前らは俺が倒すぜぃ!」とかよぉ。」
賢二「(まぁこの距離なら聞こえないか…)よ、よーし!言っちゃいますよ!おま…」

蛮族〔背後〕「あ゛ぁ!?」

賢二「…おまかせします。」
賢二は身をゆだねた。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔8〕
油断していて、背後の蛮族さんに気づかずに喧嘩を売ってしまいました。
早速囲まれてしまい、もう謝ってもダメっぽい感じです。 やるしか…ないのかな…。
蛮族A「オゥ小僧!テメェか俺様達を倒そうって太ぇクソガキは!?」
賢二「ちちち違いますよ!僕は倒そうとかじゃなくて平和的に…!」
蛮族A「上等だよ!ブッ殺してやるぁ!!」
賢二「聞く気が無いなら…最初から聞かないでほしいなぁ…。」
召々「アハ☆ ホントだよね~♪ 耳の穴かっぽじってもいいかなぁ?」
賢二「ハイ…とりあえずご自分の耳からお願いしたいです…。」
蛮族達「宴だー!血の宴を始めるぞぁー!!」
老婆「ひぃ、ふぅ、みぃ…ほぉ、100近くおるのぉ。随分とまぁ大所帯なもんぢゃ。」
亀「で、どうするよ賢坊?これだけの数を相手にしてたら日が暮れるぜぃ?」
賢二「で、ですよね。とりあえず敵を減らさないと! 降り注ぐ雹の魔法、「降雹」!」
賢二は〔降雹〕を唱えた。
蛮族A「アイタッ!な、なんだコレは!? アイタタタタ!!
蛮族達「イデデデデデデ!!

賢二達「イタタタタタタタ!!
だが諸刃の剣だった。

 

〔降雹(こうひょう)〕
魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
周囲に大量の雹を降らせる魔法。やたらに使うと気象予報士に嫌な顔をされる。
 

 

外伝:賢二が行くⅢ〔9〕
とりあえず敵の数を減らそうと思ったのに、魔法の選択を誤ってしまいました。
でも一応効果はあったようで、何人か倒すことができたのがせめてもの救いです。
召々「あ~冷たかったぁ~。風邪ひいたらどうしてくれるの賢者様~?へっくち!」
賢二「残りは約80…この調子で減らしていければ勝てるかも…!」
蛮族B「くっ、敵は結構やりますぜ?どうしますお頭?」
蛮族長「フンッ、なら俺様の契約獣を呼ぶまでよ!出てこいや「ビッグ・フッチョ」!」
〔ビッグ・フッチョ〕
生態武器型の高レベル召喚獣。
その巨大な足で、あらゆる敵を踏み潰す。
サイズの合う靴がなかなか見つからない。
蛮族長「さぁ行けぃ!踏み潰してやれやフッチョ!」
フッチョ「ふごふごフガァーー!!」
賢二「わー!やっぱり勝てないかもー!!」
召々「大丈夫☆ そういうことならボクも味方を呼んじゃうよ♪」
賢二「ほ、ホントですか!?じゃあ強そうなのをお願いしますね召々さん!」
召々「うん、任せといて☆ さぁおいでー!いで…よ…へ、へっくちゅん!!」
賢二「わー!肝心なところでクシャミがー!!」

ヘックチュン「グルルルルァアアア!!」
賢二「えぇぇっ!?」
ヘックチュンは実在した。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔10〕
そして二体の魔獣の戦闘が始まりました。僕の出番は来なきゃいいなぁ…。
賢二「ふぅ~、でもさっきはビックリしちゃいましたよ。一瞬ただのクシャミかと…。」
召々「アハ☆ ホント、偶然って恐ろしいよね~♪」
賢二「ぼ、僕には今の発言の方が恐ろしいんだけど…。」
フッチョ「フガァーーー!!」
ヘック「グルゥアーーー!!」
賢二「う~ん、二体の力は拮抗してるみたいだね。どっちが勝つのか…」
蛮族A「絶対フッチョだろ!そうに決まってるぜ!」
蛮族B「じゃ、じゃあ俺はヘックチュン!今月の小遣い全部だ!」
老婆「ハイまいどねぇ~。」
賢二「何が行われてるんですか!?」
蛮族長「チッ、互角か…。なら仕方ねぇ、俺様が力を貸してやるよフッチョ!来い!」
ビッグ・フッチョは武器化した。
蛮族長はそれを両足に装備した。
賢二「そ、装備した!?これが…これが「契約獣」の本来の使い方…!?」
蛮族長「オラァ食らえぃ!必殺キック「足デカおじさん」!!」
バキィイイッ!(蹴)
ヘック「グルルルルァアアア!!
蛮族長、会心の一撃!

ネーミングはともかく威力は凄かった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔11〕
蛮族長さんの攻撃をまともに受けたヘックチュンは、召喚魔界に帰っていきました。
やっぱり神様は、僕に対して優しさが足りないと思うんですがどうでしょう?
賢二「腹をくくるか首をくくるか…いっそのこと後者を選んだ方が楽かもなぁ…。」
亀「ブツブツ言ってねぇでパパッと魔法でヤッちまおうぜぃ賢坊よぉ!なっ!」
老婆「まぁやるなら「火炎魔法」ぢゃね。武器化したとて元は獣…炎は苦手ぢゃ。」
賢二「か、火炎魔法ですか…。苦手な分野だなぁ…。」
得意な分野はあるのか。
蛮族A「オラァおめぇら行くぞゴラー!やっちまぇやー!!」
蛮族達「うぉおおおおあああああ!!」
召々「ん~、雑魚な子達はボクが片付けちゃうよ♪ いでよ、適当に☆」
賢二「適当に!?」
蛮族長「テメェがリーダーの賢者か?なら俺様が直々にブッ殺してやるぁ!!」
賢二「と、とりあえずやるしかない…!えっとえっと、火炎魔法…「炎殺」!!」
賢二は〔炎殺〕を唱えた。

が、やっぱり失敗した。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔12〕
苦手な火炎魔法は、当然のように失敗しました。もう暗雲は立ち込めっぱなしです。
ゴゴゴゴゴゴゴ…(暗雲)
賢二「って、わー…ホントに暗雲が立ち込めてきた…。」
召々「アハ☆ お茶目さんなんだね~賢者様♪余裕だからできるんだよね☆」
蛮族長「なにぃ!?じゃあテメェ、ワザと失敗しやがったってのか!?」
賢二「しょ、召々さん!?火も出てないのに油を注がれても!」
ゴゴゴ…ズザァアアアアア!(大雨)
賢二「わー!しかも雨までー!?」
蛮族A「ギャハハー!天気にも見放されやがったぜ!もう火なんか付かねーよ!」
賢二「くぅ、これじゃもう…ん?いや…諦めるのは、まだ早いかも!」
蛮族長「むっ!?何しやがる気だテメェ!?」
賢二「この条件なら、前置きなしで多分いける! 落ちてー!「雷撃」!!」
賢二は〔雷撃〕を唱えた。
ズゴォオオオオオオオン!!(落雷)
蛮族長「う、うがぁあああああ!!
蛮族達「ギェエエエエエエ!!

賢二達「ウギャアアアアア!!
みんな揃ってアフロになった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔13〕
うまくいくかと思った「雷撃」ですが、やっぱり失敗して拡散してしまいました。
賢二「ハァ…。「賢者」どころか「魔法士」にもなりきれてないなんて…。」
老婆「んにゃ、なかなかいい線いっとったよ?もうチョイで〔雷迅〕ぢゃったわ。」
賢二「ら、雷迅!?いやいやいや、僕なんかがそんな魔法使えるわけが…!」
蛮族長「ったりめぇだ!あんな失敗作が雷迅と呼べるか!効いてねぇよ!!」
老婆「もうええわぃ。お前さんらの底はもう見えたわ。大人しく下がるがええよ。」
蛮族長「な、なんだとババア!?短ぇ人生を更に短くしてぇのかア゛ァン!?」
蛮族A「そうだぜババア!ババアは大人しく死期を待ってりゃいいんだよクソが!」
老婆「ば、ババア…!?こんな乙女を捕まえて、ババアとな…!?」
召々「アハ☆ 面白いこと言うお婆ちゃんだね♪グーで殴ってもいいかなぁ?」
賢二「いや、もっと平和的に説いてあげてください…。」
老婆「ええ度胸ぢゃ…腐れ蛮族の分際で、ええ度胸ぢゃよ…。 この…」
蛮族達「バ・バ・ア! バ・バ・ア!」

老婆「この永遠の美少女、「賢者:無印(むいん)」に喧嘩売ろうとはのぉ!!」

蛮族達「…え゛?」
召々「へ?」
賢二「ええぇっ!?」

ズゴォオオオオオオ!!(炎上)
〔火炎地獄〕が全てを焼き尽くした。

 

〔火炎地獄(かえんじごく)〕
賢者:LEVEL50の魔法。(消費MP250)
究極の火炎魔法。 燃え上がれ 燃え上がれ 燃え上がれ ガンd(自主規制)
 

 

〔雷迅(らいじん)〕
魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP48)
敵1グループに強烈な雷を落とす魔法。ビビッとくるが恋じゃない。
 

 

外伝:賢二が行くⅢ〔14〕
お婆さんはタダ者ではなく、なんとあの「四勇将」の「大賢者:無印」様でした。
でもそれなら、村長さんが呼んだ賢者、そして妙な余裕…全てに納得がいきます。
召々「うっわー!蛮族みんな消えちゃったー!手品?手品なの?もっかいやって!」
賢二「無印様…。じゃあオバ…お嬢さんが凱空オジさん達と共に戦った…?」
無印「なぬ? ほぉ、お前さん凱空を…ワシの「元彼」を知っとるのかぇ?」
賢二「も、元彼!?(被害者は)僕だけじゃなかったんですか!?」
無印「大丈夫ぢゃ安心せい。今は賢坊にゾッコン・ラブぢゃで☆」
賢二「いや、それこそが安心できないポイントなんですが…。」
無印「んで、凱空はお前さんの何なんね?奴は元気にやっとるかぇ?」
賢二「僕の友達のお父さんなんです。まったくもって「勇者」っぽくない人ですよ。」
無印「ふっ、ぢゃろうな…。 ガキの方はどうぢゃ?やっぱり勇者を目指して?」
賢二「え゛。あ…は、ハイ。とっても勇者らし…いや、というか勇者そのものですよ。」
無印「ほほぉ。そりゃいつか会うのが楽しみぢゃわぃ。わっはっはー!」

一応、嘘は言ってないです。
賢二は名前に関してだけ述べた。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔15〕
蛮族を滅ぼし、トリーナ村へと帰った僕達は、とっても感謝されました。
引き止められ、しばらくご厄介になったのですが、そろそろ発とうと思います。
どこにいても戦いが待っているのなら、やっぱり友達と一緒に死にたいです。
賢二「というわけで、僕は宇宙船を探しに旅に出ますね。みなさんサヨウナラ。」
召々「えー!行っちゃうの賢者様ー!?イヤだよつまんないよー!遊ぼうよー!」
無印「アタイ…アンタと離れたくない!死ぬまで一緒だってあの時…!」
賢二「まだ恋人モードだったんですか!?それに「あの時」っていつです!?」
召々「アハ☆ いいじゃん賢者様♪「死ぬまで」ならもうじきだよー♪」
賢二「いや、いくらそう思ってもそれは言っちゃいけない台詞では…?」
無印「…うんにゃ。その嬢ちゃんの言うとおりぢゃ。ワシもそう長くは無い。」
賢二「えっ…?」
無印「夢の四桁は無理やもしれん。」
賢二「その夢の先には一体何があるのか教えてほしいです。」
亀「そういやムーちゃん、この前言ってた件はどうなったよ?賢坊は合格なんか?」
賢二「へ…?合格って何の話ですか?」
無印「うむ、ワシぁ決めたぞぇ。この坊を最後の弟子とし、ワシの全てを教えちゃる!」
賢二「えっ!?だ、大賢者様の全てを!?」

無印「今夜…ベッドで待ってる☆」
賢二「全てを!?」
「賢者」への道が開けた。

「青春」の二字を代償に。

 

第四章へ

本編( 8 / 10 )

第二部:第四章

第四章

 

2-166:権力〔13歳:LEVEL17〕
夏。 色々あったけど、僕達はなんとか生きて「タケブ大陸」に到着できた。
そして今は、「シジャン王国」の王都…五錬邪が支配する城の城下町に来ている。
恐らくこれが、五錬邪との最後の戦いになるだろう。できる限りの準備をしなければ。
盗子「つ、ついに来たね敵の本拠地…。なのに仲間はたった三人だなんてさ…。」
勇者「頑張ろう姫ちゃん。僕ら二人で世界を守るんだ。」
盗子「せめて頭数ぐらいには入れてよ! 盗子にも人権を!人権をー!!」
勇者「シッ! 僕らが来たのは多分…もう気づかれてる。慎重に行かなきゃ。」

~その頃、シジャン城では…~
赤錬邪「よし!では今から各関門に全員を配置する!ガキどもの侵入に備えろ!」
兵士達「ハッ!」
赤錬邪「まず第一の門は…よし、お前に任せるぞ黄緑錬邪!」
黄緑「あ?気安く私に指図するなよ。まぁ仕方ねぇからヤッてやるけどさぁ。」
赤錬邪「くっ…!ま、まぁ威勢がいいのは良いことだ。 そして次、第二の門!」
傭兵「ケケッ!そこでこの俺達…「人獣奇兵団」の出番ってわけかよ?」
兵士A(じ、人獣奇兵団って、まさかあの…!?)
兵士B(ああ。魔獣を巧みに操り、金さえ貰えりゃ何でもやる…外道な傭兵団さ。)
赤錬邪「うむ。お前達には高い金を払ってるんだ、それなりの仕事を頼むぞ?」
傭兵「あん?なんだテメェ、信用できねぇっての?じゃあ今テメェをヤッたろか!?」
赤錬邪「くっ…!ま、まぁそのぐらいの方が心強いか。 そして最後、第三の門は…」

鉄仮面「俺に命令したら、殺す。」
赤錬邪「くっ…!」
アンタほんとにボスなのか。

 

2-167:依頼〔13歳:LEVEL17〕
三人で挑むのはさすがに厳しいので、僕達は城下町で仲間を探すことにした。
聞けば五錬邪を倒そうという勇士達が酒場に集っているらしい。見逃す手は無い。
そういえばマジーンは買出しに出たっきり戻らないけど…まぁそれは別にいいや。
ガラララン♪(開)
店主「ヘイいらっしゃ…」
勇者「僕の名は勇者!五錬邪を倒すため、仲間を探している!」
盗子「私は盗子!お願い!誰か力を貸して!」
姫「私は今日のランチ!」
盗子「って真面目にやれよ!!しかも酒場でランチて!」
店主「はいランチ一丁ね~。」
盗子「なんであるんだよ!!」
客A「…オイ小僧。勇者ってお前…凱空さんの息子の勇者か?」
勇者「えっ、なんで父さんのことを知ってるの!?お前達は一体…!」
客B「俺達はあの人に言われて集まったんだ。「息子を頼む」ってな。」
勇者「と、父さん…。」
客C「俺達は凶死さんに頼まれた。「私のオモチャをヨロシク」とよぉ。」
盗子「オモチャて!アタシらってそういう位置づけだったの!?」
勇者「先生…。」

なんでお前らが来ないんだ。
勇者は人任せにされた。

 

2-168:再会〔13歳:LEVEL17〕
酒場で仲間を集め、パーティーは10人になった。実力は不明だけど多少は心強い。
彼らの話によると、城の中に入るには三つの門を越えなければならないらしい。
というわけで僕らは、早速「第一の門」の前までやってきた。テンポ良くいこう。
勇者「さぁ出てこい五錬邪!誰かいるのはわかってるんだぞ!」

シーン…

勇者「…待とうか。」
盗子「なんで待つの!?いなきゃいないで好都合じゃん!」
仲間B「ギャアアアアア!!
勇者「!? やっぱりいたんじゃないか! 出てこい!」
盗子「そ、そうだよ出てきなよ!隠れてるなんて卑怯だよ!」
勇者「出てきて僕に謝れ!」
盗子「そういう意味だったの!?仲間のカタキとかそういう線は!?」
黄緑「フフ…久しぶりだなぁ勇者。今日こそテメェを殺してやるよ。」
盗子「き、黄緑…アンタ巫菜子だよね!話は聞いてるよ!」
黄緑「あん?あぁ、テメェも久しぶりだなぁ…姫。」
盗子「アンタもアタシにはノータッチかよ!!」
仲間C「な、なんだよお前ら…コイツと知り合いなのか?」
勇者「うん…。奴とは色々と因縁があるような気がしながらも全く覚えてない。」
黄緑「結局は覚えてねーんじゃねぇか!相変わらずナメた野郎だ、ブッ殺す!」
黄緑錬邪は「岩の精霊」を呼んだ。
幾百の岩石が勇者を襲う。
勇者「くっ、数が多すぎる!避けきれな…!」
姫「大丈夫、私に任せて! みんなを守って「超防御」!そして敵を討って「爆裂」!」
姫は〔超防御〕を唱えた。
全ての攻撃を防いだ。
姫は〔爆裂〕を唱えた。
岩の精霊を撃破した。
黄緑「なっ!?こ、これがあの姫の動きなのか!?」
勇者「ひ、姫ちゃん…!?」

姫「悲しいけど、私が倒すよ巫菜子ちゃん。友達だけど…ううん、友達だから!」
姫は酔っている。

 

〔爆裂(ばくれつ)〕
魔法士:LEVEL37の魔法。(消費MP40)
爆発系の魔法。戦隊ヒーローものの戦闘シーン(背後)などでよく使われる。
 

 

〔超防御(ちょうぼうぎょ)〕
魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP45)
高い守備力を誇る強力防御魔法。ガードの固いアノ子の得意技だ。
 

 

2-169:酒乱〔13歳:LEVEL17〕
なぜか急にシャキシャキしはじめた姫ちゃん。一体彼女に何があったのだろう?
勇者「ど、どうしたんだろ姫ちゃん…?でもとりあえず、こんな彼女も…いい!」
盗子「…あっ!きっとあの子お酒飲んじゃったんだよ酒場で! 姫って酒癖が…」
姫「大丈夫お仲間ちゃん!?傷は私が治すよ!むー、〔治療〕!」
盗子「悪い…のかむしろ良いのかわかんないけども。」
黄緑「チッ、姫が戦力になるなんて厄介だぜ…。 とりあえずお前達、いきな!!」
兵士達「おおおおおおっ!!」
勇者「大将は僕らが倒す!雑魚の相手は任せるよ!」
仲間達「おう!任せとけぇええええ!!」
ガキン!キィン!ズバシュッ! チュィン!
久々に戦いらしい戦いが始まった。
勇者「よし、じゃあ僕達もいくよジュリアス!黄緑錬邪を倒すんだ!」
盗子「ま、待って勇者!前の経験からすると多分もうじき姫のミラクルが切れるよ!」
姫「むー!〔死滅〕!!」
兵士A「うぎゃあああああ!!
盗子「ゴメン勇者!全然「多分」じゃなかったよ!」
仲間A「ぎょええええええ!!
姫「えっ、どうしたの!?誰がこんな酷い…。私が治すよ! むー!〔全滅〕!!」

一同「ぐわぁああああああああ!!
辺りは地獄絵図と化した。

 

2-170:本気〔13歳:LEVEL17〕
酔った姫ちゃんの暴走により、敵も味方も大半がブッ倒れてしまった。
でも酔いのせいかレベルのせいか、術が完璧じゃなかったのがせめてもの救いだ。
勇者「うぐっ!これが…絶命系呪文…!カスッただけでこの疲労度だなんて…!」
黄緑「ふ、フザけてんじゃねぇぞテメェら!悪役よりも非道な攻撃すんじゃねぇよ!」
盗子「ヤバいよ勇者!みんな倒れちゃったよ!まるでこのためだけに来たみたく!」
勇者「でも、それは敵も同じさ。三対一なぶんこっちに勝機があるはずだよ。」
黄緑「ケッ、甘く見られたもんだぜ…。だがコレを見てもまだ言えるかア゛ァン!?」
黄緑錬邪は力をためた。
とりまくオーラが数倍になった。
勇者「なにっ!?なんでいきなりこんなにパワーが…!?」
盗子「あっ、そういやコイツら裏技使ってんだよ!命と引き換えに!」
黄緑「さぁ来やがれ勇者。こっちは命削ってんだ、テメェも命懸けろやぁ!」
勇者「やっぱり一筋縄にはいかないか…。いつ神が復活するかというのに…!」
姫「勇者君、ここは私に任せてほしいよ。みんなのカタキは…私が討つよ!」
勇者「なっ、何言ってるのさ姫ちゃん!?一人でなんとかなるはずが…!」
盗子「そうだよ姫!違った意味でも何言ってんだよ!アンタがやったんじゃん!」
姫「悲しい事故を乗り越えて、私は強くなるよ。 行って!世界のピンチだよ!」
勇者「くっ…! …わかった。でも絶対死んじゃダメだからね姫ちゃん?」
盗子「ちょっ、姫に任せちゃう気!?てゆーかアンタは何もしない気!?」
黄緑「そうだ逃げんな勇者ぁ!私がテメェを恨んでんのはテメェも…」
勇者「記憶喪失をナメないでほしい。」
黄緑「ナメてんのはテメェだぁあああああ!!」
覚えてないのは前からのことだ。

 

2-171:不動〔13歳:LEVEL17〕
とても心配だけど、黄緑錬邪は姫ちゃんに任せることにした。全ては世界のためだ。
なんとか早めに攻略して助けに戻りたい。姫ちゃん、少しだけ待っててね…!
勇者「あ、見た感じアレが「第二の門」…かなぁ? じゃあ開けるよハリソン?」
盗子「ちょっ、待ってよ勇者!最後に巫菜子が言ってたこと忘れたの!?」
勇者「お前こそ忘れてもらっちゃ困るよビリー。僕は記憶喪失だよ?」
盗子「それは今さっきのことには適用されないよ!」
勇者「大丈夫、傭兵団なんか怖くないさ。たとえ何人いようと…僕は負けない!」
勇者は扉を押した。
だがピクリとも動かなかった。
勇者「なにっ!?ぐっ…ダメだ、ビクともしない! …押してもダメならぁ!」
盗子「むぎぃー! ふぅ…違うみたいだよ勇者。引いても全然ダメっぽい。」
勇者「じゃあフスマみたく横に…ズレないか。まるで鍵でもかかってるみたいだ。」
盗子「えー、でも鍵穴無いじゃん? あっ、もしかしたら「呪文」とか!?」
勇者「な、なるほど…よし! ふぅー… 「開け、ゴラ」!!」
盗子「「ゴマ」じゃないの!?それじゃただ喧嘩売ってるだけじゃん!」
勇者「ケラヒ・ヨラビト!!」
盗子「いや、なんとなくそれっぽいけど無理だから!逆に言ってるだけじゃん!」
勇者「僕を信じるんだ!さぁ、この胸に飛び込んでおいで!」
盗子「心を開かせてどうすんだよ!開いたら開いたでなんか怖くて入れないよ!」
勇者「くっ、ダメか!こうなったら爆弾でも仕掛け…ん?なんだろコレ…?」


『軽く触れてください』

二人「バカなっ!!」
不自然にハイテクだった。

 

2-172:場違〔13歳:LEVEL17〕
古くおもむきがあったのは外観だけで、なぜか自動ドアだった第二の門。
勇者「なんとなく気が抜けた感があるけど…気を取り直して行こう。 開けるよ!」
ウィーーーン…(開)
勇者は扉を開けた。

傭兵Aが現れた。
傭兵Bが現れた。
傭兵Cが現れた。
傭兵Dが現れた。
傭兵Eが現れた。

傭兵Aは剣を持っている。
傭兵Bは斧を持っている。
傭兵Cは槍を持っている。
傭兵Dは銃を持っている。
傭兵Eは太っている。
傭兵B「オイオイ勘弁しろよ。たった二人で来やがったぜコイツら?」
傭兵C「やれやれ、我ら「人獣奇兵団」もナメられたものだな。」
勇者「僕は無駄な殺生は好まない。お前達、ここで退くなら見逃してあげるよ?」
傭兵D「あ゛?立場わかってねぇのかテメェ!?今すぐ殺すぞゴルァ!?」
傭兵E「…お菓子、うまい。」
盗子「ねぇアンタだけなんかキャラ違くない!?どう見ても場違いだよね!?」
傭兵A「チッ…まぁいい。一応仕事だ、適当にヤッちまえやぁああああ!!」
傭兵Aは剣を構えた。
傭兵Bは斧を構えた。
傭兵Cは槍を構えた。
傭兵Dは銃を構えた。
傭兵Eはブサイクだ。

 

2-173:百人〔13歳:LEVEL17〕
傭兵団は予想よりは少なかったけど、それでも一人で五人と戦うのはかなりキツい。
勇者「ハァ、ハァ…!ダメだ、五人相手じゃ防御が精一杯…!」
傭兵A「ケッケッケ!ヤルじゃねぇかガキのくせに!だが息が上がってるなぁ?」
勇者「くっ…!一人で倒せる相手じゃない、お前も何かするんだポコポン!」
盗子「えぇっ!?な、なにさアンタ!か弱い乙女を危険に晒す気!?」
傭兵A「…オイ、先にコイツから消すか。」
傭兵達「おうよ!」
盗子「なんでアンタらがキレるわけ!?」
傭兵B「弱ぇ奴から殺すのが定石だろ?まずはテメェからヤッてやるぁ!」
盗子「わっ、やややヤだよぉー!!」
勇者「ヤメろ!コイツに構うなー!!」
盗子「あっ…ゆ、勇者…☆」
勇者「何かがうつるぞ!!」
盗子「何がだよ!敵を気遣う前にアタシを思いやれよ!」
傭兵C「安心しろよ小僧、テメェの相手はまだまだ奥に山ほどいるからよぉ!」
勇者「なっ!?や、やっぱり五人じゃなかったのか…!?」
傭兵A「ケケッ!総勢100人!それが俺ら、人獣奇兵団だぁー!来いや野郎ども!」
傭兵Aは仲間を呼んだ。

だがその声は虚しく響いた。
傭兵A「…オイ!聞こえねぇのかテメェらぁ!?来いっつってんだろがぁ!!」
傭兵D「た、大変だ兄貴ぃ!みんなブッ倒れっ…!
傭兵A「なっ…!?ど、どうしたオイ!?何があった!?」
勇者「!! あの陰だ!柱の陰に、誰かいる!!」

声「ふぅ~…、ったく…。」


暗殺美「雑魚のお守りは疲れるさ。」
暗殺美が偉そうに現れた。

 

2-174:意表〔13歳:LEVEL17〕
陰から現れた黒髪の少女。サルサが知ってるようなので、どうやら味方みたいだ。
盗子「あ、暗殺美!?なんでアンタがここにいんのさ!?いつの間に…!」
暗殺美「詳しい話は後さ。とりあえず雑魚を片付けるから黙って見てるがいいさ。」
傭兵A「ちょ、調子ん乗んなよテメェ!?俺らは他とは一味違うぜ!? ブッ殺す!」
暗殺美「「暗殺者」をナメんじゃないさ。私の秘奥義「風林火山」を見せてやるさ。」
勇者「ふ、風林火山!?」
暗殺美の姿が消えた。
暗殺美「疾(はや)きこと風の如く!」
傭兵B「なっ!? ぐぇっ!!
勇者「は、速い! 僕にも見えないなんて…!」

暗殺美「徐(しず)かなること林の如く!」
傭兵C「ぶばっ!!
傭兵A「そ、そんな!音もしねぇとは…!」

暗殺美「侵掠(しんりゃく)すること火の如く!」
傭兵E「お菓子っ!
盗子「お菓子!?どんな悲鳴だよそれ!」

暗殺美「動かざること…」
傭兵A「ん?おっ、バカが!止まりやがったぜ!」
盗子「ちょっ、暗殺美!危なっ…!」

暗殺美「カカト落としぃいいいい!!」

盗子「えぇーーっ!!?」
山はどこへいったのか。

 

2-175:名前〔13歳:LEVEL17〕
華麗な動きで傭兵達を始末した暗殺美。最後が変だったけど気にしたら負けだ。
傭兵A「ぐっ…!ち、チクショ…ウ…!(バタッ)」
勇者「…ふぅ~、おかげで助かったよ。お前みたく強い仲間がいたなんてね。」
暗殺美「仲間扱いするんじゃないさ。アンタはむしろ私の筆頭ブラックリスターさ。」
盗子「それにしてもアンタ、一人であんなに…。なんかメッチャ強くなってない?」
暗殺美「はぁ?一人で100人なんてどんな化け物さ。軽く毒を盛っといただけさ。」
傭兵A「な、なにっ!?じゃあアイツらは生きてるってことかよ!?ホントか!?」
暗殺美「じきに目覚めるはずさ。仕方ないから今日だけは見逃してやるさ。」
傭兵A「くっ…!覚えてろよクソガキ!この恨みはいつか…!」
暗殺美「クソガキじゃないさ。私には暗殺美って素敵な名前があるのさ。」
傭兵B「今度はブッ殺してやるからな暗殺美!」
暗殺美「だからって気安く呼ぶなさ!」
傭兵C「あさみん!」
暗殺美「可愛く呼ぶなや!」
傭兵E「お菓子…。」
暗殺美「呼べやっ!!」
乙女心は複雑だった。

 

2-176:迂闊〔13歳:LEVEL17〕
傭兵団を撃破した僕達は、次の門へと向かうことにした。のんびりしてはいられない。
盗子「で、でもいいの暗殺美?コイツらこのまま置いてって…。」
暗殺美「フン、気にすること無いさ。こんなハッタリ偽者軍団なんか敵じゃないさ。」
勇者「え?ニセモノ…?それはどういうことなんだあさみん?」
暗殺美「あさみん言うなや!」
傭兵A「て、テメェ…いつから気づいてやがった?」
暗殺美「本物の人奇団は「魔獣使い」と聞くさ。辺りに一匹もいないのは変さ。」
傭兵達「・・・・・・・・。」


傭兵達「Σ( ̄□ ̄;)!!」
盗子「アホかよアンタら!?100人もいて誰も考えなかったのかよ!」
傭兵C「な、なんて鋭い娘なんだ…!コイツらなんて疑いもしなかったのに!」
勇者「いや、僕らはたまたま本物の噂すら聞いたことがなかっただけで…。」
暗殺美「一時期賞金稼ぎで食べてた時期があるのさ。アンタらも確か賞金首さ。」
傭兵B「なっ!?じゃあ俺らが「詐欺師」の「大ボラ兄弟」だってことも!?」
傭兵A「そ、そうか…俺らってそんなに印象に残るほど有名だったのか~♪」

暗殺美「名前がウケたさ。」
傭兵A「それでかよ!!」
傭兵達は傷ついた。

 

2-177:称号〔13歳:LEVEL17〕
実は偽者だったという傭兵達。そんなのに苦戦したなんて大きな声じゃ言えない。
勇者「それにしても、気づかずに偽者を雇うなんて…赤錬邪も底が見えたね。」
傭兵B「いや、ナメねぇ方がいいぜ。アイツは一見マヌケだが、何か裏がある。」
傭兵C「それに次の門にいる「鉄仮面」にも要注意だな。確か名前は…「覇者」だ。」
勇者「鉄仮面!?そいつもここにいるの!?どういう奴なのか教えてくれ!」
傭兵D「俺らもよくは知らねぇが、最近加入してすぐ幹部になったヤリ手らしいぜ。」
勇者「そっか…。何度か聞いた相手だけど、どうやら敵で決まりみたいだね。」
盗子「ん~、まぁしょうがないね。 とりあえず用も済んだわけだし先に…」
傭兵達「ぐ…うぐぅ…。あ、兄貴ぃ…!」
傭兵達の毒が抜けたっぽい。
盗子「わっ、わー!ヤバいよ勇者!毒が切れ始めたよ!早くなんとかしないと…!」
傭兵A「…いや、悔しいが今回は俺らの負けだ。 何もしねぇからとっとと行けよ。」
勇者「ん?なんだかヤケに素直じゃない?」
傭兵C「「詐欺師」にとって引き際は命でな。 …だが、次はブッ殺す!覚えてろよ?」
暗殺美「そういうことなら今すぐヤッとくさ。」
傭兵C「いや嘘ですスンマセン!つい詐欺師の癖で心にも無い嘘がっ!」
盗子「ま、まぁいいじゃん暗殺美。わざわざ無駄な血を流すことはないよ。」
傭兵B「おぉ…!あ、ありがとう妙ちくりん!」
盗子「誰が妙ちくりんだよ!アタシも「あさみん」みたくもっと可愛く呼べよ!」

傭兵達「ありがとう、「闘魂(とうこん)」!」
盗子「やっぱそうなんのかよ!!」
盗子は「萌えぬ闘魂」の称号を手に入れた。

 

2-178:手紙〔13歳:LEVEL17〕
大ボラ兄弟を残し、僕らは「第三の門」へと向かった。赤錬邪はもうすぐそこだ。
次の敵は鉄仮面の「覇者」…聞く限りではかなりの強敵だ。でも、僕は勝つ!
勇者「着いたね。 …よし、どうやらこの扉は普通みたいだ。 開けるよ?」
暗殺美「ちょっと待つさ。さっきから変だと思ってたことがあるのさ。」
勇者「ん?変って何が?」
暗殺美「アンタ、なんか様子が変さ。まぁ元々変な奴ではあったけどもさ。」
盗子「あ~。実は勇者、わけあって記憶を無くしててさ~。もう半年くらい経つよ。」
暗殺美「…ま、別にどうでもいいけどさ。」
勇者「ちなみに賢二は獣に食われたよ。」
暗殺美「うぇえええええっ!!?」
勇者「さ、そろそろ入ろう。きっと敵も待ちくたびれてるよ。」
暗殺美「賢二君が…。そんな…半ば予想通り賢二君は…。」
ギィィイイイ…(開)
勇者「さぁ、出て来い鉄仮面!お前はこの僕が…って、あれ?」
盗子「へ?いな…い? もしかして、今が抜けるチャンスだったり…?」
勇者「いや、安心するのはまだ早いよ。黄緑錬邪の時もそうだったしね。」
暗殺美「あ…。見るさ勇者、なんかメモみたいのが落ちてるさ。見てみるさ。」
勇者「ま、待って暗殺美!罠かもしれないから迂闊に近づ…!」

メモ『飽きたから、帰る。』

一同「えぇーーーっ!!?」
ホントに待ちくたびれてた。

 

2-179:早速〔13歳:LEVEL17〕
緊張しつつ乗り込んだのに、鉄仮面の男はいなかった。「飽きた」ってなんなんだ。
父さんのこととか知りたかったんだけど…まぁいいや。楽して進めるなら文句は無い。
勇者「…というわけで、早くも「王の間」の前に着いたわけだけど…準備はいい?」
暗殺美「私は精神的にまだ立ち直れてないけど…こうなったら八つ当たっていくさ。」
盗子「こ、ここまで来たらもう退くわけにもいかないもんね!いいよ行こうよ!」
勇者「よし、じゃあ開けるよ!!」

ゴゴゴゴゴ…!(開)

影「…フッ、よく来たな。勇者と勇敢なる戦士達よ。」
勇者「その赤い衣装…どうやらお前がボスみたいだね。」
赤錬邪「いかにも。俺が二代目赤錬邪…この五錬邪の総帥だぶしっ!
暗殺美は容赦なく攻撃した。

 

2-180:一撃〔13歳:LEVEL17〕
せっかくの登場シーンだというのに、暗殺美に邪魔されてしまった赤錬邪。
ちょっと可哀想だとは思うけど、やっぱり戦いの場で気を抜く方が悪いと思う。
赤錬邪「ちょ、ちょっと待て!ラスボスの自己紹介っていったら、もっとこう…!」
暗殺美「甘えてんじゃないさ!人生はいつだって時間との戦いなのさ!」
盗子「いいぞぉ暗殺美ー!やっちゃえー!!」
赤錬邪「くっ…! …フン、いい度胸だな小娘。 死して後悔するがいいわぁ!!」
暗殺美「えっ…?」

ズゴォオオオオン!!(打)
暗殺美「きゃうっ!!
赤錬邪の攻撃。
暗殺美は激しくフッ飛ばされた。

暗殺美はグッタリした。
盗子「えっ!暗殺美!?暗殺美ぃいい!! ねぇ!大丈夫!?しっかりしてー!!」
赤錬邪「フフッ。 すまんな、まだ加減ができんのだ。さすがは「神」の持ち物よ。」
勇者「なっ!?じゃ、じゃあその棍棒みたいなのも「神の装備」だっていうのか!?」
赤錬邪「そうだ。かつて様々な伝説を打ち立てた神、「サーハル」の愛用品だ。」
盗子「さ、サーハル…!?どんな恐ろしい奴なの!?「魔神」とか!?」

赤錬邪「「野球の神」だ。」
勇&盗「えぇっ!?」
ホームランとかたくさん打った。

 

2-181:破壊〔13歳:LEVEL17〕
登場直後に暗殺美をフッ飛ばしてしまった赤錬邪。コイツ…意外にも強い!
でもその武器は、「野球の神:サーハル」のバット…?明らかに話がおかしい。
勇者「野球の…神?嘘だ、そんな奴の装備が「神の装備」なわけないじゃないか!」
盗子「そうだよ!神の骨とか牙から「錬金術師」が練成した物だって聞いたもん!」
赤錬邪「な、なにっ!?オークションでかなりの値が付いてたのにか!?」
盗子「それは単なるマニア価格だよ!」
赤錬邪「くっ…!だ、だが強力な武器であることに代わりはない!食らえぇ!!」
勇者「フッ、甘いね!じゃあ僕が、「真の神の装備」ってものを見せてあげるよ!」
赤錬邪「ハッ!そういえばお前には…!!」
勇者は「破壊神の盾」で攻撃を防いだ。

盾は見事に砕け散った。
勇&盗「って、えぇーーーっ!?」
赤錬邪「なっ…!?」
盗子「えっ、えぇっ!?なんで!?なんでブッ壊れちゃってるのさ勇者!?」
勇者「ど…ど、どうだ赤錬邪!?ビビッたぞ!!」
盗子「いや、普通は「ビビッたか!?」だよね!?まぁ確かにビビッた側だけども!」
赤錬邪「フ…フハハハハ!神の装備とはその程度なのか!?他愛ない!」
勇者「…フッ。」

まったくだよ!!
言い訳の言葉も無かった。

 

2-182:範囲〔13歳:LEVEL17〕
力の差を見せつけるどころか、アッサリ砕けてしまった破壊神の盾。モロすぎるよ!
赤錬邪「…さて、実力もわかった。今度はコチラから行かせてもらうとするかな。」
勇者「い、いいだろう!お前の野望は、この僕が打ち砕いてやる!」
赤錬邪「フン、お前は後回しだ。まずは邪魔者から始末することにしよう。」
勇者「な、なにっ!?」
盗子「えっ…!?」
赤錬邪「死ねぇええええええ!!」
勇者「とう…ジャスミィーーーン!!」
盗子「なんで言い直すのかわかんな…うわーっ!!」
赤錬邪の攻撃。

ミス!盗子は攻撃を避けた。
審判「ボォーーーーール!!」
盗子「ってアンタ誰だよ!?戦闘に審判は必要ないよ!?」
赤錬邪「ほぉ、なかなかすばしっこいじゃないか。 だが次は外さんぞ小娘!」
赤錬邪の攻撃。

ミス!再び盗子は攻撃を避けた。
だが風圧でスカートがめくれた。
審判「ストラーーーーイプ!!」
盗子「ありがちなネタすぎるよ!! てゆーか今日は水玉だよ!」
審判「水玉パーーーーンツ!!」
盗子「だ、だからって大声で言い直さなくていいよっ!」
赤錬邪「チッ、なぜだ!?なぜコイツには当たらんのだ!?」
盗子はストライクゾーンに入ってなかった。

 

2-183:真相〔13歳:LEVEL17〕
実力なのか運なのか、なぜか攻撃が当たらないガボン。逃げ足だけは速いようだ。
勇者「あれ?どうしたの赤錬邪?偉そうに吠えた割に当たらないようだけど?」
赤錬邪「フン、貴様がイキがるな。クソの役にも立たん雑魚は下がっていろ。」
勇者「な、なんだって!? 僕だって記憶さえあれば、お前なんか…!」
赤錬邪「ほぉ、言うじゃないか小僧。ならば俺が少し、手助けをしてやろうか!!」
赤錬邪は勇者の頭部を狙った。
勇者は華麗に攻撃を避け

…たかった。
ズゴォオオオオオン!(直撃)
勇者「うがぁああああああああっ!!
盗子「ゆ、勇者ぁーーーー!!」
赤錬邪「おっと、少々刺激が強すぎたか!?アッハッハ! …トドメだぁーー!!」
盗子「ま、待って!こうなりゃヤケだよ!アタシが相手したげるんだからっ!」
審判「チェィンジ!!」
盗子「って失敬だよアンタ!妙な商売と一緒にするなよ!死ねっ!!」
赤錬邪「フッ、やれやれ…。黄緑錬邪といい、最近の小娘は慎ましさが足りんな。」
盗子「そういや…アンタに聞きたかったんだよ。なんで巫菜子が、五錬邪なのさ?」
赤錬邪「ん? 群青の推薦さ。「悪の資質を持った小娘がいる」とな。それで…」
盗子「悪!?違うよ!確かに性悪だったけど、あんな酷くはなかったもん!」
赤錬邪「俺が背を押してやったのだ。まぁ今はその小僧のせいになっておるがな。」
盗子「えっ!?じゃ、じゃあ巫菜子の家族を殺したってのは…!!」
赤錬邪「バカな娘よ。恨むべき相手に、逆にいいように使われているのだからな。」
盗子「ッ!! さ、最低だよアンタ!許せないよ!!」
赤錬邪「許せない…? フハハハ!じゃあどうするのだ?お前に何ができる!?」
盗子「…聞いたよね、巫菜子?アンタの敵は私らじゃないよ!コイツだよ!!」
赤錬邪「なっ…いるのか!?それに気づいて貴様、ワザと今の話を…!?」
盗子「さっきチラッと見えたもん!隠れてないで出ておいでよ、巫菜子!」

陰「・・・・・・・・。」
黄緑錬邪が現れた。
黄緑「あ~、見っかっちゃったよ。やるね盗子ちゃん。」

盗子(中身が違うーーー!!)
姫によるコスプレだった。

 

2-184:血統〔13歳:LEVEL17〕
赤錬邪の一撃でブッ倒れてしまった勇者。
明かされた、巫菜子五錬邪入隊の真実。
そして現れた、黄緑錬邪。

中身は姫。
盗子「ねぇ、アンタ姫だよね!?じゃあ巫菜子は倒しちゃったってこと!?」
黄緑「違うよ!私は黄ミド…赤パジャマ青パジャマ黄ミドレジャフ!!」
盗子「言えてないよ!?なんで自らハードルを高くするのかもわかんないし!」
赤錬邪「チッ、魔導士の姫か…。厄介な奴が来おっ…あ゛。」
盗子「えっ、厄介って…もしかしてアンタ、魔法が苦手なんじゃ…?」
赤錬邪「ば、ばばバカ言え!俺の真の職業は、あの血統職「魔欠戦士」だぞ!?」
〔魔欠戦士(まけつせんし)〕
「防魔法細胞」が一切無い、特異体質者のみが就ける職業。
魔法攻撃に弱い代わりに、物理攻撃への耐性が異常なまでに高い。
ゾウが踏んでも壊れない。
盗子「って、全然言い訳になってないし!むしろ疑惑を確信に変えちゃったし!」
赤錬邪「ぐっ…!だ、だが手はまだある!この「封魔の腕輪」さえあっ…!」
黄緑「ほぇ~、なかなかシャレた腕輪だね。」
赤錬邪は頼みの綱を奪われた。
盗子「イェーイ!ナイスだよ姫!多分それハメられたら魔法力封じられてたよ!」
赤錬邪「うぐぅ…!この俺としたことが…!」

黄緑「どうかな?似合う?」
盗&赤「みずからハメたぁーー!!」
姫は魔法を封じられた。

 

2-185:作戦〔13歳:LEVEL17〕
魔法に弱いことが判明した赤錬邪。
だが肝心な時に姫は、魔法を封じられてしまった。

というか、自分で封じた。
盗子「こ、このバカ姫!なんで自分からハメてんのさ!?チャンスが台無しじゃん!」
黄緑「大丈夫だよ盗子ちゃん。全ては敵を油断させる作戦だよ。」
赤錬邪「フ…フハハハ!作戦だと?そんなハッタリが俺に通じるとでも…」
黄緑「ホントだよ。隙を突いて巫菜子ちゃんが出て来るよ。」
赤錬邪「むっ…!?」
盗子「えっ!?」
巫菜子「えぇぇっ!?」
ビックリ顔で巫菜子が現れた。
巫菜子「て…テメェ、姫!言っちまったら奇襲になんねーだろうが!」
盗子「な、なんで姫もいるのに巫菜子も無事なの!?どゆこと!?」
黄緑「言ってもいいけど結構高いよ。」
盗子「って金とんのかよ!!」
黄緑「落ちたら大変だよ。」
盗子「何がどう高いの!?高度的な問題なの!?」
赤錬邪「やれやれ…寝返ったのか黄緑錬邪?非常に残念だよ。」
巫菜子「寝返っただぁ!?話は全部聞いてた…テメェが黒幕だったとはなぁ!!」
赤錬邪「…フン、騙される奴が悪いのだ。恨むなら、浅はかな自分を恨むがいい。」
巫菜子「よくも…よくも私の家族を…!みんなを、返せぇえええええ!!」
巫菜子は「大地の精霊」を呼んだ。
巫菜子「オラァ!クソ精霊!ブッ殺しちまえやぁあああああ!!」
赤錬邪「チッ…!」


精霊「(-_-)…。」

巫菜子「ど…土下座を求めるなぁーー!!」
相変わらず態度がデカかった。

 

2-186:二重〔13歳:LEVEL17〕
話の流れで味方になったっぽい巫菜子。
だが頼りになるかどうかは微妙な感じがした。
巫菜子「チッ、大地の精霊はダメかよ…。私が呼べる最強の精霊だってのに!」
盗子「で、でもさ!相手は魔法が苦手なんだから、炎の奴とかでもいいんじゃない?」
赤錬邪「ハハッ、普通の炎と魔法の炎…同じものだと思っているのか?小娘が。」
盗子「む、ムッキィー!なんだよ勝ち誇った顔…は見えないけども! 仮面取れ!」
赤錬邪「どうやら希望は絶たれたようだな。家族の元へ逝く準備はできたか?」
巫菜子「ぐっ…!ちくしょう…ちくしょう…!」
赤錬邪「小生意気な娘の涙…たまらんな!ガハハハハ! サラバだ!!」
盗子「み、巫菜子ぉー!!」
赤錬邪は振りかぶった。
巫菜子「…フッ、な~んてな。」
赤錬邪「!?」
巫菜子「オラ今だー!やっちまいな姫ぇーー!!」
姫「私の怒りがマグレを呼ぶよ! むー!〔熱血〕!!」
赤錬邪「なっ!? ぐぇえええええええ!!
なぜかまた姫が現れた。
赤錬邪「ぐはぁ…! ど、どういうこと…だ!?ならばその黄緑錬邪は…!?」
黄緑「騙される奴が悪い…フッ、アンタもいいこと言ったもんさ。」
盗子「げっ、暗殺美!?まさか最初から!?でも声は…あっ!「声帯模写」!?」
暗殺美「倒したと思って私から目を離したのがアンタの敗因さ。」
赤錬邪「くっ…!」
盗子「やーいやーい!バーカバーカ!」
暗殺美「フン、浮かれてんなさ。一緒に騙されてたおバカがさ。」
盗子「くっ…!」
暗殺美「このバカどもめが。」
くっ…!

 

〔熱血(ねっけつ)〕
魔法士:LEVEL23の魔法。(消費MP18)
学年1クラスぐらいを包み込む火炎魔法。思わず夕日に向かって走りたくなる。
 

 

2-187:利己〔13歳:LEVEL17〕
ややこしい演出で、見事赤錬邪を騙した巫菜子達。
いつの間に打ち合わせしたのかは聞かない約束だ。
巫菜子「どうやら形勢逆転のようだな。言い残す言葉でもあるかよ?」
暗殺美「まぁ聞く気は無いけどもさ。」
赤錬邪「ま、待て!早まるな!俺に手を出すと大変なことになるぞ!?」
暗殺美「安心するさ。この後アンタも負けじと大変なことになるさ。」
赤錬邪「そ、そうだ!こんな時のために街中に爆弾を仕掛けたのだ!俺が合図を」
暗殺美「出せなくなるほどに焼いてしまうがいいさ姫。」
姫「ボンバー!」
赤錬邪「待て待て待て!いや嘘だ!俺が死んでも爆破するよう命令してあれ!」
盗子「「あれ!」って! 願望かよ!助かりたいなら嘘でも言い切れよ!」
巫菜子「フン、それにどーせチンケな小爆弾なんだろ?そんなの脅しに…」
赤錬邪「いや、国が一つ吹き飛ぶ威力だ。まぁこの城だけは結界で無事だがな。」

暗殺美「なら一安心さ。」
巫菜子「まったくだ。」
赤&盗「Σ( ̄□ ̄;)!?」
そこには二人の鬼がいた。

 

2-188:夢世〔13歳:LEVEL17〕
なんと街に爆弾を仕掛けたという卑劣な赤錬邪。
だが暗殺美と巫菜子はもっと鬼だった。
赤錬邪「き…貴様らそれでも正義の味方なのか!?国民はどうなる!?」
暗殺美「「正義」なんかパーティーに加えた覚えはサラサラ無いさ。赤の他人さ。」
巫菜子「私の手はもう汚れた後だ。今さら善人ぶる気はねーよ。」
盗子「善人ぶろうよ!何万人も死んじゃうんだよ!?少しは気ぃ遣おうよ!」
暗殺美(敵のペースに乗ったら負けさ。弱気になったら付け上がられるのさ。)
盗子「(そ、そっか!そだよね!)ふ、フンだ!やれるもんならやってみなよ!」
赤錬邪「ああ、俺だ。爆破作戦を実行しろ。(無線)」
無線「(ガガガッ…) ラジャッ!」
盗子「わー!!」
暗殺美「チッ、バカ盗子め!仕方ないからさっさと片付けて阻止しに向かうさ!」
巫菜子「爆弾の場所は私も今朝聞いた。だが走って間に合う距離じゃねーぞ!?」
暗殺美「そんなのやってみなくちゃわからないさ!」
巫菜子「…だな! オラ姫、じゃあ早ぇとこバッサリやっちまえや!」
盗子「え、でも魔法なんだから「バッサリ」ってのはおかしくない?」
暗殺美「だったら「モッサリ」でいいさ。」
盗子「いや、その方がおかしいから! ねぇ姫?」

姫「スピー…。」
三人「グッスリーーー!!」
切り札は夢の世界へ旅立った。

 

2-189:苦戦〔13歳:LEVEL17〕
姫が寝てしまったため、形勢は再逆転されてしまった。
三人は果敢に攻めたが、やはり物理攻撃でダメージは与えられなかった。

むしろ若干気持ち良さそうだった。
赤錬邪「フハハハ!どうした?もう終わりか?俺は痛くも痒くもないぞ!」
暗殺美「くっ…!なんて奴さ!痛みを感じないのかさこの鈍感男め!」
赤錬邪「な、何を言う!俺は女が髪を切ったら気づくタイプだぞ! …言われたら。」
盗子「鈍感じゃん!!」
巫菜子「こ、こうなったら誰か囮にして、その隙に武器を封じるしか…!」
暗殺美「待つさ!アンタ盗子に恨みでもあんのかさ!?」
盗子「それはアタシが聞きたいよ!なんでアタシに決まってんだよ!」
巫菜子「チッ…!それじゃ私が攻撃を受ける、その隙に全員で武器を…」
暗殺美「それもヤメた方がいいさ。聞いた話じゃ恐らく無事じゃ済まないさ。」
盗子「えっ、何かそういう情報でも流れてたの!?」
暗殺美「旅の途中でイヤな噂を耳にしたさ。奴がとんでもない武器を手にしたとさ。」
盗子「あんなバットが!?いや、確かにとんでもないと言えばとんでもないけども!」
赤錬邪「さぁ、無駄な作戦会議は済んだかな?そろそろお仕置きの時間だ。」
暗殺美「や、ヤメろさ!盗子に何するさ!」
巫菜子「危ないっ!逃げろ盗子ーー!!」
盗子「とかなんとか言いながら押さないでよ!なんでアタシを盾に…わーーん!!」
赤錬邪「オルァアアアアアア!!」
赤錬邪、必殺の一撃。
盗子はフッ飛ばされた。
盗子「うわー!もうダメー!死んだー…って、アレ…? 痛く…ない?」
勇者「雑魚が。俺が突き飛ばしてやったんだ、痛いわけないだろうが。」
盗子「…え? ゆ、勇者!?気づいたんだねっ!平気なの!?」
赤錬邪「大人しく寝ていれば良かったものを…。よほど死にたいと見える。」
勇者「フン、今度は貴様が眠る番だ。 永遠に、な。」
勇者が目を覚ました。

 

2-190:過度〔13歳:LEVEL17〕
目を覚ますと記憶が蘇っていた。やっぱりか。やっぱり結局はショック療法なのか。
だが、なぜだろう?何か大事な…一番肝心なことを忘れてる気がするのは…。
盗子「ゆ、勇者…? その邪悪な感じ…も、もしかして記憶が戻ったの!?」
勇者「ああ。もうバッチリ思い出したぞ、ジンギスカン。」
盗子「嘘だよね!?嘘だって言ってよー!」
赤錬邪「どうやらまだ完璧には思い出してはおらんようだな。ならば今のうちに…!」
勇者「甘いわ!もはや記憶の扉は開いた!あと一歩で…うぉおおおおお!!」
盗子「いっけー勇者ぁ!ぜ~んぶ思い出しちゃえー!!」
赤錬邪「さ、させるかぁーー!!」

ピカァアアアアア!(光)
勇者の体が怪しく光った。
勇者「ウッキィーーー!!」
盗子「ええぇっ!!?」
勇者は思い出しすぎた。

 

2-191:本性〔13歳:LEVEL17〕
勢い余って思い出しすぎ、うっかり降臨してしまったウッキー勇者。
だが以前の猿っぷりとは少し様子が違った。
勇者「…思い出した。やっと、思い出したわ。 「全て」をなぁ。」
盗子「ほ、ホント!?今度こそホントに、完璧に記憶蘇えったんだよね!?」
勇者「ああ。この小僧の魔力にあてられ、長らく封じられていた記憶が、な。」
盗子「へ…?ちょっ、なに言っちゃってんの勇者…? 頭大丈夫?」
暗殺美「それは自分の胸に聞いてみろさ。」
盗子「なんでだよっ!!」
勇者「勇者ぁ?フッ、違うな。 俺の名は「猿魔(エンマ)」、人にあらざる者よ。」
赤錬邪「ど…どういうことだ?これもまた作戦の一部なのか?」
暗殺美「私に聞くなさ。アンタが強く殴りすぎたのが悪いんじゃないかさ?」
巫菜子「あの雰囲気…演技には見えねぇ。一体どうなってやがんだ?」
盗子「ハッ、そうだ!もし冗談なら姫の前では…。 ねぇ姫!起きて!起きてよ!」

姫「ぅん~…あと五光年…。」
盗子「長いよ!!」
「光年」は「距離」の単位だ。

 

2-192:姑息〔13歳:LEVEL17〕
どういうわけか、自分は勇者ではないと言い出した勇者。
物語の大前提を根本から否定する気か。
盗子「ゆ、勇者…どうしちゃったんだろ?いつも変だけど今日のはいつも以上だよ。」
暗殺美「よくあるネタから考えると、勇者の中に「別人格」がいたって線が有力さ。」
盗子「あっ!確か勇者の中には…も、もしかしたら「マオ」の人格とかじゃない!?」
巫菜子「いや、でも「猿魔」とか言ってたし…違うんじゃねぇか?」
姫「たぶん背中にチャックが…」
盗子「無いから!あんな精巧な着ぐるみはあり得ないから!」
姫「いるよ。」
盗子「チャックが!?チャックって誰なの!?」
勇者「よく聞け赤錬邪。全てを思い出した俺に言えることは、ただ一つだ。」
赤錬邪「フン、記憶が蘇った程度で何が変わる?言ってみろ!!」
勇者「いや嘘です、ホントごめんなさい。アナタには勝てない…。」
盗子「弱っ!えっ、弱いの!?そういうキャラだったの!?」
赤錬邪「む…?フハハハ!そうかやっとわかったか!この俺に攻撃は通じグェッ!
勇者のボディ攻撃。
赤錬邪は「く」の字に折れた。
勇者「魔欠戦士とて常に強靭なわけではない。隙さえ作ればホレ、多少は緩む。」
赤錬邪「きっ…貴様…卑怯な…!」
勇者「貴様に教えてやろう。700年の経験の差…というやつをな。 来るがいい!」
赤錬邪「上等だぁああああああ!!」
勇者はボコボコにされた。

 

2-193:深緑〔13歳:LEVEL17〕
偉そうに吠えた割に簡単にボコられたウッキー勇者。
強いのかそれとも弱いのか、というかまずヤル気があるのか。
暗殺美「バカ勇者が。隙を突けって言っときながら正々堂々挑むからさ。」
勇者「フッ。この猿魔、最後の戯れよ。 さぁ食らうがいい!我が必殺の騙しを!」
盗子「宣言しちゃうの!?騙すって言われちゃ誰も騙され…」
勇者「あぁっ!あんな所に空飛ぶ鳥がっ!!」
盗子「しかも作戦が古典的すぎるよ!」
暗殺美「ていうか気づくさ!大抵の鳥は空を飛ぶもんさ!」
赤錬邪「だ~れが騙されるかバカが!それにこんな城内に鳥なんぞいるはずが…」
鳥「クエェ!」
赤錬邪「えぇっ!?ばぶしゅっ!
盗子「ってホントにいたー!!」
勇者「チッ、やっと来おったかグズが。」

麗華「うむ、少々待たせた。」
賢…ぶふっ!

れ、麗華様がいらっしゃいました。
赤錬邪「ぬっ!?そ、その十字傷…貴様もしや、噂の剣士「深緑の疾風」か!?」
麗華「その名は好かん。もっと乙女チックに「フローレンス麗華」とでも呼ぶがいい。」
赤錬邪「乙女だぁ? フン、もういい歳だろうにびばばばばばばばばばばばっ!!
殺人ビンタが火を噴いた。

 

2-194:爆破〔13歳:LEVEL17〕
颯爽と現れた麗華は、赤錬邪の防御力を無視してボッコボコにした。
盗子達は何故か軽く同情した。
赤錬邪「ぶふっ…バカな…!守備最強を誇る俺に、こんな…!」
麗華「理解できぬか?まぁ安心しろ、ワシは体に教え込むのは大の得意だ。」
赤錬邪「ま、まま待て!そこまでだ!これ以上やったら国を爆破するぞ!?」
盗子「はぁ?またその脅しー? フンだ!やれるもんならやってみなよ!」
赤錬邪「ああ、俺だ。爆破を決行しろ。(無線)」
盗子「わー!!」
暗殺美「チッ、懲りろさバカ盗子め!こうなったら…」
勇者「まぁ待つがいい、娘。 多分だがもう大丈夫だ。」
暗殺美「へ…?」
麗華「ああ。 今頃”奴”が、全てを片付けておる頃だ。」
赤錬邪「さぁどうした!?やれっ! お前達は死ぬがそれは名誉の死だと思…」
無線「(ガガッ…)だ、ダメです赤錬邪様! 全滅です!私以外の衛兵はもう…!」
赤錬邪「な、なにぃ!?どういうことだ!? よし、卒業式の言葉風に教えろ!」
無線「えぇっ!?は、 ハイ!その…みんなで失敗、夏の都市爆破(都市爆破!)」
赤錬邪「腹が立つ。」
無線「そ、そんなっ!」
それが兵士の最後の言葉となった。

 

2-195:本体〔13歳:LEVEL17〕
赤錬邪の都市爆破計画は、なにやら失敗したっぽかった。
勇者と麗華は何かを知っているようだ。
赤錬邪「ぐっ…!ならば仕方ない、お前が一人で爆破にあたれ!」
勇者「無理だな。”アレ”の起爆には強い「魔力」が要る。お前も知っていよう?」
赤錬邪「な、なぜ貴様がそのことを!?」
麗華「爆弾があるのは城下の「カイア塔」。今からでは援軍も間に合うまい。」
赤錬邪「き、貴様らもしや…最初から目当ては…!」
無線「べばふっ!
赤錬邪「むっ!?ど、どうしたんだ!?オイ、答えろ!」
姫「特技は「お昼寝」だよ。」
盗子「なんでアンタが答えんだよ!しかも見当違いにも程がある回答だし!」

無線「…覚悟しろ赤錬邪。 目的は果たした、次は貴様の番だ。」

赤錬邪「き、貴様…「覇者」かっ!!?」
盗子「えっ!?い、今の声って…ちょっと変えてるけど、まさか…!」
無線「フッ…。」

~シジャン城下:カイア塔~


勇者「耳だけはいいようだな、盗子。」
勇者Bが現れた。

 

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創造主
~勇者が行く~(2)
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