~勇者が行く~(2)

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【本編】

序章
第一章
外伝(壱)
第二章
外伝(弐)
第三章
外伝(参)
第四章
外伝(肆)
第五章

【付録】

登場人物
魔法&特技

本編( 1 / 10 )

第二部:序章

第二部:序章
第二部

 

2-1:襲撃
マオが復活し、一年の月日が流れた。
大陸のほとんどは「魔王軍」に支配され、平和は消えた。
世界はもう、色々と大変な感じになっていたのである。

そんなある日…。
~エリン大陸:スタト村~
村長「…なるほど。 では賢二君は、洋上ではぐれた仲間を探して旅をしていると?」
賢二「あ、ハイ。僕が打ち上げられた海岸付近には見当たらなかったもので…。」
村長「まぁこの「エリン大陸」は、五大陸の中でも最大の大陸ですからなぁ。」
賢二「そうですね。僕も無駄に広いなと感じましたよ。」
村長「む~。 しかし嵐の海という過酷な状況となると、無事とも限らんのでは?」
賢二「いいえ、きっとみんな生きてる…そんなイヤな予感がします。」
村長「イヤなんかい。」
バンッ!(扉)
村人A「た、大変だ村長!ついにこの村にも魔王の魔手が伸びてきやがった!」
村人B「今は外で護衛団が応戦してる!だが敵の強さはケタ外れなんだ!」
(「うぎゃあああああ!!」)
村長「あ、あの声は伍助…!」
(「くたばれ魔人めぇえええ!!」)
賢二(どうして僕の行く先には毎回こう…。)
(「誰が魔人だ!!ちゃんとさっき名乗っただろうが!)
村長「むっ!敵は魔人ではないのか!? では一体…」
(「誰が信じるか嘘つき魔人め!どこの世界に魔剣を携えた勇者がいぶはぁ!!」)

賢二「Σ( ̄▽ ̄;)!?」
イヤな予感が駆け抜けた。

 

2-2:決断
突然の魔人の襲来に、スタト村は大混乱に陥った。
未知なる敵の脅威に怯え、震える村民達。
偶然居合わせた賢二もまた震えていた…が、その理由は違っていた。
「未知じゃ…ない!!」
(うがぁあああああ!!)
村長「な、なんたることだ…! ワシは一体…一体どうすればいいんだ…!」
賢二(僕こそ一体どうすれば…。)
(「ウザいんだよ雑魚どもめが!」)
(「ぎょへぇえええ!!」)
(「た、田吾作!?田吾作ぅーー!! この人殺しめぇえええ!!」)
(「フッ。 安心しろ、峰打ちだ。」)
賢二(えっ、峰打ち!?あの勇者君がそんなこと…。 も、もしかしたら他人じゃ…)
(「アホか!頭蓋骨割っちゃったら同じだから!)
賢二(なさそうだなぁ…。)
村長「くっ!私もあと五十歳若かったら…十歳くらいなら戦えたのに…!(チラッ)」
賢二「…それは遠回しに、僕に「行け」って言ってますか?」
村長「おぉ、行ってくれるのか賢二君!なんとも予想外!」
(「残るは貴様一人だが…まだやる気か。いいだろう、ブッた斬ってやる!」)
賢二「(う~ん、この状況で会うのは恐ろしいけど…仕方ないよね。)わかりま…」

(「この「ユーザック・シャガ」の名に懸けて!!」)

賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
「勇者」じゃなくて「ユーシャ」だった。

 

2-3:再会
どういうわけか寂れた農村に現れた「魔王:ユーザック」。
なんとか逃げようとした賢二だったが、村長がそれを許さなかった。
窓から放り出された賢二は、魔王と久方ぶりの再会を果たすことになる。
賢二「え、えっと…。 ども、しばらく見ない間に随分と大人な感じに…なりましたね。」
魔王「なっ…!き、貴様はあの時の賢者!? 何故こんな所に…!?」
賢二「それを言うなら魔王のアナタこそ何故こんな所に…?」
魔王「フッ、「魔王は玉座に」という定義を根本から覆してみた。」
賢二「いや、それだけはやっちゃいけない暗黙の…」
魔王「まぁ気にするな。 それより前回の雪辱戦…受けてもらおうじゃねーか!」
賢二「いやいや、もう全然相手にならないんでホント勘弁してください。」
魔王「ほぉ、俺が相手じゃ物足りんと?大した自信じゃねーか!」
賢二「いやいやいや!まったく逆の意味で…!」
声「こっちだー!魔人はこっちだぞー! みんな、応戦してくれぇーー!」
賢二(え、援軍!? ダメだ、このままじゃ犠牲者がもっと増えちゃう…!)
魔王「真剣勝負を邪魔されたくはないな…先にあっちを片付けるか。」

勇者「誰が魔人だ失敬な!!」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
村人B「黙れ!そんな禍々しい魔剣を携えて何を言うばっ!!
勇者「よーしわかった!こうなったら皆殺しにしてくれるわ!!」
村人C「お、おのれ魔人めぇえええ!!」
誤解だが無理も無かった。

 

2-4:支配
正義の味方であるはずが、魔王とカブッたノリで現れた勇者。
だがしかし、勇者と魔王…遭遇するにはあまりにも急なタイミングである。
賢二「ゆ、勇者君!やっぱり生きてたんだね!」
勇者「…誰?」
賢二「ウッソ!たった半年なのに!?」
勇者「貴様は…ユーザックか。マオのニオイがプンプンするよ。」
魔王「お前は勇者だな?お前から…は、コロンの香りがプンプンするな。」
勇者「フッ、5銀もしたんだ。(約5万円)」
賢二「武器とか買おうよ!」
勇者「まぁとにかく! 貴様のような悪の支配者は俺が倒す!「勇者」として!!」
魔王「支配…? 俺は放浪の旅に夢中でまだ何もしていないが?」
勇者「あん?嘘をつくな!今や世界中で魔王軍がルンルン気分じゃねーか!」
賢二「いや、そんな楽しそうな状況じゃないけどね。」
魔王「ん~、じゃあアレだな。城を任せてきたアイツが勝手に何かやってんだな。」
賢二「あ、アイツ!?じゃあ今は誰か違う…陰の支配者がいるってことですか!?」
魔王「そうらしいな。 確かアホ…違う、「バカなんとか」って名前の奴だったか。」
勇&賢「…バカなんとか??」

~その頃、魔王城では~

赤錬邪「へっくし!!」
魔王は豪快に間違えた。

 

2-5:混乱
魔王の口から明かされた衝撃の真実。
なんと実質の魔王はユーザックではなく、二代目赤錬邪だという。
~魔王城~
兵士「失礼致します! 魔王代理、何か御用でしょうか?」
赤錬邪「聞かねばわからんのか…? 魔王様の所在についてに決まっとろうが!」
兵士「ハッ、申し訳ございません!しかし残念ながら、その件に関しましてはまだ…」
赤錬邪「あの御方が大人しく旅するはずが無い!血の噂を追えばすぐだろうが!」
兵士「そ、それが…。 あるにはあるんですが、情報が少し混乱しておりまして…。」
赤錬邪「混乱!?どういうことだ!!」
兵士「じ、実は似たような影が…二つありまして…。」
赤錬邪「な、なんだと!?(くっ、奴め…この俺の計画に気づきおったのか!?)」
勇者の功績だった。

 

2-6:計画
現在、魔王代理として魔王軍を率いている赤錬邪。
だがそれは表向きだけで、内には魔王に対する反逆心が渦巻いていた。
赤錬邪「おぉ、来たかお前達。意外と久しぶりだな。」
群青錬邪「ったく、何だよいきなり呼び出しやがって?こっちゃ忙しいんだよ。」
桃錬邪「まったくだね。しかもいい歳こいてなんて格好してんのさ。」
群青「いや、鏡見ろよ。」
赤錬邪「実はな、少し状況が変わっ…ところでブラックはどこだ?」
桃錬邪「あ~、確か「星を見てくる」って外へ…ね。」
群青「まだ真っ昼間だけどな。」
赤錬邪「相変わらずか…。 あぁ、そういえば三代目黄錬邪の件はどうなった?」
群青「ヘッ、それなら俺に考えがある。そこは任せて話を進めてくれよ。」
赤錬邪「むぅ~。しかし全員揃っとらんと二度手間になるしなぁ…。」
桃錬邪「だったら城下の茶店にでも行っとく?少し時間潰しに。」
群青「おっ、それいいねー!」
赤錬邪「そう…だな。 じゃあ行くか!」
桃錬邪「アタシあそこのパフェ好きなんだよな~。」
群青「ん~、俺は…」

バタン(扉)
世界は意外と平和なのか。

 

2-7:歴史
諸悪の根源の割に、妙にシリアス感の欠けている五錬邪。
格好が格好なだけに、茶店でも浮きまくりながら黒錬邪を待っていた。
そして全員が揃うと、赤錬邪は偉そうに話し始めたのである。
赤錬邪「お前達は…五百年以上昔に起こった「人神大戦」を知っておるか?」
群青錬邪「ジンシンタイセン…? 知らねぇな。ホントにあった戦なのか?」
赤錬邪「恐らくな。この文献を読んでみるがいい。」
黒錬邪「桃さん、頼む。」
桃錬邪「うぃ。「お、お兄ちゃん…ダメだよそんな…。」って、官能小説じゃねーか!」
赤錬邪「ぬぉっ!?こ、これは違うんだ!ただの俺の趣味だ!」
群青「それはフォローのつもりなのか…?」
赤錬邪「…ご、ゴホン! それじゃなくて、コレだ。」
―――旧星歴1024年、三体の神と全人類による大戦争が勃発。
神々の力は色々と強大で、人類は滅亡の危機っぽい感じになった。

しかし激戦の末、なんとかうまいこと勝利した人類。やったぜ人類。
神々はそれぞれ空・海・大地に封印され、とりあえず平和は戻ったとか。

人々はその戦いを「人神大戦」と呼び、その年を「新星歴元年」とした。
群青「な、なぜかこう…内容が壮大な割に文が適当な文献って多いよな…。」
桃錬邪「んで、今の話がなんなの?まさかただの歴史勉強ってことは無いよな?」
赤錬邪「フッ…フフ…フハハハハ!っと、すまんすまん。少々興奮してしまった。」
群青「なんだよ、もったいぶりやがって!気になるじゃねーか早く話せよ!」
赤錬邪「フッ。よし、いいだろう!三人とも耳をかっぽじってよーく聞けぃ!!」
三人「ご、ゴクッ…。」

黒錬邪「古代神を復活させ、ユーザックを叩く。」
お前が言うんかい。

 

2-8:守備
なぜか黒錬邪の口から明らかになった赤錬邪の計画。
いいとこ盗りされてヘコんだ赤錬邪は、立ち直るのに二時間かかった。
群青「オイ、いい加減機嫌直せよ!さっさと話済ませやがれめんどくせぇなぁ!」
赤錬邪「…ふむ。密かに調べさせてな、神の封印場所は完璧に…だいぶ絞れた。」
群青「「完璧」と「だいぶ」じゃえらい違いだぞ。」
桃錬邪「でもまぁ確かに、その神さんを味方につけられりゃ勝ち目は濃そうだな。」
赤錬邪「ユーザックの力は脅威だが、さすがに神には敵うまい。フフッ。」
群青「つってもな~。そんなうまくいくもんかねぇ?ホントに味方にできんのか?」
赤錬邪「それは…アレだ。現地に着くまでに考えよう。」
群青「肝心な所が無計画かよ!」
桃錬邪「まぁいいじゃないか。とりあえず場所はわかってんだしさ。」
赤錬邪「うむ。「タケブ大陸」…のどこかに、神はいる!」
桃錬邪「そんな曖昧だったのかよ!!」
黒錬邪「大丈夫、みんなで行けば…夏までには。」
赤錬邪「おぉ、そうだよブラック!全員で行けばすぐに見つかるのだよ、うむ!」
黒錬邪「字余り。」
桃錬邪「俳句だったんかい!」
群青「だが任されてる城を空けるのはマズくねぇか?奴にバレたら殺されっぞ?」
赤錬邪「うぐっ…! た、確かに俺は信用されとるしなぁ…。」
魔王は名前も覚えてなかった。
赤錬邪「だが我が軍の守備範囲は広い。奴の情報が入り次第戻れば間に合うさ。」
群青「ホントかよオイ?俺はトバッチリ食うのはイヤだぜ?」
赤錬邪「心配ならコレを見てみろ。納得の守備範囲が描かれているはずだ。」
黒錬邪「桃さん、頼む。」
桃錬邪「どれどれ…「イヤッ、やめて!助けてお兄ちゃーん!」って、またかよコラ!」
赤錬邪「しまたー!!」
そっちの守備範囲は狭かった。

 

2-9:決着
五錬邪が茶店で和んでいた、ちょうどその頃…。
勇者達の戦いは既に始まっていた

…というか、既に終わりかけていた。
勇者「ぐぉっ!うぐぅ…!!」
賢二「ゆ、勇者君!大丈夫!?ねぇ大丈夫!?」
魔王「フンッ、たわいも無い。その程度の力で俺に挑もうとは片腹痛いわ!!」
勇者「ち、違っ…! 今日は…その…「あの日」だから…。」
賢二「いや、苦しいから!性別の壁は越えちゃダメだから!」
勇者「二日目…だから…。」
賢二「日数の問題じゃないし!」
魔王「そ、そうだったのか…。」
賢二「コント!?コントなの!?」
魔王「だが安心しろ。今お前を殺す気は無いんだ。」
勇者「なにっ…!? ど、どういう意味だ!」
魔王「まだマオの完全体を制す自信は無い。だからもう少し貸しといてやるよ。」
勇者「くっ!俺なんぞいつでも殺せる…とでも!? な、ナメやがって…!」
賢二「ホッ。でも良かった…。 とりあえず今は無事に…」

魔王「まぁ賢者は殺すがな。」
賢二「ですよね…。」
そんな予感はしていた。

 

2-10:再戦
アッサリ魔王にやられていた勇者。
しかし幸運にも、今回は見逃してもらえるらしかった。

だが賢二は頑張れ。
魔王「さぁ賢者よ、四年越しの再戦…存分に楽しもうじゃないか!」
賢二「イヤー!イヤですー!楽しめる要素なんて一つも無いですー!」
勇者「ま、待て!俺を無視して賢二を相手になど…ぐおっ!
魔王「少し寝ていろ。起きた頃には全てが終わっている。」
賢二「終わらせないで!そんな簡単に人の人生を終わらせないでー!」
魔王「じゃあじっくり料理してやる。」
賢二「そそそそういう意味ではー…!」
魔王「三日三晩煮込んでやる。」
賢二「煮込ん…えっ!マジ料理なの!?」
勇者「・・・・・・・・。(ぐぅ~)」
賢二「なんでそこでお腹鳴るの!?僕は美味しくないよ!?」
魔王「では行くぞ賢者!貴様には最初から奥義を味あわせてやる!」
賢二「そんな買いかぶらないでー!!」
魔王「食らえ!最大奥…」
賢二「はわわわ!え、えっとえっと!とりあえず…「沈黙」!!」
賢二は〔沈黙〕を唱えた。
賢二(って、「技名」には効かないし!全然意味無いじゃん僕のバカー!)

魔王「チッ、こしゃくなマネを…!!」
賢二(え゛ぇっ!?)
魔王もバカだった。

 

〔沈黙(ちんもく)〕
魔法士:LEVEL6の魔法。(消費MP6)
一定期間呪文の詠唱を封じる魔法。デート中に唱えると少し気まずくなる。
 

 

2-11:危機
動揺して唱えた場違いな魔法で、なんとか瞬殺は免れた賢二。
しかし数分後、魔王もやっと「技名≠呪文」の方程式に気づいたのだった。
魔王「よ、よくもハメやがったなチクショウ!俺には効いてなかったんじゃねーか!」
賢二「悪いのは僕なんですか!?」
魔王「もうアッタマきた!ブッ殺してやる!!」
賢二「最初っからそのつもりのクセにー!」
魔王「食らいやがれ!秘奥義「暗黒乱舞」!!」
賢二「うわぁああん!もうダメだーー!!」

少年「秘奥義「暗黒乱舞」!!」
ガキン!!(相殺)
賢二「えっ…!?」
魔王「な、なにっ!俺の技を相殺しただと!? 誰だ貴様は!?」

宿敵「フッ、キミのライバルさ。」
微妙な助けが現れた。

 

2-12:相殺
絶妙なタイミングで現れた、もはや登場は無いと踏まれていた男「宿敵」。
賢二はまたしても命拾いしたのであった。

宿敵が勝てればの話だが。
賢二「ら、宿敵君!?なんで生き…や、やっぱり生きてたんだね!」
宿敵「いま一瞬、キミの本心が垣間見えたよ…。」
魔王「なにっ、賢者と知り合い…!? 誰だ貴様、名を名乗れ!」
宿敵「そういうキミは誰なんだい?見たところ勇者君を倒したようだけど…。」
賢二「えっと…紹介します、「魔王」のユーザックさんです。」
宿敵「ウゲッ!魔王!?なんて奴を相手にしてんのさキミは!」
賢二「それは僕も神様に聞きたいよ…。」
宿敵「じゃ、じゃあとりあえず僕も一応…自己紹介でも…?」
魔王「フン!すぐ死ぬ者の名などに興味は無いわ!」
賢二(さっき思いっきり「名を名乗れ」と…。)
魔王「食らえ雑魚めが!「暗黒飛翔剣」!!」
宿敵「おっと、悪いけど僕には効かないよ! 「暗黒飛翔剣」!!」
チュイン!!(相殺)
魔王「くっ、またしても…! なぜ貴様が俺と同じ技を使えるんだ!?」
宿敵「フフッ、この「好敵手」に勝てる人間なんて存在しないのさ。」
魔王「こ、好敵手だと!?」
〔好敵手〕
対峙する相手に合わせ、同じ職種に様変わりする職業。
極めるのにはセンスが問われ、大抵は挫折して「芸人」で終わる。
戦闘においての能力は、一言で言い表すならば「拮抗」。
全く同じ技を返し、相手の攻撃全てを相殺できる能力を持つ高等職種。
魔王「…知らんな。」
宿敵「よく言われる…。」
だが知名度は低かった。

 

2-13:無敗
意外にも出オチで終わらなかった宿敵。
五錬邪にも恐れられる魔王を相手に、一歩も引けを取らなかった。

そしてそのまま、ダラダラと二時間が経過したのだった。
魔王「ハァ、ハァ、貴様…なかなか…ヤルじゃねーか…。」
宿敵「ハァ、ハァ、キミも…諦めの…悪い人だな…。」
魔王「あ、諦める…? フザけるな!貴様は絶対にこの俺が…!」
声「ユーシャ様、残念ですがお時間です。」
賢二「えっ!ど、どこから声が!?」
魔王「む…?なんだ、華緒か。今いいところなんだから邪魔するなよ。」
華緒「いえ、しかし今すぐ出なければ面接に間に合わないもので…。」
賢二(め、面接!?「魔王」が面接!?)
魔王「あぁ…そうだったな。今日は「第一回:四天王オーディション」の日だったか。」
賢二(オーディションて!「四天王」ってそうやって選ぶものなの!?)
華緒「この者ほどの実力があれば、再戦の機会はいくらでもありましょう。」
魔王「…うむ、まぁそれもそうだな。」
賢二(あぁ、また一人「ロック・オン」された人がここに…。)
魔王「というわけだ。この勝負は預けといてやるよ。」
宿敵「フッ、何度やっても結果は同じだけどね。」
魔王「いい度胸だ!つぎ会う日まで死なずにいるがいい! サラバだ!!」
魔王は去っていった。
賢二「す…スゴいよ宿敵君!あのユーシャさん相手にあんなタンカ切れるなんて!」
宿敵「まぁ能力が「拮抗」だからね。何度やっても負けることは無いと思うし。」
賢二「ほんとスゴいよ!もしかして「好敵手」って最強の職業なんじゃない!?」
宿敵「いや、でもこの「拮抗」…確かにスゴいけど実は大きな「縛り」もあってさ…。」
賢二「へ?縛り??」
誰にも負けないが誰にも勝てない。

 

2-14:種族
長時間の戦闘の末、見事に魔王を追い払った宿敵。
だがその能力には、「決して勝利を得られない」という欠陥があるらしい。
言うなれば、「究極の引き分け要員」なのだ。
賢二「そっか…やっぱうまい話にはオチがあるもんなんだなぁ…。 大変だね。」
宿敵「うん。正直この「好敵手」ほど一人旅に向かない職業は無いと思うよ。」
賢二「アリにも勝てないんだもんね…。」
宿敵「乳児と五時間の死闘を繰り広げた時には、正直死にたくなったよ。」
賢二「はぁ…。 じゃあ結局、彼を倒すなんて僕らには不可能ってことだよね…。」
宿敵「ん~、まぁ今のままでは無理だろうね。」
賢二「でもさ、たった四年で思いっきり成長してたんだよ?差は開くばっかりじゃ…」
宿敵「大丈夫。察するに彼は「戦闘族バルク」…これ以上の急成長は恐らく無い。」
賢二「せ、戦闘族…?それがユーシャさんの種族なの?」
〔戦闘族バルク〕
普通の人間より早いペースで成長し、十歳前後で成人体となる種族。
全盛期の肉体・力を保つ期間が50年と長いため、「戦闘族」の名が付いた。
パッと見みんな若いので、ナンパは非常にリスクが高い。
宿敵「師匠から聞いたことがある。成長は早いが、潜在能力はそう違わないとか。」
勇者「…そ、そうか。ならば俺も育てば…可能性はあるわけ…だな。」
賢二「勇者君!気が付いたんだね!」
宿敵「でもあの魔王は厳しいかもしれないね。恐らくバルクの中でも類を見ない…」
勇者「ちょっと待て。まず先に…一つ、大事なことを聞いておきたい。」
宿敵「ん?なんだい勇者君?」

勇者「誰だ貴様は?」
お約束が炸裂した。

 

2-15:決意
お約束を実行するほど余裕がありそうに見えた勇者。
しかし実際は、敗戦の屈辱が心の内に深い傷を作っていた。
宿敵「どうだい勇者君、これからどうするかはもう決まったかい?」
勇者「うむ。奴は当分放置で五錬邪の駆除を優先する。これでどうだ旅の人よ?」
宿敵「いやいや、だから旧友の「宿敵」だってば!なにその新しいパターン!?」
賢二「でもさ、それでもやっぱ戦力不足と思うんだけど…レベル上げはしないの?」
勇者「フッ、俺もバカじゃない。そこら辺はうまいこと考えてるはずだ。」
賢二「えっ!なんで他人事っぽいの!?」
宿敵「じゃあさ、具体的にはどのくらいの期間やる気?」
勇者「う~ん…2・3日?」
賢二「無理だよ!どう見積もっても単位は「年」だよ!」
勇者「まぁとにかく、修行だな!」
そして少年達は―――
赤錬邪「よし!では全員でタケブへ向かうぞ!」
桃錬邪「ガセネタだったらアンタ殺すけどね。」
群青「まぁ気にせず行こうぜ!全てはユーザックを倒すためだ!」
黒錬邪「勝てば王様…悪くないな。」
赤錬邪「そうだ!勝って我らが正真正銘の「魔王」となり、世に君臨するのだ!!」
悪と戦うために
勇者「行くぞ!!」
賢&宿「う、うん!!」
旅に出る。



第二部:「五錬邪討伐編」 始動。

 

第一章へ

本編( 2 / 10 )

第二部:第一章

第一章

 

2-16:二年〔12歳:LEVEL15〕
俺の名は「勇者」。職業も「勇者」。 この春で歳も12になり、現在思春期真っ盛り。
あの屈辱の敗戦から二年が経ったが、血の滲む特訓を経て俺も随分と強くなった。
ちなみに今は、賢二と二人でエリン大陸(無駄に広い)を旅している最中だ。
賢二「おーい、勇者くーん! やっと村が見え…って、どうかしたの?考え事?」
勇者「もう二年半…二年半も経つんだなと思ってな…。」
賢二「え、二年半? それって僕らがカクリ島を旅立ってからってこと?」
勇者「違う!姫ちゃんと離れ離れになってからだ!」
賢二「あぁ、そういえば盗子さんとも…」
勇者「二年前、なんとかお前とは会えた。だが残る姫ちゃんは未だ見つからん。」
賢二「そうだね。あと盗子さ…」
勇者「俺達三人…一丸となってかからねば、今後の敵はヤバいかもしれんのに…。」
賢二「アレッ、勇者君も含めて三人なの!?違うよ盗子さ…」
勇者「早く三人揃いたいものだな。」
賢二「あ、うん…。(四人なんだけどなぁ…。)」
宿敵はどうした。

 

2-17:金欠〔12歳:LEVEL15〕
二年半も歩き回ったおかげで、やっとこのエリン大陸にも終わりが見えかけてきた。
船が使えれば楽なのだが、今は大魔獣がウジャウジャいるため航路は使えない。
噂では、五錬邪が現在いるのはタケブ大陸…。一刻も早く斬りに行きたいものだ。
賢二「もう少しだよ勇者君!もう少しで村に…一ヶ月ぶりにお布団で眠れるよー☆」
勇者「そうだな。それにちょうど金も尽きかけてきたところだし、少し稼いでいくか。」
賢二「あ~。でも魔物いなきゃ無理だけどね。僕らの仕事って「魔物退治」だし。」
勇者「いざとなったら雇えばいい。」
賢二「魔物を!?それは「勇者」のセリフじゃないよ!?」
勇者「…フッ、冗談だよ。そんなことできるわけ無いだろ?」
賢二「そ、そうだよね…。」

勇者「なにしろ金が無いんだ。」
賢二(あったらどうしたんだろう…?)
そうしたんだろう。

 

2-18:大変〔12歳:LEVEL15〕
ここ最近山道ばかり通ってきたのだが、久々に村で一休みできそうな感じだ。
が、平和すぎると金がヤバい。なんとかうまいこと魔物でも来ないものだろうか。
…などと考えていると、なにやら村の方角から男が猛ダッシュしてきた。もしや…。
村人「た、大変だべー!誰か助けてくれやー!」
勇者(おっ、ホラ来た!恐らくカモだぞ賢二、うまくやれよ?)
賢二「え、えっと…どうかしましたか?僕らで良ければ力とか貸しちゃいますけども。」
村人「ホントかよオイ!?いや~、マジ助かるべ!オラは「奮虎(フンコ)」って名…」
勇者「挨拶はいい、早く要点を話せ。」
奮虎「お、おうよ。 実は…腹が痛いのに紙ぐわっ!!
勇者「そんな個人的なことで大騒ぎするな!紛らわしい雑魚めが!」
賢二「だ、ダメだよ殴っちゃ!これでも一応苦しんでるんだよ!?」
奮虎「いや…大丈夫だべ。 もう…」
賢二「「もう…」何ですか!? うわっ、なんか薄っすらクサいんですけど!」
勇者「フッ、その程度の変装で…俺を騙せると思ったのか!?オナラ魔人よ!!」
賢二「違うって!今は同種の生き物だけど別人だって!」
奮虎「…ハッ、そうだべ!そんなことより大変なんだや!」
勇者「安心しろ、今のお前も十分大変な状況だぞ。」
奮虎「き、聞いとくれや!村が…村が魔物に襲われとるんだべさ!」
勇者「それを先に言えよ!!お前は村よりウンコが大事なのか!?」
奮虎「もちろん大事じゃなや!だども「一大事」だったんよ!!」
賢二「いや、そんなうまいこと返されても!」
勇者「おいコラそっちに立つな!風にニオイが乗っ…クセェ!!」
奮虎「いいから来とくれや!村まではオラが案内するでよぉ!」
勇者「しかし貴様…ホントに助けを呼びに来たのか?次の村は随分遠いだろ?」
奮虎「う゛っ。そ、それは…。」
賢二「まさか逃げて来たんですか!?最低ですよそれ!!」
いろんな意味で風上に置けない。

 

2-19:交渉〔12歳:LEVEL15〕
臭くてたまらん村人に連れられ、俺達は魔物に襲われているという村に到着した。
これから村長と会い、退治料金の交渉をせねばならない。少しでも多く稼がねば。
~エリン大陸:ウシロシ村~
奮虎「オーイ村長!旅の退治屋をスカウトしてきたべー!」
村長「なぬっ!?お、おぉ…神の助けだべ!まさか助っ人が来てくださるとは…!」
勇者「貴様が村長か? 俺の名は勇者、金と引き換えに平和をもたらす男だ。」
賢二(相変わらず惚れ惚れする程あからさまだなぁ…。)
村長「なんと、名前が勇者とはまた随分とふてぶてしぐぇっ!!
勇者「…次の村長を。」
賢二「いるわけないから!ストックとかあるモノじゃないから!」
村長B「お呼びですか?」
賢二「なんでいるの!?」
勇者「まぁ挨拶はもういいだろ。面倒は早く済ませたい、敵の情報を知る限り話せ。」
村長B「あ、ハイ。敵は小さく、全く凶暴に見えません。ですが本性は「人食い」の…」

村長B「魔草「血色草」です。」

さて、どう逃げるか…。
勇者はオチが読めた。

 

2-20:大群〔12歳:LEVEL15〕
考えたくはないが、話の展開からして敵の正体は「血子」っぽい。なんてこったい。
よし、こうなったら長居は無用だ。ややこしいことになる前に、どこか遠くへ逃げ…
血子「キャー!ダーリーン!会いたかったぁ~ん☆」
勇者「…さて、どう誤魔化すか。」
賢二(あ、あちゃ~…。)
勇者(フッ、まぁ安心しろ。こういう時の誤魔化し方は熟知してる。)
奮虎「な…なんだや!?まさかオメェら知り合いなんだべか!?」
勇者「ち、違うんだ!コイツは…その…い、妹なんだ!」
賢二「それは「浮気がバレた時」の…しかも間違った対処法だよ!」
村長C「こりゃ…どういうこったクソガキども!?事と次第によっちゃ村長許さんぞ!」
勇者「ほぉ、この俺に喧嘩を売る気か…って、アイタタタッ!噛むなよ血子!」
血子「だってダーリン、血子を置いて行っちゃうんだもん!ムキィー!」
村長D「このまま帰しては死んだ村人達も浮かばれん。村長として見過ごせんよ。」
賢二「ご、ごめんなさ…というか村長さんは何人いるんですか!?」
村長E「助っ人かと思ったのに、逆に悪の仲間とは…。なんて報われないんじゃ…。」
奮虎「まったくだべ!これじゃ何のためにウンコまで漏らしたのかわかんねーべ!」
賢二「それは僕の方がわかりませんよ!!」
老人「おやおや…。そげに大騒ぎさして何さあっただ?」

村長達「だ、大村長!!」
賢二「親玉キタァーー!!」
大村長は三人いる。

 

2-21:別案〔12歳:LEVEL15〕
続々と湧いて出る村長達に続き、奥から現れた大村長。 もう何がなんだか。
こうなったからには仕事は無さそうなので、早くここから去りたいのだが…。
大村長「…なるほど、魔草の知り合いだったべか。そりゃ対処に困るなや…。」
村長F「もうこうなったら、ふん縛ってフクロにして日干しにでもするしかねーべ!」
勇者「ケッ!血子にすら勝てなかった雑魚どもが、この俺に勝てるとでも?」
血子「そうだよ!日干しにされて明日の食卓に上がるのはアンタらだよ!」
賢二「え゛っ!まさか僕らに振舞う気!?」
村長G「ハッ、そうだべ!したら”奴ら”を倒しに行かせりゃいいべさ!」
村長H「それは名案だや!それならチャラにしても惜しくねーべや! なぁ大村長?」
賢二(な、なんかイヤな展開になってきたなぁ…。)
大村長「だども、そげな大事となるとワシだけでは…。 やはり「永久村長」の…」
賢二「まだいるの!?」
血子「もう誰が偉いんだかわかんないよ!」
村長I「実はこの村と東の港街「ソノマ」を結ぶ峠にぁ、「首無し族」ちゅう種族の魔…」
勇者「ちょっと待て!なに勝手に事情を話し始めてんだよオイ!」
村長J「ここは他の村からは孤立しとる。東に行けねば村は寂れる一方なんじゃ。」
勇者「俺は知らんぞ。今は名声よりも日々の糧が要るんだ。」
村長K「みんな参ったべ。けんどそんな中、立ち上がった若人がおったべや。」
勇者「ほぉ、なかなか勇敢な奴がいたんじゃねーか。ならそいつに託しゃ…」

村長L「おったべや…。」
血子「ゲプッ。」
賢二「いやぁー!!」
さすがの勇者も断りづらい。

 

2-22:同情〔12歳:LEVEL15〕
結局村人に押し切られ、俺達は東の峠に向かうことになった。まったく面倒だぜ。
まぁ聞けば敵は財宝もいくつか持っているというし、倒して損ということもないだろう。
勇者「ふぅ~…。しかし一晩くらいゆっくり休みたかったんだがな…。」
血子「ゴメンねダーリン。あんまりペコペコだったから、つい4・5人ほど…。」
賢二(この体のどこにそんなに…。)
奮虎「あ、この先を右さ曲がれば峠だべや。んだばオラは…」
勇者「コラ、どこへ行く気だ?逃げると酷い目に合うぞ賢二が?」
賢二「えっ!なんで僕が!?」
奮虎「オメェらは奴らを知らねぇからそったらことが言えんべさ!」
賢二「そ、そんなに恐ろしい相手なんですか?」
奮虎「…さぁ?」
血子「アンタも知んないんじゃん!!」
奮虎「とにかく、オラはまだ死にたく…んにゃ、死ぬわけにはいかねぇんだべ!」
勇者「やれやれ…。まぁ聞け、奮虎よ。」
奮虎「誰がウンコだ!」
勇者「言ってねーよ!文句あるなら名付け親に言いやがれ!」
奮虎「…オラに親はいねぇ。たった一人の弟とも…もう…。」
賢二「そ、そんな…。」
奮虎「オラを育ててくれたのは村のみんなだ。恩を返すまで…まだ生きてぇんだ!」

勇者「…わかった、行け。」
奮虎「えっ…。 んだば見逃してもらえるだか!?村に帰ってもいいと!?」
賢二「ゆ、勇者君…。」
血子「ダーリン…。」
なんと勇者が情けを見せた
勇者「もちろん「前を」だ。」
…わけが無かった。

 

2-23:隠処〔12歳:LEVEL15〕
嫌がる奮虎の首根っこを引っ掴み、「首無し族」が出るという峠を目指した俺達。
だが一時間歩いても、敵が現れる気配は一向に無かった。いい加減疲れたぞコラ。
勇者「オイ奮虎よ、一体いつまで歩かせる気だ?もしや迷ったんじゃあるまいな?」
奮虎「まぁ急かすなや。もうちっと歩きゃ奴らのアジトが見えるはずだべさ。」
賢二「あ、アジトに行くの!?どうせ襲われるんだから、わざわざ出向かなくても!」
勇者「アホ賢二。根こそぎ倒さねば真の目的は達せられんだろうが。」
血子「さっすがダーリン☆平和のためなら危険すら恐れないその勇敢なところ…」
勇者「行かねば宝が奪えんだろ?」
血子「…よりも、そんな自分本位なところがたまらないよね☆」
賢二「いや、「たまったもんじゃない」の間違いでは…?」
奮虎「むっ!見えたべ!!」
ダダダダッ!(駆足)
勇者「お、おいコラ!急にどうしたんだ…!?」
奮虎「ホレ、見るべ勇者。アレだべよ。」
勇者「なにっ!? おぉ、そうか!アレが…」

アレが…港町「ソノマ」…。
通過してどうする。

 

2-24:値切〔12歳:LEVEL15〕
どういうわけか、「首無し族」に襲われるはずの峠を何事も無く越えてしまった。
こういう展開はアリなのかどうなのか少し悩んだが、面倒なのでもう気にしない。
~エリン大陸:港町ソノマ~
勇者「というわけで、ご苦労だったな奮虎。さっさと帰…り道で襲われるがいい。」
奮虎「ま、待ってくれや!ホントにそうなりそうでオラ一人じゃ帰れねぇべさ!」
勇者「ガタガタ騒ぐな!この「人間異臭騒ぎ」め!」
奮虎「騒ぐのはオメェらだ!オラはひっそりと草陰で息を潜めてる側だべ!」
賢二「「異臭」の部分には一切反論しないんですね…。」
勇者「よし、とりあえず武具屋にでも向かうか。このデカい街なら良い店もあるだろ。」
血子「あっ、でもお金あんま無いじゃん?どうすんの?」
勇者「任せろ。値切ったり値切られたりは俺の得意分野だ。」
奮虎「ふ~ん。そげな交渉ごとが得意そうにゃ見えねぇがなや。」
血子「うっさいよ田舎モン!ダーリンは値切るってったら値切る男だもん!」
勇者「聞き分けの無い店主は、手足とか…こう…モギュッ!って。」
血子「えっ!「千切る」なの!?」
賢二「アレはもう…見たくないな…。」
血子「実際あったの!?」
勇者「まぁとにかく武具屋へ行くぞ。今宵の魔剣は、血を欲してやがるぜ。」
血子「何しに行くの!!?」
買う気はゼロなのか。

 

2-25:買物〔12歳:LEVEL15〕
久々に大きな街へとやって来たので、とりあえず武具屋へ行ってみることにした。
魔剣の呪いがあるため武器を買う気は無いが、防具は新調しておきたいのだ。
ガラララン。(鐘)
店主「ま~いらっしゃい。あらあら、随分と小さなお客さん達だこと。」
勇者「安心しろババア、貴様の小ジワほどじゃない。」
店主「Σ( ̄□ ̄;)!!」
血子「し、失礼だよダーリン!どう見てもまだ五十代だよ!」
店主「いや、まだ四十代…」
奮虎「そうだべ!まだ適当に「お嬢さん」とか言っときゃ付け上がる年代だべさ!」
店主「それは面と向かって言うセリフじゃ…」
勇者「ところでババア、この俺に似合うような素敵な防具は置いてないか?」
店主「あらら?それって…魔剣? こりゃまた随分と渋い趣味だわねぇ。」
勇者「趣味なわけあるか!どう見ても俺には不相応だろうが!」
店主「いや、どう見てもオーダーメイドですが…。」
勇者「剣のことはいい。何か「勇者」に似合う防具は無いかと聞いてるんだ!」
店主「勇者?う~ん…あ!そういえば前にそれっぽい盾の噂を聞いたような…。」
勇者「ほ、ホントか!?それはこの辺にあ…」
(「出たぁー!魔人が出たぞぉー!!」)
勇者「!!?」
血子「魔人!?一見平和そうだったのに…!」
賢二「ゆ、勇者君!」
勇者「ああ、わかってる!!」

よし、早速探しに向かうか。
ちっともわかってなかった。

 

2-26:職歴〔12歳:LEVEL15〕
やっと面白い話になってきたのに、魔人が現れて話が逸れてしまった。やれやれだ。
とても面倒ではあるが、敵を前にして逃げるような真似はできん。「勇者」として。
勇者「ったく…行くぞお前ら。準備はいいか?」
賢二「う、うん!」
ガラララン。(退店)
魔人「いらっしゃいませー。」
血子「えっと、四人ですけど入れますか~?って、いま出てきたんだよ!!」
魔人「ハッ、しまった!ついバイト時代の癖が!」
血子「バイトて! 誰が魔人なんか雇うかっての!」
魔人「失敬な!土木作業なら魔人の方が非力な人間より使えるんだぜ!?」
賢二「まぁそれじゃ「いらっしゃいませ」とは繋がらないけどね。」
魔人「…コ、コロス!ニンゲン テキ!」
血子「さっきまでペラペラだったじゃん!」
勇者「よし奮虎、条件を出そう。この弱そうな敵を倒せれば村まで送っ…奮虎?」
賢二「見事な逃げ足だったよ…。」
勇者「あ゛ぁ~!もういい!仕方なく俺が相手してやるよチクショウ!」
賢二「なんか最近「仕方なく」で戦うこと多いよね、「勇者」なのに…。」
勇者「さぁ!とっととかかって来い!」
魔人「ケッ、そっちこそかかっ…いらっしゃいませー!!」
血子「こだわるなー!!」
勇者「くたばれぇえええええ!!」
魔人「ハイ喜んでぇええええ!!」
居酒屋出身なのか。

 

2-27:説教〔12歳:LEVEL15〕
妙にバイト気分な魔人と闘うこと十秒…。俺はアッサリ勝利した。 十秒てオイ。
いくらなんでも弱すぎる。こういう雑魚は、一度キッチリ説教してやらねばなるまい。
勇者「おいコラ、貴様ナメてるのか?もうチョイ頑張ってもらわんとこっちの立場が…」
魔人「ひぇええええ!も、もうヤメてぇえええ!鬼ぃいいいい!!」
勇者「誰が鬼だ!魔人が言うな魔人が! あまり怒らすと金棒振り回すぞコラ!」
血子「鬼じゃんそれ!すんごいコテコテのイメージだけども!」
魔人「お、俺はただの使いッパで!ただ「ゴクロ様」の命令…なんでもなくて!」
勇者「五秒やる。そのまま全て話すか、二度と話せなくなるか…前者を選べ。」
血子「えっ!選択権は与えないの!?」
魔人「おお脅しには屈しないぜ!?魔人の誇りに懸けて口が裂けても…」
勇者「ほぉ、口を裂いても…?」
魔人「ゴクロ様です、ハイ。 この辺りに巣食う魔人達の親玉でございます。」
賢二(ま、魔人も生きるのに必死なんだなぁ…。)
奮虎「フンッ、ヘタレが。」
血子「お前が言うんかい!!」
勇者「こっ…!今まで一体どこにいやがったんだこの腰抜けめがぁ!!」
奮虎「や、大丈夫。もう立てるべ。」
血子「ホントに抜けてたんかい!」
勇者は金棒を振り回した。

 

2-28:出立〔12歳:LEVEL15〕
アッサリ負けた魔人の口からウッカリ漏れたボスの名前。なんてアホな奴なんだ。
もうなんだかとっても不愉快だ。こうなったらウサ晴らしに出掛けるしかないだろう。
勇者「決めた。その「お疲れ様」とかいう奴を倒しにいくぞ。」
魔人「うぇっ!?ダメだって!ヤメた方がいいってば!ゴクロ様めっちゃ強いし!」
賢二「ホントに強いんですか…?」
魔人「それがマジで強いんだよ。将棋とか。」
血子「インドア系かよ!!」
店主「ゴクロを倒しに行くって…本気かい?ボウヤ。」
勇者「あん?なんだババア、文句でもあるのか?」
店主「ゴクロの軍にはアタシらも参っててね。やるってんなら応援するよ!ホレッ!」
勇者「む?なんだこの短いベルトっぽいのは…?流行りのファッションアイテムか?」
店主「ちょっとした防具だよ。でも気を付けな?奴は正体不明の化け物だからね。」
勇者「フッ、俺を甘く見るな。我が家にも正体不明のペットくらい居たぞ。」
店主「あ、そうそう。例の盾の話だけど、多分もっと北に行けばわかると思うよ。」
勇者「そうか。 よし、そうと決まれば早速向かうぞ!案内しろ「マジーン」!」
マジーン「えぇっ!俺も行くのかよ!?って、なんか適当に名付けられてるし!」
奮虎「まぁ諦めるべ。コイツぁさすらいの「道案内コレクター」だでに。」

言われて気づいた。二人も要らんな。
奮虎は置き去りにされた。

 

2-29:策士〔12歳:LEVEL15〕
嫌がるマジーンを引き連れ、俺達は「魔人ゴクロ」の元へと向かうことになった。
聞けばゴクロは悪知恵の利く奴らしく、今まで倒しに出た奴は誰一人戻らんらしい。
ここはなんとしてでもブッ倒す。いい加減名を上げないと伝説になり損ねそうだしな。
勇者「おいマジーン、お前は部下なんだろ?だったら敵の能力とか教えろよ。」
マジーン「いや~、あの人は用心深い人でさ。実は俺、会ったことすらねーんだよ。」
賢二「部下にも正体を明かさないなんて…。ホントに用心深い人なんですね。」
マジーン「マジ凄いぜあの人。 玄関とか、ピッキング対策したいらしい。」
血子「思ってるだけかよ!」
マジーン「あ! あと、窓の鍵とかもシッカリ閉めてるって。」
血子「それは当然の行いだよ!」
勇者「そして将棋が強い。」
血子「関係ないよ!!」
マジーン「まぁ、とにかく策士なんだわ。この先にある「罠」を見りゃわかると思うぜ。」
賢二「えっ!ななな何かおっかないモノとかあるんですか!?」
マジーン「毎日変わるんで俺にもわかんねぇ。 だが、これだけは言える!」
勇者「な、何をだ…!?」

マジーン「迷いました。」
勇者「ブッ殺す!!」
まだ出発して五分だ。

 

2-30:道開〔12歳:LEVEL15〕
五時間後。激しく道に迷いながらも、なんとか敵の隠れ家付近までやってきた。
マジーンの話からすると、ここから罠がたくさんあるようだ。気をつけて進まねば。
勇者「よし、まずは俺が道を切り開く。お前らは俺の足跡を辿ってくるがいい!」
血子「そんなっ!自ら一番危険な道を行くだなんて…!」
勇者「俺は死なない自信がある。雑魚どもはのんびりとついて来ればいいんだ。」
血子「だ、ダーリン…☆」
カチッ(足元)
勇者は早速罠を踏んだ。
血子の足元が爆発した。
血子「ぷぎゃああああああん!
勇者「なっ!?ち、血子ぉおおおおお!! …さて、進むか。」
賢二「切り替え早っ!!」
マジーン「一番安全なはずの最後尾で被弾するとは…運がねぇ子だな。」
カチッ(足元)
勇者は再び罠を踏んだ。
賢二の足元も爆発した。
賢二「うわぁああああああああ!!
勇者「わー。賢二ぃー。」
マジーン「うわー!棒読みだー!」
勇者「おっ、あっちにもあるぞ。」
マジーン「ちょっと待て!えっ!?お前知っててやってたの!?」
勇者「フッ、台本通りだ。」
マジーン「台本!?」
勇者「ほい、ポチッとな。」
マジーン「おわっ!や、やめろぉおおおお!!」

勇者「と見せかけて…!」
ザシュッ!(斬)
お前が斬るのかよ。

 

2-31:奇襲〔12歳:LEVEL15〕
ついつい調子に乗って罠で遊んでしまい、気づけば俺は独りになっていた。
マジーンに至っては勢い余って普通に斬ってしまったが…まぁいっか。魔人だし。
~そして二時間後~
勇者「ふぅ~、コレが最後の部屋の扉か…。 さすがに少し疲れたな…。」
ではこの二時間をダイジェストでどうぞ。
コツッ、コロンコロン…。(転)
雑魚1「ん?なんだコレ?」
雑魚2「あん?馬鹿だなぁオメェ、そりゃ「手榴弾」に決まっ…え゛ぇっ!?」
ドカァーーーン!!(爆発)
雑魚3「むっ!どうした!?一体ナニゴトだ!?」
勇者「フッ、「ワタクシゴト」だ。」
雑魚3「えっ?ぎゃああああ!!
雑魚4「こ、こちらE班!ただいま謎の爆…はっ!」
勇者「そうだ、そのまま黙って無線を切れ。 引き金を引くぞ?」
雑魚4「わ、わかった!大人しくす(パァン!)」
雑魚5「撃つのか!結局撃つの(パパァン!)」

無線「班長!地下二階倉庫付近でF班を発見!コチラも全滅!」
G班長「くっ!よりによって上位班が居ないこんな時に…!」
無線「全員背後から…しかも傷口にためらいが無ガハッ!
G班長「ど、どうした!?何があった!? よし、今すぐ援護を…!」
無線「焦るな、貴様もすぐだ。(プツッ)」
G班長「なっ…!?」
雑魚6「班長!知らぬ間にこの階全域に火が…!もはや逃げられません!」
G班長「て、敵は鬼かぁあああああああ!!」

D班長「ハッ!動くなお前達、ここから先は「地雷原」だ!元軍人の血がそう騒ぐ!」
雑魚7「地雷!?そ、そういえば変な線が…。 これは一体どんな地雷なんです?」
D班長「シュプレングミーネ…線に触れると鋼鉄の弾丸が飛び散る対人地雷だ。」
雑魚8「な、なんてマニアックな…!」
雑魚9「うげっ! は、班長!前方より野ウサギが放たれましたぁー!!」
勇者「フッ…。」
バシュッ!ドバァーーーン!!(散弾)
雑魚達「うぎぇええええええええ!!

雑魚10「ぐふっ!なんだこのニンニク臭は…!?」
雑魚11「前にD班長から聞いた!確かこれは…糜乱毒「精製マスぐへえっ!
雑魚10「あぐっ!ぐごああああっ!

雑魚12「う、撃つな…撃たないでくれぇー!」
ズダダダダダダダダン!!(連射)
雑魚達「ぶばぁああああああ!!

雑魚達「い、いやぁあああああ!」
チュドォーーーーン!!
(爆発)


ズバシュッ!!(斬)
雑魚達「うごはっ!ゲハッ!ぐわああ!!

ドゴォオオオオオン!!(大爆発)
雑魚達「ぎょへあああああああああ!!
悪魔の所業だった。

 

2-32:名轟〔12歳:LEVEL15〕
二時間も掛かったが、なんとかゴクロが居そうな部屋に辿り着くことができた。
敵は切れ者と聞くが、まぁなんとかなるだろう。なんなら俺が「斬られ者」にしてやる。
魔人「フッ…よく来たなクソガキ。一人で乗り込んでくるとは見上げた度胸だよ。」
勇者「焦るな、もうじき地ベタから見上げることになるんだ。 貴様がゴクロか?」
魔人「…まあな。お前は勇者だろ?話は聞いてるよ。」
勇者「なにっ!? やれやれ、名声が轟きすぎるのも考えモノだな。」
ゴクロ「いや、轟いてるのは「悪名」だぞ。」
勇者「ちなみに誰経由でどう聞いた?内容によってはそいつも斬らねばならん。」
ゴクロ「名は言えん。青でもなくて紫でもない、恐ろしい御方なんでな。」
勇者「群青か!その微妙さ加減は群青錬邪か!」
ゴクロ「貴様の情報は分析済みだ。剣が予想よりデカい以外は情報通りだよ。」
勇者「フッ。コイツはどういうわけか、俺の成長に合わせて育つ呪われた剣なのだ。」
ゴクロ「答え出てるじゃねーか。呪いのせいだろ。」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!」
ゴクロ「さて、そろそろ処刑といくか。おっと、お前は動くなよ?」
勇者「む? ハッ!そいつらは…!!」
賢&血「う゛、う゛ぅ…。」
勇者「け、賢二!血子! 貴様…なんて酷いことを!!」
ゴクロ「お、オイ、これでも手当てしたんだぞ?」

チッ、余計なことを。
なんて酷いことを。

 

2-33:詐欺〔12歳:LEVEL15〕
運良く拾われたらしく、賢二と血子は生きていた。まったくしぶとい奴らめ。
ゴクロ「クッ…!聞いてはいたが、まさか人質作戦が通じないほど冷酷とは…!」
勇者「甘いな。俺がそんな手に掛かるとでも思ったか?「策士」が聞いて呆れるわ。」
賢二「いや、僕らの方が呆れたけどね…。」
ゴクロ「あ?策士だぁ? バカ言うな!俺は「力士」だ!!」
勇者「へ…?あ、すまん。ウッカリ聞き間違えちまったよ。って嘘付けっ!!」
ゴクロ「ケッ、なら技で証明してやるよ! 行くぜぇ!必殺「猫騙し」!!」
ゴクロは「猫騙し」を放った。

だが宣言してどうする。
賢二「なんだかとっても勝てそうな気が。」
勇者「ふざっ…そんな技じゃ猫だって騙せんわ!なにが「猫騙し」だこの野郎!」
ゴクロ「…ニャ、ニ゛ャァーーー!!」
勇者「「魂」か!「猫魂」だったのか!?」
血子「だ、ダーリン!?ちょっと騙されちゃってない!?」
ゴクロ「ヘッヘッへ引っ掛かりやがったな!これぞ必殺「子供騙し」よ!!」
血子「名前コロコロ変えないでよ!」
やっぱり勝てそうな気が。

 

2-34:倒技〔12歳:LEVEL15〕
「策士」だと思っていたら実は「力士」だったというゴクロ。 いや、どっちでもいいし。
もう今日は疲れた、早く帰って休みたい。とっとと片付けて撤収することにしよう。
ゴクロ「さぁ気を取り直して行くぜ! はっけよ~い…のこったぁ!!」
勇者「し、しまった!組まれっ…!」
ゴクロ「ヘッ!組んじまえばこっちのもんだ!食らえ必殺「浴びせ倒し」!」
勇者「うぐっ…なんの!俺も負けじと必殺「送り倒し」!」
ゴクロ「むっ、やるなガキのくせに…!なら今度は必殺「寄り倒し」だ!」
勇者「フン!ならば俺は意表を突いて…必殺「勇み足」だ!!」
ゴクロ「なにっ!?な、なんて大胆な…!」
血子「ねぇ賢ちゃん、「イサミアシ」って何!?そんなスゴい技なの!?」
賢二「えっと、確か「勢い余って自分から出ちゃった時」の決まり手…だったかな?」
血子「ダメじゃんそれ!ダーリン負けちゃうじゃん!」
勇者「フッ、安心しろ。こんな非力な力士に負ける俺ではないぞ!」
ゴクロ「ほぉ、言うじゃねーか!だが俺の「真の姿」を見たらどうかな!?」
血子「し、真の姿!?そのすんごいお約束的な展開はアリなの!?」
ゴクロ「アリに決まってんだろがぁ!うぉおおおおおおおああああああ!!」
ゴクロは力を溜めた。
ゴクロは見事なマッスルバディになった。
~三分後~

ゴクロ「いや、もうホント…ごめんなさい。」
決まり手は~、「見掛け倒し」~。

 

2-35:正体〔12歳:LEVEL15〕
巨大化して強くなるのかと思いきや、むしろ弱くなりやがったゴクロ。ナメてんのか。
まったく、こんな雑魚に怯えるとは…町民風情の雑魚さ加減には呆れてくるぜ。
勇者「さぁ、そろそろ処刑のお時間だ。俺に逆らったことを死んで悔やむがいい。」
ゴクロ「ま、待て!見逃してくれよ! た、頼む!頼む必殺「拝み倒し」!」
血子「しつっこいよ!!」
賢二「なんか結局、「策士」でも「力士」でもなかった感じだよね…。」
ゴクロ「てゆーか違うんだよ!実は俺は(ザシュッ!へぶっ!! (…ガクッ)」
勇者「なっ…ヘブ!? ま、まさか…お前があの「ヘブ」だったのか!?」
血子「えっ!ただの悲鳴じゃないの今の!?実は「伝説の魔獣」とか何かなの!?」
勇者「いや、悲鳴だろ。」
血子「あ、うん…。」
勇者「さて、くだらんこと言ってないで行くぞ。財宝漁りには時間が掛かるんだ。」
血子「そ、そだよ…ね…。」
賢二(不憫だなぁ…。)
いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
勇者はレベル16になった。

「非道」が10上がった。
「非道」はメーターを振り切った。
~その頃~
群青「…なるほど、全滅かよ。しかも惨殺とはやるねぇクソガキが。」
電話「で、どうすんだい?脅威になる前に始末しとくか?」
群青「いや、まだだ。ガキを殺せば親父が動く…それはまだ困るもんでな。」
電話「まぁいいがね、長引いた分だけ金は貰えるし。」
群青「にしてもテメェも鬼だよなぁ。実力見るだけのために部下を殺させるなんてよ。」
電話「雑魚の利用価値なんて知れてるしなぁ。他に使い道も無いんでね。」
群青「ギャハハ、確かに。 じゃあまぁ引き続き任せるわ、うまくやれよな…ゴクロ。」


マジーン「ああ、任せときな。」
さっきのゴクロは偽者だった。

 

2-36:忘却〔12歳:LEVEL16〕
ゴクロを倒し当面の生活費を確保した俺達は、「勇者の盾」を求めて北へ進んだ。
そしていくつかの村を越えた先で、ようやくそれらしい情報を掴んだのだった。
~エリン大陸:タミ村の喫茶店~
勇者「てなわけで、どうやら目的の盾はこの先の「ババン山」という山にありそうだ。」
マジーン「バッ…ババン山つったら「山賊」が出るって有名な山だぜ!?ヤベェよ!」
勇者「山賊…?フッ、面白い。山賊狩りというのもまた一興だろ。 行くぞ。」
賢二「えっ、すぐに向かう気!?少しは休もうよ! ちょっ…待ってよ勇者君!!」
ガタン!(倒れる椅子)
少女「ゆ…勇者やてぇ~!?」
勇者「むっ…?」
勇者は振り返った。
背後で謎の少女が睨んでいた。
勇者「おいオヤジ、勘定はここでいいか?」
少女「ってシカトかい!ここはもっと食いついてくるとこちゃうんかい!」
勇者「何か用か小娘?俺の進路を妨げる気なら女であろうと容赦はせんぞ?」
少女「その傲慢な態度…まさしく勇者や…。 驚いたで、ほんま驚きや…。」
勇者「…ぬおっ!? そ、その口調…まさかお前は…!」
少女「借金チョロまかして逃げおった男が、こないノンキに茶ぁシバいとるとはなぁ!」
血子「えっ!借金て!?まさかダーリン借金取りから逃げてたの!?」
少女「ああ、そのまさかや。コイツはウチにドデカい借りがあんねん。なぁ勇者?」
勇者「…借金?」
少女「忘れとったんかい!」
勇者「ところでお前…誰だ?」
少女「そこは覚えとかんかい!んならさっきの驚きップリはなんやってん!?」
勇者「フッ、冗談だ。覚えてるさ。 あれは忘れもしない、去年か一昨年の…」
少女「すっかり忘れとるやないかい!」
勇者「久しぶりだな、ゴンゾウ。」
少女「ひとカケラも覚えとらんのんかい!ウチん名は「商南(あきな)」やっ!!」
賢二「あぁーーーっ!! あ、ああ…アナタは「アキドン村」の…!」
商南「おっ、タレ目は覚えとったようやな。褒美にアンタは肝臓二つで手ぇ打つわ。」
賢二「二つも売れな…というか持ってないですよ!」
商南「じゃかーしぃわボケェ!借りた金は三代かけても返すんがスジやろがぁ!」
勇者「オイオイ、人聞きの悪いことを言うな。俺達は別に金など借りてないだろ?」
商南「品代踏み倒してんねんから同じようなも…なお悪いっちゅーねん!」
勇者「焦るな。ひたすら待てばいつかは戻る。「金は天下の回し者」と言うだろう?」
商南「誰の差し金で動いとんねん!それを言うなら「回りもの」やろうが!」
勇者「アイツらはよくやってくれてるよ。」
商南「お前が黒幕やったんかい!」
血子「ちょ、ちょっとアンター!血子のダーリンにイチャモンつけないでくれる!?」
商南「あ?なんやこの茶っこい珍獣は?中身くりぬいて朝市で売りさばいたろか?」
血子「ひ、ひぃーー!!」
マジーン「ま、まぁ落ち着けよ!つーか暴れる前に今の状況を説明してくれ!」
商南「うっさいわこの緑黄色魔人が!その緑がかった顔を鮮血で染めたろか!?」
マジーン「ひ、ひぃーー!!」
賢二「ど、どうするの勇者君?このままじゃ先へ進みようがないよ…?」
勇者「…仕方ない、とっておきをくれてやるか。珍品だし売れば結構な金になろう。」
商南「あん?なんや、ちゃんと当てがあったんかい。ならさっさと出しぃや。」
血子「だ、ダメだよダーリン!こんな女の言いなりになることないよー!」
勇者「いや、いいんだ。実は俺も…早く手放したかったんだ。」
血子「だ、ダーリン…?」

さらばだ、血子…。
勇者は「厄介払い」に成功した。

 

2-37:握飯〔12歳:LEVEL16〕
血子を売り払い、やっと自由を手に入れた俺。借金も返せたし一石二鳥だった。
まぁツッコミが減ったのは多少痛いが、ウザいよりはマシだ。気にせず行くとしよう。
~ババン山(中腹)~
勇者「で、商南よ…お前はいつまでついて来る気なんだ?もう用は済んだろうが。」
商南「あ~。実はウチ独立してなぁ、今は流しの商人やねん。せやからよろしゅう。」
勇者「あぁっ!?何が「せやから」だ!全然意味がわからんぞ!」
賢二「そ、それってまさか…僕らと一緒に旅する気ってことですか?」
商南「せや。女の一人旅は物騒やでな。ホレ、「旅は道連れ世は情け」言うやろ?」
勇者「フザけるな!俺は「情け」と盗子が大嫌いなんだ!」
賢二「存在忘れてたのに、こういう時には出てくるんだね名前…。」
商南「別にええやん、ケツの穴のちっさい男やなぁ。大根突っ込んで広げたろか?」
マジーン「あれ?そういやあの子はどうしたんだ?まさかもう売っちまったとか?」
商南「あ、とりあえずウチの実家に送ったったわ。ごっつ泣きながら去ってったで。」
勇者「そんなことより俺は腹が減ったぞ。おい商人、何か持ってないのか?」
賢二「いや、その前に少しは悲しもうよ…。」
商南「メシか?せやったらここに握り飯があるで。1000銅(約1000円)でどうや?」
勇者「あん?まさか仲間から金を取る気…って、高ぇよ!そんな握り飯があるか!」
商南「ったく、ケチケチすんなや2000銅くらい。」
勇者「上がってんじゃねーか!一体この十秒でコイツに何が起きたんだよ!?」
商南「コイツ、成長期やねん。」
勇者「そうか、今後が楽しみだな…。」
商南「納得すんのんかい!!」
勇者「そんなの俺の勝手だろうが。とにかく腹が減ってんだ、さっさと寄こせよ。」
商南「まぁええけどな。こないな握り飯が3000で売れるいうなら。」
勇者「また上がってんじゃねーか!コイツのどこにそんな金が掛かってんだよ!?」
商南「コイツ、親に仕送りしとんねん。」
勇者「苦労してんだな…。」
商南「せやからなんで納得できんねん!!」
賢二「・・・・・・・・。」
マジーン「・・・・・・・・。」

山賊達「・・・・・・・・。」
さりげなく囲まれていた。

 

2-38:監禁〔12歳:LEVEL16〕
商南とモメていたら、知らぬ間に山賊達に囲まれていた。 生意気なっ!皆殺しだ!
…と、いつもなら早速戦闘開始なのだが、今回は少し頭を働かせてみようかと思う。
どうせ盾はコイツらが隠し持ってるんだ、わざと捕まって案内させようじゃないか。
~一時間後:山賊の隠れ家(牢獄)~
マジーン「ぐっ、取れねぇ…!この枷(かせ)はかなり厄介だぜ、ヤバくねぇか!?」
賢二「どどどどうしよう!見張りが帰ってくる前に逃げなきゃなのにー!」
勇者「まぁ焦るな賢二、もう少しだ。むんっ!よっ…ホアァッ!! よし、外れたぞ。」
商南「ほ、ホンマか!?」
勇者「肩が。」
商南「手枷を外さんかい!!」
賢二「うわーん!もうお手上げだー!」
勇者「ば、バカを言うな!上げたら痛ぇよ!」
マジーン「いや、そういう意味じゃねーだろ。」
勇者「チッ、まさかこんな枷ごときが外せんとは…!」
賢二「人の道ならとっくに外れてるのにね…あ゛。」
勇者「よーしわかった!枷を外したらまず貴様から殺してやる!なぁお前達!?」
商南「アホか、逃げるんが先に決まっとるやないか。」
マジーン「だよなぁ。今はそれどころじゃねぇって。」
賢二「で、ですよね!そうですよね!」

チッ、仲間「外れ」か…。
うまいこと言ってる場合か。

 

2-39:変人〔12歳:LEVEL16〕
肩は外れたが肝心の枷を外すことができず、結局脱出することができなかった。
それどころか、今から「族長」とやらに会わされるようだ。 少々ヤバいかもしれん。
山賊A「族長ぉ!妙な奴らがうろついてたんで連れて来やしたぜぇ!」
族長「ぬっ? おぉ、ご苦労ご苦労。後はオデがやるがら下がっでろや。」
勇者「貴様が長か。山賊の名にふさわしくムサ苦しいオッサンだな。」
族長「おいおい、囚われの身分で随分と威勢がいいでねぇが小僧っこよ。 名は?」
勇者「名乗れだとぉ!?貴様なんぞに名乗る名など無いほどに俺の名は勇者だ!」
商南「思っきし名乗っとるやないかい!!」
族長「勇者だぁ?ブハハッ!そげな妙な名さ付げる馬鹿親が他にもいだどはなぁ!」
勇者「ほ、他にも!? さすが大陸…広いな。親父と似た奴まで存在するとは…。」
族長「みでぇだな。まぁアイヅの方が変わっどるだろうがよぉ。」
勇者「あん?いやいや、ウチの親父の変人っぷりに勝てる奴などそうは居ないぞ?」
族長「馬鹿言うなオメェ、奴ぁ剣と間違えでゴボウで戦うような型破り野郎だど?」
勇者「フンッ、親父なんかアレだぞ!「勇者」のクセに「召喚魔術」を習得したぞ!」
族長「世界広しと言えど、「食い逃げ」だけで指名手配されだのは奴しがいめぇ。」
勇者「親父だって悪人だ!なんたって今をときめく悪人「五錬邪」の創設者だしな!」
族長「奴はよ、「天帝」の子…「皇女」の求婚を断っだような男だど?もっだいねぇ。」
勇者「ナメるな!親父なんか皇女どころか「魔王」と結婚したぞ!」
マジーン(…じょ、冗談だよな?)
賢二(ハイ、「生きた冗談」でしたよ…。)
勇者「つーわけでまぁ、親父の勝ちだな。」
族長「うんにゃ、まだまだあるど!奴が負げるはずぁねぇ!」
賢二(この場合、どっちが勝ちなのか負けなのか…。)
勇者「いいや!親父だ!!」
族長「凱空だ!!」
勇者「同一人物じゃねーかっ!!」
親父にはろくな印象が無かった。

 

2-40:宴会〔12歳:LEVEL16〕
俺が旧友の息子だとわかり、上機嫌になった族長の号令で宴が催された。
山賊どもは意外と気のいい奴ばかりで、宴は和やかな雰囲気で始まったのだった。
族長「そうが、オメェが凱空の…。風の噂でしが聞いでねがっだがら驚れぇだわ。」
勇者「俺も驚いたぞ、まさか茶柱が立つとは。」
商南「会話する気あらへんのんかい!」
賢二「あ、あの~…。ところで結局、僕らの安全は保証されてるんでしょうか…?」
族長「そりゃもちろんだ!旧友のガキどもに手なんぞ…おぉ、悪ぃな。とっとっと。」
マジーン「いや、気にしねぇでくれ。こういうのは前のバイトで慣れてんだ。」
賢二「あ、その注ぎ方ってなんかカッコいいですね!あれ?でも居酒屋っぽくは…」
マジーン「あ゛…いや、他にもやってたんだよ。なんつーの?ほら、ホストってやつ?」
賢二「へぇ~!もっと詳しく聞いてもいいですか? やっぱ大変だったんですか?」
マジーン「え゛っ!あ…あぁ、大変だったよ。雨の日も風の日も…手紙を待ったぜ。」
商南「そりゃ「ポスト」ちゃうんかい!」
賢二「ま、まぁいいじゃないですか。せっかくの席だし少しくらいハメ外しても…ね?」
勇者「フッ、まあな。」
商南「ってお前が答えるんかいっ!!」
マジーン「ご、ゴメンな…。ホント、うぐっ、ゴメンなぁ…。」
商南「謝るんはお前なんかい!しかも泣き上戸か!」
勇者「まあな!アッハッハ!」
商南「おのれはメッチャ笑うとるやないかい!!」
賢二(このツッコミ、助かるなぁ…。)
盗子はポジションが危うい。

 

2-41:盗賊〔12歳:LEVEL16〕
夜もふけ宴も終わり、山賊どもが寝静まった頃、俺達は「宝物庫」の前に来ていた。
奴らが気を許している今がチャンスだ、目的の盾を奪ってとっとと逃げるとしよう。
賢二「ね、ねぇ勇者君、ホントに盗むつもり?あんなに良くしてくれたのに…。」
勇者「なかなか頑丈そうな扉だな。剣ねじこんで開けられるだろうか?」
賢二「勇者君…見えてる…?僕はここに居るよ…?」
勇者「開かんな…。よし、ならば爆薬で扉ごとフッ飛ばすか。」
商南「爆っ…!アホか!なに考えとんねんアンタ!」
賢二「で、ですよね!もっと言っちゃってくださいよ!」
商南「ウチに任せんかい。鍵開けならお手のモンやで。」
賢二「あれっ!?止めてくれるんじゃなくて!?」
マジーン「金が絡むと目の色変わるんだなこの子…。」
勇者「フン、まぁそこまで言うなら貴様に任せてやる。だが五分以上は待たんぞ?」
カチッ(開)
商南「ホレ、開いたで。バレへんうちに行こうや。」
三人(は、速い…。)
商南は妙に手馴れていた。
勇者「さてと、じゃあさっさと済ませ…」
声「…やれやれ、やっぱし来だがよ。血は争えんもんだなぁ。」
賢二「えっ!ぞ、族長さん!?なんでここに…!?」
族長「まさがど思っで張っどったんだぁ。実ぁ凱空の奴も同じことしくさったでよぉ。」
勇者「な、なにっ!? チッ、親父の奴め余計なことを…お、高そうな剣発見。」
商南「アホか勇者!そないなモン漁っとる場合やないやろが!」
族長「そうだど勇者、その嬢ちゃんの言う通りだぁ。こういう時は素直に…」
商南「狙うんやったら宝石や。剣なんかかさばっていかんわ。」
族長「・・・・・・・・。」
賢二「・・・・・・・・。」
賢二の土下座が炸裂した。

 

2-42:宝箱〔12歳:LEVEL16〕
こっそりと宝を奪って逃げるつもりが、族長の奴に見つかってしまった。マズったぜ。
こうなりゃ殺るしかないか…そう思った時、意外にも族長はこう言ってきたのだった。
族長「悪いが全部はやれね。だが戦友のガキだぁ…一つだけ選んで持っでけや。」
賢二「えっ!怒るどころかくれるんですか!?ホントに!?」
勇者「む~、一つかぁ~…まぁ仕方ないか。じゃあ「勇者の盾」を寄こしやがれ。」
族長「勇者の盾だぁ?そりゃここにゃ無ぇだよ。 噂じゃ山頂の洞窟にあるとか…。」
勇者「あん?なんだ、お前らが持ってたんじゃないのか。だが何故取りに行かん?」
族長「ブハハッ、族は「奪う」のが仕事だでな。探し行ぐのは面倒でよぉ。」
商南「ゆ、勇者ー!なんやごっつ高そうな宝箱めっけたでぇー!」
勇者「む?おぉ、確かに何かありそうな感じだな。 あれを貰ってもいいんだよな?」
族長「あれか…いや、あれはヤメとげ。 鍵が開かねぇでな、オデも中は知らな…」
カチッ(開)
商南「開いたで。」
族長「Σ( ̄□ ̄;)!!」
勇者「よし、じゃあとりあえず見るだけ見てみるとするか。」
マジーン「ちょ、ちょっと待てよ!何だかわかんねぇんだろ!?危なくねぇか!?」
賢二「そ、そうだよ!もしかしたら腰抜かすような恐ろしいモノが入ってるかも…!」
勇者「フンッ!たかが宝箱ごときにビックリするなど有り得んわ!見るがいい!!」

ギィィィィ…(開)

姫「…ほぇ?」
勇者「ビックリーー!!!」
勇者は腰が抜けた。

 

2-43:名前〔12歳:LEVEL16〕
宝箱を開けたら、なんと中から姫ちゃんがコンニチハ。う、嬉っ、嬉しljふぁl%をpうpw
姫「ほへぇ~…。」
勇者「ま、ま、まさか…ひ、ひ、ひっ、姫ちゃブゥーーー!!(鼻血)」
賢二「うわぁー!お、落ち着いて勇者君!その量は興奮して出す量じゃないよ!?」
姫「あ、勇者君お久しぶり。 こんな所で何してるの?」
勇者「い、いや、それはこっちが聞きた…相変わらず可愛いぜうっひょー!!」
賢二(しばらくこのキャラなんだろうな勇者君…。)
姫「勇者君は…ちょっと見ないウチに赤くなったね。」
勇者「フッ、照れてるんだ。」
商南「鼻血やろがい!どう照れたら真紅に染まれんねん!」
マジーン「つーかよ、誰なんだこの子は?まさか「宝箱の精」とかじゃねぇよな?」
賢二「あ、そうだった。えっと彼女は…」
姫「気のせいだよ。」
マジーン「え…。 そ、そうか。気のせいだったか…。」
商南「納得すなや!言葉の意味が明らかにちゃうやろが!」
姫「あ、盗子ちゃんお久しぶり。」
商南「誰やねん!ウチん名は商南や!!」
姫「…あ~、あと一歩だったよ。」
商南「全然足りひんわ!ちゅーかそもそも方向がちゃう!!」
姫「…こっち?」
商南「こっちやない!指してもわからへん! もうええから名ぁ名乗れや!」
姫「すこぶる面倒だよ。」
商南「二秒で終わるがな!サラッと言や済むことやろが!」
姫「初めまして、「サラッ」だよ。」
商南「そういう意味ちゃうがな!あとどうせなら「ッ」は取らんかい!」
姫「二度目まして、サ…」
商南「言わんでええ!!」
姫「じゃあもう商南でいいよ。」
商南「そりゃウチん名やぁー!!」
姫「えっ…。」
商南「なんで驚いとんねん!なんで「衝撃の事実発覚顔」やねん!」
姫「鼻血…?」
商南「そこか!今さらそこに驚いたんか!」
姫「えへへ。引っ掛かった?」
商南「何が「引っ掛かった?」や!思っきし素の顔やったやないか!」
姫「私は引っ掛かったよ。」
商南「首謀者は誰やねん!!!」
マジーン「す、スゲーなあの二人…。」
賢二「止まらないね…。」
勇者「ああ、止まらないな…。」

鼻血が…。
勇者は死ぬかもしれない。

 

2-44:誤解〔12歳:LEVEL16〕
姫ちゃんを仲間に加え、目的地も定まった俺達は翌日、山賊屋敷を去ることに…
しようかとも思ったのだが、別に焦ることもないのでノンビリ過ごしてやることにした。
なんでも洞窟には「番人」がいるらしいしな、英気を養っておくのも悪くないだろう。
商南「なぁ勇者、もう一週間やで?いつになったら出発しよんねん?」
勇者「ん~、まぁもう少し待て。こっちは肩と腰と大量の血液が抜けたんだぞ?」
商南「ふ~ん。ま、ええけどな。誰かてビビるっちゅーことはあるもんや。」
勇者「あ?まさか俺が逃げてるとでも…? そんなつもりは毛頭無いわ!!」
姫「えっ…。勇者君、「モーホー」じゃないの?」
勇者「うぇっ!? ち、違うぞ姫ちゃん!「毛頭」だ!!」
姫「やっぱりモーホーなんだね…。」
勇者「誤解だ!そういう意味じゃないんだ!毛頭…っつーか「やっぱり」てオイ!」
姫「お巡りさーん、モーホーがいますよー!」
勇者「なっ!罪なのか!?アレはアレで立派な愛の形なんじゃないのか!?」
姫「元気出してね。」
勇者「励まされたー!!」
商南(なんやオモロいことになってきよったで~☆ なぁタレ目っち?)
賢二(ま、まぁ他人事のウチはね。)
姫「勇者君…今から言うことに正直に答えてほしいよ。」
勇者「お、オイオイ!なんだよ真剣な顔して! まさか本気で疑って…!?」

姫「モーホーって何?」
商南「って知らんかったんかい!!」
勇者「そんなキミが好きだぁー!」
姫「モーホーって食べれる?」
勇者「ん?ああ、食う奴は食うぞ。」
賢二「いやいやいや!そんな誤解を招くような表現は良くないよ!」
勇者「だってホラ、アイツのお前を見る目ったら…。」
賢二「え゛っ…?」

山賊A「(☆∀☆ )」
昨夜からマジーンを見かけない。

 

2-45:番人〔12歳:LEVEL16〕
更に二日が経ち、ここでの生活にもいい加減飽きてきた。よし、旅立とう。
勇者「世話になったな。もう二度と会うことは無いだろうから、涙で見送るがいい。」
族長「…そが。なんだが寂しぐなるやなぁ。 ま、気ぃ付げで行げや。」
山賊A「オメェも元気でやれよな。」
賢二「あ、ハイ。みなさんもお元気で。」
山賊A「いつか遊びに来いよ。そんでまた、楽しくやろうな…色々と。(ボソッ)」
賢二「何をですかっ!その妙に潤んだ瞳は何ですかっ!?」

そして歩くこと数時間。俺達は山頂の洞窟内、謎の扉前に来ていた。
明らかに人為的に作られた扉だ、きっとこの中に「勇者の盾」はあるのだろう。
勇者「じゃあ開けるぞ。番人がどんな奴かは知らんが、ビビッて逃げるなよ?」
商南「フン、あんな緑魔人なんぞと一緒にせんといてほしいわ。ウチは平気やで。」
賢二「ホントにどうしちゃったんだろマジーンさん…。」
勇者「雑魚のことは気にするな、今は番人のことだけ考えてろ。 行くぞ!」
ギィイイイイ…(開)

スイカ「…ん?」
バタンッ!!(閉)
勇者「帰ろう。」
賢二「えっ!どうしたの!?なんでそうなるの!?」
勇者「い、いや。いま一瞬…見てはいけない何かを見たような気がしたんだ。」
商南「はぁ?何言っとるんや!「時は金なり」っちゅーやろが、早ぅ行かんかい!」
勇者「お、おう。」
ギィイイイイ…(開)

スイカ「粗茶だが。」
姫「今日もヌルいね。」
バタンッ!!(閉)
勇者「茶菓子を買って来よう。」
賢二「えっ!一体何を見たの!?何を見たらそんな穏やかな発想に至るの!?」
勇者「い、いや。いま一瞬…中で姫ちゃんがティータイムだった気がしたんだ。」
商南「はぁ?んなわけあるかい!姫ならホレここに…ってどこにやねん!?」
勇者「やっぱり中に居るのか…。」
姫「誰が?」
三人「え゛ぇっ!!?」
姫は〔神出鬼没〕を使えるのか。

 

〔神出鬼没(しんしゅつきぼつ)〕
魔法士:LEVEL??の魔法。(消費MP??)※伝説の魔法なため詳しくは不明。
読んで字の如く神秘的な魔法。時々消しゴムが見当たらなくなるのもこのせいとか。
 

 

2-46:空気〔12歳:LEVEL16〕
洞窟の奥の間…その中に見えたのは、なんと「スイカ割り魔人」。あのウザい奴だ。
よし、こうなったら一瞬で終わりにしてしまおう。喋る間も無いうちに砕いてやろう。
勇者(よし、開けるぞ。俺が一撃でカタをつける、お前らはのんびり茶でも飲んでろ。)
ギィイイイイ…(開)
勇者「うぉおおお!派手に砕けろっ!それがスイカ割りの醍醐味だぁー!!」
スイカ「…ぬぅっ!?」
バスコーン!(叩)
勇者はカウンターを食らった。
勇者「い゛…いってぇー!!」
賢二「えっ!なんで割りにいった勇者君が割られかけてるの!?」
スイカ「フッ、ワシを誰と思っ…お?誰かと思えばカクリ島のスイカどもではないか。」
商南「誰がスイカやねん!ってお前がスイカやないかい!!」
スイカ「久しいな小僧。相も変わらずヌシのスイカは壮健か?」
賢二「ごめんなさい初対面です。」
姫「初めまして姫だよ。」
勇者「いや、キミは何度も会ってるぞ。つい2・3分前にもだぞ。」
スイカ「御託はいい!勝負だ小僧!! ここで逢ったが…ひぃふぅみぃ…。」
勇者「いちいち数えるな!そこは「百年目」と言っときゃいいだろが!」
スイカ「三年目!!」
勇者「しかも間違ってるし!つーかなんで貴様はいつもすぐ挑んでくるんだ!?」
スイカ「フンッ、知れたこと。闘いこそが…闘いこそが我がスイカだからだ!!」
勇者「聞いた俺がアホだったぜ…。」
声(勇者!ちょい勇者っ!)
勇者「あん?なんだよ商南、俺は忙しいんだ。愛の告白なら顔を改めろ。」
商南(誰がするか!って「日」ちゃうんかい! …やのうて、ウチが言いたいんは…)
勇者(なにっ、盾を見つけた!?でかしたぞ商南!)
商南(なんで通じとんねん!まだ何も言うとらんがな!)
勇者(フッ、ナメるな。俺は必要以上に空気の読める男だ。)
商南(読めすぎや!気色悪いわ!!)

賢二「・・・・・・・・。」
スイカ「・・・・・・・・。」
ちっとも読めてなかった。

 

2-47:危険〔12歳:LEVEL16〕
金の亡者の力により、「勇者の盾」の在り処はわかった。 あとはゲットするだけだ。
勇者(というわけで賢二、後は任せた。一足先に夏を満喫してくれ。)
賢二(え゛ぇっ!?む、無理だよ僕じゃ…の前に、逃げられないんじゃない?)
スイカ「どこへ行く気だ小僧?このワシから逃れられるとでも思っておるのか?」
賢二(ほらやっぱり…!)
勇者「スイカを買ってくる。」
賢二「いや、バレバレだから!さっきの話聞こえてたから!」
スイカ「ワシの分も頼む。」
賢二「やっぱりですか!やっぱりそういうノリですか!」
スイカ「さぁ来い小僧!あの日からどれだけ育ったか…そのスイカ見せてみよ!」
賢二「だから初対面ですってば!」
スイカ「いくぞ!「スイカ流棒術」奥義…「百連パンチ」!!」
賢二「棒はどこいったんですか!?」

~その頃~
マジーン「よぉ!遅かったな「黄緑錬邪(キミドレンジャ)」。一体何日待ったと…」
黄緑錬邪「オイ、なに偉そうにタメ口きいてんだよテメェ?煮るぞコラ。」
マジーン「…ハイハイ悪ぅございましたよ。ホレ、お目当ての勇者はこの中だぜ。」
黄緑錬邪「あぁそうかよ。じゃあテメェはもう用無しだ、帰って糞して寝やがれ。」
マジーン「だがよぉ、いいのか?群青のダンナは殺すなっつってたぜ?」
黄緑錬邪「私は私の好きなようにやる。テメェは大人しく草でも食ってろ。じゃあな。」
新たな危険が迫っていた。
スイカ「ならば「スイカ流棒術」最大奥義…「百連パンチ…と見せかけてキック」!!」
賢二「やっぱり棒は無視ですか!?」
だが緊迫感は無かった。

 

2-48:装備〔12歳:LEVEL16〕
賢二がスイカに割られかけてる間に、俺達は勇者の盾を探した。 そして…。
スイカ「さて、そろそろ茶番も終わりにするか。今からは地獄の「スイカ祭り」だ!」
賢二「そっちの方が茶番くさいですよ!!」
声「フッ、悪いなスイカ。その祭りは雨天中止だ。」
スイカ「ぬぅ…? ハッ!しまっ…!」
勇者「貴様の「血の雨」でなぁ!!」
勇者は「勇者の盾」を装備している。
スイカ「くっ!このワシの虚をつくとは…敵ながら見事な小僧よ!」
賢二「いや、あれで気づかないアナタの方がある意味見事ですよ。」
勇者「もうコレは俺のモンだ。返せと言われても返す気はサラサラ無いぞ?」
スイカ「…いや、良い。盾はヌシを選んだ、ならばそれが定めということなのだろう。」
勇者「ん?なんだ、やけにアッサリしてるじゃないか。「スイカだけに」ってか?」
スイカ「フンッ! だが心して扱えよ小僧?その盾はかつて、伝説の「勇者」が…」
勇者「安心しろ。意外にも大事にするさ。」
商南「自分で「意外にも」てオイ!」
スイカ「…この地に封じた、「呪われた盾」なのだからな。」
勇者「ってエッ!?そんな意味だったのかよ!!」
スイカ「む?知らぬと? 「勇者が封じた「破壊神の盾」」…略して「勇者の盾」だ。」
勇者「妙なところで略すなよ!全く正反対の意味じゃねーか!!」
姫「甘いね、私は知ってたよ。」
商南「どさくさ紛れに嘘吐くなや!ちゅーか知っとったんなら教えたらんかい!」
姫「勇者君それ呪われてるよ!」
商南「って今かい!!」
姫「あんまり細かいこと言ってるとハゲちゃうよ。 賢二君が。」
賢二「えっ!なんで僕が!?」
商南「ちゅーか細かないわ!!」
勇者「つーか外れないぞこの盾!!」
勇者はまた一歩「魔王」に近づいた。

 

2-49:奇襲〔12歳:LEVEL16〕
ノリノリで装備した盾は、なんと呪いの盾だった。剣の次は盾とは…なんてこった。
散々期待していた分落胆も激しい。 よし決めた!とっとと帰って今日はヤケ酒だ!
勇者「…じゃ、まぁそういうわけで。」
スイカ「待てぃ小僧!どこへ行く気だ!?決着はまだついておらんぞ!」
声「ケッ、ちんたらやってんじゃねーよ雑魚どもが!まとめて死にやがれ!!」
一同「!!?」
黄緑錬邪が現れた。
そして大地が二つに裂けた。
賢二「うわわっ!落ちっ!危なっ!おわっとっとー!!」
姫「う~ん。キレがイマイチ。」
商南「ダンスちゃうわ!なに冷静に審査しとんねん!」
勇者「誰だ出て来い!こんなヌルい攻撃じゃ俺達は倒せんぞ!!」
スイカ「まったくだ!ガッハッハー…!!」
スイカは谷底へと消えていった。

 

2-50:非常〔12歳:LEVEL16〕
何者かの奇襲攻撃により、またもや谷底に散るハメになったスイカ割り魔人。
そして現れた黄緑衣装の敵。初めて見る奴だが、見るからに五錬邪の一派だ。
勇者「おいコラ貴様!その趣味の悪い衣装…五錬邪予備軍か!?」
黄緑「あ?予備じゃねーよ。縁起悪ぃ黄色は欠番になったんだ。文句あんのか?」
勇者「いや、文句以前に「興味」が無い。」
黄緑「持てよテメェ!ホラ、色とかツッコミどころあんだろーが!!」
勇者「フッ、安心しろ。今からウチの賢二が驚くほどのツッコミをかますぞ。」
賢二「え゛っ!僕!? じゃ、じゃあ…き、黄緑て!緑でも微妙なのに黄緑て!!」
黄緑「ブッ殺す!!」
賢二「うぇっ!?言ったら言ったで怒っちゃうの!?」
勇者「ホラ、驚いた。」
賢二「「僕が」って意味だったの!?」
黄緑「…もういい。やっぱテメェらは気に食わねぇよ。死ね。」
勇者「フン、甘いな雑魚めが。これ以上大地を裂いたらお前も死ぬぞ?」
黄緑「ざけんな!私の攻撃はアレだけだと思うなよ!?集いやがれ「炎の精霊」!」
黄緑錬邪は「炎の精霊」を呼び出した。
勇者「なにっ、炎だと!?うおっ!熱ぃ!!」
賢二「せ、精霊…女性の声…そして黄緑…。 ハッ!まさかあの人の正体って…!」

巫菜子だろ?先週予告編で見たよ。
勇者は何を見たのか。

 

2-51:私怨〔12歳:LEVEL16〕
黄緑錬邪の正体は、多分巫菜子だ。この俺の勘が言うんだから間違いない。
なんでコイツが五錬邪にいるのかは疑問だが、興味は無いので聞くのはやめよう。
黄緑「どうだ、私の実力がわかったか?最後は「氷の精霊」で氷付けにしてやるよ。」
勇者「まぁ落ち着け巫菜子。死に急ぐにはまだ若い。」
黄緑「みなっ…!?」
勇者「残念ながらバレバレだぞ。プロをナメるんじゃねぇ!」
商南「何のプロやねん!」
黄緑「違っ…ひ、人違いだろ!?そそそんな女知らねぇなぁ!」
勇者「…フッ、まさかこうもアッサリ引っ掛かるとはな。我が誘導尋問に!」
黄緑「なっ、なにっ!?」
勇者「いつ誰が「女」だと言った!?」
黄緑「聞きゃわかる名だろうが!!」
姫「えっ…!」
黄緑「ってなんで驚いてんだよテメェ!!」
姫「ビックリだよね?盗子ちゃん。」
商南「商南や言うてるやろがい!!」
賢二「と、ところで巫菜子さんは…なんでまた五錬邪なんかに…?」
黄緑「あん?んなの私の勝手…って、巫菜子じゃねーっつってんだろが!」
勇者「まぁいい。俺の前に立ちはだかると言うのなら、たとえ親でも容赦はせん!」
賢二「むしろ親の時の方が容赦してないけどね。」
黄緑「・・・・・・・・。」
勇者「さて、じゃあそろそろ殺ろうか?」
黄緑「…やっぱ予定変更だ。 やり合う前にコイツと話がある。他の奴らは消えろ。」
勇者「俺は話なんぞ無い!今すぐ死にやがれぇええ!!」
勇者の攻撃。

賢二に80のダメージ。
賢二「な、なんで僕に…グフッ。」
勇者「顔がムカついた。」
商南「んな理不尽な!ちゅーか何を今さら!」
勇者「まぁそういうわけだ、お前もちょっと席外せよ商南。パンでも買って来い。」
商南「はぁ?なんでウチが…って、こない山奥にパン屋なんてあるか!」
姫「パンが無ければケーキを食べればいいんだよ。」
商南「どこの女王様やねん!…まぁええわ、なんやわけありそうやしな。行くで姫。」
姫「そだね。大事な話は二人きりじゃないとね。」
だが賢二は放置された。
勇者「さぁ人払いはできた。何の用かは知らんが、とっとと言ってそして死ね。」
黄緑「…私が五錬邪に入ったのは、力を得るため…テメェを殺すためだ。」
勇者「殺す?悪いがお前にそこまで言われる覚えは無いぞ。特に何もしてないし。」
黄緑「あ゛?してねぇだと!?フザけんな!あの日の恨み…私は忘れねぇぞ!!」
勇者「ま、まさか…!」

さて、どの日のことだろう。
心当たりが多すぎた。

 

2-52:懺悔〔12歳:LEVEL16〕
なにやら俺に恨みがあるという巫菜子。だが身に覚えがありすぎてよくわからん。
勇者「すまん巫菜子、悪いが心当たりが絞り込めん。率直に言ってくれ。」
黄緑「そうかよ、あくまでもシラをきる気かよ…上等だ。殺す!」
勇者「あ!もしかして…給食パンに無差別に毒を仕込んだイタズラの被害者か?」
黄緑「へ…?」
勇者「違ったか…。じゃあアレか?下駄箱にラブレター型の爆弾を入れた時の?」
黄緑「あ…アレはテメェの仕業だったのかよ!危うく死にかけたんだぞテメェ!」
勇者「違う!?…あぁ!誰かが乗ったら落ちるようにベランダを細工した時の…!」
黄緑「アレもか!なんでテメェのイタズラは人命を左右するほど大掛かりなんだ!」
勇者「そうか!校長室を荒らし、窓ガラスに「ミナコ参上!」と書き残した件か!」
黄緑「んなことしやがったのかよ!一歩間違えりゃ殺されてたかもしんねーぞ!?」
勇者「安心しろ、別の組のミナコが犠牲になった。」
黄緑「ホントに一歩違いだったんじゃねーか!」
勇者「ったく、じゃあ何だってんだよ?あと思い当たることなんて十もねぇぞ?」
黄緑「まだそんなにあんのかよ!それだけで十分に殺す動機になんぞコラ!」

あっはっは。ごもっとも。
勇者は激しく墓穴を掘った。

 

2-53:殺害〔12歳:LEVEL16〕
バレてなかった悪事まで散々暴露したが、結局巫菜子の求める答えは出なかった。
すると巫菜子は、いい加減痺れを切らしたのか、自分から語り始めたのだった。
黄緑「時間が無ぇから率直に聞く。なんで…なんで私の両親と弟を殺したぁ!?」
勇者「む?両親と弟…? 悪いがホントに身に覚えが無いぞ。人違いじゃないか?」
黄緑「ざけてんじゃねーよ!テメェだっつーネタは挙がってんだよ!!」
勇者「なにっ!?この俺が証拠を残しただと!?」
黄緑「死体の血で書かれてたんだよ!窓ガラスに…「勇者参上!」となぁ!!」
勇者「俺のイタズラと同レベルじゃねーか!そんなの信じるなよ!」
黄緑「黙れクソが!テメェならやりそうだろうが!」
勇者「フッ、照れるぜオイ。」
黄緑「どんだけポジティブならそう返せんだよ!?」
勇者「とにかく俺は知らんぞ。信じる信じないは貴様の勝手だがな。」
黄緑「なら話はここまでだ! 出やがれ「風の精霊」、コイツを切り刻めぇええ!!」
勇者「カマイタチ!? よ、よし!さぁ今こそ出番だ「勇者の盾」どわぁあああ!!
なんと盾は攻撃を避けた。
黄緑「あははっ!装備に見放されるたぁ愚かな奴だぜ!こりゃ終わったな!」
勇者「ぐっ!な、何か他に防具は…ハッ!そういや前に武具屋から貰ったのが…!」
黄緑「んだよソレ?んな珍妙なベルトで何が守れるってんだよ。バカかテメェ?」
勇者「甘いな!こういうアイテムこそ実はスゴいもんなんだよ! さてと説明は…。」
〔暗闇ガーター〕
太モモに装備するベルト型防具。
装着部周辺に謎の闇を発し、あらゆる盗撮からパンツを守る。
勇者「って何を守らせる気なんだ!!」
巫菜子「死ねぇええええええええ!!」

ブバッ!!(鮮血)
賢二は寝たフリをしている。

 

2-54:残虐〔12歳:LEVEL16〕
薄暗い洞窟の壁面に、鮮血がほとばしった。だがそれは俺のものではなかった。
なぜか巫菜子が血を吐いたのである。 一体何があっ…まぁ別にどうでもいいや。
黄緑「ゲハッ!ぐほっ…ブハッ!」
勇者「み、巫菜子…お前まさか…!」
黄緑「チッ、マズったぜ…。」
勇者「俺の…子か?」
黄緑「って、どう見たら「つわり」に見えんだよ!」
勇者「まぁ心当たりも無いしな。」
黄緑「ぐっ!じょ、冗談言ってる間があったら…心配でもしたらどうだよコラ…!?」
勇者「悲しいことだな…まさか旧友を手にかける日が来ようとは。」
黄緑「ホント容赦無ぇなテメェ!つーかもっと他に言うこととか無ぇのかよ!?」
勇者「じゃあ…最後に一つだけ聞いてくれ。 実は俺、ずっと前からお前のこと…」
黄緑「えっ…!ななな何言い出すんだよいきなり!?オイちょっヤメ…!」
勇者「忘れてたんだ。」
黄緑「ブッ殺す!!」
勇者「死にそうなのはお前じゃないのか?」
黄緑「…つぎ会ったら殺す!覚えてやがれぇええ!」
勇者「フンッ!誰が逃がすか! 食らえ謎の秘奥義「ミドル・ハイキック」!!」
ズゴォオオン!!(蹴)

賢二「ぎゃぁああああああああっ!!
黄緑錬邪は去っていった。

 

2-55:可能〔12歳:LEVEL16〕
突如体調不良を訴えた巫菜子は、捨て台詞を残し去っていった。フッ、雑魚めが。
勇者「巫菜子か…。なぜアイツが五錬邪に…世の中わからんもんだな。」
賢二「僕はなんで蹴られたのかわかんないけどね!」
商南「おぉ勇者~。用は済んだんか~?」
勇者「商南か。ちゃんとパン買ってきたか?」
商南「ホンマに頼んどったんかい!こない山奥じゃ買えん言うたやろが!」
勇者「な、なにっ!?姫ちゃんが一緒でも不可能だったってのか!?」
姫「ごめんね勇者君。パンダしか買えなかったよ。」
勇者「ホラ見ろ!もっとスゴいことが起きたじゃねーか!」
商南「い、いつの間に買うて来てん!?」
パンダ「ピギャー!!」
賢二「それホントにパンダ!?」
商南「で、どないすんねんコイツ?サーカスにでも売り飛ばしたろか?」
勇者「いや、晩飯の線が有力だろう。」
パンダ「ピギョッ!?」
姫「ダメだよ勇者君!「丸焼き」ちゃんが可哀想だよ!」
賢二「その割にすんごい名前付けてない!?」
「丸焼き」が仲間に加わった。

 

2-56:北上〔12歳:LEVEL16〕
ババン山を降りた俺達は、エリン大陸の最北端「サブロ岬」へと向かうことにした。
その岬には唯一、大魔獣が出ない安全な航路をとることができる港があるらしい。
賢二「あっ!なんか見えたよ勇者君!あれじゃない!?」
勇者「あれか…やっと見えたぜ。 誰のせいとは言わんが随分回り道しちまったな。」
商南「ったく。いつも急にどっか消えるわ、居たら居たで使えんわで最悪な奴やで。」
マジーン「ホント…ごめんな…。案内を買って出た俺が方向音痴なせいで…。」
姫「「ごめん」で済んだら「なさい」は要らないよ。」
賢二「いや、そういう使い方じゃないと思う。」
姫「あ~…まぁどっちでもいいよ。ねぇミディアムちゃん?」
パンダ「ピギャ…?」
賢二「あれっ!?知らぬ間に「焼け具合」になってない!?」
勇者「フッ、いい名じゃないか。なぁウィリアム?」
商南「変わっとるし!しかも間違うとるし!どうせ言うなら「ウェルダン」や!」
勇者「ん~、そういやちょうど腹が減ってきたな。食うか!」
パンダ「ピ、ピギャッ!?」
マジーン「おいおい、怯えてるじゃねーか。やめてやれよ。」
勇者「あっはっは!」
パンダの味は新鮮だった。

 

2-57:探物〔12歳:LEVEL16〕
二時間後、俺達はサブロ岬を望む港町「タッグ町」に到着した。さびれた田舎町だ。
…いや、だがその割には少し騒がしい。 例の如く魔人でも出たのかもしれない。
町人「キャーー!た、助けてぇー!!」
勇者「(やはりか…。)フッ、困ってるようだな町人。助けてほしくば金をよこせ!!」
町人「わーん!挟まれたー!追い剥ぎまで来たー!」
勇者「そういう意味じゃねーよ!報酬を弾むんなら助けてやるぞって意味だ!」
町人「ホントですか!?じゃあ探しモノを手伝ってください!急がないと町が…!」
姫「それはちょっと嫌だよ。あんまり見ないでほしいよ。」
勇者「違うぞ姫ちゃん!多分それは「晒し者」だ!」
町人「お願いします!あの魔獣を鎮めるには…絶対子供の力が必要なんです!」
賢二「子供の力?僕らにしか探せない何かってことですか?」
町人「いえ、そういう意味ではなくて…!」
商南「まぁええわ、金さえ貰えりゃ何でも探すで。 何を探せ言うん?」

町人「あ、ハイ!「子パンダ」です!」
勇者はトイレに向かった。

 

2-58:助人〔12歳:LEVEL16〕
町で暴れる親パンダを鎮めるには、子パンダを連れてくるしか方法は無いらしい。
となると、鎮めるのは諦めるしかなさそうだ。幸い海は近い、「沈める」ことにするか。
勇者「まさかあのパンダに、親パンダがいたとはな…。」
姫「親パ…親パンダ子パンダ黄パジャミャ!」
賢二「最後の黄パジャマの意味がわからないよ!しかも言えてないし!」
町民「あ、あの~、もしかしてみなさん、子パンダの居所をご存知…とか?」
勇者「すまない。出なかった。」
町民「出るっ!?」
マジーン「だからさっき便所行ってたのかよ!」
商南「ちゅーか出たら出たでどないしてん!?」
町民「えっ!?まさ…まさか食べ…!? あーん!もう町は終わりですー!」
老人「いやいや、なんとかなったぞ。安心しなさい。」
町民「ちょ、町長!?無事だったんですね!」
勇者「どういう意味だ町長とやら?もう退治できたとでも言うのか?」
町長「あ、ハイ。それが…先ほど颯爽と現れた女の子が倒してくれたんですわ。」
勇者「女だと?この俺の見せ場を…! 一体どんな奴なんだ?」
町長「あ~、頭に緑のバンダナ巻いた女の子で…たぶん「盗賊」じゃないかなぁ?」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!」
賢二「ゆ、勇者君…それってもしかして…!」
町長「すぐどっか行っちゃったからあまり見てないけど、結構可愛い子でしたわ。」
勇者「フゥ、人違いか…。」
賢二「あのさ、いつか刺されると思うよ…?」

声「勇者ーーッ!!」

町長「あぁ、あの子ですわ!あの子が今話した…!」
勇者「あん?どれどれ、一体どんな顔を…なっ!?お、お前は…!」
賢二「や、やっぱり盗…!!」

勇者「ロボ盗子!!」
メカ盗子「ロボチガウ!!」
ロ…メカ盗子が現れた。

 

2-59:救援〔12歳:LEVEL16〕
ロボ盗子の活躍により、どうやら親パンダの一件は片付いたようだ。一安心。
だが、なんだかイヤな予感がする。なにかしらの災いを持ってきた気がするのだ。
勇者「おい貴様、こんな所に一人…一体で何しに来たんだ?土男流はどうした?」
メカ「緊急ジタイ発生!アタシ アンタ呼ビニ来タ!盗子タイヘン!死ヌカモ!」
勇者「な、なにっ!?」
メカ「死ヌホド オ兄チャン好キカモ!」
勇者「クッ…!紛らわしいんだよ糞ロボットめがぁ!!」
メカ「ロボチガウ!」
賢二「なんか妙なデータがインプットされてるみたいだね…。」
勇者「フン!時間の無駄だ、ほっといて先を急ぐぞお前達。」
メカ「チョト待ツ! 違ッタ意味デモ死ニソウ!桃錬邪アラワル!」
勇者「なっ!桃錬邪が!?ホントなのかロボ!?」
メカ「ホン…ロボチガウ!」
賢二「そこだけは律儀に突っ込むんだね。」
勇者「…言え、盗子は今どこに居るんだ?」
メカ「ギマイ大陸、「ナンダの塔」…ソコニ盗子ハ居ル!」

ナンダの塔…そこだけは避けて通るか。
助ける気はサラサラ無かった。

 

2-60:求婚〔12歳:LEVEL16〕
盗子の居場所、そしてピンチだという状況を告げ、必死に救援を請うロボ。ウザい。
確かにちょうど行こうとしていた大陸ではあるが、手伝ってやる義理は無い。
勇者「助ける気は無いが…一応聞いてやる。盗子の身に何があったんだ?」
メカ「盗子 桃錬邪ニ逆ライ、売ラレタ。逃ゲタラ殺サレル。デモ逃ゲナイト…」
賢二「に、逃げないとどうなっちゃうの!?」
メカ「オ願イ勇者、盗子タスケル!デナイト盗子、「ナンダ」ニ オ嫁ニ貰ワレル!」
勇者「ぬぁっ、ぬぁにぃいいいいいいいっ!!?」

~ギマイ大陸:ナンダの塔~
ナンダ「フハハ!見たまえ盗子君、この景色を。素晴らしいとは思わんかね?」
盗子「ほ、ほーどーけー!!気取ってないで早く縄をほどいてってばー!」
ナンダ「フッ、すぐにほどくさ。キミが素直になってくれさえすれば…ね。」
盗子「だから素直にイヤだって言ってんじゃん!誰がアンタと結婚なんて…!」
ナンダ「アッハッハ!まったく照れ屋さんだなぁ~。三ヵ月後の式が楽しみだよ。」
盗子「黙れポジティブおやじ!このロリコン!少女の敵!死ねっ!!」
ナンダ「おや?よく知ってたね。僕の職業が「ロリータ・コンサルタント」だって。」
盗子「どんな職業だよ!絶対食ってけないよ!」
ナンダ「僕はこの職業で今の財を築いたんだ。」
盗子「世の中間違ってるよー!」
ナンダ「三ヶ月後…僕の40の誕生日。楽しみにしてるよ、花嫁さん?」
盗子「いやーん!助けて勇者ぁーー!!」


勇者「…行くぞお前達。目的地は「ナンダの塔」だ!」
賢二「えっ!助けに行く気!?意外にもすんなりと!」
勇者「ああ。この俺が…絶対に助けてやる!!」
賢二「勇者君…!」

早まるなナンダ、女は選べ。
助ける相手が違った。

 

2-61:幽閉〔12歳:LEVEL16〕
ギマイ大陸――。
五大陸の中で最も近代的な文化を持つ大陸。
その中でも五本の指に入る大都市「パンシティ」にそびえる「ナンダの塔」…

そこに、盗子は居た。
ガラガラララ(開)
衛兵「入れ。」
盗子「ちょっ、仮にもアタシは花嫁さんでしょ!?なんで牢屋に入れるのさ!」
衛兵「逃亡でもされたら桃錬邪様に殺されるんでな。殺しはしない、安心しろ。」
ガシャン(施錠)
盗子「ムッキィー!絶対いつか逃げ出してやるかんねーだ!!」
土男流「大丈夫だ盗子先輩!きっとトーコちゃんが助けを呼んで来てくれるんだ!」
盗子「でもさー、アタシらが捕まってから結構経つよ?ホント大丈夫なのアイツ?」
土男流「問題無いさ!だってトーコちゃん、人工知能をアップグレードしたし!」
盗子「あ、そういえば言葉がちょっと流暢に…。じゃあ他には何がどうなったの?」
土男流「よりお兄ちゃんが大好きに!」
盗子「一番いらない能力じゃん!むしろ無くなってほしい部分だよ!」
土男流「あっ!あと、ついに待望の「オッパイミサイル」が!」
盗子「え゛っ!ホントに発注かけてたの!?」
土男流「しかも6つ!」
盗子「って、牛か何かかよ!!」
土男流「さらに今なら同じものがもう1個!」
盗子「いらないよ!7個も集めてどうする気なんだよ!」
土男流「そんな豪華6連発のミサイルなんだ!!」
盗子「1個はオマケなのかよ!!!」
放つ姿は絵的にNGだ。

 

2-62:船探〔12歳:LEVEL16〕
盗子に呪われたナンダを救うため、俺達はギマイ大陸を目指し海を渡ることにした。
よし、まずは船を探そう。この際だから金に糸目はつけず、豪華な船を借りよう。
航路が安全なのはわかっている。だが、船や船長がダメなら全ては台無しなのだ。
今まで乗り物絡みで散々苦労した。同じ過ちを何度も繰り返すわけにはいかない。
というわけで俺達は、船を探して歩いた。ひたすら歩いた。ただただ歩いた。


そして、ギマイ大陸に着いた。
陸続きだった。

 

2-63:伝説〔12歳:LEVEL16〕
夏。 エリン大陸を発ってから、早くも季節が一つ変わろうとしていた。
ギマイ大陸に着いた俺達は、今「パンシティ」という街にいる。ナンダが仕切る街だ。
ちなみに、ここに来たのはただのついでだ。決して盗子を助けに来たわけじゃない。
勇者「あそこに見えるのが噂の「ナンダの塔」か…。よし、乗り込むぞお前達!」
賢二「盗子さん…無事ならいいけど…。」
メカ「盗子、「神ノ封印場所ノ地図」盗ンデ隠シタ。殺サレル心配 多分無イ。」
勇者「神だぁ?なんだ、五錬邪はそんなモノを探してるのか? フッ、笑わせるぜ。」
メカ「アナタ~ハ 神ヲ 信ジマスカ~?」
賢二「いや、無理してカタことっぽく言わなくても元からだし!」
勇者「ケッ、信じる者しか救わんなんて人間と同じじゃないか。信じる価値も無い。」
商南「ちゅーかまぁ、そもそもおらんしな。神なんて。」
姫「そんなことないよ。実は私、会ったことあるよ。 小料理屋で。」
勇者「姫ちゃん、残念なお知らせがある。多分それは「女将さん」だ。」
マジーン「いや、でもマジ「神」って呼ばれる奴らは実在したらしいぜ?」
勇者「フンッ、ありえんな。神なんて所詮伝説の産物だ、存在するはずが無い。」

というか、伝説でなきゃ困る。
勇者は「破壊神の盾」を装備している。

 

2-64:卒業〔12歳:LEVEL16〕
勇者達がナンダの塔に到着したちょうどその日…。
塔の最上階では盗子の結婚式が行われようとしていた。
司会「それでは新郎新婦の入場です。みなさま、盛大な拍手でお迎えください。」
ナンダ「さぁ、行こう花嫁さん。お義父さん居ないから入口から二人で歩こう。」
盗子「イヤッ!いぃーやぁーだーってばー!! 放せロリコン!死ねっ!!」
ナンダ「おや?よく知ってたね。僕の両眼が「ロリータ・コンタクト」だって。」
盗子「一体どんな世界が見えるんだよ!?」
神父「新郎ナンダ。アナタは健やかなる時も病める時も…」
盗子「な、なに勝手に大詰めに入ろうとしてんのさ!まだ入場途中なのに!」
ピポーン!(押)
ナンダ「誓います!」
盗子「って早押しクイズかよ!そんなテンポで進めるべき式じゃないよ!?」
神父「では新婦盗子。アナタは健やかなる時も病める時も、夫ナンダを愛すと誓え。」
盗子「フンだ!もちろん誓わな…って、え゛っ!?命令形!?」
神父「それではとっとと、誓いのキックを。」
盗子「キックなの!?」
果たして勇者は間に合うのか。
~その頃、勇者達は…~
賢二「・・・・・・・・。」
(「早押しクイズかよ!そんなテンポで進めるべき式じゃないよ!?」)
マジーン「・・・・・・・・。」
(「フンだ!もちろん誓わな…って、え゛っ!?命令形!?」)
商南「・・・・・・・・。」
(「キックなの!?」)
勇者「おいウェイター、メインディッシュはまだか?」
男性「あ、ハイ、ただいま。」
姫「おかえり。」
普通に出席してた。

 

2-65:争奪〔12歳:LEVEL16〕
さすが金持ちというだけあって、式の料理はなかなか豪勢なものが揃っていた。
特にこの何の肉だかわからない肉料理が絶品だ。まさかこんな料理があったとは。
勇者「うむ、コイツはうまい。おかわりが無いというのが悔しいったらないな。」
商南「おっと、そない言うんやったらウチも一つ貰うでー。」
(「さぁ花嫁さん、蹴っておくれ!そして激しく罵っておくれ!」)
勇者「フッ、バカを言うな。コレは俺の好物に認定した。だから俺が全て食う。」
(「えっ!趣味なの!?そんな趣味も持ってるの!? と、とにかく絶対イヤッ!」)
商南「いくら好物言うたかて一つくらいええやんか。ウチにも食べさせーや。」
(「フフッ、相変わらず照れ屋さんだなぁ。でもキミはもう僕のモノなんだから…」)

勇者「フザけるな!貴様なんぞにくれてやる気は無いわぁー!!」

賢二「あ゛…。」
盗子「えっ…? い、今の声は…まさか…ゆ、勇者!?」
ナンダ「な、なんだねキミは!?まさか僕らの結婚に異議でもあるのかね!?」
勇者「コイツは俺のだ!絶対誰にも渡さんぞ!!」
賢二(わー…。)
ナンダ「そうか、僕の花嫁さんを奪いに来た…というわけか。」
盗子「勇者…☆ 助けに来るどころか奪いに来てくれるだなんて…☆(目がハート)」
マジーン(な、なんか妙な展開になってきたな…。)
賢二(不憫でならないなぁ…。)
肉は姫が食べた。

 

2-66:悪魔〔12歳:LEVEL16〕
ふと我に返ってみると、なにやら不本意な状況になっていることに気が付いた。
まぁこうなってしまったからには仕方ない。適当に話を合わせて乗り切るとするか。
勇者「待たせたな盗子…迎えに来たぞ!」
ナンダ「衛兵、集まれー!邪魔者を排除しろー!」
盗子「えぐっ、う、嬉しいよ勇者ぁ~ん☆」
勇者「さぁ、潔く死ぬがいいっ!」
盗子「えっ!そっちの「お迎え」なの!?」
賢二「は、早く逃げようよ!ボヤボヤしてるとホントにそっちのお迎えが来ちゃうよ!」
ナンダ「おっと、逃げられるとでも思うのかね?キミ達にはここで死んでもらう!」
勇者「この俺を殺すだと?やれやれ、女の趣味のみならず頭まで悪いとはな。」
盗子「ちょっと勇者!さりげなくアタシをバカにしないでよ!」
勇者「このブサイクめが!!」
盗子「ゴメン、さりげない方がまだいいわ…。」
衛兵A「ナンダ様!何事ですか!?」
ナンダ「見ればわかるだろう、結婚式荒らしだ!さっさと片付けないか!」
衛兵B「ヘッヘッへ、どうやら久々に暴れられるみてぇだなぁ。」
衛兵C「んで?これから痛い目に遭う可哀想な奴ぁ一体どんな…」

勇者「…あ゛ぁ?」

衛兵達「Σ( ̄▽ ̄;)蒼い悪魔キタァーーー!!」
勇者は何をしたのか。

 

2-67:察知〔12歳:LEVEL16〕
人の顔を見るや、「蒼い悪魔」だとか騒ぎだした衛兵達。まったく失礼な奴らめ。
どうやら誰かと勘違いしているようだが、そんなことはどうでもいい。ブッた斬る!
勇者「あん?誰が悪魔だって? ナメた口きいてんと脳髄をすするぞオラァ!!」
盗子「すするなよ!そういう発言が誤解を招くんだよ!」
衛兵達「ひぃいいい!お、お助けぇー!!」
衛兵達は逃げ出した。
ナンダ「お、オイお前達!どこへ行くつもりだ!?オイッ!!」
賢二「蒼い悪魔…一体どういう意味なんだろうね?」
勇者「まぁ縁があるならいずれわかるさ。それより今は敵を倒すのが最優先だ。」
ナンダ「ハッ…! ま、待て!待ってくれ!話せばわかる!」
姫「じゃあ問題です。私の好きな食べ物はカキ氷です。」
ナンダ「いや、すまない!やっぱりわからないかもしれない!」
勇者「フッ。安心しろ、雑魚は後回しだ。 …なぁ、桃錬邪?」
盗子「えっ、いるの!?ど、どこに!?」
声「…へぇ、ちっとは鼻が効くようになったじゃないかボウヤ。」
賢二「うわっ!い、いつの間に後ろに…!?」
勇者「もう6年前の俺ではない。地獄で後悔したくなければ、甘く見ないことだ。」
桃錬邪「このアタシの気配を読むとはね…。 どうやら少しは楽しめそうだな!」

気配?そんなモン読んでねーよ。
勇者はパターンを読んだ。

 

2-68:一八〔12歳:LEVEL16〕
案の定現れた桃錬邪。コイツには6年前の借りがある、負けるわけにはいかん。
勇者「フッ、残念だがお前に楽しんでいる暇は無い。地獄で鬼とでも戯れるんだな。」
桃錬邪「あ?なんだ、やけに強気じゃないか。勝算でもあるっての?」
勇者「前に親父に聞いた。貴様は暗殺専門ゆえ、攻撃力自体は雑魚並だとな。」
桃錬邪「…フフッ。ああ、確かに攻撃力はショボいよ。 けどその代わり…。」
ヒュン(消)
勇者「なっ!消えた!?」
ザシュッ!(斬)
桃錬邪の攻撃。
マジーンに100のダメージ。
マジーン「うおぉっ!!
勇者「ま、マジーン!?」
マジーン「(チッ、もうチョイ加減しろよ…!)だ、大丈夫だ。そんな深くはねぇ。」
勇者「いや、居たんだなと思って。」
マジーン「そっちに驚いたのかよ!」
賢二「速い…!そっか、攻撃力の代わりにスピードがズバぬけてるんだ…!」
勇者「なるほど、高速移動に乗じての斬撃…こりゃ少々厄介dうぉっと!!
ガキィイイン!
勇者は間一髪攻撃を防いだ。
声「なっ!? …チッ!」
盗子「えっ!見えてるの勇者!?」
勇者「まぁかろうじてな。だが背後からの攻撃には対処しきれん…マズいぞ。」
商南「ど、どないすんねん!?ウチはまだ死にたないで!?」
勇者「こうなったら…姫ちゃん、ダイナマイトだ!爆発に巻き込み動きを止める!」
盗子「え゛っ!?む、無茶だよ!そんな作戦、常識を覆すにも程があるよ!」
勇者「このまま何もせねば確実に殺される!ならばイチかバチかに賭けるべきだ!」
賢二「イチでもバチでも死にそうな気がするけどね…。」
姫「はい勇者君!これを使えばいいよ!」
勇者「お!そうそう、この古代の香りがなんとも…って「アンモナイト」じゃないか!」
商南「なんてベタベタな!今日びそないなボケ誰も使わへんで!?」
盗子「いや、でも実践したのは人類初じゃない!?」
桃錬邪(死ねっ!!)
勇者「(殺気…!) ヤバい!来るっ!!」


チュドーーーーン!!(大爆発)
ダイナマイトで合ってた。

 

2-69:痛手〔12歳:LEVEL16〕
アンモナイトがダイナマイトで、塔がフッ飛んで俺達もフッ飛んだ。屋根まで飛んだ。
だが、意外にもみんなカスリ傷程度で済んだようだ。姫ちゃんが無事で良かった。
盗子「アイタタタ…。 お尻打っちゃったよモォ~!」
賢二「で、でもあの爆発と塔からの落下…それでこの怪我って有り得なくない!?」
姫「さすがはアンモナイトだね。」
勇者「おぉ、だからナンも無いと!?さっすが姫ちゃんだぜ!」
盗子「思っきりダイナマイトだったじゃん!」
商南「ったく、アンタらのせいで貴重な「魔防符」使い切ってもうたわ…。はぁ~。」
勇者「魔防符!?そうか、だからか! しかも一瞬で…やるじゃないかお前!」
〔魔防符〕
額に貼ることで、その対象を防御壁で包み込む魔法の呪符。
高い防御力を誇るため結構な高値で売買される。
人には優しいが財布に厳しいアイテムである。
商南「まぁすぐとは言わんけど…アンタら四人分、ちゃんと払ってもらわな困るで?」
賢二「勇者君、今回ばかりはちゃんと払おうね?命が助かったんだし。」
勇者「…チッ、がめつい奴め。」

四人分か…かなりの痛手だぜ。
マジーンの分が無い。

 

2-70:奥手〔12歳:LEVEL16〕
塔も半壊したし、桃錬邪も見かけない。どうやら今回のバトルは終わったようだ。
勇者「さて、用も済んだし…行くか。 お、そうだ盗子、地図の話を聞かせろよ。」
盗子「あ、うん。いいけどさ、なんか忘れてることがある気がするんだよね~…。」
声「フハハハハ!甘い!甘いぞー! そう簡単に逃がすと思うのかね!?」
盗子「!! こ、この声は…!」
ナンダが現れた。
塔の中段で偉そうにしている。
勇者「フッ、放っておけ。ああいう奴は相手にするから付け上がるんだ。」
商南「せやな。わざわざ倒しに登んのも時間の無駄やで。」
ナンダ「ほぉ…言うじゃないか。 だがコレを見てもまだ言えるかな?」
土男流「す、すまない師匠ー!警備が厳重過ぎて逃げ損ねちゃったんだー!」
勇者「なっ!土男流!? チッ、ロボの奴は何してやがったんだ!」
ドガァアアアン!!(壁崩壊)
商南「うわっ、なんやなんや!?何か出てきよったで!?」
メカ「参ッタ…コイツ、強イ…!」
土男流「うわぁートーコちゃーん!ボロボロじゃないかー!」
ロボット「コロス ジャマモノ コロス。」
盗子「えっ!な、なにあのバカでかいロボットは!?ゴリラ型!?」
メカ「ロボ…チガ…ウ!」
盗子「いや、アンタのことじゃないから!」
勇者「フン、まさかこんな兵器を隠していたとはな。これが貴様の奥の手か?」
ナンダ「ああそうだ!私が「ロリータ・コンピュータ」を駆使して開発したのだよ!」
盗子「なんてモノを駆使してんだよ!!」
名は「ロリータ・コング」だ。

 

2-71:敵無〔12歳:LEVEL16〕
ナンダの諦めが悪いおかげで、もう一戦しなければならなくなった。やれやれだ。
勇者「オイ貴様、土男流を連れて降りて来い!そうすりゃ命だけは助けてやる!」
ナンダ「フハハ!何を言っているんだ?自分の状況がわかっているのかね?」
ロボ「ジャマモノ コロース!ニンゲン キライ!」
勇者「あん?機械の分際で生意気な!人間様に逆らう気か!?」
メカ「マッタクダヨ!」
勇者「いや、お前が言うなよ!お前だけは言うなよ!」
姫「ニンジン キライ!」
盗子「真似しなくていいよ!それに今わざわざ訴えるべきことでもないよ!」
姫「ホントハ スキ!」
盗子「どっちなんだよ!?」
賢二「ね、ねぇどうするの勇者君!?あのロボ結構強そうだよ!?」
勇者「フン、ナメるな!あんな奴はこの俺の敵ではないわぁ!」
盗子「ほ、ホントに!?さっすが勇者!頼りになるぅ~☆」

勇者「お前らの敵だ。」
盗&賢「そういう意味!?」
勇者は面倒を押し付けた。

 

2-72:瞬殺〔12歳:LEVEL16〕
ロボの相手は賢二達に任せ、俺は土男流を助けに向かうことにした。
非常に面倒だが、あんな奴でも大事な弟子だ。見殺しにするわけにはいかない。
ナンダ「来たか小僧!よくも僕の結婚式を台無しに…!生かしては返さん!」
土男流「た、助けてくれ師匠ー!この人さりげなくも大胆に尻を鷲掴みなんだー!」
ナンダ「この感触…9歳か。悪くないな…。」
土男流「しかも的確に歳を読むんだー!」
勇者「オイ変態、戯れもそこまでだ。その微妙な感触を楽しみながら死ぬがいい。」
土男流「微妙とは失礼だよ師匠ー!最近ちょっとプリプリしてきたんだー!」
ナンダ「フフッ、死ぬのはキミの方だ。ロボは一体だけだとでも思ったかい?」
ロリータ・コングが3体現れた。
勇者「…フン、俺もナメられたモンだな。そんな雑魚は2秒でスクラップだぞ?」
ナンダ「チッ、生意気なガキめ…! やってしまえぇ!!」
勇者「鉄クズに還れ!必殺「一刀両断剣」!!」
勇者の攻撃。
コングAは真っ二つになった。
ナンダ「なっ…!」
勇者「フッ。人間じゃないからな、ためらいなく斬れるぜ。」
土男流「いや、師匠ー!むしろアンタは人斬る時の方が楽しげに見えるんだー!」
勇者「残るは2体だが…もはや結果はわかろう。 さぁ、どうする?」
ナンダ「くっ…!ここまでか…!」
ナンダはまだ尻を揉んでいる。

 

2-73:頼事〔12歳:LEVEL16〕
戦いを終え皆のもとに戻ると、賢二達の戦いもまた終わっていた。意外にも。
勇者「よぉ賢二、雑魚は雑魚なりに頑張ったようだな。生意気な。」
賢二「まぁなんとかね。勇者君達も無事っぽいけど…ナンダさんは?」
勇者「ん?あぁ、アイツは…」
土男流「や、やめてくれー!思い出したらハンバーグが食べれなくなるんだー!」
盗子「えっ!何が起こったの!?そんなトラウマ的な何かが起こったの!?」
勇者「気にするな。とにかくお前を苦しめたミンチの奴はもういない。」
盗子「変わってる!名前が変わってるよ!」
賢二「あ、久しぶりだね土男流さん。 …アレ?でも学校はどうしたの?」
土男流「師匠を追って中退してきたんだ!だから私も連れてってくれー!」
賢二「ず、随分と思い切ったことをしたもんだね…。」
勇者「いや、悪いがお前には頼みたいことがある。五錬邪のことを調べてほしい。」
土男流「そ、そんなー! イヤだー!私は師匠の腕枕で寝るって決めたんだー!」
盗子「なにドサクサ紛れにとんでもないこと言ってんのさ!恋人同士かっ!」
姫「甘いね。私は勇者君の夢枕に立ったよ。」
盗子「それは死人とか神様がすることだよ!」
土男流「頼むぜ師匠!私は妙な任務より修行の方がいいんだー!」
勇者「危険な任務だ。できるのは恐らく…我が愛弟子であるお前しかいまい。」
土男流「任せてくれ!あること無いこと調べてくるぜー!」
賢二(か、可哀想な子だなぁ…。)
勇者は可愛がってるつもりだ。

 

2-74:買出〔12歳:LEVEL16〕
土男流とメカ盗子は旅立った。俺もこの街に用は無いので、そろそろ行こうと思う。
勇者「さて、ぼちぼち行きたいのだが…その前に旅の道具を揃えたいと思う。」
商南「せやな。せっかくデカい街におるんやし、ここで買わなアホやで。」
勇者「それでな商南、買い出しはお前に任せたいんだ。必需品を見極めてほしい。」
商南「あ? …ったく、しゃーないな~。まぁアンタに頭下げられたら断れんわ。」
勇者「助かる。釣りは好きなように使ってくれていいからな。」
商南「わっ、5銀もあるやんか(約5万円)! おおきに!頑張ってくるで☆」
商南は買出しに出掛けた。
盗子「ど、どうしたの勇者?やけに気前が良すぎない…?」
勇者「フッ、そんなことはない。アイツにやるなら5銀なんて安いもんだぜ。」
賢二「ゆ、勇者君…まさか…。」
盗子「まさか勇者、あの女がスキなわけ!?ねぇそうなの!?」
勇者「スキか…まさにその通りだな。」
盗子「そ、そんなぁー!うわーん!!」

ホント、スキだらけだよ。
勇者は「魔防符代(40銀)」を踏み倒した。

 

2-75:始動〔12歳:LEVEL16〕
商南を置き去りにし、俺達は出発した。奴が気づく前に遠くに逃げねばならない。
道中、盗子から神の話を聞いた。信じられないことだが、なにやらマジ話っぽい。
こうなったら真偽のほどを確かめに行くしかないだろう。行って、そしてブッた斬る!
勇者「神か…フッ、面白い。その名ふさわしい奴かどうか、この俺が試してやる!」
賢二「あ!そういえばさ、この四人でパーティー組むのも久しぶりだよね!」
勇者「ん?ああ、そうだな。島を出たときだから…三年ぶりぐらいか?」
盗子「そそ。「修学旅行だね☆」とか言ってた時以来だよね~☆」
姫「じゃあアレだね、「続・修学旅行~超魔界大戦~」だね。」
盗子「イヤだよ!そんな物騒なサブタイトル付けないでよ!」
姫「立ちはだかる五錬邪さん。そしてニンジン。」
盗子「ニンジンの方が強敵なのかよ!って、結局キライなの!?」
賢二「でもさ、桃錬邪さんは倒したんだし、後は四人だよね!一歩進んだよね!」
勇者「…いや、奴は生きてる。脚本家並に展開を読む俺が言うんだ、間違いない。」
賢&盗「えっ!?そんなっ…!」

~その頃~
桃錬邪「ぐっ、グハッ! お、降ろせー!離しやがれぇー!」
マジーン「おっと!暴れるなよ姐さん、傷に障るぜ?もうじきアジトに着くからよぉ。」
桃錬邪「く、クソガキどもがぁ…!次会ったらブッ殺してやる…!!」
マジーン(地図は二手に別れた…。フッ、面白くなってきやがったぜ。)
神を巡る戦いが始まる。

 

外伝(壱)へ

本編( 3 / 10 )

第二部:外伝(壱)

外伝(壱)

 

外伝:勇者凱空〔1〕
俺の名は「凱空(ガイク)」。エリン大陸に咲く一輪の花…も恥じらう十歳児だ。
一応将来は「勇者」になる予定だが、今は「魔王」が居ないので魔王待ちの状況。
なんだか本末転倒のような気もするが、基本的に細かいことは気にしない主義だ。
…しかし、その時まで何もしないで待つというのは、さすがの俺でもどうかと思う。
やはり今のうちに、「戦隊」でも組んでみるべきだろう。 よし、まずは命名からだ!
凱空「う~む、れんじゃ…連…五錬…じゃ…者…蛇…? いや、「五錬邪」だ!!」

少し変な気もするが…まぁいい。今後は気をつけよう。
後に息子に「勇者」と付ける。

 

外伝:勇者凱空〔2〕
俺の思いつきにより、突発的に発足した正義の組織「五錬邪」。もちろん五人組だ。
というわけで俺は、メンバーを集めることにした。大丈夫、ちゃんとアテはある。
少女「あ、凱空先輩だ! 凱空センパーイ!」
凱空「ん? おぉ、来たか「春菜(しゅんな)」…もとい、「黄錬邪」よ。」
春菜「えっ?きれ…なんですかソレ?」
凱空「お前のコードネームだよ。今日から戦隊を組むって言ったろ?」
春菜「い…言いましたっけ?」
凱空「ああ、今な。」
春菜「今日も変わらずマイペースですね…。」
凱空「俺は赤が好きだから「赤錬邪」。そしてお前は黄色の黄錬邪だ。」
春菜「へ?なんで黄色に決まってるんですか?私は別に黄色は好きじゃ…」
凱空「カレーが好きだから。」
春菜「いやいや!勝手に決めないでくださいよ!カレーなんてむしろ嫌いですし!」
凱空「じゃあカレーが嫌いだから。」
春菜「おかしいし!無理矢理すぎるし! …って、そもそもカレーって茶色では!?」
凱空「いや、洗濯しても微妙に落ちなかったカレーの…」
春菜「そんなピンポイントな!確かにそれは黄色っぽいですけども!」
凱空「ん~、じゃあやっぱ「茶錬邪」か?しかしなぁ~。」
春菜「なんで「カレーから離れる」って発想が無いんですか…。」

凱空「…カレーんじゃ?」
春菜「黄錬邪で…いいです…。」
黄錬邪が仲間に加わった。

 

外伝:勇者凱空〔3〕
黄錬邪が仲間になった。まだ3人集めねばならんが、大丈夫。次も呼び出してある。
少女「なんだよ凱空、こんな所に呼び出しやがって。決闘でもフッかける気か?」
凱空「おぉ、待たせたな「秋花(しゅうか)」…もとい、「桃錬邪」よ。」
秋花「はぁ?なに言ってんだテメェ?ついに脳ミソ腐りやがったか?」
凱空「フッ、何を今さら。」
春菜「いや、そこは一応怒っときましょうよ。」
秋花「んで?その「モモなんとか」って一体何なわけ?呪文か何か?」
春菜「えっとですね秋花先輩、なんか今日から戦隊を組むとか言い出しまして…。」
秋花「ったく、またアホなことを…。」
凱空「な、なんだとコンニャロウ!!」
秋花「あん?なにさ、ヤルっての!?」
凱空「俺の脳はまだ腐ってないぞ!」
秋花「そっちか!今さらそっちの話か!」
春菜「というか「まだ」ってどうですか!?」
凱空「まぁ細かいことは気にするな。とにかく大人しく桃錬邪れ。」
春菜「ちなみに私は、カレーが嫌いだから黄錬邪だそうです…。」
秋花「…なるほどね、わかるわかる。」
春菜「わかるんですか!?ちょっと凱空先輩に汚染されてきてませんか!?」
秋花「カレーで黄錬邪ねぇ~。じゃあ桃色ってのは…やっぱヒロインだからだよな☆」

凱空「オシリが桃みたいだから。」
秋花「人類共通だよ!!」
今日からキミも桃錬邪だ。

 

外伝:勇者凱空〔4〕
桃錬邪が仲間になった。なかなかいいペースだ。この調子でどんどん増やそう。
春菜「あっ、いた!おーい、お兄ちゃーん!」
少年「…ん?春菜と凱空…それに春菜か。」
秋花「なんで「春菜」を二回も言うんだよ!アタシにも触れろっての!」
凱空「よぉ、そんなとこにいたのか「冬樹(とうき)」…もとい、「黒錬邪」よ。」
春菜「あ、あの…やっぱり説明から入らないと意味が…」
冬樹「いい名だな、気に入った。」
秋花「なんで伝わってんだよ!?」
凱空「フッ、これがいわゆる「アイコンテスト」だ。」
秋花「どんな大会だよ!それを言うなら「アイコンタクト」だろうが!」
冬樹「まぁ気にするな、桃錬邪。」
秋花「なっ…なんで知ってんだよ!さっき命名されたばっかだよ!?」
春菜「なんかゴメンなさい、こんな天然な兄で…。」
冬樹「どうしよう凱空、褒められた。」
春菜「褒めてない!ちっとも褒めてないよ!照れるのおかしいよ!」
凱空「いやぁ~、参ったな~☆」
秋花「お前もだよ!!」
黒錬邪が仲間に加わった。

 

外伝:勇者凱空〔5〕
黒錬邪も加わり、残るは一人…と思っていたら、標的は向こうからやってきた。
少年「…フゥ、なるほどな。俺が呼ばれたのもそういう意味かよ。」
春菜「あ、「夏草(なぐさ)」君。」
夏草「で?俺は何錬邪なんスか凱空先輩? 緑?青?あとは…まさか白とか?」
凱空「おぉ、話がわかるじゃないか。説得の手間が省けて助かるよ「群青錬邪」。」
夏草「ちょっと待て!なんスかその微妙な色は!?なんで俺だけ!?」
凱空「よっ!出オチ要員!」
夏草「なに持ち上げてるっぽく言ってんスか!全然嬉しくねーよ!」
凱空「イヤか?色合い的に青系色が欲しかったんだが…。」
夏草「なら素直に「青錬邪」でいいじゃねーか!なんでわざわざ濁っ…」
凱空「…瞳が濁ってるから?」
秋花「心が濁ってるから。」
夏草「友達なくすぞアンタら…!」
凱空「まぁとにかく頼むぞ、群青錬邪!よろしくな!」
夏草「…チクショウ!なんで俺だけいつも扱いが適当なんだー!うぉーー!!」
夏草は夕日に向かって走り出した。
春菜「な、夏草君っ…!」
秋花「あ~あ。」
冬樹「凱空、急がないと…。」
凱空「…わかってる。」

もうじき夕飯の時間だ。
誰も追わなかった。

 

外伝:勇者凱空〔6〕
俺達が五錬邪を結成し、エリン大陸を飛び出してから二年近い月日が経過した。
だが俺達は止まらない。いつか世界中に平和な日々が訪れるその日まで!
~ギマイ大陸:コウ森~
女「キャー!魔人よー!誰か助けてぇー!!」
魔人「グヘヘ!諦めな、いくら叫んだって誰も助けは…」
声「待ぁーてぇーーー!!」
高台の上に赤錬邪が現れた。

きわどいポーズで相手を誘っている。
魔人「だ、誰だ貴様っ!?というかなんだその悩殺ポーズは!?」
赤錬邪「フッ、俺か?俺は、猿の尻よりちょっぴり紅い紅蓮の炎…赤錬邪っ!!」
女「ひ、ヒーローさんなの!?セリフがとっても中途半端だけども!」
魔人「ケッケッケ!バカが、たった一人で魔人様に勝てるとでも思ってんのかぁ?」
黒錬邪「俺もいる。 便所のシミより微妙に黒い、漆黒の影…黒錬邪。」
魔人「チッ、仲間がいやがったか!」
女「微妙に黒いの!?それとも漆黒なの!?どっちなの!?」
黄錬邪「わ、わた、私は…その…。」
魔人「まだいたかっ!…って、なんだテメェ、ヤル気あんのかコラ!?」
赤錬邪(言え!言うんだ黄錬邪!こういうのはテンポが命だぞ!)
黒錬邪(そうだぞ春菜。今日からみんなでキメるぞって言ったろ?)
黄錬邪「…こ、香ばしいスパイスの香り…黄錬邪…。」
女「えっ、スパイス!?決め手はスパイスなの!?」
魔人「な、なんなんだ!一体テメェらは何者なんだ!?」
桃錬邪「そして今日もオシリが桃…って、んな恥ずいセリフ言えるかー!」
凱空「…何はともあれ俺達!五人揃ってぇー!」
黄錬邪「え?あっ…」
一同「五錬邪っ!!」

群青〔木陰〕「Σ( ̄□ ̄;)!?」
揃ってなかった。

 

外伝:勇者凱空〔7〕
登場シーンも見事に決ま…ったと思ったら、群青錬邪を忘れていた。なんてこった。
ここはなんとか誤魔化して、機嫌を取っておかねばなるまい。リーダーは辛いぜ。
赤錬邪「さ、さぁ行け群青錬邪!敵は一人だ、お前の見せ場にと残しといたぞ!」
群青「いや、いいよ…。俺なんてどうせ目立たない、濁った群青色さ…。」
桃錬邪(お、オイ。すっかり落ち込んでるぞ?ここは一応励ましときなよ。)
赤錬邪(いや、しかし俺はそういうのは…。すまん黒錬邪、頼めるか?)
黒錬邪「そんなことはない。お前は頑張れば目立てる、凄く濁った群青色さ。」
群青「一番否定してほしい所を否定してくれないんだな…。」
黄錬邪(よ、よかった!「凄く」には気づいてない!)
赤錬邪「…わかった、こうしよう。もし敵を倒せれば、お前は今日から「青錬邪」だ!」
群青「ほ、ホントか!?」
赤錬邪「ああ。俺は嘘とおま…嘘が大キライだ。」
黄錬邪(おま!?今「お前」って言おうとしました!?)
群青「よっしゃ!かかって来いクソ魔人!この俺がボコボコにしてやるぜぇ!!」
群青錬邪は立ち直った。
魔人A「ほほ~。」
魔人B「言うじゃねぇかクソガキ。」
魔人C「死にてぇのか?」
群青(ふ、増えてらっしゃるぅーーーっ!!)
四人は温かく見守った。

 

外伝:勇者凱空〔8〕
群青錬邪が敗れ、残りは四人となった。だが何も心配は無い。いつものパターンだ。
魔人A「な、なんなんだコイツは…?口ほどにもなくメチャメチャ弱かったぞ?」
赤錬邪「フン、ナメるな!こっちの二人(黄&桃)はもっと弱いぞ!」
黄錬邪「いや、威張って言うセリフじゃないですよ!?むしろ隠しといてくださいよ!」
魔人B「エリンからやたら強ぇ戦隊が来たと聞いたが…テメェらじゃないようだな。」
赤錬邪「なんだ、知らぬ間に俺達も有名になってきたみたいだな。」
魔人C「あん?自分がそうだっつーのか?だったら証拠を見せてみやがれ!」
赤錬邪「ほぉ、いいだろう…見て驚け!聞いて驚けっ!?」

赤錬邪「崩落園遊園地で、僕と握手!!」

一同「…へ?」
赤錬邪「フッ…。」
魔人D「な、なんだその「キマッた☆」って顔は!?そんなのが証拠になるかよ!」
赤錬邪「知らんのか!?戦隊ヒーローと言えば遊園地で握手!定番じゃないか!」
黄錬邪「それは「ヒーローショー」の話では!?しかも名前が何か物騒だし!」
魔人E「ふ、フザけてんじゃねーよ!もっと実力的な何かを見せろっつってんだ!」

やれやれ、贅沢な奴らめ。
どうでもいいが魔人が増えてる。

 

外伝:勇者凱空〔9〕
さりげなく魔人は増え続け、いつの間にやら20~30人に囲まれていた。
で、知らぬ間に黄錬邪と桃錬邪は倒されていた。いつものことだが、弱すぎる。
魔人A「お、お前ら…さっきからなんなんだお前ら!ヤル気あんのか!?」
赤錬邪「フッ、俺はまだ何もしてないぞ!」
魔人A「それが問題なんだっつーの!リーダーなら率先して何かやれよ!」
赤錬邪「1番、リーダー!陸上で素モグリします!」
魔人A「誰が一発芸やれっつったよ!そうじゃなくてホラ、もっと真面目に戦っ…」
黒錬邪「悪いな、その必要はもう無い。」
魔人A「へっ…?」
他の魔人は全て倒れている。
魔人A「そ、そんなバカな!あれだけの大軍をどうやって…!?」
黒錬邪「いつの間に…。」
魔人A「いや、テメェがやったんだろ!?なんで驚いてんだよ!」
赤錬邪「意外と苦労したぜ。」
魔人A「テメェが何したってんだよ!? つーかオイ黒いの!テメェ…何モンだ!?」
黒錬邪「俺か?俺は「黒騎士」。全てを闇に帰す者だとか、そうじゃないとか。」
魔人A「んな曖昧な!ビシッとキメなきゃキザなセリフも台無しだぞ!?」
赤錬邪「俺は「勇者」。基本的に何もしない。」
魔人A「だからしろっての!!」
そんなに倒されたいのか。

 

外伝:勇者凱空〔10〕
黒錬邪の活躍により、残る敵は一人になった。また増える前に始末するとしよう。
赤錬邪「もう仲間は呼ばせん。一人寂しくあの世へと旅立つがいい。」
魔人A「ナメんな!こう見えても俺ぁここらを仕切る魔人様なんだぜぇ!?」
赤錬邪「な、なにっ…!?」
魔人A「ケッケッケ!どうやら驚いたようだなぁ~。」
赤錬邪「そんな奴が森でコッソリと女を!?」
魔人A「い、言うな!それだけは言うなー!」
黒錬邪「そ・ん・な・や・つ・が…っと。」
魔人A「書くな!だからといって書くなー!って、書いてどうする気だよ!」
黒錬邪「読まずに食べる。」
魔人A「ヤギさんかテメェは!?何がしたいんだ! もういい!殺すっ!!」
赤錬邪「フッ、やれやれ…。ならば最後は俺がキメてやるとするかな。」
魔人A「ハンッ!望むところだ!返り討ちにしてやらぁー!」
赤錬邪「崩落園遊園地で…」
魔人A「それはもういいっつってんだろうがぁー!死ねぇえええ!!」

赤錬邪「僕とアックス!!」
魔人A「え゛っ…?」
赤錬邪は斧を振りかざした。

 

外伝:勇者凱空〔11〕
魔人どもを倒し、とりあえず用事は一つ片付いた。さて、もう一つも済ますとするか。
パチパチパチ(拍手)
声「う~ん、噂通り見事な腕前ですな。いや、むしろ噂以上でございました。」
赤錬邪「…随分前から見ていたようだが、貴様何者だ?」
紳士「おや、気づかれてましたか。失礼ながら全て拝見させていただきましたよ。」
赤錬邪「悪いが俺に、見られて感じる趣味は無い。用が無いなら消えてくれ。」
紳士「私はアナタ様を迎えに参ったのです。姫の…「皇女」の使者として。」
黒錬邪「こうじょ…聞いたことがある。確か「天帝」の女児のことだ。」
赤錬邪「む?皇女といえば最近、婿を募集してるとか聞いたが、まさか…。」
紳士「ハイ。今やその名轟く五錬邪…その隊長であるアナタ様なら、申し分ない。」

フッ、やれやれ…照れるぜオイ。
紳士は黒錬邪を見ている。

 

外伝:勇者凱空〔12〕
突如現れた天帝よりの使者。どうにも話が胡散臭いのだが、とりあえず聞いてみた。
聞けば天帝というのは代々「女帝」であり、年頃になると婿を募るのだという。
そうやって優秀な遺伝子を手に入れ、優秀な血を濃くしていくのが目的らしい。
そして使者によると、なにやら俺がその花婿候補の一人に選ばれたらしいのだ。
紳士「というわけで、タケブにある王城まで来ていただきたいのですよ、隊長殿。」
赤錬邪「・・・・・・・・。」
黒錬邪「・・・・・・・・。」

頼むから俺を見てくれ。
説明に二時間掛かった。

 

外伝:勇者凱空〔13〕
傷ついた仲間達を癒すため、俺達は近くの村に宿をとることにした。
そしてその夜。冬樹と二人、和んでいたその夜。俺の運命を決める出来事が…。
凱空「・・・・・・・・。」
冬樹「・・・・・・・・。」
凱空「…なぁ冬樹、そろそろ飽きないか?この「心眼にらめっこ」も二時間続くと。」
冬樹「ああ。見えないしな…。」
声「凱空様ー!凱空様ぁー!!」
凱空「? やれやれ…せっかくの静かな夜に騒がしい奴め。 何の用だ使者よ?」
紳士「凱空様、お願いです!今すぐタケブに向かっていただきたい!」
凱空「む?なんだ慌てて。皇女が急に発情期にでも入ったのか?」
紳士「婿の返事は後でも結構。状況が変わったのでございます。」
凱空「くっ、俺のナイスギャグに…触れもしないとは…。」
冬樹「泣くな凱空。こういう時は笑った方が、相手は驚く。」
凱空「ワッハッハ!状況が?どういうことだ!?ハッハー!」
紳士「「魔王」が…現れました…。」
凱空「Σ( ̄◇ ̄;)!!」
紳士「私は一足先に戻ります。アナタ様は明日一番の船でいらしてください。では!」
紳士は去って行った。
凱空「・・・・・・・・。」
冬樹「・・・・・・・・。」

…え?倒せと?
凱空の運命は無理矢理決められた。

 

外伝:勇者凱空〔14〕
魔王を倒してくれと告げるだけ告げ、拒否権を与えずに使者は去っていった。
深夜。 俺は皆の寝室を訪れた。いま一度、寝顔だけでも見ておきたかったのだ。
春菜「う、う~ん…。むにゅにゅ…。」
春菜…。 お前はなぜか、こんな俺を慕ってよく付いて回ってくれたよな…。
兄の冬樹は色々と不安な奴だ。お前の常識で、今後もフォローしてやってほしい。

秋花「スー。スー。」
秋花…。 お前は口こそ悪いが、実は優しい奴だってのは俺が一番よく知ってるぞ。
アレだろ?よく俺を引っ叩いたのも、実は蚊がいたからなんだろ?

冬樹「・・・・・・・・。」
冬樹…。 お前、息してるのか…?

夏草「ぐごぉおお!ぐがぁあああ!」
夏草…。 すまん、特に何も無いや…。


サヨナラは言わない。きっとまた会える。
凱空は皆の財布を懐に入れた。

 

外伝:勇者凱空〔15〕
翌朝。 俺は港で一人、タケブ大陸へ向かう船を待っていた。そう、旅立つためだ。
「勇者」として、魔王を放ってはおけない。だがアイツらは巻き込みたくなかった。
凱空「あの船か…。早いな、もう着いてしまったか…。」
声「行くのか、凱空。」
凱空「!! …冬樹か。 よく気づいたな、やはりお前だけは出し抜けんか。」
冬樹「安心しろ、他の皆はまだ寝てる。」
凱空「そうか…。 丁度いい、お前には後を頼みたいと思っていたんだ。」
冬樹「なぁ凱空、俺も…弱いか?俺もお前の足手まといになると思うか?」
凱空「いいや、お前は強いさ。だからこそアイツらの側に居てやってほしいんだ。」
冬樹「だが、しかし…」
凱空「そこをなんとか、頼む。」
冬樹「あの赤い衣装はちょっと…。」
凱空「そこか、そこなのか。今までノリノリで着てた俺の立場はどうなるんだ。」
冬樹「敵は「魔王」…いくらお前でも、生きて戻れるかどうかわからんが…?」
凱空「まぁ安心しろ。俺は腕っぷし以上に運と個性が強い男だ。」
冬樹「全人民の運命を背負うことになるが…?」
凱空「そんなに気負うつもりは無いさ。合言葉は今まで通り、俺達の”アレ”だ。」
冬樹「俺達の…フッ、そうか。魔王退治もお前の中じゃ、いつもの”アレ”か。」
凱空「ああ。」

「ただの”ゴミ掃除”だ。」

こうして凱空は旅立った。

偉大なる伝説と、悲劇の幕開けだった。

 

第二章へ
創造主
~勇者が行く~(2)
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