~勇者が行く~(2)

本編( 4 / 10 )

第二部:第二章

第二章

 

2-76:食逃〔12歳:LEVEL17〕
パンシティを離れ、地図を頼りに神を探すこと数ヶ月…。季節は冬になっていた。
最初は半信半疑だった神の話も、調べるにつれ少しだけ信憑性が増してきた。
とりあえず、一応調べる価値はありそうだ。もしガセだったら盗子の命は無いがな。
~ギマイ大陸:カヨミ村~
勇者「ふぅ~。 やれやれ、この村でも大した成果は無しか…。 ん?賢二は?」
盗子「あ、なんかお昼買ってくるってさ。適当に待っててって。」
勇者「そうか。じゃあ俺達は武器屋でも狩ってくるか。」
盗子「狩らないから!たまには普通にお金出して買おうよ!平民ぶろうよ!」
勇者「オイオイ、無茶を言うな。俺達のどこにそんな金が…」
声「金が無ぇだとぉーー!?」
勇&盗「!?」
女「そう声を荒げるな。確かに今は無いが、後でちゃんと弟子が払いに来る。」
店主「誰が信じるか糞アマぁ!食った分いますぐ払いやがれってんだ!」
盗子「なんか荒れてるっぽいね、あの露店。あれ助けたらお金になんないかな?」
勇者「…いや、関わるな。弟子が払うとかどうとか聞こえた。」
盗子「ふ~ん。ま、そだね。当人同士の問題だよねやっぱ。」
店主「金が無ぇなら洗え!皿を洗っていきやがれ! そしてその心も洗ってけ!」
勇者「あの店主、いいこと言いやがるぜ…。」

麗華「だーかーらー!!」

俺は、払う気は無い。
勇者は逃げ出した。

だが周りを囲まれてしまった。

 

2-77:弱味〔12歳:LEVEL17〕
不覚にも見つけてしまった、もう二度と会わないと思っていた悪魔の師匠「麗華」。
当然逃げようとしたのだが、なぜか捕まってしまった。やはりタダ者ではないようだ。
勇者「くっ…!は、放せ! とりあえず鼻はやめろ!もげるっ!」
麗華「心配をかけたな店主。コイツが今話していた我が愛弟子だ。」
店主「なんだとこの野郎!テメェか!?テメェが悪の落とし子か!?」
勇者「ふ、フザけるな!誰がこんな性悪の…! 俺の母は元「魔王」だ!」
盗子「いや、そっちの方が「悪」っぽいよ!?もはや究極だよ!?」
勇者「とにかく!俺はビタ一文払わんぞ! たとえどんなに脅されようともな!」
麗華「おぉ、奇遇だな。ワシも脅すのは面倒だと思っていたんだ。(抜刀しながら)」
勇者「おいくらですかっ!さぁ、おいくらですかっ!?」
盗子「ちょっ、アンタ!アタシの勇者をイジめないでくれる!?何様のつもり!?」
麗華「ワシか?ワシの名は麗華。「麗しい華」と書く、乙女チックな「乙女剣士」だ。」
勇者「くっ…! お、覚えてろよ。いつかこの上下関係を覆してやる…!」
麗華「フフッ、ナメるでない。このワシには死角なんぞ皆無…」
賢二「オーイ、ただいまみんなー!お待たせ…って、このおネェさんは??」
勇者「に、逃げろ賢二!たったいま新たな「魔王」が降臨しぶべっ!
麗華「お、おおおおお姉さぁあああんっ!?」
麗華は激しく取り乱した。
勇者「ん?どうした貴様?メチャメチャ動揺してるようだが…。」
麗華「い、いや、なんでもない。少々乙女のツボを突いたセリフだったものでな…。」
勇者「おねえさん。」
麗華「さぁ勇者、素敵な墓石を選びに行こうか。」
勇者「なぜだ!この扱いの違いはなんなんだ!?」
賢二「え?え? い、一体何がどうなって…??」
麗華「う、ううん。なんでもないのよ♪ うふふ☆」

こ、コイツまさか…!
勇者は麗華の弱みを握った。

 

2-78:病気〔12歳:LEVEL17〕
麗華の態度を見て、俺は気づいた。間違いない、コイツは賢二の姉…「賢一」だ。
そういえば奴は「乙女」という言葉を多用する。よっぽどその名がイヤなのだろう。
これは、チャンスだ。このネタで奴を脅せば、立場は一瞬にして逆転できるだろう。
だが、奴もそう簡単には認めまい。なんとかうまい具合に奴から引き出さねば!
勇者「と、ところでだ師匠…こんな所で何してるんだ貴様?」
盗子「えっ!この人が勇者の師匠なの!?話と全然違うじゃん!美人さんじゃん!」
麗華「やれやれ。その様子じゃ、とんでもないブサイクと聞かされていたようだな。」
賢二「いや、髪の毛が「蛇」だと…。」
麗華「化け物じゃないか!ブサイクどころか見ただけで石じゃないか!」
勇者「ちょ、ちょっとしたジョークだ、気にするな。ところで質問の答えは?」
麗華「…ふぅ~。 「神」を追っている。どうやらこの辺りにいるようなのでな。」
賢二「あっ、おネェさんも神を探してるんですか!?」
麗華「お、お姉さぁーんっ!!」
賢二「!!?」
勇者「気にするな賢二、ただの発作だ。コイツは末期の「おネェさん病」なんだ。」
麗華「へ?あ…そ、そうなんだ。そう言われると相手を抱きしめてしまうの、だっ☆」
賢二「うぐぅ。 く、苦しいですよ~。」
盗子「おネェさん病?聞いたこと無いけど…そんなんホントにあるの?」
勇者「何を言う?お前の兄は末期の「ラブリー妹病」じゃないか。」
盗子「痛い、痛いよ勇者…。現実って痛いよ…。」
麗華(あぁ…幸せだなぁ…。)
賢二は失神寸前だ。

 

2-79:作戦〔12歳:LEVEL17〕
俺達と麗華は再会を祝し、晩には宴を開いた。そして逃げた。(金が無いから)
そして深夜。物音にふと目が覚めると、麗華がいなかった。 そうか、行く気か…。
麗華(これ以上一緒にいたら、恐らく勇者にバレる。許せ、賢二よ…。)
声「む?なんだ、目的は同じなのに別行動なのか?つれない奴だなオイ。」
麗華「!! …お前か。若いうちから夜更かししとると背が伸びんぞ?早く寝ろ。」
勇者「なぁ師匠…いや、何でもない。気にしないでくれ。」
麗華「ん?どうした勇者、言いたいことがあるならハッキリ言うがいい。」
勇者「実はな師匠…いや、やっぱ何でもない。」
麗華「…ワシは煮えきらん男は嫌いだ。もう行くぞ? サラバだ。」
勇者「あ、そうだ賢一!」
麗華「だからなん…ハッ!!」

よっしゃ勝った!俺は勝ったぜー!!
勇者の誘導尋問が鮮やかにキマッ…
ドガッ!バキッ!バコバコッ!メキャッ!ドスッ!グゴバキッ!グキッ!ドスドスッ!
ババババシッ!ズゴッ!ドバシッ!ズババン!ドゴッ!ゴンッ!ガコンッ!バシッ!
ズガンッ!ズガガガガン!ズガガガガガガガンッ!ザシュッ!ドバシュッ!ザンッ!


ぼ、僕は…一体…。
勇者は記憶を失った。

 

2-80:忘却〔12歳:LEVEL17〕
朝。目が覚めると、なんだか体中が痛かった。でもなぜか、全く心当たりが無い。
一体、僕の身に何が起こったんだろう。 …というかそもそも、僕は誰なのだろう?
盗子「おっはよー勇者!って、ギャー!なんて顔してるのさ!まるでオバケじゃん!」
勇者「…ゆうしゃ? なるほど、僕の名は勇者というのか…。」
賢二「へ…? ど、どうしちゃったの勇者君?なんかいつもと感じが…。」
勇者「どうやら僕は、鈍器以上の何かで殴打され、記憶喪失になったらしい。」
盗子「き、記憶喪失!?って、そんな自覚ある記憶喪失があるかー!」
勇者「だから悪いけどお前達、僕に僕のことを知ってる限り教えてほしい。頼む。」
賢二「えっ…ホントに覚えてない…の?ホラ、僕は賢二。親友だよね僕ら?」
勇者「けんじ…ゴメン、わからない。そうか親友なのか…。 ホントすまないな。」
賢二「勇者君…そんな…。」
盗子「あ、アタシは彼女!そう、勇者の彼女の盗子ちゃんだよ☆」
賢二(うわー。)
勇者「それは無い。」
盗子「あっさり否定されたー!!」
勇者「本能的な何かが、そう囁いた。勘弁してほしい。」
盗子「謝られたー!! なんかその方がかえって傷つくよ!うわーん!」
賢二「いや、この機に乗じて彼女と言い張った盗子さんも結構酷いよ?」
勇者「大丈夫、そう悲観するほど酷くはないさ。」
盗子「顔を見るな顔を!死ねっ!!」
賢二「ホントに、全部忘れちゃったんだね…。」

ところで、姫ちゃんはどこかな?
全部じゃなかった。

 

2-81:出発〔12歳:LEVEL17〕
記憶を失った僕は、賢二と盗なんとかって奴と、共に旅立つことになった。
なにやら今は、「神」を追っているんだとか。 見つかるかは知らないけど、頑張ろう。
勇者「朝食も済んだしそろそろ行こうか。日が暮れるまでに次の村に着きたいし。」
盗子「でもさ、平気なの勇者?記憶も無いのに旅するだなんて…。」
勇者「いや、安心してくれ。教えてもらったことは全て記憶したよ、ジェニファー。」
盗子「「盗子」だから!一文字も合ってないじゃん!根本から忘れてるじゃん!」
勇者「だ、大丈夫!大事なことは覚えてるから!」
盗子「フォローになってないどころか逆に傷つくよそれ!」
賢二「でもホントに大丈夫?生活に不都合とかは無いの?」
勇者「うん、問題ない。生活習慣や時代背景的なモノは、なぜか都合よく覚えてる。」
賢二「じゃあ、そろそろ行く?とりあえず麗華さんが教えてくれた場所にでも。」
盗子「でも候補は二つあったよね?どっちに行こっか?西?北?」
勇者「間とって北西に行こうか。」
盗子「何も見つかんないじゃん!この選択肢で間をとる意味がわかんないよ!」
勇者「なら西だ。なんとなく、僕は西に何かがある気がするんだ、ナンシー。」
盗子「ワォ!ホントなのサム!?ってだから「盗子」だっての!!」
盗子は「ノリツッコミ」を覚えた。

 

2-82:崩壊〔12歳:LEVEL17〕
カヨミ村から西に向かった僕達は、「ニシシ村」という寂れた田舎町に辿り着いた。
いや、「寂れた」と一言で片付けられるレベルじゃない。なんか、「崩壊」してる…。
賢二「なんか…神探しどうこうって状況じゃないね。人っ子一人いなそうじゃない?」
勇者「ごめん。こっちじゃなかったようだね…。」
盗子「ま、まぁしょうがないよ。二分の一だもん、外れたって気にすることないよ。」
勇者「こんなことなら、最初から素直に北西に…」
盗子「いや、そうじゃないから!そっちは選択肢にすら入れてなかったから!」
勇者「まぁとりあえず、神は後回しにして…今日のところは宿と食事を探さないとね。」
盗子「うん、そだね。最近寒くなってきたから野宿はキツいしね~。」
賢二「…あ!見て見て!なんかあの家だけ明かりついてない!?人がいるかも!」
勇者「ん、ホントだ! よし、じゃあ話を聞きに…」

表札『神様』

ええぇっ!!?
名前にしてはふてぶてしい。

 

2-83:再会〔12歳:LEVEL17〕
唯一明かりのついていた家…しかもその表札には「神」の文字。まさかの急展開だ。
本来ならもっと苦労の果てに見つけるべき相手だと思うんだけど…まぁいいか。
ガラガラガラ…(開)
勇者「たのもー!ちょっと聞きたいことがあるんだけどー!」
声「はぁ~い!どちら様ですかぁ~?」
勇者「フッ、僕?僕はさすらいの記憶喪失…名前は思い出せない。」
盗子「「勇者」だから!なんで今になってソレを忘れちゃうの!?」
少女「えっ…? キャ、キャァーー!!ゆゆゆ勇者先輩!?勇者先輩だぁー☆」
盗子「うげっ!あ、アンタはっ…!!」
弓絵「あ~ん☆ 会いたかったですぅマイダーリ~ン☆」
なぜか弓絵が現れた。
盗子の中を嫌な予感が駆け抜けた。
勇者「なっ!? そ、そうだったのか…僕にはマイハニーがいたのか…!」
盗子「違っ、騙されちゃダメだよ勇者!ってかアタシん時と扱いが違くない!?」
弓絵「…あれ?なんか様子が変ですぅ~。どうかしちゃったですかぁ~?」
賢二「あー…それがね、勇者君ちょっと記憶を無くしちゃってて…。」
勇者「ご、ごめん。残念だけど記憶の片隅に塵ひとつの大きさも残ってないんだ。」
賢二「いや、そこまでハッキリと告げなくても…。」
弓絵「そんな~!それじゃ弓絵と「弓者ちゃん」の将来はどうなるんですかぁー!?」
盗子「コラそこー!勝手に愛の結晶を創るなー!しかも命名まですなー!!」
勇者「そうか…僕達にはそんなラブリーな存在まで…!」
盗子「だから騙されるなってば!勇者にはアタシっていう妻がいるんだからー!」
勇者「ありえない。」
盗子「うわーん!!」

神「・・・・・・・・。」
神の立場が無い。

 

2-84:貧弱〔12歳:LEVEL17〕
どういう訳か、神の家にいた弓絵という元後輩。 なぜか必要以上に馴れ馴れしい。
そして、奥から現れた家主らしい老人。どうやらコイツが神様みたいだけど…。
勇者「お前が…神? あの旧星歴の伝説の…。」
神「あ~、いかにもそうやで。なんや、ワシに何かアレかいな?」
盗子「な、なんかキャラ…軽くない?全然神っぽくないんだけど…。」
弓絵「盗子先輩に何がわかるんですかぁ~?神クンを悪く言わないでくださーい!」
神「ええこと言うた。いま弓絵ちゃん、ええこと言うた。」
勇者「悪いけど僕も神らしくないと思う。」
弓絵「ですよねぇ~☆」
神「ガーン。」
賢二「あ、あの…。実は違うとか?世界を滅ぼしかけたのは他の神様とか…?」
神「いやいや。ワシもこう見えて、いくつもの国を滅ぼしとったアレやで?」
盗子「嘘だー!絶対嘘だよそんなの!全然強そうに見えないもん!」
勇者「じゃあ聞くけど、一体どうやって…?」

神「あ~、「財政難」で。」

ま、まさかコイツ…!
「貧乏神」が現れた。

 

2-85:神話〔12歳:LEVEL17〕
もっと偉大なものを想像していたのに、いざ現れたのは「貧乏神」。なんてことだ。
でもさすが古い神だというだけあって、昔のことは色々と知っているっぽい感じ。
話を聞いていると、色々と謎が判明してきた。意外にも頼りになる神だったらしい。
貧乏神「500年前ちゅーたら、アレやね。ワシら「十二神」がおった頃やね。」
盗子「えぇっ!?増えてんじゃん!実にその数4倍じゃん!」
勇者「聞いた話では、三体の神々がそれぞれ空・海・大地に封印されたと…。」
貧乏神「封印されたアレはね。 他は死んだんよ。あと、隠れた奴とかな。」
勇者「最後のは凄まじくお前のことっぽいね。だとしたらとっても潔くないよ。」
賢二「な、なんか結構イッパイいたんですね…。ちょっとありがたみが…。」
貧乏神「あ~。この「神」ってのはな、宗教家らが言うようなアレとはちゃうんよ。」
賢二「へ?どういうことですか?よくある偶像崇拝的なモノではないと?」
貧乏神「まぁアレよ。「地球人の力を超越した存在」…平たく言やぁ「異星人」よ。」
勇者「…なるほど。それなら偶像説に比べれば多少は信憑性があるけど…。」
貧乏神「まぁよっぽどなアレ持っとらんと、「神」とまでは呼ばれんかったがね。」
勇者「いや、「貧乏神」が誇らしげに言うセリフじゃないと思うけども。」
貧乏神「ちゅーわけで、あの頃は荒れとったわ。 なんせワシら13人は…」
盗子「ちょっと待って!また増えてるから!さらにもう一人増えちゃってるから!」
貧乏神「あ~。なんせ昔の話なんでな。 ま、話しとれば思いだす思うわ。」

~二時間後~
貧乏神「んでな、そこでワシは言うたったわけよ。他の48人に…」
盗子「増えまくってんじゃん!!」
勇者は前言を撤回した。

 

2-86:仲間〔12歳:LEVEL17〕
ボケているのか、どうにも信憑性の薄い貧乏神の話。信じかけた僕がバカだった。
でもまぁ、神がどういう存在かわかっただけでも収穫としようか。多くは望むまい。
貧乏神「ちゅーわけで、アレよ。ワシ逃げ惑っとったでな、実はよう知らんのよ。」
盗子「って今さらかい!二時間語った後でそんなカミングアウトしないでよ!」
賢二「で、でもいくつか、ためになる話も聞けたし…良かったよね?」
勇者「そうだね。まぁ足りない情報はまた道中で集めればいいさ。」
貧乏神「そう言ってもらえると助かるわ。ありがとな。」
勇者「じゃあとりあえず今日はもう寝ようか。そして明日は早めに出よう。」
貧乏神「…なぁ坊よ。もう一人くらい仲間増えよっても…平気かなぁ?」
勇者「ん? うん。仲間は多いに越したことは無いけど、それが?」
貧乏神「ワシも無駄に生き過ぎた。どうせ死ぬんやったら、少しでも誰かの役に…。」
勇者「貧乏神、アンタ…。」
貧乏神が仲間になりたそうにコチラを見ている。
仲間にしてあげますか?

はい
いいえ

 

2-87:淡白〔12歳:LEVEL17〕
申し訳ないけど、貧乏神は置き去りにして旅立つことにした。 貧乏旅はゴメンだよ。
盗子「みんな準備はできたー?次の村は遠いんだってさー。」
勇者「うん、準備は済んだ。別れを済ませたら向かうよ。」
貧乏神「弓絵ちゃんも行ってまうんか…なんや寂しくなるわな…。」
弓絵「そうですかぁ~?弓絵は勇者先輩と居られれば幸せでぇーす☆」
貧乏神「いや、そこはこう…もっと名残りを…。」
勇者「じゃあそろそろ行こうか。貧乏神…微妙にだけど世話になったね。」
貧乏神「あ~チョイ待ちぃや。最後に坊よ、その盾のことなんやけどな…。」
勇者「ん?僕の盾に何か?」
貧乏神「その盾…その見た目はアレよ。「破壊神」の牙から切り出したもんやね。」
勇者「なっ!?」
賢二(そんな本格的に呪われたモノだったなんて…。)
盗子「ま、まさか他にも似たようなアイテムがあるの!?神の力とか持った…!」
貧乏神「ワシも全部は知らんがね。まぁ神々とヤルんなら、探して損は無いやろな。」
勇者「わかった、ありがとう。今後は呪われてないヤツを探してみることにする。」
弓絵「まだですか~センパァ~イ?こんなお爺ちゃん放っといて急ぎましょうよ~。」
貧乏神「ガーン。」
勇者達は村を後にした。
貧乏神「神の装備のアレがまた一人…。こりゃぼちぼち、アレがアレやなぁ…。」
結局どれなんだ。

 

2-88:悲鳴〔12歳:LEVEL17〕
ニシシ村を離れた僕達。でも、これといって行くあてもなく、正直困っていた。
勇者「さて、問題はこれからどこへ向かうか…だね。誰か案は無いのか?」
弓絵「弓絵は先輩と一緒なら地獄にだって喜んで行っちゃいますよぉ~☆」
盗子「あ、アタシだって同じだもん!勇者となら地獄だってヘッチャラだよ!」
勇者「気をつけてね。」
盗子「見送らないで!!気遣ってそうなセリフだけど全然気遣ってくれてないよ!」
ァァァァァ…!!
勇者「!?」
賢二「ん?どうしたの勇者君?」
勇者「いや、いま何か…悲鳴のようなものが聞こえた気がしたんだ。」
盗子「悲鳴?う~ん、気のせいじゃないの?」

~その頃~
貧乏神「ハァ、ハァ…な、なんやねんワレは…? うぐぅ!」
群青「黙れよ雑魚が。テメェにゃ聞きてぇことがある、大人しくついてきな。」
気のせいじゃなかった。

 

2-89:拉致〔12歳:LEVEL17〕
微かにだけど、確かに聞こえた何かの悲鳴。なんだか妙に胸騒ぎがする。
これは、貧乏神に何かあったのかもしれない。 よし、やはり一応戻ってみよう。
~ニシシ村:貧乏神の家~
群青「はぁ~…拍子抜けだぜ。噂の神ってのはこの程度なのかよ、ったく。」
貧乏神「ヘッ…ナメるな坊よ。ワシぁ堕ちても神、あんさんごときにゃ従わんで。」
群青「あ゛ん? いい度胸じゃねぇかジジイ。」
貧乏神「…と、昔のワシなら言うたったと思うわ。」
群青「弱っ!弱いなお前!きっと昔もこうだったと思うぞ!」
貧乏神「ワシをさらって…どないするアレや?何を企んどんねんワレ?」
群青「世界を制すためにゃ神の力が必要だ。それにゃまず情報が要るんだよ。」
貧乏神「…無理やな。あんさんはアレやで。あの「勇者」の坊に潰されるアレやわ。」
群青「なっ!テメェまさかもうあの青髪のガキと…!?」
貧乏神「アレは結構やるアレやで。きっと今頃この事態にも気づいてる頃や。」
群青「チッ…! さっさと来い!でねぇとブッ殺すぞテメェ!?」

声「待ぁーてぇー!!」

群青「!! こ、この声は…!」


黒錬邪「お待たせ。」
群青「紛らわしいんだよ!!」
貧乏神は連れ去られた。

 

2-90:裏技〔12歳:LEVEL17〕
嫌な予感がして戻ってみると、貧乏神の姿は無く、床にわずかな血痕があった。
案の定、貧乏神の身に何かが起こったっぽい。もう少し早くに気づいていれば…!
勇者「荒らされた後…。 くっ、遅かったか…!」
弓絵「遅くなんかないですぅー!弓絵達の愛はまだまだ始まったばかりでぇーす☆」
盗子「ゆ、勇者!床にメモみたいのが落ちてるよ!なんかの手掛かりかも!」
勇者「ホント!?貧乏神の奴…意外とヤルじゃないか!早速見てみよう!」
手紙『アレを右に行ったアレの』
一同「わからないっ!!」
賢二「書きかけって要素を差し引いても、これはあんまりだよね…。」
盗子「まぁこんな目立つ場所にあるぐらいだもんね。ヒントだったら絶対隠滅され…」
勇者「…待って!この紙、ほのかにリンゴのような香りがする。もしかして…。」
勇者は紙に火を近づけた。
なんと文字が浮かび上がってきた。
盗子「あ、あぶり出し!?なんでわかったの!?」
勇者「以前聞いた覚えがあるんだ。リンゴの汁であぶり出しの真似事ができると。」
弓絵「スゴいです勇者先輩ー☆ とても記憶喪失とは思えませーん☆」
盗子「で!で!?なんて書いてあんのさ賢二!?」
賢二「あっ、えっと、「北西 洞窟 群青色」…ぐ、群青色!?まさか…!」
勇者「そ、そんな…奴が動き出しただなんて…!」
盗子「えっ!覚えてるの勇者!?」
勇者「いや、なんとなく雰囲気的に。」
盗子「紛らわしいよ!無理してそれっぽいセリフ言わなくてもいいから!」
勇者「ま、とりあえず行こうか。行くあての無い旅も不毛だしさ。」
盗子「はぁ~…。 だね。とりあえず行っとこっか。」
貧乏神はどうでもいいのか。

 

2-91:相談〔12歳:LEVEL17〕
群青なんとかを倒すため、僕達は北西にあるという洞窟を探すことにした。
でもその前に、やはり記憶が無いのは痛いということで、策を練ることにしたのだ。
勇者「というわけで、いい案があったら挙げてほしい。何かない?」
盗子「う~ん、やっぱ記憶喪失の定番って言ったら「ショック療法」かなぁ?」
勇者「ショック療法か…。でもどんな原因でなったのかも覚えてないしな~。」
盗子「と、とりあえず…よくあるみたく、棒か何かで殴ってみよっか?」
弓絵「叩いちゃダメですぅー!勇者先輩はもう一人の体じゃないんですよー!?」
盗子「妊婦扱いかよ!てゆーか少なくとも勇者は産まないから!」
勇者「無理だね。悪いけど半端なことじゃ僕はショックは受けないと思う。」
賢二「姫さんは行方不明だよ。」
勇者「ショォーーーック!!」
盗子「えっ!なんで姫だけは覚えてるの!?アタシもショックなんだけど!」
勇者「というか賢二…そのショックはちょっとジャンルが別な気が…。」
賢二「ご、ゴメンつい…あっ、そうだ!女医先生に聞いてみようよ!島に電話して!」
盗子「あー!確かあの人脳外科専門だったよね!確かに名案かも!」

プルルルル…ガチャ。
盗子「あ、もしもし?盗子だけど女医先生いるー?勇者が大変なんだけどー!」
声「あら?久しぶりじゃない、どうしたの?勇者君が記憶喪失にでもなった?」
盗子「ってなんで知ってんの!?言っとくけど盗聴は犯罪だよ!?」
声「あら、当たっちゃった?冗談だったのに☆ でも残念ね~、私の専門外だわ。」
盗子「そんな~!このままじゃ今まで育んだアタシらの愛が記憶の底にぃ~!」
声「イタ電なら切るわよ。」
盗子「こっぴどいよ!医者が乙女のハートに致命傷与えるってどうよ!?」
声「あ、そういえば私の知り合いに…彼ならもしかして…。 紹介してほしい?」
盗子「えっ!ホント!?やったー!これで二人の愛は守られるよー!」

ガチャ。 プー プー プー…
盗子は夕日が目に染みた。

 

2-92:名医〔12歳:LEVEL17〕
女医とやらのツテで、あらゆる難病に挑んできたという名医を紹介してもらえた。
しかも、偶然にもその医師はすぐ近くに住んでいた。なんだか運命的な偶然だ。
というわけで、早速僕達はその医師が勤める病院を訪れたのだった。
ガチャッ…(扉)
勇者「邪魔するよ。カクリ島の女医の紹介で来た者だけど…?」
医師「む?おぉ、キミ達が…。 ようこそ少年達。冴子君から話は聞いているよ。」
盗子「でもさ、ホントに治せるの?そんな簡単なモンじゃないと思うんだよね~。」
医師「まぁ任せたまえ。これでも昔は、皆に「ゴッドハンド」と呼ばれた私だ。」
盗子「ゴッドハンド!?なんか期待持てそうな異名じゃん!いけそうじゃん!?」
医師「懐かしいな…よく言われたものだよ。「この死神っ!」…とな。」
盗子「そっちの神かよ!とっても不名誉な称号じゃん!!」
賢二「まさか一度の人生で、二人の死神に出会うなんて…。」
勇者「ほ、ホントに大丈夫なの?命より大事な記憶ではないんだけど…。」
医師「安心していい。私に治せる病は無い!!」
盗子「「ぬ」じゃないの!?一文字違いでえらい違いだよ!?」
勇者「ま、まぁいい。とりあえず任せてみよう。 ところでお前…名前は?」

医師「私かね? 私は「相原」。そこに患者がいる限り、私は闘う。」
「患者」と書いて「ぎせいしゃ」と読む。

 

2-93:治療〔12歳:LEVEL17〕
自称「ゴッドハンド」な中年医師、その名は「相原」。なんだか妙な名前だ。
また、性格も妙だ。かなり信用できないけど、ものは試し…少しだけ任せてみようか。
医師「ではまずは、「ショック療法」から入ってみるとするかね。」
盗子「ホラやっぱりー!やっぱアタシの読みが当たったじゃーん☆」
医師「…じゃあヤメます。」
盗子「なんで!?なんか気に障っちゃったの!?」
医師「私にも、医師としてのプライドというものが…あればなぁ…。」
盗子「無いの!!?」

~一時間後~
医師「仕方ない…じゃあ次はこのロケットランチャーで…。」
勇者「ま、待って!それはさすがにシャレにならないんじゃないの!?」
医師「フトンがだっふんだ。」
盗子「シャレ言えばいいってもんじゃないから!ってシャレになってないし!」

~二時間後~
医師「私の子供の頃はね、ラーメンが50銅(約50円)で食べられたんだよ。」
勇者「なにっ!?そんなに安く!?」
賢二「いや、「カルチャーショック」はどうでしょう…?」

~三時間後~
相原「…ただの風邪です。」
一同「待てぇーい!!」
待ったところで結果は同じだ。

 

2-94:請求〔12歳:LEVEL17〕
三時間も粘ったのに、結局治療は失敗した。どうやらかなり厄介な状態らしい。
勇者「残念だけどお前じゃ無理らしい。ラチがあかないから諦めることにするよ。」
相原「ま、待ちたまえキミ!最近の風邪を甘く見てはいかんぞ!」
盗子「あくまで風邪の線でいく気かよ!往生際が悪すぎるよ!」
勇者「まぁそう言わないで。コイツなりに頑張った結果なんだからさ、ナタリー。」
盗子「「盗子」だから!!まだ覚えてなかったのかよっ!」
相原「行く気かね?聞けば大きな戦いが近いらしいが…記憶無しで平気かね?」
勇者「問題ない。僕には頼りになる仲間達がいるからね。」
賢二(な、なんか未だに慣れないなぁこの勇者君…。)
相原「…そうか。 じゃあ受付前で待ちたまえ。会計は急ぐように伝えよう。」
盗子「えぇっ!?お、お金取るの!?なんにも解決できなかったクセに!?」
相原「何を言うんだ。命があるだけありがたく思いたまえ。」
盗子「ヘタしたら死んでたの!?」
賢二「え、えっと…。紹介だからてっきりタダだと思ってて、お金無いんですけど…。」
相原「それは参ったねぇ~。一応決まりだから払ってもらわねば帰すわけには…」
弓絵「勇者先輩見てくださ~い!ナース服を手に入れちゃいましたぁ~☆」
勇者「ん…?」
相原「!!」
ナース姿の弓絵が現れた。
医師の目が怪しく光った。

 

2-95:別離〔12歳:LEVEL17〕
治療に失敗したばかりか、治療費までふっかけてきた医師相原。なんて奴だろう。
…と思っていたら、なんと弓絵を置いていったら免除すると言い出した。
勇者「ねぇ医師よ、ホントにいいの?治療費の代わりがこんなもので。」
弓絵「ひ、酷いですぅ~!愛妻に向かって「こんなもの」は無いですよぉ~!」
相原「将来を考えれば釣りがくるよ。今はまだ若いが、五年も経てば立派な…」
弓絵「看護婦さんなんてイヤですー!弓絵は「弓撃士」なんですぅー!」
相原「立派な「白衣の堕天使」になれる。」
弓絵「しかも堕ちてるなんてあんまりですよぉ~!!」
勇者「すまないね弓絵。金ができたら、いつか迎えに来るから。」
弓絵「えっ☆それってプロポーズですかー!?白馬に乗ったお迎えですかぁー!?」
盗子「絶対違うから!アンタなんか人体実験に使われちゃえばいいんだよ!」
勇者「というわけだ。じゃあ悪いけど、弓絵のことはよろしく頼むよ。」
相原「うむ。 あぁそうそう、行くのならばこの薬を持って行きたまえ。」
医師は「奇妙な丸薬」を取り出した。
飛んでたハトが地面に落ちた。
勇者「な゛っ、なにその怪しげな物体は…?秘伝の薬か何かなの…?」
賢二「なんか…見てるだけで目眩がするんですけど…。」
医師「勢いで作ってみた。」
盗子「勢いで作んないでよ!そんな物騒なモノを患者に手渡さないでよ!」
医師「まぁ持って行ってくれたまえ。私もどう処理していいか困っているんだ。」
盗子「餞別じゃなかったの!?困るほどいらないモノだったの!?」
勇者「…わかった、なんとか処理しよう。 じゃあ行くよ。元気でね弓絵。」
弓絵「わかりましたー!とっても辛いけど我慢しますー!待ち続けますぅ~!」

そういえば治療費って、いくらなんだろう?
勇者は払う気が無かった。

 

2-96:技術〔12歳:LEVEL17〕
弓絵と医師に別れを告げ、僕達は群なんとかがいるという洞窟を目指した。
でも目的地までは結構な距離があるようで、何日経っても着く気配が無かった。
歩きの旅にも疲れてきた。やはり、何か乗り物を手配するべきなのかもしれない。
そんな時、「電力車」という乗り物があることを知った。さすが技術大陸ギマイだ。
勇者「ふぅ~、こりゃ楽チンだ。こんな便利なモノがあるとはなぁ。」
盗子「ホントだね~。獣車と違って揺れも少ないし快適~☆」
ガイド「あ、皆様ァ~。本日は当車をご利用いただき~誠にありがとうございまァす。」
賢二「…あれ?もしかしてアナタは先輩の…案奈さん?」
案奈「こんな所で~皆様にお会いできるとはァ~少々感激で~ございまァす。」
勇者「ぼ、僕は何かイヤな予感がするんだけど…それは僕の気のせい?」
案奈「…えー。左手に見えますのがァ~…。」
盗子「えっ、なんではぐらかすの!?ねぇ、こっちを見てよ!ねぇ!?」
案奈「あ、大丈夫で~ございまァす。この電力車は~半自動操縦機能を搭載し~…」
賢二「良かった…。じゃあ今回は運転手さん絡みで泣くことは無いんですね。」
案奈「今はこのリモコ(バキッ)…かつてはこのリモコンでぇ~…」
盗子「「かつて」って何!?いま壊したそのリモコンが何!? ま、まさか…!」
案奈「その「まさか」でぇ~ございまァす。」
一同「イヤァーーーー!!」
とりあえず何人か撥ねた。

 

2-97:窮地〔12歳:LEVEL17〕
案奈とやらのミスのせいで、突如暴走を始めた電力車。もう外は大惨事だ。
盗子「うっぎゃーー!ぶつかるー!ぶつかっちゃうー!死ぬぅーー!!」
賢二「もっと酷い目に遭ってるのは、通行人の皆さんだけどね…。」
案奈「あ、皆様ァ~。シートベルトを~…」
盗子「今はそれどころじゃないよ!このスピードで激突したら絶対死んじゃうもん!」
案奈「搭載しておらず~誠に申し訳ございません。」
盗子「だからって無いのは問題だよっ!」
勇者「くっ!一体どうすればいいんだ…!!」
声「フッ、心配ない。運転は私に任せるがいいさ。」
勇者「なっ!?だ、誰だ今の声の主は!?」
盗子「ま、まさかこのお決まりの展開からして…ゆ、勇者親父!?」

謎「違う!私は謎のお助け仮面…「兄さん」だ!!」
なぜか微妙に若返った。

 

2-98:目的〔12歳:LEVEL17〕
僕達のピンチを救うべく、運転手を買って出てくれた謎のお助け仮面「兄さん」。
なんだかとっても懐かしく、そしてとっても会いたくなかった人物のニオイがする。
賢二「は、はぅ~。死ぬかと思ったけど、これでなんとか一安心できそうだねぇ~。」
案奈「あ、皆様ァ~。右手に見えますのがァ~…。」
盗子「って平然と続けるんかい!勇者親父が来なかったら死んでたんだよ!?」
勇者「なっ!コイツは僕の父親なのか!?」
謎「違う!私は「兄さん」だ!!」
勇者「なっ!僕にはこんな歳の離れた兄が!?」
盗子「信じないでよ!どう考えてもあり得ないから!」
黄錬邪「そして私がお姉さんです☆」
盗子「どっから湧いたー!!?」

~一時間後~
父「…そうか、勇者は記憶を…。どうりでいつものツッコミが無いわけだ。」
勇者「ごめん父さん。悪いけど少しも…思い出したくないんだ。」
父「思い出したくないのか。覚えてないことへの謝罪じゃないのか。父さんショック!」
賢二「あのぉ~。ところで、お二人はどうしてこっちへ?やっぱり目的は…。」
黄錬邪「ええ。 悪の道へと逸れた、かつての同胞を…滅ぼすために。」
父「なにやら最近、奴らに不穏な動きが見られる。これ以上野放しにはできん。」
盗子「フンだ!なにさ今さら! どうせ来るんなら今までなんで放っといたのさ!」
父「少々柔軟に時間が掛かってな。」
盗子「掛けすぎだよ!てゆーか戦闘前に柔軟体操なんて聞いたこと無いから!」
父「まぁとにかく、私が来たからにはもう心配いらん。安心してついて来なさい。」
盗子は「不安」が10上がった。
賢二は「不安」が10上がった。

 

2-99:見破〔12歳:LEVEL17〕
父さんと黄色い人と共に、僕達はついに目的の洞窟へと生きて辿り着いた。
~ギマイ大陸:ガラン洞窟~
勇者「ここか…ここにその、五錬じなんとかが居るんだね…。」
盗子「「五錬邪」だよ!そこまで覚えてんなら全部覚えようよ!あと半歩だよ!」
勇者「よし、じゃあ早速行こう。悪は早急に絶やさなきゃならない。」
父「いや待つんだ勇者! よく見てみろ、ホラその入口の手前…「落とし穴」だ。」
盗子「あっ、ホントだ!すんごい見えにくいけど確かにそれっぽい感じだよ!」
賢二「な、なんだかショボい罠だけど…でもよくわかりましたね。スゴいですよ!」
父「フッ。私にかかれば、この程度の罠を見破るなんぞ容易なことさ。」
盗子「よっ!見直したよ勇者親父!やっるぅ~☆」
黄錬邪「まぁレッドが仕込んだ技ですけどね。」
盗子「アンタが根源かっ!」
父「だが群青の奴もまだまだ甘いな。こんな簡単にバレるようじゃああぁぁぁぁ…!」
親父は鮮やかに落ちていった。
一同「・・・・・・・・。」

勇者「やれやれ…。 どうやら僕の父はマヌケな生き物らしいなぁぁぁぁぁぁ…!」
勇者は〔遺伝〕を覚えた。

 

〔遺伝(いでん)〕
勇者:LEVEL15の魔法。(消費MP80)
一定時間、祖先の能力を半強制的に身に宿す。祖先がハゲなら高確率でハゲる。
 

 

2-100:包囲〔12歳:LEVEL17〕
知っていた落とし穴に落ちるという、なんとも耐え難い精神的苦痛を味わった僕達。
賢二やミリガンも後を追って降りてきた。黄色い人だけは上の方から攻めるらしい。
勇者「くっ、あんな見え見えの罠に…!僕はなんてウッカリ者なんだ!!」
賢二「大丈夫だよ勇者君。「落とし穴」って時点で、この展開は読めたから…。」
父「そうだぞ勇者、悔いても仕方あるまい。今は前に進むことを考えるんだ。」
盗子「もっともな意見だけど、アンタに言われるとなんかムカつくよね。」
父「…まぁ、進むのは少し後になりそうだが…な。」
盗子「え…? あ゛っ!!」
魔獣達「グルルルルルッ…!!」
勇者達は魔獣の群れに取り囲まれた。
盗子「10…20…け、結構いるよ!?ど、どうしよ!!」
勇者「安心してクリストファー。僕がなんとかしてみせる!」
盗子「う、うん!頑張ってね勇者!「盗子」だけども!」
勇者は抜刀を試みた。
だが剣はビクともしなかった。
勇者「ぬうぅぅっ!抜けない!なんでなんだー!?」
盗子「ま、マジで邪悪な者にしか抜けないのそれ!? じゃ、じゃあ勇者親父!」
父「私は「元勇者」。基本的に何もしない。」
盗子「しろよっ!!」
賢二は飲み込まれている。

 

2-101:再戦〔12歳:LEVEL17〕
僕は剣が抜けず、賢二は飲み込まれ、父さんはヤル気が無い。状況はかなり悪い。
勇者「敵は多いけど…とりあえず賢二の救出を最優先に片付けよう!」
盗子「そ、そだね!じゃあアタシがなんとか敵を引き付けるよ!」
勇者「ダメだ!無理をするなジャックリーン!」
盗子「で、でも…! いや、「盗子」だけどね!?」
勇者「お前じゃ誰も惹きつけられない。」
盗子「ってそういう意味かよ失敬な!死ねっ!!」
声「甘ぇな!好き勝手させるかよクソガキどもがぁ!!」
父「むっ! その声は…!」

群青「ゲハハハハッ! よく来たなぁレッド…いや、”元”レッドか。」
岩陰から群青錬邪が現れた。
父「…フッ、久しぶりだな群青れ…うわっ!なんだその色は!?」
群青「テメェが決めたんじゃねーか!なに今更…しかも驚いてんだ!」
勇者「賢二が消化される前にお前を倒す。降参するなら今のうちだよ?」
群青「貧乏野郎から聞いたぜ、テメェ記憶が無ぇらしいな。そんなんで戦えるのか?」
勇者「心配無い。僕にはヤル気の無い父と、戦闘力の無い盗賊の仲間がいる。」
群青「メチャメチャ不安じゃねーか!そんなんでこの俺様に挑むってのか!?」
勇者「御託はいい、来い!お前のような外道は僕が刀の…拳のサビにしてやる!」
勇者は剣が抜けない。

 

2-102:失態〔12歳:LEVEL17〕
剣は抜けないが、やはり「勇者」として敵に後ろを見せるわけにはいかない。
勇者「さぁどうした!?来ないならこっちから行くよ!?」
群青「フッ…焦るんじゃねぇよガキが。俺とやりたかったら、生きて上まで来な。」
勇者「なっ!?に、逃げるのか!?待て…!」
魔獣達「グルゥ。(ピタッ)」
盗子「アンタらに言ったんじゃないよ!?いや、大人しいのはいいことだけども!」
群青錬邪は去っていった。
勇者「父さん、奴を追ってくれ。僕は賢二を助けてから駆けつける。」
父「わかった。飲み物の買い出しは任せるんだ。」
盗子「ちっともわかってないじゃん!なんでピクニック気分なんだよ!?」
父「恐らくこの洞窟には様々な罠が仕掛けられているだろう。気をつけるんだぞ。」
勇者「わかってる。父さんも気をつけて。」
父「無論だ。もう二度と落とし穴に落ちるようなぁぁぁぁぁぁぁ…!」
親父は当たり前のように落ちていった。

 

2-103:奇術〔12歳:LEVEL17〕
残された僕達は、とりあえず魔獣達を倒すことに努めた。父さんのことは忘れよう。
武器がナイフしか無くて手間取ったけど、残るはあと一体…なんとかなりそうだ。
勇者「ハァ、ハァ…最後だ!アイツが賢二を食った奴で合ってるなジュリー!?」
魔獣「グ、グルルルッ…!!」
盗子「あ、うん!あの傷がある奴で合ってるよ!盗子そう思うよ盗子ぉっ!!」
勇者「ゴメンね魔獣。お前に恨みは無いんだけど…これも仲間のためなんだ!」
魔獣「グルォオオオオッ!!」
勇者「行くぞ!思いつき必殺剣、「帝王切開」!!」
勇者、会心の一撃。
元気な何かが生まれた。
盗子「やた!ちゃんと出てきたよ!まだ溶けてなかったみたい!」
勇者「オイ起きるんだ!大丈夫か賢二!?」

姫「…ほぇ?」
勇&盗「なんでぇーーー!!?」
奇跡のイリュージョンが成功した。

 

2-104:転送〔12歳:LEVEL17〕
賢二を食べたはずの魔物が、なぜか姫ちゃんの出産に成功した。 一体何が…?
勇者「ひ、姫ちゃん!?な、なんでキミが出てくるの!? ぃやっほーい!!」
盗子「やっぱ生きてたんだね姫! でも…どうやって逃げてきたのあの怪鳥から?」
姫「ワタシ 姫チガウ。 メカ姫チャン。」
盗子「えっ!ま、まさかまたお兄ちゃんからの刺客とかなの!?」
姫「こんにちは勇者君。今日も涼しいね。」
盗子「ってスルーかよ!!乗っかったアタシがバカだったよ!」
姫「今日も激しいツッコミだね、商南ちゃん。」
盗子「アンタまで忘れないでよ!アタシは「盗子」だっての!!」
勇者「まぁそう怒るなよ、「闘魂」。」
盗子「惜しい!少しだけ惜しいけど違うから!アタシそんな熱い名前じゃないから!」
勇者「にしても、賢二は一体どこへ行ったんだろう?まさか既に消化されて…?」
姫「きっと「移食獣」に食べられたんだよ。お腹が繋がってるんだって。」
勇者「へぇ~、そんな魔獣だったのか~。大陸には変わったのがいるんだね。」
姫「でも食べられちゃうってマヌケだよね、賢二君。」
盗子「アンタもだよね!?だからアンタここに居るんだよね!?」
そうとは限らないのが姫だ。

 

2-105:再会〔12歳:LEVEL17〕
愛しの姫ちゃんを仲間に加え、僕達は群青錬邪を追って上を目指した。
落ちた深さを考えると、ここは多分2~3階層ある。奴は何階にいるのだろうか。
勇者「やれやれ…ここでもないか。意外と広いねこの地下洞窟。」
姫「スタンプ集めるのも一苦労だね。」
盗子「集まんないから!そんな楽しげな迷路とかじゃないから!」
勇者「それにしても、父さんはどこなんだろう?戦いらしい音は聞こえないけど…。」
盗子「う~ん、違う道に行ったんじゃん?てゆーか落ちたんだからまだ下かもね。」
勇者「なんだかイヤな予感がするんだ。 父さん…何も無ければいいけど…。」

~その頃~
父「…まさかお前まで居るとはな。 本拠地はタケブじゃなかったのか?黒錬邪よ。」
黒錬邪「安心しろ、アチラはアチラで進んでいる。俺達はコチラでコチラなんだ。」
父「そうか…。ならばこんな所でグズグズしているわけにはいかんな。」
黒錬邪「フッ、相変わらずせっかちだな凱空…だがまぁいい。」

二人「行くぞっ!!」
二人は飲みに出掛けた。

 

2-106:意表〔12歳:LEVEL17〕
だいぶ上に進み、薄っすらと外のニオイがしてきた。出口は近い。 となると…。
勇者「この扉の先…恐らくそこに、奴は居ると思う。みんな準備はいいか?」
姫「うん。どうでもいいよ。」
盗子「どうでもよくないよ!一応命かかってんだから真面目にやってよー!」
勇者「そう気負うことないさ。敵は一人だ、安心していいよポチ。」
盗子「ついに「人」ですらなくなったよー!うわーん!」
勇者は扉を開けた。
群青1「…あ゛ん?やっと来やがったか。」
群青2「待たせやがって。」
勇&盗「二人いたーーー!!」
勇者は扉を閉めた。

 

2-107:血塗〔12歳:LEVEL17〕
扉の先には、なぜか群青錬邪が二人いた。僕は幻覚でも見たのだろうか。
いや、相手はコスプレーヤー…中身が違うだけの話だろう。まんまと騙されたよ。
こんなことで動揺するとは、僕もまだまだみたいだ。冷静になって戦わなければ。
ギィィィ…(開)
勇者「改めましてこんばんは群青錬邪!本日はお日柄も良くお前を倒す!!」
盗子「ゆ、勇者!?まだ動揺が抜けきってないよ!?大丈夫!?」
群青1「ヘッ、相変わらずいい度胸だな小僧。だがそれも今日までの話だ。」
勇者「…わかった。明日からはもっと悪い度胸になろう。」
群青2「そういう意味じゃねーよ!テメェらの未来は”アレ”だっつってんだ!」
勇者「アレって…? ハッ!あ、アレはっ!!」
勇者は群青錬邪の指す方を見た。
血まみれの黄錬邪が転がっている。
勇者「き、黄色い人!?だ、大丈夫か黄色い人!? …いや、今は赤い人!」
盗子「色にこだわってる場合じゃないから!人として間違ってるからそれ!」
姫「そうだよ勇者君。間違ってるよ。」
盗子「ね!?そうだよね!?もっと言ってやってよ姫!」
姫「黄色と赤で「オレンジの人」だよ。」
盗子「アンタに期待したアタシが間違ってたよ!」
勇者「…というわけでそろそろ心配しようと思うんだけど…大丈夫?黄色い人。」

黄錬邪「・・・・・・・・。」
返事が無い。ただの屍のようだ。

 

2-108:戦力〔12歳:LEVEL17〕
冗談で済むかと思ったのにそんなことはなく、黄色い人は本当に死んでいた。
どうやら僕が思っていたより敵は残忍な奴みたいだ。フザけてなんていられない。
勇者「き、貴様よくも黄色い人を…!それでも元仲間なのか!?外道め!」
群青1「逆らう奴は誰であろうと薙ぎ倒す。それが俺達のやり方なんだよ!」
群青2「道を分かった時から、どちらかがこうなる運命だったんだよ。ケッ!」
盗子「姫!アンタなんとかしてよ!「療法士」でしょ!?」
姫「…やってみたけどダメだったよ。ゴメンね、オレンジの人…。」
群青2「他人の心配してるヒマがあんのかオラァ!?俺ら二人に勝てんとでも…」
勇者「イキがっても無駄だよ。どうせ一人は影武者…実力なんてタカが知れてる。」
群青1「ギャハハ!違ぇよ。コイツは「写念獣」、言うなら俺の分身ってやつだ。」
勇者「しゃ、写念獣…!?」
〔写念獣(しゃねんじゅう)〕
触角に触れた人間の性質を写し取る魔獣。
装備も見た目だけなら真似ることができる。
絶滅危惧種なため、マニアの間で高く取引されるという。
マニアがどう使うかは、大きな声では言えない。
勇者(くっ、どうする!?あっちは二人…!)
盗子(←盗賊)
姫(←療法士)

こっちは…一人…。
勇者は今頃気づいた。

 

2-109:老化〔12歳:LEVEL17〕
二人の群青錬邪と一人で戦うことになった僕。こんな状況でモテても嬉しくない。
そして戦い始めて数分。おかしい、体が思うように動かない。これが呪いの力か…!
勇者「ハァ、ハァ、疲れた…!息が…切れ…す、吸えない…!」
盗子「だ、大丈夫勇者!?そういやアンタ最近なんか息切れ多くない!?」
勇者「もう…ハァ、ハァ、歳なのかも…!」
盗子「いや、その線だけは無いよ!アタシらまだピチピチの12歳だよ!」
姫「私も…ハァ、ハァ、プリンが…吸えないよ…。」
盗子「プリンはストローで吸うもんじゃないから!行儀悪っ…てゆーか戦闘中だよ!」
群青1「なんだよオイ、もう息切れか?逃げてるだけじゃ勝てねぇだろが。」
勇者「ハァ、そういうお前も、随分と大人しいじゃないか。そっちは、歳のせいか?」
群青2「フン、こっちもわけありでな。フルパワーは時間制g…いや、なんでもねぇ。」
盗子「バレバレだよ!そこまで言っちゃったらもう誰にでもわかるって!」
勇者「そういえば賢二から聞いた。黄緑の奴は血を吐いたって…。理由はそれか?」
群青1「…どうやらテメェらは知りすぎたみてぇだな。早めにケリつけるか。」
盗子「ど、どうしよう本気んなっちゃったよ!もうダメかもー!!」
姫「大丈夫盗子ちゃん、私がなんとかするよ! むー!「招待」!!」
姫は〔招待〕を唱えた。
教師「…ん?」
一同「うわぁーーー!!」
姫は悪魔の召喚に成功した。

 

〔招待(しょうたい)〕
召喚士:LEVEL20の魔法。(消費MP30)
どこかの誰かをランダムに呼び出す魔法。入浴中に呼ばれると大ピンチだ。
 

 

2-110:本気〔12歳:LEVEL17〕
療法士なのに誰かを召喚しちゃった姫ちゃん。 このフードの人は一体…?
見覚えは無いけど、なんだか凄い悪寒がする。キャシーなんかプルプル震えている。
勇者「だ、誰なんだアンタは!?僕達の味方?それとも敵なのか!?」
盗子(プルプルプルプル…!(震))
教師「おや?しばらく見ないウチに色々と変わっちゃいましたねぇ勇者君。」
群青1「ま、またテメェか死神!今度は邪魔はさせねぇぞゴルァ!」
教師「やれやれ…。今はアナタ方の相手をしてる場合じゃないんですがねぇ…。」
群青2「なんだとぉ!?テメェ俺らを雑魚扱いす…ぐぼぅぁっ!!
教師は〔獄炎殺〕を唱えた。
写念獣の方は消し飛んだ。
群青「なっ…!そんな…一瞬で消し去っただと!?」
姫「脅威のマジックだね。」
教師「ふふふ。タネも仕掛けもありまセーン。」
盗子「そりゃ無いよね!ホントに消してんだもんね!」
群青「…やっぱ、テメェにゃ本気じゃなきゃ無理か…。 命を懸けなきゃよぉ!!」
群青錬邪は力を込めた。
取り巻くオーラが数倍に増えた。

勇者は驚いた。
盗子は驚いた。
群青錬邪は勝ち誇った。

教師は鼻で笑った。
姫はお茶をすすった。
群青錬邪は落ち込んだ。

 

2-111:黒幕〔12歳:LEVEL17〕
凄い魔法で、片方を一瞬で消し去ったフードの先生。この人…タダ者じゃない。
でもそのせいで、群青錬邪も本気になったみたいだ。これからは激戦必至だろう。
勇者「くっ…!一瞬でここまで強くなるとは!一体何が…!?」
教師「バカなことを…。この急激なパワーアップ、「リミッター」を外しましたね?」
群青「ゲハハ!細く長くってのはガラじゃねぇんでな!」
盗子「リミッター…聞いたことある!実は人って潜在能力の半分も使えてなくて…!」
教師「ハイ。しかしその力を無理矢理引き出せばどうなるか…わかりますよね?」
ピポーン!(押)
勇者「ハイ姫ちゃん!」
姫「わかりません!」
勇者「うん、可愛いから正解!」
姫「わーい。」
盗子「って空気読めよっ!!」
教師「しかし、リミッター解除には激痛が伴います。とても自分の意思でとは…。」
盗子「えっ!じゃあ誰かが裏で糸を引いてるってこと!?」
姫「これだから納豆ってイヤだよ。」
盗子「違うから!そんなネバッこい黒幕はありえないから!」
群青「さぁいくぜテメェら?俺にゃ時間が無ぇんでな。一瞬で消してやらぁ!!」
教師「下がっていなさいキミ達。今一度、戦い方というものを見せてあげましょう。」
勇者「ま、待ってくれ先生!ここは僕にやらせてくれ!お願いだ!」
教師「いや、しかし今のキミには荷が勝ちすぎる相手ですよ?」
勇者「それでも退くわけにはいかない。かつての勇者達が、そうであったように!」
親父は退きまくりだ。

 

2-112:流血〔12歳:LEVEL17〕
肉体の限界を越え、本気で討ちにきた群青錬邪。強い波動がピリピリ伝わってくる。
群青「特別だ。テメェらには俺の最大奥義を見せてやるよ。 とくと見やがれっ!」
スゥゥ…(消)
勇者「なっ!?消え…!!」
群青錬邪は霞んで消えた。

「とくと見ろ」と言われても。
盗子「き、消えた!?コイツも桃錬邪みたく高速に移動できるってわけ!?」
教師「いえ、殺気も完全に消えている。これは「気功闘士」の成せる技ですね。」
声「ギャハハ!そうさ!俺は全てのオーラを操り、姿まで消せるのさ!!」
勇者「な、なるほど!オーラが無い奴は存在感が無い…。だから消えられると!」
盗子「説明クサいよ!しかもなんか苦しい説明だよ!」
教師「まぁ元々オーラ無かったですけどね。」
声「う、うっさいわ!ほっとけ!」
教師「ふふっ。まぁ姿を消せたところで、たった一人で私に挑む…ぐっ!
何故か教師がダメージを受けた。
盗子「えっ!?ど、どしたの先生!?血が…!」

教師「いや~、今日は暑いですねぇ~。」
盗子「汗なの!?」
サウナに行ったら大惨事だ。

 

2-113:変身〔12歳:LEVEL17〕
どういうわけか、いきなりワキ腹から血を噴いた先生。噴水機能でもあるのか。
勇者「な、なぜだ!?奴の声はあっちから聞こえたのに! 飛び道具!?」
教師「やれやれ…油断しましたよ。どうやら先ほどの写念獣も…いるようですねぇ。」
盗子「えっ!写念獣も消えてたの!?ただのマネッ子なんじゃなかったの!?」
姫「ふはは。甘いわガキどもー。能力までも真似ちゃるのが写念獣でしたー。」
盗子「ってなんでアンタが解説してんの!?しかも何故か誇らしげに!」
群青2(お、俺のセリフが…。)
勇者「敵は二人…やはり僕にもやらせてほしい!片方は僕がなんとかする!」
盗子「危ないって勇者! 大丈夫だよ!いざとなったら先生には幻術もあるしさ!」
教師「ん?あ~…。 残念ですが、今はちょっと幻術は使えないんですよね~。」
盗子「使えない!?な、なんでなんで!?」
教師「落としてきました。」
盗子「落とすなよ能力を!」
勇者「安心してくれタコ。一か八かだけど、僕に考えがあるんだ。」
盗子「タコ!!? …いや、えっと、でもどうすんの!?アンタ剣も抜けないのに!」
勇者「確かに今の僕には剣も抜けない。でも…「過去の人」なら!」
盗子「ハッ!それってもしかして、さっき覚えたっていう…!」
勇者は〔遺伝〕を唱えた。
先祖のオーラが勇者を包む。

勇者の体は厚い毛に覆われた。
勇者「ウッキーー!!」
盗子「えぇっ!?」
いつの先祖なんだ。

 

2-114:連撃〔12歳:LEVEL17〕
ウキャ、ウキャキャッ!ウキョッキョキョー、ウキャキャウキョキョウキョーー!!
勇者「ウッキャーー!!」
盗子「わーん!戻りすぎだよー!事態は更に悪くなったよー!」
姫「わかる勇者君?これが「お手」だよ。」
盗子「コラそこ!芸を仕込むな芸を! 少しは状況察してよ!」
勇者「ウキャ!(お手)」
盗子「アンタもやっちゃダメ!!」
声1「よし、一斉にいくぞ!とっておきのヤツをお見舞いしてやるぞオラァ!」
教師「いえいえ、そんなお気遣いなく。」
声2「そっちのお見舞いじゃねーよ!こっちのお見舞いだぁ!必殺「群青大氣砲」!」
教師は〔反射鏡〕を唱えた。
声2「ぶばふっ!!
声1「なにっ!? は、跳ね返しただとぉ!?」
教師「やはりお見舞いに「お返し」は付き物ですよね。」
盗子「いや、「仕返し」だよねそれ!?似てるようで全然違うよね!?」
勇者「ウキョキャッキュキョーー!!」
ウッキー勇者の追撃。
群青2にそれなりのダメージ。

群青2は姿を現した。
群青2「ぐっ、しまった…! だが、まだこの程度じゃぶっ!
勇者「ウキャッキョー!!」
ドガシドガシドガシッ!(連撃)
群青2「え゛っ!?ちょ、ちょっと待ぶっ! こ、こういうセリフの時ってのばうっ!
ドガシドガシドガシッ!(連撃)
群青2「待つのがぶっ! お約束…じゃ…ぐぼっ!!
ドガシドガシドガシッ!(連撃)

群青2「…ぐふっ。(ガクッ)」
ウッキー勇者の空気の読めない攻撃。
群青2を撃破した。

 

〔反射鏡(はんしゃきょう)〕
魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP50)
光術系の技を跳ね返す魔法。ジジイのハゲ頭の次くらいによく照り返す。
 

 

2-115:偽者〔12歳:LEVEL17〕
気が付くと、なぜか群青錬邪が一体倒れていた。聞けば僕が殴り倒したらしい。
どうやら魔法はうまくいったみたいだ。ちっとも覚えてないから実感はゼロだけども。
勇者「な、なんとか倒せたようだね…。でも、コイツは一体どっちなんだろう?」
教師「偽者なら髪に紛れて触角があります。握れば元の姿に戻るはずですよ。」
姫「…えい。(盗子の前髪を)」
盗子「わ~、元の姿に戻っちゃうぅ~って誰が戻るか!ついには魔獣扱いかよ!」
勇者「覆面の上からでもいいのかな? よっと。」
勇者はそれっぽい箇所を握った。
群青2はゴリラ的な何かに変わった。
勇者「偽者だったか…。でも残るは一人、勝ちは見えたようなものだね。」
声「…ケッ!偽モン倒したぐらいで調子ん乗んな!?俺にはまだ究極奥…ぐふっ!
教師「おやおや、もう限界ですか?のんびりしてるからですよもう。」
声「ナメんな!そんな強ぇ結界に飛び込むほど俺ぁバカじゃねぇんだよ!」
盗子「えっ!結界張ってたの!?いつの間に!?」
教師「放っておけば自滅するんです、わざわざ構うのも面倒でしょう?ふふふ。」
盗子「さっすが先生!とってもスゴいよ!スッゴい外道だよ!」
群青「フン、もう隠れるのはヤメだ。十分な氣は練れた、最後の一撃をキメてやる。」
群青錬邪は姿を現した。
強大なオーラと共にこんにちは。

 

2-116:悪霊〔12歳:LEVEL17〕
なんと密かに氣を練っていた群青錬邪。最後の手段に出たっぽい。マズイなぁ…。
勇者「な、なんてオーラだ!そのために隠れていたのか…!」
盗子「きっと結界ごと吹き飛ばすつもりなんだよ!だ、大丈夫なの先生!?」
教師「いや~、無理だと思いますよ。先生なにげにさっきの攻撃が効いてますし。」
盗子「マジで!?じゃあ先制攻撃しなきゃマズくない!?打たれたら死ぬよね!?」
教師「ん~。でもあのオーラを外から砕くのは少々骨ですねぇ~。どうしますか…。」
勇者「くっ!僕にもっと力があれば…!」
姫「大丈夫だよ勇者君、私がなんとかするよ。 むー!「退散」!!」
姫は〔退散〕を唱えた。
群青「…ん?」
勇者「あ、あれ?退散…できてないけど…?」
盗子「ダメじゃん姫!失敗じゃん! や、やっぱ先生がなんとかし…って、先生!?」
教師は悪霊と認識された。

 

〔退散(たいさん)〕
除霊師:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
一時的に悪霊を退ける魔法。成功率は低いので商用にはハッタリも必要とされる。
 

 

2-117:希望〔12歳:LEVEL17〕
姫ちゃんの魔法で先生が消え去った。なんか希望が絶たれた感じ。もうダメかも…。
盗子「姫ぇー!あああアンタ何してくれてんのさ!?おかげで大ピンチじゃん!」
姫「タネも悪気も無いよ。」
盗子「ちっとも謝ってるように聞こえないよ!」
勇者「本格的にマズいね…。何か回避アイテムとか持ってないのかジョンソン?」
盗子「ご、ゴメン!こんなことになると思ってなかったから、武器しか無いの!」
姫「私もバーベキューセットしか持ってないよ。」
盗子「アンタ何しに来たんだよ!?」
姫「あとは…こんなのしかないよ。ゴメンね。」
盗子「えっ…こ、これって「魔導クジ」じゃない!?もしかしたら可能性あるかも…!」
〔魔導クジ〕
魔導符がランダムで入っているクジ。
ハズレが多いが、ごく稀にアタリが出ることもある。
群青「あん?なんか策でも見つけそうな感じじゃねぇか。ならさっさと殺すかぁー!」
盗子「わー!バレたー! ヤバいよ!もう何でもいいから使っちゃってー!」
勇者「こ、この魔法は…!」
群青「死ねぇええええええっ!!」

チュドォオオオオオン!!(轟音)
群青錬邪、必殺の攻撃。
辺り一帯が消し飛んだ。
群青「…ふふ、フハハハハ!やった!やってやったぜ雑魚どもがぁ! これで…」
声「ふぅ~、危なかったよ。もうちょっとでアウトだったね~。」
群青「なっ!?な、なんだテメェは!?何モンだ!?」

少女「アタシ?アタシは「姫子」。「盗賊」と「療法士」の力を持つ、美少女戦士だよ。」
なんと三人は合体した。

だが勇者の面影が無い。

 

2-118:観念〔12歳:LEVEL17〕
魔導符の力により、合体することに成功した勇者達。
展開的にそろそろクライマックスな感じだ。
群青「テメェ…さっきのガキに似てやがるな。変身でもしやがったのか…!?」
姫子「〔三位一体〕を使ったの。合体ロボに変形したんだよって誰がロボだよ!」
姫子の中で盗子と姫が闘っている。
群青「さ、三位一体…!?…だが小僧の面影は全然なくねーか?」
姫子「ノー!そんなことはないッキー!」
群青「そこだけか!あんな術の一部がアイツの全てか!」
姫子「それよりも、いいの?さっき攻撃外しちゃったよね。もうお陀仏さんだね。」
群青「…フッ、甘ぇな!一度放ったら技は終わりと思ったか!?」
姫子「えっ…?」
群青錬邪の再攻撃。
放ったオーラがブーメランのように戻ってきた。

姫子は攻撃を受け止めた。
そして回復しまくった。
群青「うぇっ!? う、受け止め…っつーか逆に回復してんのは何故だっ!?」
姫子「アタシは相手のパワーを盗んで回復できるよ。諦めて死ねばいいと思う。」
群青「くっ…グフッ! ち、チクショウもう…限界…かよ…。クソッ…!」
群青錬邪は観念した。

 

〔三位一体(さんみいったい)〕
賢者:LEVEL48の魔法。(消費MP220)
人間・魔人・魔獣等、三体を融合させる高等魔法。失敗すると面白いことになる。
 

 

2-119:虫息〔12歳:LEVEL17〕
変身が解けた頃には、もう群青錬邪は虫の息だった。このままじゃ死にそうな感じ。
記憶には無いけど、コイツとは結構因縁があったと聞く。なんだか感慨深い。
殺すのは簡単だけど、できれば人は殺したくない。なんとかできないものだろうか。
勇者「…どう?今後心を入れ替えると言うなら…治療してあげてもいいけど?」
盗子「ちょっ、なに言ってんのさバカ勇者!?敵なんだから放っとけばいいんだよ!」
群青「そうだ、放っとけ。俺の体は限界だ…げふっ! もう、助からねぇよ。」
姫「なんか寒いね。焼きイモ焼こか。」
盗子「アンタは放っとき過ぎだから!」
勇者「じゃあせめて、これ以上苦しまないように僕が介錯を…」
群青「ハハッ、ナメんなガキが!誰がテメェなんかの手にかかって死ぬかぁー!!」
勇者「なっ…!?」
群青錬邪は自分の胸を貫いた。
群青「げはぁああっ! ハァ、ぶっ! ヘッ、俺は死ぬ…だが覚えてろよ小僧!?」
勇者「!?」
群青「アジトには…いるぜ?俺なんか、足元にも及ばないほど…面白い奴らが…。」
盗子「面白いのかよ!普通こういう時は「怖ろしい奴ら」を紹介するもんだよね!?」

群青「ふ…ふふ…。できるなら次は…もうチョイ華やかな…色に……。」
群青錬邪は息絶えた。

 

2-120:火葬〔12歳:LEVEL17〕
ついに倒した群青錬邪。でもよくよく考えると結局は自滅だった気がしないでもない。
その後僕達は、倒れた黄錬邪と群青錬邪を弔うことにした。敵も味方も関係なく。
勇者「燃やしてやろう。せめて最後くらい、赤い炎を身に纏うがいいさ。」
盗子「アタシらがもっと早く着いてれば、黄錬邪は…。グスン。」
勇者は火を放った。
二人の遺体は炎に包まれた。
姫「勇者君…。」
勇者「姫ちゃん…いや、悪いけどさすがにこの状況でイモを持ってこられても…。」
盗子「アンタ不謹慎だよ!てゆーか人と一緒に焼いたようなイモが食えるかー!」
姫「私じゃないよ。死んじゃってもね、お腹はすくと思うの。だから…」
盗子「姫…アンタ…。」
姫「だから…何?」
盗子「こっちが聞きたいよ!!」

~数分後~
勇者「じゃあ、そろそろ行こうか。先を急ごう。 二人とも、忘れ物は無い?」
盗&姫「うん!」
貧乏神は探さないのか。

 

外伝(弐)へ

本編( 5 / 10 )

第二部:外伝(弐)

外伝(弐)

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔1〕
俺の名は凱空。初代「赤錬邪」として名を馳せた、現職「勇者」の12歳児だ。
仲間達と別れた俺は、天帝の使者に言われた通りタケブ大陸へとやって来た。
急がねば。「勇者」として、一刻も早く「魔王」の呪縛から人民を解き放たねば。
凱空「ほぉ、ここが「帝都:チュシン」か…。なんだか無駄に広いな…。」
〔帝都:チュシン〕
世界に六つある王国を束ねる強大な権力、そして広大な領地を誇る都。
中でも王宮は特に広く、犬のおまわりさんすら道に迷う。
凱空「ダメだ、広い…広すぎる!このままじゃ助からん!俺は、どうすれば…!」
凱空は尿意がヤバい。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔2〕
「魔王」に襲われる前に「尿意」に襲われた俺は、慌ててトイレを探して回った。
事態は急を要する。一刻の猶予も許されない。少しのタイムロスさえも命取りだ。
よし、こうなったらズボンは先に下ろしておこう。これで少しは稼げるはずだ。
あとはもう、最悪トイレじゃなくても気にすまい。人にさえ見られなければいいのだ。
凱空「う、うぐぅ…おぉっ!奥にそれらしい部屋発見!」
バンッ!(扉)

少女「!!?」
凱空「!!!」
少女「・・・・・・・・。(着替え中)」
凱空「・・・・・・・・。(パンツ一丁)」
少女「・・・・・・・・。(硬直)」
凱空「・・・・・・・・。(凝視)」

フッ、彫像か…脅かしやがって。
思いっきり「皇女」だった。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔3〕
随分と洒落たトイレだなと思った奥の間は、なんと「皇女」の部屋だったらしい。
だが、気づくのが少々遅かった。我慢の限界で、既に用を足してしまった後なのだ。
皇女「きっ…キャアアアアアアア!だ、誰か!誰かぁーー!!」
凱空「む?呼んだか?」
皇女「アナタだけは呼んでませんの!!」
凱空「よく見るとかなり豪華な部屋だが…ここは何の部屋なんだ?」
皇女「許せませんの!「皇女」の部屋に無断で入り込むだなんて…!」
凱空「皇女?お前が皇女なのか?確か名前は…「皇子(こうこ)」だったか。」
皇子「し、しかも私の目の前で、お、お、おしっ…は、恥ずかしいですのー!」
凱空「大丈夫、俺は気にしてない。」
皇子「こっちが気にしてますのっ!」
凱空「俺の名は凱空。お前からの使者に呼ばれて来たんだが…。」
皇子「知りませんの!いいからとりあえずチャックを閉めてぇー!!」
バンッ!(扉)
兵士「ど、どうされましたか皇子様…ハッ!誰だ貴様は!?」
凱空「俺は凱空。チャックは全開だが一応客だ、心を込めて接客してくれ。」
兵士「…わかった、ついてこい。」
凱空は投獄された。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔4〕
客間に通されるのかと思ったら、牢獄に入れられてしまった。気づくのが遅かった。
まったく…。俺は魔王を倒しに来たんだ、こんなことしてる暇は無いというのに…。
凱空「やれやれ、わざわざ赴いた客にこの扱いとは…。お前も酷いと思わんか?」
声「!! …ほぉ、私の気配に気づくとは…意外にもタダ者ではありませんな。」
凱空「お前は誰だ?いや、誰でもいい。とにかくここから出してくれ。」
老婆「私は皇子様専属の執事「洗馬巣(セバス)」。「セバスちゃん」で結構ですぞ。」
凱空「…甘栗?」
洗馬巣「あんまりです!確かにシワは多いですが、食べ物に間違うのはどうかと!」
凱空「まぁどうでもいい。まずは出してくれ。早くしないと魔王に滅ぼされるぞ?」
洗馬巣「ご安心を。魔王は現れはしましたが、今は「メジ大陸」に居ますゆえ。」
凱空「なに?だがその割には警備が厳重だぞ?蟻一匹通さないほどじゃないか。」
洗馬巣「ええ。それなのに平然と皇女の部屋まで辿り着いたアナタは何者ですか。」
凱空「魔王じゃないとすると…なんだ?何にそんなに怯える必要がある?」
洗馬巣「もう一つの脅威です。あの恐国…「魔国(まこく)」の王子が現れたのです。」
凱空「ま、魔国…?」

~その頃、帝都護衛軍本部では…~
兵士A「うぎぁあああああっ!!
少年「・・・・・・・・。」
兵士B「き、貴様ぁ…!目的は何だ!?なぜこの国を襲う!?」
少年「…目的? フフッ、天帝の力を頂きます。逆らえば皆殺しですよ。」
兵士C「くっ…そんなことさせるかぁー!!ぐぁあああああっ!!

少年「力が要るんですよ。私を…この「凶死」を越える力が。」
魔界出身じゃなかったのか。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔5〕
帝都を脅かす強敵…それはなんと、若き日の凶死だった。
狙った獲物は逃さない男、「死神の凶死」…。

皇女を追い詰めるのに、そう時間は掛からなかった。
~皇女の部屋~
(「ぎぇええええええええっ!!」)
(「うわっ、やめ…うわぁああああああっ!!」)
兵士「くっ、なんて奴だ!この扉が破られるのも、時間の問題か…!」
皇子「うぐっ、えぐっ。みんなが…みんなが死んじゃいますの…!」
兵士「皇子様、お逃げください!ここは私どもが食い止めますゆえ!」
皇子「イヤですの!皇女である私が、国民を置いて逃げるなんてできませんの!」
凱空「まったくだ。」
皇子「アナタはなんで逃げてこれてますの!?」
凱空「フッ、安心しろ。俺は肝心な時には居ない男だ。」
皇子「それはそれでイヤですの!アナタは何者!?目的は何ですの!?」
兵士「ハッ!さては…貴様も死神の手の者だな!?成敗してくれる!!」
凱空「なっ!?ま、待て!話せばわかる! 必殺、「話せばわかるぞキック」!!」
兵士「え゛っ…ばぼふっ!!
凱空のえげつない攻撃。
側近の兵士をブッ倒した。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔6〕
危ないところで、なんとか兵士を退治できた俺。相変わらずのナイスタイミングだ。
凱空「キマッた…我ながら怖ろしいほどにキマッた…。」
皇子「ひ、酷すぎますの!なんでも暴力で解決しようなんて最っ低ですの!!」
凱空「まったくだ。」
皇子「アナタに言ってますのっ!!」
凱空「やれやれ。皇女は血統がいいと聞いていたが…とんだデマだったようだな。」
皇子「えっ…?」
皇子は兵士の方を見た。
なんと兵士は煙のように消えた。
皇子「えっ?えっ?な、何がどうなりましたの…!?」
声「…へぇ~。まさか私の「幻魔術」を見破る人がいるとは…ねぇ。」
音も立てずに凶死が現れた。
皇子「あ、アナタ…アナタが死神ですのね!よくもみんなを…!!」
凶死「少々驚きましたよ、皇女。多少は頭のキレる傭兵もいたようですね。」
凱空「フッ、実はマグレだとは口が裂けても言えん状況だな。」
皇子「言っちゃってる!思いっきり言っちゃってますの!」
凶死「死に行く者に名を尋ねるもまた一興…。アナタの名は?」
凱空「俺か?俺は「勇者:凱空」。この世に、悪がある限り…!」
凶死「ある限り?ふふっ、まさかこの私を倒すとでも?」

凱空「特に何もしない。」
皇子「してほしいのっ!!」
相変わらずヤル気は無かった。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔7〕
気づいた時には背後にいた、謎の少年「凶死」。今までに会ったことのないタイプだ。
凱空「お前が「死神」?見るからに俺より若いようだが…。」
凶死「4歳ですが何か?まさか、無駄に歳だけとっていれば優れているとでも?」
凱空「いや、いくら俺でも本人を目の前に…なぁ?」
皇子「なんでこっちを見ますの!?同い年ぐらいの人に言われたくありませんの!」
凱空「で?コイツに何の用だ?嫁に貰いに来たにしては随分と荒っぽい登場だな。」
凶死「力を得るためですよ。「天帝」には不思議な力があると聞きましてね。」
皇子「ッ…!!」
凱空「なるほど、「不思議ちゃん」なのか。」
皇子「その言い方は違うと思うの!」
凶死「ところでアナタこそ何なんですか?皇女とは一体どういうご関係で?」
凱空「フッ、放尿シーンをも見せ合う仲だ。」
皇子「見せ合ってないのっ!!あ、アナタが勝手に見せただけですの!」
凱空「とにかくまぁ、乗りかかった船だ。好きにさせてやるわけにはいかんな。」
凶死「へぇ~…面白い冗談ですねぇ。」
凱空「さぁ来い。死神こそが、最も死に近いということを教えてやる。」

キマッた…今日もキマッたぜ…。
凱空はまだチャックが開いている。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔8〕
キメ台詞も華麗にキマッた。ボロが出る前にさっさと決着をつけるとしようか。
凱空「最後だ。泣いて謝るチャンスを一度だけくれ。」
皇子「えっ!あげるのではなくて!?」
凶死「ふふふ、随分と強気な人だ。でも武器も持たずにどうするおつもりで?」
凱空「フッ、達人は得物を選ばん。お前ごときチビッ子相手なら、コレで十分だ。」
凶死「やれやれ、そんな燭台で私に挑むとは…無謀ですねっ!」
凶死は〔突風〕を唱えた。
凱空はヒラリとかわし、燭台を振り下ろした。

凶死の頭は砕け散った。
皇子「きゃっ、きゃあああああ!頭が!頭がぁーー!?」
凱空「俺は「勇者」。基本的に何もしないが時々やり過ぎる。」
皇子「やり過ぎにも程がありますの!しかも何故そんなに冷静ですの!?」
凱空「さすがは死神だ、とっても斬新な技だな。」
皇子「技なはずは無いのっ!!」
凱空は発想がおかしい。

 

〔突風(とっぷう)〕
魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
激しい風を巻き起こす魔法。街角で使うとミニスカートの女性にボコられる。
 

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔9〕
強いのかと思えば、アッサリ一撃で砕けた凶死。少々腑に落ちんがまぁ気にすまい。
凱空「完璧だ…。これならいつでもプロの「スイカ割ラー」になれるな。」
皇子「そんな職業ありませんの!この人殺しぃー!!」
凱空「ん~、だがなんだか拍子抜けだな。 口ほどにも無さすぎて…ぶぼあっ!!
痛恨の一撃。
凱空は窓の外までフッ飛ばされた。
皇子「なっ、なんで!?なんでいきなり…ハッ!アナタは…!」
凶死「おや、「幻魔術」は初めてですか?口ほどにも無いのは彼の方でしたねぇ。」
皇子「そんな…! ゆ…勇者の人ー!お願いですの!戻ってきてぇー!!」
凶死「無駄ですよ。この高さから落ちたんです、恐らく即死でしょう。」
凱空「そりゃ可哀想に…。」
凶死「フッ、まぁ私に挑んだ時点で…って、えぇっ!?」
凶死のキャラが一瞬崩れた。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔10〕
危ないところで、なんとか攻撃を回避した俺。初めて見る技だが今のが幻術か。
凶死「た、確かに命中したはず…。もしやアナタも幻魔術を…!?」
凱空「幻術?アレは「空蝉(うつせみ)の術」だ。俺は魔導士じゃないんでな。」
皇子「「勇者」が「忍術」使うのは問題無いの!?」
凶死「この私を騙すほどの忍術…よほどの師を持つと見える。」
凱空「フッ、「通信教育」だ。」
皇子「そんなのありますの!?」
凶死「…ふっ、あははは!参りましたね、どうやら私の勝てる相手ではないらしい。」
凱空「む?なんだ、諦めるのか?随分とアッサリ引き下がるじゃないか。」
凶死「別に無理して皇女を狙う必要は無いのです。私が欲しいのは「力」ですから。」
凱空「…なるほど。代わりに俺に力を貸せというわけだな?だが何のために?」
凶死「詳しい話はその時に…ではダメですか?」
凱空「ん~、まぁいいだろう。俺は細かいことと常識は気にしないタチだからな。」
凶死「助かります。逆に私の力が必要な時は、いつでもお貸ししますので。」
凱空「フッ、俺には必要無いさ。そうだなぁ…俺に子でも出来たら頼もうか。」
凶死「わかりました。その時は是非。」
勇者の悪夢が予約された。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔11〕
凶死の降参により、事態は収束した。必要以上に空気の読める奴で助かった。
正直、コイツの真の実力は計り知れん。これ以上争うのは得策じゃないだろう。
凶死「では、私はそろそろ帰るとしましょう。幻術って意外と疲れるんですよね~。」
皇子「だ、ダメ!逃がさないの!みんなのカタキ…見逃せるわけありませんの!」
凶死「…ふぅ、この国では人を眠らせるだけで罪人ですか?乳母も大変ですねぇ。」
皇子「えっ!?眠らせ…って、じゃあ全てが幻術だったってことですの…?」
凱空「凶死よ、ちょっと待て。行く前に少しだけ聞きたいのだが…。」
凶死「メジ大陸の「魔王」について…ですね?」
凱空「お前は「王子」と聞いた。こと魔国の王子なれば、その情報は深かろう。」
凶死「名は「終(おわり)」。年の頃は15・6。それ以上の情報は、残念ながら…。」
凱空「…いや、十分だ。ありがとう。意外と役立たずだなんて全然思ってないぞ。」
凶死「な、なんだか凄く不本意ですが…今日は去ります。ではまた、「その時」に。」
凶死は去っていった。
バンッ!(扉)
兵士「皇子様ー!ご無事ですかー!?…ハッ、貴様は…!」
皇子「私は大丈夫ですの! い、一応この方が…その…。」
凱空「俺は凱空。チャックは未だ全開だが一応客だ。心を込めて接客してくれ。」
兵士「…わかりました。ではコチラへ。」
凱空は投獄された。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔12〕
凶死撃退の噂は、瞬く間に帝都中に広まった。
凱空は英雄として崇められ、帝都護衛軍の「兵士監督官」に任命された。

そして、半年が経った。
帝都に着いて、半年が経過した。今は護衛軍で兵士達の訓練を監督している。
本来ならばすぐに旅立ちたいところなのだが、わけあって今は足踏み状態だ。
それに、ここの警備は貧弱すぎて放っておけない。俺が鍛え直してやらねば。
~帝都護衛軍・訓練場~
凱空「コラそこー!振りが甘い!そんなスピードじゃかすりもせんぞ!?」
兵士A「す、すみません!うぉおおおおおっ!」
凱空「あとお前もだ!そんな甘い守備で守りきれるとでも思っているのか!?」
兵士B「ハッ!申し訳ありません!」
凱空「今度の敵は強敵だ!みんな気を引き締めてかかれ!!」
兵士達「は、ハイッ!!」
週末に野球大会がある。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔13〕
夕暮れ時、俺はこの世で最も高いという塔の頂上に来ることが多かった。
遠方より来たせいか、遙か遠くを眺めているだけで妙に心が安らぐからだ。
凱空「アイツらは、今頃どうしてるんだろうか…。」
声「ガ~イク♪ またここに居たのね。そんなにこの塔が気に入ったの?」
凱空「…皇子か。この場所は他の何よりも高い。友のいる島すら見えそうでな。」
皇子「そう…。 あ、ところでどうですの?兵士達は順調に強くなってる?」
凱空「フッ、安心しろ。みんなだいぶ飲めるようになったぞ。」
皇子「何を強くしてるの!?お酒なんか鍛えても意味ないの!」
凱空「それより何しに来たんだ?こんな街外れ、皇女が来るような場所じゃないぞ。」
皇子「べ、べべ別に意味なんか無いの!ちょ、ちょっと空が見たくなっただけなの!」
凱空「む?どうした、なんだか顔が赤いが…収穫時期か?」
皇子「リンゴじゃないの!! …あ、そうそう!大事なお知らせがあったの!」
凱空「悪いがもうじき戻らねばならん。用があるなら早めに済ませてくれ。」
皇子「あ、うん。あのね、来月にね、「武術会」があるの。で、凱空…出てみない?」
凱空「武術会か…まぁ賞品にもよるな。俺は堂々と金品に目が眩むタイプだ。」
皇子「しょ、賞品は!その!いいと思うの!きっと凱空も気に入るの!だから…!」
凱空「よし、ならば出よう。俺の参加を手配しておけ。」
皇子「あ…うんっ☆」

金か装備か…どちらにしろ腕が鳴るぜ。
賞品は「皇女」だ。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔14〕
一ヶ月が経ち、皇子の言っていた武術会が明日に迫った夜。事態に動きがあった。
コンコン(ノック)
声「凱空様、大事なお話がございます。洗馬巣と二人、よろしいでしょうか?」
凱空「む?その声は…あの時の使者か?ということは…よし、入れ。」
ガチャ(開)
紳士「お察しの通りです。「魔王」に関する謎、重要なものが幾つかわかりました。」
凱空「そうか、よくやった。で、状況はどんな感じだ?」
紳士「最悪です。古代神…「魔神:マオ」が憑いているという説が浮上しました。」
凱空「神…だと?なんだその偉そうな存在は?生意気な!」
洗馬巣「およそ五百年前…大戦の末、海に封印された伝説の化け物です。」
凱空「神…大戦…。初めて聞く話だが、入手元はどこだ?」
洗馬巣「私の思い出です。」
凱空「何歳なんだ!?お前も立派な化け物じゃないか!」
洗馬巣「私も異星の出身ゆえ、他の方よりほんの少しだけ長生きなのですよ。」
凱空「だが何故だ?その神とやらは封印されたんだろ?」
洗馬巣「ええ、確かに「肉体」は。ですが奴は、直前に「精神」を切り離したのです。」
紳士「まだ調査の段階ですが、恐らくは「転魂の実」の能力かと。」
〔転魂(てんこん)の実〕
食べた者の魂を、体から離脱させることができる果実。
魂だけでは何も出来ないが、相手に同意があれば他人に憑依できる。
自分の体に戻るまでその効果は継続する。
すでに絶滅しており、今では絶対に手に入らない。
凱空「真の敵は精神体か…厄介だな。魔導士の力が要るが、見つかったか?」
紳士「東へ向かってください。「大賢者:無印(むいん)」がアナタを待っています。」

東か…。長い旅に、なりそうだ。
凱空は西の空を見ている。

 

外伝:勇者凱空Ⅱ〔15〕
武術会当日。だが俺は参加するつもりは無かった。状況が変わったからだ。
魔王の正体が掴めた以上、グズグズしてはいられない。すぐにでも旅立たねば。
コンコン(ノック)
皇子「…どなた?少し待って、いま着替え中で…」
凱空「わかった、終わるまで見てる。」
皇子「ってキャアアアアア!なんで既に中に居ますの!?今のノックの意味は!?」
凱空「お別れを言いに来た。急な話だが、旅立つことになったんでな。」
皇子「えっ…ど、どういうこと…? ハッ!まさかアナタ「魔王」と…!」
凱空「ああ、デートの約束があるんだ。」
皇子「下手な言い訳にも程があるの!バカにしないでほしいの!」
凱空「探させてた有能な仲間も見つかった。これ以上の足踏みは世界が危険だ。」
皇子「だ…ダメ!だって今日は武術会の日だもの!今日だけは絶対にダメなの!」
凱空「悪いな。だが他の奴らも頑張る、俺がいなくても十分に楽し…」
皇子「ダメなの!だって…だって私、優勝者と結婚することになってるのっ!!」
凱空「なっ…!?」
皇子「私、凱空が好き!凱空以外の人と結婚するなんてイヤなの!だから…!」

凱空「…言ったろ?俺は「肝心な時には居ない男」だと。」
皇子「えっ…。」
凱空「俺は「勇者」だ。進むは茨の道…俺の地図に「恋路」という道は無い。」
皇子「そ、そんな…!イヤ!イヤなの!行かないでぇ!!」
凱空「泣くな皇子。お前はもっと優しい男と結婚し、元気な子を産め。 サラバだ!」
皇子「凱空ぅーー! いやぁああああああ!!」

すまん、皇子…!!
凱空は窓の外へと消えた。
皇子「うぐっ、えぐっ。バカ…凱空のバカ…! ここ、30階…。」

凱空「うぉおおああああああああっ!!?
こうして再び、凱空は旅立った。

これが皇子との、永遠の別れとも知らずに。

 

第三章へ

本編( 6 / 10 )

第二部:第三章

第三章

 

2-121:仲間〔13歳:LEVEL17〕
春。 13歳になったらしい僕と愉快な仲間達は、順調に旅を続けていた。
目指すは五錬邪の本部。でもかなり距離があるらしく、歩きだと相当掛かりそうだ。
勇者「ハァ、ハァ、疲れた…。やっぱ何か、乗り物にでも乗らない…?」
盗子「ちょっとぉ、しっかりしてよ勇者~。乗り物は怖いからもうイヤだよ~。」
勇者「あ、ところでジャック。次の街「モレンシティ」へはどのぐらいで着きそう?」
盗子「えっとね…ってだから「盗子」だってば!もう何度言わせればわかんのさ!」
勇者「わからないから言ってるんだ!!」
盗子「わーん!なぜか理不尽にキレられたよー!」
姫「泣かないで盗子ちゃん。李夫人も根はいい人だよ。」
盗子「誰の奥さんだよ!そんな他人にキレられたらもっと納得いかないよ!」
勇者「ご、ごめんアレキサンダー。僕は少し焦っているのかもしれない。謝るよ。」
盗子「ぐすん…。う、ううん、いいの。わかってるから早く次の街へ急ごうよ。」
勇者「…うん。 パーティーは三人、戦力不足は否めない。仲間を探さないと…!」

~その頃、噂の「モレンシティ」では…~
女「きゃぁああああ!イヤ!離してぇーー!!」
ロボ「グヘヘへ!騒イデモ無駄ダ人間!この街デハ俺達ロボットガ正義…」
少年「おっと、待ちなロボ公。レディに対するその態度…見過ごせないぜ。」
ロボ「アン?誰ダ貴様ハ!?ヤンノカコラ!!」
女「あ、アナタは…?」
少年「フッ、俺か? 俺は「勇者」。俺が来たからには安心していいぜ、ベイベー!」
なんちゃって勇者が現れた。

 

2-122:秋話〔13歳:LEVEL17〕
三日ほど歩き、僕達はやっと「モレンシティ」という街に到着した。とっても疲れた。
噂では、ここはロボット技術が行き過ぎ、逆にロボに支配されてしまったんだとか。
恐らく何かしらの戦闘に巻き込まれるんだと思う。その前に強い仲間を見つけたい。
勇者「なんとか仲間を探そう。でも弱い奴らはいらない、欲しいのは強い奴らだ。」
姫「勇者君があと二人ぐらい居ればいいのにね。」
盗子「あっ!そういえば姫、秋に「ミルシティ」で聞いた「ニセ勇者」の話覚えてる?」
姫「うん、サッパリ覚えてるよ。」
盗子「どっちだよ!サッパリなのか覚えてるのかハッキリしてよ!」
勇者「ん?ニセ勇者?秋に一体何があったの…?」
姫「勇者君の名を騙り、財宝を奪って逃げた不届き者がいたんだよ。許せないね。」
盗子「かと言って急にシッカリされても戸惑うよ!」
勇者「ニセ勇者か…。でもなぜ僕の名を?僕はそんなに有名人なのか?」
盗子「私は「指名手配」の線を疑ってるけどね。」
勇者「し、失礼な!僕がそんな悪人なはず無いじゃないか!訂正してよ!」
姫「そうだよ盗子ちゃん。疑うのは良くないよ。」
勇者「いや、そこを訂正されるとちょっと…。」
姫「まぁとりあえず、お昼にしようよ。私お腹すいちゃったよ。」
勇者「えっ、あ…う、うん。」
もうじき夜だ。

 

2-123:遭遇〔13歳:LEVEL17〕
姫ちゃんの要望により、食事をとることにした。思えばまともな食事なんて久々だ。
ガラガラ…(開)
勇者「こんばんはー。三人なんだけど席は空いて…」
ロボA「ヨ、ヨクモ仲間ヲ!人間ノ分際デ生意気ナッ!!」
勇者「!?」
少年「フン!職も名も「勇者」である俺に挑んだキミ達が悪いのさ、エネミー!」
盗子「えっ、勇者!?今アイツ「勇者」って言ったよ!あの覆面の奴!」
勇者「うん、僕も聞いた。でも今は状況が状況…助太刀するよサンコン!」
盗子「う、うん!そだね!!」
勇者の攻撃。

覆面少年に100のダメージ。
少年「ぶぼはっ!?
勇者「僕の名を騙るとは何事だー!!」
盗子「ってそっちの助太刀なのかよ!その判断は人としてどうなの!?」
少年「ぐっ…!な、なんだキミ達はいきなり…って、ブラザー!?えぇっ!?」
盗子「へ!? ぶ、「ブラザー」って…アンタまさか…!!」

博打「フッ、久しぶりだなベイベー達。俺に会いたくて追ってきたのかい?」
覆面少年は「博打」だった。

盗子は驚いた。
勇者はキョトンとした。
姫は構わず注文した。

 

2-124:乙女〔13歳:LEVEL17〕
店で戦っていた少年は、どうやら僕らの旧友らしい。なんだか言動がキザでウザい。
博打「すまないが詳しい話は後だ、とりあえず今は手を貸してくれブラザー!」
勇者「嘘をつくな!僕は孤高の一人っ子だと聞いた!」
博打「いや、そういう意味のブラザーじゃ…。」
姫「ブラジャーが手を貸してくれるなんて初耳だよ。」
博打「き、キミの方が激しく勘違いしてるな姫ちゃんベイベー。」
姫「…試してみる価値は、ありそうだね。」
盗子「無いから!こんな所で外しちゃダメだから!乙女としての恥じらいを持って!」
博打「お、おお俺は別に気にしないぜベベベベイベー?」
勇者「…ぶばっ!(鼻血)」
盗子「む、ムッキィー! 死ねー!男なんかみんな死んじゃえー!!」

ロボA「(チラッ)」
ロボ達「(…コクッ)」

ボゴッ!ボゴスボゴスッ!!(殴)
盗子の願いは叶いかけた。

 

2-125:牢獄〔13歳:LEVEL17〕
油断した隙を突かれ、ロボ達にやられてしまった僕達。気づけば囚われていた。
ここは一体どこなんだろう?見た感じでは牢屋か何かのようだけど…誰の?
盗子「わーん!しこたま殴られたよー!男女平等にも程があるよー!!」
勇者「くっ…!僕としたことが戦闘中に油断してしまうなんて…!」
博打「仕方ないさブラザー…。ブラザーとブラジャーじゃブラザーに勝ち目は無い。」
勇者「…ハッ、そうだ!姫ちゃんは!?そこの看守!姫ちゃんは無事なのか!?」
看守ロボ「安心シロ。ロボトハ イエ、女ニ暴力ハ振ルワナイ。」
盗子「あ、アタシは!?ねぇアタシはなんで!?」
博打「いや、さっき普通に女を襲おうとしてたぜコイツら…?」
看守「ニンゲン コトバ ムツカシネ。」
盗子「ホントにロボなの!?そんな人間の卑しい部分までコピーする必要性は!?」
勇者「いいから答えてくれ!姫ちゃんをどこへやった!?」
看守「イヤ、ソノママ普通ニ食事シテタガ…?」
勇者「…彼女のド根性に乾杯したい。グラスを二つ…あ、お前の分も入れて三つ。」
盗子「今は乾杯とかしちゃう状況じゃないから!てゆーかアタシのぶん無くない!?」
博打「ところでこれから、俺達をどうするつもりなんだいエネミー?」
看守「黙ッテ待テ。全テハ我ラガ父…「ドクター・栗尾根(クリオネ)」ガ決メル。」
勇者「!! ど、ドクター・クリオネだって!?」
盗子「えっ!知ってるの勇者!?」

なんて珍妙な名前なんだ。
「勇者」が言うな。

 

2-126:一切〔13歳:LEVEL17〕
僕達を捕らえたロボの親玉は、「ドクター・栗尾根」という変な名前らしい。
さっきのロボの発言からして、この都市を支配してる黒幕に違いない。倒さないと。
盗子「ね、ねぇ勇者。なんとか逃げられないかな?看守はどっか行っちゃったし…。」
勇者「いや、親玉に会おう。僕らは殺されず生かされた…何か意味がありそうだ。」
博打「まぁ安心しなよ盗子ベイベー。いざとなったら俺が全員倒してやるぜ!」
盗子「無理だよ!アンタ雑魚じゃん!「勝負師」なのに素人よりも運弱いじゃん!」
博打「オイオイ、それは三年も前の話だろ?今や俺の予想的中率は100パーさ。」
盗子「えっ、この三年で何があったの!?いつの間にそんなに強く…」
博打「思った逆に賭ければ、バッチリだぜ!」
盗子「100パー外れるんじゃん!」
勇者「じゃあ一応お前は強いんだよね?なんでわざわざ僕の名を騙ったりしたの?」
博打「ギャンブルの世界に「守り」の文字は無くてね。仲間が必要だったのさ。」
勇者「なるほど、一切…一切ほかに頼れる友達が一切いないと。」
博打「いや、そんなに「一切」を強調されるとヘコむぜブラザー…。」
勇者「あ…ご、ごめん。何気ないんだ。」
博打「いや、そこは「悪気」を否定してくれないと全然フォローに…」

そんなこと言われても。
悪気はあった。

 

2-127:交渉〔13歳:LEVEL17〕
一時間ほど待たされた後、僕達はドクター栗尾根の部屋へと通された。
敵か味方か…それ次第では戦闘もやむを得ないけど、できれば穏便に済ませたい。
栗尾根「イヒヒ。よ、よよよく来たな小僧ども。こ殺さず生かしたのは他でもな…」
勇者「ありがちな前振りに付き合っている暇は無いんだ。本題に入ってほしい。」
栗尾根「くっ…うう噂通り無礼な小僧だ。よ、よしいいだろう。そ率直に言おうよ。」
博打「いや、「言おうよ」とか言われてもさドクター…。」
盗子(う~ん…。どっかで聞いたような口調だなぁこのお爺ちゃん…。)
栗尾根「い、言うぞ?言っちゃうぞ?ズバリ!!…ズバれば…ズバる時…?」
盗子「ズバれよ!! 自信なさげにもったいぶるなよ!いいからさっさと言って!」
栗尾根「うぅ…そそその~…「孫」を…孫を捜してほしいのだ。我が最愛の孫娘だ。」
勇者「…悪いけど、僕らにはもっと大きな役目があるんだ。関係無い仕事は…」
栗尾根「い、いや!ある!まま孫は「先輩」を追うと言って出て行ったそうじゃん!」
博打「先輩って…まさか「学園校」のかい?だがなんで俺達だと思うんだドクター?」
栗尾根「き貴様だ。以前、ま孫からき聞いた話にで出てきた奴に、よよよく似てる。」
盗子「えっ、アタシ!?何て言ってたの?あ、やっぱ「とっても可愛い☆」とか??」

栗尾根「ワキから茶を出すと。」
盗子「アタシじゃないからそれ!!」
栗子のトラウマだった。

 

2-128:捜索〔13歳:LEVEL17〕
ロボ博士に捜索を依頼された孫娘は、僕達の後輩だそうだ。メイガンも知っていた。
栗尾根「た、頼む!孫を捜してくれ!ささ最近、この街の近くで似た子供が…!」
勇者「断る。お前はこの都市を支配していると聞く。悪に手を貸すつもりは無いよ。」
博打(…ど、どうしちゃったんだブラザーは?何か悪いものでも食ったのか?)
盗子(ううん。むしろいいのを何発も食らったみたいでさ…。)
栗尾根「ち、ちち違うんだ!わワシではアイツらの暴走をと止められねぇでさぁ!」
勇者「暴走?でもさっきの感じだと、ロボはお前の言うことを聞きそうだけど?」
栗尾根「あ、ああ。確かに、聞く…だけ。」
盗子「ナメられてるんじゃん!ホントにアンタが作ったの!?」
栗尾根「い今では看守ロボや一部のロボしか、あ相手にしてくれん。 だが…!」
勇者「でも、孫なら食い止められる…そう言いたいんだね?」
栗尾根「うむ。あの子には、ふ不思議な力がああるのか、みんなし従うのだったよ。」
盗子「ん~。どうする勇者?断っても戦闘にはならなそうだけど。」
勇者「ロボを自在に操る女、栗子か…。探す価値はあるかも…しれないね。」

~その頃、近隣の「ルッシュ村」では…~
栗子「あの!す、すすすみません!えと、人を…人を捜したりしちゃってまして…!」
女「あら、人捜し? 誰を捜してるの?顔の分かる何か、持ってるかしら?」
栗子「あああの、その、ああ憧れの…その…先輩で…ち力になりたくて…その…。」
女「う~ん。でも写真も無いんじゃちょっとわからないわねぇ~。」
栗子「え、えと…えと…あっ!あ、アレです!あああんな感じですっ!」
栗子はチワワを指差した。

 

2-129:聞込〔13歳:LEVEL17〕
栗子を探すことにした僕達は、目撃情報があったという「ルッシュ村」へと向かった。
食事中だった姫ちゃんも戻ったけど、パーティーは4人…。人捜しには心もとない。
とりあえず手分けして捜すことにしよう。片っ端から聞き込みをして回るしかない。
たとえ時間はかかろうとも、引き受けたからには全うしなければ。「勇者」として!
勇者「えっと、人を捜してるんだけど…。」

栗子「は、はい…?」
一瞬だった。

 

2-130:人間〔13歳:LEVEL17〕
村に着き、最初に話しかけた少女…このアタフタっぷりはロボ博士に似てる。
栗子「うぇっ!?ゆ、ゆゆ勇者先輩!?何がどうしてどうなっちゃいましたか!?」
勇者「やっぱりお前が栗子だったか…。 オーイ!見つけたよみんなー!!」
栗子「え、「やっぱり」…?見てわわからない程に私は変わっちゃりましてか?」
盗子「あっ、栗子!? って早っ!普通こういう時ってもっとこう色々と…」
栗子「わー!!のの飲めません!い今はお茶菓子がきれてるんでそのっ!!」
盗子「誰が出すか!!どう見たって人間じゃん!茶菓子の前にアタシがキレるよ!」
勇者「…人間?」
盗子「失敬な!真顔で聞き返されると本気でヘコむから!」
博打「そうだぜブラザー。そりゃ多少ウザい所はあるが、人間は人間…」
盗子「うっさいよ!人間かどうかの話に「ウザさ」を持ってくる意味がわからないよ!」
姫「うざくたって いいじゃないか にんげん…だよね?」
盗子「人間だものー!!うわーん!!」

まったく…。話が進まないじゃないか。
勇者は〔転嫁〕を覚えた。

 

〔転嫁(てんか)〕
勇者:LEVEL20の魔法。(消費MP30)
責任やダメージの対象を別対象に移し変える魔法。よく政治家が秘書に使う。
 

 

2-131:新手〔13歳:LEVEL17〕
栗子を見つけたので、僕達はモレンシティへと戻ることにした。早い仕事だった。
栗子「そ、そうですか…。勇者先輩は記憶が混乱しまくりまくりんなんですか…。」
盗子「ところでさ、アンタは何で追ってきたわけ?誰に用があったのさ?」
栗子「うぇ!?いい言えませんですよ!け賢二先輩が気になるだなんてそんなっ!」
盗子「言ってる言ってる!これ以上ないほどに言っちゃってるから!」
姫「賢二君…いい子ちゃんだったのにね…。」
栗子「えっ、故人!?なぜに故人的扱いなんでありましょうか!?」
博打「まぁ気にするなよ栗子ベイベー、俺がいるさ。ホラ、街が見えてきたぜ?」
勇者「とりあえずロボ博士の元へ行こう。今後の話はその後…えっ!?」
勇者は街の異変に気づいた。
ロボの残骸が多数転がっている。
勇者「な、なんだコレは…!? オイそこのロボ!誰にやられたの!?オイ!」
ロボ「ホ…細身ノ魔剣…鉄仮面…ガキ…。ミンナ…一瞬…デ…。(ガクッ)」
栗子「わー!ろ、ロボットさーん!目ぇひんむいてくださいー!えーん!!」
盗子「いや、「ひんむけ」って…。 でも、一体誰がこんな…。ちょっと酷くない?」
勇者「何者かが動いている。脅威は…五錬邪だけじゃないのかもしれない。」

~その頃~
少年「どうでやんした「覇者(はしゃ)」の兄貴?腕試しの感触はどうで?」
鉄仮面「うむ。まだ少し慣れんが、だいぶ掴めた感はある。秒殺だったよ。」
少年「さっすが「魔神の剣」でやんすね。どうです?アッシらだけで攻めやすかい?」
鉄仮面「焦るな「門太(モンタ)」、まだ早い。 ”奴”の元へ戻るぞ。」
勇者の勘は当たっていた。

 

2-132:密偵〔13歳:LEVEL17〕
街に戻ると、ロボ軍はほぼ全滅していた。鉄仮面の少年…果たして敵か味方か。
でもまぁとりあえず、結果的には街は解放されたわけだし、今回は良しとしよう。
勇者「約束通り、栗子は見つけてきたよ。ま、制御すべきロボはもういないけど。」
栗尾根「お、おおおっ!さ捜したぞ!お前がカクリを出たと聞いてかからもう…!」
栗子「わっ!くく苦しいですお爺ちゃん!あ、あと言いにくいけどお口臭いッス!」
勇者「…じゃ、僕らはもう行くよ。戦士の世界に「安息」の文字は無いんでね。」
博打「だね…って、どこへだっけ?そういや俺はキミらの目的を知らないんだ。」
勇者「ん?そうだったっけ? すまないけどビッチ、説明を頼めるか?」
盗子「ホントにすまないって思うなら名前覚えてよ!ムキィー!」
盗子は渋々状況を説明した。
栗子「ふぇ~。な、なんか不自然なぐらいそ壮大なお話になっちゃりますねぇ~。」
博打「ふ~ん。で?何か有力な手掛かりとかあったのかい盗子ベイベー?」
盗子「あ~。一応それっぽい地図は持ってんだけどさ、古代文字が読めなくて…。」
勇者「だから、とりあえず今は五錬邪を追ってるんだよ。他にアテが無くてね。」
博打「なら…「ローゲ王都」に行かないかブラザー?前に面白い話を聞いたんだ。」
姫「じゃあ私がツッコミを担当するよ。頑張って引き立てるよ。」
博打「いや、そういう面白さを語る気は無いんだ姫ちゃんベイベー…。」
勇者「面白い話…どういう話なの?」
博打「胡散臭くもあったがね。「邪神:バキ」封印の地…その謎がどうとかさぁ。」
盗子「じゃ、邪神!?マズいよ勇者!もし先に五錬邪が見つけちゃったら…!」
勇者「わかった急ごう。絶対に奴らよりも先に…むっ!?誰かいる!!」
博打「…そこかっ!!」
博打はトランプを投げた。

盗子の額に命中した。

 

2-133:音速〔13歳:LEVEL17〕
微かに感じた誰かの気配。でも博打の攻撃は失敗…多分逃げられたと思う。
盗子「うっぎゃー!! 痛い!痛いよ!アタシが何したってんだよー!」
博打「す、すまない盗子ベイベー!柱の陰に誰か居たから俺は…!」
盗子「柱って逆方向じゃん!なんで180度投げ損ねられるのかを知りたいよ!」
勇者「もういない…逃げられたね。五錬邪一派の可能性もある、今すぐ向かおう!」
博打「ま、マジで?かなり遠いぜ?何十日…いや、歩きじゃ何ヶ月かかるか…。」
栗尾根「なならばアレに乗ってい行くがいい。わ我が自信作、「音速車」だい。」
〔音速車〕
ドクター栗尾根が完全機械制御化に成功した、超高性能小型車。
対障害物センサー搭載で、安全な走行が可能となっている。
最高速度は確かに速いが、「音速」と呼ぶのは調子に乗りすぎだ。
勇者「いや、悪いけど遠慮するよ。乗り物には悪い思い出があってね。」
栗子「だ、だだ大丈夫ですよ!わ私がご一緒しまうまっすから!整備ししますから!」
栗尾根「なっ!な何言ってるんだ!そそんな危険な場所行くなんてバカだけだぞ!」
勇者「それは…僕らへの「挑戦状」と受け取ってもいいのかなジイさん?」
栗尾根「あ゛。」
栗子「わ私は平気だから!お願いだから行かせちゃってよお爺ちゃん!お願い!」
栗尾根「・・・・・・・・。」

姫「…わかったよ。行きなさい。」
栗尾根「わかっ…って、えぇっ!?」
姫はジイさんの見せ場をかっさらった。

 

2-134:報告〔13歳:LEVEL17〕
目的地も決まり、急がなきゃならない理由もできた。早いとこ出発しなければ。
勇者「さぁみんな、早速出発するよ。準備はいい?栗子もいけそうな感じ?」
栗子「えっ!?は、ははハイ!じ人生は冒険だと思いますよっ!!」
盗子「どういう意味!?「逝けそう」なの!?もしかして「逝けそうな感じ」なの!?」
博打「ま、まぁ諦めようぜ盗子ベイベー。急ぐためには他に手は無さそうだし。」
勇者「博打の言うとおりだよボンゴレ、もっと落ち着いて。 ホラ、姫ちゃんを見なよ。」

姫「このネジは…いいよね?」
栗子「わー!どどどれも抜いちゃダメでちゅよー!!」
勇者は不安になった。
~その頃、五錬邪のアジトでは…~
兵士「赤錬邪様!勇者一行を見張らせていた密偵から、電報が入りました!」
赤錬邪「む?あのガキどもがどうかしたのか? よし、五・七・五で伝えろ!」
兵士「えぇっ!?は、ハイ!その…ローゲ国・神の手掛かり・あるのかも!」
赤錬邪「わかりづらい。」
兵士「そ、そんなっ!」
赤錬邪「ローゲか…桃錬邪が近いな。 すぐに伝えろ、奴らより先に入手しろとな!」
兵士「…は、ハッ!」
その晩兵士は悔しくて泣いた。

 

2-135:順調〔13歳:LEVEL17〕
モレンシティを発ち、三日が経った。今のところ意外にも快調に進んでいる。
ロボ博士の計算が確かなら、もうじき「ローゲ王都」に着く頃だと思うんだけど…。
勇者「だいぶ走ったね…。見たところ順調そうだけど、調子はどうなの栗子?」
栗子「じゅ、順調ですよ!とととてもブレーキが壊れてから五時間とは思えませぬ!」
盗子「えぇっ!?全然順調じゃないじゃん!ここまで来れたのが奇跡なんじゃん!」
博打「違うぜベイベー。「奇跡」ってのは不幸じゃない、幸せのために起こるのさ。」
盗子「今はそんなキザなセリフが意味を成す状況じゃないから!」
姫「あ~、今のはキマッたね博打君。なかなかヤルね。」
博打「フッ、照れるぜ姫ちゃんベイベー。褒めたって何も出ないぜ?」
姫「…と、見せかけて?」
栗子「わー!ののの飲めませんですー!!」
盗子「なんでアタシを見んのさ!?出さないってばっ!!」
だがスピードは出まくってる。

 

2-136:王都〔13歳:LEVEL17〕
ブレーキが壊れたまま、さらに走ること一時間。王都っぽい大都市が見えてきた。
このギマイ大陸は一国統治。だから一応、ローゲ国内にはずっと居たことになる。
でもやはり、「王都」となると何かが違う。かもし出す雰囲気というか、なんというか。
僕は王都に来たのは初めてなのだろうか?それとも他国ではあったのだろうか?
王様に頼まれ、ドラゴン的な何かを狩りに行ったこととかあったのだろうか?
偉そうな王様に、「死んでしまうとは情けない!」とか言われたりしたのだろうか?

そんなことを考えながら僕は、遠ざかる王都を眺めていた。
誰も何も言えなかった。

 

2-137:省略〔13歳:LEVEL17〕
結局、制御機能を無理矢理壊してなんとか止まることができたのは数時間後。
車は外壁に激突し、みんな重傷。その後、歩いて戻ったら一日かかってしまった。
やっぱり乗り物は怖い。でも、今回はまだマシだったと安心した自分がもっと怖い。
勇者「…というわけで、この扉を開ければ多分「王の間」になるわけだけど…。」
盗子「どういうわけで!?なんかメッチャはしょってない!?話飛び過ぎだよ!?」
姫「ページの都合だよ。」
盗子「なんだよそれ!わけわかんないし仮にそうでもそれは言っちゃダメだよ!」
姫「ぶっちゃけ説明が面倒なんだよ。」
盗子「それはもっと言っちゃダメだよ!」
勇者「仕方ない…。じゃあ栗子、ここに至るまでの経緯を簡単に説明してあげて。」
栗子「えぇっ!?えと、とりあえず邪神の王様が知る手掛かりが旅のセオリーで!」
盗子「むしろ難解になっちゃってるから!王様が邪神扱いになってるから!」
博打「神の手掛かり…こういう思わせぶりな情報は大抵キングが知ってるもんさ。」
盗子「だ、だからって許可も取らずに不法侵入はどうかと思うけど…。」
勇者「事態は急を要する。 不法侵入なんて、後で話せばわかってもらえるさ。」
盗子「ん~、まぁそっか。そだよね。」
勇者は父の過去を知らない。

 

2-138:異変〔13歳:LEVEL17〕
王は何かを知っていると思う。でも、僕らがここへ来たわけはそれだけじゃなかった。
一見何事も無いように見えた街の空気は、何かがおかしかった。静かすぎたんだ。
気になって王宮まで来てみたんだけど、兵士の一人も見かけない。明らかに変だ。
勇者「僕の読みに間違いが無ければ、この中で何かが起こっているはずだ。」
姫「大丈夫だよ勇者君、謝ればきっと許してくれるよ。」
盗子「誰も怒ってないから!そういう意味じゃな…」
声1(「貴様ぁー!ブッ殺してやるーー!!」)
盗子「わー!怒ってるぅー!!」
勇者「良かった、まだ生きてる奴がいる!さぁ、すぐに助太刀に向かうよ!」
声2(「や、ヤメろ!ヤメてくれ!も…桃錬邪様ぁああああ!!」)
声3(「ギャアアアアアアアアアアッ!!」)
勇者「なっ…!?」
盗子「えっ、桃錬邪様!?どういうこと!?仲間割れか何かってこと!?」
博打「どうするブラザー?同士討ち希望なら待つのもアリだぜ?」
勇者「行くに決まってる!誰であれ、無駄な血は流させちゃいけないんだ!!」
勇者は扉を開けた。

血に染まった桃錬邪が見えた。

 

2-139:侵略〔13歳:LEVEL17〕
中から聞こえた悲鳴。慌てて扉を開けると、そこには血まみれ桃錬邪がいた。
でも、それは返り血などではなく、彼女自身の血で…既にグッタリとしていた。
勇者「ど、どうしたんだ!?お前は桃錬邪なのか!?それとも赤錬邪か!?」
盗子「勇者!この状況でその問いはシャレんなんないよ!」
栗子「はわわわ!へ兵隊さんもみなさん血祭りワッショイショイですよぉ…!」
桃錬邪「う゛…はっ…!…初代…や、凱空のガキ…か。 …逃げな、勝てない…。」
勇者「か、勝てないって誰に!?というか逃げろって…お前は敵なんだよね!?」
桃錬邪「フッ…死に際ぐらい…正気に戻るさ…。だから早く…”奴”が来る前に…!」
声「なんでぇ…ここぁ随分と客の多い王室だなぁオイ。おちおち便所にも行けねぇ。」
一同「!!?」
桃錬邪「チッ…グズどもが…!」
勇者「だ、誰だお前は!?お前なのかこんなことしたのは!?」
男「あん?先に仕掛けたのはそっちだぜぇ?ま、先に居たのもそっちだったがなぁ。」
博打「ゆ、ユーの目的は何だい?できればキツい争いは避けたいんだが…。」
男「ククッ、目的は話すと長ぇ。だが俺様の趣味が「皆殺し」ってのは教えてやるよ。」
盗子「わーん!先生とわかり合えそうな人が出てきたよー!悪魔が来たよー!」
勇者「…そう、なら仕方ない。この「勇者」が、正義の名のもとに貴様を倒す!!」
男「勇…者?ギャハハハ!傑作だ、この星にゃまだそんなのが居たたぁな!」
勇者「こ、「この星」…?お前は一体何者なんだ!?」

男「俺様か?俺様は「ソボー」。悪ぃが「宇宙海賊」の正義は、この俺様自身だ。」
賢二のせいで来たっぽい。

 

2-140:生変〔13歳:LEVEL17〕
桃錬邪の軍をアッサリ滅ぼした、新たなる敵「海賊:ソボー」。とっても偉そうな奴だ。
盗子「ど、どうしよう勇者!前に賢二が言ってたよ、超有名な極悪人だって!」
勇者「でも海賊が…単身で?しかも街を襲った様子が無かったけど…。」
ソボー「たまにはのんびり、一人旅もいいもんだ。まぁ街は見飽きたら消すがなぁ。」
博打「強者ゆえの余裕か…だがそんなのはこの俺が許さないぜキャプテン?」
ソボー「…あ゛?」
博打「ぐっ!ま、まさかこんな時に持病の「深爪」が…!」
盗子「肝心な時には昔のまんまかよ!ちょっと期待したアタシがバカだったよ!」
博打「ち、違う!違うぜ!俺は昔の俺じゃない…いくぜ「ロシ銃・ルーレット」!!」
〔ロシ銃(ガン)・ルーレット〕
具現化した銃で、自分と相手を交互に撃つ。
弾を何発込めるかによって、その威力は変わってくる。
リスクを背負った技なため、与えるダメージはそれなりに大きい。
盗子「な、なんかヤバそうな技じゃない!?大丈夫なのアンタ!?」
博打「言ったろベイベー?思った逆に賭ければ、俺の読みは100%当たると!」

ズガガァン!!
(撃)
博打はパタリと倒れた。

 

2-141:職業〔13歳:LEVEL17〕
博打は一撃で倒れた。でもおかしい、確かに彼は敵に向けて撃ったのに…なぜ?
博打「ぐっ…はっ…!!」
勇者「だ、大丈夫か博打!?しっかりして! どうなの姫ちゃん、助かりそう!?」
姫「…午前中です。」
博打「そ、それを言うなら「ご臨終」…って、まだ生きてるから…回復を…。」
ソボー「ロシ銃か…なかなか面白ぇ技だなぁコレぁ。ありがたく頂いとくぜぇ。」
栗子「えぇっ!?なななんで海賊さんが同じ銃を持っちゃってはりますか!?」
勇者「それに「頂く」って…まさかそれで打ち返したっていうのか!?」
盗子「ハッ!もしかして宿敵と同じ「好敵手」ってヤツ!?「海賊」じゃないの!?」
ソボー「あ?「宇宙海賊」ってなぁただの肩書きだ。俺様の真の職は「技盗士」よぉ。」
〔技盗士(ぎとうし)〕
対峙する相手の技を盗み、自分の物にすることができる上級職。
「好敵手」が「反射」なら、「技盗士」は「記憶」の職である。
勇者「…だ、大丈夫!この僕が本気を出せば、どんな敵だっておっちょこちょいだ!」
盗子「「ちょちょいのちょい」だよね!?てゆーかアンタ確か剣も抜けないんじゃ…。」
勇者「フッ、抜かりは無いよ。前の街で新しい武器を買っ…って宿に忘れてきた!」
勇者はおっちょこちょいだった。

 

2-142:味方〔13歳:LEVEL17〕
せっかく武器を買ったのに、なんと忘れてきてしまった。結構高かったのに…!
勇者「くっ…!思い切ってリンダの腕輪を質に入れたというのに…!」
盗子「え゛ーっ!?なにしてくれちゃってんのさアンタ!後で殺すよ!?」
栗子「わわ、私がななんとかしちゃいますよ!出ればいいのさ「機関土偶」!!」
〔機関土偶(カラクリどぐう)〕
その場の土からカラクリ人形を作り出す。
材質は土なので、雨が降ると面白いことになる。
土偶「ポポ…ポポパポポプパポ…。」
ソボー「弱そうな奴だな…。だが「技盗士」は「コピー」じゃねぇ、俺様が使えば…。」
土偶2「ギョガー!ギギャゴゴグガー!」
栗子「わー!もももっと強そうなお方がご登場ですかー!?」
盗子「や、ヤバいよ勇者!コイツなんでもアリだよ!」
姫「とんでもない敵だね。」
盗子「アンタの方がなんでもアリだけどね!」
勇者「やはり僕がやるしか無さそうだね。博打、その剣を借りるよ。」
盗子「だ、ダメだよ戦っちゃ!下手したら使った技盗まれちゃうんだよ!?」
勇者「安心しろアポカリプス、僕は記憶喪失…技なんて覚えてない。」
盗子「もっと不安なこと言わないでよ!」
勇者「だ、大丈夫。こういう時は、頼もしい味方が現れるのが世の常だよ。」
盗子「んな他力本願な「勇者」なんて聞いたことないよ!それにそんな都合よく…」
ソボー「いや、そうでもないみたいだぜぇ? 誰だよ、そこに居るのはぁ?」
盗子「えっ…?」
声「…ほぉ、まさか気づかれておったとはなぁ。油断したわ。」
盗子「わー!? そ、その声はまさか…!!」
ソボー「名を名乗れよ。覚える気ぁサラサラ無ぇが、聞くだけ聞いといてやるわ。」

スイカ「フンッ、弱者に名乗るスイカは無いな。」
喜んでいいのか悪いのか。

 

2-143:開戦〔13歳:LEVEL17〕
ピンチに現れたのは頭がスイカな変な人で、またもやバーバラの知り合いらしい。
前の先生な人は強かったけど、この人はアテにならなそう。というか敵っぽい。
勇者「み、見るからに怪しい人め!何しに来たんだ!?お前は敵なのか!?」
スイカ「我はスイカを砕きし者。荒ぶるスイカ魂に導かれ、やって来たのだ。」
ソボー「この俺様に気づかれず、こんな近くまで来るたぁテメェなかなかヤルなぁ?」
スイカ「フッ、割られぬために気配を殺す…それがスイカの本能よ。」
盗子「どっちなんだよ!割る側なのか割られる側なのかハッキリしてよ!」
ソボー「ターゲット変更だ。テメェの技はうまそうだぜ。」
姫「残念だけどまだ旬じゃないよ。」
盗子「スイカの話じゃないから!まぁ気持ちはわかるけども!」
スイカ「己が力に溺れし者よ。その邪なスイカ、我が棍棒がサビにしてくれよう。」
ソボー「ケッ、偉そうだよテメェ!焼きスイカにしてやるぁ!火炎魔法〔炎殺〕!!」
スイカ「甘いわぁ!スイカ流棒術、「猛烈バックドロップ」!!」

ガキィイン!!
効果音がおかしい。

 

〔炎殺(えんさつ)〕
魔法士:LEVEL35の魔法。(消費MP33)
敵一体を取り巻き焼き殺す炎の魔法。焼きが足りないと客からクレームがくる。
 

 

2-144:展開〔13歳:LEVEL17〕
意外にもスイカの人は強く、二人の強さは拮抗していた。全く展開が見えない。
二人「うぉおおおおおおああああああっ!!」
キィイイン!
ガキィィン!
ザシュッ!
ズバッ!!
キィン!
ギッ、ギギギギィ…!
チュィン!

ズォオオオオオッ!
ササッ!
ダンッ!
ガィイイイン!!
キン!キン!カキン!キュィン!

ズバシュッ!!
いろんな意味で展開が見えない。

 

2-145:変態〔13歳:LEVEL17〕
二人の戦闘は小一時間ほど続いたけど、まだ終わりが見えない。僕の出番が無い。
勇者「あのスイカの人…敵だったんだよね?前からあんなに強かったの?」
盗子「う、ううん。よくわかんない。でもとりあえずインパクトは無駄に強すぎたよ。」
栗子「あっ、なななんか様子が変わりやがりましたよ!どどうしたでしょか!?」
二人の動きが止まっている。
ソボー「…なぁオイ、ぼちぼち遊びはヤメにしねぇか?カタぁつけようやぁ。」
スイカ「いいだろう、望み通り本気で参ろう。でなくばヌシのスイカは砕けまい。」
ソボー「ったく、この俺様に技ぁ盗む隙を与えねぇたぁ…厄介な変態野郎だぜぇ。」
スイカ「フッ、コチラこそ先程の非礼を詫びよう。久しく見ぬ強きスイカよ。」
ソボー「おっと、ならいい加減名乗りやがれよ変態。 俺様はソボーだ。」
スイカ「…剣を棒に持ち替えて、幾年月…。 今一度思い出すか…」

スイカ「「剣豪:秋臼(アキウス)」、そう呼ばれたあの頃をな。」
歴史上の偉人は変態だった。

 

2-146:手助〔13歳:LEVEL17〕
なんと、あのスイカ男は過去の英雄だったらしい…んだけど、とてもそうは見えない。
盗子「ガッカリだよ!勇者親父といい、なんで伝説の戦士は変人ばっかなんだよ!」
勇者「すまない栗子、弁護士を手配してくれ。」
盗子「冷静に怒んないでよ!なんか切なくなるよ!」
栗子「そそそんなことより助太刀した方がよくなくなかったりしませんですか?」
盗子「あっ、そだよね!いま五分五分なんだから手助けすれば絶対勝ちだよね!」
姫「じゃあ私がなんとかするよ。勇者君、目隠しある?」
盗子「どっちの味方する気だよ!アンタ思っきし割る気じゃん!」
勇者「でも手助けとは言っても、あのスピードについていける人間なんて…」
桃錬邪「こ…ここにいる…じゃないか。アタシに、任せな。」
勇者「も、桃錬邪!?でもお前は…!」
桃錬邪「フッ…、せめてもの罪滅ぼしさ。凱空にも…悪かったって伝えといてよ。」
姫「ダメだよ桃ちゃん。いま動くと死んじゃうよ。」
勇者「行っちゃダメだ桃錬邪!正気に戻ったんなら、生きて罪を償えばいいさ!」
栗子「そそそうですよ!ホントに悪いのはく黒幕の人とかなんですよね!?」
盗子「死んじゃったら終わりなんだよ!?無理はしちゃダメだよ!」
桃錬邪「アタシは、本気なんだ。」
勇者「桃錬邪!!」

桃錬邪「でも…そこまで言うなら。」
一同(あ、あれれっ!?)
桃錬邪は期待を裏切った。

 

2-147:空気〔13歳:LEVEL17〕
止めても行くのかと思ったら、結構アッサリと思いとどまっちゃった桃錬邪。
やはり僕が行くしかなさそうだ。死ぬかもしれないけど、挑むのが「勇者」だと思う。
勇者「というわけで、いい加減僕が活躍してもいい頃だと思う!みんな援護して!」
盗子「そうだよね頑張ってよ勇者!アンタ最近サボり過ぎだよ!」
勇者「確かに記憶を失って以来、僕は何もしていない。でも今日は…(ブォッ!)」
魔法弾が勇者の頬をかすめた。
勇者「…今日は、これで勘弁してやる。」
盗子「どれでだよ!?アンタ記憶と一緒に度胸まで忘れちゃったの!?」
勇者「ふ、フザけるな!お前のことは忘れても度胸は忘れないよ僕は!」
盗子「アンタこそフザけるなよ!アタシのことだけは死んでも忘れないでよ!」
栗子「ちょ、チョイとお待ちあれ!またお二人が止まりやがったですよっ!」

ソボー「・・・・・・・・。」
ヒュゥゥウウウウ…(風)
スイカ「・・・・・・・・。」

盗子「わっ!なんかシリアスモードだよ!状況と絵が合ってないよ!」
勇者「シッ!この勝負…次に動いた瞬間に決まる。空気を乱しちゃダメだ。」
姫「そうだよ盗子ちゃん。ちょっとのキッカケでまた動きdへっくち!」

ス&ソ「うぉおおおおおおおおおお!!」
姫がGOサインを出した。

 

2-148:決着〔13歳:LEVEL17〕
姫ちゃんが出したキッカケで二人は動き出した。これが最後の攻防になると思う。
スイカ「食らうがいい!「刀神流操剣術」…」
ソボー「死ねぇ!「蛇頭剣技」…」
スイカ「百の秘剣、「百刀霧散剣」!!」
ソボー「あーあー…、名前なんだっけ!!」
ズバシュッ!!(斬)
盗子「えっ、なに今の!?肝心な場面を適当にやっちゃった!?」
栗子「でででもヤバいッスよ!スイカさんが斬られちゃりましたですわ!」
スイカ「ぐっ、不覚…!やはり歳には勝てぬか…!」
姫「やっぱり鮮度の問題だね。」
ソボー「ギャハハ!これで終わりだぁー!…なっ、何しやがる放しやがれっ!」
桃錬邪がソボーを掴んでいる。
桃錬邪「こう見えてアタシ寂しがりでね。悪いけど…一緒に死んでくれるか?」
勇者「も、桃錬邪!?お前いつの間に…!」
スイカ「悪く思うなよ女、ワシとて桃を割るのは趣味ではないが…好機は逃せん!」
ソボー「ち、チクショウがぁあああああっ!!」

ズババババシュッ!!(連斬)
スイカ割り魔人、会心の一撃。
桃錬邪ごとソボーを切り裂いた。

 

2-149:遺志〔13歳:LEVEL17〕
桃錬邪が命懸けでソボーを押さえつけ、なんとかソボーを撃破することができた。
ソボー「お…覚えてろテメェらぁ…。いつか、必ず、ブッ殺…グフッ!」
勇者「なんて奴だ、あれだけの技を食らってまだ息があるなんて…。」
スイカ「フッ、峰打ちだ。」
盗子「嘘じゃん!これでもかってくらい斬ってたじゃん!」
桃錬邪「ぶふっ…!ハァ、ハァ…。ヘッ、やって…やったぜチクショウが…。」
姫「喋っちゃダメだよ桃ちゃん。もうじき助けが来るよ。」
栗子「姫ちゃん先輩は!?せ先輩にしか回復はできないような気が…!」
桃錬邪「凱空に…伝えてくれ…「”奴”に気をつけろ」…て…さ…。(ガクッ)」
栗子「も桃錬邪さん!?”奴”って誰で!?肝心な部分がオブラートに包まれれ!」
桃錬邪は思わせぶって逝った。
勇者「桃錬邪は…ダメだったか…。せっかく正気に戻ったみたいだったのに…。」
姫「とっても悲しいよ。だから…桃ちゃんの遺志は私が届けるよ。」
勇者「彼女は最期に何て?」
姫「勇者君…。」

姫「今日のオヤツは、要らないよ。」
姫は聞き違えていた。

 

2-150:発見〔13歳:LEVEL17〕
ソボーは気絶し、そして桃錬邪は旅立った。犠牲はあったけど僕らの勝ちだ。
勇者「終わったね…。 さぁ、本来の目的は王だ。早く捜して話を聞こうよ。」
盗子「あっ、でもまだ油断はできないよ!このスイカ、いつも喧嘩売ってくるし…!」
スイカ「フン、安心しろ。ワシが求めるは強きスイカのみ…今のヌシに興味は無い。」
勇者「なっ!?どういう意味だ!?この僕が雑魚だとでも…!?」
バンッ!(扉)
兵士A「貴様らぁ!この「王の間」で何をしている!?な、なんだこの血の海は!?」
兵士B「オイ見ろ!あそこに国王様が倒れてるぞ!早く救護班を!」
スイカ「おぉ、兵士どもか。ちょうど良い、このスイ海賊の始末は任せるぞ。」
兵士A「う、動くな!この見るからに怪しい奴め!」
スイカ「ぬ?」
盗子「…まぁコレが人として当たり前のリアクションだよね。」
スイカ「やれやれ、これだからスイカの多い街は好かん。 帰るとするかな。」
勇者「ま、待て!さっきの言葉を撤回するんだ!」
スイカ「焦るな弱きスイカよ。いずれヌシも、全てを知ることとなろう。ガッハッハー!」
スイカは窓の外に消えていった。
勇者「くっ、逃げられた!」
兵士A「集えー!衛兵、集まれー!!」

しかも、この状況で。
勇者は逃げ出した。

 

2-151:影者〔13歳:LEVEL17〕
言い訳の言葉が見つからなかったので、僕らはそそくさと逃げ出すことにした。
ソボー達が倒したのか他には衛兵がいなかったようで、うまく逃げることができた。
勇者「ふぅ~。脱出には成功したけど…また振り出しに戻っちゃったね。」
栗子「ややっぱり例の「邪神の地図」を解読しまくりまくるしかないんでしょかね?」
老人「邪神の地図ぅ?お前さんらまさか、あの伝説の地図を持っておるのかね?」
盗子「わっ、なんだよお爺ちゃん!急に出て来て普通に参加しないでよ!誰!?」
老人「こう見えても私ぁ「国王」じゃ。頭が高いとか高くないとか。」
盗子「えっ!?でも国王ってさっき上の部屋で倒れてた人だよね!?」
国王「そりゃ影武者じゃ。で?ホントに持っとるのかな?力になれるやもしれんぞ。」
盗子「あるにはあるけど…半分だけだし解読方法も全くわかんないんだけどね~。」
国王「あ~、「血」じゃよ。人の血に浸せば、地図に点が記されるという話じゃて。」
勇者「なっ!?じゃあ半分でもそっちに点があれば用を成すんじゃないか!」
盗子「じゃ、じゃあ早速試してみなくちゃだね! あっ、でも血は…?」
勇者「まさか…こんな形で別れることになるなんて…。(チラッ)」
盗子「なんでアタシを見てんの!?」
というか致死量は要らない。

 

2-152:紛失〔13歳:LEVEL17〕
やけに普通に現れた国王から、なかなか有力な話を聞くことができた。
勇者「仕方ないから血は僕が少し出そう。早く地図を出してよブルックリン。」
盗子「あっ、うん。わかってるんだけど…その…あれ?なんで無いの?あれっ!?」
姫「…そんなにお腹すいてたの?」
盗子「食べて無いから! えー!なんでー!?この前までは確かにあったのにー!」
栗子「そ、そういえばさっきから博打先輩が見えないような気がしないでもなく…。」
勇者「なにっ!?ま、まさか…!」

~その頃~
博打「フッ、相変わらず甘いベイベー達だ。余裕でミッション・コンプリートだぜ。」
密偵「さすがです博打様。そして先日はありがとうございました。」
博打「まぁ気にするなブラザー。さ、とっとと上に報告するがいいさ。そして行こう。」
博打は裏切り者だった。
~そして、五錬邪のアジトでは…~
兵士「赤錬邪様!勇者一行を見張らせていた密偵から、電報が入りました!」
赤錬邪「む?あのガキどもがどうかしたのか? よし、Hip Hop調で伝えろ!」
兵士「えぇっ!?は、ハイ!その…Hey Yo!地図にアクセス!結果はサクセス!」
赤錬邪「わかりづらい。」
兵士「そ、そんなっ!」
赤錬邪「そうか、やっと地図が…。 よし、皆を集めろ!最終段階に入るぞ!」
兵士「…は、ハッ!」
その晩兵士は実家に電話した。

 

2-153:再会〔13歳:LEVEL17〕
恐らくは博打の裏切りにより、僕らは手掛かりを失ってしまった。なんてことだろう。
こうなったらやはり、奴らのアジトに向かうしかない。何らかの動きがあるはずだ。
勇者「まだ博打が逃げて間もない。急いで五錬邪のアジト方面に急ごう!」
国王「五錬邪か…。確かタケブ大陸の入口、「シジャン王国」を乗っ取ったとか…。」
栗子「し、ししシジャンなら頑張れば夏頃には着きますですよ!急ぎましょ!」
盗子「あのさお爺ちゃん、タケブ大陸ってどう行けばいいのか知ってる?」
国王「北へ向かうがよい。北の「終末の丘」…その先にタケブに繋がる港がある。」
勇者「終末の…丘? なんか、前にどこかで聞いたような気が…。」

~その頃、噂の「終末の丘」では…~

父「母さん…随分と久しぶりになってしまったな。悪かったと思っている。」
黒錬邪「大丈夫、気にしてない。」
父「いや、今のはお前にじゃなくて墓に向かってだなぁ…。」
黒錬邪「息子にこの地のことは話したのか?噂じゃ今はローゲ国にいるようだが。」
父「一応な。まぁ記憶が戻れば来るだろう。ローゲからなら多分、夏前には…」
声「そうか、アイツが来るのは夏か。」
黒錬邪「!?」
父「なっ、その声は…!なぜお前が…!?」

鉄仮面「フッ。 久しぶりだな、親父。」
親父には隠し子がいたのか。

 

2-154:才能〔13歳:LEVEL17〕
ローゲ国王に言われた通り、僕達は「終末の丘」という地を目指すことにした。
聞いたことのある地名だ。もしかしたら、僕の記憶を呼び覚ます鍵があるのかも…。
勇者「今回は乗り物は使わないよ。急がば回れだ。」
姫「甘いね勇者君。私は急いでらくても回られられ。」
盗子「嘘つくなよのんびり屋!てゆーかまずロレツが回ってないよ!」
栗子「でででも先輩方、こんな地図ごときだけで行けちゃいますかねぇ?」
声「大丈夫、この先の道は俺に任せてくれよ。」
盗子「え…? あっ、アンタは確か前に…!」

マジーン「また会ったな勇者。そろそろ来る頃だと思ってたぜ。」
マジーンが現れた。
勇者「お前も…僕の知り合いなのか?でもゴメン、名前も覚えてないんだ…。」
マジーン「き、記憶喪失!?マジかよ…。 ま、まぁいいさ、気にするなよ。」
勇者「いつか必ず思い出すよ。だから待っててくれ、えっと…じゃあ「マジーン」で。」
ネーミングセンスは固定だった。

 

2-155:到着〔13歳:LEVEL17〕
再会したマジーンは極度の方向音痴で、僕達は何度も道に迷わされた。
途中からは無視して進み、おかげでなんとか夏前に「終末の丘」に到着できた。
勇者「まったく…。お前がいなければもっと早く着けていたような気がするよ。」
マジーン「す、すまねぇ…。今度こそはイケると思ったんだが…その…。」
盗子「にしてもさ、なんか随分荒れ果てた所だね~。一帯がボロボロじゃん。」
勇者「何かわけありっぽいね、聞いてみようか。 ねぇ婆さん、ちょっといい?」
老婆「あ~、少し前のことですわ。それはもう、激しい戦いがあったんですわ。」
盗子「まだ聞いてないよ!?先走るのは人生だけにしてほしいよ!」
栗子「たたた戦いでなんスか!?丘を全壊させちゃうなんてなんてハタ迷惑な…。」
老婆「黒装束と鉄仮面…いかにも怪しげな二人が暴れて、こうなったのですわ。」
盗子「鉄仮面!?それって前にロボ軍を全滅させたっていう奴じゃない!?」
勇者「それに黒装束って…まさか黒錬邪!?じゃあ父さんは一体…!?」
老婆「あぁ、そういやその近くで胸を刺された男が…」
勇者「なっ!?そ、そんなバカな…!」

老婆「普通に漫画読んどりましたわ。」
勇者「それこそバカなっ!!」
シリアス感が一気に薄れた。

 

2-156:血縁〔13歳:LEVEL17〕
僕らがローゲ王国を発った頃、この丘には父さんと愉快な強敵達がいたらしい。
勇者「そ、それで!?最終的にその戦いはどうなったの婆さん!?」
老婆「あ~、その後「警察士」らが来てゴチャゴチャやっとる間に消えとりましたわ。」
栗子「けけ警察屋さんが動くなんて…。みなさん捕まっちゃったんでしょかねぇ?」
老婆「ところでアンタらは何?こんな寂れた丘に何の用で来なすったん?」
勇者「悪党を倒しにタケブへ行くんだ。僕の中の「勇者」の血に導かれてね。」
盗子「まぁ主に受け継いだのは「魔王」の血だけどね。」
老婆「!? も、もしやアンタは前魔王…あの子の…「終(おわり)」の息子かい!?」
勇者「僕は記憶喪失。そんなこと聞かれても思い出せない。」
盗子「いい加減思い出せよ!アンタは元魔王の子で、アタシは「盗子」なの!」
勇者「…そうか、僕はホントに魔王の子なんだね…。」
盗子「あ…ま、まぁ思い出せないのはしょうがないよね。これから覚えていこうよ☆」

勇者「ありがとう、パブロ。」
盗子「うわーん!!」
勇者もいい加減しつこい。

 

2-157:現実〔13歳:LEVEL17〕
どうやら僕は、本当に魔王だった女の子供らしい。さすがにショックは大きい。
でも揺るがない事実なら今さら騒いでもしょうがない。気にしないことにしよう。
勇者「ところで婆さん、さっき「あの子」とか言ってたけど…母さんと知り合いなの?」
老婆「!! …わ、ワシぁ、何も知らん。何も知らんですわ。」
姫「月日の流れは残酷だよね。」
盗子「そんな急にはボケないから!なんかわけありでしらばっくれてるだけだよ!」
老婆「ほ、ホレ。お探しの港はこっちですわ。早く行くがいいですわ。」
マジーン「オーイ勇者ぁ、あっちになんか村があるぜ?メシにしようや。」
老婆「い、イカン!終のせがれはダメですわ!あの村に近づいちゃイカン!」
姫「ミカン!」
栗子「えっ!?あ、え、う…や、ヤカン!」
盗子「何がしたいんだよアンタら!」
勇者「どうやら、僕の母さんは相当恨まれているみたいだね…。」
老婆「悪いことは言わん、素直に立ち去りなされ。行けば絶対傷つきますわ。」
勇者「…行こうみんな。僕には知らなきゃならない真実があるらしい。」
老婆「なっ!?わかっとりますのか!?アンタが思っとるほど現実は…!」
勇者「わかってるさ。現実がいかに…(チラッ)…厳しいものかというのは。」
盗子「なんでこっち見ながら言うんだよ!!」
勇者もまた厳しかった。

 

2-158:故郷〔13歳:LEVEL17〕
老婆の制止を振り切り、僕らは丘のふもとにある村へと向かった。
何があるかはわからない。でも「勇者」として、逃げるわけにはいかないんだ。
~ギマイ大陸:ケンド村~
マジーン「こ、ここは…まさかあの噂の「ケンド村」じゃねぇのか…!?」
勇者「ん?何か知ってるのマジーン?」
マジーン「前に聞いたことがあるぜ。前魔王、終の故郷…それが確かこの村だ。」
勇者「そ、そうだったのか…。どうりでどこか見覚えがあると…!」
盗子「嘘つくなよ!アンタの生まれは遙か遠い島だから!」
栗子「まま魔王さんが生まれやがった村なんて…け結構ヤバげじゃないですか?」
姫「きっと毎晩が血の晩餐だね。」
盗子「おっかないよ!イメージ的にわからないでもないからおっかないよ!」
村人A「ん~?どうしたんだ旅のガキども?こんな辺鄙(へんぴ)な村に何か用で?」
勇者「あ、聞いてくれ村の人。僕は魔王の…」
盗子「ちょっ、待ってよ勇者!いきなりそんな…!」
村人A「あ゛ぁ!?「魔王」だぁ!!?」

勇者「「魔法」の勉強に来たんだ。」
勇者は瞬間的に誤魔化した。

 

2-159:魔法〔13歳:LEVEL17〕
このケンド村は、僕の母さんが生まれ育った村らしい。怖い村なのかもしれない。
でも出会った村の人は、「魔王」という言葉に不快そうな反応を示したし…う~ん。
村人A「ほぉ~、じゃあ兄ちゃんらは、魔法の勉強のために世界中を旅しとると?」
勇者「そ、そうなんだ。見た目はバラバラだけど、実はみんな魔法使いなんだ。」
盗子「う、うん!メチャメチャ魔法使いだよ!ねぇ姫!?」
姫「うん。魔王の遣いだよ。」
一同「Σ( ̄□ ̄;)!!」
村人A「…嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。この村でその単語は使わん方がいい。」
マジーン「まぁ地元から魔王が出たんだ、そりゃあ良くは思ってねぇだろなぁ。」
村人A「!! …知っとって来たんか。なら話は早ぇ、これ以上は聞かんでくれ。」
勇者「いや、そうもいかないんだ。なぜなら僕は魔王の…」
村人A「あ゛ぁ!?」

勇者「「魔法」の勉強に来たんだ。」
勇者は無理を承知で誤魔化した。

 

2-160:創作〔13歳:LEVEL17〕
その晩は村人の家に泊めてもらうことになった僕達。意外にもいい人で助かった。
ホントは聞きたいことが山ほどあったけど、空気的にどうにも切り出せなかった。
~寝室にて~
盗子「う~ん、どうする勇者?なんとか聞き出す?それとも聞かずに旅立つ?」
勇者「…わからない。 とりあえずマジーン、知ってることを全部話してくれない?」
マジーン「わ、悪ぃ。俺も詳しいことは知らねぇんだ。結構謎の多い話でさぁ。」
姫「じゃあ私が適当に考えるよ。こう見えても絵本作家になるのが夢だよ。」
盗子「考えるのかよ!知りたいのはそんな嘘…って、「療法士」はどうしたの!?」
姫「昔々あるところに魔王さんがいて、何人か生け贄にしました。」
盗子「しかも「サスペンス」じゃん!」
勇者「…よし、やっぱり話を聞きに行こう。このままじゃ眠れそうにない。」
盗子「や、やめようよ勇者!下手してバレたら睡眠どころか永眠だよ!?」
勇者「大丈夫だよジュゴン。根拠だって、ちゃんとあるんだ。」

「村人」に殺される「勇者」なんて、聞いたことがない。
なんとも頼りがたい根拠だった。

 

2-161:説得〔13歳:LEVEL17〕
やっぱり話を聞きたくなった僕は、家主である村人の部屋を訪れた。
聞き方さえ気をつければ、きっと彼も話してくれるはずだ。しっかりやろう。
コンコン(扉)
村人A「…入りな。多分来るんじゃねぇかとは思っとったよ。」
ガチャ(開)
勇者「お邪魔するよ。用件は…わかってるみたいだから言わなくてよさそうだね。」
村人A「「魔王:終」について聞きたがる奴は、たまにいるしな。見りゃ気づくわ。」
盗子「じゃ、じゃあ話してくれるの?意外にもすんなりと…。」
村人A「イヤだね。この話は他言するなってのが、村の掟なんでな。」
栗子「そそそこをなんとかお願いしますですよ!大事なことなんスよ!」
村人A「何て言われてもダメなものはダメだ!」
勇者「お願いだ!」
村人A「断る!」
姫「お礼は弾むよ。」
村人A「さて、何から話そうか。」
結構あっさり落ちた。

 

2-162:無理〔13歳:LEVEL17〕
しばらく考えた後、村人は語り始めた。それは僕にとっては辛い真実だった。
村人A「俺ぁ見たんだ。奴ぁ…奴は魔王になるために、仲間を生け贄にしたんだ。」
盗子「い、生け贄!?さっきの姫の嘘話が当たっちゃってるし!」
姫「盗作疑惑に関しては、ノーコメントだよ。」
勇者「…う、嘘だ!そんな話は嘘っぱちだ!」
村人A「嘘なもんかよ!俺は思うね、あんな奴ぁ生まれてこなきゃ良かったんよ。」
勇者「ッ!!!」
盗子「ちょっ、ちょっとそれは言い過ぎなんじゃないの!?いくらなんでも…。」
村人A「あ?んなこたねぇさ。奴ぁ「魔王」になったんだぜ?人間のクズさ。」
勇者「き、貴様…!僕の…僕の…!」
村人A「ん?なんだい、お前の何がどうした?」
勇者「僕の母さんを、悪く言うなっ!!」
盗子「わー!ゆゆゆ勇者ー!?」
村人A「か、か、か、「母さん」だとぉ!!?」

勇者「「魔法」の勉強に来たんだ。」
どう考えても無理があった。

 

2-163:舞踏〔13歳:LEVEL17〕
思わず感情的になってしまい、不覚にも村人に僕の正体がバレてしまった。
でも罪の無い村人を斬るわけにはいかない。悔しいけど逃げるしかないようだ。
というわけで僕らは、港へと急いだ。今ならまだ深夜便に間に合うかもしれない。
村人A「待てー!待ちやがれー!絶対船には乗らせねぇぞーー!!」
勇者「急いで!もう出港寸前だけど、チャンスだよ!乗れば逃げ切れる!」
盗子「ダメだよ勇者!なんか張ってる奴らがいるよ!さっすが田舎、情報早いよ!」
村人達「逃がさねーぞクソガキどもがー!!」
勇者「くっ、仕方ない!こうなったら僕が残って足止めを…」
栗子「ここっここは私に任せちゃってくださいな! 踊ってよ「機関踊草花」!!」
〔機関踊草花(ダンシング・フラワー)〕
野生の草花を加工し、カラクリ草花に変換したもの。
見てるとなぜか踊りたくなる。
機関技師が踊っている間、その効果は持続する。
マジーン「こ、これは…花か?一瞬でこれだけのモンを作り出すって…スゲェな。」
栗子「ささ、さぁみなさん!レッツ・ダンシーング!踊り狂えばいいんですよぅ!」
村人A「なっ、なんだよコリャ!?体が勝手に…!」
栗子「い行っちゃってください先輩!わわわ私のことは気にせずにぃー!」
勇者「く、栗子…。」

いや、そう言われてもさ。
勇者も踊りに夢中だ。

 

2-164:別離〔13歳:LEVEL17〕
栗子が出した変な草花の力により、急遽小さなダンス大会が開催された。
盗子「わっ、もう!やめたくても止まんないよー!なんなんだよコレー!?」
勇者「踊ってちゃ進めない、でも花が止まれば囲まれる…。一体どうすれば…!」
姫「甘いね勇者君。腰は、こうっ!だよ。」
勇者「な、なるほど。こうっ!か。」
盗子「どうでもいいからなんとかしてよ!!」
栗子「わーん!ごめんなさいー!わ私が浅はかでしたよー!!」
姫「大丈夫、私がなんとかするよ。 むー!あのお花ちゃん…「無視」!!」
姫は〔無視〕を唱えた。
奇妙な光が勇者達を包む。
盗子「…おっ、やるじゃん姫!なんか花の踊りが全然気になんなくなったよ!」
勇者「よし!姫ちゃん、栗子、マジーン、今のうちに行くよ!」
盗子「アレッ、アタシは!?アタシにも効いてない今の魔法!?」
栗子「わわ、私は無理ですよ!いいから置いて行っちゃってくださいなー!」
勇者「なっ…何を言ってるんだ!お前だけ置いて行けるはずが…!」
マジーン「オイ勇者!もう出発しちまった!でも今ならまだ飛び乗れるぜ!」
村人A「ま、待てー!逃げんじゃねぇよコラー!お礼も弾まれてねーしー!!」
栗子「け、賢二先輩に会ったら伝えてください!わ、わた、わた、わたた…わーっ!」
勇者「くっ…!」

何て伝えればいいんだ!
勇者は混乱している。

 

〔無視(シカト)〕
魔法士:LEVEL14の魔法。(消費MP16)
指定した対象を無視できるようになる魔法。度が過ぎると学級会で問題になる。
 

 

2-165:出航〔13歳:LEVEL17〕
栗子が犠牲になってくれたおかげで、僕らは無事に乗船することができた。
今からなら、夏にはタケブに着けるらしい。早く行って神の復活を阻止しなきゃ!
勇者「なんとか逃げられたね。結局、大雑把な話しか聞けなかったけど…。」
マジーン「まぁ、縁があればいずれわかるさ。気持ち切り替えて行こうぜ。」
案奈「あ、皆様ァ~。大陸船にご乗船いただき~誠にありがとう~ございまァす。」
盗子「わっ、わー!なんで!?なんでまたアンタがガイドなの!?怖いよ!」
案奈「タケブ大陸にはァ~「帝都:チュシン」~、「シジャン王国」などがあり~…」
盗子「ってシカトかよ!そんな急いで説明に入る必要性がどこにあんのさ!?」
案奈「この先にはァ~多分「黄泉の国」も見えまァす。」
盗子「だからかよ!黄泉って「あの世」じゃん!またそんな危険な運転なの!?」
案奈「それでは~本日の気まぐれ船長より~、一言ご挨拶が~ございまァす。」
盗子「「気まぐれ船長」て!そんな不安な存在に人生任したくないよ!?」
放送「みなさんこんばんは。私が今日の船長を適当に務めるよ。 呼ぶ時は…」
盗子「「適当に」て!ホントに気まぐれな船長さんかよ!」

放送「気軽に「姫ちゃん」でいいよ。」
一同「えぇーーっ!!?」
船はシージャックされた。

そして船は、黄泉の国へと進んでいく。

 

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本編( 7 / 10 )

第二部:外伝(参)

外伝(参)

 

外伝:賢二が行くⅢ〔1〕
変な魔獣に食べられて、もうダメだと思った僕ですが、起きたらまだ生きてました。
でも周りの景色に見覚えがありません。ここは一体どこですか?みんなは一体…?
賢二「う、うぅ…。この部屋は…誰の?なんで僕はベッドに寝て…?」
どうやらここは誰かの部屋のようです。 近くの窓からは、外の様子が見えました。
賢二「あ、もう夜なんだね。なんだか今日は、星がキレイだなぁ~。 特に…」

特に、「地球」が。
三度目の宇宙だった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔2〕
その後しばらく途方に暮れていると、部屋に女の子が入ってきました。
この家の人に違いないです。ちゃんとお礼を言わなきゃいけません。
少女「わっ、起きてる!起きてます!良かった!良かったですねホント良かった!」
賢二「アナタが助けてくれた方ですね。ホントありがとうございました。 えっと…?」
少女「ん、名前ですか?ボクは「召喚士」の「召々(しょうしょう)」!好きに呼んで☆」
賢二「あ、ハイわかりました召々さん。 僕は賢二って言います。決して賢…」
召々「お母さーん!「賢者様」が来ちゃったー!!」

あぁ…また…。
召々はせっかちだった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔3〕
今度こそはと思っていたのに、早速勘違いしてくれちゃったせっかちな召々さん。
弁解しようと努めたのですが、「村を案内するよ☆」と連れ出されてしまいました。
このまま村に着いたらまた、えらいことになります。なんとか早く誤解を解かなきゃ。
召々「よぉーし!じゃあ行くよ賢者様!飛ばすから舌噛まないようにね~♪」
ブルゥン…ブルルルルゥン!!(エンジン音)
賢二「えと、さっきも言ったんですけど僕が賢者だとか村では…。」
召々「あ、うん!わかってるよ☆言わなくてもボクわかってるから大丈夫!」
賢二「えっ…あ、ホントですか?いや~、良かったです。てっきりまた勘違いを…」
召々「すっごく「照れ屋さん」なんだよね賢者様☆ わかるわかる!」
賢二「気持ちいいぐらいわかってないんだけど!?」
召々「でもビックリしたよ~。「獣の森」のド真ん中でフツーに寝てるんだもーん。」
賢二「いや、だから話を聞いて!僕は賢者じゃ…って、前見て前ぇーー!!」
召々「アハ☆平気だよ~。ボク人の話はたま~に聞こえないみたいだけど目は…」

ズゴンッ!(撥)
バアさんが鮮やかに宙を舞った。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔4〕
話の見えない召々さんは前も見えてなくて、勢いよくお婆さんを跳ね飛ばしました。
賢二「わー!すすすみません!だ、大丈夫ですかオバ…」
老婆「(ギロッ)」
賢二「…お、お嬢さん。」
老婆「う、うぐっ…こ、こんな激しいアタック…何年振りぢゃろか…☆」
賢二「こんな瀕死状態でなにトキめいてるんですか!?しかもアタック違いですし!」
召々「アハハ☆面白いおバアちゃんだね~♪もっかいヤッてもいいかな~?」
賢二「どう考えてもダメだから!謝るどころか追撃の一手ですか!?」
召々「ぶー。賢者様ってばお堅いんだからー。」
老婆「む…?お前さん、賢者なのかぇ?いやぁ、その若さでなんとまぁ…生意気な。」
賢二「いや、生意気なとか言われても!僕は賢者だなんて…! …あ゛。」
村人A「な、なにぃ!?賢者だぁ!?オメェが賢者様かぁ!?」
村人B「オーイみんなー!賢者様が来てくれたどー!」

今のは…僕が悪いんですか?
村人達の耳が悪い。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔5〕
いつの間にか村に着いていて、気づけばまた「賢者」で広まっちゃっていました。
村長「いや~、わざわざ遠くの星からお呼びした甲斐がありましたわ。」
賢二「呼ばれて飛び出てゴメンなさい。いやいや、呼ばれてないんですが…。」
召々「ん?な~にわけわかんないこと言ってんの賢者様?ホラ、食べようよー☆」
村長「いや、お前は食うなよ。お前のために用意したご馳走じゃないから召々。」
召々「アハ☆ 面白いお爺ちゃんだね~♪そんな言葉誰に仕込まれたの?」
村長「なんだそのインコ的な扱いは!?お前が生まれる前から「村長」だから!」
老婆「んぐ、むぐっ…で?わざわざ賢者を呼んで、何ぉさす気なんよお前さんら?」
召々「なんかすんごい食べっぷりだねこのお婆ちゃん。部外者とは思えないね♪」
賢二「うん…とても「被害者」とは思えないよね。」
村長「実は賢者様には、最近現れた「蛮族」どもを倒してほしいのですよ。」
老婆「あ~あ~、そんなの任せりゃええ。こう見えてこの子はヤル子ぢゃよ。うん。」
賢二「えっ、なんでアナタが引き受けてるんですか!?さっきの復讐ですか!?」
村長「おぉ!本当ですか!そりゃ助か…ところでアナタはどなたですかな?」
賢二「あ、いや、この人はさっきちょっと…」

老婆「「彼女」ですぢゃ。」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
とんでもない復讐だった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔6〕
なぜかお婆さんが勝手に引き受けてしまったので、僕は「蛮族」を倒しにいくハメに。
でも一人じゃ…と言ったら、召々さんとお婆さんがついてくることになりました。
今度こそ神様は、僕に「死ね」と言っているような気がしてなりません。
賢二「えっと…みなさん改めましてヨロシクです。一秒でも長く…生きましょうね…。」
亀「おぅ!ヨロシクな坊主!俺もついていくぜぃ!」
賢二「あ、こちらこそヨロ…って、えぇっ!?なんで亀さんが喋ってるんですか!?」
老婆「ワシの「契約獣」でな、魔獣「トルタ」の「亀吉(かめきち)」と言うんぢゃ。」
賢二「け、契約獣…ですか?噂で聞いたことがあるようなないような…。」
召々「えー、そんなことも知らないのー?じゃあ「召喚士」のボクが教えたげるね☆」
〔契約獣〕
普通の召喚獣とは違い、契約に従い半永久的に居続けるタイプの召喚獣。
「武器化」、「防具化」、「魔法化」などの特殊能力を持つものが多い。
契約に職業は問われないが、一生に一体としか契約できない。
ただし、契約獣の側も相手を選ぶので、誰しも得られるとは限らない。
賢二「ほぇ~。召喚士じゃなくても魔獣が呼べるなんて知らなかったな~。」
召々「一体だけね。召喚士はさ、一時的にだけどMP消費で何種も呼べるんだよ☆」
賢二「いいなぁ~。僕と契約してくれる召喚獣もどこかにいるのかなぁ?」
老婆「あ~、やめときな。契約代償はMPぢゃないし、子供にゃチョイと危険だよ。」
賢二「へ?そうなんですか? じゃあ代償は…?」

老婆「「生気」を食らう。」
バアさんの方が危険だ。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔7〕
雑談しながら半刻も進むと、「蛮族」がいるという「トリーナ村」に辿り着きました。
賢二「えと、とりあえず作戦を立てましょう。慎重に、できるだけ平和的な策を…」
召々「オーイ!出ておいでよ蛮族たちー!賢者様がブッ倒しに来ちゃったよ~♪」
賢二「は、話を聞いてぇー!!」
亀「見ろよ賢坊、あそこの旗…。ありゃ流れ蛮族「野蛮家族」のモンだぜぃ。」
賢二「野蛮家族…?なんか意外とアットホームな感じの名前ですねぇ。」
亀「一度目ぇ付けた敵は、家族もろとも惨殺するらしいぜぃ。」
賢二「世の中そんなに甘くは無いって、わかってたはずなのに…。」
召々「んじゃさ、あの旗のある建物にみんな居るのかなぁ?扉ブチ破ってもいい?」
賢二「だからなんでそう突っ走るんですか!?ブレーキは故障中ですか!?」
老婆「まぁ気にするでないよ賢坊。どうせ倒さにゃならん敵ぢゃないかい。」
賢二「いや、それはそうなんですが…。」
亀「ならホラ、お前も言ってやれよ。「お前らは俺が倒すぜぃ!」とかよぉ。」
賢二「(まぁこの距離なら聞こえないか…)よ、よーし!言っちゃいますよ!おま…」

蛮族〔背後〕「あ゛ぁ!?」

賢二「…おまかせします。」
賢二は身をゆだねた。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔8〕
油断していて、背後の蛮族さんに気づかずに喧嘩を売ってしまいました。
早速囲まれてしまい、もう謝ってもダメっぽい感じです。 やるしか…ないのかな…。
蛮族A「オゥ小僧!テメェか俺様達を倒そうって太ぇクソガキは!?」
賢二「ちちち違いますよ!僕は倒そうとかじゃなくて平和的に…!」
蛮族A「上等だよ!ブッ殺してやるぁ!!」
賢二「聞く気が無いなら…最初から聞かないでほしいなぁ…。」
召々「アハ☆ ホントだよね~♪ 耳の穴かっぽじってもいいかなぁ?」
賢二「ハイ…とりあえずご自分の耳からお願いしたいです…。」
蛮族達「宴だー!血の宴を始めるぞぁー!!」
老婆「ひぃ、ふぅ、みぃ…ほぉ、100近くおるのぉ。随分とまぁ大所帯なもんぢゃ。」
亀「で、どうするよ賢坊?これだけの数を相手にしてたら日が暮れるぜぃ?」
賢二「で、ですよね。とりあえず敵を減らさないと! 降り注ぐ雹の魔法、「降雹」!」
賢二は〔降雹〕を唱えた。
蛮族A「アイタッ!な、なんだコレは!? アイタタタタ!!
蛮族達「イデデデデデデ!!

賢二達「イタタタタタタタ!!
だが諸刃の剣だった。

 

〔降雹(こうひょう)〕
魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
周囲に大量の雹を降らせる魔法。やたらに使うと気象予報士に嫌な顔をされる。
 

 

外伝:賢二が行くⅢ〔9〕
とりあえず敵の数を減らそうと思ったのに、魔法の選択を誤ってしまいました。
でも一応効果はあったようで、何人か倒すことができたのがせめてもの救いです。
召々「あ~冷たかったぁ~。風邪ひいたらどうしてくれるの賢者様~?へっくち!」
賢二「残りは約80…この調子で減らしていければ勝てるかも…!」
蛮族B「くっ、敵は結構やりますぜ?どうしますお頭?」
蛮族長「フンッ、なら俺様の契約獣を呼ぶまでよ!出てこいや「ビッグ・フッチョ」!」
〔ビッグ・フッチョ〕
生態武器型の高レベル召喚獣。
その巨大な足で、あらゆる敵を踏み潰す。
サイズの合う靴がなかなか見つからない。
蛮族長「さぁ行けぃ!踏み潰してやれやフッチョ!」
フッチョ「ふごふごフガァーー!!」
賢二「わー!やっぱり勝てないかもー!!」
召々「大丈夫☆ そういうことならボクも味方を呼んじゃうよ♪」
賢二「ほ、ホントですか!?じゃあ強そうなのをお願いしますね召々さん!」
召々「うん、任せといて☆ さぁおいでー!いで…よ…へ、へっくちゅん!!」
賢二「わー!肝心なところでクシャミがー!!」

ヘックチュン「グルルルルァアアア!!」
賢二「えぇぇっ!?」
ヘックチュンは実在した。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔10〕
そして二体の魔獣の戦闘が始まりました。僕の出番は来なきゃいいなぁ…。
賢二「ふぅ~、でもさっきはビックリしちゃいましたよ。一瞬ただのクシャミかと…。」
召々「アハ☆ ホント、偶然って恐ろしいよね~♪」
賢二「ぼ、僕には今の発言の方が恐ろしいんだけど…。」
フッチョ「フガァーーー!!」
ヘック「グルゥアーーー!!」
賢二「う~ん、二体の力は拮抗してるみたいだね。どっちが勝つのか…」
蛮族A「絶対フッチョだろ!そうに決まってるぜ!」
蛮族B「じゃ、じゃあ俺はヘックチュン!今月の小遣い全部だ!」
老婆「ハイまいどねぇ~。」
賢二「何が行われてるんですか!?」
蛮族長「チッ、互角か…。なら仕方ねぇ、俺様が力を貸してやるよフッチョ!来い!」
ビッグ・フッチョは武器化した。
蛮族長はそれを両足に装備した。
賢二「そ、装備した!?これが…これが「契約獣」の本来の使い方…!?」
蛮族長「オラァ食らえぃ!必殺キック「足デカおじさん」!!」
バキィイイッ!(蹴)
ヘック「グルルルルァアアア!!
蛮族長、会心の一撃!

ネーミングはともかく威力は凄かった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔11〕
蛮族長さんの攻撃をまともに受けたヘックチュンは、召喚魔界に帰っていきました。
やっぱり神様は、僕に対して優しさが足りないと思うんですがどうでしょう?
賢二「腹をくくるか首をくくるか…いっそのこと後者を選んだ方が楽かもなぁ…。」
亀「ブツブツ言ってねぇでパパッと魔法でヤッちまおうぜぃ賢坊よぉ!なっ!」
老婆「まぁやるなら「火炎魔法」ぢゃね。武器化したとて元は獣…炎は苦手ぢゃ。」
賢二「か、火炎魔法ですか…。苦手な分野だなぁ…。」
得意な分野はあるのか。
蛮族A「オラァおめぇら行くぞゴラー!やっちまぇやー!!」
蛮族達「うぉおおおおあああああ!!」
召々「ん~、雑魚な子達はボクが片付けちゃうよ♪ いでよ、適当に☆」
賢二「適当に!?」
蛮族長「テメェがリーダーの賢者か?なら俺様が直々にブッ殺してやるぁ!!」
賢二「と、とりあえずやるしかない…!えっとえっと、火炎魔法…「炎殺」!!」
賢二は〔炎殺〕を唱えた。

が、やっぱり失敗した。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔12〕
苦手な火炎魔法は、当然のように失敗しました。もう暗雲は立ち込めっぱなしです。
ゴゴゴゴゴゴゴ…(暗雲)
賢二「って、わー…ホントに暗雲が立ち込めてきた…。」
召々「アハ☆ お茶目さんなんだね~賢者様♪余裕だからできるんだよね☆」
蛮族長「なにぃ!?じゃあテメェ、ワザと失敗しやがったってのか!?」
賢二「しょ、召々さん!?火も出てないのに油を注がれても!」
ゴゴゴ…ズザァアアアアア!(大雨)
賢二「わー!しかも雨までー!?」
蛮族A「ギャハハー!天気にも見放されやがったぜ!もう火なんか付かねーよ!」
賢二「くぅ、これじゃもう…ん?いや…諦めるのは、まだ早いかも!」
蛮族長「むっ!?何しやがる気だテメェ!?」
賢二「この条件なら、前置きなしで多分いける! 落ちてー!「雷撃」!!」
賢二は〔雷撃〕を唱えた。
ズゴォオオオオオオオン!!(落雷)
蛮族長「う、うがぁあああああ!!
蛮族達「ギェエエエエエエ!!

賢二達「ウギャアアアアア!!
みんな揃ってアフロになった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔13〕
うまくいくかと思った「雷撃」ですが、やっぱり失敗して拡散してしまいました。
賢二「ハァ…。「賢者」どころか「魔法士」にもなりきれてないなんて…。」
老婆「んにゃ、なかなかいい線いっとったよ?もうチョイで〔雷迅〕ぢゃったわ。」
賢二「ら、雷迅!?いやいやいや、僕なんかがそんな魔法使えるわけが…!」
蛮族長「ったりめぇだ!あんな失敗作が雷迅と呼べるか!効いてねぇよ!!」
老婆「もうええわぃ。お前さんらの底はもう見えたわ。大人しく下がるがええよ。」
蛮族長「な、なんだとババア!?短ぇ人生を更に短くしてぇのかア゛ァン!?」
蛮族A「そうだぜババア!ババアは大人しく死期を待ってりゃいいんだよクソが!」
老婆「ば、ババア…!?こんな乙女を捕まえて、ババアとな…!?」
召々「アハ☆ 面白いこと言うお婆ちゃんだね♪グーで殴ってもいいかなぁ?」
賢二「いや、もっと平和的に説いてあげてください…。」
老婆「ええ度胸ぢゃ…腐れ蛮族の分際で、ええ度胸ぢゃよ…。 この…」
蛮族達「バ・バ・ア! バ・バ・ア!」

老婆「この永遠の美少女、「賢者:無印(むいん)」に喧嘩売ろうとはのぉ!!」

蛮族達「…え゛?」
召々「へ?」
賢二「ええぇっ!?」

ズゴォオオオオオオ!!(炎上)
〔火炎地獄〕が全てを焼き尽くした。

 

〔火炎地獄(かえんじごく)〕
賢者:LEVEL50の魔法。(消費MP250)
究極の火炎魔法。 燃え上がれ 燃え上がれ 燃え上がれ ガンd(自主規制)
 

 

〔雷迅(らいじん)〕
魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP48)
敵1グループに強烈な雷を落とす魔法。ビビッとくるが恋じゃない。
 

 

外伝:賢二が行くⅢ〔14〕
お婆さんはタダ者ではなく、なんとあの「四勇将」の「大賢者:無印」様でした。
でもそれなら、村長さんが呼んだ賢者、そして妙な余裕…全てに納得がいきます。
召々「うっわー!蛮族みんな消えちゃったー!手品?手品なの?もっかいやって!」
賢二「無印様…。じゃあオバ…お嬢さんが凱空オジさん達と共に戦った…?」
無印「なぬ? ほぉ、お前さん凱空を…ワシの「元彼」を知っとるのかぇ?」
賢二「も、元彼!?(被害者は)僕だけじゃなかったんですか!?」
無印「大丈夫ぢゃ安心せい。今は賢坊にゾッコン・ラブぢゃで☆」
賢二「いや、それこそが安心できないポイントなんですが…。」
無印「んで、凱空はお前さんの何なんね?奴は元気にやっとるかぇ?」
賢二「僕の友達のお父さんなんです。まったくもって「勇者」っぽくない人ですよ。」
無印「ふっ、ぢゃろうな…。 ガキの方はどうぢゃ?やっぱり勇者を目指して?」
賢二「え゛。あ…は、ハイ。とっても勇者らし…いや、というか勇者そのものですよ。」
無印「ほほぉ。そりゃいつか会うのが楽しみぢゃわぃ。わっはっはー!」

一応、嘘は言ってないです。
賢二は名前に関してだけ述べた。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔15〕
蛮族を滅ぼし、トリーナ村へと帰った僕達は、とっても感謝されました。
引き止められ、しばらくご厄介になったのですが、そろそろ発とうと思います。
どこにいても戦いが待っているのなら、やっぱり友達と一緒に死にたいです。
賢二「というわけで、僕は宇宙船を探しに旅に出ますね。みなさんサヨウナラ。」
召々「えー!行っちゃうの賢者様ー!?イヤだよつまんないよー!遊ぼうよー!」
無印「アタイ…アンタと離れたくない!死ぬまで一緒だってあの時…!」
賢二「まだ恋人モードだったんですか!?それに「あの時」っていつです!?」
召々「アハ☆ いいじゃん賢者様♪「死ぬまで」ならもうじきだよー♪」
賢二「いや、いくらそう思ってもそれは言っちゃいけない台詞では…?」
無印「…うんにゃ。その嬢ちゃんの言うとおりぢゃ。ワシもそう長くは無い。」
賢二「えっ…?」
無印「夢の四桁は無理やもしれん。」
賢二「その夢の先には一体何があるのか教えてほしいです。」
亀「そういやムーちゃん、この前言ってた件はどうなったよ?賢坊は合格なんか?」
賢二「へ…?合格って何の話ですか?」
無印「うむ、ワシぁ決めたぞぇ。この坊を最後の弟子とし、ワシの全てを教えちゃる!」
賢二「えっ!?だ、大賢者様の全てを!?」

無印「今夜…ベッドで待ってる☆」
賢二「全てを!?」
「賢者」への道が開けた。

「青春」の二字を代償に。

 

第四章へ
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~勇者が行く~(2)
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