第一章 |
2-16:二年〔12歳:LEVEL15〕 | |
俺の名は「勇者」。職業も「勇者」。 この春で歳も12になり、現在思春期真っ盛り。 あの屈辱の敗戦から二年が経ったが、血の滲む特訓を経て俺も随分と強くなった。 ちなみに今は、賢二と二人でエリン大陸(無駄に広い)を旅している最中だ。 賢二「おーい、勇者くーん! やっと村が見え…って、どうかしたの?考え事?」 勇者「もう二年半…二年半も経つんだなと思ってな…。」 賢二「え、二年半? それって僕らがカクリ島を旅立ってからってこと?」 勇者「違う!姫ちゃんと離れ離れになってからだ!」 賢二「あぁ、そういえば盗子さんとも…」 勇者「二年前、なんとかお前とは会えた。だが残る姫ちゃんは未だ見つからん。」 賢二「そうだね。あと盗子さ…」 勇者「俺達三人…一丸となってかからねば、今後の敵はヤバいかもしれんのに…。」 賢二「アレッ、勇者君も含めて三人なの!?違うよ盗子さ…」 勇者「早く三人揃いたいものだな。」 賢二「あ、うん…。(四人なんだけどなぁ…。)」 |
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2-17:金欠〔12歳:LEVEL15〕 | |
二年半も歩き回ったおかげで、やっとこのエリン大陸にも終わりが見えかけてきた。 船が使えれば楽なのだが、今は大魔獣がウジャウジャいるため航路は使えない。 噂では、五錬邪が現在いるのはタケブ大陸…。一刻も早く斬りに行きたいものだ。 賢二「もう少しだよ勇者君!もう少しで村に…一ヶ月ぶりにお布団で眠れるよー☆」 勇者「そうだな。それにちょうど金も尽きかけてきたところだし、少し稼いでいくか。」 賢二「あ~。でも魔物いなきゃ無理だけどね。僕らの仕事って「魔物退治」だし。」 勇者「いざとなったら雇えばいい。」 賢二「魔物を!?それは「勇者」のセリフじゃないよ!?」 勇者「…フッ、冗談だよ。そんなことできるわけ無いだろ?」 賢二「そ、そうだよね…。」 勇者「なにしろ金が無いんだ。」 賢二(あったらどうしたんだろう…?) |
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2-18:大変〔12歳:LEVEL15〕 | |
ここ最近山道ばかり通ってきたのだが、久々に村で一休みできそうな感じだ。 が、平和すぎると金がヤバい。なんとかうまいこと魔物でも来ないものだろうか。 …などと考えていると、なにやら村の方角から男が猛ダッシュしてきた。もしや…。 村人「た、大変だべー!誰か助けてくれやー!」 勇者(おっ、ホラ来た!恐らくカモだぞ賢二、うまくやれよ?) 賢二「え、えっと…どうかしましたか?僕らで良ければ力とか貸しちゃいますけども。」 村人「ホントかよオイ!?いや~、マジ助かるべ!オラは「奮虎(フンコ)」って名…」 勇者「挨拶はいい、早く要点を話せ。」 奮虎「お、おうよ。 実は…腹が痛いのに紙ぐわっ!!」 勇者「そんな個人的なことで大騒ぎするな!紛らわしい雑魚めが!」 賢二「だ、ダメだよ殴っちゃ!これでも一応苦しんでるんだよ!?」 奮虎「いや…大丈夫だべ。 もう…」 賢二「「もう…」何ですか!? うわっ、なんか薄っすらクサいんですけど!」 勇者「フッ、その程度の変装で…俺を騙せると思ったのか!?オナラ魔人よ!!」 賢二「違うって!今は同種の生き物だけど別人だって!」 奮虎「…ハッ、そうだべ!そんなことより大変なんだや!」 勇者「安心しろ、今のお前も十分大変な状況だぞ。」 奮虎「き、聞いとくれや!村が…村が魔物に襲われとるんだべさ!」 勇者「それを先に言えよ!!お前は村よりウンコが大事なのか!?」 奮虎「もちろん大事じゃなや!だども「一大事」だったんよ!!」 賢二「いや、そんなうまいこと返されても!」 勇者「おいコラそっちに立つな!風にニオイが乗っ…クセェ!!」 奮虎「いいから来とくれや!村まではオラが案内するでよぉ!」 勇者「しかし貴様…ホントに助けを呼びに来たのか?次の村は随分遠いだろ?」 奮虎「う゛っ。そ、それは…。」 賢二「まさか逃げて来たんですか!?最低ですよそれ!!」 |
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2-19:交渉〔12歳:LEVEL15〕 | |
臭くてたまらん村人に連れられ、俺達は魔物に襲われているという村に到着した。 これから村長と会い、退治料金の交渉をせねばならない。少しでも多く稼がねば。 ~エリン大陸:ウシロシ村~ 奮虎「オーイ村長!旅の退治屋をスカウトしてきたべー!」 村長「なぬっ!?お、おぉ…神の助けだべ!まさか助っ人が来てくださるとは…!」 勇者「貴様が村長か? 俺の名は勇者、金と引き換えに平和をもたらす男だ。」 賢二(相変わらず惚れ惚れする程あからさまだなぁ…。) 村長「なんと、名前が勇者とはまた随分とふてぶてしぐぇっ!!」 勇者「…次の村長を。」 賢二「いるわけないから!ストックとかあるモノじゃないから!」 村長B「お呼びですか?」 賢二「なんでいるの!?」 勇者「まぁ挨拶はもういいだろ。面倒は早く済ませたい、敵の情報を知る限り話せ。」 村長B「あ、ハイ。敵は小さく、全く凶暴に見えません。ですが本性は「人食い」の…」 村長B「魔草「血色草」です。」 さて、どう逃げるか…。 |
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2-20:大群〔12歳:LEVEL15〕 | |
考えたくはないが、話の展開からして敵の正体は「血子」っぽい。なんてこったい。 よし、こうなったら長居は無用だ。ややこしいことになる前に、どこか遠くへ逃げ… 血子「キャー!ダーリーン!会いたかったぁ~ん☆」 勇者「…さて、どう誤魔化すか。」 賢二(あ、あちゃ~…。) 勇者(フッ、まぁ安心しろ。こういう時の誤魔化し方は熟知してる。) 奮虎「な…なんだや!?まさかオメェら知り合いなんだべか!?」 勇者「ち、違うんだ!コイツは…その…い、妹なんだ!」 賢二「それは「浮気がバレた時」の…しかも間違った対処法だよ!」 村長C「こりゃ…どういうこったクソガキども!?事と次第によっちゃ村長許さんぞ!」 勇者「ほぉ、この俺に喧嘩を売る気か…って、アイタタタッ!噛むなよ血子!」 血子「だってダーリン、血子を置いて行っちゃうんだもん!ムキィー!」 村長D「このまま帰しては死んだ村人達も浮かばれん。村長として見過ごせんよ。」 賢二「ご、ごめんなさ…というか村長さんは何人いるんですか!?」 村長E「助っ人かと思ったのに、逆に悪の仲間とは…。なんて報われないんじゃ…。」 奮虎「まったくだべ!これじゃ何のためにウンコまで漏らしたのかわかんねーべ!」 賢二「それは僕の方がわかりませんよ!!」 老人「おやおや…。そげに大騒ぎさして何さあっただ?」 村長達「だ、大村長!!」 賢二「親玉キタァーー!!」 |
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2-21:別案〔12歳:LEVEL15〕 | |
続々と湧いて出る村長達に続き、奥から現れた大村長。 もう何がなんだか。 こうなったからには仕事は無さそうなので、早くここから去りたいのだが…。 大村長「…なるほど、魔草の知り合いだったべか。そりゃ対処に困るなや…。」 村長F「もうこうなったら、ふん縛ってフクロにして日干しにでもするしかねーべ!」 勇者「ケッ!血子にすら勝てなかった雑魚どもが、この俺に勝てるとでも?」 血子「そうだよ!日干しにされて明日の食卓に上がるのはアンタらだよ!」 賢二「え゛っ!まさか僕らに振舞う気!?」 村長G「ハッ、そうだべ!したら”奴ら”を倒しに行かせりゃいいべさ!」 村長H「それは名案だや!それならチャラにしても惜しくねーべや! なぁ大村長?」 賢二(な、なんかイヤな展開になってきたなぁ…。) 大村長「だども、そげな大事となるとワシだけでは…。 やはり「永久村長」の…」 賢二「まだいるの!?」 血子「もう誰が偉いんだかわかんないよ!」 村長I「実はこの村と東の港街「ソノマ」を結ぶ峠にぁ、「首無し族」ちゅう種族の魔…」 勇者「ちょっと待て!なに勝手に事情を話し始めてんだよオイ!」 村長J「ここは他の村からは孤立しとる。東に行けねば村は寂れる一方なんじゃ。」 勇者「俺は知らんぞ。今は名声よりも日々の糧が要るんだ。」 村長K「みんな参ったべ。けんどそんな中、立ち上がった若人がおったべや。」 勇者「ほぉ、なかなか勇敢な奴がいたんじゃねーか。ならそいつに託しゃ…」 村長L「おったべや…。」 血子「ゲプッ。」 賢二「いやぁー!!」 |
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2-22:同情〔12歳:LEVEL15〕 | |
結局村人に押し切られ、俺達は東の峠に向かうことになった。まったく面倒だぜ。 まぁ聞けば敵は財宝もいくつか持っているというし、倒して損ということもないだろう。 勇者「ふぅ~…。しかし一晩くらいゆっくり休みたかったんだがな…。」 血子「ゴメンねダーリン。あんまりペコペコだったから、つい4・5人ほど…。」 賢二(この体のどこにそんなに…。) 奮虎「あ、この先を右さ曲がれば峠だべや。んだばオラは…」 勇者「コラ、どこへ行く気だ?逃げると酷い目に合うぞ賢二が?」 賢二「えっ!なんで僕が!?」 奮虎「オメェらは奴らを知らねぇからそったらことが言えんべさ!」 賢二「そ、そんなに恐ろしい相手なんですか?」 奮虎「…さぁ?」 血子「アンタも知んないんじゃん!!」 奮虎「とにかく、オラはまだ死にたく…んにゃ、死ぬわけにはいかねぇんだべ!」 勇者「やれやれ…。まぁ聞け、奮虎よ。」 奮虎「誰がウンコだ!」 勇者「言ってねーよ!文句あるなら名付け親に言いやがれ!」 奮虎「…オラに親はいねぇ。たった一人の弟とも…もう…。」 賢二「そ、そんな…。」 奮虎「オラを育ててくれたのは村のみんなだ。恩を返すまで…まだ生きてぇんだ!」 勇者「…わかった、行け。」 奮虎「えっ…。 んだば見逃してもらえるだか!?村に帰ってもいいと!?」 賢二「ゆ、勇者君…。」 血子「ダーリン…。」 |
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勇者「もちろん「前を」だ。」 | |
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2-23:隠処〔12歳:LEVEL15〕 | |
嫌がる奮虎の首根っこを引っ掴み、「首無し族」が出るという峠を目指した俺達。 だが一時間歩いても、敵が現れる気配は一向に無かった。いい加減疲れたぞコラ。 勇者「オイ奮虎よ、一体いつまで歩かせる気だ?もしや迷ったんじゃあるまいな?」 奮虎「まぁ急かすなや。もうちっと歩きゃ奴らのアジトが見えるはずだべさ。」 賢二「あ、アジトに行くの!?どうせ襲われるんだから、わざわざ出向かなくても!」 勇者「アホ賢二。根こそぎ倒さねば真の目的は達せられんだろうが。」 血子「さっすがダーリン☆平和のためなら危険すら恐れないその勇敢なところ…」 勇者「行かねば宝が奪えんだろ?」 血子「…よりも、そんな自分本位なところがたまらないよね☆」 賢二「いや、「たまったもんじゃない」の間違いでは…?」 奮虎「むっ!見えたべ!!」 ダダダダッ!(駆足) 勇者「お、おいコラ!急にどうしたんだ…!?」 奮虎「ホレ、見るべ勇者。アレだべよ。」 勇者「なにっ!? おぉ、そうか!アレが…」 アレが…港町「ソノマ」…。 |
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2-24:値切〔12歳:LEVEL15〕 | |
どういうわけか、「首無し族」に襲われるはずの峠を何事も無く越えてしまった。 こういう展開はアリなのかどうなのか少し悩んだが、面倒なのでもう気にしない。 ~エリン大陸:港町ソノマ~ 勇者「というわけで、ご苦労だったな奮虎。さっさと帰…り道で襲われるがいい。」 奮虎「ま、待ってくれや!ホントにそうなりそうでオラ一人じゃ帰れねぇべさ!」 勇者「ガタガタ騒ぐな!この「人間異臭騒ぎ」め!」 奮虎「騒ぐのはオメェらだ!オラはひっそりと草陰で息を潜めてる側だべ!」 賢二「「異臭」の部分には一切反論しないんですね…。」 勇者「よし、とりあえず武具屋にでも向かうか。このデカい街なら良い店もあるだろ。」 血子「あっ、でもお金あんま無いじゃん?どうすんの?」 勇者「任せろ。値切ったり値切られたりは俺の得意分野だ。」 奮虎「ふ~ん。そげな交渉ごとが得意そうにゃ見えねぇがなや。」 血子「うっさいよ田舎モン!ダーリンは値切るってったら値切る男だもん!」 勇者「聞き分けの無い店主は、手足とか…こう…モギュッ!って。」 血子「えっ!「千切る」なの!?」 賢二「アレはもう…見たくないな…。」 血子「実際あったの!?」 勇者「まぁとにかく武具屋へ行くぞ。今宵の魔剣は、血を欲してやがるぜ。」 血子「何しに行くの!!?」 |
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2-25:買物〔12歳:LEVEL15〕 | |
久々に大きな街へとやって来たので、とりあえず武具屋へ行ってみることにした。 魔剣の呪いがあるため武器を買う気は無いが、防具は新調しておきたいのだ。 ガラララン。(鐘) 店主「ま~いらっしゃい。あらあら、随分と小さなお客さん達だこと。」 勇者「安心しろババア、貴様の小ジワほどじゃない。」 店主「Σ( ̄□ ̄;)!!」 血子「し、失礼だよダーリン!どう見てもまだ五十代だよ!」 店主「いや、まだ四十代…」 奮虎「そうだべ!まだ適当に「お嬢さん」とか言っときゃ付け上がる年代だべさ!」 店主「それは面と向かって言うセリフじゃ…」 勇者「ところでババア、この俺に似合うような素敵な防具は置いてないか?」 店主「あらら?それって…魔剣? こりゃまた随分と渋い趣味だわねぇ。」 勇者「趣味なわけあるか!どう見ても俺には不相応だろうが!」 店主「いや、どう見てもオーダーメイドですが…。」 勇者「剣のことはいい。何か「勇者」に似合う防具は無いかと聞いてるんだ!」 店主「勇者?う~ん…あ!そういえば前にそれっぽい盾の噂を聞いたような…。」 勇者「ほ、ホントか!?それはこの辺にあ…」 (「出たぁー!魔人が出たぞぉー!!」) 勇者「!!?」 血子「魔人!?一見平和そうだったのに…!」 賢二「ゆ、勇者君!」 勇者「ああ、わかってる!!」 よし、早速探しに向かうか。 |
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2-26:職歴〔12歳:LEVEL15〕 | |
やっと面白い話になってきたのに、魔人が現れて話が逸れてしまった。やれやれだ。 とても面倒ではあるが、敵を前にして逃げるような真似はできん。「勇者」として。 勇者「ったく…行くぞお前ら。準備はいいか?」 賢二「う、うん!」 ガラララン。(退店) 魔人「いらっしゃいませー。」 血子「えっと、四人ですけど入れますか~?って、いま出てきたんだよ!!」 魔人「ハッ、しまった!ついバイト時代の癖が!」 血子「バイトて! 誰が魔人なんか雇うかっての!」 魔人「失敬な!土木作業なら魔人の方が非力な人間より使えるんだぜ!?」 賢二「まぁそれじゃ「いらっしゃいませ」とは繋がらないけどね。」 魔人「…コ、コロス!ニンゲン テキ!」 血子「さっきまでペラペラだったじゃん!」 勇者「よし奮虎、条件を出そう。この弱そうな敵を倒せれば村まで送っ…奮虎?」 賢二「見事な逃げ足だったよ…。」 勇者「あ゛ぁ~!もういい!仕方なく俺が相手してやるよチクショウ!」 賢二「なんか最近「仕方なく」で戦うこと多いよね、「勇者」なのに…。」 勇者「さぁ!とっととかかって来い!」 魔人「ケッ、そっちこそかかっ…いらっしゃいませー!!」 血子「こだわるなー!!」 勇者「くたばれぇえええええ!!」 魔人「ハイ喜んでぇええええ!!」 |
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2-27:説教〔12歳:LEVEL15〕 | |
妙にバイト気分な魔人と闘うこと十秒…。俺はアッサリ勝利した。 十秒てオイ。 いくらなんでも弱すぎる。こういう雑魚は、一度キッチリ説教してやらねばなるまい。 勇者「おいコラ、貴様ナメてるのか?もうチョイ頑張ってもらわんとこっちの立場が…」 魔人「ひぇええええ!も、もうヤメてぇえええ!鬼ぃいいいい!!」 勇者「誰が鬼だ!魔人が言うな魔人が! あまり怒らすと金棒振り回すぞコラ!」 血子「鬼じゃんそれ!すんごいコテコテのイメージだけども!」 魔人「お、俺はただの使いッパで!ただ「ゴクロ様」の命令…なんでもなくて!」 勇者「五秒やる。そのまま全て話すか、二度と話せなくなるか…前者を選べ。」 血子「えっ!選択権は与えないの!?」 魔人「おお脅しには屈しないぜ!?魔人の誇りに懸けて口が裂けても…」 勇者「ほぉ、口を裂いても…?」 魔人「ゴクロ様です、ハイ。 この辺りに巣食う魔人達の親玉でございます。」 賢二(ま、魔人も生きるのに必死なんだなぁ…。) 奮虎「フンッ、ヘタレが。」 血子「お前が言うんかい!!」 勇者「こっ…!今まで一体どこにいやがったんだこの腰抜けめがぁ!!」 奮虎「や、大丈夫。もう立てるべ。」 血子「ホントに抜けてたんかい!」 |
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2-28:出立〔12歳:LEVEL15〕 | |
アッサリ負けた魔人の口からウッカリ漏れたボスの名前。なんてアホな奴なんだ。 もうなんだかとっても不愉快だ。こうなったらウサ晴らしに出掛けるしかないだろう。 勇者「決めた。その「お疲れ様」とかいう奴を倒しにいくぞ。」 魔人「うぇっ!?ダメだって!ヤメた方がいいってば!ゴクロ様めっちゃ強いし!」 賢二「ホントに強いんですか…?」 魔人「それがマジで強いんだよ。将棋とか。」 血子「インドア系かよ!!」 店主「ゴクロを倒しに行くって…本気かい?ボウヤ。」 勇者「あん?なんだババア、文句でもあるのか?」 店主「ゴクロの軍にはアタシらも参っててね。やるってんなら応援するよ!ホレッ!」 勇者「む?なんだこの短いベルトっぽいのは…?流行りのファッションアイテムか?」 店主「ちょっとした防具だよ。でも気を付けな?奴は正体不明の化け物だからね。」 勇者「フッ、俺を甘く見るな。我が家にも正体不明のペットくらい居たぞ。」 店主「あ、そうそう。例の盾の話だけど、多分もっと北に行けばわかると思うよ。」 勇者「そうか。 よし、そうと決まれば早速向かうぞ!案内しろ「マジーン」!」 マジーン「えぇっ!俺も行くのかよ!?って、なんか適当に名付けられてるし!」 奮虎「まぁ諦めるべ。コイツぁさすらいの「道案内コレクター」だでに。」 言われて気づいた。二人も要らんな。 |
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2-29:策士〔12歳:LEVEL15〕 | |
嫌がるマジーンを引き連れ、俺達は「魔人ゴクロ」の元へと向かうことになった。 聞けばゴクロは悪知恵の利く奴らしく、今まで倒しに出た奴は誰一人戻らんらしい。 ここはなんとしてでもブッ倒す。いい加減名を上げないと伝説になり損ねそうだしな。 勇者「おいマジーン、お前は部下なんだろ?だったら敵の能力とか教えろよ。」 マジーン「いや~、あの人は用心深い人でさ。実は俺、会ったことすらねーんだよ。」 賢二「部下にも正体を明かさないなんて…。ホントに用心深い人なんですね。」 マジーン「マジ凄いぜあの人。 玄関とか、ピッキング対策したいらしい。」 血子「思ってるだけかよ!」 マジーン「あ! あと、窓の鍵とかもシッカリ閉めてるって。」 血子「それは当然の行いだよ!」 勇者「そして将棋が強い。」 血子「関係ないよ!!」 マジーン「まぁ、とにかく策士なんだわ。この先にある「罠」を見りゃわかると思うぜ。」 賢二「えっ!ななな何かおっかないモノとかあるんですか!?」 マジーン「毎日変わるんで俺にもわかんねぇ。 だが、これだけは言える!」 勇者「な、何をだ…!?」 マジーン「迷いました。」 勇者「ブッ殺す!!」 |
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2-30:道開〔12歳:LEVEL15〕 | |
五時間後。激しく道に迷いながらも、なんとか敵の隠れ家付近までやってきた。 マジーンの話からすると、ここから罠がたくさんあるようだ。気をつけて進まねば。 勇者「よし、まずは俺が道を切り開く。お前らは俺の足跡を辿ってくるがいい!」 血子「そんなっ!自ら一番危険な道を行くだなんて…!」 勇者「俺は死なない自信がある。雑魚どもはのんびりとついて来ればいいんだ。」 血子「だ、ダーリン…☆」 カチッ(足元) |
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血子「ぷぎゃああああああん!」 勇者「なっ!?ち、血子ぉおおおおお!! …さて、進むか。」 賢二「切り替え早っ!!」 マジーン「一番安全なはずの最後尾で被弾するとは…運がねぇ子だな。」 カチッ(足元) |
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賢二「うわぁああああああああ!!」 勇者「わー。賢二ぃー。」 マジーン「うわー!棒読みだー!」 勇者「おっ、あっちにもあるぞ。」 マジーン「ちょっと待て!えっ!?お前知っててやってたの!?」 勇者「フッ、台本通りだ。」 マジーン「台本!?」 勇者「ほい、ポチッとな。」 マジーン「おわっ!や、やめろぉおおおお!!」 勇者「と見せかけて…!」 ザシュッ!(斬) |
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2-31:奇襲〔12歳:LEVEL15〕 | ||||
ついつい調子に乗って罠で遊んでしまい、気づけば俺は独りになっていた。 マジーンに至っては勢い余って普通に斬ってしまったが…まぁいっか。魔人だし。 ~そして二時間後~ 勇者「ふぅ~、コレが最後の部屋の扉か…。 さすがに少し疲れたな…。」 |
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コツッ、コロンコロン…。(転) 雑魚1「ん?なんだコレ?」 雑魚2「あん?馬鹿だなぁオメェ、そりゃ「手榴弾」に決まっ…え゛ぇっ!?」 ドカァーーーン!!(爆発) 雑魚3「むっ!どうした!?一体ナニゴトだ!?」 勇者「フッ、「ワタクシゴト」だ。」 雑魚3「えっ?ぎゃああああ!!」 雑魚4「こ、こちらE班!ただいま謎の爆…はっ!」 勇者「そうだ、そのまま黙って無線を切れ。 引き金を引くぞ?」 雑魚4「わ、わかった!大人しくす(パァン!)」 雑魚5「撃つのか!結局撃つの(パパァン!)」
D班長「ハッ!動くなお前達、ここから先は「地雷原」だ!元軍人の血がそう騒ぐ!」
雑魚12「う、撃つな…撃たないでくれぇー!」
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2-32:名轟〔12歳:LEVEL15〕 | |
二時間も掛かったが、なんとかゴクロが居そうな部屋に辿り着くことができた。 敵は切れ者と聞くが、まぁなんとかなるだろう。なんなら俺が「斬られ者」にしてやる。 魔人「フッ…よく来たなクソガキ。一人で乗り込んでくるとは見上げた度胸だよ。」 勇者「焦るな、もうじき地ベタから見上げることになるんだ。 貴様がゴクロか?」 魔人「…まあな。お前は勇者だろ?話は聞いてるよ。」 勇者「なにっ!? やれやれ、名声が轟きすぎるのも考えモノだな。」 ゴクロ「いや、轟いてるのは「悪名」だぞ。」 勇者「ちなみに誰経由でどう聞いた?内容によってはそいつも斬らねばならん。」 ゴクロ「名は言えん。青でもなくて紫でもない、恐ろしい御方なんでな。」 勇者「群青か!その微妙さ加減は群青錬邪か!」 ゴクロ「貴様の情報は分析済みだ。剣が予想よりデカい以外は情報通りだよ。」 勇者「フッ。コイツはどういうわけか、俺の成長に合わせて育つ呪われた剣なのだ。」 ゴクロ「答え出てるじゃねーか。呪いのせいだろ。」 勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!」 ゴクロ「さて、そろそろ処刑といくか。おっと、お前は動くなよ?」 勇者「む? ハッ!そいつらは…!!」 賢&血「う゛、う゛ぅ…。」 勇者「け、賢二!血子! 貴様…なんて酷いことを!!」 ゴクロ「お、オイ、これでも手当てしたんだぞ?」 チッ、余計なことを。 |
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2-33:詐欺〔12歳:LEVEL15〕 | |
運良く拾われたらしく、賢二と血子は生きていた。まったくしぶとい奴らめ。 ゴクロ「クッ…!聞いてはいたが、まさか人質作戦が通じないほど冷酷とは…!」 勇者「甘いな。俺がそんな手に掛かるとでも思ったか?「策士」が聞いて呆れるわ。」 賢二「いや、僕らの方が呆れたけどね…。」 ゴクロ「あ?策士だぁ? バカ言うな!俺は「力士」だ!!」 勇者「へ…?あ、すまん。ウッカリ聞き間違えちまったよ。って嘘付けっ!!」 ゴクロ「ケッ、なら技で証明してやるよ! 行くぜぇ!必殺「猫騙し」!!」 |
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賢二「なんだかとっても勝てそうな気が。」 勇者「ふざっ…そんな技じゃ猫だって騙せんわ!なにが「猫騙し」だこの野郎!」 ゴクロ「…ニャ、ニ゛ャァーーー!!」 勇者「「魂」か!「猫魂」だったのか!?」 血子「だ、ダーリン!?ちょっと騙されちゃってない!?」 ゴクロ「ヘッヘッへ引っ掛かりやがったな!これぞ必殺「子供騙し」よ!!」 血子「名前コロコロ変えないでよ!」 |
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2-34:倒技〔12歳:LEVEL15〕 | |
「策士」だと思っていたら実は「力士」だったというゴクロ。 いや、どっちでもいいし。 もう今日は疲れた、早く帰って休みたい。とっとと片付けて撤収することにしよう。 ゴクロ「さぁ気を取り直して行くぜ! はっけよ~い…のこったぁ!!」 勇者「し、しまった!組まれっ…!」 ゴクロ「ヘッ!組んじまえばこっちのもんだ!食らえ必殺「浴びせ倒し」!」 勇者「うぐっ…なんの!俺も負けじと必殺「送り倒し」!」 ゴクロ「むっ、やるなガキのくせに…!なら今度は必殺「寄り倒し」だ!」 勇者「フン!ならば俺は意表を突いて…必殺「勇み足」だ!!」 ゴクロ「なにっ!?な、なんて大胆な…!」 血子「ねぇ賢ちゃん、「イサミアシ」って何!?そんなスゴい技なの!?」 賢二「えっと、確か「勢い余って自分から出ちゃった時」の決まり手…だったかな?」 血子「ダメじゃんそれ!ダーリン負けちゃうじゃん!」 勇者「フッ、安心しろ。こんな非力な力士に負ける俺ではないぞ!」 ゴクロ「ほぉ、言うじゃねーか!だが俺の「真の姿」を見たらどうかな!?」 血子「し、真の姿!?そのすんごいお約束的な展開はアリなの!?」 ゴクロ「アリに決まってんだろがぁ!うぉおおおおおおおああああああ!!」 |
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~三分後~ ゴクロ「いや、もうホント…ごめんなさい。」 |
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2-35:正体〔12歳:LEVEL15〕 | |
巨大化して強くなるのかと思いきや、むしろ弱くなりやがったゴクロ。ナメてんのか。 まったく、こんな雑魚に怯えるとは…町民風情の雑魚さ加減には呆れてくるぜ。 勇者「さぁ、そろそろ処刑のお時間だ。俺に逆らったことを死んで悔やむがいい。」 ゴクロ「ま、待て!見逃してくれよ! た、頼む!頼む必殺「拝み倒し」!」 血子「しつっこいよ!!」 賢二「なんか結局、「策士」でも「力士」でもなかった感じだよね…。」 ゴクロ「てゆーか違うんだよ!実は俺は(ザシュッ!)へぶっ!! (…ガクッ)」 勇者「なっ…ヘブ!? ま、まさか…お前があの「ヘブ」だったのか!?」 血子「えっ!ただの悲鳴じゃないの今の!?実は「伝説の魔獣」とか何かなの!?」 勇者「いや、悲鳴だろ。」 血子「あ、うん…。」 勇者「さて、くだらんこと言ってないで行くぞ。財宝漁りには時間が掛かるんだ。」 血子「そ、そだよ…ね…。」 賢二(不憫だなぁ…。) |
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~その頃~ 群青「…なるほど、全滅かよ。しかも惨殺とはやるねぇクソガキが。」 電話「で、どうすんだい?脅威になる前に始末しとくか?」 群青「いや、まだだ。ガキを殺せば親父が動く…それはまだ困るもんでな。」 電話「まぁいいがね、長引いた分だけ金は貰えるし。」 群青「にしてもテメェも鬼だよなぁ。実力見るだけのために部下を殺させるなんてよ。」 電話「雑魚の利用価値なんて知れてるしなぁ。他に使い道も無いんでね。」 群青「ギャハハ、確かに。 じゃあまぁ引き続き任せるわ、うまくやれよな…ゴクロ。」 マジーン「ああ、任せときな。」 |
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2-36:忘却〔12歳:LEVEL16〕 | |
ゴクロを倒し当面の生活費を確保した俺達は、「勇者の盾」を求めて北へ進んだ。 そしていくつかの村を越えた先で、ようやくそれらしい情報を掴んだのだった。 ~エリン大陸:タミ村の喫茶店~ 勇者「てなわけで、どうやら目的の盾はこの先の「ババン山」という山にありそうだ。」 マジーン「バッ…ババン山つったら「山賊」が出るって有名な山だぜ!?ヤベェよ!」 勇者「山賊…?フッ、面白い。山賊狩りというのもまた一興だろ。 行くぞ。」 賢二「えっ、すぐに向かう気!?少しは休もうよ! ちょっ…待ってよ勇者君!!」 ガタン!(倒れる椅子) 少女「ゆ…勇者やてぇ~!?」 勇者「むっ…?」 |
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勇者「おいオヤジ、勘定はここでいいか?」 少女「ってシカトかい!ここはもっと食いついてくるとこちゃうんかい!」 勇者「何か用か小娘?俺の進路を妨げる気なら女であろうと容赦はせんぞ?」 少女「その傲慢な態度…まさしく勇者や…。 驚いたで、ほんま驚きや…。」 勇者「…ぬおっ!? そ、その口調…まさかお前は…!」 少女「借金チョロまかして逃げおった男が、こないノンキに茶ぁシバいとるとはなぁ!」 血子「えっ!借金て!?まさかダーリン借金取りから逃げてたの!?」 少女「ああ、そのまさかや。コイツはウチにドデカい借りがあんねん。なぁ勇者?」 勇者「…借金?」 少女「忘れとったんかい!」 勇者「ところでお前…誰だ?」 少女「そこは覚えとかんかい!んならさっきの驚きップリはなんやってん!?」 勇者「フッ、冗談だ。覚えてるさ。 あれは忘れもしない、去年か一昨年の…」 少女「すっかり忘れとるやないかい!」 勇者「久しぶりだな、ゴンゾウ。」 少女「ひとカケラも覚えとらんのんかい!ウチん名は「商南(あきな)」やっ!!」 賢二「あぁーーーっ!! あ、ああ…アナタは「アキドン村」の…!」 商南「おっ、タレ目は覚えとったようやな。褒美にアンタは肝臓二つで手ぇ打つわ。」 賢二「二つも売れな…というか持ってないですよ!」 商南「じゃかーしぃわボケェ!借りた金は三代かけても返すんがスジやろがぁ!」 勇者「オイオイ、人聞きの悪いことを言うな。俺達は別に金など借りてないだろ?」 商南「品代踏み倒してんねんから同じようなも…なお悪いっちゅーねん!」 勇者「焦るな。ひたすら待てばいつかは戻る。「金は天下の回し者」と言うだろう?」 商南「誰の差し金で動いとんねん!それを言うなら「回りもの」やろうが!」 勇者「アイツらはよくやってくれてるよ。」 商南「お前が黒幕やったんかい!」 血子「ちょ、ちょっとアンター!血子のダーリンにイチャモンつけないでくれる!?」 商南「あ?なんやこの茶っこい珍獣は?中身くりぬいて朝市で売りさばいたろか?」 血子「ひ、ひぃーー!!」 マジーン「ま、まぁ落ち着けよ!つーか暴れる前に今の状況を説明してくれ!」 商南「うっさいわこの緑黄色魔人が!その緑がかった顔を鮮血で染めたろか!?」 マジーン「ひ、ひぃーー!!」 賢二「ど、どうするの勇者君?このままじゃ先へ進みようがないよ…?」 勇者「…仕方ない、とっておきをくれてやるか。珍品だし売れば結構な金になろう。」 商南「あん?なんや、ちゃんと当てがあったんかい。ならさっさと出しぃや。」 血子「だ、ダメだよダーリン!こんな女の言いなりになることないよー!」 勇者「いや、いいんだ。実は俺も…早く手放したかったんだ。」 血子「だ、ダーリン…?」 さらばだ、血子…。 |
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2-37:握飯〔12歳:LEVEL16〕 | |
血子を売り払い、やっと自由を手に入れた俺。借金も返せたし一石二鳥だった。 まぁツッコミが減ったのは多少痛いが、ウザいよりはマシだ。気にせず行くとしよう。 ~ババン山(中腹)~ 勇者「で、商南よ…お前はいつまでついて来る気なんだ?もう用は済んだろうが。」 商南「あ~。実はウチ独立してなぁ、今は流しの商人やねん。せやからよろしゅう。」 勇者「あぁっ!?何が「せやから」だ!全然意味がわからんぞ!」 賢二「そ、それってまさか…僕らと一緒に旅する気ってことですか?」 商南「せや。女の一人旅は物騒やでな。ホレ、「旅は道連れ世は情け」言うやろ?」 勇者「フザけるな!俺は「情け」と盗子が大嫌いなんだ!」 賢二「存在忘れてたのに、こういう時には出てくるんだね名前…。」 商南「別にええやん、ケツの穴のちっさい男やなぁ。大根突っ込んで広げたろか?」 マジーン「あれ?そういやあの子はどうしたんだ?まさかもう売っちまったとか?」 商南「あ、とりあえずウチの実家に送ったったわ。ごっつ泣きながら去ってったで。」 勇者「そんなことより俺は腹が減ったぞ。おい商人、何か持ってないのか?」 賢二「いや、その前に少しは悲しもうよ…。」 商南「メシか?せやったらここに握り飯があるで。1000銅(約1000円)でどうや?」 勇者「あん?まさか仲間から金を取る気…って、高ぇよ!そんな握り飯があるか!」 商南「ったく、ケチケチすんなや2000銅くらい。」 勇者「上がってんじゃねーか!一体この十秒でコイツに何が起きたんだよ!?」 商南「コイツ、成長期やねん。」 勇者「そうか、今後が楽しみだな…。」 商南「納得すんのんかい!!」 勇者「そんなの俺の勝手だろうが。とにかく腹が減ってんだ、さっさと寄こせよ。」 商南「まぁええけどな。こないな握り飯が3000で売れるいうなら。」 勇者「また上がってんじゃねーか!コイツのどこにそんな金が掛かってんだよ!?」 商南「コイツ、親に仕送りしとんねん。」 勇者「苦労してんだな…。」 商南「せやからなんで納得できんねん!!」 賢二「・・・・・・・・。」 マジーン「・・・・・・・・。」 山賊達「・・・・・・・・。」 |
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2-38:監禁〔12歳:LEVEL16〕 | |
商南とモメていたら、知らぬ間に山賊達に囲まれていた。 生意気なっ!皆殺しだ! …と、いつもなら早速戦闘開始なのだが、今回は少し頭を働かせてみようかと思う。 どうせ盾はコイツらが隠し持ってるんだ、わざと捕まって案内させようじゃないか。 ~一時間後:山賊の隠れ家(牢獄)~ マジーン「ぐっ、取れねぇ…!この枷(かせ)はかなり厄介だぜ、ヤバくねぇか!?」 賢二「どどどどうしよう!見張りが帰ってくる前に逃げなきゃなのにー!」 勇者「まぁ焦るな賢二、もう少しだ。むんっ!よっ…ホアァッ!! よし、外れたぞ。」 商南「ほ、ホンマか!?」 勇者「肩が。」 商南「手枷を外さんかい!!」 賢二「うわーん!もうお手上げだー!」 勇者「ば、バカを言うな!上げたら痛ぇよ!」 マジーン「いや、そういう意味じゃねーだろ。」 勇者「チッ、まさかこんな枷ごときが外せんとは…!」 賢二「人の道ならとっくに外れてるのにね…あ゛。」 勇者「よーしわかった!枷を外したらまず貴様から殺してやる!なぁお前達!?」 商南「アホか、逃げるんが先に決まっとるやないか。」 マジーン「だよなぁ。今はそれどころじゃねぇって。」 賢二「で、ですよね!そうですよね!」 チッ、仲間「外れ」か…。 |
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2-39:変人〔12歳:LEVEL16〕 | |
肩は外れたが肝心の枷を外すことができず、結局脱出することができなかった。 それどころか、今から「族長」とやらに会わされるようだ。 少々ヤバいかもしれん。 山賊A「族長ぉ!妙な奴らがうろついてたんで連れて来やしたぜぇ!」 族長「ぬっ? おぉ、ご苦労ご苦労。後はオデがやるがら下がっでろや。」 勇者「貴様が長か。山賊の名にふさわしくムサ苦しいオッサンだな。」 族長「おいおい、囚われの身分で随分と威勢がいいでねぇが小僧っこよ。 名は?」 勇者「名乗れだとぉ!?貴様なんぞに名乗る名など無いほどに俺の名は勇者だ!」 商南「思っきし名乗っとるやないかい!!」 族長「勇者だぁ?ブハハッ!そげな妙な名さ付げる馬鹿親が他にもいだどはなぁ!」 勇者「ほ、他にも!? さすが大陸…広いな。親父と似た奴まで存在するとは…。」 族長「みでぇだな。まぁアイヅの方が変わっどるだろうがよぉ。」 勇者「あん?いやいや、ウチの親父の変人っぷりに勝てる奴などそうは居ないぞ?」 族長「馬鹿言うなオメェ、奴ぁ剣と間違えでゴボウで戦うような型破り野郎だど?」 勇者「フンッ、親父なんかアレだぞ!「勇者」のクセに「召喚魔術」を習得したぞ!」 族長「世界広しと言えど、「食い逃げ」だけで指名手配されだのは奴しがいめぇ。」 勇者「親父だって悪人だ!なんたって今をときめく悪人「五錬邪」の創設者だしな!」 族長「奴はよ、「天帝」の子…「皇女」の求婚を断っだような男だど?もっだいねぇ。」 勇者「ナメるな!親父なんか皇女どころか「魔王」と結婚したぞ!」 マジーン(…じょ、冗談だよな?) 賢二(ハイ、「生きた冗談」でしたよ…。) 勇者「つーわけでまぁ、親父の勝ちだな。」 族長「うんにゃ、まだまだあるど!奴が負げるはずぁねぇ!」 賢二(この場合、どっちが勝ちなのか負けなのか…。) 勇者「いいや!親父だ!!」 族長「凱空だ!!」 勇者「同一人物じゃねーかっ!!」 |
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2-40:宴会〔12歳:LEVEL16〕 | |
俺が旧友の息子だとわかり、上機嫌になった族長の号令で宴が催された。 山賊どもは意外と気のいい奴ばかりで、宴は和やかな雰囲気で始まったのだった。 族長「そうが、オメェが凱空の…。風の噂でしが聞いでねがっだがら驚れぇだわ。」 勇者「俺も驚いたぞ、まさか茶柱が立つとは。」 商南「会話する気あらへんのんかい!」 賢二「あ、あの~…。ところで結局、僕らの安全は保証されてるんでしょうか…?」 族長「そりゃもちろんだ!旧友のガキどもに手なんぞ…おぉ、悪ぃな。とっとっと。」 マジーン「いや、気にしねぇでくれ。こういうのは前のバイトで慣れてんだ。」 賢二「あ、その注ぎ方ってなんかカッコいいですね!あれ?でも居酒屋っぽくは…」 マジーン「あ゛…いや、他にもやってたんだよ。なんつーの?ほら、ホストってやつ?」 賢二「へぇ~!もっと詳しく聞いてもいいですか? やっぱ大変だったんですか?」 マジーン「え゛っ!あ…あぁ、大変だったよ。雨の日も風の日も…手紙を待ったぜ。」 商南「そりゃ「ポスト」ちゃうんかい!」 賢二「ま、まぁいいじゃないですか。せっかくの席だし少しくらいハメ外しても…ね?」 勇者「フッ、まあな。」 商南「ってお前が答えるんかいっ!!」 マジーン「ご、ゴメンな…。ホント、うぐっ、ゴメンなぁ…。」 商南「謝るんはお前なんかい!しかも泣き上戸か!」 勇者「まあな!アッハッハ!」 商南「おのれはメッチャ笑うとるやないかい!!」 賢二(このツッコミ、助かるなぁ…。) |
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2-41:盗賊〔12歳:LEVEL16〕 | |
夜もふけ宴も終わり、山賊どもが寝静まった頃、俺達は「宝物庫」の前に来ていた。 奴らが気を許している今がチャンスだ、目的の盾を奪ってとっとと逃げるとしよう。 賢二「ね、ねぇ勇者君、ホントに盗むつもり?あんなに良くしてくれたのに…。」 勇者「なかなか頑丈そうな扉だな。剣ねじこんで開けられるだろうか?」 賢二「勇者君…見えてる…?僕はここに居るよ…?」 勇者「開かんな…。よし、ならば爆薬で扉ごとフッ飛ばすか。」 商南「爆っ…!アホか!なに考えとんねんアンタ!」 賢二「で、ですよね!もっと言っちゃってくださいよ!」 商南「ウチに任せんかい。鍵開けならお手のモンやで。」 賢二「あれっ!?止めてくれるんじゃなくて!?」 マジーン「金が絡むと目の色変わるんだなこの子…。」 勇者「フン、まぁそこまで言うなら貴様に任せてやる。だが五分以上は待たんぞ?」 カチッ(開) 商南「ホレ、開いたで。バレへんうちに行こうや。」 三人(は、速い…。) |
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勇者「さてと、じゃあさっさと済ませ…」 声「…やれやれ、やっぱし来だがよ。血は争えんもんだなぁ。」 賢二「えっ!ぞ、族長さん!?なんでここに…!?」 族長「まさがど思っで張っどったんだぁ。実ぁ凱空の奴も同じことしくさったでよぉ。」 勇者「な、なにっ!? チッ、親父の奴め余計なことを…お、高そうな剣発見。」 商南「アホか勇者!そないなモン漁っとる場合やないやろが!」 族長「そうだど勇者、その嬢ちゃんの言う通りだぁ。こういう時は素直に…」 商南「狙うんやったら宝石や。剣なんかかさばっていかんわ。」 族長「・・・・・・・・。」 賢二「・・・・・・・・。」 |
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2-42:宝箱〔12歳:LEVEL16〕 | |
こっそりと宝を奪って逃げるつもりが、族長の奴に見つかってしまった。マズったぜ。 こうなりゃ殺るしかないか…そう思った時、意外にも族長はこう言ってきたのだった。 族長「悪いが全部はやれね。だが戦友のガキだぁ…一つだけ選んで持っでけや。」 賢二「えっ!怒るどころかくれるんですか!?ホントに!?」 勇者「む~、一つかぁ~…まぁ仕方ないか。じゃあ「勇者の盾」を寄こしやがれ。」 族長「勇者の盾だぁ?そりゃここにゃ無ぇだよ。 噂じゃ山頂の洞窟にあるとか…。」 勇者「あん?なんだ、お前らが持ってたんじゃないのか。だが何故取りに行かん?」 族長「ブハハッ、族は「奪う」のが仕事だでな。探し行ぐのは面倒でよぉ。」 商南「ゆ、勇者ー!なんやごっつ高そうな宝箱めっけたでぇー!」 勇者「む?おぉ、確かに何かありそうな感じだな。 あれを貰ってもいいんだよな?」 族長「あれか…いや、あれはヤメとげ。 鍵が開かねぇでな、オデも中は知らな…」 カチッ(開) 商南「開いたで。」 族長「Σ( ̄□ ̄;)!!」 勇者「よし、じゃあとりあえず見るだけ見てみるとするか。」 マジーン「ちょ、ちょっと待てよ!何だかわかんねぇんだろ!?危なくねぇか!?」 賢二「そ、そうだよ!もしかしたら腰抜かすような恐ろしいモノが入ってるかも…!」 勇者「フンッ!たかが宝箱ごときにビックリするなど有り得んわ!見るがいい!!」 ギィィィィ…(開) 姫「…ほぇ?」 勇者「ビックリーー!!!」 |
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2-43:名前〔12歳:LEVEL16〕 | |
宝箱を開けたら、なんと中から姫ちゃんがコンニチハ。う、嬉っ、嬉しljふぁl%をpうpw 姫「ほへぇ~…。」 勇者「ま、ま、まさか…ひ、ひ、ひっ、姫ちゃブゥーーー!!(鼻血)」 賢二「うわぁー!お、落ち着いて勇者君!その量は興奮して出す量じゃないよ!?」 姫「あ、勇者君お久しぶり。 こんな所で何してるの?」 勇者「い、いや、それはこっちが聞きた…相変わらず可愛いぜうっひょー!!」 賢二(しばらくこのキャラなんだろうな勇者君…。) 姫「勇者君は…ちょっと見ないウチに赤くなったね。」 勇者「フッ、照れてるんだ。」 商南「鼻血やろがい!どう照れたら真紅に染まれんねん!」 マジーン「つーかよ、誰なんだこの子は?まさか「宝箱の精」とかじゃねぇよな?」 賢二「あ、そうだった。えっと彼女は…」 姫「気のせいだよ。」 マジーン「え…。 そ、そうか。気のせいだったか…。」 商南「納得すなや!言葉の意味が明らかにちゃうやろが!」 姫「あ、盗子ちゃんお久しぶり。」 商南「誰やねん!ウチん名は商南や!!」 姫「…あ~、あと一歩だったよ。」 商南「全然足りひんわ!ちゅーかそもそも方向がちゃう!!」 姫「…こっち?」 商南「こっちやない!指してもわからへん! もうええから名ぁ名乗れや!」 姫「すこぶる面倒だよ。」 商南「二秒で終わるがな!サラッと言や済むことやろが!」 姫「初めまして、「サラッ」だよ。」 商南「そういう意味ちゃうがな!あとどうせなら「ッ」は取らんかい!」 姫「二度目まして、サ…」 商南「言わんでええ!!」 姫「じゃあもう商南でいいよ。」 商南「そりゃウチん名やぁー!!」 姫「えっ…。」 商南「なんで驚いとんねん!なんで「衝撃の事実発覚顔」やねん!」 姫「鼻血…?」 商南「そこか!今さらそこに驚いたんか!」 姫「えへへ。引っ掛かった?」 商南「何が「引っ掛かった?」や!思っきし素の顔やったやないか!」 姫「私は引っ掛かったよ。」 商南「首謀者は誰やねん!!!」 マジーン「す、スゲーなあの二人…。」 賢二「止まらないね…。」 勇者「ああ、止まらないな…。」 鼻血が…。 |
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2-44:誤解〔12歳:LEVEL16〕 | |
姫ちゃんを仲間に加え、目的地も定まった俺達は翌日、山賊屋敷を去ることに… しようかとも思ったのだが、別に焦ることもないのでノンビリ過ごしてやることにした。 なんでも洞窟には「番人」がいるらしいしな、英気を養っておくのも悪くないだろう。 商南「なぁ勇者、もう一週間やで?いつになったら出発しよんねん?」 勇者「ん~、まぁもう少し待て。こっちは肩と腰と大量の血液が抜けたんだぞ?」 商南「ふ~ん。ま、ええけどな。誰かてビビるっちゅーことはあるもんや。」 勇者「あ?まさか俺が逃げてるとでも…? そんなつもりは毛頭無いわ!!」 姫「えっ…。勇者君、「モーホー」じゃないの?」 勇者「うぇっ!? ち、違うぞ姫ちゃん!「毛頭」だ!!」 姫「やっぱりモーホーなんだね…。」 勇者「誤解だ!そういう意味じゃないんだ!毛頭…っつーか「やっぱり」てオイ!」 姫「お巡りさーん、モーホーがいますよー!」 勇者「なっ!罪なのか!?アレはアレで立派な愛の形なんじゃないのか!?」 姫「元気出してね。」 勇者「励まされたー!!」 商南(なんやオモロいことになってきよったで~☆ なぁタレ目っち?) 賢二(ま、まぁ他人事のウチはね。) 姫「勇者君…今から言うことに正直に答えてほしいよ。」 勇者「お、オイオイ!なんだよ真剣な顔して! まさか本気で疑って…!?」 姫「モーホーって何?」 商南「って知らんかったんかい!!」 勇者「そんなキミが好きだぁー!」 姫「モーホーって食べれる?」 勇者「ん?ああ、食う奴は食うぞ。」 賢二「いやいやいや!そんな誤解を招くような表現は良くないよ!」 勇者「だってホラ、アイツのお前を見る目ったら…。」 賢二「え゛っ…?」 山賊A「(☆∀☆ )」 |
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2-45:番人〔12歳:LEVEL16〕 | |
更に二日が経ち、ここでの生活にもいい加減飽きてきた。よし、旅立とう。 勇者「世話になったな。もう二度と会うことは無いだろうから、涙で見送るがいい。」 族長「…そが。なんだが寂しぐなるやなぁ。 ま、気ぃ付げで行げや。」 山賊A「オメェも元気でやれよな。」 賢二「あ、ハイ。みなさんもお元気で。」 山賊A「いつか遊びに来いよ。そんでまた、楽しくやろうな…色々と。(ボソッ)」 賢二「何をですかっ!その妙に潤んだ瞳は何ですかっ!?」 そして歩くこと数時間。俺達は山頂の洞窟内、謎の扉前に来ていた。 明らかに人為的に作られた扉だ、きっとこの中に「勇者の盾」はあるのだろう。 勇者「じゃあ開けるぞ。番人がどんな奴かは知らんが、ビビッて逃げるなよ?」 商南「フン、あんな緑魔人なんぞと一緒にせんといてほしいわ。ウチは平気やで。」 賢二「ホントにどうしちゃったんだろマジーンさん…。」 勇者「雑魚のことは気にするな、今は番人のことだけ考えてろ。 行くぞ!」 ギィイイイイ…(開) スイカ「…ん?」 バタンッ!!(閉) 勇者「帰ろう。」 賢二「えっ!どうしたの!?なんでそうなるの!?」 勇者「い、いや。いま一瞬…見てはいけない何かを見たような気がしたんだ。」 商南「はぁ?何言っとるんや!「時は金なり」っちゅーやろが、早ぅ行かんかい!」 勇者「お、おう。」 ギィイイイイ…(開) スイカ「粗茶だが。」 姫「今日もヌルいね。」 バタンッ!!(閉) 勇者「茶菓子を買って来よう。」 賢二「えっ!一体何を見たの!?何を見たらそんな穏やかな発想に至るの!?」 勇者「い、いや。いま一瞬…中で姫ちゃんがティータイムだった気がしたんだ。」 商南「はぁ?んなわけあるかい!姫ならホレここに…ってどこにやねん!?」 勇者「やっぱり中に居るのか…。」 姫「誰が?」 三人「え゛ぇっ!!?」 |
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〔神出鬼没(しんしゅつきぼつ)〕 |
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魔法士:LEVEL??の魔法。(消費MP??)※伝説の魔法なため詳しくは不明。 読んで字の如く神秘的な魔法。時々消しゴムが見当たらなくなるのもこのせいとか。 |
2-46:空気〔12歳:LEVEL16〕 | |
洞窟の奥の間…その中に見えたのは、なんと「スイカ割り魔人」。あのウザい奴だ。 よし、こうなったら一瞬で終わりにしてしまおう。喋る間も無いうちに砕いてやろう。 勇者(よし、開けるぞ。俺が一撃でカタをつける、お前らはのんびり茶でも飲んでろ。) ギィイイイイ…(開) 勇者「うぉおおお!派手に砕けろっ!それがスイカ割りの醍醐味だぁー!!」 スイカ「…ぬぅっ!?」 バスコーン!(叩) |
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勇者「い゛…いってぇー!!」 賢二「えっ!なんで割りにいった勇者君が割られかけてるの!?」 スイカ「フッ、ワシを誰と思っ…お?誰かと思えばカクリ島のスイカどもではないか。」 商南「誰がスイカやねん!ってお前がスイカやないかい!!」 スイカ「久しいな小僧。相も変わらずヌシのスイカは壮健か?」 賢二「ごめんなさい初対面です。」 姫「初めまして姫だよ。」 勇者「いや、キミは何度も会ってるぞ。つい2・3分前にもだぞ。」 スイカ「御託はいい!勝負だ小僧!! ここで逢ったが…ひぃふぅみぃ…。」 勇者「いちいち数えるな!そこは「百年目」と言っときゃいいだろが!」 スイカ「三年目!!」 勇者「しかも間違ってるし!つーかなんで貴様はいつもすぐ挑んでくるんだ!?」 スイカ「フンッ、知れたこと。闘いこそが…闘いこそが我がスイカだからだ!!」 勇者「聞いた俺がアホだったぜ…。」 声(勇者!ちょい勇者っ!) 勇者「あん?なんだよ商南、俺は忙しいんだ。愛の告白なら顔を改めろ。」 商南(誰がするか!って「日」ちゃうんかい! …やのうて、ウチが言いたいんは…) 勇者(なにっ、盾を見つけた!?でかしたぞ商南!) 商南(なんで通じとんねん!まだ何も言うとらんがな!) 勇者(フッ、ナメるな。俺は必要以上に空気の読める男だ。) 商南(読めすぎや!気色悪いわ!!) 賢二「・・・・・・・・。」 スイカ「・・・・・・・・。」 |
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2-47:危険〔12歳:LEVEL16〕 | |
金の亡者の力により、「勇者の盾」の在り処はわかった。 あとはゲットするだけだ。 勇者(というわけで賢二、後は任せた。一足先に夏を満喫してくれ。) 賢二(え゛ぇっ!?む、無理だよ僕じゃ…の前に、逃げられないんじゃない?) スイカ「どこへ行く気だ小僧?このワシから逃れられるとでも思っておるのか?」 賢二(ほらやっぱり…!) 勇者「スイカを買ってくる。」 賢二「いや、バレバレだから!さっきの話聞こえてたから!」 スイカ「ワシの分も頼む。」 賢二「やっぱりですか!やっぱりそういうノリですか!」 スイカ「さぁ来い小僧!あの日からどれだけ育ったか…そのスイカ見せてみよ!」 賢二「だから初対面ですってば!」 スイカ「いくぞ!「スイカ流棒術」奥義…「百連パンチ」!!」 賢二「棒はどこいったんですか!?」 ~その頃~ マジーン「よぉ!遅かったな「黄緑錬邪(キミドレンジャ)」。一体何日待ったと…」 黄緑錬邪「オイ、なに偉そうにタメ口きいてんだよテメェ?煮るぞコラ。」 マジーン「…ハイハイ悪ぅございましたよ。ホレ、お目当ての勇者はこの中だぜ。」 黄緑錬邪「あぁそうかよ。じゃあテメェはもう用無しだ、帰って糞して寝やがれ。」 マジーン「だがよぉ、いいのか?群青のダンナは殺すなっつってたぜ?」 黄緑錬邪「私は私の好きなようにやる。テメェは大人しく草でも食ってろ。じゃあな。」 |
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スイカ「ならば「スイカ流棒術」最大奥義…「百連パンチ…と見せかけてキック」!!」 賢二「やっぱり棒は無視ですか!?」 |
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2-48:装備〔12歳:LEVEL16〕 | |
賢二がスイカに割られかけてる間に、俺達は勇者の盾を探した。 そして…。 スイカ「さて、そろそろ茶番も終わりにするか。今からは地獄の「スイカ祭り」だ!」 賢二「そっちの方が茶番くさいですよ!!」 声「フッ、悪いなスイカ。その祭りは雨天中止だ。」 スイカ「ぬぅ…? ハッ!しまっ…!」 勇者「貴様の「血の雨」でなぁ!!」 |
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スイカ「くっ!このワシの虚をつくとは…敵ながら見事な小僧よ!」 賢二「いや、あれで気づかないアナタの方がある意味見事ですよ。」 勇者「もうコレは俺のモンだ。返せと言われても返す気はサラサラ無いぞ?」 スイカ「…いや、良い。盾はヌシを選んだ、ならばそれが定めということなのだろう。」 勇者「ん?なんだ、やけにアッサリしてるじゃないか。「スイカだけに」ってか?」 スイカ「フンッ! だが心して扱えよ小僧?その盾はかつて、伝説の「勇者」が…」 勇者「安心しろ。意外にも大事にするさ。」 商南「自分で「意外にも」てオイ!」 スイカ「…この地に封じた、「呪われた盾」なのだからな。」 勇者「ってエッ!?そんな意味だったのかよ!!」 スイカ「む?知らぬと? 「勇者が封じた「破壊神の盾」」…略して「勇者の盾」だ。」 勇者「妙なところで略すなよ!全く正反対の意味じゃねーか!!」 姫「甘いね、私は知ってたよ。」 商南「どさくさ紛れに嘘吐くなや!ちゅーか知っとったんなら教えたらんかい!」 姫「勇者君それ呪われてるよ!」 商南「って今かい!!」 姫「あんまり細かいこと言ってるとハゲちゃうよ。 賢二君が。」 賢二「えっ!なんで僕が!?」 商南「ちゅーか細かないわ!!」 勇者「つーか外れないぞこの盾!!」 |
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2-49:奇襲〔12歳:LEVEL16〕 | |
ノリノリで装備した盾は、なんと呪いの盾だった。剣の次は盾とは…なんてこった。 散々期待していた分落胆も激しい。 よし決めた!とっとと帰って今日はヤケ酒だ! 勇者「…じゃ、まぁそういうわけで。」 スイカ「待てぃ小僧!どこへ行く気だ!?決着はまだついておらんぞ!」 声「ケッ、ちんたらやってんじゃねーよ雑魚どもが!まとめて死にやがれ!!」 一同「!!?」 |
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賢二「うわわっ!落ちっ!危なっ!おわっとっとー!!」 姫「う~ん。キレがイマイチ。」 商南「ダンスちゃうわ!なに冷静に審査しとんねん!」 勇者「誰だ出て来い!こんなヌルい攻撃じゃ俺達は倒せんぞ!!」 スイカ「まったくだ!ガッハッハー…!!」 |
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2-50:非常〔12歳:LEVEL16〕 | |
何者かの奇襲攻撃により、またもや谷底に散るハメになったスイカ割り魔人。 そして現れた黄緑衣装の敵。初めて見る奴だが、見るからに五錬邪の一派だ。 勇者「おいコラ貴様!その趣味の悪い衣装…五錬邪予備軍か!?」 黄緑「あ?予備じゃねーよ。縁起悪ぃ黄色は欠番になったんだ。文句あんのか?」 勇者「いや、文句以前に「興味」が無い。」 黄緑「持てよテメェ!ホラ、色とかツッコミどころあんだろーが!!」 勇者「フッ、安心しろ。今からウチの賢二が驚くほどのツッコミをかますぞ。」 賢二「え゛っ!僕!? じゃ、じゃあ…き、黄緑て!緑でも微妙なのに黄緑て!!」 黄緑「ブッ殺す!!」 賢二「うぇっ!?言ったら言ったで怒っちゃうの!?」 勇者「ホラ、驚いた。」 賢二「「僕が」って意味だったの!?」 黄緑「…もういい。やっぱテメェらは気に食わねぇよ。死ね。」 勇者「フン、甘いな雑魚めが。これ以上大地を裂いたらお前も死ぬぞ?」 黄緑「ざけんな!私の攻撃はアレだけだと思うなよ!?集いやがれ「炎の精霊」!」 |
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勇者「なにっ、炎だと!?うおっ!熱ぃ!!」 賢二「せ、精霊…女性の声…そして黄緑…。 ハッ!まさかあの人の正体って…!」 巫菜子だろ?先週予告編で見たよ。 |
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2-51:私怨〔12歳:LEVEL16〕 | |
黄緑錬邪の正体は、多分巫菜子だ。この俺の勘が言うんだから間違いない。 なんでコイツが五錬邪にいるのかは疑問だが、興味は無いので聞くのはやめよう。 黄緑「どうだ、私の実力がわかったか?最後は「氷の精霊」で氷付けにしてやるよ。」 勇者「まぁ落ち着け巫菜子。死に急ぐにはまだ若い。」 黄緑「みなっ…!?」 勇者「残念ながらバレバレだぞ。プロをナメるんじゃねぇ!」 商南「何のプロやねん!」 黄緑「違っ…ひ、人違いだろ!?そそそんな女知らねぇなぁ!」 勇者「…フッ、まさかこうもアッサリ引っ掛かるとはな。我が誘導尋問に!」 黄緑「なっ、なにっ!?」 勇者「いつ誰が「女」だと言った!?」 黄緑「聞きゃわかる名だろうが!!」 姫「えっ…!」 黄緑「ってなんで驚いてんだよテメェ!!」 姫「ビックリだよね?盗子ちゃん。」 商南「商南や言うてるやろがい!!」 賢二「と、ところで巫菜子さんは…なんでまた五錬邪なんかに…?」 黄緑「あん?んなの私の勝手…って、巫菜子じゃねーっつってんだろが!」 勇者「まぁいい。俺の前に立ちはだかると言うのなら、たとえ親でも容赦はせん!」 賢二「むしろ親の時の方が容赦してないけどね。」 黄緑「・・・・・・・・。」 勇者「さて、じゃあそろそろ殺ろうか?」 黄緑「…やっぱ予定変更だ。 やり合う前にコイツと話がある。他の奴らは消えろ。」 勇者「俺は話なんぞ無い!今すぐ死にやがれぇええ!!」 |
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賢二「な、なんで僕に…グフッ。」 勇者「顔がムカついた。」 商南「んな理不尽な!ちゅーか何を今さら!」 勇者「まぁそういうわけだ、お前もちょっと席外せよ商南。パンでも買って来い。」 商南「はぁ?なんでウチが…って、こない山奥にパン屋なんてあるか!」 姫「パンが無ければケーキを食べればいいんだよ。」 商南「どこの女王様やねん!…まぁええわ、なんやわけありそうやしな。行くで姫。」 姫「そだね。大事な話は二人きりじゃないとね。」 |
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勇者「さぁ人払いはできた。何の用かは知らんが、とっとと言ってそして死ね。」 黄緑「…私が五錬邪に入ったのは、力を得るため…テメェを殺すためだ。」 勇者「殺す?悪いがお前にそこまで言われる覚えは無いぞ。特に何もしてないし。」 黄緑「あ゛?してねぇだと!?フザけんな!あの日の恨み…私は忘れねぇぞ!!」 勇者「ま、まさか…!」 さて、どの日のことだろう。 |
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2-52:懺悔〔12歳:LEVEL16〕 | |
なにやら俺に恨みがあるという巫菜子。だが身に覚えがありすぎてよくわからん。 勇者「すまん巫菜子、悪いが心当たりが絞り込めん。率直に言ってくれ。」 黄緑「そうかよ、あくまでもシラをきる気かよ…上等だ。殺す!」 勇者「あ!もしかして…給食パンに無差別に毒を仕込んだイタズラの被害者か?」 黄緑「へ…?」 勇者「違ったか…。じゃあアレか?下駄箱にラブレター型の爆弾を入れた時の?」 黄緑「あ…アレはテメェの仕業だったのかよ!危うく死にかけたんだぞテメェ!」 勇者「違う!?…あぁ!誰かが乗ったら落ちるようにベランダを細工した時の…!」 黄緑「アレもか!なんでテメェのイタズラは人命を左右するほど大掛かりなんだ!」 勇者「そうか!校長室を荒らし、窓ガラスに「ミナコ参上!」と書き残した件か!」 黄緑「んなことしやがったのかよ!一歩間違えりゃ殺されてたかもしんねーぞ!?」 勇者「安心しろ、別の組のミナコが犠牲になった。」 黄緑「ホントに一歩違いだったんじゃねーか!」 勇者「ったく、じゃあ何だってんだよ?あと思い当たることなんて十もねぇぞ?」 黄緑「まだそんなにあんのかよ!それだけで十分に殺す動機になんぞコラ!」 あっはっは。ごもっとも。 |
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2-53:殺害〔12歳:LEVEL16〕 | |
バレてなかった悪事まで散々暴露したが、結局巫菜子の求める答えは出なかった。 すると巫菜子は、いい加減痺れを切らしたのか、自分から語り始めたのだった。 黄緑「時間が無ぇから率直に聞く。なんで…なんで私の両親と弟を殺したぁ!?」 勇者「む?両親と弟…? 悪いがホントに身に覚えが無いぞ。人違いじゃないか?」 黄緑「ざけてんじゃねーよ!テメェだっつーネタは挙がってんだよ!!」 勇者「なにっ!?この俺が証拠を残しただと!?」 黄緑「死体の血で書かれてたんだよ!窓ガラスに…「勇者参上!」となぁ!!」 勇者「俺のイタズラと同レベルじゃねーか!そんなの信じるなよ!」 黄緑「黙れクソが!テメェならやりそうだろうが!」 勇者「フッ、照れるぜオイ。」 黄緑「どんだけポジティブならそう返せんだよ!?」 勇者「とにかく俺は知らんぞ。信じる信じないは貴様の勝手だがな。」 黄緑「なら話はここまでだ! 出やがれ「風の精霊」、コイツを切り刻めぇええ!!」 勇者「カマイタチ!? よ、よし!さぁ今こそ出番だ「勇者の盾」どわぁあああ!!」 |
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黄緑「あははっ!装備に見放されるたぁ愚かな奴だぜ!こりゃ終わったな!」 勇者「ぐっ!な、何か他に防具は…ハッ!そういや前に武具屋から貰ったのが…!」 黄緑「んだよソレ?んな珍妙なベルトで何が守れるってんだよ。バカかテメェ?」 勇者「甘いな!こういうアイテムこそ実はスゴいもんなんだよ! さてと説明は…。」 |
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勇者「って何を守らせる気なんだ!!」 巫菜子「死ねぇええええええええ!!」 ブバッ!!(鮮血) |
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2-54:残虐〔12歳:LEVEL16〕 | |
薄暗い洞窟の壁面に、鮮血がほとばしった。だがそれは俺のものではなかった。 なぜか巫菜子が血を吐いたのである。 一体何があっ…まぁ別にどうでもいいや。 黄緑「ゲハッ!ぐほっ…ブハッ!」 勇者「み、巫菜子…お前まさか…!」 黄緑「チッ、マズったぜ…。」 勇者「俺の…子か?」 黄緑「って、どう見たら「つわり」に見えんだよ!」 勇者「まぁ心当たりも無いしな。」 黄緑「ぐっ!じょ、冗談言ってる間があったら…心配でもしたらどうだよコラ…!?」 勇者「悲しいことだな…まさか旧友を手にかける日が来ようとは。」 黄緑「ホント容赦無ぇなテメェ!つーかもっと他に言うこととか無ぇのかよ!?」 勇者「じゃあ…最後に一つだけ聞いてくれ。 実は俺、ずっと前からお前のこと…」 黄緑「えっ…!ななな何言い出すんだよいきなり!?オイちょっヤメ…!」 勇者「忘れてたんだ。」 黄緑「ブッ殺す!!」 勇者「死にそうなのはお前じゃないのか?」 黄緑「…つぎ会ったら殺す!覚えてやがれぇええ!」 勇者「フンッ!誰が逃がすか! 食らえ謎の秘奥義「ミドル・ハイキック」!!」 ズゴォオオン!!(蹴) 賢二「ぎゃぁああああああああっ!!」 |
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2-55:可能〔12歳:LEVEL16〕 | |
突如体調不良を訴えた巫菜子は、捨て台詞を残し去っていった。フッ、雑魚めが。 勇者「巫菜子か…。なぜアイツが五錬邪に…世の中わからんもんだな。」 賢二「僕はなんで蹴られたのかわかんないけどね!」 商南「おぉ勇者~。用は済んだんか~?」 勇者「商南か。ちゃんとパン買ってきたか?」 商南「ホンマに頼んどったんかい!こない山奥じゃ買えん言うたやろが!」 勇者「な、なにっ!?姫ちゃんが一緒でも不可能だったってのか!?」 姫「ごめんね勇者君。パンダしか買えなかったよ。」 勇者「ホラ見ろ!もっとスゴいことが起きたじゃねーか!」 商南「い、いつの間に買うて来てん!?」 パンダ「ピギャー!!」 賢二「それホントにパンダ!?」 商南「で、どないすんねんコイツ?サーカスにでも売り飛ばしたろか?」 勇者「いや、晩飯の線が有力だろう。」 パンダ「ピギョッ!?」 姫「ダメだよ勇者君!「丸焼き」ちゃんが可哀想だよ!」 賢二「その割にすんごい名前付けてない!?」 |
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2-56:北上〔12歳:LEVEL16〕 | |
ババン山を降りた俺達は、エリン大陸の最北端「サブロ岬」へと向かうことにした。 その岬には唯一、大魔獣が出ない安全な航路をとることができる港があるらしい。 賢二「あっ!なんか見えたよ勇者君!あれじゃない!?」 勇者「あれか…やっと見えたぜ。 誰のせいとは言わんが随分回り道しちまったな。」 商南「ったく。いつも急にどっか消えるわ、居たら居たで使えんわで最悪な奴やで。」 マジーン「ホント…ごめんな…。案内を買って出た俺が方向音痴なせいで…。」 姫「「ごめん」で済んだら「なさい」は要らないよ。」 賢二「いや、そういう使い方じゃないと思う。」 姫「あ~…まぁどっちでもいいよ。ねぇミディアムちゃん?」 パンダ「ピギャ…?」 賢二「あれっ!?知らぬ間に「焼け具合」になってない!?」 勇者「フッ、いい名じゃないか。なぁウィリアム?」 商南「変わっとるし!しかも間違うとるし!どうせ言うなら「ウェルダン」や!」 勇者「ん~、そういやちょうど腹が減ってきたな。食うか!」 パンダ「ピ、ピギャッ!?」 マジーン「おいおい、怯えてるじゃねーか。やめてやれよ。」 勇者「あっはっは!」 |
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2-57:探物〔12歳:LEVEL16〕 | |
二時間後、俺達はサブロ岬を望む港町「タッグ町」に到着した。さびれた田舎町だ。 …いや、だがその割には少し騒がしい。 例の如く魔人でも出たのかもしれない。 町人「キャーー!た、助けてぇー!!」 勇者「(やはりか…。)フッ、困ってるようだな町人。助けてほしくば金をよこせ!!」 町人「わーん!挟まれたー!追い剥ぎまで来たー!」 勇者「そういう意味じゃねーよ!報酬を弾むんなら助けてやるぞって意味だ!」 町人「ホントですか!?じゃあ探しモノを手伝ってください!急がないと町が…!」 姫「それはちょっと嫌だよ。あんまり見ないでほしいよ。」 勇者「違うぞ姫ちゃん!多分それは「晒し者」だ!」 町人「お願いします!あの魔獣を鎮めるには…絶対子供の力が必要なんです!」 賢二「子供の力?僕らにしか探せない何かってことですか?」 町人「いえ、そういう意味ではなくて…!」 商南「まぁええわ、金さえ貰えりゃ何でも探すで。 何を探せ言うん?」 町人「あ、ハイ!「子パンダ」です!」 |
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2-58:助人〔12歳:LEVEL16〕 | |
町で暴れる親パンダを鎮めるには、子パンダを連れてくるしか方法は無いらしい。 となると、鎮めるのは諦めるしかなさそうだ。幸い海は近い、「沈める」ことにするか。 勇者「まさかあのパンダに、親パンダがいたとはな…。」 姫「親パ…親パンダ子パンダ黄パジャミャ!」 賢二「最後の黄パジャマの意味がわからないよ!しかも言えてないし!」 町民「あ、あの~、もしかしてみなさん、子パンダの居所をご存知…とか?」 勇者「すまない。出なかった。」 町民「出るっ!?」 マジーン「だからさっき便所行ってたのかよ!」 商南「ちゅーか出たら出たでどないしてん!?」 町民「えっ!?まさ…まさか食べ…!? あーん!もう町は終わりですー!」 老人「いやいや、なんとかなったぞ。安心しなさい。」 町民「ちょ、町長!?無事だったんですね!」 勇者「どういう意味だ町長とやら?もう退治できたとでも言うのか?」 町長「あ、ハイ。それが…先ほど颯爽と現れた女の子が倒してくれたんですわ。」 勇者「女だと?この俺の見せ場を…! 一体どんな奴なんだ?」 町長「あ~、頭に緑のバンダナ巻いた女の子で…たぶん「盗賊」じゃないかなぁ?」 勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!」 賢二「ゆ、勇者君…それってもしかして…!」 町長「すぐどっか行っちゃったからあまり見てないけど、結構可愛い子でしたわ。」 勇者「フゥ、人違いか…。」 賢二「あのさ、いつか刺されると思うよ…?」 声「勇者ーーッ!!」 町長「あぁ、あの子ですわ!あの子が今話した…!」 勇者「あん?どれどれ、一体どんな顔を…なっ!?お、お前は…!」 賢二「や、やっぱり盗…!!」 勇者「ロボ盗子!!」 メカ盗子「ロボチガウ!!」 |
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2-59:救援〔12歳:LEVEL16〕 | |
ロボ盗子の活躍により、どうやら親パンダの一件は片付いたようだ。一安心。 だが、なんだかイヤな予感がする。なにかしらの災いを持ってきた気がするのだ。 勇者「おい貴様、こんな所に一人…一体で何しに来たんだ?土男流はどうした?」 メカ「緊急ジタイ発生!アタシ アンタ呼ビニ来タ!盗子タイヘン!死ヌカモ!」 勇者「な、なにっ!?」 メカ「死ヌホド オ兄チャン好キカモ!」 勇者「クッ…!紛らわしいんだよ糞ロボットめがぁ!!」 メカ「ロボチガウ!」 賢二「なんか妙なデータがインプットされてるみたいだね…。」 勇者「フン!時間の無駄だ、ほっといて先を急ぐぞお前達。」 メカ「チョト待ツ! 違ッタ意味デモ死ニソウ!桃錬邪アラワル!」 勇者「なっ!桃錬邪が!?ホントなのかロボ!?」 メカ「ホン…ロボチガウ!」 賢二「そこだけは律儀に突っ込むんだね。」 勇者「…言え、盗子は今どこに居るんだ?」 メカ「ギマイ大陸、「ナンダの塔」…ソコニ盗子ハ居ル!」 ナンダの塔…そこだけは避けて通るか。 |
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2-60:求婚〔12歳:LEVEL16〕 | |
盗子の居場所、そしてピンチだという状況を告げ、必死に救援を請うロボ。ウザい。 確かにちょうど行こうとしていた大陸ではあるが、手伝ってやる義理は無い。 勇者「助ける気は無いが…一応聞いてやる。盗子の身に何があったんだ?」 メカ「盗子 桃錬邪ニ逆ライ、売ラレタ。逃ゲタラ殺サレル。デモ逃ゲナイト…」 賢二「に、逃げないとどうなっちゃうの!?」 メカ「オ願イ勇者、盗子タスケル!デナイト盗子、「ナンダ」ニ オ嫁ニ貰ワレル!」 勇者「ぬぁっ、ぬぁにぃいいいいいいいっ!!?」 ~ギマイ大陸:ナンダの塔~ ナンダ「フハハ!見たまえ盗子君、この景色を。素晴らしいとは思わんかね?」 盗子「ほ、ほーどーけー!!気取ってないで早く縄をほどいてってばー!」 ナンダ「フッ、すぐにほどくさ。キミが素直になってくれさえすれば…ね。」 盗子「だから素直にイヤだって言ってんじゃん!誰がアンタと結婚なんて…!」 ナンダ「アッハッハ!まったく照れ屋さんだなぁ~。三ヵ月後の式が楽しみだよ。」 盗子「黙れポジティブおやじ!このロリコン!少女の敵!死ねっ!!」 ナンダ「おや?よく知ってたね。僕の職業が「ロリータ・コンサルタント」だって。」 盗子「どんな職業だよ!絶対食ってけないよ!」 ナンダ「僕はこの職業で今の財を築いたんだ。」 盗子「世の中間違ってるよー!」 ナンダ「三ヶ月後…僕の40の誕生日。楽しみにしてるよ、花嫁さん?」 盗子「いやーん!助けて勇者ぁーー!!」 勇者「…行くぞお前達。目的地は「ナンダの塔」だ!」 賢二「えっ!助けに行く気!?意外にもすんなりと!」 勇者「ああ。この俺が…絶対に助けてやる!!」 賢二「勇者君…!」 早まるなナンダ、女は選べ。 |
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2-61:幽閉〔12歳:LEVEL16〕
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ガラガラララ(開) 衛兵「入れ。」 盗子「ちょっ、仮にもアタシは花嫁さんでしょ!?なんで牢屋に入れるのさ!」 衛兵「逃亡でもされたら桃錬邪様に殺されるんでな。殺しはしない、安心しろ。」 ガシャン(施錠) 盗子「ムッキィー!絶対いつか逃げ出してやるかんねーだ!!」 土男流「大丈夫だ盗子先輩!きっとトーコちゃんが助けを呼んで来てくれるんだ!」 盗子「でもさー、アタシらが捕まってから結構経つよ?ホント大丈夫なのアイツ?」 土男流「問題無いさ!だってトーコちゃん、人工知能をアップグレードしたし!」 盗子「あ、そういえば言葉がちょっと流暢に…。じゃあ他には何がどうなったの?」 土男流「よりお兄ちゃんが大好きに!」 盗子「一番いらない能力じゃん!むしろ無くなってほしい部分だよ!」 土男流「あっ!あと、ついに待望の「オッパイミサイル」が!」 盗子「え゛っ!ホントに発注かけてたの!?」 土男流「しかも6つ!」 盗子「って、牛か何かかよ!!」 土男流「さらに今なら同じものがもう1個!」 盗子「いらないよ!7個も集めてどうする気なんだよ!」 土男流「そんな豪華6連発のミサイルなんだ!!」 盗子「1個はオマケなのかよ!!!」 |
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2-62:船探〔12歳:LEVEL16〕 | |
盗子に呪われたナンダを救うため、俺達はギマイ大陸を目指し海を渡ることにした。 よし、まずは船を探そう。この際だから金に糸目はつけず、豪華な船を借りよう。 航路が安全なのはわかっている。だが、船や船長がダメなら全ては台無しなのだ。 今まで乗り物絡みで散々苦労した。同じ過ちを何度も繰り返すわけにはいかない。 というわけで俺達は、船を探して歩いた。ひたすら歩いた。ただただ歩いた。 そして、ギマイ大陸に着いた。 |
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2-63:伝説〔12歳:LEVEL16〕 | |
夏。 エリン大陸を発ってから、早くも季節が一つ変わろうとしていた。 ギマイ大陸に着いた俺達は、今「パンシティ」という街にいる。ナンダが仕切る街だ。 ちなみに、ここに来たのはただのついでだ。決して盗子を助けに来たわけじゃない。 勇者「あそこに見えるのが噂の「ナンダの塔」か…。よし、乗り込むぞお前達!」 賢二「盗子さん…無事ならいいけど…。」 メカ「盗子、「神ノ封印場所ノ地図」盗ンデ隠シタ。殺サレル心配 多分無イ。」 勇者「神だぁ?なんだ、五錬邪はそんなモノを探してるのか? フッ、笑わせるぜ。」 メカ「アナタ~ハ 神ヲ 信ジマスカ~?」 賢二「いや、無理してカタことっぽく言わなくても元からだし!」 勇者「ケッ、信じる者しか救わんなんて人間と同じじゃないか。信じる価値も無い。」 商南「ちゅーかまぁ、そもそもおらんしな。神なんて。」 姫「そんなことないよ。実は私、会ったことあるよ。 小料理屋で。」 勇者「姫ちゃん、残念なお知らせがある。多分それは「女将さん」だ。」 マジーン「いや、でもマジ「神」って呼ばれる奴らは実在したらしいぜ?」 勇者「フンッ、ありえんな。神なんて所詮伝説の産物だ、存在するはずが無い。」 というか、伝説でなきゃ困る。 |
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2-64:卒業〔12歳:LEVEL16〕
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司会「それでは新郎新婦の入場です。みなさま、盛大な拍手でお迎えください。」 ナンダ「さぁ、行こう花嫁さん。お義父さん居ないから入口から二人で歩こう。」 盗子「イヤッ!いぃーやぁーだーってばー!! 放せロリコン!死ねっ!!」 ナンダ「おや?よく知ってたね。僕の両眼が「ロリータ・コンタクト」だって。」 盗子「一体どんな世界が見えるんだよ!?」 神父「新郎ナンダ。アナタは健やかなる時も病める時も…」 盗子「な、なに勝手に大詰めに入ろうとしてんのさ!まだ入場途中なのに!」 ピポーン!(押) ナンダ「誓います!」 盗子「って早押しクイズかよ!そんなテンポで進めるべき式じゃないよ!?」 神父「では新婦盗子。アナタは健やかなる時も病める時も、夫ナンダを愛すと誓え。」 盗子「フンだ!もちろん誓わな…って、え゛っ!?命令形!?」 神父「それではとっとと、誓いのキックを。」 盗子「キックなの!?」 |
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~その頃、勇者達は…~ 賢二「・・・・・・・・。」 (「早押しクイズかよ!そんなテンポで進めるべき式じゃないよ!?」) マジーン「・・・・・・・・。」 (「フンだ!もちろん誓わな…って、え゛っ!?命令形!?」) 商南「・・・・・・・・。」 (「キックなの!?」) 勇者「おいウェイター、メインディッシュはまだか?」 男性「あ、ハイ、ただいま。」 姫「おかえり。」 |
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2-65:争奪〔12歳:LEVEL16〕 | |
さすが金持ちというだけあって、式の料理はなかなか豪勢なものが揃っていた。 特にこの何の肉だかわからない肉料理が絶品だ。まさかこんな料理があったとは。 勇者「うむ、コイツはうまい。おかわりが無いというのが悔しいったらないな。」 商南「おっと、そない言うんやったらウチも一つ貰うでー。」 (「さぁ花嫁さん、蹴っておくれ!そして激しく罵っておくれ!」) 勇者「フッ、バカを言うな。コレは俺の好物に認定した。だから俺が全て食う。」 (「えっ!趣味なの!?そんな趣味も持ってるの!? と、とにかく絶対イヤッ!」) 商南「いくら好物言うたかて一つくらいええやんか。ウチにも食べさせーや。」 (「フフッ、相変わらず照れ屋さんだなぁ。でもキミはもう僕のモノなんだから…」) 勇者「フザけるな!貴様なんぞにくれてやる気は無いわぁー!!」 賢二「あ゛…。」 盗子「えっ…? い、今の声は…まさか…ゆ、勇者!?」 ナンダ「な、なんだねキミは!?まさか僕らの結婚に異議でもあるのかね!?」 勇者「コイツは俺のだ!絶対誰にも渡さんぞ!!」 賢二(わー…。) ナンダ「そうか、僕の花嫁さんを奪いに来た…というわけか。」 盗子「勇者…☆ 助けに来るどころか奪いに来てくれるだなんて…☆(目がハート)」 マジーン(な、なんか妙な展開になってきたな…。) 賢二(不憫でならないなぁ…。) |
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2-66:悪魔〔12歳:LEVEL16〕 | |
ふと我に返ってみると、なにやら不本意な状況になっていることに気が付いた。 まぁこうなってしまったからには仕方ない。適当に話を合わせて乗り切るとするか。 勇者「待たせたな盗子…迎えに来たぞ!」 ナンダ「衛兵、集まれー!邪魔者を排除しろー!」 盗子「えぐっ、う、嬉しいよ勇者ぁ~ん☆」 勇者「さぁ、潔く死ぬがいいっ!」 盗子「えっ!そっちの「お迎え」なの!?」 賢二「は、早く逃げようよ!ボヤボヤしてるとホントにそっちのお迎えが来ちゃうよ!」 ナンダ「おっと、逃げられるとでも思うのかね?キミ達にはここで死んでもらう!」 勇者「この俺を殺すだと?やれやれ、女の趣味のみならず頭まで悪いとはな。」 盗子「ちょっと勇者!さりげなくアタシをバカにしないでよ!」 勇者「このブサイクめが!!」 盗子「ゴメン、さりげない方がまだいいわ…。」 衛兵A「ナンダ様!何事ですか!?」 ナンダ「見ればわかるだろう、結婚式荒らしだ!さっさと片付けないか!」 衛兵B「ヘッヘッへ、どうやら久々に暴れられるみてぇだなぁ。」 衛兵C「んで?これから痛い目に遭う可哀想な奴ぁ一体どんな…」 勇者「…あ゛ぁ?」 衛兵達「Σ( ̄▽ ̄;)蒼い悪魔キタァーーー!!」 |
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2-67:察知〔12歳:LEVEL16〕 | |
人の顔を見るや、「蒼い悪魔」だとか騒ぎだした衛兵達。まったく失礼な奴らめ。 どうやら誰かと勘違いしているようだが、そんなことはどうでもいい。ブッた斬る! 勇者「あん?誰が悪魔だって? ナメた口きいてんと脳髄をすするぞオラァ!!」 盗子「すするなよ!そういう発言が誤解を招くんだよ!」 衛兵達「ひぃいいい!お、お助けぇー!!」 |
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ナンダ「お、オイお前達!どこへ行くつもりだ!?オイッ!!」 賢二「蒼い悪魔…一体どういう意味なんだろうね?」 勇者「まぁ縁があるならいずれわかるさ。それより今は敵を倒すのが最優先だ。」 ナンダ「ハッ…! ま、待て!待ってくれ!話せばわかる!」 姫「じゃあ問題です。私の好きな食べ物はカキ氷です。」 ナンダ「いや、すまない!やっぱりわからないかもしれない!」 勇者「フッ。安心しろ、雑魚は後回しだ。 …なぁ、桃錬邪?」 盗子「えっ、いるの!?ど、どこに!?」 声「…へぇ、ちっとは鼻が効くようになったじゃないかボウヤ。」 賢二「うわっ!い、いつの間に後ろに…!?」 勇者「もう6年前の俺ではない。地獄で後悔したくなければ、甘く見ないことだ。」 桃錬邪「このアタシの気配を読むとはね…。 どうやら少しは楽しめそうだな!」 気配?そんなモン読んでねーよ。 |
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2-68:一八〔12歳:LEVEL16〕 | |
案の定現れた桃錬邪。コイツには6年前の借りがある、負けるわけにはいかん。 勇者「フッ、残念だがお前に楽しんでいる暇は無い。地獄で鬼とでも戯れるんだな。」 桃錬邪「あ?なんだ、やけに強気じゃないか。勝算でもあるっての?」 勇者「前に親父に聞いた。貴様は暗殺専門ゆえ、攻撃力自体は雑魚並だとな。」 桃錬邪「…フフッ。ああ、確かに攻撃力はショボいよ。 けどその代わり…。」 ヒュン(消) 勇者「なっ!消えた!?」 ザシュッ!(斬) |
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マジーン「うおぉっ!!」 勇者「ま、マジーン!?」 マジーン「(チッ、もうチョイ加減しろよ…!)だ、大丈夫だ。そんな深くはねぇ。」 勇者「いや、居たんだなと思って。」 マジーン「そっちに驚いたのかよ!」 賢二「速い…!そっか、攻撃力の代わりにスピードがズバぬけてるんだ…!」 勇者「なるほど、高速移動に乗じての斬撃…こりゃ少々厄介dうぉっと!!」 ガキィイイン! |
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声「なっ!? …チッ!」 盗子「えっ!見えてるの勇者!?」 勇者「まぁかろうじてな。だが背後からの攻撃には対処しきれん…マズいぞ。」 商南「ど、どないすんねん!?ウチはまだ死にたないで!?」 勇者「こうなったら…姫ちゃん、ダイナマイトだ!爆発に巻き込み動きを止める!」 盗子「え゛っ!?む、無茶だよ!そんな作戦、常識を覆すにも程があるよ!」 勇者「このまま何もせねば確実に殺される!ならばイチかバチかに賭けるべきだ!」 賢二「イチでもバチでも死にそうな気がするけどね…。」 姫「はい勇者君!これを使えばいいよ!」 勇者「お!そうそう、この古代の香りがなんとも…って「アンモナイト」じゃないか!」 商南「なんてベタベタな!今日びそないなボケ誰も使わへんで!?」 盗子「いや、でも実践したのは人類初じゃない!?」 桃錬邪(死ねっ!!) 勇者「(殺気…!) ヤバい!来るっ!!」 チュドーーーーン!!(大爆発) |
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2-69:痛手〔12歳:LEVEL16〕 | |
アンモナイトがダイナマイトで、塔がフッ飛んで俺達もフッ飛んだ。屋根まで飛んだ。 だが、意外にもみんなカスリ傷程度で済んだようだ。姫ちゃんが無事で良かった。 盗子「アイタタタ…。 お尻打っちゃったよモォ~!」 賢二「で、でもあの爆発と塔からの落下…それでこの怪我って有り得なくない!?」 姫「さすがはアンモナイトだね。」 勇者「おぉ、だからナンも無いと!?さっすが姫ちゃんだぜ!」 盗子「思っきりダイナマイトだったじゃん!」 商南「ったく、アンタらのせいで貴重な「魔防符」使い切ってもうたわ…。はぁ~。」 勇者「魔防符!?そうか、だからか! しかも一瞬で…やるじゃないかお前!」 |
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商南「まぁすぐとは言わんけど…アンタら四人分、ちゃんと払ってもらわな困るで?」 賢二「勇者君、今回ばかりはちゃんと払おうね?命が助かったんだし。」 勇者「…チッ、がめつい奴め。」 四人分か…かなりの痛手だぜ。 |
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2-70:奥手〔12歳:LEVEL16〕 | |
塔も半壊したし、桃錬邪も見かけない。どうやら今回のバトルは終わったようだ。 勇者「さて、用も済んだし…行くか。 お、そうだ盗子、地図の話を聞かせろよ。」 盗子「あ、うん。いいけどさ、なんか忘れてることがある気がするんだよね~…。」 声「フハハハハ!甘い!甘いぞー! そう簡単に逃がすと思うのかね!?」 盗子「!! こ、この声は…!」 |
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勇者「フッ、放っておけ。ああいう奴は相手にするから付け上がるんだ。」 商南「せやな。わざわざ倒しに登んのも時間の無駄やで。」 ナンダ「ほぉ…言うじゃないか。 だがコレを見てもまだ言えるかな?」 土男流「す、すまない師匠ー!警備が厳重過ぎて逃げ損ねちゃったんだー!」 勇者「なっ!土男流!? チッ、ロボの奴は何してやがったんだ!」 ドガァアアアン!!(壁崩壊) 商南「うわっ、なんやなんや!?何か出てきよったで!?」 メカ「参ッタ…コイツ、強イ…!」 土男流「うわぁートーコちゃーん!ボロボロじゃないかー!」 ロボット「コロス ジャマモノ コロス。」 盗子「えっ!な、なにあのバカでかいロボットは!?ゴリラ型!?」 メカ「ロボ…チガ…ウ!」 盗子「いや、アンタのことじゃないから!」 勇者「フン、まさかこんな兵器を隠していたとはな。これが貴様の奥の手か?」 ナンダ「ああそうだ!私が「ロリータ・コンピュータ」を駆使して開発したのだよ!」 盗子「なんてモノを駆使してんだよ!!」 |
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2-71:敵無〔12歳:LEVEL16〕 | |
ナンダの諦めが悪いおかげで、もう一戦しなければならなくなった。やれやれだ。 勇者「オイ貴様、土男流を連れて降りて来い!そうすりゃ命だけは助けてやる!」 ナンダ「フハハ!何を言っているんだ?自分の状況がわかっているのかね?」 ロボ「ジャマモノ コロース!ニンゲン キライ!」 勇者「あん?機械の分際で生意気な!人間様に逆らう気か!?」 メカ「マッタクダヨ!」 勇者「いや、お前が言うなよ!お前だけは言うなよ!」 姫「ニンジン キライ!」 盗子「真似しなくていいよ!それに今わざわざ訴えるべきことでもないよ!」 姫「ホントハ スキ!」 盗子「どっちなんだよ!?」 賢二「ね、ねぇどうするの勇者君!?あのロボ結構強そうだよ!?」 勇者「フン、ナメるな!あんな奴はこの俺の敵ではないわぁ!」 盗子「ほ、ホントに!?さっすが勇者!頼りになるぅ~☆」 勇者「お前らの敵だ。」 盗&賢「そういう意味!?」 |
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2-72:瞬殺〔12歳:LEVEL16〕 | |
ロボの相手は賢二達に任せ、俺は土男流を助けに向かうことにした。 非常に面倒だが、あんな奴でも大事な弟子だ。見殺しにするわけにはいかない。 ナンダ「来たか小僧!よくも僕の結婚式を台無しに…!生かしては返さん!」 土男流「た、助けてくれ師匠ー!この人さりげなくも大胆に尻を鷲掴みなんだー!」 ナンダ「この感触…9歳か。悪くないな…。」 土男流「しかも的確に歳を読むんだー!」 勇者「オイ変態、戯れもそこまでだ。その微妙な感触を楽しみながら死ぬがいい。」 土男流「微妙とは失礼だよ師匠ー!最近ちょっとプリプリしてきたんだー!」 ナンダ「フフッ、死ぬのはキミの方だ。ロボは一体だけだとでも思ったかい?」 |
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勇者「…フン、俺もナメられたモンだな。そんな雑魚は2秒でスクラップだぞ?」 ナンダ「チッ、生意気なガキめ…! やってしまえぇ!!」 勇者「鉄クズに還れ!必殺「一刀両断剣」!!」 |
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ナンダ「なっ…!」 勇者「フッ。人間じゃないからな、ためらいなく斬れるぜ。」 土男流「いや、師匠ー!むしろアンタは人斬る時の方が楽しげに見えるんだー!」 勇者「残るは2体だが…もはや結果はわかろう。 さぁ、どうする?」 ナンダ「くっ…!ここまでか…!」 |
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2-73:頼事〔12歳:LEVEL16〕 | |
戦いを終え皆のもとに戻ると、賢二達の戦いもまた終わっていた。意外にも。 勇者「よぉ賢二、雑魚は雑魚なりに頑張ったようだな。生意気な。」 賢二「まぁなんとかね。勇者君達も無事っぽいけど…ナンダさんは?」 勇者「ん?あぁ、アイツは…」 土男流「や、やめてくれー!思い出したらハンバーグが食べれなくなるんだー!」 盗子「えっ!何が起こったの!?そんなトラウマ的な何かが起こったの!?」 勇者「気にするな。とにかくお前を苦しめたミンチの奴はもういない。」 盗子「変わってる!名前が変わってるよ!」 賢二「あ、久しぶりだね土男流さん。 …アレ?でも学校はどうしたの?」 土男流「師匠を追って中退してきたんだ!だから私も連れてってくれー!」 賢二「ず、随分と思い切ったことをしたもんだね…。」 勇者「いや、悪いがお前には頼みたいことがある。五錬邪のことを調べてほしい。」 土男流「そ、そんなー! イヤだー!私は師匠の腕枕で寝るって決めたんだー!」 盗子「なにドサクサ紛れにとんでもないこと言ってんのさ!恋人同士かっ!」 姫「甘いね。私は勇者君の夢枕に立ったよ。」 盗子「それは死人とか神様がすることだよ!」 土男流「頼むぜ師匠!私は妙な任務より修行の方がいいんだー!」 勇者「危険な任務だ。できるのは恐らく…我が愛弟子であるお前しかいまい。」 土男流「任せてくれ!あること無いこと調べてくるぜー!」 賢二(か、可哀想な子だなぁ…。) |
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2-74:買出〔12歳:LEVEL16〕 | |
土男流とメカ盗子は旅立った。俺もこの街に用は無いので、そろそろ行こうと思う。 勇者「さて、ぼちぼち行きたいのだが…その前に旅の道具を揃えたいと思う。」 商南「せやな。せっかくデカい街におるんやし、ここで買わなアホやで。」 勇者「それでな商南、買い出しはお前に任せたいんだ。必需品を見極めてほしい。」 商南「あ? …ったく、しゃーないな~。まぁアンタに頭下げられたら断れんわ。」 勇者「助かる。釣りは好きなように使ってくれていいからな。」 商南「わっ、5銀もあるやんか(約5万円)! おおきに!頑張ってくるで☆」 |
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盗子「ど、どうしたの勇者?やけに気前が良すぎない…?」 勇者「フッ、そんなことはない。アイツにやるなら5銀なんて安いもんだぜ。」 賢二「ゆ、勇者君…まさか…。」 盗子「まさか勇者、あの女がスキなわけ!?ねぇそうなの!?」 勇者「スキか…まさにその通りだな。」 盗子「そ、そんなぁー!うわーん!!」 ホント、スキだらけだよ。 |
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2-75:始動〔12歳:LEVEL16〕 | |
商南を置き去りにし、俺達は出発した。奴が気づく前に遠くに逃げねばならない。 道中、盗子から神の話を聞いた。信じられないことだが、なにやらマジ話っぽい。 こうなったら真偽のほどを確かめに行くしかないだろう。行って、そしてブッた斬る! 勇者「神か…フッ、面白い。その名ふさわしい奴かどうか、この俺が試してやる!」 賢二「あ!そういえばさ、この四人でパーティー組むのも久しぶりだよね!」 勇者「ん?ああ、そうだな。島を出たときだから…三年ぶりぐらいか?」 盗子「そそ。「修学旅行だね☆」とか言ってた時以来だよね~☆」 姫「じゃあアレだね、「続・修学旅行~超魔界大戦~」だね。」 盗子「イヤだよ!そんな物騒なサブタイトル付けないでよ!」 姫「立ちはだかる五錬邪さん。そしてニンジン。」 盗子「ニンジンの方が強敵なのかよ!って、結局キライなの!?」 賢二「でもさ、桃錬邪さんは倒したんだし、後は四人だよね!一歩進んだよね!」 勇者「…いや、奴は生きてる。脚本家並に展開を読む俺が言うんだ、間違いない。」 賢&盗「えっ!?そんなっ…!」 ~その頃~ 桃錬邪「ぐっ、グハッ! お、降ろせー!離しやがれぇー!」 マジーン「おっと!暴れるなよ姐さん、傷に障るぜ?もうじきアジトに着くからよぉ。」 桃錬邪「く、クソガキどもがぁ…!次会ったらブッ殺してやる…!!」 マジーン(地図は二手に別れた…。フッ、面白くなってきやがったぜ。) |
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外伝(壱)へ |
外伝(壱) |
外伝:勇者凱空〔1〕 | |
俺の名は「凱空(ガイク)」。エリン大陸に咲く一輪の花…も恥じらう十歳児だ。 一応将来は「勇者」になる予定だが、今は「魔王」が居ないので魔王待ちの状況。 なんだか本末転倒のような気もするが、基本的に細かいことは気にしない主義だ。 …しかし、その時まで何もしないで待つというのは、さすがの俺でもどうかと思う。 やはり今のうちに、「戦隊」でも組んでみるべきだろう。 よし、まずは命名からだ! 凱空「う~む、れんじゃ…連…五錬…じゃ…者…蛇…? いや、「五錬邪」だ!!」 少し変な気もするが…まぁいい。今後は気をつけよう。 |
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外伝:勇者凱空〔2〕 | |
俺の思いつきにより、突発的に発足した正義の組織「五錬邪」。もちろん五人組だ。 というわけで俺は、メンバーを集めることにした。大丈夫、ちゃんとアテはある。 少女「あ、凱空先輩だ! 凱空センパーイ!」 凱空「ん? おぉ、来たか「春菜(しゅんな)」…もとい、「黄錬邪」よ。」 春菜「えっ?きれ…なんですかソレ?」 凱空「お前のコードネームだよ。今日から戦隊を組むって言ったろ?」 春菜「い…言いましたっけ?」 凱空「ああ、今な。」 春菜「今日も変わらずマイペースですね…。」 凱空「俺は赤が好きだから「赤錬邪」。そしてお前は黄色の黄錬邪だ。」 春菜「へ?なんで黄色に決まってるんですか?私は別に黄色は好きじゃ…」 凱空「カレーが好きだから。」 春菜「いやいや!勝手に決めないでくださいよ!カレーなんてむしろ嫌いですし!」 凱空「じゃあカレーが嫌いだから。」 春菜「おかしいし!無理矢理すぎるし! …って、そもそもカレーって茶色では!?」 凱空「いや、洗濯しても微妙に落ちなかったカレーの…」 春菜「そんなピンポイントな!確かにそれは黄色っぽいですけども!」 凱空「ん~、じゃあやっぱ「茶錬邪」か?しかしなぁ~。」 春菜「なんで「カレーから離れる」って発想が無いんですか…。」 凱空「…カレーんじゃ?」 春菜「黄錬邪で…いいです…。」 |
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外伝:勇者凱空〔3〕 | |
黄錬邪が仲間になった。まだ3人集めねばならんが、大丈夫。次も呼び出してある。 少女「なんだよ凱空、こんな所に呼び出しやがって。決闘でもフッかける気か?」 凱空「おぉ、待たせたな「秋花(しゅうか)」…もとい、「桃錬邪」よ。」 秋花「はぁ?なに言ってんだテメェ?ついに脳ミソ腐りやがったか?」 凱空「フッ、何を今さら。」 春菜「いや、そこは一応怒っときましょうよ。」 秋花「んで?その「モモなんとか」って一体何なわけ?呪文か何か?」 春菜「えっとですね秋花先輩、なんか今日から戦隊を組むとか言い出しまして…。」 秋花「ったく、またアホなことを…。」 凱空「な、なんだとコンニャロウ!!」 秋花「あん?なにさ、ヤルっての!?」 凱空「俺の脳はまだ腐ってないぞ!」 秋花「そっちか!今さらそっちの話か!」 春菜「というか「まだ」ってどうですか!?」 凱空「まぁ細かいことは気にするな。とにかく大人しく桃錬邪れ。」 春菜「ちなみに私は、カレーが嫌いだから黄錬邪だそうです…。」 秋花「…なるほどね、わかるわかる。」 春菜「わかるんですか!?ちょっと凱空先輩に汚染されてきてませんか!?」 秋花「カレーで黄錬邪ねぇ~。じゃあ桃色ってのは…やっぱヒロインだからだよな☆」 凱空「オシリが桃みたいだから。」 秋花「人類共通だよ!!」 |
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外伝:勇者凱空〔4〕 | |
桃錬邪が仲間になった。なかなかいいペースだ。この調子でどんどん増やそう。 春菜「あっ、いた!おーい、お兄ちゃーん!」 少年「…ん?春菜と凱空…それに春菜か。」 秋花「なんで「春菜」を二回も言うんだよ!アタシにも触れろっての!」 凱空「よぉ、そんなとこにいたのか「冬樹(とうき)」…もとい、「黒錬邪」よ。」 春菜「あ、あの…やっぱり説明から入らないと意味が…」 冬樹「いい名だな、気に入った。」 秋花「なんで伝わってんだよ!?」 凱空「フッ、これがいわゆる「アイコンテスト」だ。」 秋花「どんな大会だよ!それを言うなら「アイコンタクト」だろうが!」 冬樹「まぁ気にするな、桃錬邪。」 秋花「なっ…なんで知ってんだよ!さっき命名されたばっかだよ!?」 春菜「なんかゴメンなさい、こんな天然な兄で…。」 冬樹「どうしよう凱空、褒められた。」 春菜「褒めてない!ちっとも褒めてないよ!照れるのおかしいよ!」 凱空「いやぁ~、参ったな~☆」 秋花「お前もだよ!!」 |
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外伝:勇者凱空〔5〕 | |
黒錬邪も加わり、残るは一人…と思っていたら、標的は向こうからやってきた。 少年「…フゥ、なるほどな。俺が呼ばれたのもそういう意味かよ。」 春菜「あ、「夏草(なぐさ)」君。」 夏草「で?俺は何錬邪なんスか凱空先輩? 緑?青?あとは…まさか白とか?」 凱空「おぉ、話がわかるじゃないか。説得の手間が省けて助かるよ「群青錬邪」。」 夏草「ちょっと待て!なんスかその微妙な色は!?なんで俺だけ!?」 凱空「よっ!出オチ要員!」 夏草「なに持ち上げてるっぽく言ってんスか!全然嬉しくねーよ!」 凱空「イヤか?色合い的に青系色が欲しかったんだが…。」 夏草「なら素直に「青錬邪」でいいじゃねーか!なんでわざわざ濁っ…」 凱空「…瞳が濁ってるから?」 秋花「心が濁ってるから。」 夏草「友達なくすぞアンタら…!」 凱空「まぁとにかく頼むぞ、群青錬邪!よろしくな!」 夏草「…チクショウ!なんで俺だけいつも扱いが適当なんだー!うぉーー!!」 |
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春菜「な、夏草君っ…!」 秋花「あ~あ。」 冬樹「凱空、急がないと…。」 凱空「…わかってる。」 もうじき夕飯の時間だ。 |
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外伝:勇者凱空〔6〕 | |
俺達が五錬邪を結成し、エリン大陸を飛び出してから二年近い月日が経過した。 だが俺達は止まらない。いつか世界中に平和な日々が訪れるその日まで! ~ギマイ大陸:コウ森~ 女「キャー!魔人よー!誰か助けてぇー!!」 魔人「グヘヘ!諦めな、いくら叫んだって誰も助けは…」 声「待ぁーてぇーーー!!」 |
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魔人「だ、誰だ貴様っ!?というかなんだその悩殺ポーズは!?」 赤錬邪「フッ、俺か?俺は、猿の尻よりちょっぴり紅い紅蓮の炎…赤錬邪っ!!」 女「ひ、ヒーローさんなの!?セリフがとっても中途半端だけども!」 魔人「ケッケッケ!バカが、たった一人で魔人様に勝てるとでも思ってんのかぁ?」 黒錬邪「俺もいる。 便所のシミより微妙に黒い、漆黒の影…黒錬邪。」 魔人「チッ、仲間がいやがったか!」 女「微妙に黒いの!?それとも漆黒なの!?どっちなの!?」 黄錬邪「わ、わた、私は…その…。」 魔人「まだいたかっ!…って、なんだテメェ、ヤル気あんのかコラ!?」 赤錬邪(言え!言うんだ黄錬邪!こういうのはテンポが命だぞ!) 黒錬邪(そうだぞ春菜。今日からみんなでキメるぞって言ったろ?) 黄錬邪「…こ、香ばしいスパイスの香り…黄錬邪…。」 女「えっ、スパイス!?決め手はスパイスなの!?」 魔人「な、なんなんだ!一体テメェらは何者なんだ!?」 桃錬邪「そして今日もオシリが桃…って、んな恥ずいセリフ言えるかー!」 凱空「…何はともあれ俺達!五人揃ってぇー!」 黄錬邪「え?あっ…」 一同「五錬邪っ!!」 群青〔木陰〕「Σ( ̄□ ̄;)!?」 |
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外伝:勇者凱空〔7〕 | |
登場シーンも見事に決ま…ったと思ったら、群青錬邪を忘れていた。なんてこった。 ここはなんとか誤魔化して、機嫌を取っておかねばなるまい。リーダーは辛いぜ。 赤錬邪「さ、さぁ行け群青錬邪!敵は一人だ、お前の見せ場にと残しといたぞ!」 群青「いや、いいよ…。俺なんてどうせ目立たない、濁った群青色さ…。」 桃錬邪(お、オイ。すっかり落ち込んでるぞ?ここは一応励ましときなよ。) 赤錬邪(いや、しかし俺はそういうのは…。すまん黒錬邪、頼めるか?) 黒錬邪「そんなことはない。お前は頑張れば目立てる、凄く濁った群青色さ。」 群青「一番否定してほしい所を否定してくれないんだな…。」 黄錬邪(よ、よかった!「凄く」には気づいてない!) 赤錬邪「…わかった、こうしよう。もし敵を倒せれば、お前は今日から「青錬邪」だ!」 群青「ほ、ホントか!?」 赤錬邪「ああ。俺は嘘とおま…嘘が大キライだ。」 黄錬邪(おま!?今「お前」って言おうとしました!?) 群青「よっしゃ!かかって来いクソ魔人!この俺がボコボコにしてやるぜぇ!!」 |
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魔人A「ほほ~。」 魔人B「言うじゃねぇかクソガキ。」 魔人C「死にてぇのか?」 群青(ふ、増えてらっしゃるぅーーーっ!!) |
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外伝:勇者凱空〔8〕 | |
群青錬邪が敗れ、残りは四人となった。だが何も心配は無い。いつものパターンだ。 魔人A「な、なんなんだコイツは…?口ほどにもなくメチャメチャ弱かったぞ?」 赤錬邪「フン、ナメるな!こっちの二人(黄&桃)はもっと弱いぞ!」 黄錬邪「いや、威張って言うセリフじゃないですよ!?むしろ隠しといてくださいよ!」 魔人B「エリンからやたら強ぇ戦隊が来たと聞いたが…テメェらじゃないようだな。」 赤錬邪「なんだ、知らぬ間に俺達も有名になってきたみたいだな。」 魔人C「あん?自分がそうだっつーのか?だったら証拠を見せてみやがれ!」 赤錬邪「ほぉ、いいだろう…見て驚け!聞いて驚けっ!?」 赤錬邪「崩落園遊園地で、僕と握手!!」 一同「…へ?」 赤錬邪「フッ…。」 魔人D「な、なんだその「キマッた☆」って顔は!?そんなのが証拠になるかよ!」 赤錬邪「知らんのか!?戦隊ヒーローと言えば遊園地で握手!定番じゃないか!」 黄錬邪「それは「ヒーローショー」の話では!?しかも名前が何か物騒だし!」 魔人E「ふ、フザけてんじゃねーよ!もっと実力的な何かを見せろっつってんだ!」 やれやれ、贅沢な奴らめ。 |
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外伝:勇者凱空〔9〕 | |
さりげなく魔人は増え続け、いつの間にやら20~30人に囲まれていた。 で、知らぬ間に黄錬邪と桃錬邪は倒されていた。いつものことだが、弱すぎる。 魔人A「お、お前ら…さっきからなんなんだお前ら!ヤル気あんのか!?」 赤錬邪「フッ、俺はまだ何もしてないぞ!」 魔人A「それが問題なんだっつーの!リーダーなら率先して何かやれよ!」 赤錬邪「1番、リーダー!陸上で素モグリします!」 魔人A「誰が一発芸やれっつったよ!そうじゃなくてホラ、もっと真面目に戦っ…」 黒錬邪「悪いな、その必要はもう無い。」 魔人A「へっ…?」 |
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魔人A「そ、そんなバカな!あれだけの大軍をどうやって…!?」 黒錬邪「いつの間に…。」 魔人A「いや、テメェがやったんだろ!?なんで驚いてんだよ!」 赤錬邪「意外と苦労したぜ。」 魔人A「テメェが何したってんだよ!? つーかオイ黒いの!テメェ…何モンだ!?」 黒錬邪「俺か?俺は「黒騎士」。全てを闇に帰す者だとか、そうじゃないとか。」 魔人A「んな曖昧な!ビシッとキメなきゃキザなセリフも台無しだぞ!?」 赤錬邪「俺は「勇者」。基本的に何もしない。」 魔人A「だからしろっての!!」 |
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外伝:勇者凱空〔10〕 | |
黒錬邪の活躍により、残る敵は一人になった。また増える前に始末するとしよう。 赤錬邪「もう仲間は呼ばせん。一人寂しくあの世へと旅立つがいい。」 魔人A「ナメんな!こう見えても俺ぁここらを仕切る魔人様なんだぜぇ!?」 赤錬邪「な、なにっ…!?」 魔人A「ケッケッケ!どうやら驚いたようだなぁ~。」 赤錬邪「そんな奴が森でコッソリと女を!?」 魔人A「い、言うな!それだけは言うなー!」 黒錬邪「そ・ん・な・や・つ・が…っと。」 魔人A「書くな!だからといって書くなー!って、書いてどうする気だよ!」 黒錬邪「読まずに食べる。」 魔人A「ヤギさんかテメェは!?何がしたいんだ! もういい!殺すっ!!」 赤錬邪「フッ、やれやれ…。ならば最後は俺がキメてやるとするかな。」 魔人A「ハンッ!望むところだ!返り討ちにしてやらぁー!」 赤錬邪「崩落園遊園地で…」 魔人A「それはもういいっつってんだろうがぁー!死ねぇえええ!!」 赤錬邪「僕とアックス!!」 魔人A「え゛っ…?」 |
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外伝:勇者凱空〔11〕 | |
魔人どもを倒し、とりあえず用事は一つ片付いた。さて、もう一つも済ますとするか。 パチパチパチ(拍手) 声「う~ん、噂通り見事な腕前ですな。いや、むしろ噂以上でございました。」 赤錬邪「…随分前から見ていたようだが、貴様何者だ?」 紳士「おや、気づかれてましたか。失礼ながら全て拝見させていただきましたよ。」 赤錬邪「悪いが俺に、見られて感じる趣味は無い。用が無いなら消えてくれ。」 紳士「私はアナタ様を迎えに参ったのです。姫の…「皇女」の使者として。」 黒錬邪「こうじょ…聞いたことがある。確か「天帝」の女児のことだ。」 赤錬邪「む?皇女といえば最近、婿を募集してるとか聞いたが、まさか…。」 紳士「ハイ。今やその名轟く五錬邪…その隊長であるアナタ様なら、申し分ない。」 フッ、やれやれ…照れるぜオイ。 |
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外伝:勇者凱空〔12〕 | |
突如現れた天帝よりの使者。どうにも話が胡散臭いのだが、とりあえず聞いてみた。 聞けば天帝というのは代々「女帝」であり、年頃になると婿を募るのだという。 そうやって優秀な遺伝子を手に入れ、優秀な血を濃くしていくのが目的らしい。 そして使者によると、なにやら俺がその花婿候補の一人に選ばれたらしいのだ。 紳士「というわけで、タケブにある王城まで来ていただきたいのですよ、隊長殿。」 赤錬邪「・・・・・・・・。」 黒錬邪「・・・・・・・・。」 頼むから俺を見てくれ。 |
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外伝:勇者凱空〔13〕 | |
傷ついた仲間達を癒すため、俺達は近くの村に宿をとることにした。 そしてその夜。冬樹と二人、和んでいたその夜。俺の運命を決める出来事が…。 凱空「・・・・・・・・。」 冬樹「・・・・・・・・。」 凱空「…なぁ冬樹、そろそろ飽きないか?この「心眼にらめっこ」も二時間続くと。」 冬樹「ああ。見えないしな…。」 声「凱空様ー!凱空様ぁー!!」 凱空「? やれやれ…せっかくの静かな夜に騒がしい奴め。 何の用だ使者よ?」 紳士「凱空様、お願いです!今すぐタケブに向かっていただきたい!」 凱空「む?なんだ慌てて。皇女が急に発情期にでも入ったのか?」 紳士「婿の返事は後でも結構。状況が変わったのでございます。」 凱空「くっ、俺のナイスギャグに…触れもしないとは…。」 冬樹「泣くな凱空。こういう時は笑った方が、相手は驚く。」 凱空「ワッハッハ!状況が?どういうことだ!?ハッハー!」 紳士「「魔王」が…現れました…。」 凱空「Σ( ̄◇ ̄;)!!」 紳士「私は一足先に戻ります。アナタ様は明日一番の船でいらしてください。では!」 |
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凱空「・・・・・・・・。」 冬樹「・・・・・・・・。」 …え?倒せと? |
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外伝:勇者凱空〔14〕 | |
魔王を倒してくれと告げるだけ告げ、拒否権を与えずに使者は去っていった。 深夜。 俺は皆の寝室を訪れた。いま一度、寝顔だけでも見ておきたかったのだ。 春菜「う、う~ん…。むにゅにゅ…。」 春菜…。 お前はなぜか、こんな俺を慕ってよく付いて回ってくれたよな…。 兄の冬樹は色々と不安な奴だ。お前の常識で、今後もフォローしてやってほしい。 秋花「スー。スー。」 秋花…。 お前は口こそ悪いが、実は優しい奴だってのは俺が一番よく知ってるぞ。 アレだろ?よく俺を引っ叩いたのも、実は蚊がいたからなんだろ? 冬樹「・・・・・・・・。」 冬樹…。 お前、息してるのか…? 夏草「ぐごぉおお!ぐがぁあああ!」 夏草…。 すまん、特に何も無いや…。 サヨナラは言わない。きっとまた会える。 |
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外伝:勇者凱空〔15〕 | |
翌朝。 俺は港で一人、タケブ大陸へ向かう船を待っていた。そう、旅立つためだ。 「勇者」として、魔王を放ってはおけない。だがアイツらは巻き込みたくなかった。 凱空「あの船か…。早いな、もう着いてしまったか…。」 声「行くのか、凱空。」 凱空「!! …冬樹か。 よく気づいたな、やはりお前だけは出し抜けんか。」 冬樹「安心しろ、他の皆はまだ寝てる。」 凱空「そうか…。 丁度いい、お前には後を頼みたいと思っていたんだ。」 冬樹「なぁ凱空、俺も…弱いか?俺もお前の足手まといになると思うか?」 凱空「いいや、お前は強いさ。だからこそアイツらの側に居てやってほしいんだ。」 冬樹「だが、しかし…」 凱空「そこをなんとか、頼む。」 冬樹「あの赤い衣装はちょっと…。」 凱空「そこか、そこなのか。今までノリノリで着てた俺の立場はどうなるんだ。」 冬樹「敵は「魔王」…いくらお前でも、生きて戻れるかどうかわからんが…?」 凱空「まぁ安心しろ。俺は腕っぷし以上に運と個性が強い男だ。」 冬樹「全人民の運命を背負うことになるが…?」 凱空「そんなに気負うつもりは無いさ。合言葉は今まで通り、俺達の”アレ”だ。」 冬樹「俺達の…フッ、そうか。魔王退治もお前の中じゃ、いつもの”アレ”か。」 凱空「ああ。」 「ただの”ゴミ掃除”だ。」 |
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第二章へ |
第二章 |
2-76:食逃〔12歳:LEVEL17〕 | |
パンシティを離れ、地図を頼りに神を探すこと数ヶ月…。季節は冬になっていた。 最初は半信半疑だった神の話も、調べるにつれ少しだけ信憑性が増してきた。 とりあえず、一応調べる価値はありそうだ。もしガセだったら盗子の命は無いがな。 ~ギマイ大陸:カヨミ村~ 勇者「ふぅ~。 やれやれ、この村でも大した成果は無しか…。 ん?賢二は?」 盗子「あ、なんかお昼買ってくるってさ。適当に待っててって。」 勇者「そうか。じゃあ俺達は武器屋でも狩ってくるか。」 盗子「狩らないから!たまには普通にお金出して買おうよ!平民ぶろうよ!」 勇者「オイオイ、無茶を言うな。俺達のどこにそんな金が…」 声「金が無ぇだとぉーー!?」 勇&盗「!?」 女「そう声を荒げるな。確かに今は無いが、後でちゃんと弟子が払いに来る。」 店主「誰が信じるか糞アマぁ!食った分いますぐ払いやがれってんだ!」 盗子「なんか荒れてるっぽいね、あの露店。あれ助けたらお金になんないかな?」 勇者「…いや、関わるな。弟子が払うとかどうとか聞こえた。」 盗子「ふ~ん。ま、そだね。当人同士の問題だよねやっぱ。」 店主「金が無ぇなら洗え!皿を洗っていきやがれ! そしてその心も洗ってけ!」 勇者「あの店主、いいこと言いやがるぜ…。」 麗華「だーかーらー!!」 俺は、払う気は無い。 |
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2-77:弱味〔12歳:LEVEL17〕 | |
不覚にも見つけてしまった、もう二度と会わないと思っていた悪魔の師匠「麗華」。 当然逃げようとしたのだが、なぜか捕まってしまった。やはりタダ者ではないようだ。 勇者「くっ…!は、放せ! とりあえず鼻はやめろ!もげるっ!」 麗華「心配をかけたな店主。コイツが今話していた我が愛弟子だ。」 店主「なんだとこの野郎!テメェか!?テメェが悪の落とし子か!?」 勇者「ふ、フザけるな!誰がこんな性悪の…! 俺の母は元「魔王」だ!」 盗子「いや、そっちの方が「悪」っぽいよ!?もはや究極だよ!?」 勇者「とにかく!俺はビタ一文払わんぞ! たとえどんなに脅されようともな!」 麗華「おぉ、奇遇だな。ワシも脅すのは面倒だと思っていたんだ。(抜刀しながら)」 勇者「おいくらですかっ!さぁ、おいくらですかっ!?」 盗子「ちょっ、アンタ!アタシの勇者をイジめないでくれる!?何様のつもり!?」 麗華「ワシか?ワシの名は麗華。「麗しい華」と書く、乙女チックな「乙女剣士」だ。」 勇者「くっ…! お、覚えてろよ。いつかこの上下関係を覆してやる…!」 麗華「フフッ、ナメるでない。このワシには死角なんぞ皆無…」 賢二「オーイ、ただいまみんなー!お待たせ…って、このおネェさんは??」 勇者「に、逃げろ賢二!たったいま新たな「魔王」が降臨しぶべっ!」 麗華「お、おおおおお姉さぁあああんっ!?」 |
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勇者「ん?どうした貴様?メチャメチャ動揺してるようだが…。」 麗華「い、いや、なんでもない。少々乙女のツボを突いたセリフだったものでな…。」 勇者「おねえさん。」 麗華「さぁ勇者、素敵な墓石を選びに行こうか。」 勇者「なぜだ!この扱いの違いはなんなんだ!?」 賢二「え?え? い、一体何がどうなって…??」 麗華「う、ううん。なんでもないのよ♪ うふふ☆」 こ、コイツまさか…! |
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2-78:病気〔12歳:LEVEL17〕 | |
麗華の態度を見て、俺は気づいた。間違いない、コイツは賢二の姉…「賢一」だ。 そういえば奴は「乙女」という言葉を多用する。よっぽどその名がイヤなのだろう。 これは、チャンスだ。このネタで奴を脅せば、立場は一瞬にして逆転できるだろう。 だが、奴もそう簡単には認めまい。なんとかうまい具合に奴から引き出さねば! 勇者「と、ところでだ師匠…こんな所で何してるんだ貴様?」 盗子「えっ!この人が勇者の師匠なの!?話と全然違うじゃん!美人さんじゃん!」 麗華「やれやれ。その様子じゃ、とんでもないブサイクと聞かされていたようだな。」 賢二「いや、髪の毛が「蛇」だと…。」 麗華「化け物じゃないか!ブサイクどころか見ただけで石じゃないか!」 勇者「ちょ、ちょっとしたジョークだ、気にするな。ところで質問の答えは?」 麗華「…ふぅ~。 「神」を追っている。どうやらこの辺りにいるようなのでな。」 賢二「あっ、おネェさんも神を探してるんですか!?」 麗華「お、お姉さぁーんっ!!」 賢二「!!?」 勇者「気にするな賢二、ただの発作だ。コイツは末期の「おネェさん病」なんだ。」 麗華「へ?あ…そ、そうなんだ。そう言われると相手を抱きしめてしまうの、だっ☆」 賢二「うぐぅ。 く、苦しいですよ~。」 盗子「おネェさん病?聞いたこと無いけど…そんなんホントにあるの?」 勇者「何を言う?お前の兄は末期の「ラブリー妹病」じゃないか。」 盗子「痛い、痛いよ勇者…。現実って痛いよ…。」 麗華(あぁ…幸せだなぁ…。) |
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2-79:作戦〔12歳:LEVEL17〕 | |
俺達と麗華は再会を祝し、晩には宴を開いた。そして逃げた。(金が無いから) そして深夜。物音にふと目が覚めると、麗華がいなかった。 そうか、行く気か…。 麗華(これ以上一緒にいたら、恐らく勇者にバレる。許せ、賢二よ…。) 声「む?なんだ、目的は同じなのに別行動なのか?つれない奴だなオイ。」 麗華「!! …お前か。若いうちから夜更かししとると背が伸びんぞ?早く寝ろ。」 勇者「なぁ師匠…いや、何でもない。気にしないでくれ。」 麗華「ん?どうした勇者、言いたいことがあるならハッキリ言うがいい。」 勇者「実はな師匠…いや、やっぱ何でもない。」 麗華「…ワシは煮えきらん男は嫌いだ。もう行くぞ? サラバだ。」 勇者「あ、そうだ賢一!」 麗華「だからなん…ハッ!!」 よっしゃ勝った!俺は勝ったぜー!! |
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ドガッ!バキッ!バコバコッ!メキャッ!ドスッ!グゴバキッ!グキッ!ドスドスッ! ババババシッ!ズゴッ!ドバシッ!ズババン!ドゴッ!ゴンッ!ガコンッ!バシッ! ズガンッ!ズガガガガン!ズガガガガガガガンッ!ザシュッ!ドバシュッ!ザンッ! ぼ、僕は…一体…。 |
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2-80:忘却〔12歳:LEVEL17〕 | |
朝。目が覚めると、なんだか体中が痛かった。でもなぜか、全く心当たりが無い。 一体、僕の身に何が起こったんだろう。 …というかそもそも、僕は誰なのだろう? 盗子「おっはよー勇者!って、ギャー!なんて顔してるのさ!まるでオバケじゃん!」 勇者「…ゆうしゃ? なるほど、僕の名は勇者というのか…。」 賢二「へ…? ど、どうしちゃったの勇者君?なんかいつもと感じが…。」 勇者「どうやら僕は、鈍器以上の何かで殴打され、記憶喪失になったらしい。」 盗子「き、記憶喪失!?って、そんな自覚ある記憶喪失があるかー!」 勇者「だから悪いけどお前達、僕に僕のことを知ってる限り教えてほしい。頼む。」 賢二「えっ…ホントに覚えてない…の?ホラ、僕は賢二。親友だよね僕ら?」 勇者「けんじ…ゴメン、わからない。そうか親友なのか…。 ホントすまないな。」 賢二「勇者君…そんな…。」 盗子「あ、アタシは彼女!そう、勇者の彼女の盗子ちゃんだよ☆」 賢二(うわー。) 勇者「それは無い。」 盗子「あっさり否定されたー!!」 勇者「本能的な何かが、そう囁いた。勘弁してほしい。」 盗子「謝られたー!! なんかその方がかえって傷つくよ!うわーん!」 賢二「いや、この機に乗じて彼女と言い張った盗子さんも結構酷いよ?」 勇者「大丈夫、そう悲観するほど酷くはないさ。」 盗子「顔を見るな顔を!死ねっ!!」 賢二「ホントに、全部忘れちゃったんだね…。」 ところで、姫ちゃんはどこかな? |
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2-81:出発〔12歳:LEVEL17〕 | |
記憶を失った僕は、賢二と盗なんとかって奴と、共に旅立つことになった。 なにやら今は、「神」を追っているんだとか。 見つかるかは知らないけど、頑張ろう。 勇者「朝食も済んだしそろそろ行こうか。日が暮れるまでに次の村に着きたいし。」 盗子「でもさ、平気なの勇者?記憶も無いのに旅するだなんて…。」 勇者「いや、安心してくれ。教えてもらったことは全て記憶したよ、ジェニファー。」 盗子「「盗子」だから!一文字も合ってないじゃん!根本から忘れてるじゃん!」 勇者「だ、大丈夫!大事なことは覚えてるから!」 盗子「フォローになってないどころか逆に傷つくよそれ!」 賢二「でもホントに大丈夫?生活に不都合とかは無いの?」 勇者「うん、問題ない。生活習慣や時代背景的なモノは、なぜか都合よく覚えてる。」 賢二「じゃあ、そろそろ行く?とりあえず麗華さんが教えてくれた場所にでも。」 盗子「でも候補は二つあったよね?どっちに行こっか?西?北?」 勇者「間とって北西に行こうか。」 盗子「何も見つかんないじゃん!この選択肢で間をとる意味がわかんないよ!」 勇者「なら西だ。なんとなく、僕は西に何かがある気がするんだ、ナンシー。」 盗子「ワォ!ホントなのサム!?ってだから「盗子」だっての!!」 |
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2-82:崩壊〔12歳:LEVEL17〕 | |
カヨミ村から西に向かった僕達は、「ニシシ村」という寂れた田舎町に辿り着いた。 いや、「寂れた」と一言で片付けられるレベルじゃない。なんか、「崩壊」してる…。 賢二「なんか…神探しどうこうって状況じゃないね。人っ子一人いなそうじゃない?」 勇者「ごめん。こっちじゃなかったようだね…。」 盗子「ま、まぁしょうがないよ。二分の一だもん、外れたって気にすることないよ。」 勇者「こんなことなら、最初から素直に北西に…」 盗子「いや、そうじゃないから!そっちは選択肢にすら入れてなかったから!」 勇者「まぁとりあえず、神は後回しにして…今日のところは宿と食事を探さないとね。」 盗子「うん、そだね。最近寒くなってきたから野宿はキツいしね~。」 賢二「…あ!見て見て!なんかあの家だけ明かりついてない!?人がいるかも!」 勇者「ん、ホントだ! よし、じゃあ話を聞きに…」 表札『神様』 ええぇっ!!? |
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2-83:再会〔12歳:LEVEL17〕 | |
唯一明かりのついていた家…しかもその表札には「神」の文字。まさかの急展開だ。 本来ならもっと苦労の果てに見つけるべき相手だと思うんだけど…まぁいいか。 ガラガラガラ…(開) 勇者「たのもー!ちょっと聞きたいことがあるんだけどー!」 声「はぁ~い!どちら様ですかぁ~?」 勇者「フッ、僕?僕はさすらいの記憶喪失…名前は思い出せない。」 盗子「「勇者」だから!なんで今になってソレを忘れちゃうの!?」 少女「えっ…? キャ、キャァーー!!ゆゆゆ勇者先輩!?勇者先輩だぁー☆」 盗子「うげっ!あ、アンタはっ…!!」 弓絵「あ~ん☆ 会いたかったですぅマイダーリ~ン☆」 |
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勇者「なっ!? そ、そうだったのか…僕にはマイハニーがいたのか…!」 盗子「違っ、騙されちゃダメだよ勇者!ってかアタシん時と扱いが違くない!?」 弓絵「…あれ?なんか様子が変ですぅ~。どうかしちゃったですかぁ~?」 賢二「あー…それがね、勇者君ちょっと記憶を無くしちゃってて…。」 勇者「ご、ごめん。残念だけど記憶の片隅に塵ひとつの大きさも残ってないんだ。」 賢二「いや、そこまでハッキリと告げなくても…。」 弓絵「そんな~!それじゃ弓絵と「弓者ちゃん」の将来はどうなるんですかぁー!?」 盗子「コラそこー!勝手に愛の結晶を創るなー!しかも命名まですなー!!」 勇者「そうか…僕達にはそんなラブリーな存在まで…!」 盗子「だから騙されるなってば!勇者にはアタシっていう妻がいるんだからー!」 勇者「ありえない。」 盗子「うわーん!!」 神「・・・・・・・・。」 |
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2-84:貧弱〔12歳:LEVEL17〕 | |
どういう訳か、神の家にいた弓絵という元後輩。 なぜか必要以上に馴れ馴れしい。 そして、奥から現れた家主らしい老人。どうやらコイツが神様みたいだけど…。 勇者「お前が…神? あの旧星歴の伝説の…。」 神「あ~、いかにもそうやで。なんや、ワシに何かアレかいな?」 盗子「な、なんかキャラ…軽くない?全然神っぽくないんだけど…。」 弓絵「盗子先輩に何がわかるんですかぁ~?神クンを悪く言わないでくださーい!」 神「ええこと言うた。いま弓絵ちゃん、ええこと言うた。」 勇者「悪いけど僕も神らしくないと思う。」 弓絵「ですよねぇ~☆」 神「ガーン。」 賢二「あ、あの…。実は違うとか?世界を滅ぼしかけたのは他の神様とか…?」 神「いやいや。ワシもこう見えて、いくつもの国を滅ぼしとったアレやで?」 盗子「嘘だー!絶対嘘だよそんなの!全然強そうに見えないもん!」 勇者「じゃあ聞くけど、一体どうやって…?」 神「あ~、「財政難」で。」 ま、まさかコイツ…! |
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2-85:神話〔12歳:LEVEL17〕 | |
もっと偉大なものを想像していたのに、いざ現れたのは「貧乏神」。なんてことだ。 でもさすが古い神だというだけあって、昔のことは色々と知っているっぽい感じ。 話を聞いていると、色々と謎が判明してきた。意外にも頼りになる神だったらしい。 貧乏神「500年前ちゅーたら、アレやね。ワシら「十二神」がおった頃やね。」 盗子「えぇっ!?増えてんじゃん!実にその数4倍じゃん!」 勇者「聞いた話では、三体の神々がそれぞれ空・海・大地に封印されたと…。」 貧乏神「封印されたアレはね。 他は死んだんよ。あと、隠れた奴とかな。」 勇者「最後のは凄まじくお前のことっぽいね。だとしたらとっても潔くないよ。」 賢二「な、なんか結構イッパイいたんですね…。ちょっとありがたみが…。」 貧乏神「あ~。この「神」ってのはな、宗教家らが言うようなアレとはちゃうんよ。」 賢二「へ?どういうことですか?よくある偶像崇拝的なモノではないと?」 貧乏神「まぁアレよ。「地球人の力を超越した存在」…平たく言やぁ「異星人」よ。」 勇者「…なるほど。それなら偶像説に比べれば多少は信憑性があるけど…。」 貧乏神「まぁよっぽどなアレ持っとらんと、「神」とまでは呼ばれんかったがね。」 勇者「いや、「貧乏神」が誇らしげに言うセリフじゃないと思うけども。」 貧乏神「ちゅーわけで、あの頃は荒れとったわ。 なんせワシら13人は…」 盗子「ちょっと待って!また増えてるから!さらにもう一人増えちゃってるから!」 貧乏神「あ~。なんせ昔の話なんでな。 ま、話しとれば思いだす思うわ。」 ~二時間後~ 貧乏神「んでな、そこでワシは言うたったわけよ。他の48人に…」 盗子「増えまくってんじゃん!!」 |
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2-86:仲間〔12歳:LEVEL17〕 | |||
ボケているのか、どうにも信憑性の薄い貧乏神の話。信じかけた僕がバカだった。 でもまぁ、神がどういう存在かわかっただけでも収穫としようか。多くは望むまい。 貧乏神「ちゅーわけで、アレよ。ワシ逃げ惑っとったでな、実はよう知らんのよ。」 盗子「って今さらかい!二時間語った後でそんなカミングアウトしないでよ!」 賢二「で、でもいくつか、ためになる話も聞けたし…良かったよね?」 勇者「そうだね。まぁ足りない情報はまた道中で集めればいいさ。」 貧乏神「そう言ってもらえると助かるわ。ありがとな。」 勇者「じゃあとりあえず今日はもう寝ようか。そして明日は早めに出よう。」 貧乏神「…なぁ坊よ。もう一人くらい仲間増えよっても…平気かなぁ?」 勇者「ん? うん。仲間は多いに越したことは無いけど、それが?」 貧乏神「ワシも無駄に生き過ぎた。どうせ死ぬんやったら、少しでも誰かの役に…。」 勇者「貧乏神、アンタ…。」 |
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2-87:淡白〔12歳:LEVEL17〕 | |
申し訳ないけど、貧乏神は置き去りにして旅立つことにした。 貧乏旅はゴメンだよ。 盗子「みんな準備はできたー?次の村は遠いんだってさー。」 勇者「うん、準備は済んだ。別れを済ませたら向かうよ。」 貧乏神「弓絵ちゃんも行ってまうんか…なんや寂しくなるわな…。」 弓絵「そうですかぁ~?弓絵は勇者先輩と居られれば幸せでぇーす☆」 貧乏神「いや、そこはこう…もっと名残りを…。」 勇者「じゃあそろそろ行こうか。貧乏神…微妙にだけど世話になったね。」 貧乏神「あ~チョイ待ちぃや。最後に坊よ、その盾のことなんやけどな…。」 勇者「ん?僕の盾に何か?」 貧乏神「その盾…その見た目はアレよ。「破壊神」の牙から切り出したもんやね。」 勇者「なっ!?」 賢二(そんな本格的に呪われたモノだったなんて…。) 盗子「ま、まさか他にも似たようなアイテムがあるの!?神の力とか持った…!」 貧乏神「ワシも全部は知らんがね。まぁ神々とヤルんなら、探して損は無いやろな。」 勇者「わかった、ありがとう。今後は呪われてないヤツを探してみることにする。」 弓絵「まだですか~センパァ~イ?こんなお爺ちゃん放っといて急ぎましょうよ~。」 貧乏神「ガーン。」 |
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貧乏神「神の装備のアレがまた一人…。こりゃぼちぼち、アレがアレやなぁ…。」 | |
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2-88:悲鳴〔12歳:LEVEL17〕 | |
ニシシ村を離れた僕達。でも、これといって行くあてもなく、正直困っていた。 勇者「さて、問題はこれからどこへ向かうか…だね。誰か案は無いのか?」 弓絵「弓絵は先輩と一緒なら地獄にだって喜んで行っちゃいますよぉ~☆」 盗子「あ、アタシだって同じだもん!勇者となら地獄だってヘッチャラだよ!」 勇者「気をつけてね。」 盗子「見送らないで!!気遣ってそうなセリフだけど全然気遣ってくれてないよ!」 ァァァァァ…!! 勇者「!?」 賢二「ん?どうしたの勇者君?」 勇者「いや、いま何か…悲鳴のようなものが聞こえた気がしたんだ。」 盗子「悲鳴?う~ん、気のせいじゃないの?」 ~その頃~ 貧乏神「ハァ、ハァ…な、なんやねんワレは…? うぐぅ!」 群青「黙れよ雑魚が。テメェにゃ聞きてぇことがある、大人しくついてきな。」 |
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2-89:拉致〔12歳:LEVEL17〕 | |
微かにだけど、確かに聞こえた何かの悲鳴。なんだか妙に胸騒ぎがする。 これは、貧乏神に何かあったのかもしれない。 よし、やはり一応戻ってみよう。 ~ニシシ村:貧乏神の家~ 群青「はぁ~…拍子抜けだぜ。噂の神ってのはこの程度なのかよ、ったく。」 貧乏神「ヘッ…ナメるな坊よ。ワシぁ堕ちても神、あんさんごときにゃ従わんで。」 群青「あ゛ん? いい度胸じゃねぇかジジイ。」 貧乏神「…と、昔のワシなら言うたったと思うわ。」 群青「弱っ!弱いなお前!きっと昔もこうだったと思うぞ!」 貧乏神「ワシをさらって…どないするアレや?何を企んどんねんワレ?」 群青「世界を制すためにゃ神の力が必要だ。それにゃまず情報が要るんだよ。」 貧乏神「…無理やな。あんさんはアレやで。あの「勇者」の坊に潰されるアレやわ。」 群青「なっ!テメェまさかもうあの青髪のガキと…!?」 貧乏神「アレは結構やるアレやで。きっと今頃この事態にも気づいてる頃や。」 群青「チッ…! さっさと来い!でねぇとブッ殺すぞテメェ!?」 声「待ぁーてぇー!!」 群青「!! こ、この声は…!」 黒錬邪「お待たせ。」 群青「紛らわしいんだよ!!」 |
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2-90:裏技〔12歳:LEVEL17〕 | |
嫌な予感がして戻ってみると、貧乏神の姿は無く、床にわずかな血痕があった。 案の定、貧乏神の身に何かが起こったっぽい。もう少し早くに気づいていれば…! 勇者「荒らされた後…。 くっ、遅かったか…!」 弓絵「遅くなんかないですぅー!弓絵達の愛はまだまだ始まったばかりでぇーす☆」 盗子「ゆ、勇者!床にメモみたいのが落ちてるよ!なんかの手掛かりかも!」 勇者「ホント!?貧乏神の奴…意外とヤルじゃないか!早速見てみよう!」 手紙『アレを右に行ったアレの』 一同「わからないっ!!」 賢二「書きかけって要素を差し引いても、これはあんまりだよね…。」 盗子「まぁこんな目立つ場所にあるぐらいだもんね。ヒントだったら絶対隠滅され…」 勇者「…待って!この紙、ほのかにリンゴのような香りがする。もしかして…。」 |
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盗子「あ、あぶり出し!?なんでわかったの!?」 勇者「以前聞いた覚えがあるんだ。リンゴの汁であぶり出しの真似事ができると。」 弓絵「スゴいです勇者先輩ー☆ とても記憶喪失とは思えませーん☆」 盗子「で!で!?なんて書いてあんのさ賢二!?」 賢二「あっ、えっと、「北西 洞窟 群青色」…ぐ、群青色!?まさか…!」 勇者「そ、そんな…奴が動き出しただなんて…!」 盗子「えっ!覚えてるの勇者!?」 勇者「いや、なんとなく雰囲気的に。」 盗子「紛らわしいよ!無理してそれっぽいセリフ言わなくてもいいから!」 勇者「ま、とりあえず行こうか。行くあての無い旅も不毛だしさ。」 盗子「はぁ~…。 だね。とりあえず行っとこっか。」 |
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2-91:相談〔12歳:LEVEL17〕 | |
群青なんとかを倒すため、僕達は北西にあるという洞窟を探すことにした。 でもその前に、やはり記憶が無いのは痛いということで、策を練ることにしたのだ。 勇者「というわけで、いい案があったら挙げてほしい。何かない?」 盗子「う~ん、やっぱ記憶喪失の定番って言ったら「ショック療法」かなぁ?」 勇者「ショック療法か…。でもどんな原因でなったのかも覚えてないしな~。」 盗子「と、とりあえず…よくあるみたく、棒か何かで殴ってみよっか?」 弓絵「叩いちゃダメですぅー!勇者先輩はもう一人の体じゃないんですよー!?」 盗子「妊婦扱いかよ!てゆーか少なくとも勇者は産まないから!」 勇者「無理だね。悪いけど半端なことじゃ僕はショックは受けないと思う。」 賢二「姫さんは行方不明だよ。」 勇者「ショォーーーック!!」 盗子「えっ!なんで姫だけは覚えてるの!?アタシもショックなんだけど!」 勇者「というか賢二…そのショックはちょっとジャンルが別な気が…。」 賢二「ご、ゴメンつい…あっ、そうだ!女医先生に聞いてみようよ!島に電話して!」 盗子「あー!確かあの人脳外科専門だったよね!確かに名案かも!」 プルルルル…ガチャ。 盗子「あ、もしもし?盗子だけど女医先生いるー?勇者が大変なんだけどー!」 声「あら?久しぶりじゃない、どうしたの?勇者君が記憶喪失にでもなった?」 盗子「ってなんで知ってんの!?言っとくけど盗聴は犯罪だよ!?」 声「あら、当たっちゃった?冗談だったのに☆ でも残念ね~、私の専門外だわ。」 盗子「そんな~!このままじゃ今まで育んだアタシらの愛が記憶の底にぃ~!」 声「イタ電なら切るわよ。」 盗子「こっぴどいよ!医者が乙女のハートに致命傷与えるってどうよ!?」 声「あ、そういえば私の知り合いに…彼ならもしかして…。 紹介してほしい?」 盗子「えっ!ホント!?やったー!これで二人の愛は守られるよー!」 ガチャ。 プー プー プー… |
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2-92:名医〔12歳:LEVEL17〕 | |
女医とやらのツテで、あらゆる難病に挑んできたという名医を紹介してもらえた。 しかも、偶然にもその医師はすぐ近くに住んでいた。なんだか運命的な偶然だ。 というわけで、早速僕達はその医師が勤める病院を訪れたのだった。 ガチャッ…(扉) 勇者「邪魔するよ。カクリ島の女医の紹介で来た者だけど…?」 医師「む?おぉ、キミ達が…。 ようこそ少年達。冴子君から話は聞いているよ。」 盗子「でもさ、ホントに治せるの?そんな簡単なモンじゃないと思うんだよね~。」 医師「まぁ任せたまえ。これでも昔は、皆に「ゴッドハンド」と呼ばれた私だ。」 盗子「ゴッドハンド!?なんか期待持てそうな異名じゃん!いけそうじゃん!?」 医師「懐かしいな…よく言われたものだよ。「この死神っ!」…とな。」 盗子「そっちの神かよ!とっても不名誉な称号じゃん!!」 賢二「まさか一度の人生で、二人の死神に出会うなんて…。」 勇者「ほ、ホントに大丈夫なの?命より大事な記憶ではないんだけど…。」 医師「安心していい。私に治せる病は無い!!」 盗子「「ぬ」じゃないの!?一文字違いでえらい違いだよ!?」 勇者「ま、まぁいい。とりあえず任せてみよう。 ところでお前…名前は?」 医師「私かね? 私は「相原」。そこに患者がいる限り、私は闘う。」 |
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2-93:治療〔12歳:LEVEL17〕 | |
自称「ゴッドハンド」な中年医師、その名は「相原」。なんだか妙な名前だ。 また、性格も妙だ。かなり信用できないけど、ものは試し…少しだけ任せてみようか。 医師「ではまずは、「ショック療法」から入ってみるとするかね。」 盗子「ホラやっぱりー!やっぱアタシの読みが当たったじゃーん☆」 医師「…じゃあヤメます。」 盗子「なんで!?なんか気に障っちゃったの!?」 医師「私にも、医師としてのプライドというものが…あればなぁ…。」 盗子「無いの!!?」 ~一時間後~ 医師「仕方ない…じゃあ次はこのロケットランチャーで…。」 勇者「ま、待って!それはさすがにシャレにならないんじゃないの!?」 医師「フトンがだっふんだ。」 盗子「シャレ言えばいいってもんじゃないから!ってシャレになってないし!」 ~二時間後~ 医師「私の子供の頃はね、ラーメンが50銅(約50円)で食べられたんだよ。」 勇者「なにっ!?そんなに安く!?」 賢二「いや、「カルチャーショック」はどうでしょう…?」 ~三時間後~ 相原「…ただの風邪です。」 一同「待てぇーい!!」 |
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2-94:請求〔12歳:LEVEL17〕 | |
三時間も粘ったのに、結局治療は失敗した。どうやらかなり厄介な状態らしい。 勇者「残念だけどお前じゃ無理らしい。ラチがあかないから諦めることにするよ。」 相原「ま、待ちたまえキミ!最近の風邪を甘く見てはいかんぞ!」 盗子「あくまで風邪の線でいく気かよ!往生際が悪すぎるよ!」 勇者「まぁそう言わないで。コイツなりに頑張った結果なんだからさ、ナタリー。」 盗子「「盗子」だから!!まだ覚えてなかったのかよっ!」 相原「行く気かね?聞けば大きな戦いが近いらしいが…記憶無しで平気かね?」 勇者「問題ない。僕には頼りになる仲間達がいるからね。」 賢二(な、なんか未だに慣れないなぁこの勇者君…。) 相原「…そうか。 じゃあ受付前で待ちたまえ。会計は急ぐように伝えよう。」 盗子「えぇっ!?お、お金取るの!?なんにも解決できなかったクセに!?」 相原「何を言うんだ。命があるだけありがたく思いたまえ。」 盗子「ヘタしたら死んでたの!?」 賢二「え、えっと…。紹介だからてっきりタダだと思ってて、お金無いんですけど…。」 相原「それは参ったねぇ~。一応決まりだから払ってもらわねば帰すわけには…」 弓絵「勇者先輩見てくださ~い!ナース服を手に入れちゃいましたぁ~☆」 勇者「ん…?」 相原「!!」 |
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2-95:別離〔12歳:LEVEL17〕 | |
治療に失敗したばかりか、治療費までふっかけてきた医師相原。なんて奴だろう。 …と思っていたら、なんと弓絵を置いていったら免除すると言い出した。 勇者「ねぇ医師よ、ホントにいいの?治療費の代わりがこんなもので。」 弓絵「ひ、酷いですぅ~!愛妻に向かって「こんなもの」は無いですよぉ~!」 相原「将来を考えれば釣りがくるよ。今はまだ若いが、五年も経てば立派な…」 弓絵「看護婦さんなんてイヤですー!弓絵は「弓撃士」なんですぅー!」 相原「立派な「白衣の堕天使」になれる。」 弓絵「しかも堕ちてるなんてあんまりですよぉ~!!」 勇者「すまないね弓絵。金ができたら、いつか迎えに来るから。」 弓絵「えっ☆それってプロポーズですかー!?白馬に乗ったお迎えですかぁー!?」 盗子「絶対違うから!アンタなんか人体実験に使われちゃえばいいんだよ!」 勇者「というわけだ。じゃあ悪いけど、弓絵のことはよろしく頼むよ。」 相原「うむ。 あぁそうそう、行くのならばこの薬を持って行きたまえ。」 |
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勇者「な゛っ、なにその怪しげな物体は…?秘伝の薬か何かなの…?」 賢二「なんか…見てるだけで目眩がするんですけど…。」 医師「勢いで作ってみた。」 盗子「勢いで作んないでよ!そんな物騒なモノを患者に手渡さないでよ!」 医師「まぁ持って行ってくれたまえ。私もどう処理していいか困っているんだ。」 盗子「餞別じゃなかったの!?困るほどいらないモノだったの!?」 勇者「…わかった、なんとか処理しよう。 じゃあ行くよ。元気でね弓絵。」 弓絵「わかりましたー!とっても辛いけど我慢しますー!待ち続けますぅ~!」 そういえば治療費って、いくらなんだろう? |
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2-96:技術〔12歳:LEVEL17〕 | |
弓絵と医師に別れを告げ、僕達は群なんとかがいるという洞窟を目指した。 でも目的地までは結構な距離があるようで、何日経っても着く気配が無かった。 歩きの旅にも疲れてきた。やはり、何か乗り物を手配するべきなのかもしれない。 そんな時、「電力車」という乗り物があることを知った。さすが技術大陸ギマイだ。 勇者「ふぅ~、こりゃ楽チンだ。こんな便利なモノがあるとはなぁ。」 盗子「ホントだね~。獣車と違って揺れも少ないし快適~☆」 ガイド「あ、皆様ァ~。本日は当車をご利用いただき~誠にありがとうございまァす。」 賢二「…あれ?もしかしてアナタは先輩の…案奈さん?」 案奈「こんな所で~皆様にお会いできるとはァ~少々感激で~ございまァす。」 勇者「ぼ、僕は何かイヤな予感がするんだけど…それは僕の気のせい?」 案奈「…えー。左手に見えますのがァ~…。」 盗子「えっ、なんではぐらかすの!?ねぇ、こっちを見てよ!ねぇ!?」 案奈「あ、大丈夫で~ございまァす。この電力車は~半自動操縦機能を搭載し~…」 賢二「良かった…。じゃあ今回は運転手さん絡みで泣くことは無いんですね。」 案奈「今はこのリモコ(バキッ)…かつてはこのリモコンでぇ~…」 盗子「「かつて」って何!?いま壊したそのリモコンが何!? ま、まさか…!」 案奈「その「まさか」でぇ~ございまァす。」 一同「イヤァーーーー!!」 |
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2-97:窮地〔12歳:LEVEL17〕 | |
案奈とやらのミスのせいで、突如暴走を始めた電力車。もう外は大惨事だ。 盗子「うっぎゃーー!ぶつかるー!ぶつかっちゃうー!死ぬぅーー!!」 賢二「もっと酷い目に遭ってるのは、通行人の皆さんだけどね…。」 案奈「あ、皆様ァ~。シートベルトを~…」 盗子「今はそれどころじゃないよ!このスピードで激突したら絶対死んじゃうもん!」 案奈「搭載しておらず~誠に申し訳ございません。」 盗子「だからって無いのは問題だよっ!」 勇者「くっ!一体どうすればいいんだ…!!」 声「フッ、心配ない。運転は私に任せるがいいさ。」 勇者「なっ!?だ、誰だ今の声の主は!?」 盗子「ま、まさかこのお決まりの展開からして…ゆ、勇者親父!?」 謎「違う!私は謎のお助け仮面…「兄さん」だ!!」 |
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2-98:目的〔12歳:LEVEL17〕 | |
僕達のピンチを救うべく、運転手を買って出てくれた謎のお助け仮面「兄さん」。 なんだかとっても懐かしく、そしてとっても会いたくなかった人物のニオイがする。 賢二「は、はぅ~。死ぬかと思ったけど、これでなんとか一安心できそうだねぇ~。」 案奈「あ、皆様ァ~。右手に見えますのがァ~…。」 盗子「って平然と続けるんかい!勇者親父が来なかったら死んでたんだよ!?」 勇者「なっ!コイツは僕の父親なのか!?」 謎「違う!私は「兄さん」だ!!」 勇者「なっ!僕にはこんな歳の離れた兄が!?」 盗子「信じないでよ!どう考えてもあり得ないから!」 黄錬邪「そして私がお姉さんです☆」 盗子「どっから湧いたー!!?」 ~一時間後~ 父「…そうか、勇者は記憶を…。どうりでいつものツッコミが無いわけだ。」 勇者「ごめん父さん。悪いけど少しも…思い出したくないんだ。」 父「思い出したくないのか。覚えてないことへの謝罪じゃないのか。父さんショック!」 賢二「あのぉ~。ところで、お二人はどうしてこっちへ?やっぱり目的は…。」 黄錬邪「ええ。 悪の道へと逸れた、かつての同胞を…滅ぼすために。」 父「なにやら最近、奴らに不穏な動きが見られる。これ以上野放しにはできん。」 盗子「フンだ!なにさ今さら! どうせ来るんなら今までなんで放っといたのさ!」 父「少々柔軟に時間が掛かってな。」 盗子「掛けすぎだよ!てゆーか戦闘前に柔軟体操なんて聞いたこと無いから!」 父「まぁとにかく、私が来たからにはもう心配いらん。安心してついて来なさい。」 |
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2-99:見破〔12歳:LEVEL17〕 | |
父さんと黄色い人と共に、僕達はついに目的の洞窟へと生きて辿り着いた。 ~ギマイ大陸:ガラン洞窟~ 勇者「ここか…ここにその、五錬じなんとかが居るんだね…。」 盗子「「五錬邪」だよ!そこまで覚えてんなら全部覚えようよ!あと半歩だよ!」 勇者「よし、じゃあ早速行こう。悪は早急に絶やさなきゃならない。」 父「いや待つんだ勇者! よく見てみろ、ホラその入口の手前…「落とし穴」だ。」 盗子「あっ、ホントだ!すんごい見えにくいけど確かにそれっぽい感じだよ!」 賢二「な、なんだかショボい罠だけど…でもよくわかりましたね。スゴいですよ!」 父「フッ。私にかかれば、この程度の罠を見破るなんぞ容易なことさ。」 盗子「よっ!見直したよ勇者親父!やっるぅ~☆」 黄錬邪「まぁレッドが仕込んだ技ですけどね。」 盗子「アンタが根源かっ!」 父「だが群青の奴もまだまだ甘いな。こんな簡単にバレるようじゃああぁぁぁぁ…!」 |
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一同「・・・・・・・・。」 勇者「やれやれ…。 どうやら僕の父はマヌケな生き物らしいなぁぁぁぁぁぁ…!」 |
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〔遺伝(いでん)〕 |
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勇者:LEVEL15の魔法。(消費MP80) 一定時間、祖先の能力を半強制的に身に宿す。祖先がハゲなら高確率でハゲる。 |
2-100:包囲〔12歳:LEVEL17〕 | |
知っていた落とし穴に落ちるという、なんとも耐え難い精神的苦痛を味わった僕達。 賢二やミリガンも後を追って降りてきた。黄色い人だけは上の方から攻めるらしい。 勇者「くっ、あんな見え見えの罠に…!僕はなんてウッカリ者なんだ!!」 賢二「大丈夫だよ勇者君。「落とし穴」って時点で、この展開は読めたから…。」 父「そうだぞ勇者、悔いても仕方あるまい。今は前に進むことを考えるんだ。」 盗子「もっともな意見だけど、アンタに言われるとなんかムカつくよね。」 父「…まぁ、進むのは少し後になりそうだが…な。」 盗子「え…? あ゛っ!!」 魔獣達「グルルルルルッ…!!」 |
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盗子「10…20…け、結構いるよ!?ど、どうしよ!!」 勇者「安心してクリストファー。僕がなんとかしてみせる!」 盗子「う、うん!頑張ってね勇者!「盗子」だけども!」 |
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勇者「ぬうぅぅっ!抜けない!なんでなんだー!?」 盗子「ま、マジで邪悪な者にしか抜けないのそれ!? じゃ、じゃあ勇者親父!」 父「私は「元勇者」。基本的に何もしない。」 盗子「しろよっ!!」 |
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2-101:再戦〔12歳:LEVEL17〕 | |
僕は剣が抜けず、賢二は飲み込まれ、父さんはヤル気が無い。状況はかなり悪い。 勇者「敵は多いけど…とりあえず賢二の救出を最優先に片付けよう!」 盗子「そ、そだね!じゃあアタシがなんとか敵を引き付けるよ!」 勇者「ダメだ!無理をするなジャックリーン!」 盗子「で、でも…! いや、「盗子」だけどね!?」 勇者「お前じゃ誰も惹きつけられない。」 盗子「ってそういう意味かよ失敬な!死ねっ!!」 声「甘ぇな!好き勝手させるかよクソガキどもがぁ!!」 父「むっ! その声は…!」 群青「ゲハハハハッ! よく来たなぁレッド…いや、”元”レッドか。」 |
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父「…フッ、久しぶりだな群青れ…うわっ!なんだその色は!?」 群青「テメェが決めたんじゃねーか!なに今更…しかも驚いてんだ!」 勇者「賢二が消化される前にお前を倒す。降参するなら今のうちだよ?」 群青「貧乏野郎から聞いたぜ、テメェ記憶が無ぇらしいな。そんなんで戦えるのか?」 勇者「心配無い。僕にはヤル気の無い父と、戦闘力の無い盗賊の仲間がいる。」 群青「メチャメチャ不安じゃねーか!そんなんでこの俺様に挑むってのか!?」 勇者「御託はいい、来い!お前のような外道は僕が刀の…拳のサビにしてやる!」 |
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2-102:失態〔12歳:LEVEL17〕 | |
剣は抜けないが、やはり「勇者」として敵に後ろを見せるわけにはいかない。 勇者「さぁどうした!?来ないならこっちから行くよ!?」 群青「フッ…焦るんじゃねぇよガキが。俺とやりたかったら、生きて上まで来な。」 勇者「なっ!?に、逃げるのか!?待て…!」 魔獣達「グルゥ。(ピタッ)」 盗子「アンタらに言ったんじゃないよ!?いや、大人しいのはいいことだけども!」 |
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勇者「父さん、奴を追ってくれ。僕は賢二を助けてから駆けつける。」 父「わかった。飲み物の買い出しは任せるんだ。」 盗子「ちっともわかってないじゃん!なんでピクニック気分なんだよ!?」 父「恐らくこの洞窟には様々な罠が仕掛けられているだろう。気をつけるんだぞ。」 勇者「わかってる。父さんも気をつけて。」 父「無論だ。もう二度と落とし穴に落ちるようなぁぁぁぁぁぁぁ…!」 |
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2-103:奇術〔12歳:LEVEL17〕 | |
残された僕達は、とりあえず魔獣達を倒すことに努めた。父さんのことは忘れよう。 武器がナイフしか無くて手間取ったけど、残るはあと一体…なんとかなりそうだ。 勇者「ハァ、ハァ…最後だ!アイツが賢二を食った奴で合ってるなジュリー!?」 魔獣「グ、グルルルッ…!!」 盗子「あ、うん!あの傷がある奴で合ってるよ!盗子そう思うよ盗子ぉっ!!」 勇者「ゴメンね魔獣。お前に恨みは無いんだけど…これも仲間のためなんだ!」 魔獣「グルォオオオオッ!!」 勇者「行くぞ!思いつき必殺剣、「帝王切開」!!」 |
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盗子「やた!ちゃんと出てきたよ!まだ溶けてなかったみたい!」 勇者「オイ起きるんだ!大丈夫か賢二!?」 姫「…ほぇ?」 勇&盗「なんでぇーーー!!?」 |
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2-104:転送〔12歳:LEVEL17〕 | |
賢二を食べたはずの魔物が、なぜか姫ちゃんの出産に成功した。 一体何が…? 勇者「ひ、姫ちゃん!?な、なんでキミが出てくるの!? ぃやっほーい!!」 盗子「やっぱ生きてたんだね姫! でも…どうやって逃げてきたのあの怪鳥から?」 姫「ワタシ 姫チガウ。 メカ姫チャン。」 盗子「えっ!ま、まさかまたお兄ちゃんからの刺客とかなの!?」 姫「こんにちは勇者君。今日も涼しいね。」 盗子「ってスルーかよ!!乗っかったアタシがバカだったよ!」 姫「今日も激しいツッコミだね、商南ちゃん。」 盗子「アンタまで忘れないでよ!アタシは「盗子」だっての!!」 勇者「まぁそう怒るなよ、「闘魂」。」 盗子「惜しい!少しだけ惜しいけど違うから!アタシそんな熱い名前じゃないから!」 勇者「にしても、賢二は一体どこへ行ったんだろう?まさか既に消化されて…?」 姫「きっと「移食獣」に食べられたんだよ。お腹が繋がってるんだって。」 勇者「へぇ~、そんな魔獣だったのか~。大陸には変わったのがいるんだね。」 姫「でも食べられちゃうってマヌケだよね、賢二君。」 盗子「アンタもだよね!?だからアンタここに居るんだよね!?」 |
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2-105:再会〔12歳:LEVEL17〕 | |
愛しの姫ちゃんを仲間に加え、僕達は群青錬邪を追って上を目指した。 落ちた深さを考えると、ここは多分2~3階層ある。奴は何階にいるのだろうか。 勇者「やれやれ…ここでもないか。意外と広いねこの地下洞窟。」 姫「スタンプ集めるのも一苦労だね。」 盗子「集まんないから!そんな楽しげな迷路とかじゃないから!」 勇者「それにしても、父さんはどこなんだろう?戦いらしい音は聞こえないけど…。」 盗子「う~ん、違う道に行ったんじゃん?てゆーか落ちたんだからまだ下かもね。」 勇者「なんだかイヤな予感がするんだ。 父さん…何も無ければいいけど…。」 ~その頃~ 父「…まさかお前まで居るとはな。 本拠地はタケブじゃなかったのか?黒錬邪よ。」 黒錬邪「安心しろ、アチラはアチラで進んでいる。俺達はコチラでコチラなんだ。」 父「そうか…。ならばこんな所でグズグズしているわけにはいかんな。」 黒錬邪「フッ、相変わらずせっかちだな凱空…だがまぁいい。」 二人「行くぞっ!!」 |
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2-106:意表〔12歳:LEVEL17〕 | |
だいぶ上に進み、薄っすらと外のニオイがしてきた。出口は近い。 となると…。 勇者「この扉の先…恐らくそこに、奴は居ると思う。みんな準備はいいか?」 姫「うん。どうでもいいよ。」 盗子「どうでもよくないよ!一応命かかってんだから真面目にやってよー!」 勇者「そう気負うことないさ。敵は一人だ、安心していいよポチ。」 盗子「ついに「人」ですらなくなったよー!うわーん!」 |
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群青1「…あ゛ん?やっと来やがったか。」 群青2「待たせやがって。」 勇&盗「二人いたーーー!!」 |
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2-107:血塗〔12歳:LEVEL17〕 | |
扉の先には、なぜか群青錬邪が二人いた。僕は幻覚でも見たのだろうか。 いや、相手はコスプレーヤー…中身が違うだけの話だろう。まんまと騙されたよ。 こんなことで動揺するとは、僕もまだまだみたいだ。冷静になって戦わなければ。 ギィィィ…(開) 勇者「改めましてこんばんは群青錬邪!本日はお日柄も良くお前を倒す!!」 盗子「ゆ、勇者!?まだ動揺が抜けきってないよ!?大丈夫!?」 群青1「ヘッ、相変わらずいい度胸だな小僧。だがそれも今日までの話だ。」 勇者「…わかった。明日からはもっと悪い度胸になろう。」 群青2「そういう意味じゃねーよ!テメェらの未来は”アレ”だっつってんだ!」 勇者「アレって…? ハッ!あ、アレはっ!!」 |
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勇者「き、黄色い人!?だ、大丈夫か黄色い人!? …いや、今は赤い人!」 盗子「色にこだわってる場合じゃないから!人として間違ってるからそれ!」 姫「そうだよ勇者君。間違ってるよ。」 盗子「ね!?そうだよね!?もっと言ってやってよ姫!」 姫「黄色と赤で「オレンジの人」だよ。」 盗子「アンタに期待したアタシが間違ってたよ!」 勇者「…というわけでそろそろ心配しようと思うんだけど…大丈夫?黄色い人。」 黄錬邪「・・・・・・・・。」 |
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2-108:戦力〔12歳:LEVEL17〕 | |
冗談で済むかと思ったのにそんなことはなく、黄色い人は本当に死んでいた。 どうやら僕が思っていたより敵は残忍な奴みたいだ。フザけてなんていられない。 勇者「き、貴様よくも黄色い人を…!それでも元仲間なのか!?外道め!」 群青1「逆らう奴は誰であろうと薙ぎ倒す。それが俺達のやり方なんだよ!」 群青2「道を分かった時から、どちらかがこうなる運命だったんだよ。ケッ!」 盗子「姫!アンタなんとかしてよ!「療法士」でしょ!?」 姫「…やってみたけどダメだったよ。ゴメンね、オレンジの人…。」 群青2「他人の心配してるヒマがあんのかオラァ!?俺ら二人に勝てんとでも…」 勇者「イキがっても無駄だよ。どうせ一人は影武者…実力なんてタカが知れてる。」 群青1「ギャハハ!違ぇよ。コイツは「写念獣」、言うなら俺の分身ってやつだ。」 勇者「しゃ、写念獣…!?」 |
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勇者(くっ、どうする!?あっちは二人…!) 盗子(←盗賊) 姫(←療法士) こっちは…一人…。 |
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2-109:老化〔12歳:LEVEL17〕 | |
二人の群青錬邪と一人で戦うことになった僕。こんな状況でモテても嬉しくない。 そして戦い始めて数分。おかしい、体が思うように動かない。これが呪いの力か…! 勇者「ハァ、ハァ、疲れた…!息が…切れ…す、吸えない…!」 盗子「だ、大丈夫勇者!?そういやアンタ最近なんか息切れ多くない!?」 勇者「もう…ハァ、ハァ、歳なのかも…!」 盗子「いや、その線だけは無いよ!アタシらまだピチピチの12歳だよ!」 姫「私も…ハァ、ハァ、プリンが…吸えないよ…。」 盗子「プリンはストローで吸うもんじゃないから!行儀悪っ…てゆーか戦闘中だよ!」 群青1「なんだよオイ、もう息切れか?逃げてるだけじゃ勝てねぇだろが。」 勇者「ハァ、そういうお前も、随分と大人しいじゃないか。そっちは、歳のせいか?」 群青2「フン、こっちもわけありでな。フルパワーは時間制g…いや、なんでもねぇ。」 盗子「バレバレだよ!そこまで言っちゃったらもう誰にでもわかるって!」 勇者「そういえば賢二から聞いた。黄緑の奴は血を吐いたって…。理由はそれか?」 群青1「…どうやらテメェらは知りすぎたみてぇだな。早めにケリつけるか。」 盗子「ど、どうしよう本気んなっちゃったよ!もうダメかもー!!」 姫「大丈夫盗子ちゃん、私がなんとかするよ! むー!「招待」!!」 |
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教師「…ん?」 一同「うわぁーーー!!」 |
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〔招待(しょうたい)〕 |
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召喚士:LEVEL20の魔法。(消費MP30) どこかの誰かをランダムに呼び出す魔法。入浴中に呼ばれると大ピンチだ。 |
2-110:本気〔12歳:LEVEL17〕 | |
療法士なのに誰かを召喚しちゃった姫ちゃん。 このフードの人は一体…? 見覚えは無いけど、なんだか凄い悪寒がする。キャシーなんかプルプル震えている。 勇者「だ、誰なんだアンタは!?僕達の味方?それとも敵なのか!?」 盗子(プルプルプルプル…!(震)) 教師「おや?しばらく見ないウチに色々と変わっちゃいましたねぇ勇者君。」 群青1「ま、またテメェか死神!今度は邪魔はさせねぇぞゴルァ!」 教師「やれやれ…。今はアナタ方の相手をしてる場合じゃないんですがねぇ…。」 群青2「なんだとぉ!?テメェ俺らを雑魚扱いす…ぐぼぅぁっ!!」 |
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群青「なっ…!そんな…一瞬で消し去っただと!?」 姫「脅威のマジックだね。」 教師「ふふふ。タネも仕掛けもありまセーン。」 盗子「そりゃ無いよね!ホントに消してんだもんね!」 群青「…やっぱ、テメェにゃ本気じゃなきゃ無理か…。 命を懸けなきゃよぉ!!」 |
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2-111:黒幕〔12歳:LEVEL17〕 | |
凄い魔法で、片方を一瞬で消し去ったフードの先生。この人…タダ者じゃない。 でもそのせいで、群青錬邪も本気になったみたいだ。これからは激戦必至だろう。 勇者「くっ…!一瞬でここまで強くなるとは!一体何が…!?」 教師「バカなことを…。この急激なパワーアップ、「リミッター」を外しましたね?」 群青「ゲハハ!細く長くってのはガラじゃねぇんでな!」 盗子「リミッター…聞いたことある!実は人って潜在能力の半分も使えてなくて…!」 教師「ハイ。しかしその力を無理矢理引き出せばどうなるか…わかりますよね?」 ピポーン!(押) 勇者「ハイ姫ちゃん!」 姫「わかりません!」 勇者「うん、可愛いから正解!」 姫「わーい。」 盗子「って空気読めよっ!!」 教師「しかし、リミッター解除には激痛が伴います。とても自分の意思でとは…。」 盗子「えっ!じゃあ誰かが裏で糸を引いてるってこと!?」 姫「これだから納豆ってイヤだよ。」 盗子「違うから!そんなネバッこい黒幕はありえないから!」 群青「さぁいくぜテメェら?俺にゃ時間が無ぇんでな。一瞬で消してやらぁ!!」 教師「下がっていなさいキミ達。今一度、戦い方というものを見せてあげましょう。」 勇者「ま、待ってくれ先生!ここは僕にやらせてくれ!お願いだ!」 教師「いや、しかし今のキミには荷が勝ちすぎる相手ですよ?」 勇者「それでも退くわけにはいかない。かつての勇者達が、そうであったように!」 |
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2-112:流血〔12歳:LEVEL17〕 | |
肉体の限界を越え、本気で討ちにきた群青錬邪。強い波動がピリピリ伝わってくる。 群青「特別だ。テメェらには俺の最大奥義を見せてやるよ。 とくと見やがれっ!」 スゥゥ…(消) 勇者「なっ!?消え…!!」 |
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盗子「き、消えた!?コイツも桃錬邪みたく高速に移動できるってわけ!?」 教師「いえ、殺気も完全に消えている。これは「気功闘士」の成せる技ですね。」 声「ギャハハ!そうさ!俺は全てのオーラを操り、姿まで消せるのさ!!」 勇者「な、なるほど!オーラが無い奴は存在感が無い…。だから消えられると!」 盗子「説明クサいよ!しかもなんか苦しい説明だよ!」 教師「まぁ元々オーラ無かったですけどね。」 声「う、うっさいわ!ほっとけ!」 教師「ふふっ。まぁ姿を消せたところで、たった一人で私に挑む…ぐっ!」 |
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盗子「えっ!?ど、どしたの先生!?血が…!」 教師「いや~、今日は暑いですねぇ~。」 盗子「汗なの!?」 |
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2-113:変身〔12歳:LEVEL17〕 | |
どういうわけか、いきなりワキ腹から血を噴いた先生。噴水機能でもあるのか。 勇者「な、なぜだ!?奴の声はあっちから聞こえたのに! 飛び道具!?」 教師「やれやれ…油断しましたよ。どうやら先ほどの写念獣も…いるようですねぇ。」 盗子「えっ!写念獣も消えてたの!?ただのマネッ子なんじゃなかったの!?」 姫「ふはは。甘いわガキどもー。能力までも真似ちゃるのが写念獣でしたー。」 盗子「ってなんでアンタが解説してんの!?しかも何故か誇らしげに!」 群青2(お、俺のセリフが…。) 勇者「敵は二人…やはり僕にもやらせてほしい!片方は僕がなんとかする!」 盗子「危ないって勇者! 大丈夫だよ!いざとなったら先生には幻術もあるしさ!」 教師「ん?あ~…。 残念ですが、今はちょっと幻術は使えないんですよね~。」 盗子「使えない!?な、なんでなんで!?」 教師「落としてきました。」 盗子「落とすなよ能力を!」 勇者「安心してくれタコ。一か八かだけど、僕に考えがあるんだ。」 盗子「タコ!!? …いや、えっと、でもどうすんの!?アンタ剣も抜けないのに!」 勇者「確かに今の僕には剣も抜けない。でも…「過去の人」なら!」 盗子「ハッ!それってもしかして、さっき覚えたっていう…!」 |
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勇者「ウッキーー!!」 盗子「えぇっ!?」 |
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2-114:連撃〔12歳:LEVEL17〕 | |
ウキャ、ウキャキャッ!ウキョッキョキョー、ウキャキャウキョキョウキョーー!! 勇者「ウッキャーー!!」 盗子「わーん!戻りすぎだよー!事態は更に悪くなったよー!」 姫「わかる勇者君?これが「お手」だよ。」 盗子「コラそこ!芸を仕込むな芸を! 少しは状況察してよ!」 勇者「ウキャ!(お手)」 盗子「アンタもやっちゃダメ!!」 声1「よし、一斉にいくぞ!とっておきのヤツをお見舞いしてやるぞオラァ!」 教師「いえいえ、そんなお気遣いなく。」 声2「そっちのお見舞いじゃねーよ!こっちのお見舞いだぁ!必殺「群青大氣砲」!」 |
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声2「ぶばふっ!!」 声1「なにっ!? は、跳ね返しただとぉ!?」 教師「やはりお見舞いに「お返し」は付き物ですよね。」 盗子「いや、「仕返し」だよねそれ!?似てるようで全然違うよね!?」 勇者「ウキョキャッキュキョーー!!」 |
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群青2「ぐっ、しまった…! だが、まだこの程度じゃぶっ!」 勇者「ウキャッキョー!!」 ドガシドガシドガシッ!(連撃) 群青2「え゛っ!?ちょ、ちょっと待ぶっ! こ、こういうセリフの時ってのばうっ!」 ドガシドガシドガシッ!(連撃) 群青2「待つのがぶっ! お約束…じゃ…ぐぼっ!!」 ドガシドガシドガシッ!(連撃) 群青2「…ぐふっ。(ガクッ)」 |
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〔反射鏡(はんしゃきょう)〕 |
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魔法士:LEVEL40の魔法。(消費MP50) 光術系の技を跳ね返す魔法。ジジイのハゲ頭の次くらいによく照り返す。 |
2-115:偽者〔12歳:LEVEL17〕 | |
気が付くと、なぜか群青錬邪が一体倒れていた。聞けば僕が殴り倒したらしい。 どうやら魔法はうまくいったみたいだ。ちっとも覚えてないから実感はゼロだけども。 勇者「な、なんとか倒せたようだね…。でも、コイツは一体どっちなんだろう?」 教師「偽者なら髪に紛れて触角があります。握れば元の姿に戻るはずですよ。」 姫「…えい。(盗子の前髪を)」 盗子「わ~、元の姿に戻っちゃうぅ~って誰が戻るか!ついには魔獣扱いかよ!」 勇者「覆面の上からでもいいのかな? よっと。」 |
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勇者「偽者だったか…。でも残るは一人、勝ちは見えたようなものだね。」 声「…ケッ!偽モン倒したぐらいで調子ん乗んな!?俺にはまだ究極奥…ぐふっ!」 教師「おやおや、もう限界ですか?のんびりしてるからですよもう。」 声「ナメんな!そんな強ぇ結界に飛び込むほど俺ぁバカじゃねぇんだよ!」 盗子「えっ!結界張ってたの!?いつの間に!?」 教師「放っておけば自滅するんです、わざわざ構うのも面倒でしょう?ふふふ。」 盗子「さっすが先生!とってもスゴいよ!スッゴい外道だよ!」 群青「フン、もう隠れるのはヤメだ。十分な氣は練れた、最後の一撃をキメてやる。」 |
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2-116:悪霊〔12歳:LEVEL17〕 | |
なんと密かに氣を練っていた群青錬邪。最後の手段に出たっぽい。マズイなぁ…。 勇者「な、なんてオーラだ!そのために隠れていたのか…!」 盗子「きっと結界ごと吹き飛ばすつもりなんだよ!だ、大丈夫なの先生!?」 教師「いや~、無理だと思いますよ。先生なにげにさっきの攻撃が効いてますし。」 盗子「マジで!?じゃあ先制攻撃しなきゃマズくない!?打たれたら死ぬよね!?」 教師「ん~。でもあのオーラを外から砕くのは少々骨ですねぇ~。どうしますか…。」 勇者「くっ!僕にもっと力があれば…!」 姫「大丈夫だよ勇者君、私がなんとかするよ。 むー!「退散」!!」 |
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群青「…ん?」 勇者「あ、あれ?退散…できてないけど…?」 盗子「ダメじゃん姫!失敗じゃん! や、やっぱ先生がなんとかし…って、先生!?」 |
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〔退散(たいさん)〕 |
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除霊師:LEVEL20の魔法。(消費MP32) 一時的に悪霊を退ける魔法。成功率は低いので商用にはハッタリも必要とされる。 |
2-117:希望〔12歳:LEVEL17〕 | |
姫ちゃんの魔法で先生が消え去った。なんか希望が絶たれた感じ。もうダメかも…。 盗子「姫ぇー!あああアンタ何してくれてんのさ!?おかげで大ピンチじゃん!」 姫「タネも悪気も無いよ。」 盗子「ちっとも謝ってるように聞こえないよ!」 勇者「本格的にマズいね…。何か回避アイテムとか持ってないのかジョンソン?」 盗子「ご、ゴメン!こんなことになると思ってなかったから、武器しか無いの!」 姫「私もバーベキューセットしか持ってないよ。」 盗子「アンタ何しに来たんだよ!?」 姫「あとは…こんなのしかないよ。ゴメンね。」 盗子「えっ…こ、これって「魔導クジ」じゃない!?もしかしたら可能性あるかも…!」 |
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群青「あん?なんか策でも見つけそうな感じじゃねぇか。ならさっさと殺すかぁー!」 盗子「わー!バレたー! ヤバいよ!もう何でもいいから使っちゃってー!」 勇者「こ、この魔法は…!」 群青「死ねぇええええええっ!!」 チュドォオオオオオン!!(轟音) |
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群青「…ふふ、フハハハハ!やった!やってやったぜ雑魚どもがぁ! これで…」 声「ふぅ~、危なかったよ。もうちょっとでアウトだったね~。」 群青「なっ!?な、なんだテメェは!?何モンだ!?」 少女「アタシ?アタシは「姫子」。「盗賊」と「療法士」の力を持つ、美少女戦士だよ。」 |
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2-118:観念〔12歳:LEVEL17〕
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群青「テメェ…さっきのガキに似てやがるな。変身でもしやがったのか…!?」 姫子「〔三位一体〕を使ったの。合体ロボに変形したんだよって誰がロボだよ!」 |
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群青「さ、三位一体…!?…だが小僧の面影は全然なくねーか?」 姫子「ノー!そんなことはないッキー!」 群青「そこだけか!あんな術の一部がアイツの全てか!」 姫子「それよりも、いいの?さっき攻撃外しちゃったよね。もうお陀仏さんだね。」 群青「…フッ、甘ぇな!一度放ったら技は終わりと思ったか!?」 姫子「えっ…?」 |
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群青「うぇっ!? う、受け止め…っつーか逆に回復してんのは何故だっ!?」 姫子「アタシは相手のパワーを盗んで回復できるよ。諦めて死ねばいいと思う。」 群青「くっ…グフッ! ち、チクショウもう…限界…かよ…。クソッ…!」 |
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〔三位一体(さんみいったい)〕 |
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賢者:LEVEL48の魔法。(消費MP220) 人間・魔人・魔獣等、三体を融合させる高等魔法。失敗すると面白いことになる。 |
2-119:虫息〔12歳:LEVEL17〕 | |
変身が解けた頃には、もう群青錬邪は虫の息だった。このままじゃ死にそうな感じ。 記憶には無いけど、コイツとは結構因縁があったと聞く。なんだか感慨深い。 殺すのは簡単だけど、できれば人は殺したくない。なんとかできないものだろうか。 勇者「…どう?今後心を入れ替えると言うなら…治療してあげてもいいけど?」 盗子「ちょっ、なに言ってんのさバカ勇者!?敵なんだから放っとけばいいんだよ!」 群青「そうだ、放っとけ。俺の体は限界だ…げふっ! もう、助からねぇよ。」 姫「なんか寒いね。焼きイモ焼こか。」 盗子「アンタは放っとき過ぎだから!」 勇者「じゃあせめて、これ以上苦しまないように僕が介錯を…」 群青「ハハッ、ナメんなガキが!誰がテメェなんかの手にかかって死ぬかぁー!!」 勇者「なっ…!?」 |
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群青「げはぁああっ! ハァ、ぶっ! ヘッ、俺は死ぬ…だが覚えてろよ小僧!?」 勇者「!?」 群青「アジトには…いるぜ?俺なんか、足元にも及ばないほど…面白い奴らが…。」 盗子「面白いのかよ!普通こういう時は「怖ろしい奴ら」を紹介するもんだよね!?」 群青「ふ…ふふ…。できるなら次は…もうチョイ華やかな…色に……。」 |
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2-120:火葬〔12歳:LEVEL17〕 | |
ついに倒した群青錬邪。でもよくよく考えると結局は自滅だった気がしないでもない。 その後僕達は、倒れた黄錬邪と群青錬邪を弔うことにした。敵も味方も関係なく。 勇者「燃やしてやろう。せめて最後くらい、赤い炎を身に纏うがいいさ。」 盗子「アタシらがもっと早く着いてれば、黄錬邪は…。グスン。」 |
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姫「勇者君…。」 勇者「姫ちゃん…いや、悪いけどさすがにこの状況でイモを持ってこられても…。」 盗子「アンタ不謹慎だよ!てゆーか人と一緒に焼いたようなイモが食えるかー!」 姫「私じゃないよ。死んじゃってもね、お腹はすくと思うの。だから…」 盗子「姫…アンタ…。」 姫「だから…何?」 盗子「こっちが聞きたいよ!!」 ~数分後~ 勇者「じゃあ、そろそろ行こうか。先を急ごう。 二人とも、忘れ物は無い?」 盗&姫「うん!」 |
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外伝(弐)へ |
外伝(弐) |
外伝:勇者凱空Ⅱ〔1〕 | |
俺の名は凱空。初代「赤錬邪」として名を馳せた、現職「勇者」の12歳児だ。 仲間達と別れた俺は、天帝の使者に言われた通りタケブ大陸へとやって来た。 急がねば。「勇者」として、一刻も早く「魔王」の呪縛から人民を解き放たねば。 凱空「ほぉ、ここが「帝都:チュシン」か…。なんだか無駄に広いな…。」 |
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凱空「ダメだ、広い…広すぎる!このままじゃ助からん!俺は、どうすれば…!」 | |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔2〕 | |
「魔王」に襲われる前に「尿意」に襲われた俺は、慌ててトイレを探して回った。 事態は急を要する。一刻の猶予も許されない。少しのタイムロスさえも命取りだ。 よし、こうなったらズボンは先に下ろしておこう。これで少しは稼げるはずだ。 あとはもう、最悪トイレじゃなくても気にすまい。人にさえ見られなければいいのだ。 凱空「う、うぐぅ…おぉっ!奥にそれらしい部屋発見!」 バンッ!(扉) 少女「!!?」 凱空「!!!」 少女「・・・・・・・・。(着替え中)」 凱空「・・・・・・・・。(パンツ一丁)」 少女「・・・・・・・・。(硬直)」 凱空「・・・・・・・・。(凝視)」 フッ、彫像か…脅かしやがって。 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔3〕 | |
随分と洒落たトイレだなと思った奥の間は、なんと「皇女」の部屋だったらしい。 だが、気づくのが少々遅かった。我慢の限界で、既に用を足してしまった後なのだ。 皇女「きっ…キャアアアアアアア!だ、誰か!誰かぁーー!!」 凱空「む?呼んだか?」 皇女「アナタだけは呼んでませんの!!」 凱空「よく見るとかなり豪華な部屋だが…ここは何の部屋なんだ?」 皇女「許せませんの!「皇女」の部屋に無断で入り込むだなんて…!」 凱空「皇女?お前が皇女なのか?確か名前は…「皇子(こうこ)」だったか。」 皇子「し、しかも私の目の前で、お、お、おしっ…は、恥ずかしいですのー!」 凱空「大丈夫、俺は気にしてない。」 皇子「こっちが気にしてますのっ!」 凱空「俺の名は凱空。お前からの使者に呼ばれて来たんだが…。」 皇子「知りませんの!いいからとりあえずチャックを閉めてぇー!!」 バンッ!(扉) 兵士「ど、どうされましたか皇子様…ハッ!誰だ貴様は!?」 凱空「俺は凱空。チャックは全開だが一応客だ、心を込めて接客してくれ。」 兵士「…わかった、ついてこい。」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔4〕 | |
客間に通されるのかと思ったら、牢獄に入れられてしまった。気づくのが遅かった。 まったく…。俺は魔王を倒しに来たんだ、こんなことしてる暇は無いというのに…。 凱空「やれやれ、わざわざ赴いた客にこの扱いとは…。お前も酷いと思わんか?」 声「!! …ほぉ、私の気配に気づくとは…意外にもタダ者ではありませんな。」 凱空「お前は誰だ?いや、誰でもいい。とにかくここから出してくれ。」 老婆「私は皇子様専属の執事「洗馬巣(セバス)」。「セバスちゃん」で結構ですぞ。」 凱空「…甘栗?」 洗馬巣「あんまりです!確かにシワは多いですが、食べ物に間違うのはどうかと!」 凱空「まぁどうでもいい。まずは出してくれ。早くしないと魔王に滅ぼされるぞ?」 洗馬巣「ご安心を。魔王は現れはしましたが、今は「メジ大陸」に居ますゆえ。」 凱空「なに?だがその割には警備が厳重だぞ?蟻一匹通さないほどじゃないか。」 洗馬巣「ええ。それなのに平然と皇女の部屋まで辿り着いたアナタは何者ですか。」 凱空「魔王じゃないとすると…なんだ?何にそんなに怯える必要がある?」 洗馬巣「もう一つの脅威です。あの恐国…「魔国(まこく)」の王子が現れたのです。」 凱空「ま、魔国…?」 ~その頃、帝都護衛軍本部では…~ 兵士A「うぎぁあああああっ!!」 少年「・・・・・・・・。」 兵士B「き、貴様ぁ…!目的は何だ!?なぜこの国を襲う!?」 少年「…目的? フフッ、天帝の力を頂きます。逆らえば皆殺しですよ。」 兵士C「くっ…そんなことさせるかぁー!!ぐぁあああああっ!!」 少年「力が要るんですよ。私を…この「凶死」を越える力が。」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔5〕
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~皇女の部屋~ (「ぎぇええええええええっ!!」) (「うわっ、やめ…うわぁああああああっ!!」) 兵士「くっ、なんて奴だ!この扉が破られるのも、時間の問題か…!」 皇子「うぐっ、えぐっ。みんなが…みんなが死んじゃいますの…!」 兵士「皇子様、お逃げください!ここは私どもが食い止めますゆえ!」 皇子「イヤですの!皇女である私が、国民を置いて逃げるなんてできませんの!」 凱空「まったくだ。」 皇子「アナタはなんで逃げてこれてますの!?」 凱空「フッ、安心しろ。俺は肝心な時には居ない男だ。」 皇子「それはそれでイヤですの!アナタは何者!?目的は何ですの!?」 兵士「ハッ!さては…貴様も死神の手の者だな!?成敗してくれる!!」 凱空「なっ!?ま、待て!話せばわかる! 必殺、「話せばわかるぞキック」!!」 兵士「え゛っ…ばぼふっ!!」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔6〕 | |
危ないところで、なんとか兵士を退治できた俺。相変わらずのナイスタイミングだ。 凱空「キマッた…我ながら怖ろしいほどにキマッた…。」 皇子「ひ、酷すぎますの!なんでも暴力で解決しようなんて最っ低ですの!!」 凱空「まったくだ。」 皇子「アナタに言ってますのっ!!」 凱空「やれやれ。皇女は血統がいいと聞いていたが…とんだデマだったようだな。」 皇子「えっ…?」 |
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皇子「えっ?えっ?な、何がどうなりましたの…!?」 声「…へぇ~。まさか私の「幻魔術」を見破る人がいるとは…ねぇ。」 |
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皇子「あ、アナタ…アナタが死神ですのね!よくもみんなを…!!」 凶死「少々驚きましたよ、皇女。多少は頭のキレる傭兵もいたようですね。」 凱空「フッ、実はマグレだとは口が裂けても言えん状況だな。」 皇子「言っちゃってる!思いっきり言っちゃってますの!」 凶死「死に行く者に名を尋ねるもまた一興…。アナタの名は?」 凱空「俺か?俺は「勇者:凱空」。この世に、悪がある限り…!」 凶死「ある限り?ふふっ、まさかこの私を倒すとでも?」 凱空「特に何もしない。」 皇子「してほしいのっ!!」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔7〕 | |
気づいた時には背後にいた、謎の少年「凶死」。今までに会ったことのないタイプだ。 凱空「お前が「死神」?見るからに俺より若いようだが…。」 凶死「4歳ですが何か?まさか、無駄に歳だけとっていれば優れているとでも?」 凱空「いや、いくら俺でも本人を目の前に…なぁ?」 皇子「なんでこっちを見ますの!?同い年ぐらいの人に言われたくありませんの!」 凱空「で?コイツに何の用だ?嫁に貰いに来たにしては随分と荒っぽい登場だな。」 凶死「力を得るためですよ。「天帝」には不思議な力があると聞きましてね。」 皇子「ッ…!!」 凱空「なるほど、「不思議ちゃん」なのか。」 皇子「その言い方は違うと思うの!」 凶死「ところでアナタこそ何なんですか?皇女とは一体どういうご関係で?」 凱空「フッ、放尿シーンをも見せ合う仲だ。」 皇子「見せ合ってないのっ!!あ、アナタが勝手に見せただけですの!」 凱空「とにかくまぁ、乗りかかった船だ。好きにさせてやるわけにはいかんな。」 凶死「へぇ~…面白い冗談ですねぇ。」 凱空「さぁ来い。死神こそが、最も死に近いということを教えてやる。」 キマッた…今日もキマッたぜ…。 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔8〕 | |
キメ台詞も華麗にキマッた。ボロが出る前にさっさと決着をつけるとしようか。 凱空「最後だ。泣いて謝るチャンスを一度だけくれ。」 皇子「えっ!あげるのではなくて!?」 凶死「ふふふ、随分と強気な人だ。でも武器も持たずにどうするおつもりで?」 凱空「フッ、達人は得物を選ばん。お前ごときチビッ子相手なら、コレで十分だ。」 凶死「やれやれ、そんな燭台で私に挑むとは…無謀ですねっ!」 |
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皇子「きゃっ、きゃあああああ!頭が!頭がぁーー!?」 凱空「俺は「勇者」。基本的に何もしないが時々やり過ぎる。」 皇子「やり過ぎにも程がありますの!しかも何故そんなに冷静ですの!?」 凱空「さすがは死神だ、とっても斬新な技だな。」 皇子「技なはずは無いのっ!!」 |
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〔突風(とっぷう)〕 |
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魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32) 激しい風を巻き起こす魔法。街角で使うとミニスカートの女性にボコられる。 |
外伝:勇者凱空Ⅱ〔9〕 | |
強いのかと思えば、アッサリ一撃で砕けた凶死。少々腑に落ちんがまぁ気にすまい。 凱空「完璧だ…。これならいつでもプロの「スイカ割ラー」になれるな。」 皇子「そんな職業ありませんの!この人殺しぃー!!」 凱空「ん~、だがなんだか拍子抜けだな。 口ほどにも無さすぎて…ぶぼあっ!!」 |
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皇子「なっ、なんで!?なんでいきなり…ハッ!アナタは…!」 凶死「おや、「幻魔術」は初めてですか?口ほどにも無いのは彼の方でしたねぇ。」 皇子「そんな…! ゆ…勇者の人ー!お願いですの!戻ってきてぇー!!」 凶死「無駄ですよ。この高さから落ちたんです、恐らく即死でしょう。」 凱空「そりゃ可哀想に…。」 凶死「フッ、まぁ私に挑んだ時点で…って、えぇっ!?」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔10〕 | |
危ないところで、なんとか攻撃を回避した俺。初めて見る技だが今のが幻術か。 凶死「た、確かに命中したはず…。もしやアナタも幻魔術を…!?」 凱空「幻術?アレは「空蝉(うつせみ)の術」だ。俺は魔導士じゃないんでな。」 皇子「「勇者」が「忍術」使うのは問題無いの!?」 凶死「この私を騙すほどの忍術…よほどの師を持つと見える。」 凱空「フッ、「通信教育」だ。」 皇子「そんなのありますの!?」 凶死「…ふっ、あははは!参りましたね、どうやら私の勝てる相手ではないらしい。」 凱空「む?なんだ、諦めるのか?随分とアッサリ引き下がるじゃないか。」 凶死「別に無理して皇女を狙う必要は無いのです。私が欲しいのは「力」ですから。」 凱空「…なるほど。代わりに俺に力を貸せというわけだな?だが何のために?」 凶死「詳しい話はその時に…ではダメですか?」 凱空「ん~、まぁいいだろう。俺は細かいことと常識は気にしないタチだからな。」 凶死「助かります。逆に私の力が必要な時は、いつでもお貸ししますので。」 凱空「フッ、俺には必要無いさ。そうだなぁ…俺に子でも出来たら頼もうか。」 凶死「わかりました。その時は是非。」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔11〕 | |
凶死の降参により、事態は収束した。必要以上に空気の読める奴で助かった。 正直、コイツの真の実力は計り知れん。これ以上争うのは得策じゃないだろう。 凶死「では、私はそろそろ帰るとしましょう。幻術って意外と疲れるんですよね~。」 皇子「だ、ダメ!逃がさないの!みんなのカタキ…見逃せるわけありませんの!」 凶死「…ふぅ、この国では人を眠らせるだけで罪人ですか?乳母も大変ですねぇ。」 皇子「えっ!?眠らせ…って、じゃあ全てが幻術だったってことですの…?」 凱空「凶死よ、ちょっと待て。行く前に少しだけ聞きたいのだが…。」 凶死「メジ大陸の「魔王」について…ですね?」 凱空「お前は「王子」と聞いた。こと魔国の王子なれば、その情報は深かろう。」 凶死「名は「終(おわり)」。年の頃は15・6。それ以上の情報は、残念ながら…。」 凱空「…いや、十分だ。ありがとう。意外と役立たずだなんて全然思ってないぞ。」 凶死「な、なんだか凄く不本意ですが…今日は去ります。ではまた、「その時」に。」 |
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バンッ!(扉) 兵士「皇子様ー!ご無事ですかー!?…ハッ、貴様は…!」 皇子「私は大丈夫ですの! い、一応この方が…その…。」 凱空「俺は凱空。チャックは未だ全開だが一応客だ。心を込めて接客してくれ。」 兵士「…わかりました。ではコチラへ。」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔12〕
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帝都に着いて、半年が経過した。今は護衛軍で兵士達の訓練を監督している。 本来ならばすぐに旅立ちたいところなのだが、わけあって今は足踏み状態だ。 それに、ここの警備は貧弱すぎて放っておけない。俺が鍛え直してやらねば。 ~帝都護衛軍・訓練場~ 凱空「コラそこー!振りが甘い!そんなスピードじゃかすりもせんぞ!?」 兵士A「す、すみません!うぉおおおおおっ!」 凱空「あとお前もだ!そんな甘い守備で守りきれるとでも思っているのか!?」 兵士B「ハッ!申し訳ありません!」 凱空「今度の敵は強敵だ!みんな気を引き締めてかかれ!!」 兵士達「は、ハイッ!!」 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔13〕 | |
夕暮れ時、俺はこの世で最も高いという塔の頂上に来ることが多かった。 遠方より来たせいか、遙か遠くを眺めているだけで妙に心が安らぐからだ。 凱空「アイツらは、今頃どうしてるんだろうか…。」 声「ガ~イク♪ またここに居たのね。そんなにこの塔が気に入ったの?」 凱空「…皇子か。この場所は他の何よりも高い。友のいる島すら見えそうでな。」 皇子「そう…。 あ、ところでどうですの?兵士達は順調に強くなってる?」 凱空「フッ、安心しろ。みんなだいぶ飲めるようになったぞ。」 皇子「何を強くしてるの!?お酒なんか鍛えても意味ないの!」 凱空「それより何しに来たんだ?こんな街外れ、皇女が来るような場所じゃないぞ。」 皇子「べ、べべ別に意味なんか無いの!ちょ、ちょっと空が見たくなっただけなの!」 凱空「む?どうした、なんだか顔が赤いが…収穫時期か?」 皇子「リンゴじゃないの!! …あ、そうそう!大事なお知らせがあったの!」 凱空「悪いがもうじき戻らねばならん。用があるなら早めに済ませてくれ。」 皇子「あ、うん。あのね、来月にね、「武術会」があるの。で、凱空…出てみない?」 凱空「武術会か…まぁ賞品にもよるな。俺は堂々と金品に目が眩むタイプだ。」 皇子「しょ、賞品は!その!いいと思うの!きっと凱空も気に入るの!だから…!」 凱空「よし、ならば出よう。俺の参加を手配しておけ。」 皇子「あ…うんっ☆」 金か装備か…どちらにしろ腕が鳴るぜ。 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔14〕 | |
一ヶ月が経ち、皇子の言っていた武術会が明日に迫った夜。事態に動きがあった。 コンコン(ノック) 声「凱空様、大事なお話がございます。洗馬巣と二人、よろしいでしょうか?」 凱空「む?その声は…あの時の使者か?ということは…よし、入れ。」 ガチャ(開) 紳士「お察しの通りです。「魔王」に関する謎、重要なものが幾つかわかりました。」 凱空「そうか、よくやった。で、状況はどんな感じだ?」 紳士「最悪です。古代神…「魔神:マオ」が憑いているという説が浮上しました。」 凱空「神…だと?なんだその偉そうな存在は?生意気な!」 洗馬巣「およそ五百年前…大戦の末、海に封印された伝説の化け物です。」 凱空「神…大戦…。初めて聞く話だが、入手元はどこだ?」 洗馬巣「私の思い出です。」 凱空「何歳なんだ!?お前も立派な化け物じゃないか!」 洗馬巣「私も異星の出身ゆえ、他の方よりほんの少しだけ長生きなのですよ。」 凱空「だが何故だ?その神とやらは封印されたんだろ?」 洗馬巣「ええ、確かに「肉体」は。ですが奴は、直前に「精神」を切り離したのです。」 紳士「まだ調査の段階ですが、恐らくは「転魂の実」の能力かと。」 |
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凱空「真の敵は精神体か…厄介だな。魔導士の力が要るが、見つかったか?」 紳士「東へ向かってください。「大賢者:無印(むいん)」がアナタを待っています。」 東か…。長い旅に、なりそうだ。 |
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外伝:勇者凱空Ⅱ〔15〕 | |
武術会当日。だが俺は参加するつもりは無かった。状況が変わったからだ。 魔王の正体が掴めた以上、グズグズしてはいられない。すぐにでも旅立たねば。 コンコン(ノック) 皇子「…どなた?少し待って、いま着替え中で…」 凱空「わかった、終わるまで見てる。」 皇子「ってキャアアアアア!なんで既に中に居ますの!?今のノックの意味は!?」 凱空「お別れを言いに来た。急な話だが、旅立つことになったんでな。」 皇子「えっ…ど、どういうこと…? ハッ!まさかアナタ「魔王」と…!」 凱空「ああ、デートの約束があるんだ。」 皇子「下手な言い訳にも程があるの!バカにしないでほしいの!」 凱空「探させてた有能な仲間も見つかった。これ以上の足踏みは世界が危険だ。」 皇子「だ…ダメ!だって今日は武術会の日だもの!今日だけは絶対にダメなの!」 凱空「悪いな。だが他の奴らも頑張る、俺がいなくても十分に楽し…」 皇子「ダメなの!だって…だって私、優勝者と結婚することになってるのっ!!」 凱空「なっ…!?」 皇子「私、凱空が好き!凱空以外の人と結婚するなんてイヤなの!だから…!」 凱空「…言ったろ?俺は「肝心な時には居ない男」だと。」 皇子「えっ…。」 凱空「俺は「勇者」だ。進むは茨の道…俺の地図に「恋路」という道は無い。」 皇子「そ、そんな…!イヤ!イヤなの!行かないでぇ!!」 凱空「泣くな皇子。お前はもっと優しい男と結婚し、元気な子を産め。 サラバだ!」 皇子「凱空ぅーー! いやぁああああああ!!」 すまん、皇子…!! |
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皇子「うぐっ、えぐっ。バカ…凱空のバカ…! ここ、30階…。」 凱空「うぉおおああああああああっ!!?」 |
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