拓也、危機一髪!

 

「さやかは男としたくないの、わかっているくせに」さやかはプーさんをアンナに投げつける。「さやかったら!こうなったら、アメリカ本国行きの旅費と種の購入代、出すとすっか。それだったら、文句ないでしょ」アンナは喉を鳴らして缶ビールを飲む。「アメリカ本国ね~、チョット待ってよ。気持ちの整理がつかないわ」両手を頭の上に置いたさやかはベッドに戻り腰掛ける。

 

「精子バンクは、世界中から優秀な精子を集めているって。しかも、プロフィールつきだから、自分の気に入った種が買えるらしいよ」アンナは雑誌に書いてあったことを思い出して言った。「ほんとーに、お金出してくれるんでしょうね」さやかはその気になってきた。「嘘を言うと思う、さやかったら」アンナはさやかの気持ちが動いたのを察して笑顔をつくった。「わかったわ!拓也の種、もらっていいわ」さやかはアンナの後に引かない強情さに負けた。

 

「いいわって言われても、拓也が簡単にくれるはずないと思うのよね。さやかも、そう思うでしょ」アンナの悲壮な顔。「そうよ、やっぱし無理よ。あきらめたら」さやかは冷たく返事すると読みさしの本を開いた。「あきらめないからね、必ずゲットするから」鋭い目つきでビールをグイっと飲む。「どうやってゲットすると言うの、拓也の性格わかっているでしょ」さやかもビールの缶を開ける。
 

「拓也も男だし、魔がさすってことも・・」アンナは自分のバク乳とエロに自信を持っている。「確かに、それは言えるわね。アンナのバク乳とエロで誘惑すれば、もしかして、ゲットできるかもね!」さやかはやけくそ。「それじゃ、どうやって誘惑するかだな。第一、アンナとなんかデートしないし~。誘惑しようがないか!」アンナは商売道具のバク乳を持ち上げてじっと見つめた。さやかはバク乳を見るたびにムカつくが、この際、このバク乳を使ったお芝居を考え始めた。

 

「そこを考えるのよ、まず、アンナと拓也が二人っきりになることができなければ、無理でしょ」さやかはシェークスピアになっている。「そうそう、さやか、さえてるじゃん。それで」アンナは子供のように大きく頷く。「まず、アンナを大金持ちのお嬢さんに仕立て上げるの」さやかはいつもの妄想に入り込んでしまった。「それは無理よ、中学校もまともに行ってないのに」アンナはお嬢様が大嫌いだった。

 

「大丈夫だって。アンナは妾の子で、本当の父親は大金持ちということにするの」さやかの作り話が始まった。「なるほど、それで」アンナはその気になってしまった。「病弱な母親を助けるために、高校卒業後はSデパートで働いていることにする。どう~?」さやかはシナリオに酔っている。「いいけど、今やっていること聞いたら、気絶するかも」あまりにも現実離れした話にあきれている。

「アンナはさやかのシナリオ通りにやればいいの」さやかは先生のような口調で言う。「わかったよ」アンナは両手を両膝の上に置いてまじめな顔。「それで、実の父親が罪滅ぼしに面倒を見てくれることになったことにする。だから、靴も、服も、持ち物すべて上品なものに替えてしまうの。いい、これからが勝負よ。お父様の別荘が軽井沢にあるのね、そこに三人で遊びに行くの」さやかの目が輝いている。

 

「別荘なんか、どこにあるのよ」アンナの目が飛び出してきた。「心当たりがあるのよ」さやかはにんまり笑う。「そうなんですか。それで」アンナは今まで話した事がないような丁寧な口調で、相づちを打つ。「ぜひ、有名な先生に使っていただきたいと、お父様が申しておりますと、さやかが拓也に言う」さやかは自分の出番に心がウキウキ。「やってみましょうか、それで」アンナはさやかの肩をギュッと抱きしめる。

 

「うまいこと言って、拓也を別荘に連れて行く。夕食後、最高級のブランディーを飲みながら絵の話を持ちかける。ほら、拓也って印象派の絵の話が好きでしょう。話しているうちに、飲みすぎると思うのよ。そこで、酔い始めたら、さやかが急に吐き気を催して部屋を飛び出していく。後は、アンナの出番って言うわけ。すばやく、浴衣を脱ぐ、男を虜にする甘いローズの香水、揺れるバク乳、鼻血が飛び出すような赤のTバック、そこで、優しく介抱しながらギュッと抱きしめる。拓也は酔っているから、アンナの肌に触れればきっと手が出ると思うの、どうかしら?」自信満々のさやか。「おもしろそうね、やってみますか!」バク乳でさやかの顔をはさむ。

 

 
 

 拓也の正夢  

 

赤のTバックビキニのアンナ

ピンクのフレアスカート水着のさやか

コーヒーカップに乗ったさやか、アンナ、裸の拓也たち

ジェットコースターを見下ろしながら

風を切って青空を飛ぶ

 

「タクヤってば!彼女いないの?つき合っている人いないの?」アンナがいつもの調子で機関銃を向けた。「いない」あわててあそこを隠して答える拓也。「大変ね!」アンナが笑う。「別に」とあっちを向く。「男の人って、溜まるんでしょ、うふふ・・」アンナは拓也のあそこを覗く。「一人でやってるよ」拓也が冗談を言うと、「あらま、寂しくない?」アンナはまた、あそこを覗く。

 

「アンナさん、結婚はどうですか?」と訊ねると「年金ホームに入ったころにでもね」笑いたくても笑えない返事。「子供はほしくないの?」とアンナに訊ねたところ、「ほしいよ」と言うので「すぐに、結婚しなさい」と父親のような一言。「子供はほしいけど、男はほしくない!」と理解に苦しむことを言うので、「アメリカ本国に行けば、自分の好きな種が買えるらしいよ」と冗談のパンチ。

春日信彦
作家:春日信彦
拓也、危機一髪!
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