私のこの約20年近くの記憶は非常に曖昧で不確かで、場合によってはスッポリ抜け落ちている。原因はいくつかると思う。時期的にそれまで書いていた日記を書くのをやめたこととパソコンを始めたことがある。それにもちろん加齢である。たとえば、私にとっての命綱である薬を飲んだかどうかまるで覚えていないので、毎日一日分の薬を並べて置いておき、そして飲んだ薬のカラはその日が終わるまで絶対に捨てない。そして毎晩寝る前に翌日の分を並べておく。ものを片づけられないうえにどこに置いたかすぐに忘れてしまうのですでに持っているものを何度も買ったりする。そのようなことの繰り返しである。薬の例でもわかるように、このような記憶障害は少し大げさに言えば命にさえ関わり、記憶力の良い人と比べれば金銭的にも非常に不利であろうと思う。金銭的なことはともかく命に関わるとなると笑いごとでは済まないのだ。日常のことで言えばたとえば今日が何月何日の何曜日かなんて、コンピュータの電源を入れないと分らないし、湾岸戦争とイラク戦争とアフガニスタンで何かあったのがいつ頃の出来事なのかっさっぱり分らない。この文章に書こうと思ったこともすぐに忘れてしまう。主治医にももうずっと昔に相談したのだが、医者は忙しいし、医者の前で何を相談すべきだったかも忘れてしまうのでやはり笑いごとで済まされてしまった。記憶障害というのはそのように怖い病気である。