~勇者が行く~(2)

本編( 7 / 10 )

第二部:外伝(参)

外伝(参)

 

外伝:賢二が行くⅢ〔1〕
変な魔獣に食べられて、もうダメだと思った僕ですが、起きたらまだ生きてました。
でも周りの景色に見覚えがありません。ここは一体どこですか?みんなは一体…?
賢二「う、うぅ…。この部屋は…誰の?なんで僕はベッドに寝て…?」
どうやらここは誰かの部屋のようです。 近くの窓からは、外の様子が見えました。
賢二「あ、もう夜なんだね。なんだか今日は、星がキレイだなぁ~。 特に…」

特に、「地球」が。
三度目の宇宙だった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔2〕
その後しばらく途方に暮れていると、部屋に女の子が入ってきました。
この家の人に違いないです。ちゃんとお礼を言わなきゃいけません。
少女「わっ、起きてる!起きてます!良かった!良かったですねホント良かった!」
賢二「アナタが助けてくれた方ですね。ホントありがとうございました。 えっと…?」
少女「ん、名前ですか?ボクは「召喚士」の「召々(しょうしょう)」!好きに呼んで☆」
賢二「あ、ハイわかりました召々さん。 僕は賢二って言います。決して賢…」
召々「お母さーん!「賢者様」が来ちゃったー!!」

あぁ…また…。
召々はせっかちだった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔3〕
今度こそはと思っていたのに、早速勘違いしてくれちゃったせっかちな召々さん。
弁解しようと努めたのですが、「村を案内するよ☆」と連れ出されてしまいました。
このまま村に着いたらまた、えらいことになります。なんとか早く誤解を解かなきゃ。
召々「よぉーし!じゃあ行くよ賢者様!飛ばすから舌噛まないようにね~♪」
ブルゥン…ブルルルルゥン!!(エンジン音)
賢二「えと、さっきも言ったんですけど僕が賢者だとか村では…。」
召々「あ、うん!わかってるよ☆言わなくてもボクわかってるから大丈夫!」
賢二「えっ…あ、ホントですか?いや~、良かったです。てっきりまた勘違いを…」
召々「すっごく「照れ屋さん」なんだよね賢者様☆ わかるわかる!」
賢二「気持ちいいぐらいわかってないんだけど!?」
召々「でもビックリしたよ~。「獣の森」のド真ん中でフツーに寝てるんだもーん。」
賢二「いや、だから話を聞いて!僕は賢者じゃ…って、前見て前ぇーー!!」
召々「アハ☆平気だよ~。ボク人の話はたま~に聞こえないみたいだけど目は…」

ズゴンッ!(撥)
バアさんが鮮やかに宙を舞った。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔4〕
話の見えない召々さんは前も見えてなくて、勢いよくお婆さんを跳ね飛ばしました。
賢二「わー!すすすみません!だ、大丈夫ですかオバ…」
老婆「(ギロッ)」
賢二「…お、お嬢さん。」
老婆「う、うぐっ…こ、こんな激しいアタック…何年振りぢゃろか…☆」
賢二「こんな瀕死状態でなにトキめいてるんですか!?しかもアタック違いですし!」
召々「アハハ☆面白いおバアちゃんだね~♪もっかいヤッてもいいかな~?」
賢二「どう考えてもダメだから!謝るどころか追撃の一手ですか!?」
召々「ぶー。賢者様ってばお堅いんだからー。」
老婆「む…?お前さん、賢者なのかぇ?いやぁ、その若さでなんとまぁ…生意気な。」
賢二「いや、生意気なとか言われても!僕は賢者だなんて…! …あ゛。」
村人A「な、なにぃ!?賢者だぁ!?オメェが賢者様かぁ!?」
村人B「オーイみんなー!賢者様が来てくれたどー!」

今のは…僕が悪いんですか?
村人達の耳が悪い。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔5〕
いつの間にか村に着いていて、気づけばまた「賢者」で広まっちゃっていました。
村長「いや~、わざわざ遠くの星からお呼びした甲斐がありましたわ。」
賢二「呼ばれて飛び出てゴメンなさい。いやいや、呼ばれてないんですが…。」
召々「ん?な~にわけわかんないこと言ってんの賢者様?ホラ、食べようよー☆」
村長「いや、お前は食うなよ。お前のために用意したご馳走じゃないから召々。」
召々「アハ☆ 面白いお爺ちゃんだね~♪そんな言葉誰に仕込まれたの?」
村長「なんだそのインコ的な扱いは!?お前が生まれる前から「村長」だから!」
老婆「んぐ、むぐっ…で?わざわざ賢者を呼んで、何ぉさす気なんよお前さんら?」
召々「なんかすんごい食べっぷりだねこのお婆ちゃん。部外者とは思えないね♪」
賢二「うん…とても「被害者」とは思えないよね。」
村長「実は賢者様には、最近現れた「蛮族」どもを倒してほしいのですよ。」
老婆「あ~あ~、そんなの任せりゃええ。こう見えてこの子はヤル子ぢゃよ。うん。」
賢二「えっ、なんでアナタが引き受けてるんですか!?さっきの復讐ですか!?」
村長「おぉ!本当ですか!そりゃ助か…ところでアナタはどなたですかな?」
賢二「あ、いや、この人はさっきちょっと…」

老婆「「彼女」ですぢゃ。」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
とんでもない復讐だった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔6〕
なぜかお婆さんが勝手に引き受けてしまったので、僕は「蛮族」を倒しにいくハメに。
でも一人じゃ…と言ったら、召々さんとお婆さんがついてくることになりました。
今度こそ神様は、僕に「死ね」と言っているような気がしてなりません。
賢二「えっと…みなさん改めましてヨロシクです。一秒でも長く…生きましょうね…。」
亀「おぅ!ヨロシクな坊主!俺もついていくぜぃ!」
賢二「あ、こちらこそヨロ…って、えぇっ!?なんで亀さんが喋ってるんですか!?」
老婆「ワシの「契約獣」でな、魔獣「トルタ」の「亀吉(かめきち)」と言うんぢゃ。」
賢二「け、契約獣…ですか?噂で聞いたことがあるようなないような…。」
召々「えー、そんなことも知らないのー?じゃあ「召喚士」のボクが教えたげるね☆」
〔契約獣〕
普通の召喚獣とは違い、契約に従い半永久的に居続けるタイプの召喚獣。
「武器化」、「防具化」、「魔法化」などの特殊能力を持つものが多い。
契約に職業は問われないが、一生に一体としか契約できない。
ただし、契約獣の側も相手を選ぶので、誰しも得られるとは限らない。
賢二「ほぇ~。召喚士じゃなくても魔獣が呼べるなんて知らなかったな~。」
召々「一体だけね。召喚士はさ、一時的にだけどMP消費で何種も呼べるんだよ☆」
賢二「いいなぁ~。僕と契約してくれる召喚獣もどこかにいるのかなぁ?」
老婆「あ~、やめときな。契約代償はMPぢゃないし、子供にゃチョイと危険だよ。」
賢二「へ?そうなんですか? じゃあ代償は…?」

老婆「「生気」を食らう。」
バアさんの方が危険だ。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔7〕
雑談しながら半刻も進むと、「蛮族」がいるという「トリーナ村」に辿り着きました。
賢二「えと、とりあえず作戦を立てましょう。慎重に、できるだけ平和的な策を…」
召々「オーイ!出ておいでよ蛮族たちー!賢者様がブッ倒しに来ちゃったよ~♪」
賢二「は、話を聞いてぇー!!」
亀「見ろよ賢坊、あそこの旗…。ありゃ流れ蛮族「野蛮家族」のモンだぜぃ。」
賢二「野蛮家族…?なんか意外とアットホームな感じの名前ですねぇ。」
亀「一度目ぇ付けた敵は、家族もろとも惨殺するらしいぜぃ。」
賢二「世の中そんなに甘くは無いって、わかってたはずなのに…。」
召々「んじゃさ、あの旗のある建物にみんな居るのかなぁ?扉ブチ破ってもいい?」
賢二「だからなんでそう突っ走るんですか!?ブレーキは故障中ですか!?」
老婆「まぁ気にするでないよ賢坊。どうせ倒さにゃならん敵ぢゃないかい。」
賢二「いや、それはそうなんですが…。」
亀「ならホラ、お前も言ってやれよ。「お前らは俺が倒すぜぃ!」とかよぉ。」
賢二「(まぁこの距離なら聞こえないか…)よ、よーし!言っちゃいますよ!おま…」

蛮族〔背後〕「あ゛ぁ!?」

賢二「…おまかせします。」
賢二は身をゆだねた。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔8〕
油断していて、背後の蛮族さんに気づかずに喧嘩を売ってしまいました。
早速囲まれてしまい、もう謝ってもダメっぽい感じです。 やるしか…ないのかな…。
蛮族A「オゥ小僧!テメェか俺様達を倒そうって太ぇクソガキは!?」
賢二「ちちち違いますよ!僕は倒そうとかじゃなくて平和的に…!」
蛮族A「上等だよ!ブッ殺してやるぁ!!」
賢二「聞く気が無いなら…最初から聞かないでほしいなぁ…。」
召々「アハ☆ ホントだよね~♪ 耳の穴かっぽじってもいいかなぁ?」
賢二「ハイ…とりあえずご自分の耳からお願いしたいです…。」
蛮族達「宴だー!血の宴を始めるぞぁー!!」
老婆「ひぃ、ふぅ、みぃ…ほぉ、100近くおるのぉ。随分とまぁ大所帯なもんぢゃ。」
亀「で、どうするよ賢坊?これだけの数を相手にしてたら日が暮れるぜぃ?」
賢二「で、ですよね。とりあえず敵を減らさないと! 降り注ぐ雹の魔法、「降雹」!」
賢二は〔降雹〕を唱えた。
蛮族A「アイタッ!な、なんだコレは!? アイタタタタ!!
蛮族達「イデデデデデデ!!

賢二達「イタタタタタタタ!!
だが諸刃の剣だった。

 

〔降雹(こうひょう)〕
魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
周囲に大量の雹を降らせる魔法。やたらに使うと気象予報士に嫌な顔をされる。
 

 

外伝:賢二が行くⅢ〔9〕
とりあえず敵の数を減らそうと思ったのに、魔法の選択を誤ってしまいました。
でも一応効果はあったようで、何人か倒すことができたのがせめてもの救いです。
召々「あ~冷たかったぁ~。風邪ひいたらどうしてくれるの賢者様~?へっくち!」
賢二「残りは約80…この調子で減らしていければ勝てるかも…!」
蛮族B「くっ、敵は結構やりますぜ?どうしますお頭?」
蛮族長「フンッ、なら俺様の契約獣を呼ぶまでよ!出てこいや「ビッグ・フッチョ」!」
〔ビッグ・フッチョ〕
生態武器型の高レベル召喚獣。
その巨大な足で、あらゆる敵を踏み潰す。
サイズの合う靴がなかなか見つからない。
蛮族長「さぁ行けぃ!踏み潰してやれやフッチョ!」
フッチョ「ふごふごフガァーー!!」
賢二「わー!やっぱり勝てないかもー!!」
召々「大丈夫☆ そういうことならボクも味方を呼んじゃうよ♪」
賢二「ほ、ホントですか!?じゃあ強そうなのをお願いしますね召々さん!」
召々「うん、任せといて☆ さぁおいでー!いで…よ…へ、へっくちゅん!!」
賢二「わー!肝心なところでクシャミがー!!」

ヘックチュン「グルルルルァアアア!!」
賢二「えぇぇっ!?」
ヘックチュンは実在した。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔10〕
そして二体の魔獣の戦闘が始まりました。僕の出番は来なきゃいいなぁ…。
賢二「ふぅ~、でもさっきはビックリしちゃいましたよ。一瞬ただのクシャミかと…。」
召々「アハ☆ ホント、偶然って恐ろしいよね~♪」
賢二「ぼ、僕には今の発言の方が恐ろしいんだけど…。」
フッチョ「フガァーーー!!」
ヘック「グルゥアーーー!!」
賢二「う~ん、二体の力は拮抗してるみたいだね。どっちが勝つのか…」
蛮族A「絶対フッチョだろ!そうに決まってるぜ!」
蛮族B「じゃ、じゃあ俺はヘックチュン!今月の小遣い全部だ!」
老婆「ハイまいどねぇ~。」
賢二「何が行われてるんですか!?」
蛮族長「チッ、互角か…。なら仕方ねぇ、俺様が力を貸してやるよフッチョ!来い!」
ビッグ・フッチョは武器化した。
蛮族長はそれを両足に装備した。
賢二「そ、装備した!?これが…これが「契約獣」の本来の使い方…!?」
蛮族長「オラァ食らえぃ!必殺キック「足デカおじさん」!!」
バキィイイッ!(蹴)
ヘック「グルルルルァアアア!!
蛮族長、会心の一撃!

ネーミングはともかく威力は凄かった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔11〕
蛮族長さんの攻撃をまともに受けたヘックチュンは、召喚魔界に帰っていきました。
やっぱり神様は、僕に対して優しさが足りないと思うんですがどうでしょう?
賢二「腹をくくるか首をくくるか…いっそのこと後者を選んだ方が楽かもなぁ…。」
亀「ブツブツ言ってねぇでパパッと魔法でヤッちまおうぜぃ賢坊よぉ!なっ!」
老婆「まぁやるなら「火炎魔法」ぢゃね。武器化したとて元は獣…炎は苦手ぢゃ。」
賢二「か、火炎魔法ですか…。苦手な分野だなぁ…。」
得意な分野はあるのか。
蛮族A「オラァおめぇら行くぞゴラー!やっちまぇやー!!」
蛮族達「うぉおおおおあああああ!!」
召々「ん~、雑魚な子達はボクが片付けちゃうよ♪ いでよ、適当に☆」
賢二「適当に!?」
蛮族長「テメェがリーダーの賢者か?なら俺様が直々にブッ殺してやるぁ!!」
賢二「と、とりあえずやるしかない…!えっとえっと、火炎魔法…「炎殺」!!」
賢二は〔炎殺〕を唱えた。

が、やっぱり失敗した。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔12〕
苦手な火炎魔法は、当然のように失敗しました。もう暗雲は立ち込めっぱなしです。
ゴゴゴゴゴゴゴ…(暗雲)
賢二「って、わー…ホントに暗雲が立ち込めてきた…。」
召々「アハ☆ お茶目さんなんだね~賢者様♪余裕だからできるんだよね☆」
蛮族長「なにぃ!?じゃあテメェ、ワザと失敗しやがったってのか!?」
賢二「しょ、召々さん!?火も出てないのに油を注がれても!」
ゴゴゴ…ズザァアアアアア!(大雨)
賢二「わー!しかも雨までー!?」
蛮族A「ギャハハー!天気にも見放されやがったぜ!もう火なんか付かねーよ!」
賢二「くぅ、これじゃもう…ん?いや…諦めるのは、まだ早いかも!」
蛮族長「むっ!?何しやがる気だテメェ!?」
賢二「この条件なら、前置きなしで多分いける! 落ちてー!「雷撃」!!」
賢二は〔雷撃〕を唱えた。
ズゴォオオオオオオオン!!(落雷)
蛮族長「う、うがぁあああああ!!
蛮族達「ギェエエエエエエ!!

賢二達「ウギャアアアアア!!
みんな揃ってアフロになった。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔13〕
うまくいくかと思った「雷撃」ですが、やっぱり失敗して拡散してしまいました。
賢二「ハァ…。「賢者」どころか「魔法士」にもなりきれてないなんて…。」
老婆「んにゃ、なかなかいい線いっとったよ?もうチョイで〔雷迅〕ぢゃったわ。」
賢二「ら、雷迅!?いやいやいや、僕なんかがそんな魔法使えるわけが…!」
蛮族長「ったりめぇだ!あんな失敗作が雷迅と呼べるか!効いてねぇよ!!」
老婆「もうええわぃ。お前さんらの底はもう見えたわ。大人しく下がるがええよ。」
蛮族長「な、なんだとババア!?短ぇ人生を更に短くしてぇのかア゛ァン!?」
蛮族A「そうだぜババア!ババアは大人しく死期を待ってりゃいいんだよクソが!」
老婆「ば、ババア…!?こんな乙女を捕まえて、ババアとな…!?」
召々「アハ☆ 面白いこと言うお婆ちゃんだね♪グーで殴ってもいいかなぁ?」
賢二「いや、もっと平和的に説いてあげてください…。」
老婆「ええ度胸ぢゃ…腐れ蛮族の分際で、ええ度胸ぢゃよ…。 この…」
蛮族達「バ・バ・ア! バ・バ・ア!」

老婆「この永遠の美少女、「賢者:無印(むいん)」に喧嘩売ろうとはのぉ!!」

蛮族達「…え゛?」
召々「へ?」
賢二「ええぇっ!?」

ズゴォオオオオオオ!!(炎上)
〔火炎地獄〕が全てを焼き尽くした。

 

〔火炎地獄(かえんじごく)〕
賢者:LEVEL50の魔法。(消費MP250)
究極の火炎魔法。 燃え上がれ 燃え上がれ 燃え上がれ ガンd(自主規制)
 

 

〔雷迅(らいじん)〕
魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP48)
敵1グループに強烈な雷を落とす魔法。ビビッとくるが恋じゃない。
 

 

外伝:賢二が行くⅢ〔14〕
お婆さんはタダ者ではなく、なんとあの「四勇将」の「大賢者:無印」様でした。
でもそれなら、村長さんが呼んだ賢者、そして妙な余裕…全てに納得がいきます。
召々「うっわー!蛮族みんな消えちゃったー!手品?手品なの?もっかいやって!」
賢二「無印様…。じゃあオバ…お嬢さんが凱空オジさん達と共に戦った…?」
無印「なぬ? ほぉ、お前さん凱空を…ワシの「元彼」を知っとるのかぇ?」
賢二「も、元彼!?(被害者は)僕だけじゃなかったんですか!?」
無印「大丈夫ぢゃ安心せい。今は賢坊にゾッコン・ラブぢゃで☆」
賢二「いや、それこそが安心できないポイントなんですが…。」
無印「んで、凱空はお前さんの何なんね?奴は元気にやっとるかぇ?」
賢二「僕の友達のお父さんなんです。まったくもって「勇者」っぽくない人ですよ。」
無印「ふっ、ぢゃろうな…。 ガキの方はどうぢゃ?やっぱり勇者を目指して?」
賢二「え゛。あ…は、ハイ。とっても勇者らし…いや、というか勇者そのものですよ。」
無印「ほほぉ。そりゃいつか会うのが楽しみぢゃわぃ。わっはっはー!」

一応、嘘は言ってないです。
賢二は名前に関してだけ述べた。

 

外伝:賢二が行くⅢ〔15〕
蛮族を滅ぼし、トリーナ村へと帰った僕達は、とっても感謝されました。
引き止められ、しばらくご厄介になったのですが、そろそろ発とうと思います。
どこにいても戦いが待っているのなら、やっぱり友達と一緒に死にたいです。
賢二「というわけで、僕は宇宙船を探しに旅に出ますね。みなさんサヨウナラ。」
召々「えー!行っちゃうの賢者様ー!?イヤだよつまんないよー!遊ぼうよー!」
無印「アタイ…アンタと離れたくない!死ぬまで一緒だってあの時…!」
賢二「まだ恋人モードだったんですか!?それに「あの時」っていつです!?」
召々「アハ☆ いいじゃん賢者様♪「死ぬまで」ならもうじきだよー♪」
賢二「いや、いくらそう思ってもそれは言っちゃいけない台詞では…?」
無印「…うんにゃ。その嬢ちゃんの言うとおりぢゃ。ワシもそう長くは無い。」
賢二「えっ…?」
無印「夢の四桁は無理やもしれん。」
賢二「その夢の先には一体何があるのか教えてほしいです。」
亀「そういやムーちゃん、この前言ってた件はどうなったよ?賢坊は合格なんか?」
賢二「へ…?合格って何の話ですか?」
無印「うむ、ワシぁ決めたぞぇ。この坊を最後の弟子とし、ワシの全てを教えちゃる!」
賢二「えっ!?だ、大賢者様の全てを!?」

無印「今夜…ベッドで待ってる☆」
賢二「全てを!?」
「賢者」への道が開けた。

「青春」の二字を代償に。

 

第四章へ

本編( 8 / 10 )

第二部:第四章

第四章

 

2-166:権力〔13歳:LEVEL17〕
夏。 色々あったけど、僕達はなんとか生きて「タケブ大陸」に到着できた。
そして今は、「シジャン王国」の王都…五錬邪が支配する城の城下町に来ている。
恐らくこれが、五錬邪との最後の戦いになるだろう。できる限りの準備をしなければ。
盗子「つ、ついに来たね敵の本拠地…。なのに仲間はたった三人だなんてさ…。」
勇者「頑張ろう姫ちゃん。僕ら二人で世界を守るんだ。」
盗子「せめて頭数ぐらいには入れてよ! 盗子にも人権を!人権をー!!」
勇者「シッ! 僕らが来たのは多分…もう気づかれてる。慎重に行かなきゃ。」

~その頃、シジャン城では…~
赤錬邪「よし!では今から各関門に全員を配置する!ガキどもの侵入に備えろ!」
兵士達「ハッ!」
赤錬邪「まず第一の門は…よし、お前に任せるぞ黄緑錬邪!」
黄緑「あ?気安く私に指図するなよ。まぁ仕方ねぇからヤッてやるけどさぁ。」
赤錬邪「くっ…!ま、まぁ威勢がいいのは良いことだ。 そして次、第二の門!」
傭兵「ケケッ!そこでこの俺達…「人獣奇兵団」の出番ってわけかよ?」
兵士A(じ、人獣奇兵団って、まさかあの…!?)
兵士B(ああ。魔獣を巧みに操り、金さえ貰えりゃ何でもやる…外道な傭兵団さ。)
赤錬邪「うむ。お前達には高い金を払ってるんだ、それなりの仕事を頼むぞ?」
傭兵「あん?なんだテメェ、信用できねぇっての?じゃあ今テメェをヤッたろか!?」
赤錬邪「くっ…!ま、まぁそのぐらいの方が心強いか。 そして最後、第三の門は…」

鉄仮面「俺に命令したら、殺す。」
赤錬邪「くっ…!」
アンタほんとにボスなのか。

 

2-167:依頼〔13歳:LEVEL17〕
三人で挑むのはさすがに厳しいので、僕達は城下町で仲間を探すことにした。
聞けば五錬邪を倒そうという勇士達が酒場に集っているらしい。見逃す手は無い。
そういえばマジーンは買出しに出たっきり戻らないけど…まぁそれは別にいいや。
ガラララン♪(開)
店主「ヘイいらっしゃ…」
勇者「僕の名は勇者!五錬邪を倒すため、仲間を探している!」
盗子「私は盗子!お願い!誰か力を貸して!」
姫「私は今日のランチ!」
盗子「って真面目にやれよ!!しかも酒場でランチて!」
店主「はいランチ一丁ね~。」
盗子「なんであるんだよ!!」
客A「…オイ小僧。勇者ってお前…凱空さんの息子の勇者か?」
勇者「えっ、なんで父さんのことを知ってるの!?お前達は一体…!」
客B「俺達はあの人に言われて集まったんだ。「息子を頼む」ってな。」
勇者「と、父さん…。」
客C「俺達は凶死さんに頼まれた。「私のオモチャをヨロシク」とよぉ。」
盗子「オモチャて!アタシらってそういう位置づけだったの!?」
勇者「先生…。」

なんでお前らが来ないんだ。
勇者は人任せにされた。

 

2-168:再会〔13歳:LEVEL17〕
酒場で仲間を集め、パーティーは10人になった。実力は不明だけど多少は心強い。
彼らの話によると、城の中に入るには三つの門を越えなければならないらしい。
というわけで僕らは、早速「第一の門」の前までやってきた。テンポ良くいこう。
勇者「さぁ出てこい五錬邪!誰かいるのはわかってるんだぞ!」

シーン…

勇者「…待とうか。」
盗子「なんで待つの!?いなきゃいないで好都合じゃん!」
仲間B「ギャアアアアア!!
勇者「!? やっぱりいたんじゃないか! 出てこい!」
盗子「そ、そうだよ出てきなよ!隠れてるなんて卑怯だよ!」
勇者「出てきて僕に謝れ!」
盗子「そういう意味だったの!?仲間のカタキとかそういう線は!?」
黄緑「フフ…久しぶりだなぁ勇者。今日こそテメェを殺してやるよ。」
盗子「き、黄緑…アンタ巫菜子だよね!話は聞いてるよ!」
黄緑「あん?あぁ、テメェも久しぶりだなぁ…姫。」
盗子「アンタもアタシにはノータッチかよ!!」
仲間C「な、なんだよお前ら…コイツと知り合いなのか?」
勇者「うん…。奴とは色々と因縁があるような気がしながらも全く覚えてない。」
黄緑「結局は覚えてねーんじゃねぇか!相変わらずナメた野郎だ、ブッ殺す!」
黄緑錬邪は「岩の精霊」を呼んだ。
幾百の岩石が勇者を襲う。
勇者「くっ、数が多すぎる!避けきれな…!」
姫「大丈夫、私に任せて! みんなを守って「超防御」!そして敵を討って「爆裂」!」
姫は〔超防御〕を唱えた。
全ての攻撃を防いだ。
姫は〔爆裂〕を唱えた。
岩の精霊を撃破した。
黄緑「なっ!?こ、これがあの姫の動きなのか!?」
勇者「ひ、姫ちゃん…!?」

姫「悲しいけど、私が倒すよ巫菜子ちゃん。友達だけど…ううん、友達だから!」
姫は酔っている。

 

〔爆裂(ばくれつ)〕
魔法士:LEVEL37の魔法。(消費MP40)
爆発系の魔法。戦隊ヒーローものの戦闘シーン(背後)などでよく使われる。
 

 

〔超防御(ちょうぼうぎょ)〕
魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP45)
高い守備力を誇る強力防御魔法。ガードの固いアノ子の得意技だ。
 

 

2-169:酒乱〔13歳:LEVEL17〕
なぜか急にシャキシャキしはじめた姫ちゃん。一体彼女に何があったのだろう?
勇者「ど、どうしたんだろ姫ちゃん…?でもとりあえず、こんな彼女も…いい!」
盗子「…あっ!きっとあの子お酒飲んじゃったんだよ酒場で! 姫って酒癖が…」
姫「大丈夫お仲間ちゃん!?傷は私が治すよ!むー、〔治療〕!」
盗子「悪い…のかむしろ良いのかわかんないけども。」
黄緑「チッ、姫が戦力になるなんて厄介だぜ…。 とりあえずお前達、いきな!!」
兵士達「おおおおおおっ!!」
勇者「大将は僕らが倒す!雑魚の相手は任せるよ!」
仲間達「おう!任せとけぇええええ!!」
ガキン!キィン!ズバシュッ! チュィン!
久々に戦いらしい戦いが始まった。
勇者「よし、じゃあ僕達もいくよジュリアス!黄緑錬邪を倒すんだ!」
盗子「ま、待って勇者!前の経験からすると多分もうじき姫のミラクルが切れるよ!」
姫「むー!〔死滅〕!!」
兵士A「うぎゃあああああ!!
盗子「ゴメン勇者!全然「多分」じゃなかったよ!」
仲間A「ぎょええええええ!!
姫「えっ、どうしたの!?誰がこんな酷い…。私が治すよ! むー!〔全滅〕!!」

一同「ぐわぁああああああああ!!
辺りは地獄絵図と化した。

 

2-170:本気〔13歳:LEVEL17〕
酔った姫ちゃんの暴走により、敵も味方も大半がブッ倒れてしまった。
でも酔いのせいかレベルのせいか、術が完璧じゃなかったのがせめてもの救いだ。
勇者「うぐっ!これが…絶命系呪文…!カスッただけでこの疲労度だなんて…!」
黄緑「ふ、フザけてんじゃねぇぞテメェら!悪役よりも非道な攻撃すんじゃねぇよ!」
盗子「ヤバいよ勇者!みんな倒れちゃったよ!まるでこのためだけに来たみたく!」
勇者「でも、それは敵も同じさ。三対一なぶんこっちに勝機があるはずだよ。」
黄緑「ケッ、甘く見られたもんだぜ…。だがコレを見てもまだ言えるかア゛ァン!?」
黄緑錬邪は力をためた。
とりまくオーラが数倍になった。
勇者「なにっ!?なんでいきなりこんなにパワーが…!?」
盗子「あっ、そういやコイツら裏技使ってんだよ!命と引き換えに!」
黄緑「さぁ来やがれ勇者。こっちは命削ってんだ、テメェも命懸けろやぁ!」
勇者「やっぱり一筋縄にはいかないか…。いつ神が復活するかというのに…!」
姫「勇者君、ここは私に任せてほしいよ。みんなのカタキは…私が討つよ!」
勇者「なっ、何言ってるのさ姫ちゃん!?一人でなんとかなるはずが…!」
盗子「そうだよ姫!違った意味でも何言ってんだよ!アンタがやったんじゃん!」
姫「悲しい事故を乗り越えて、私は強くなるよ。 行って!世界のピンチだよ!」
勇者「くっ…! …わかった。でも絶対死んじゃダメだからね姫ちゃん?」
盗子「ちょっ、姫に任せちゃう気!?てゆーかアンタは何もしない気!?」
黄緑「そうだ逃げんな勇者ぁ!私がテメェを恨んでんのはテメェも…」
勇者「記憶喪失をナメないでほしい。」
黄緑「ナメてんのはテメェだぁあああああ!!」
覚えてないのは前からのことだ。

 

2-171:不動〔13歳:LEVEL17〕
とても心配だけど、黄緑錬邪は姫ちゃんに任せることにした。全ては世界のためだ。
なんとか早めに攻略して助けに戻りたい。姫ちゃん、少しだけ待っててね…!
勇者「あ、見た感じアレが「第二の門」…かなぁ? じゃあ開けるよハリソン?」
盗子「ちょっ、待ってよ勇者!最後に巫菜子が言ってたこと忘れたの!?」
勇者「お前こそ忘れてもらっちゃ困るよビリー。僕は記憶喪失だよ?」
盗子「それは今さっきのことには適用されないよ!」
勇者「大丈夫、傭兵団なんか怖くないさ。たとえ何人いようと…僕は負けない!」
勇者は扉を押した。
だがピクリとも動かなかった。
勇者「なにっ!?ぐっ…ダメだ、ビクともしない! …押してもダメならぁ!」
盗子「むぎぃー! ふぅ…違うみたいだよ勇者。引いても全然ダメっぽい。」
勇者「じゃあフスマみたく横に…ズレないか。まるで鍵でもかかってるみたいだ。」
盗子「えー、でも鍵穴無いじゃん? あっ、もしかしたら「呪文」とか!?」
勇者「な、なるほど…よし! ふぅー… 「開け、ゴラ」!!」
盗子「「ゴマ」じゃないの!?それじゃただ喧嘩売ってるだけじゃん!」
勇者「ケラヒ・ヨラビト!!」
盗子「いや、なんとなくそれっぽいけど無理だから!逆に言ってるだけじゃん!」
勇者「僕を信じるんだ!さぁ、この胸に飛び込んでおいで!」
盗子「心を開かせてどうすんだよ!開いたら開いたでなんか怖くて入れないよ!」
勇者「くっ、ダメか!こうなったら爆弾でも仕掛け…ん?なんだろコレ…?」


『軽く触れてください』

二人「バカなっ!!」
不自然にハイテクだった。

 

2-172:場違〔13歳:LEVEL17〕
古くおもむきがあったのは外観だけで、なぜか自動ドアだった第二の門。
勇者「なんとなく気が抜けた感があるけど…気を取り直して行こう。 開けるよ!」
ウィーーーン…(開)
勇者は扉を開けた。

傭兵Aが現れた。
傭兵Bが現れた。
傭兵Cが現れた。
傭兵Dが現れた。
傭兵Eが現れた。

傭兵Aは剣を持っている。
傭兵Bは斧を持っている。
傭兵Cは槍を持っている。
傭兵Dは銃を持っている。
傭兵Eは太っている。
傭兵B「オイオイ勘弁しろよ。たった二人で来やがったぜコイツら?」
傭兵C「やれやれ、我ら「人獣奇兵団」もナメられたものだな。」
勇者「僕は無駄な殺生は好まない。お前達、ここで退くなら見逃してあげるよ?」
傭兵D「あ゛?立場わかってねぇのかテメェ!?今すぐ殺すぞゴルァ!?」
傭兵E「…お菓子、うまい。」
盗子「ねぇアンタだけなんかキャラ違くない!?どう見ても場違いだよね!?」
傭兵A「チッ…まぁいい。一応仕事だ、適当にヤッちまえやぁああああ!!」
傭兵Aは剣を構えた。
傭兵Bは斧を構えた。
傭兵Cは槍を構えた。
傭兵Dは銃を構えた。
傭兵Eはブサイクだ。

 

2-173:百人〔13歳:LEVEL17〕
傭兵団は予想よりは少なかったけど、それでも一人で五人と戦うのはかなりキツい。
勇者「ハァ、ハァ…!ダメだ、五人相手じゃ防御が精一杯…!」
傭兵A「ケッケッケ!ヤルじゃねぇかガキのくせに!だが息が上がってるなぁ?」
勇者「くっ…!一人で倒せる相手じゃない、お前も何かするんだポコポン!」
盗子「えぇっ!?な、なにさアンタ!か弱い乙女を危険に晒す気!?」
傭兵A「…オイ、先にコイツから消すか。」
傭兵達「おうよ!」
盗子「なんでアンタらがキレるわけ!?」
傭兵B「弱ぇ奴から殺すのが定石だろ?まずはテメェからヤッてやるぁ!」
盗子「わっ、やややヤだよぉー!!」
勇者「ヤメろ!コイツに構うなー!!」
盗子「あっ…ゆ、勇者…☆」
勇者「何かがうつるぞ!!」
盗子「何がだよ!敵を気遣う前にアタシを思いやれよ!」
傭兵C「安心しろよ小僧、テメェの相手はまだまだ奥に山ほどいるからよぉ!」
勇者「なっ!?や、やっぱり五人じゃなかったのか…!?」
傭兵A「ケケッ!総勢100人!それが俺ら、人獣奇兵団だぁー!来いや野郎ども!」
傭兵Aは仲間を呼んだ。

だがその声は虚しく響いた。
傭兵A「…オイ!聞こえねぇのかテメェらぁ!?来いっつってんだろがぁ!!」
傭兵D「た、大変だ兄貴ぃ!みんなブッ倒れっ…!
傭兵A「なっ…!?ど、どうしたオイ!?何があった!?」
勇者「!! あの陰だ!柱の陰に、誰かいる!!」

声「ふぅ~…、ったく…。」


暗殺美「雑魚のお守りは疲れるさ。」
暗殺美が偉そうに現れた。

 

2-174:意表〔13歳:LEVEL17〕
陰から現れた黒髪の少女。サルサが知ってるようなので、どうやら味方みたいだ。
盗子「あ、暗殺美!?なんでアンタがここにいんのさ!?いつの間に…!」
暗殺美「詳しい話は後さ。とりあえず雑魚を片付けるから黙って見てるがいいさ。」
傭兵A「ちょ、調子ん乗んなよテメェ!?俺らは他とは一味違うぜ!? ブッ殺す!」
暗殺美「「暗殺者」をナメんじゃないさ。私の秘奥義「風林火山」を見せてやるさ。」
勇者「ふ、風林火山!?」
暗殺美の姿が消えた。
暗殺美「疾(はや)きこと風の如く!」
傭兵B「なっ!? ぐぇっ!!
勇者「は、速い! 僕にも見えないなんて…!」

暗殺美「徐(しず)かなること林の如く!」
傭兵C「ぶばっ!!
傭兵A「そ、そんな!音もしねぇとは…!」

暗殺美「侵掠(しんりゃく)すること火の如く!」
傭兵E「お菓子っ!
盗子「お菓子!?どんな悲鳴だよそれ!」

暗殺美「動かざること…」
傭兵A「ん?おっ、バカが!止まりやがったぜ!」
盗子「ちょっ、暗殺美!危なっ…!」

暗殺美「カカト落としぃいいいい!!」

盗子「えぇーーっ!!?」
山はどこへいったのか。

 

2-175:名前〔13歳:LEVEL17〕
華麗な動きで傭兵達を始末した暗殺美。最後が変だったけど気にしたら負けだ。
傭兵A「ぐっ…!ち、チクショ…ウ…!(バタッ)」
勇者「…ふぅ~、おかげで助かったよ。お前みたく強い仲間がいたなんてね。」
暗殺美「仲間扱いするんじゃないさ。アンタはむしろ私の筆頭ブラックリスターさ。」
盗子「それにしてもアンタ、一人であんなに…。なんかメッチャ強くなってない?」
暗殺美「はぁ?一人で100人なんてどんな化け物さ。軽く毒を盛っといただけさ。」
傭兵A「な、なにっ!?じゃあアイツらは生きてるってことかよ!?ホントか!?」
暗殺美「じきに目覚めるはずさ。仕方ないから今日だけは見逃してやるさ。」
傭兵A「くっ…!覚えてろよクソガキ!この恨みはいつか…!」
暗殺美「クソガキじゃないさ。私には暗殺美って素敵な名前があるのさ。」
傭兵B「今度はブッ殺してやるからな暗殺美!」
暗殺美「だからって気安く呼ぶなさ!」
傭兵C「あさみん!」
暗殺美「可愛く呼ぶなや!」
傭兵E「お菓子…。」
暗殺美「呼べやっ!!」
乙女心は複雑だった。

 

2-176:迂闊〔13歳:LEVEL17〕
傭兵団を撃破した僕達は、次の門へと向かうことにした。のんびりしてはいられない。
盗子「で、でもいいの暗殺美?コイツらこのまま置いてって…。」
暗殺美「フン、気にすること無いさ。こんなハッタリ偽者軍団なんか敵じゃないさ。」
勇者「え?ニセモノ…?それはどういうことなんだあさみん?」
暗殺美「あさみん言うなや!」
傭兵A「て、テメェ…いつから気づいてやがった?」
暗殺美「本物の人奇団は「魔獣使い」と聞くさ。辺りに一匹もいないのは変さ。」
傭兵達「・・・・・・・・。」


傭兵達「Σ( ̄□ ̄;)!!」
盗子「アホかよアンタら!?100人もいて誰も考えなかったのかよ!」
傭兵C「な、なんて鋭い娘なんだ…!コイツらなんて疑いもしなかったのに!」
勇者「いや、僕らはたまたま本物の噂すら聞いたことがなかっただけで…。」
暗殺美「一時期賞金稼ぎで食べてた時期があるのさ。アンタらも確か賞金首さ。」
傭兵B「なっ!?じゃあ俺らが「詐欺師」の「大ボラ兄弟」だってことも!?」
傭兵A「そ、そうか…俺らってそんなに印象に残るほど有名だったのか~♪」

暗殺美「名前がウケたさ。」
傭兵A「それでかよ!!」
傭兵達は傷ついた。

 

2-177:称号〔13歳:LEVEL17〕
実は偽者だったという傭兵達。そんなのに苦戦したなんて大きな声じゃ言えない。
勇者「それにしても、気づかずに偽者を雇うなんて…赤錬邪も底が見えたね。」
傭兵B「いや、ナメねぇ方がいいぜ。アイツは一見マヌケだが、何か裏がある。」
傭兵C「それに次の門にいる「鉄仮面」にも要注意だな。確か名前は…「覇者」だ。」
勇者「鉄仮面!?そいつもここにいるの!?どういう奴なのか教えてくれ!」
傭兵D「俺らもよくは知らねぇが、最近加入してすぐ幹部になったヤリ手らしいぜ。」
勇者「そっか…。何度か聞いた相手だけど、どうやら敵で決まりみたいだね。」
盗子「ん~、まぁしょうがないね。 とりあえず用も済んだわけだし先に…」
傭兵達「ぐ…うぐぅ…。あ、兄貴ぃ…!」
傭兵達の毒が抜けたっぽい。
盗子「わっ、わー!ヤバいよ勇者!毒が切れ始めたよ!早くなんとかしないと…!」
傭兵A「…いや、悔しいが今回は俺らの負けだ。 何もしねぇからとっとと行けよ。」
勇者「ん?なんだかヤケに素直じゃない?」
傭兵C「「詐欺師」にとって引き際は命でな。 …だが、次はブッ殺す!覚えてろよ?」
暗殺美「そういうことなら今すぐヤッとくさ。」
傭兵C「いや嘘ですスンマセン!つい詐欺師の癖で心にも無い嘘がっ!」
盗子「ま、まぁいいじゃん暗殺美。わざわざ無駄な血を流すことはないよ。」
傭兵B「おぉ…!あ、ありがとう妙ちくりん!」
盗子「誰が妙ちくりんだよ!アタシも「あさみん」みたくもっと可愛く呼べよ!」

傭兵達「ありがとう、「闘魂(とうこん)」!」
盗子「やっぱそうなんのかよ!!」
盗子は「萌えぬ闘魂」の称号を手に入れた。

 

2-178:手紙〔13歳:LEVEL17〕
大ボラ兄弟を残し、僕らは「第三の門」へと向かった。赤錬邪はもうすぐそこだ。
次の敵は鉄仮面の「覇者」…聞く限りではかなりの強敵だ。でも、僕は勝つ!
勇者「着いたね。 …よし、どうやらこの扉は普通みたいだ。 開けるよ?」
暗殺美「ちょっと待つさ。さっきから変だと思ってたことがあるのさ。」
勇者「ん?変って何が?」
暗殺美「アンタ、なんか様子が変さ。まぁ元々変な奴ではあったけどもさ。」
盗子「あ~。実は勇者、わけあって記憶を無くしててさ~。もう半年くらい経つよ。」
暗殺美「…ま、別にどうでもいいけどさ。」
勇者「ちなみに賢二は獣に食われたよ。」
暗殺美「うぇえええええっ!!?」
勇者「さ、そろそろ入ろう。きっと敵も待ちくたびれてるよ。」
暗殺美「賢二君が…。そんな…半ば予想通り賢二君は…。」
ギィィイイイ…(開)
勇者「さぁ、出て来い鉄仮面!お前はこの僕が…って、あれ?」
盗子「へ?いな…い? もしかして、今が抜けるチャンスだったり…?」
勇者「いや、安心するのはまだ早いよ。黄緑錬邪の時もそうだったしね。」
暗殺美「あ…。見るさ勇者、なんかメモみたいのが落ちてるさ。見てみるさ。」
勇者「ま、待って暗殺美!罠かもしれないから迂闊に近づ…!」

メモ『飽きたから、帰る。』

一同「えぇーーーっ!!?」
ホントに待ちくたびれてた。

 

2-179:早速〔13歳:LEVEL17〕
緊張しつつ乗り込んだのに、鉄仮面の男はいなかった。「飽きた」ってなんなんだ。
父さんのこととか知りたかったんだけど…まぁいいや。楽して進めるなら文句は無い。
勇者「…というわけで、早くも「王の間」の前に着いたわけだけど…準備はいい?」
暗殺美「私は精神的にまだ立ち直れてないけど…こうなったら八つ当たっていくさ。」
盗子「こ、ここまで来たらもう退くわけにもいかないもんね!いいよ行こうよ!」
勇者「よし、じゃあ開けるよ!!」

ゴゴゴゴゴ…!(開)

影「…フッ、よく来たな。勇者と勇敢なる戦士達よ。」
勇者「その赤い衣装…どうやらお前がボスみたいだね。」
赤錬邪「いかにも。俺が二代目赤錬邪…この五錬邪の総帥だぶしっ!
暗殺美は容赦なく攻撃した。

 

2-180:一撃〔13歳:LEVEL17〕
せっかくの登場シーンだというのに、暗殺美に邪魔されてしまった赤錬邪。
ちょっと可哀想だとは思うけど、やっぱり戦いの場で気を抜く方が悪いと思う。
赤錬邪「ちょ、ちょっと待て!ラスボスの自己紹介っていったら、もっとこう…!」
暗殺美「甘えてんじゃないさ!人生はいつだって時間との戦いなのさ!」
盗子「いいぞぉ暗殺美ー!やっちゃえー!!」
赤錬邪「くっ…! …フン、いい度胸だな小娘。 死して後悔するがいいわぁ!!」
暗殺美「えっ…?」

ズゴォオオオオン!!(打)
暗殺美「きゃうっ!!
赤錬邪の攻撃。
暗殺美は激しくフッ飛ばされた。

暗殺美はグッタリした。
盗子「えっ!暗殺美!?暗殺美ぃいい!! ねぇ!大丈夫!?しっかりしてー!!」
赤錬邪「フフッ。 すまんな、まだ加減ができんのだ。さすがは「神」の持ち物よ。」
勇者「なっ!?じゃ、じゃあその棍棒みたいなのも「神の装備」だっていうのか!?」
赤錬邪「そうだ。かつて様々な伝説を打ち立てた神、「サーハル」の愛用品だ。」
盗子「さ、サーハル…!?どんな恐ろしい奴なの!?「魔神」とか!?」

赤錬邪「「野球の神」だ。」
勇&盗「えぇっ!?」
ホームランとかたくさん打った。

 

2-181:破壊〔13歳:LEVEL17〕
登場直後に暗殺美をフッ飛ばしてしまった赤錬邪。コイツ…意外にも強い!
でもその武器は、「野球の神:サーハル」のバット…?明らかに話がおかしい。
勇者「野球の…神?嘘だ、そんな奴の装備が「神の装備」なわけないじゃないか!」
盗子「そうだよ!神の骨とか牙から「錬金術師」が練成した物だって聞いたもん!」
赤錬邪「な、なにっ!?オークションでかなりの値が付いてたのにか!?」
盗子「それは単なるマニア価格だよ!」
赤錬邪「くっ…!だ、だが強力な武器であることに代わりはない!食らえぇ!!」
勇者「フッ、甘いね!じゃあ僕が、「真の神の装備」ってものを見せてあげるよ!」
赤錬邪「ハッ!そういえばお前には…!!」
勇者は「破壊神の盾」で攻撃を防いだ。

盾は見事に砕け散った。
勇&盗「って、えぇーーーっ!?」
赤錬邪「なっ…!?」
盗子「えっ、えぇっ!?なんで!?なんでブッ壊れちゃってるのさ勇者!?」
勇者「ど…ど、どうだ赤錬邪!?ビビッたぞ!!」
盗子「いや、普通は「ビビッたか!?」だよね!?まぁ確かにビビッた側だけども!」
赤錬邪「フ…フハハハハ!神の装備とはその程度なのか!?他愛ない!」
勇者「…フッ。」

まったくだよ!!
言い訳の言葉も無かった。

 

2-182:範囲〔13歳:LEVEL17〕
力の差を見せつけるどころか、アッサリ砕けてしまった破壊神の盾。モロすぎるよ!
赤錬邪「…さて、実力もわかった。今度はコチラから行かせてもらうとするかな。」
勇者「い、いいだろう!お前の野望は、この僕が打ち砕いてやる!」
赤錬邪「フン、お前は後回しだ。まずは邪魔者から始末することにしよう。」
勇者「な、なにっ!?」
盗子「えっ…!?」
赤錬邪「死ねぇええええええ!!」
勇者「とう…ジャスミィーーーン!!」
盗子「なんで言い直すのかわかんな…うわーっ!!」
赤錬邪の攻撃。

ミス!盗子は攻撃を避けた。
審判「ボォーーーーール!!」
盗子「ってアンタ誰だよ!?戦闘に審判は必要ないよ!?」
赤錬邪「ほぉ、なかなかすばしっこいじゃないか。 だが次は外さんぞ小娘!」
赤錬邪の攻撃。

ミス!再び盗子は攻撃を避けた。
だが風圧でスカートがめくれた。
審判「ストラーーーーイプ!!」
盗子「ありがちなネタすぎるよ!! てゆーか今日は水玉だよ!」
審判「水玉パーーーーンツ!!」
盗子「だ、だからって大声で言い直さなくていいよっ!」
赤錬邪「チッ、なぜだ!?なぜコイツには当たらんのだ!?」
盗子はストライクゾーンに入ってなかった。

 

2-183:真相〔13歳:LEVEL17〕
実力なのか運なのか、なぜか攻撃が当たらないガボン。逃げ足だけは速いようだ。
勇者「あれ?どうしたの赤錬邪?偉そうに吠えた割に当たらないようだけど?」
赤錬邪「フン、貴様がイキがるな。クソの役にも立たん雑魚は下がっていろ。」
勇者「な、なんだって!? 僕だって記憶さえあれば、お前なんか…!」
赤錬邪「ほぉ、言うじゃないか小僧。ならば俺が少し、手助けをしてやろうか!!」
赤錬邪は勇者の頭部を狙った。
勇者は華麗に攻撃を避け

…たかった。
ズゴォオオオオオン!(直撃)
勇者「うがぁああああああああっ!!
盗子「ゆ、勇者ぁーーーー!!」
赤錬邪「おっと、少々刺激が強すぎたか!?アッハッハ! …トドメだぁーー!!」
盗子「ま、待って!こうなりゃヤケだよ!アタシが相手したげるんだからっ!」
審判「チェィンジ!!」
盗子「って失敬だよアンタ!妙な商売と一緒にするなよ!死ねっ!!」
赤錬邪「フッ、やれやれ…。黄緑錬邪といい、最近の小娘は慎ましさが足りんな。」
盗子「そういや…アンタに聞きたかったんだよ。なんで巫菜子が、五錬邪なのさ?」
赤錬邪「ん? 群青の推薦さ。「悪の資質を持った小娘がいる」とな。それで…」
盗子「悪!?違うよ!確かに性悪だったけど、あんな酷くはなかったもん!」
赤錬邪「俺が背を押してやったのだ。まぁ今はその小僧のせいになっておるがな。」
盗子「えっ!?じゃ、じゃあ巫菜子の家族を殺したってのは…!!」
赤錬邪「バカな娘よ。恨むべき相手に、逆にいいように使われているのだからな。」
盗子「ッ!! さ、最低だよアンタ!許せないよ!!」
赤錬邪「許せない…? フハハハ!じゃあどうするのだ?お前に何ができる!?」
盗子「…聞いたよね、巫菜子?アンタの敵は私らじゃないよ!コイツだよ!!」
赤錬邪「なっ…いるのか!?それに気づいて貴様、ワザと今の話を…!?」
盗子「さっきチラッと見えたもん!隠れてないで出ておいでよ、巫菜子!」

陰「・・・・・・・・。」
黄緑錬邪が現れた。
黄緑「あ~、見っかっちゃったよ。やるね盗子ちゃん。」

盗子(中身が違うーーー!!)
姫によるコスプレだった。

 

2-184:血統〔13歳:LEVEL17〕
赤錬邪の一撃でブッ倒れてしまった勇者。
明かされた、巫菜子五錬邪入隊の真実。
そして現れた、黄緑錬邪。

中身は姫。
盗子「ねぇ、アンタ姫だよね!?じゃあ巫菜子は倒しちゃったってこと!?」
黄緑「違うよ!私は黄ミド…赤パジャマ青パジャマ黄ミドレジャフ!!」
盗子「言えてないよ!?なんで自らハードルを高くするのかもわかんないし!」
赤錬邪「チッ、魔導士の姫か…。厄介な奴が来おっ…あ゛。」
盗子「えっ、厄介って…もしかしてアンタ、魔法が苦手なんじゃ…?」
赤錬邪「ば、ばばバカ言え!俺の真の職業は、あの血統職「魔欠戦士」だぞ!?」
〔魔欠戦士(まけつせんし)〕
「防魔法細胞」が一切無い、特異体質者のみが就ける職業。
魔法攻撃に弱い代わりに、物理攻撃への耐性が異常なまでに高い。
ゾウが踏んでも壊れない。
盗子「って、全然言い訳になってないし!むしろ疑惑を確信に変えちゃったし!」
赤錬邪「ぐっ…!だ、だが手はまだある!この「封魔の腕輪」さえあっ…!」
黄緑「ほぇ~、なかなかシャレた腕輪だね。」
赤錬邪は頼みの綱を奪われた。
盗子「イェーイ!ナイスだよ姫!多分それハメられたら魔法力封じられてたよ!」
赤錬邪「うぐぅ…!この俺としたことが…!」

黄緑「どうかな?似合う?」
盗&赤「みずからハメたぁーー!!」
姫は魔法を封じられた。

 

2-185:作戦〔13歳:LEVEL17〕
魔法に弱いことが判明した赤錬邪。
だが肝心な時に姫は、魔法を封じられてしまった。

というか、自分で封じた。
盗子「こ、このバカ姫!なんで自分からハメてんのさ!?チャンスが台無しじゃん!」
黄緑「大丈夫だよ盗子ちゃん。全ては敵を油断させる作戦だよ。」
赤錬邪「フ…フハハハ!作戦だと?そんなハッタリが俺に通じるとでも…」
黄緑「ホントだよ。隙を突いて巫菜子ちゃんが出て来るよ。」
赤錬邪「むっ…!?」
盗子「えっ!?」
巫菜子「えぇぇっ!?」
ビックリ顔で巫菜子が現れた。
巫菜子「て…テメェ、姫!言っちまったら奇襲になんねーだろうが!」
盗子「な、なんで姫もいるのに巫菜子も無事なの!?どゆこと!?」
黄緑「言ってもいいけど結構高いよ。」
盗子「って金とんのかよ!!」
黄緑「落ちたら大変だよ。」
盗子「何がどう高いの!?高度的な問題なの!?」
赤錬邪「やれやれ…寝返ったのか黄緑錬邪?非常に残念だよ。」
巫菜子「寝返っただぁ!?話は全部聞いてた…テメェが黒幕だったとはなぁ!!」
赤錬邪「…フン、騙される奴が悪いのだ。恨むなら、浅はかな自分を恨むがいい。」
巫菜子「よくも…よくも私の家族を…!みんなを、返せぇえええええ!!」
巫菜子は「大地の精霊」を呼んだ。
巫菜子「オラァ!クソ精霊!ブッ殺しちまえやぁあああああ!!」
赤錬邪「チッ…!」


精霊「(-_-)…。」

巫菜子「ど…土下座を求めるなぁーー!!」
相変わらず態度がデカかった。

 

2-186:二重〔13歳:LEVEL17〕
話の流れで味方になったっぽい巫菜子。
だが頼りになるかどうかは微妙な感じがした。
巫菜子「チッ、大地の精霊はダメかよ…。私が呼べる最強の精霊だってのに!」
盗子「で、でもさ!相手は魔法が苦手なんだから、炎の奴とかでもいいんじゃない?」
赤錬邪「ハハッ、普通の炎と魔法の炎…同じものだと思っているのか?小娘が。」
盗子「む、ムッキィー!なんだよ勝ち誇った顔…は見えないけども! 仮面取れ!」
赤錬邪「どうやら希望は絶たれたようだな。家族の元へ逝く準備はできたか?」
巫菜子「ぐっ…!ちくしょう…ちくしょう…!」
赤錬邪「小生意気な娘の涙…たまらんな!ガハハハハ! サラバだ!!」
盗子「み、巫菜子ぉー!!」
赤錬邪は振りかぶった。
巫菜子「…フッ、な~んてな。」
赤錬邪「!?」
巫菜子「オラ今だー!やっちまいな姫ぇーー!!」
姫「私の怒りがマグレを呼ぶよ! むー!〔熱血〕!!」
赤錬邪「なっ!? ぐぇえええええええ!!
なぜかまた姫が現れた。
赤錬邪「ぐはぁ…! ど、どういうこと…だ!?ならばその黄緑錬邪は…!?」
黄緑「騙される奴が悪い…フッ、アンタもいいこと言ったもんさ。」
盗子「げっ、暗殺美!?まさか最初から!?でも声は…あっ!「声帯模写」!?」
暗殺美「倒したと思って私から目を離したのがアンタの敗因さ。」
赤錬邪「くっ…!」
盗子「やーいやーい!バーカバーカ!」
暗殺美「フン、浮かれてんなさ。一緒に騙されてたおバカがさ。」
盗子「くっ…!」
暗殺美「このバカどもめが。」
くっ…!

 

〔熱血(ねっけつ)〕
魔法士:LEVEL23の魔法。(消費MP18)
学年1クラスぐらいを包み込む火炎魔法。思わず夕日に向かって走りたくなる。
 

 

2-187:利己〔13歳:LEVEL17〕
ややこしい演出で、見事赤錬邪を騙した巫菜子達。
いつの間に打ち合わせしたのかは聞かない約束だ。
巫菜子「どうやら形勢逆転のようだな。言い残す言葉でもあるかよ?」
暗殺美「まぁ聞く気は無いけどもさ。」
赤錬邪「ま、待て!早まるな!俺に手を出すと大変なことになるぞ!?」
暗殺美「安心するさ。この後アンタも負けじと大変なことになるさ。」
赤錬邪「そ、そうだ!こんな時のために街中に爆弾を仕掛けたのだ!俺が合図を」
暗殺美「出せなくなるほどに焼いてしまうがいいさ姫。」
姫「ボンバー!」
赤錬邪「待て待て待て!いや嘘だ!俺が死んでも爆破するよう命令してあれ!」
盗子「「あれ!」って! 願望かよ!助かりたいなら嘘でも言い切れよ!」
巫菜子「フン、それにどーせチンケな小爆弾なんだろ?そんなの脅しに…」
赤錬邪「いや、国が一つ吹き飛ぶ威力だ。まぁこの城だけは結界で無事だがな。」

暗殺美「なら一安心さ。」
巫菜子「まったくだ。」
赤&盗「Σ( ̄□ ̄;)!?」
そこには二人の鬼がいた。

 

2-188:夢世〔13歳:LEVEL17〕
なんと街に爆弾を仕掛けたという卑劣な赤錬邪。
だが暗殺美と巫菜子はもっと鬼だった。
赤錬邪「き…貴様らそれでも正義の味方なのか!?国民はどうなる!?」
暗殺美「「正義」なんかパーティーに加えた覚えはサラサラ無いさ。赤の他人さ。」
巫菜子「私の手はもう汚れた後だ。今さら善人ぶる気はねーよ。」
盗子「善人ぶろうよ!何万人も死んじゃうんだよ!?少しは気ぃ遣おうよ!」
暗殺美(敵のペースに乗ったら負けさ。弱気になったら付け上がられるのさ。)
盗子「(そ、そっか!そだよね!)ふ、フンだ!やれるもんならやってみなよ!」
赤錬邪「ああ、俺だ。爆破作戦を実行しろ。(無線)」
無線「(ガガガッ…) ラジャッ!」
盗子「わー!!」
暗殺美「チッ、バカ盗子め!仕方ないからさっさと片付けて阻止しに向かうさ!」
巫菜子「爆弾の場所は私も今朝聞いた。だが走って間に合う距離じゃねーぞ!?」
暗殺美「そんなのやってみなくちゃわからないさ!」
巫菜子「…だな! オラ姫、じゃあ早ぇとこバッサリやっちまえや!」
盗子「え、でも魔法なんだから「バッサリ」ってのはおかしくない?」
暗殺美「だったら「モッサリ」でいいさ。」
盗子「いや、その方がおかしいから! ねぇ姫?」

姫「スピー…。」
三人「グッスリーーー!!」
切り札は夢の世界へ旅立った。

 

2-189:苦戦〔13歳:LEVEL17〕
姫が寝てしまったため、形勢は再逆転されてしまった。
三人は果敢に攻めたが、やはり物理攻撃でダメージは与えられなかった。

むしろ若干気持ち良さそうだった。
赤錬邪「フハハハ!どうした?もう終わりか?俺は痛くも痒くもないぞ!」
暗殺美「くっ…!なんて奴さ!痛みを感じないのかさこの鈍感男め!」
赤錬邪「な、何を言う!俺は女が髪を切ったら気づくタイプだぞ! …言われたら。」
盗子「鈍感じゃん!!」
巫菜子「こ、こうなったら誰か囮にして、その隙に武器を封じるしか…!」
暗殺美「待つさ!アンタ盗子に恨みでもあんのかさ!?」
盗子「それはアタシが聞きたいよ!なんでアタシに決まってんだよ!」
巫菜子「チッ…!それじゃ私が攻撃を受ける、その隙に全員で武器を…」
暗殺美「それもヤメた方がいいさ。聞いた話じゃ恐らく無事じゃ済まないさ。」
盗子「えっ、何かそういう情報でも流れてたの!?」
暗殺美「旅の途中でイヤな噂を耳にしたさ。奴がとんでもない武器を手にしたとさ。」
盗子「あんなバットが!?いや、確かにとんでもないと言えばとんでもないけども!」
赤錬邪「さぁ、無駄な作戦会議は済んだかな?そろそろお仕置きの時間だ。」
暗殺美「や、ヤメろさ!盗子に何するさ!」
巫菜子「危ないっ!逃げろ盗子ーー!!」
盗子「とかなんとか言いながら押さないでよ!なんでアタシを盾に…わーーん!!」
赤錬邪「オルァアアアアアア!!」
赤錬邪、必殺の一撃。
盗子はフッ飛ばされた。
盗子「うわー!もうダメー!死んだー…って、アレ…? 痛く…ない?」
勇者「雑魚が。俺が突き飛ばしてやったんだ、痛いわけないだろうが。」
盗子「…え? ゆ、勇者!?気づいたんだねっ!平気なの!?」
赤錬邪「大人しく寝ていれば良かったものを…。よほど死にたいと見える。」
勇者「フン、今度は貴様が眠る番だ。 永遠に、な。」
勇者が目を覚ました。

 

2-190:過度〔13歳:LEVEL17〕
目を覚ますと記憶が蘇っていた。やっぱりか。やっぱり結局はショック療法なのか。
だが、なぜだろう?何か大事な…一番肝心なことを忘れてる気がするのは…。
盗子「ゆ、勇者…? その邪悪な感じ…も、もしかして記憶が戻ったの!?」
勇者「ああ。もうバッチリ思い出したぞ、ジンギスカン。」
盗子「嘘だよね!?嘘だって言ってよー!」
赤錬邪「どうやらまだ完璧には思い出してはおらんようだな。ならば今のうちに…!」
勇者「甘いわ!もはや記憶の扉は開いた!あと一歩で…うぉおおおおお!!」
盗子「いっけー勇者ぁ!ぜ~んぶ思い出しちゃえー!!」
赤錬邪「さ、させるかぁーー!!」

ピカァアアアアア!(光)
勇者の体が怪しく光った。
勇者「ウッキィーーー!!」
盗子「ええぇっ!!?」
勇者は思い出しすぎた。

 

2-191:本性〔13歳:LEVEL17〕
勢い余って思い出しすぎ、うっかり降臨してしまったウッキー勇者。
だが以前の猿っぷりとは少し様子が違った。
勇者「…思い出した。やっと、思い出したわ。 「全て」をなぁ。」
盗子「ほ、ホント!?今度こそホントに、完璧に記憶蘇えったんだよね!?」
勇者「ああ。この小僧の魔力にあてられ、長らく封じられていた記憶が、な。」
盗子「へ…?ちょっ、なに言っちゃってんの勇者…? 頭大丈夫?」
暗殺美「それは自分の胸に聞いてみろさ。」
盗子「なんでだよっ!!」
勇者「勇者ぁ?フッ、違うな。 俺の名は「猿魔(エンマ)」、人にあらざる者よ。」
赤錬邪「ど…どういうことだ?これもまた作戦の一部なのか?」
暗殺美「私に聞くなさ。アンタが強く殴りすぎたのが悪いんじゃないかさ?」
巫菜子「あの雰囲気…演技には見えねぇ。一体どうなってやがんだ?」
盗子「ハッ、そうだ!もし冗談なら姫の前では…。 ねぇ姫!起きて!起きてよ!」

姫「ぅん~…あと五光年…。」
盗子「長いよ!!」
「光年」は「距離」の単位だ。

 

2-192:姑息〔13歳:LEVEL17〕
どういうわけか、自分は勇者ではないと言い出した勇者。
物語の大前提を根本から否定する気か。
盗子「ゆ、勇者…どうしちゃったんだろ?いつも変だけど今日のはいつも以上だよ。」
暗殺美「よくあるネタから考えると、勇者の中に「別人格」がいたって線が有力さ。」
盗子「あっ!確か勇者の中には…も、もしかしたら「マオ」の人格とかじゃない!?」
巫菜子「いや、でも「猿魔」とか言ってたし…違うんじゃねぇか?」
姫「たぶん背中にチャックが…」
盗子「無いから!あんな精巧な着ぐるみはあり得ないから!」
姫「いるよ。」
盗子「チャックが!?チャックって誰なの!?」
勇者「よく聞け赤錬邪。全てを思い出した俺に言えることは、ただ一つだ。」
赤錬邪「フン、記憶が蘇った程度で何が変わる?言ってみろ!!」
勇者「いや嘘です、ホントごめんなさい。アナタには勝てない…。」
盗子「弱っ!えっ、弱いの!?そういうキャラだったの!?」
赤錬邪「む…?フハハハ!そうかやっとわかったか!この俺に攻撃は通じグェッ!
勇者のボディ攻撃。
赤錬邪は「く」の字に折れた。
勇者「魔欠戦士とて常に強靭なわけではない。隙さえ作ればホレ、多少は緩む。」
赤錬邪「きっ…貴様…卑怯な…!」
勇者「貴様に教えてやろう。700年の経験の差…というやつをな。 来るがいい!」
赤錬邪「上等だぁああああああ!!」
勇者はボコボコにされた。

 

2-193:深緑〔13歳:LEVEL17〕
偉そうに吠えた割に簡単にボコられたウッキー勇者。
強いのかそれとも弱いのか、というかまずヤル気があるのか。
暗殺美「バカ勇者が。隙を突けって言っときながら正々堂々挑むからさ。」
勇者「フッ。この猿魔、最後の戯れよ。 さぁ食らうがいい!我が必殺の騙しを!」
盗子「宣言しちゃうの!?騙すって言われちゃ誰も騙され…」
勇者「あぁっ!あんな所に空飛ぶ鳥がっ!!」
盗子「しかも作戦が古典的すぎるよ!」
暗殺美「ていうか気づくさ!大抵の鳥は空を飛ぶもんさ!」
赤錬邪「だ~れが騙されるかバカが!それにこんな城内に鳥なんぞいるはずが…」
鳥「クエェ!」
赤錬邪「えぇっ!?ばぶしゅっ!
盗子「ってホントにいたー!!」
勇者「チッ、やっと来おったかグズが。」

麗華「うむ、少々待たせた。」
賢…ぶふっ!

れ、麗華様がいらっしゃいました。
赤錬邪「ぬっ!?そ、その十字傷…貴様もしや、噂の剣士「深緑の疾風」か!?」
麗華「その名は好かん。もっと乙女チックに「フローレンス麗華」とでも呼ぶがいい。」
赤錬邪「乙女だぁ? フン、もういい歳だろうにびばばばばばばばばばばばっ!!
殺人ビンタが火を噴いた。

 

2-194:爆破〔13歳:LEVEL17〕
颯爽と現れた麗華は、赤錬邪の防御力を無視してボッコボコにした。
盗子達は何故か軽く同情した。
赤錬邪「ぶふっ…バカな…!守備最強を誇る俺に、こんな…!」
麗華「理解できぬか?まぁ安心しろ、ワシは体に教え込むのは大の得意だ。」
赤錬邪「ま、まま待て!そこまでだ!これ以上やったら国を爆破するぞ!?」
盗子「はぁ?またその脅しー? フンだ!やれるもんならやってみなよ!」
赤錬邪「ああ、俺だ。爆破を決行しろ。(無線)」
盗子「わー!!」
暗殺美「チッ、懲りろさバカ盗子め!こうなったら…」
勇者「まぁ待つがいい、娘。 多分だがもう大丈夫だ。」
暗殺美「へ…?」
麗華「ああ。 今頃”奴”が、全てを片付けておる頃だ。」
赤錬邪「さぁどうした!?やれっ! お前達は死ぬがそれは名誉の死だと思…」
無線「(ガガッ…)だ、ダメです赤錬邪様! 全滅です!私以外の衛兵はもう…!」
赤錬邪「な、なにぃ!?どういうことだ!? よし、卒業式の言葉風に教えろ!」
無線「えぇっ!?は、 ハイ!その…みんなで失敗、夏の都市爆破(都市爆破!)」
赤錬邪「腹が立つ。」
無線「そ、そんなっ!」
それが兵士の最後の言葉となった。

 

2-195:本体〔13歳:LEVEL17〕
赤錬邪の都市爆破計画は、なにやら失敗したっぽかった。
勇者と麗華は何かを知っているようだ。
赤錬邪「ぐっ…!ならば仕方ない、お前が一人で爆破にあたれ!」
勇者「無理だな。”アレ”の起爆には強い「魔力」が要る。お前も知っていよう?」
赤錬邪「な、なぜ貴様がそのことを!?」
麗華「爆弾があるのは城下の「カイア塔」。今からでは援軍も間に合うまい。」
赤錬邪「き、貴様らもしや…最初から目当ては…!」
無線「べばふっ!
赤錬邪「むっ!?ど、どうしたんだ!?オイ、答えろ!」
姫「特技は「お昼寝」だよ。」
盗子「なんでアンタが答えんだよ!しかも見当違いにも程がある回答だし!」

無線「…覚悟しろ赤錬邪。 目的は果たした、次は貴様の番だ。」

赤錬邪「き、貴様…「覇者」かっ!!?」
盗子「えっ!?い、今の声って…ちょっと変えてるけど、まさか…!」
無線「フッ…。」

~シジャン城下:カイア塔~


勇者「耳だけはいいようだな、盗子。」
勇者Bが現れた。

 

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本編( 9 / 10 )

第二部:外伝(肆)

外伝(肆)

 

外伝:偽りの半年間〔1〕
尋常じゃない激痛に導かれ、俺は目を覚ました。顔面を中心に体中の感覚が無い。
数分後。なんとか起き上がり辺りを見回すと、そこには薄暗い空間が広がっていた。
ここは一体どこだろう? 洞窟?体内?いや、魔界や地獄という線もありえる。

麗華「やっと起きたか、勇者。」

そうか、「鬼が島」か…。
勇者は勘が冴えた。

 

外伝:偽りの半年間〔2〕
目が覚めると、笑顔で俺を見下ろす鬼がいた。どうやら全ては麗華の仕業らしい。
勇者「貴様…そうか、この俺の痛々しい様は貴様のせいか、賢…」
麗華「束の間の再会だったが、お前と会えて嬉しかった。(抜刀しながら)」
勇者「…け、賢二の姿が見えないが、ここはどこなんだ?」
麗華「ワシの隠れ家だ。お前の曲がった性根を鍛え直すため、連れてきたのだ。」
勇者「な、何を言う!俺ほど真っ直ぐな性根の持ち主がいるか!?斬るぞ貴様!」
麗華「間違った方にじゃないか。「魔王」の方面に真っ直ぐじゃないか。」
勇者「それにお前、リーダーである俺が急にいなくなったら賢二達は泣くぞ?」
麗華「安心しろ、ちゃんと代わりは残してきた。奴がうまくやるだろう。」
勇者「代わりだとぉ!?この俺の代わりになるような奴が存在するはず…」
麗華「いや、おる。 この世にあと二体しかおらん貴重なモノマネ猿…「写念獣」だ。」
ウッキー勇者はホントに猿だった。

 

外伝:偽りの半年間〔3〕
麗華の話によると、賢二達のもとには「写念獣」とかいう魔獣を残してきたらしい。
だが、そんなものは信用できん。一刻も早くアイツらの所に戻ってやらねば。
勇者「…よし、名前の件に関してはわかった。秘密にしとこう。だから俺は帰るぞ。」
麗華「待て、性根を叩き直すと言ったろう?修行させてやるから心して残れ。」
勇者「あん?フザけるな!こんな辺鄙な山奥に誰が残るか!」
麗華「安心しろ、「生き残れ」とは言わん。」
勇者「いや、それは言えよ!死んでも仕方がない何かをさせるなよ!」
麗華「心配するな、半年したら帰してやる。”奴”の寿命も多分そのくらいだしな。」
勇者「そんな老猿に任せたのか!? ちゃんと化けれてんだろなオイ…?」
麗華「大丈夫だ。お前も会ったらきっと驚くぞ。」
勇者「ほぉ、そんな完璧に化けるのか。」
麗華「まるで別人のようで。」
勇者「全然ダメじゃねーか!!」
麗華「お前が悪いのだ。あんな混濁状態の奴を、うまく読めるわけがなかろう?」
勇者「お前が悪いんじゃねーか!お前の鉄拳の功績じゃねーか!」
麗華「まぁとにかく、半年は帰さん。死にたくなくば…とりあえず朝飯を狩ってこい。」
勇者「くっ…!」
勇者は蜘蛛の巣に掛かった。

 

外伝:偽りの半年間〔4〕
厳しい修行の日々が始まった。前もそうだったがコイツの修行はハンパない。
準備運動だけで軽くお花畑が見えかけた。半年後まで生きていられるのだろうか。
麗華「よし、まずは防御からだ。とりあえず自分の盾ぐらい使いこなせんとな。」
勇者「はぁ?こんなガラクタをか? 冗談は名…顔だけにしろ。」
麗華「いや、言い直しても十分失礼だぞ。むしろ二度失礼だぞ。」
勇者「とにかく、攻撃を避けるような呪われた盾なんぞに興味は無い。剣を教えろ。」
麗華「以前、我が師が言っていた。その盾には不思議な能力があるとな。」
〔破壊神の盾〕
破壊神の牙から切り出し練成した、「斥力」を持つ強力な盾。
磁石の同極同士を近づけた時の、あんな感じで攻撃を避ける。
持ち主の力が弱いと盾が逃げたように感じる。
勇者「なっ!?じゃあ俺が貧弱だったせいだとでも言うのか!?」
麗華「言うのだ。」
勇者「くっ…! う、うるさい!俺に防御なんか必要無い!攻撃だけを教えろ!」
麗華「防御ができてこそ攻撃に気を注げるのだ。わかったらとっとと準備をしろ。」
勇者「断る!そもそもなぜ「破壊神」の装備が防具なんだ!?普通武器だろ!」
麗華「それはいずれわかる。その力を最大限に引き出した時、恐らく…」
勇者「お、恐らく…?」

麗華「体を壊すぞ。」
勇者「俺がかよ!!」
ある意味武器だった。

 

外伝:偽りの半年間〔5〕
今回の修行は、防御を中心としたものになるらしい。やってられるか。俺は帰るぞ。
だが、悪から逃げるのは「勇者」のポリシーに反する。 となれば、やはり…。
勇者「よし、決めた!貴様を倒して俺は山を降りる!降りるぞー!」
麗華「ふぅ…またそれか。それができぬから今こうしておるのだろう?」
勇者「うるさい!降ろせ!降ろせクソババァ!賢一の分際でナマイ…」
麗華「そうか、おろして欲しいか。ならば望み通り、三枚に下ろしてくれるっ!!」
ガキィイン!(受)
麗華「むっ…!」
勇者「フン、俺をあの頃の俺と思うなよ?先日も油断さえしてなきゃ負けなばぶっ!
麗華「確かに腕は上がったようだ。だが言ったろう?防御は…まだまだだ!」
麗華の攻撃。
勇者は防御しきれなかった。
勇者「くっ、なぜ盾を支配しきれん!?ありったけの力を込めてるってのに…!」
麗華「「腕力」だけではない。魔具とは本来「魔力」で支配するもの、だっ!」
チュィン!
勇者「魔力だぁ?フン!俺は「勇者」だ、自慢じゃないが魔法に自信は無いぞ!」
麗華「「魔法力」と「魔力」は別物だ。魔力とは「魔族」の力の源を、言うのだ!」
ガィイイン!
勇者「なら余計に無いだろ!俺は真人間だ!しかも「勇者」だぞ!」
麗華「フッ、喜べ。貴様のその禍々しさ…魔力のニオイがプンプンするわ!」
ガキィン!
勇者「ふ、フザけるな!貴様…勝手なことをぉーー!!」
勇者は自覚が足りない。

 

外伝:偽りの半年間〔6〕
一日の修行が終わると、当然のように夕飯の支度を押し付けられた。
とっても不本意だが、腹が減ってはなんとやらだ。俺としても夕飯抜きは困る。
というわけで、渋々ながら奴が罠をしかけておいたという狩場へと向かった。
勇者「…ここか。 お?罠が作動してやがる。どうやら獲物を探す手間は省け…」
声「あぁっ、やっと人が!そ、そこの人!お願いだから助けてほしいでやんす!」
勇者「…む?」
勇者は声のする方向を見た。
網に掛かった少年がもがいている。
少年「あ、アッシの名前は「門太(モンタ)」!この恩は必ず返しやす!だから…!」
勇者「チッ、人間かよ。仕方ないな…。」

今夜はコレで我慢するか。
「食べない」という発想は無いのか。

 

外伝:偽りの半年間〔7〕
夕飯用の罠に掛かっていたのは、「門太」と名乗る出っ歯の少年だった。
もちろん他の獲物を探すという線もあったわけだが、面倒なのでコイツに決めた。
麗華「…で、お前はワシにコイツを食えと、そう言うわけだな?」
門太「ひぃいいい!お、お助けぇー!!」
勇者「ああ。前に俺を夕飯にするとかほざいた貴様だ、文句はあるまい?」
麗華「まぁ経験は無いが…不可能ではないと思っている。」
勇者「奇遇だな、俺もだ。」
門太「人として!人としての倫理観的なモノは!?悪魔でやんすかアンタら!?」
勇者「俺らも一飯の危機なんだ。それともなんだ?貴様に代わりが用意できると?」
門太「だ、だったらササッと買い出しに行ってくるでやんすよ!「門番」のアッシが!」
〔門番〕
離れた場所へ一瞬で移動できる「時空の門」を開く特殊な職業。
失敗すると、女湯とかそういう怖ろしい場所に飛び出る。
開けた扉はその先からしか閉じることができない。
麗華「…胡散臭いな。」
門太「そ、そんなっ!」
勇者「ああ、臭いよ。」
門太「いや、そう略されるとちょっと!」
麗華「よし、まぁいいだろう。では今日からお前はワシらの食事番だ。」
門太「「から」!?「今日限り」って話じゃなく!?」
勇者「今日限り?それは貴様の命の話か?」
門太「い、いえいえ!今日からヨロシクでやんす!(逃げよう!絶対逃げよう!)」
勇者「あ、そうそう…。」

勇&麗「わかってるよな?(抜刀しながら)」
門太は素直に帰ってきた。

 

外伝:偽りの半年間〔8〕
修行が始まりそれなりに月日は流れ、あと少しで春…そんな季節になっていた。

キン!キン!カキィン! キィン!ガキィイイン…!

麗華「…ふむ。魔力の制御はほぼ完璧か。相変わらずセンスだけはいいようだな。」
勇者「フッ、当然だ。わかったら今度は攻撃を教え…ってセンス「だけ」とは何だ!」
麗華「さぁ仕上げだ。 この岩を…見事なんとかしてみろ!」
麗華はヒモを引いた。
勇者めがけて巨大な岩が降ってきた。
勇者「フンッ、ナメるな!魔力を極めた今の俺なら、どんな攻撃もこの盾で…」
麗華「いや、剣で。」
勇者「剣でっ!?今日までの修行は一体…!?」
麗華「ホレ、早く抜け。ボヤボヤしとるとプチッと潰れて紙状になるぞ?」
勇者「くっ、ちくしょうがぁーー!!」
勇者は久々に剣を抜いた。
だがその刀身には見覚えが無かった。
勇者「なっ!?な、なんだこの細身の剣は…!?俺の大剣はどこへ!?」
麗華「それがそうさ。魔力の違いで姿も変わる…それがその剣、「魔神の剣」だ。」

勇者「ま、魔sぐぇっ!!
勇者はプチッと潰れた。

 

外伝:偽りの半年間〔9〕
久々に抜いたゴップリンの魔剣は、見る影も無く細…というか「魔神の剣」らしい。
勇者「うぐぉ…!き、貴様…なぜ貴様がこの剣のことを…!?」
麗華「先日、そのサヤと同じ模様を古文書で見たのだ。やはり本物だったか。」
〔魔神の剣〕
魔神の角から切り出し練成した、特殊な魔剣。
持ち主の魔力により強度や形状、能力が変化する。
勇者「バカな!こんな剣が魔神の剣だとぉ!?そんなっ…!」
麗華「以前のお前は魔力が拡散していた。ゆえに無駄にデカく、脆かったのだ。」
勇者「そんな本格的に呪われてたなんて!」
麗華「そっちか。お前の驚きはそっちに向いたか。」
勇者「…まぁ、強いのなら別にいっか。 よし、じゃあ今から試し斬り…」
声「師匠ー!こんな所にいたのかー!いい加減捜し疲れたんだー!」
勇者「むっ!その声は…土男流か!?」
土男流とメカ盗子が現れた。
土男流「言われた通り、五錬邪のこと調べてきたぜ!それが大変なんだよー!」
勇者「まさかホントに調べてたとは。」
土男流「えぇっ!? ひ、酷いぜ師匠! でもそんなアンタがたまらないんだ!」
麗華「勇者よ、誰なんだその娘と…そこの珍妙なロボットは?」
メカ「ロボチガウ!」
土男流「アンタこそ誰なんだぁ?人の師匠に馴れ馴れしくしないでほしいぜー!」
麗華「ワシはコイツの師匠だ。煮ようが食おうがワシのご機嫌次第だ。」
勇者「機嫌で殺すなよ!そんな不安定なモノで俺を縛るなよ!」
土男流「し、師匠の師匠!?じゃあ「大師匠」ってことなのか!?スゴいぜー!」
「大々師匠」はもっとスゴい。(違った意味で)

 

外伝:偽りの半年間〔10〕
春…。 13歳になった頃から俺は、「覇者」という名でしばらく活動していた。
土男流の調べによると、なにやら五錬邪は大規模な都市爆破を企てているらしい。
そのため俺は、仕方なく正体を隠して五錬邪に潜入することになったのである。
勇者「まったく…なんで「勇者」である俺が、そんなコソコソ動かねばならんのだか。」
麗華「仕方なかろう?お前が普通に乗り込んだら、奴は確実に起爆させるぞ。」
土男流「そうだぜ!どう考えても師匠は敵の逆鱗に触れると思うんだ!」
勇者「フッ、特技だ。」
土男流「なんで得意気なのかわからないよー!」
麗華「聞くにその爆弾は恐らく「爆々弾々」…。大都市となれば被害は甚大だ。」
〔爆々弾々(バクバクダンダン)〕
「人神大戦」において、神を倒す秘密兵器として開発された強力な爆弾。
だが秘密にされ過ぎて日の目を見なかった。
土男流「爆弾の場所は赤錬邪しか知らないみたいなんだ!用心深い奴なんだよ!」
勇者「赤錬邪しか知らないことをお前ごときが知ってる時点でどうかと思うがな。」
土男流「酷いんだー!!」
麗華「まぁとにかく行ってこい。見事取り入って場所を聞き出し、解除してくるのだ。」
勇者「やれやれ…仕方ないか。 よし、行くぞ門太!門を開けろ!」
門太「ハイでやんす!」
ガチャッ(開)

スイカ「…ん?」
一同「うわぁーー!!」
門太は変態を召喚した。

 

外伝:偽りの半年間〔11〕
門太の開門はしばしば失敗するのだが、今回の失敗は手痛いものだった。
これから出陣という大事な時に、こんな戦闘狂の相手しているわけにはいかない。
スイカ「ほぉ、また会ったな小僧。 さぁ構えろ!それが我らが宿命!」
勇者「行くぞ門太!無視して突っ切る!!」
スイカ「フン、させるか!今日という今日は決着をつけようぞ!」
勇者「あぁっ!あんな所に…!」
スイカ「甘いわ!このワシにそんな小癪な作戦…」

勇者「何も無い!!」
スイカ「無いのかっ!?」
勇者と門太は門へと消えた。
門太は慌てて門を閉じた。
スイカ「なっ!? くっ、ワシとしたことがなんたる不覚…!」
麗華「お久しぶりです師匠。相変わらずのその性格…なんとも救いがたい。」
土男流「えぇっ!?こ、このスイカの人が大々師匠!?とってもショックなんだー!」
スイカ「…そうか、魔力を制す力を付けたか。さすがは奴の子、末恐ろしい小僧よ。」
麗華「まったくです。破壊神に魔神…神器を二つも纏い、平気な顔をしているとは。」
スイカ「む? ガッハッハ!まだまだ甘いな賢…」
ジャキン!(抜刀)
麗華「いくら師匠と言えど、それ以上言ったら食べやすい大きさにカットする!」
スイカ「…三つだ、二つではない。」
麗華「えっ…?」
スイカ「いずれわかろう。あの「兜」が、小僧にとってどれ程の意味を成すかをな。」
勇者は呪われすぎだった。

 

外伝:偽りの半年間〔12〕
スイカ野郎をかわして門に飛び込むと、そこには見知らぬ丘が広がっていた。
鉄仮面「ここは…どこだ?初めて来る場所だが、何か…何かがある気がする。」
門太「ん~、どこでやんすかねぇ?失敗で繋がった場所はアッシにもサッパリで。」
鉄仮面「仕方ない、適当に誰か捕まえて締め上げるとするか。」
門太「いや、普通に場所聞くだけなら締め上げる必要性は…。」
声「…のは…じゃな…墓に向かってだなぁ…。」
鉄仮面「む?この声は親父と…なっ!?アイツはまさか、黒錬邪か!?」
勇者は気配を殺して近づいた。
黒錬邪「息子にこの地のことは話したのか?噂じゃ今はローゲ国にいるようだが。」
父「一応な。まぁ記憶が戻れば来るだろう。ローゲからなら多分、夏前には…」
鉄仮面「そうか、アイツが来るのは夏か。」
黒錬邪「!?」
父「なっ、その声は…!なぜお前が…!?」
鉄仮面「フッ。 久しぶりだな、親父。」
父「ゆ、勇者!?お前、いつから…!」
鉄仮面「話せば長い、説明は省くぞ。」

父「いつからそんな顔に!?」
黒錬邪「似てないな。」
鉄仮面「仮面だよ!!」
勇者はキッチリ説明した。

 

外伝:偽りの半年間〔13〕
なぜか一緒にいた親父と黒錬邪。面倒だったが一応いきさつを説明してやった。
父「そうか、五錬邪の目を欺くために…ん?だが黒錬邪は良かったのか?」
鉄仮面「さぁ構えろ黒錬邪!偶然居合わせた自分の罪を呪うがいい!」
父「な、なんという強引な責任転嫁なんだ!親の顔が見てみたいぞ!」
黒錬邪「大丈夫、もう見飽きた。」
父「安心しろ勇者、コイツは大丈夫だ。悪に走ったのは他の…弱い連中だけさ。」
黒錬邪「いや、違うぞ凱空。一人だけ…”奴”には気をつけねばならん。」
父「む?”奴”? 誰なんだそれは?」

黒錬邪「俺、だ。」
黒錬邪の攻撃。
親父の胸を貫いた。
鉄仮面「なっ!? 親父ぃーー!!」
父「ぐふっ! だ、大丈夫だ勇者!心配…するな…!」
鉄仮面「いや、してないがな。」
父「なぜにっ!?」
黒錬邪「ずっと隙をうかがっていた。やはり息子の前では気が緩んだな、凱空。」
鉄仮面「昔の友も今は敵…か。やはり信じられるのは自分…と姫ちゃんだけだな。」
黒錬邪「お前達は、いずれ必ず障害となる。今ここで死んでもらおうか。」
鉄仮面「フン、片方は手負いとはいえ2対1…貴様に勝機があるとは思えんな!」

父「…ん?(漫画を読みながら)」
1対1のバトルが始まった。

 

外伝:偽りの半年間〔14〕
凄まじく強いと聞いていた黒錬邪だったが、思ったよりも動きが悪かった。なぜだ?
鉄仮面「フン、貴様ホントに強いのか?さっきから攻撃にためらいが見られるぞ。」
父「だ、ダメだ!油断は禁物だぞ!(漫画を読みながら)」
鉄仮面「テメェこそな!」
父「あぁー!だから言ったじゃないかペドソン!」
鉄仮面「しかも漫画の話かよ!!」
黒錬邪「調子に乗るな。俺が本気を出せ…う゛っ、うぉおお…!」
鉄仮面「む?なんだ貴様、腹でも痛いのか?」
黒錬邪「た、倒せ小僧…俺が…俺であるウチに…早く!」
鉄仮面「なにっ、どういう意味だ?自分の中に別なる自分がいるとでも…?」
黒錬邪「ぐっ…!チッ、まだ自我が残って…!」
鉄仮面「なんだかわからんが、とにかくチャンス! 食らえ!!」
勇者の攻撃。

親父に300のダメージ。
父「なぜにっ!?
鉄仮面「目障りだった!!」
黒錬邪「…待たせたな、今度こそ死んでもらおう。 恨むなら父を恨め。」
鉄仮面「フッ、もはや恨みつくしたさ。余った分は貴様に注いでやろう。 死ねぇ!!」
勇者は剣を構えた。
黒錬邪は槍を構えた。

親父は二冊目を取り出した。

 

外伝:偽りの半年間〔15〕
その後、あんなことやこんなことが適当にあってとにかく黒錬邪を倒すことができた。
黒錬邪を警察士に引き渡した俺達は、親父を一応病院にブチ込み、丘を発った。
そして着いたのは、五錬邪の本拠地があるという「シジャン王国」。目的の地だ。
なんとかうまいこと連中の仲間になって、爆弾の場所を聞き出さねばならない。
だが、俺も「勇者」だ。できるだけ無駄な血は流さず、平和的に解決したいものだ。
勇者は「拷問大全集」を取り出した。

 

第五章へ

本編( 10 / 10 )

第二部:第五章

第五章

 

2-196:気分〔13歳:LEVEL25〕
面倒なことをした甲斐あって、無事に都市爆破を阻止することができた俺。
魔力を伝導させる起爆装置も解除したし、もう安心だろう。 役目は果たした。
~シジャン城下:カイア塔~
無線「えっ?えっ?なに?なんで!?なんで勇者がそっちにもいんの!?」
勇者「わめくな盗子、息がニオう。」
無線「無線だよ!どう頑張っても電波には乗らないよ!てゆーかクサくないよっ!」
門太「で、どうしやす?行くんなら門を開きやすが…?」
勇者「いや、いい。今日の俺はもう達成感でいっぱいだ、テンションが上がらん。」
無線「ちょっ、来てよ!もうコレ最終決戦だよ!?「勇者」いなくてどうすんのさ!」
勇者「断る。お前の声を聞いたら余計に萎えた。」

無線「姫だよ勇者君。おげんこ?」
勇者「おげんこーー!!」
盗子は切なくなった。

 

2-197:事情〔13歳:LEVEL25〕
面倒なので赤錬邪は放っとこうと思っていたのだが、姫ちゃんがいるなら話は別だ。
勇者「よし、早速向かうぞ門太! だが門はいい、失敗すると逆に時間食うしな。」
門太「でやんすね。距離はチョイとありやすが、まぁ走りゃなんとかなるっしょ。」
声「えっ、なぜだ…?なぜブラザー勇者がここに!?」
勇者「誰だ後ろから…? 俺は背後に立たれることより盗子が大嫌いだ!」
無線「なんでいつの間にか嫌いな対象がアタシになってんだよ!」
博打「その邪悪な感じ…もしかして記憶が戻ったのかい?」
博打が現れた。
勇者「フン。なんだインチキ賭博師か。悪いが貴様なんぞに構ってる暇は無いぞ。」
博打「あ?オイオイ、冷たいなぁブラザー。 だが、そう調子に乗り過ぎると…!」
無線「えっ、博打が!?き、気をつけて勇者!そいつ裏切…」

ドスッ!(刺)


博打「うぎゃあああああ!!
勇者は事情は知らない。

 

2-198:選択〔13歳:LEVEL25〕
姫ちゃんの元へと向かおうとしたら、背後から現れた博打。とりあえず刺してみた。
無線「な、なんで!?もしかして勇者、博打が裏切り者だって知ってたの!?」
勇者「なんかムカついた。」
無線「そんな理由で!?」
勇者「博打が裏切り者だと? フン、バカなことを。そんなわけがあるか。」
無線「ほ、ホントなんだってば!ホントに博打は…!」
勇者「そもそも仲間じゃない。」
無線「それ以前の問題だったの!?」
博打「ぐっ…フッ、相変わらず手厳しいぜブラザー。やっぱそうでなくちゃな。」
勇者「で?俺に楯突く存在になったそうだが、それは事実なのか博打?」
博打「ああ。”上”からの指令でね、悪いがアンタには死んでもらうぜ?」
勇者「そうか、お前も五錬邪に…。 まさか俺の同期から二人も出るとはな。」
博打「悪いがちょっと急いでる。 爆弾を起動させたい。どいてくれないか?」
勇者「級友のよしみだ、最後に一度だけチャンスをやろう。よく考えて選ぶがいい。」
博打「へ?チャンス…?」

勇者「苦しんで死ぬか、楽に死ぬかだ。」
「勇者」のセリフじゃない。

 

2-199:一発〔13歳:LEVEL25〕
なにやら博打が邪魔したいようなので、始末することにした。邪魔者と盗子は消す。
勇者「「人生」というギャンブル…必ず最期には「死」という敗北があることを知れ。」
博打「おっと、だったら俺の土俵でやらせてもらうぜ? 「黒幕危機二十発」!」
〔黒幕危機二十発〕
21個の穴が開いたタルに術者が入り、敵はその穴に剣を刺す。
当たり(20個)に入れば術者はダメージを受けるが、外れれば敵は死ぬ。
どちらかが死ぬ、または術者が気絶するまで術の効果は持続する。
博打「さぁどうだいブラザー?今の俺は他の一切の攻撃を受け付けないぜ!?」

勇者「ごきげんよう。」
博打「えーーっ!?」
勇者は立ち去った。

 

2-200:飛躍〔13歳:LEVEL25〕
博打なんぞのために大事な命と貴重な時間を割くのはご免だ。放っておこう。
タッタッタッタ…!(走)
門太「でも良かったでやんすか?あの人、術が解けたら爆弾を爆破するんじゃ?」
勇者「安心しろ、人間そう簡単には気絶しない。後で始末すればいいさ。 急ぐぞ。」
門太「そんなに早く噂の姫ぎみに会いたいと?どんな人か気になるでやんすね~。」
勇者「フッ、一瞬で恋に落ちるぞ。」
門太「あ~…でもアッシは、前に聞いた盗子って人も見てみたいでやんすよ。」
勇者「地獄に堕ちるぞ。」
門太「えっ、見ただけで!?」
勇者「まず第一に、鼓膜が破れる。」
門太「見ただけなのに!?」
勇者「そして味覚・嗅覚・触覚も失う。」
門太「見ただけなのに!?」
勇者「でもなぜか視覚は無事。」
門太「見てるのに!?」
勇者「そして最期には、体中の穴という穴から何かを噴き出して死ぬぞ。」
門太「しかもそんなおぞましい死に様に!?」
勇者「さらに家族三代呪われる。」
門太「そ、そんな怖ろしい人がいるんでやすか!?行って平気なんすか!?」
勇者「ああ。勝機は一瞬だ、姿を見せた瞬間に仕留めろ!」
門太「敵!?勢い余っていつの間にか敵に!?」
勇者「まぁ、そのくらいヤバいってことだ。わかったら気を引き締めていけよ。」
門太「わ、わかりやした!気をつけやす!」

ふぅ~、スッキリした。
盗子は訴えれば勝てる。

 

2-201:溺死〔13歳:LEVEL25〕
勇者がカイア塔を発った頃、シジャン城では戦いが再開され…

気づけば「拷問」になっていた。
赤錬邪「ぐぼっ…ばばぼぶ…ぶはっ!た、助けっ…!ごぼぼぼっ…!(溺)」
麗華「おや?「鉄壁の防御」が「洗面台」ごときに負けるとは初耳だなぁ?」
赤錬邪「ごばばばばばばば…!!(溺)」
盗子(プルプルプルプル…!(震))
暗殺美「あ、あの勇者が師匠と呼ぶ理由がわかった気がするさ…。」
猿魔「俺が捕まった時もこんなだった…。」
巫菜子「子供の私が言うのもなんだけど…子供には見せたくない光景だよな…。」
麗華「ふぅ…仕方なかろう?腐っても防御の戦士、剣では楽には死なせてやれん。」
盗子「そう考えて出た結論がコレなの!?もっとムゴく思えるのはアタシだけ!?」
赤錬邪「ぶはっ! ハァ、ハァ…!き、貴様…殺びべぶぶぶ!(溺)」
麗華「ほぉ、さすがにタフな奴だな。この状況でもまだ命を諦めんとは。」
赤錬邪「ごぼじでぐべべべべ…!!
聞こえてないだけだった。

 

2-202:限界〔13歳:LEVEL25〕
麗華の非道な拷問に、もはや限界といった感じの赤錬邪。
麗華も飽きてきたのでそろそろ決着となりそうだ。
麗華「最後のチャンスだ。 なぜ都市爆破なんだ?神探しはどうした?」
赤錬邪「…フン、それも神を探すためだ。地図によると封印の地はこの辺りでな。」
盗子「じゃあ見つけやすくするために更地に!?国民ごと!? アンタ最低だよ!」
巫菜子「まったくだ、この外道め!」
猿魔「この極悪人め!」
暗殺美「この盗子め!」
盗子「ちょっと待って!?なんでアタシまで「悪口」の部類に入ってんの!?」
麗華「さて、では行こうか赤錬邪。警察士に引き渡してやる、獄中で悔いるがいい。」
赤錬邪「フッ…まさか俺までが、「リミッター解除」することになるとはなぁ…。」
麗華「リミッターだと?バカめ、並みの人間に外せるほど便利なモノじゃないわ。」
暗殺美「そうさ!そんな簡単に誰もが限界超えてたら物語が破綻するさ!」
赤錬邪「黙れ小娘がぁー!ぬぉおおおおお!!」
赤錬邪は力を解放した。
麗華「なっ…!」
赤錬邪「ハッハッハ!どうだ!? …ん?なんだ、武器の形が…?」
麗華「驚いたな…まさかホントにできるとは。それにその武器は、「鬼神の金棒」!」
赤錬邪「なにっ、コレが…!? フハハハハ!そうか、やはり神具だったのか!」
盗子「や、ヤバくない!?余裕のはずが知らぬ間にピンチじゃない!?」
赤錬邪「さぁ仕切りなおしだ女。俺と共に、地獄に落ちてもらおうか。」
麗華「お前達…目を閉じて、しばらく下がっていなさい。」
盗子「え…?」

麗華「夕飯が食えなくなるぞ。」
麗華は何をする気なのか。

 

2-203:崩壊〔13歳:LEVEL25〕
爆弾のあったカイア塔から猛ダッシュすること数十分。やっと城が見えてきた。
まぁあの麗華がいるんだ、行ったところで赤錬邪はもう人の形はしてはいまいがな。
門太「ハァ、ハァ…さ、先に行ってほしいでやんす兄貴…アッシはもう限界で…。」
勇者「あん?泣き言を言うな!走れ! ホラ、もうそこに見え…むっ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…(地響)
門太「な、なんか揺れてやせんか?それにこの音…一体何が…?」
勇者「盗子…そうか、昼食を抜いたのか。」
門太「腹の音!?呪いだけじゃなくて身体的にも化け物なんでやんすか!?」
勇者「ああ、奴は化け物だ。クシャミひとつでこんな城など吹き飛ぶぞ。」
門太「えっ!?いやいや、いくらなんでもそんな…」

ズゴォオオオオオオン!!
(崩壊)
二人「えぇーーーっ!!?」
シジャン城は崩れ落ちた。
門太「あ…あああ兄貴が噂なんかするからっ…!」
勇者(れ、麗華…やりすぎだぞ!?)

~その頃、崩れ落ちた城の地下では…~

盗子「ゲホッ、ゲホッ! いったーい!もう死ぬかと思ったよぉー!」
巫菜子「ここは…地下か?最上階から一気に地下…なんてモロい造りなんだよ。」
暗殺美(しっ!静かにするさアホどもが! 奴に気づかれるさ!)

赤錬邪「さぁ出て来い女。このぐらいではまだ、死んではおらんだろう?」
麗華〔物陰〕「くっ…!」
意外にも劣勢だった。

 

2-204:捨駒〔13歳:LEVEL25〕
口ほどにもなく麗華は負けたようで、状況は大ピンチになっていた。
残された盗子達は、物陰に隠れながら逃げ出すチャンスをうかがっていた。

戦えよ。
赤錬邪「ゴルァ!出てこいと言っとるだろうが貴様らー!ぬぉおおおおお!!」
ドガァーン!ボォゴーン!(破壊)
盗子〔物陰〕(や、ヤバいよ!見つかるのはもう時間の問題だよ!どうしよー!?)
猿魔〔物陰〕(チッ、仕方ない…。俺が麗華の姿で時間を稼ぐ、その隙に逃げろ。)
巫菜子〔物陰〕(無茶言うなよエテ公、オメェもうフラフラじゃねーか。)
暗殺美〔物陰〕(そうさ。アンタがでしゃばったら盗子の見せ場が無くなるさ。)
盗子〔物陰〕「やんないよアタシ!?アタシだって死にたく…あ゛。」
赤錬邪「そこかぁーーー!!」
バイバイ盗子。
盗子「うわぁーん!助けて勇者ー!!」
勇者「イヤだよめんどくさい。」
盗子「イヤってなんだよ!それが「勇者」の言うこと…って、勇者!?」
赤錬邪「!!?」
勇者「フッ、助けに来たぞ。」
盗子「勇者…☆」
勇者「姫ちゃんを。」
盗子「あっそう!!」
赤錬邪「き、貴様…いつの間に!?」
勇者「調子に乗るのもそこまでだ赤錬邪。 ここは危ない、下がってろ盗子。」
盗子「勇者…☆」

勇者「地平の果てまで。」
盗子「そんなに!?」
バイバイ盗子。

 

2-205:乙女〔13歳:LEVEL25〕
嫌な予感がしたので急いで地下に降りてみると、案の定ピンチな状態になっていた。
やれやれ、今日はもう役目を終えたと思っていたんだが…仕方ない、やってやるか。
勇者「そのオーラ…そうか、貴様もリミッターとやらを…。」
赤錬邪「まさか裏切り者だったとはなぁ覇者…いや、勇者よ。 ブッ殺…」
勇者「ところで姫ちゃんはどこだ?」
赤錬邪「聞けよ!決戦前の決めゼリフをスルーするなよ!」
勇者「フゥ…まぁいいだろう。最期のセリフだ、ド派手にキメるがいい。」
赤錬邪「フン、生意気な小僧だ。だが強がっていられるのも今のうちよぉ!ブッ殺」
勇者「そういや麗華も見えんが?」
赤錬邪「だから聞けって!!」
盗子「そ、それが変なんだよ!なんか急に目を擦りながらフラフラしだして…。」
門太「ウゲッ、兄貴!そういや今って…!」
勇者「ハッ!この時間…そうかっ!」

麗華〔物陰〕「スゥー…。スゥー…。」

そうか、「お昼寝の時間」か…。
麗華は意外な一面を見せた。

 

2-206:武器〔13歳:LEVEL25〕
麗華には昼寝をする習性があったのをスッカリ忘れていた。やはり俺の出番か…。
勇者「不肖の師匠が迷惑をかけた詫びだ、この俺が直々に相手してやろう。」
赤錬邪「全然詫びに聞こえないその横柄な態度…ますます気に食わん!潰す!」
盗子「気をつけて勇者!そいつ、ナントカ戦士っていって剣の攻撃きかないよ!」
勇者「俺はお前の言うことをきかない。」
盗子「きけよっ!!」
勇者「安心しろ盗子、俺にはとっておきの武器がある。こんな奴は一撃だ。」
赤錬邪「思い上がるなよ小僧?今の俺の肉体強度は、鋼鉄さえも上回る!」
勇者「いい度胸だ!ならば食らうがいい!!」
勇者はバズーカを構えた。

 

2-207:最恐〔13歳:LEVEL25〕
面倒だからバズーカで仕留めようと思ったのだが、コイツ…かなりタフだ。
赤錬邪「ぐははは!どうした小僧?ちっとも効かんぞそんな攻撃は!」
勇者「チッ、バズーカを体で受け止めるとは…。どうやら火力が足りんようだな。」
盗子「いや、火力とかの問題じゃないよ!やっぱ勇者たるもの剣で勝負しようよ!」
赤錬邪「俺に効くのは魔法だけだ。ま、「勇者」の初級魔法ごときじゃ無駄だがな。」
勇者「いいだろう。貴様のその自信は、自惚れだということを思い知らせてやる。」
赤錬邪「ぬ…?」
勇者「かつて、村一つを一瞬で滅ぼした最恐の魔獣がいた…。」
盗子「なっ!そ、それってまさか…!」

勇者「さぁ来い! いでよ、チョメ太郎ーーー!!」
勇者はチョメ太郎を呼んだ。

だが何も起こらなかった。

 

2-208:抜刀〔13歳:LEVEL25〕
ポーズまで決めて呼んだのに、チョメ太郎は来なかった。 あ、あの野郎め…!
勇者「…さ、さぁ食らうがいい!我が必殺魔法、「チョメ・ターロン」を!」
盗子「無理があるよ!思っきし魔獣って言っちゃってたし!」
声「ポピュッパー!!」
盗子「って、キターー!?」
勇者「ほ、ホラ見ろ! よーし、我が武器庫であるチョメ太郎が来たからには…」
暗殺美「なんちゃってさ。(声帯模写)」
勇者「ブッ殺す!!」
巫菜子「やれやれ…。剣が効かねぇ敵の前には、「勇者」がこれほど無力とはなぁ。」
勇者「あん?ナメるな腹黒。俺が剣を抜かんのは弱いからじゃない。むしろ逆だ。」
赤錬邪「なにぃ…?」
勇者「技の威力が強すぎてな。盗子の身の安全を保証しきれん。」
盗子「えっ、なんでアタシ限定なの!?」
勇者「冗談だ、お前の安全なんかどうでもいい。」
盗子「そっちが冗談なの!?」
勇者「だが、まぁいいだろう。これしか道が無いというのなら、見せてやるよ。」
赤錬邪「ふぅ…やっとまともな戦闘になるわけか。待たされたものだ。」
勇者「さぁ見るがいい赤錬邪…我が魔剣からほとばしる、暗黒の波動を!!」
勇者は自分の立場を忘れている。

 

2-209:必殺〔13歳:LEVEL25〕
もはや茶番もこれまで。血の惨劇の果てに、コイツが真の赤錬邪になる時がきた。
盗子「えっ、なにその剣!?ゴップリンの魔剣は!?呪いはどうしたの!?」
勇者「これはあの剣の本来の姿、「魔神の剣」だ。俺の魔力をその力の源とする。」
暗殺美「魔神に魔力…似合い過ぎてて笑えもしないさ。」
盗子「わーん!勇者がどんどん「魔王」に近づいてくよー!」
巫菜子「いや、アイツの中には半分…魔王通り越して「魔神」目指してねぇか?」
盗子「いやぁーん!帰ってきて勇者ぁー!!」
勇者「よし行くぞ赤錬邪!必殺…」
声「ポピュッパー!」
勇者「そう、ポピュッ…え゛っ!?」

チュドーーーン!!(爆発)
ズガガガガガン!!(連射)
ズドドドォーーン!!(大爆発)
赤錬邪「ぬぉあああああ!!?

チョメ「ポピュッパプー!!」
チョメ太郎が現れた。

チョメ太郎の攻撃。
赤錬邪はフッ飛ばされた。
勇者は見せ場を奪われた。

 

2-210:発掘〔13歳:LEVEL25〕
来ないと思ったら、タイミングをズラして現れたチョメ太郎。そして早速大暴れ…。
盗子「ちょ、チョメ太郎!?結局来ちゃったのアンタ!?」
チョメ「チュペパプ!」
暗殺美「挨拶よりもまず攻撃…。ペットは飼い主に似るとはよく言ったもんさ。」
勇者「こ、この野郎…!呼んでも来ないどころか俺の見せ場を奪うとは…!」
巫菜子「ま、まぁいいじゃねぇか。赤錬邪も消し飛んだみてーだし…ん?」
巫菜子は瓦礫の中に何かを見つけた。
盗子「な、何コレ…棺?今の爆撃で掘り返されたんだろうけど…。」
勇者「開けてみよう。宝箱があったら迷わず開ける…それが「勇者」の使命だ。」
盗子「それって使命だったの!?」
猿魔「ま、待て!古代語で何か書いてある! なになに…ジャ…シ…「邪神」!?」
盗子「えぇっ!邪神!?あの邪神!?」
巫菜子「封印の地がここら辺とは聞いてたが…まさか城の地下とは…。」
勇者「こ、この中に、伝説の邪神が…!!」

開ける前に言えよ。
言う前に開けるなよ。

 

2-211:中身〔13歳:LEVEL25〕
古代語で「邪神」と書かれていたらしい棺を、ウッカリ開けてしまった俺。
だがまぁ、気にすまい。どうせどう頑張ってもこの手の輩は復活するのが世の常だ。
復活させちゃいけない奴を敢えて復活させ、倒す。そして伝説となるのが「勇者」だ。
ゴゴゴゴゴゴ…!(轟)
猿魔「な、なんてことを…!」
盗子「どどどどどうしよ!? ほ、本物…なのかなぁ?」
勇者「いや、わからんぞ!いつものパターンだと超高確率で中身は姫ちゃんだ!」
ズズズズズ…!(出)
巫菜子「うわっ、なんか手が出てきたぞ!姫の手にしちゃ青白すぎる!」
暗殺美「・・・・・・・・。」

ガコン。(閉)
暗殺美は棺を閉じた。

 

2-212:復活〔13歳:LEVEL25〕
棺を閉めたら、禍々しい気配も消えた。どうやら再封印は簡単にできたらしい。
だが、本当にこのままでいいのだろうか。半端な封印は、いずれ脅威になりかねん。
勇者「みんな聞け。やはり邪神は復活させよう。 そして討つ!それがベストだ。」
盗子「バッ…何言ってんの!?なんでわざわざそんな危険なマネを…!」
猿魔「…いや、その通りかもしれん。奴が「完全体」となる前ならば、あるいは…。」
巫菜子「完全体…?どういうことだよ? じゃあ封印解いた直後はまだ不完全体?」
猿魔「封印術の多くは、完全復活には血が必要だ。穢れ無き…「処女の血」がな。」
盗子「や、ヤバいじゃん!アタシらみんなターゲットじゃん!穢れ無き乙女達だし!」
勇者「黙れ汚物。誰が貴様なんぞの血をすするか。」
盗子「アンタこそ黙れよバカー!アタシだって蚊にぐらい刺されるもん!」
暗殺美「蚊…。あまりの次元の低さに不覚にも泣けてきたさ。」
猿魔「だが早まるな勇者。援護を呼んだ後でも遅くは無いと思うぞ。」
勇者「…ま、確かにそうかもな。さっき感じたオーラ…このメンツじゃ苦戦は必至だ。」

ゴゴゴゴゴゴ…!(轟)

勇者「ッ!!? な、なんだこの邪悪なオーラは!?」
盗子「えっ!で、でもまだ棺は開けてないよね!?」
声「貴様か…?」

麗華「これは貴様の仕業か!?勇者ぁーー!!」
鬼の形相で麗華が現れた。

その額には「内」と書かれている。

 

2-213:誤解〔13歳:LEVEL25〕
思ったより早く、麗華は目を覚ました。そして、思ったより早くイタズラに気づかれた。
いつかやってみたいと思っていたのだが、予想以上の反応に戸惑いを隠せない。
勇者「よ、よぉ。やっと起きたか麗華よ。きょ、今日も相変わらずお美しいぞ。」
麗華「…その言葉で疑いは確信に変わった。貴様の死因はその「お茶目心」だ。」
盗子「う、内!?中の「人」が足りなくない!?中途半端だと逆に恥ずかしいよ!」
勇者「フッ、「人でなし」だけにな。」
盗子「うまいこと言ってる場合じゃなくない!?」
麗華「覚悟しろ。 顔は乙女の命…それを穢した者に、贖罪の機会は無い!」
勇者「も、門太!隠れてないで出てこい!そして門を開けろ! 逃げるぞ!!」
門太〔物陰〕「お…お呼びになった門太は、現在使われておりやせん…。」
勇者「ブッ殺すぞ!? とりあえず出て来い!そして門を開きやがれ!」
門太「や、で、でも…。」
勇者「黙って開け!」
門太「そんな…。」
勇者「いいから開け!」
姫「いいの?」
勇者「いいよ!」
姫「開けたよ。」
勇者「開けたか!」
邪神「出てきたぞ。」
勇者「出てきたかーーーっ!!」
姫は棺を開けた。

邪神が復活した。

 

2-214:瞬殺〔13歳:LEVEL25〕
どこにいたのか、突然出てきた姫ちゃんが、勘違いして邪神の棺を開けてしまった。
復活した邪神は、なんと俺達と同じ…いや、むしろ小さいくらいの少女でビックリ。
こんな奴がホントに邪神なのだろうか。もしかしたら、何かの間違いかもしれない。
勇者「貴様…ホントに貴様が邪神か?どう見たってガキじゃないか。」
暗殺美「なんか強そうじゃなくて拍子抜けさ。それに女で「バキ」ってのも変さ。」
盗子「で、でもわかんないじゃん!もし本物だったらえらいことだよ!?」
門太「そうっすよ兄貴!とりあえず逃げやしょう!門を開くんで…」
邪神「・・・・・・・・。」

ピィッ!(光)
邪神の扇が激しく光った。

門太がいた場所が消し飛んだ。
勇者「なっ…? も、門太!?門太ぁーーー!!」
邪神「「門番」は邪魔じゃ。弱き者どもに無駄な機会を与えよる。」
勇者「き、貴様…よくも門太を!よくもあんな便利な能力を!」
盗子「そっちを嘆くの!?もうちょっと命を大事に考えようよ!」
邪神「これでわかったか小僧?わらわが本物か否か。」
勇者「わからん…わからんな!俺は認めんぞ貴様なんか!」
邪神「物分りの悪い小僧じゃな。もう一度見せねばわからんか?」
勇者「フン、望むところだ!!」
盗子「なんでアタシを指すの!?」
これで門太も寂しくない。

 

2-215:本領〔13歳:LEVEL25〕
邪神の一撃で、門太は灰と化した。 門太…(使い勝手の)いい奴だったのに…。
勇者「ここは危ない。下がってろ姫ちゃん、暗殺美、巫菜子、猿魔、あと姫ちゃん!」
盗子「アタシは!?姫を二度言う余裕があるならアタシにも…!」
邪神「おなごはわらわの生け贄じゃ。その前に、邪魔な貴様を消し去ろうぞ。」
ピィーー!(閃光)
邪神の攻撃。
勇者は破壊神の盾で防いだ。
勇者「おっと、この盾にはそんな半端な攻撃は通じないぜ?」
邪神「その力…そうか、それは「破壊神:レーン」の力を宿す盾じゃな?こざかしい。」
勇者「こざかしいのは貴様だ! 食らいやがれ!刀神流操剣術…」
邪神「フ…そんな攻撃、我が「邪流演舞」の前には無力ぞ。 そびえよ「扇風壁」!」
邪神は扇を振るった。
邪神の前に風の防壁が現れた。
勇者「なっ、風の壁だと…!?」
邪神「この風は地獄の風、中は魔の領域。邪悪な者しか入ることはでき…」
勇者「ふむ。なかなか心地よい風だな。」
邪神「入っとるぅーーーー!!」
勇者は本領を発揮した。

 

2-216:食事〔13歳:LEVEL25〕
邪神の懐に入ることに成功した。どうやら思ってたほどの強敵ではなさそうだ。
邪神「き、貴様何者じゃ!?その盾や剣といい、どう考えても魔の…」
勇者「俺の名は「勇者」。世界で一番、好き勝手が許される男だ。」
盗子「そんな解釈で今まで生きてきたの!?」
邪神「勇者…覚えておこう。いずれ貴様はわらわが滅ぼしてくれるわ。」
勇者「「いずれ」なんか無い! 刀神流操剣術、十の秘剣「十刀粉砕剣」!!」
勇者の攻撃。
邪神は扇で防御した。
だが防ぎきれなかった。
邪神「うはぁっ! チッ、やはりまだ力が足りなすぎる…!」
盗子「ぃやっほー!やっちゃえ勇者ー!」
邪神「…しばし休戦じゃ。やはりわらわは食事を摂ることにしよう。」
勇者「あ?食事…? ハッ!ヤバい! 逃げろ女ども!!」
女子「!!?」
邪神「逃がすかぁーー!!」
邪神は襲い掛かった。
勇者は間に合わない。
ボフゥ~ン!(煙)
邪神「なっ!? え、煙幕だとぉ…!?」
声〔煙〕「フン、「暗殺者」をナメんじゃないさ。こういう芸当はお手のモンなのさ。」
勇者「おぉ、でかしたぞ暗殺美!みんなを連れてそのまま逃げろ!」

ゴンッ ガン ドテッ ゴン

声〔煙〕「…下手に動くと危ないさ。」
勇者「死ねっ!!」
暗殺美はタンコブができた。

 

2-217:痛恨〔13歳:LEVEL25〕
しばらく待つと、煙は晴れた。このままではまた、邪神は姫ちゃんを襲いかねん。
勇者「女を襲う暇など与えん!とっとと闇へと還るがいい!!」
ガキン!ガガキン!チュィン!
巫菜子「す、スゲェ戦いだ…!勇者の奴、いつの間にあんなに強く…!」
暗殺美「でも邪神もさすがさ。あれで不完全体ってのが信じられないさ。」
ガィン!チュィン!ズバシュ!!
邪神「くぅ…!」
勇者「フッ。なんだ、伝説の邪神とやらも大したことないな。ガッカリだぞ。」
邪神「…どうやら今の状態で、さらに手を抜いて勝てる相手ではないようじゃな。」
勇者「あん?まるで本気を出せば勝てるような口ぶりだな。」
邪神「信じられぬか?ならば見るがいい。 邪流演舞…奥義、「大旋風葬」!!」
勇者「なっ…!? ぐぁああああああああああっ!!
ズゴォオオオオオオオン!!
痛恨の一撃。
勇者は激しく吹き飛び、壁に叩きつけられた。
勇者「ぐおっ…!な、なんだ今の技は…!? ぶはっ!!(吐血)」
邪神「ハァ、ハァ、ほぉ…今のを受けてまだ五体があるとは、頑丈な小僧じゃ。」
盗子「ゆ、勇者!どどどどうしよう!? ハッ、そういや麗華姐さんは!?」
麗華「スピー…。(姫と)」
盗子「二度寝!?こんな非常時に!」
邪神「復活のために力を抑えていたが、それもヤメじゃ。今は全力で貴様を討とう。」
勇者「くっ…ゴフッ!」
邪神「さぁトドメじゃ。いま一度食らうがいい…「大旋風葬」!!」
盗子「ゆ、勇者ぁーーー!!」
邪神、必殺の一撃。

だが何者かが勇者を救い出した。
盗子「えっ…?」
邪神「チッ、何者…!?」

審判「セーーーーーフ!!」
盗子「えーーーーっ!!?」
緊迫感が消え去った。

 

2-218:即死〔13歳:LEVEL25〕
危ないところを、謎の審判に救われた俺。一体コイツは何者なんだろう?
勇者「だ、誰だ…貴様は…?」
審判「…お前はまだ、死ぬべき男じゃねぇ。まだ生きてやるべきことがあんだろ?」
勇者「その声…どこかで…。」
邪神「何者じゃ貴様は?まぁわらわに逆らうとあらば、誰とて容赦はせんがな。」
審判「フン。不完全体な奴が、この俺に勝てるとでも思ってんの゛っ!かぁぁぁぁぁ…」
審判は大地の裂け目に落ちていった。
勇者「自分から穴に…一体どんな技だ!?新手の攻撃にしては斬新すぎるぞ!」
盗子「違うよ勇者!アイツの攻撃がモロに当たったんだよ!あっち見て!」
チョメ「チョ、チョプー!」
赤錬邪「よくもやってくれたなぁ珍獣め。人間様に逆らうとは生意気だよ、オラァ!」
チョメ「チュパプッ!
赤錬邪が現れた。
チョメ太郎は蹴り飛ばされた。
勇者「貴様…生きていたのか。しぶとい奴め。」
赤錬邪「フン、爆風で軽く飛ばされただけだ。何度も言うが俺には魔法しか効かん。」
勇者「チッ、この忙しい時に…!」
チョメ「プー!!」
暗殺美「やめとくさチョメ太郎、アンタが暴れるとむしろウチらが危険さ。」
声「な、なんだコレはーー!?」
勇者「!?」

麗華「この落書き…貴様か勇者ぁーー!?」

チッ、この忙しい時に…。
そっちは自業自得だった。

 

2-219:濡衣〔13歳:LEVEL25〕
しぶとくも生きていた赤錬邪と、タイミング悪く起きてしまった麗華。こりゃピンチだ。
だが麗華は寝ぼけていて、さっきのことは忘れているようだ。 よし、それならば…。
麗華「さぁ勇者、説明してもらおうか。この笑えんイタズラの真意をなぁ!」
勇者「ち、違う俺じゃない!アイツがさっき書いてたぞ!とても楽しそうに!」
赤錬邪「えぇっ!?」
赤錬邪は「濡れ衣」を装備した。
赤錬邪「ま、待て!よく考えろ、どこの世界にそんなお茶目な悪党がいる!?」
麗華「言い訳は要らん。乙女を愚弄した罪は、死をもって償うがいい!!」
ザシュッ!(斬)
赤錬邪「くっ…!って、まぁどうせ俺にはそんな攻撃は…ぐわぁあああああ!?
赤錬邪は大ダメージを受けた。
赤錬邪「ぐっ!そ、そんな…!この「魔欠戦士」である俺に、剣の攻撃が…!?」
麗華「ただの斬撃ではない。 炎を纏った真紅の秘剣…「魔法剣:火炎桜」。」
赤錬邪「ま、魔法剣!? バカな!それは本来、剣士と魔法士の協力技で…」
麗華「生まれは魔道の家系でな。どうだ、器用なもんだろう?」
赤錬邪「な、ならばなぜ今まで使わなかったのだ…!?」
麗華「生家のことは思い出したくもない。だから封印していたわけだが…キレたわ。」
赤錬邪「はわ…はわわ…!」
麗華「ワシは生のトマトは好かんが、焼きトマトは嫌いじゃないぞ?赤の戦士よ!」
赤錬邪「ひ、ひぃいいいいい!!」

ザシュッ!(斬)
ババババシュッ!
(連撃)
ズゴォオオオオオオ!!(炎上)
赤錬邪は黒錬邪になった。

 

2-220:玉砕〔13歳:LEVEL25〕
麗華の容赦ない攻撃で、赤錬邪は人とは違った物質へと生まれ変わった。
だが、まだ最大の敵である邪神バキが残っている。 さて、どうしたものか…。
邪神「誰だか知らぬが、おかげで少し休めたわ。あの死者に感謝しよう。」
勇者「麗華はまだトランス状態だし、俺もまだダメージが…チッ、だがやるしか…!」
巫菜子「けどあの扇はハンパじゃねーぜ?まずアレをなんとかしねぇと…!」
姫「パンツがめくれちゃうよね。」
暗殺美「論点が違うさ姫!てゆーかパンツがめくれたらえらいことさ!スカートさ!」
盗子「…わかった、アタシがなんとかするよ。アレを奪えばいいんだよね?」
勇者「なっ…!?」
盗子は邪神に向かって飛び出した。
勇者「や、やめろ盗子!お前なんかが…」
盗子「わかってる!死ぬかもしんないけど…でも頑張るよ!」
勇者「目立つな!!」
盗子「えっ、そういう意味!?」
暗殺美「バッ…盗子!前を見るさ!!」
盗子「えっ…ヤバッ…!!」
邪神「遅いっ!死ねぇえええええええええ!!」

ブシュッ!!(貫)
邪神の攻撃。
邪神の腕が盗子の胸を貫いた。

 

2-221:活躍〔13歳:LEVEL25〕
調子に乗って飛び出していった盗子は、案の定邪神の一撃で儚く散った。バカが!
盗子「ぅぐっ…くはぁっ!!(吐血)」
勇者「と、盗子ぉーーーー!! 貴様ぁ…!!」
巫菜子「邪神が血を浴びちまった…。や、ヤベェぞ!」
邪神「フ…ハハ…アハハハ!! やったぞ!これで完全体に…!!」
勇者「くそっ、なんてことだ…!最悪の状況だ…!!」
邪神の体が怪しく光…らなかった。
邪神「…って、何も感じんぞ!?なぜじゃ!!」
勇者「!!?」
暗殺美「ま、まさかホントに穢れてたせいかさ!?顔が!」
巫菜子「いや、顔は関係ないような気が…。」
邪神「ど、どういうことじゃ…!?」
盗子「ぐふっ…フフ、やはり「雄猿」の血じゃ意味無かったか…?残念…だったな。」
邪神「き、貴様…もしや写念獣か!?じゃあ本物…あ゛っ…!」
勇者「なにっ…!?」
盗子B「とぅっ!!」
盗子は邪神の手から扇を盗んだ。

実に数年ぶりの活躍だった。

 

2-222:昇天〔13歳:LEVEL25〕
邪神に立ち向かったのは、盗子ではなく盗子に化けた猿魔だった。いつの間に…。
猿魔「ぐふっ…ハァ、ハァ…どうだ勇者?俺の一世一代の…大芝居は…?」
勇者「そうか、さっきの煙幕に乗じて…。」
盗子「偽勇者!しっかりして!目ぇつぶっちゃダメだよー!」
猿魔「俺は、もうダメだ…。 なぁに、どのみちもう寿命だった…悔いは無いさ…。」
暗殺美「死をいとわない決死の作戦…猿ながらアッパレな奴さ。」
盗子「ぐすん。アンタと過ごした半年間…えぐっ、わ、悪くなかったよ。偽勇者…。」
猿魔「ジャクソン…。」
盗子「盗子だからっ!!」
猿魔「勇者…任せたぞ。この世界…お前に…託した…。」
勇者「…ああ、安心しろ。いずれ世界は俺のモンだ。」
猿魔「な、なんだか不安になってきたな…。」
勇者「お前には礼を言っても言い切れんな。いつか天国で、酒でも奢ろう。」
猿魔「酒か…そりゃ…楽しみだな…。 だがお前はどう考えても地獄い゛っ!!
勇者は介錯を買って出た。

 

2-223:決着〔13歳:LEVEL25〕
全ての役目を終え、猿魔は逝った。門太に続きまたしても便利な能力が…残念だ。
勇者「さぁ邪神よ、滞納していた年貢を一気に納める時だ!観念するがいい!」
邪神「こ、この状況で丸腰…。さて、どうしたものか…。」
麗華「やるぞ勇者。二人でかかれば勝利は確実だ。」
勇者「いや、俺だけでいい。今なら使えそうな気がするんだ、「千の秘剣」がな。」
麗華「千の?調子に乗るな。アレは刀神流操剣術の奥義…お前にはまだ早い。」
勇者「ナメるな!俺だってやればできるさ! 「百の秘剣」ぐらい!」
麗華「下がってるじゃないか!さりげなく思いっきり妥協してるじゃないか!」
勇者「そんなこんなで貴様を倒す!覚悟はいいか、邪神バキ!!」
邪神「チッ…!」
勇者は剣を構えた。
邪神は逃げ出した。
勇者「頼む姫ちゃん、奴の動きを止める魔法を!」
邪神「甘いわ!そのような魔法に掛かるほど…」
姫「ダルマさんがコロリン!」
邪神「えっ…!? あ゛っ!」
勇者「止まっちまった貴様の負けだー! 食らえ百の秘剣、「百刀霧散剣」!!」

ズバババババババシュッ!!(連撃)


邪神「う゛っ、うわぁああああああああああ!!
勇者、会心の一撃。
邪神に致命的なダメージ。

勇者は邪神を倒した。


いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
勇者はレベル26になった。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

姫は何もしてないのにレベルが上がった。
姫はレベル40になった。

え゛っ、40!?

 

2-224:電影〔13歳:LEVEL26〕
激戦の末、なんとか邪神を倒した俺。 色々あったがこれでもう一安心だ。
大地の裂け目に落ちたため、死体を見てないのが少し気掛かりだが…まぁいい。
仮にまだ生きていたとしても、あの状態じゃすぐに死ぬだろう。 俺達の勝ちだ!
などと考えながら一服ついていると、なにやら魔獣らしき鳥が何かを運んできた。
勇者「む?なんだこの珍妙な鳥は? 俺の肩で羽根休めとは生意気な。」
麗華「どれどれ? お、コヤツは教師殿の伝令獣ではないか?」
一同「Σ( ̄□ ̄;)!?」
一同は恐怖に震えた。
邪神を見た時よりもビビッている。
盗子「はわ…はわわ…!(震)」
魔獣「ピャウ。」
勇者「コレは…「電影玉」じゃないか。奴め、また何か企んでやがるのか…?」
〔電影玉(でんえいだま)〕
燃やすと煙が具現化する魔法の玉。
最大五分ほどの映像を録画できる。
勇者「チッ、仕方ない。見たくはないが、見なきゃ殺されそうだし…ったく。」
モクモクモクモク…(煙)
教師「やぁみなさん。コレを見ているということは、無事みたいでなによりですよ。」
盗子「フン、なにさ。肝心な時にいなかったクセして偉そうに。」
教師「ハイ盗子さん、今度会ったらお仕置き決定です。」
盗子「えぇっ!?なんで返事できんの!?これって再生専用だよね!?」
暗殺美「きっと違法な何かでどうにかしたのさ。まったく怖ろしい男さ。」
勇者「で、なんの用なんだ?わざわざこんなの寄こしたんだ、何かあるんだろう?」
教師「いや、ちょっとだけ言いたいことがありまして。 要は「まだ気を抜くな」とね。」
勇者「気を抜くな?五錬邪はもう全員倒した、不安な要素はもう無かろう?」
教師「彼らはリミッターを外せた…。狂人にしかできない荒業をほぼ全員が、です。」
勇者「だから何が言いたいんだ?要点をハッキリ言いやがれ。」
教師「何者かが彼らを操り、内側から無理矢理解放させたとしか思えません。」
勇者「なっ!?じゃあ、「洗脳」みたいな魔法が掛かってたってことか!?」
教師「フフフ、イヤですねぇ。そんな便利な魔法が」
勇者「あるかもしれんだろうが!貴様が知らないだけかも…」

教師「あって、私が放っておくとでも?」
これ以上に無い説得力があった。

 

2-225:旅立〔13歳:LEVEL26〕
五錬邪を倒した俺達は、教会に身を潜めていたらしいシジャン王にもてなされた。
王「よくやってくれた勇者よ。好きなだけ褒美をとらそうぞ。」
勇者「あん?なんだ貴様、救ってもらった分際で上から目線とは生意気な!」
王「え、いや…その…すみません。えと、褒美はたんまり用意させていただきます。」
勇者「フッ、当然だ。とりあえずこの口座に有り金を全部振り込…ぐぇっ!
麗華「王の御前だ、お前こそ慎め勇者。それに「勇者」が褒美を求めるとは何事だ。」
王「お、おぉありがとう。喋りがババ臭い剣士よ。」
麗華「前言撤回だ勇者、身包みどころか皮まで剥いでやるがいい。」
王「ひ、ひぃいいいいい!!」
姫「なんかお祭りムードだね。」
盗子「アンタの頭ん中だけねっ!」
暗殺美「どうでもいいけど早くご飯にしてほしいさ。お腹が大合奏の準備中さ。」
メイド「あ、ハイ。それではご用意いたしますね。好き嫌いとかおありですか?」
盗子「ん~、アタシは特に無いかなぁ? 大丈夫っ☆」
メイド「じゃあ適当にそこらの草でも…。」
盗子「なんでっ!?」
勇者「よーし野郎ども!宴だ! 声帯がブチ切れるまで騒ぐがいいっ!!」
国民「うぉおおおおおおお!!」
勇者はそのまましばらく居座った。
その間、国は大いに荒れた。
数日後…。 皆で散々食って飲んでしまくったせいか、国の食糧が尽きかけてきた。
心なしか、国民の俺達を見る目も濁ってきたように思える。 これは、マズい。
「勇者」の美学として、去り際は美しくなければならないと俺は思うのだ。
ホントはもう少しのんびりしたいところだが…平穏は剣を鈍らせるしな、仕方ない。
勇者「とまぁそういうわけで、ぼちぼち旅立とうと思う。お前ら準備はいいか?」
盗子「うん☆ でもどこ行く気なの勇者?もう五錬邪はいないわけだけど…。」
勇者「中央だな。「帝都:チュシン」…人が多く集う場所ほど、情報は集まりやすい。」
盗子「情報…?他の神でも探そうっての??」
勇者「力はついた。今度こそ奴を…「魔王:ユーザック」を討つ時だ!」
盗子「うげっ、魔王!?」
暗殺美「魔王…そういや最近、とんと噂を聞かないさ。なんか不気味さ。」
勇者「奴ほどの男だ、このままなんてことはありえない。きっと何かを仕掛けてくる。」
姫「落とし穴とかね。」
勇者「フッ、この俺を落とそうなんて百年早いぜ!」
盗子「スケールがちっちゃいよ!どうせならもっと凶悪な罠とか想定しようよ!」
姫「地球が爆発するよ。」
盗子「魔王も死んじゃうじゃん!」
勇者「にしてもアレだな。なんとなくだが、カクリ島を出た日のことを思い出すな。」
姫「ん~。じゃあ今度のは…うん、「卒業旅行」だね☆」
暗殺美「いや、卒業旅行って言うには時間経ち過ぎちゃってる気がするさ。」
姫「「帰ってきた卒業旅行~激烈地獄巡り~」だね。」
盗子「だからそんな物騒なサブタイトルは要らないから!」
勇者「俺はお前が一番要らない。」
盗子「うわーん!相変わらず目がマジだよー!!」
麗華「オーイ勇者ぁー!船が来たぞ、早く乗り込めー!」
勇者「よし、行くか! 命の保証は今後も無い。わかった奴だけ、ついて来い!!」
一同「オォーーー!!」

こうして勇者達は、再び旅立った。



新たな力を身につけて

強大な敵を退けて

賢二のことはスッカリ忘れて




邪悪な魔王を倒すため









邪悪な勇者が行く。










〔キャスト〕

勇者
賢二
盗子


宿敵 奮虎
血子 マジーン
商南 メカ盗子
土男流 弓絵
相原 案奈
姫子 博打
栗子 召々
門太 チョメ太郎


暗殺美
麗華
スイカ割り魔人(秋臼)
無印





~その頃、シジャン川のほとりでは…~
審判「・・・・・・・・。」

ザッ、ザッ…(足音)

審判「ん? よぉ、遅かったじゃねーか。 約束通りコイツは拾っといたぜ。」
女「…いつまでそんなマスクを付けている気ですか?ゴクロさん。」
マジーン「ハハハ。いや、何気に気に入っちまってな。 で、首尾はどうよ?」
女「計画通りです。全ては少年達と五錬邪、そしてアナタのおかげですよ。」
マジーン「俺は何もしてねぇぜ?それにアンタの味方ってわけでもねぇよ。」
女「わかってますよ。確か自称「終末の見届人」…でしたっけ?」
マジーン「フッ、ああ。俺はただの見物人、面白ぇ未来が見てぇだけさ。」
女「では今後も見ていてください。きっと楽しめるでしょう。 …博打。」
博打「わかってるさマスター。手当ては済んだ、声かければ起きるぜ。」
女「さぁ、起きなさい邪神。もう何百年も、十分に眠ったでしょう?」
邪神「ぐっ…だ、誰じゃ貴様らは?わらわに引導でも渡しにきたか…?」
女「逆ですよ、アナタには復活してもらいます。私の計画のために、ね。」
邪神「フン、お前の血でか?じゃが、仮に生娘でもその歳じゃ…」
女「ふふ…じゃあコレでは、どうですか?」


巫菜子「う゛、うぅ…。」



邪神「…話を聞こうか、女。」






赤錬邪 群青錬邪(夏草)
桃錬邪(秋花) 黒錬邪(冬樹)
黄錬邪(春菜) 黄緑錬邪(巫菜子)


ソボー
ユーザック・シャガ(魔王)

偽ゴクロ 山族長 ナンダ
貧乏神 洗馬巣 栗尾根
大ボラ兄弟    


皇子
教師
勇者父(凱空)





その他の適当な人々






勇者「う~~む…。」
盗子「ん?どしたの勇者? さっきから唸ってるけど、何か考え事?」
勇者「盗子か…。 いや、前の先公の話が少し気になってな。」
盗子「あぁ…洗脳の話? 大丈夫だって。きっと先生の気のせいだよ。」
勇者「…ま、そうだよな。なんでも操れるなんてそんな都合のいい…」

「…んでも…きるのです。」

勇者「ッ!!? な、なんだ今の記憶は…!?」
盗子「えっ、な、なにっ!?」
勇者「俺は…前にどこかで聞いたことがある。聞いたことがあるぞ!」

「熟練…ば…なんでも…できるのです。」

勇者「そ、そうだ「あの時」だ!確かに”奴”はそう言った!「なんでも」と!」
盗子「あの時って!?ちょっ、アタシにもわかるように説明してよ!」



「私の真の職業は「操縦士」。熟練すれば、なんでも操縦できるのです。」



勇者「…ハッ!そういや邪神の武器はっ!?お前持ってたよな盗子!?」
盗子「へ? あれ?どこやっちゃったろ…って、だからそれがなんなの!?」
勇者「チッ、マズいぞ! 黒錬邪が言ってた、”奴”ってのは…!!」








〔ナレーション〕

オチの人







〔キャラクターデザイン〕

画家











ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…(雷雲)










春菜「さぁ行きましょうか、邪神バキ。」











〔制作・著作〕

創造主











第二部:「五錬邪討伐編」












 

第三部へ
創造主
~勇者が行く~(2)
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