拓也、危機一髪!

 

 拓也の正夢  

 

赤のTバックビキニのアンナ

ピンクのフレアスカート水着のさやか

コーヒーカップに乗ったさやか、アンナ、裸の拓也たち

ジェットコースターを見下ろしながら

風を切って青空を飛ぶ

 

「タクヤってば!彼女いないの?つき合っている人いないの?」アンナがいつもの調子で機関銃を向けた。「いない」あわててあそこを隠して答える拓也。「大変ね!」アンナが笑う。「別に」とあっちを向く。「男の人って、溜まるんでしょ、うふふ・・」アンナは拓也のあそこを覗く。「一人でやってるよ」拓也が冗談を言うと、「あらま、寂しくない?」アンナはまた、あそこを覗く。

 

「アンナさん、結婚はどうですか?」と訊ねると「年金ホームに入ったころにでもね」笑いたくても笑えない返事。「子供はほしくないの?」とアンナに訊ねたところ、「ほしいよ」と言うので「すぐに、結婚しなさい」と父親のような一言。「子供はほしいけど、男はほしくない!」と理解に苦しむことを言うので、「アメリカ本国に行けば、自分の好きな種が買えるらしいよ」と冗談のパンチ。

 

「種は買いたいけれど、日本人のも売っているの?」アンナはマジに言う。あきれた拓也は「当然だよ」といいかげんな事を言う。「今、ほしい種があるんだけど」とアンナは拓也のあそこをじっと見つめる。「だったら、買いに行けばいいじゃないか」と言ったところ、「まだ売ってないのよ!」笑って叫ぶ。「早く発売されるといいね」と拓也が無責任なことを言ったところ、「発売はムリみたい」とアンナの悲しそうな顔。

 

「だったら、あきらめる以外ないね」と意地悪を言う。「子供はかわいいね、アンナ、産みなさい。応援するから」突然、わけのわからない援護射撃をするさやか。「お願いすれば、売ってくれるかも?」異様な笑顔を発射するアンナ。「買うことばかり考えずに、恋をしなよ」ともっともらしいことを言うと、「恋も、愛もいらないの」とアンナのしらけた返事。「それじゃ、永久に種は手に入らないな」と男の意見を言ったところ、「心当たりがあるの!」また、アンナは拓也のあそこをじっと見つめる。

 

「どこだ?」真っ白い部屋。眼鏡のせいか?いや・・・とにかく白の空間。「いったい、誰のいたずらだ」僕も真っ白。「え!」真っ裸。「これは許されん。おーい!出て来い、いたずらっ子。おーい!」声までも真っ白。あんなところに人の白い線が浮いている。動くぞ。男か?女か?あれは見知らぬ男。他にはいないのか?「あいたた!」しりもちついたじゃないか、と言うことは僕も浮いていたわけだ。

 

 

まあ、いいや、だれかいるだろう」廊下に出て、隣の部屋をノックする。「どうぞ」女の声。「失礼」ほんの少し開けて、中を覗き込む。「コンチワ」ドアを大きく開ける。「お!真黄色!」あたりを見渡すと、部屋の真ん中に白いベッドが一つ。「どういうことだ」ベッドに三歩近づくと、ベッドが三歩遠ざかる。「あれ!」いつの間にか、黄色の自分が白いベッドに大の字になって寝ている。

 

しかも、ベッドに両手両足が縛られている。「どうしたんだ?」自分の声が聞こえない。急いで指を耳の中に突っ込む。「え、まさか!」ベッドの横にアンナそっくりの女。「アンナか?」大声で叫ぶ。まったく自分の声が聞こえない。ベッドに寝ている黄色い自分が何か叫んでいるが、まったく声は聞こえない。アンナらしき女がじっと黄色い自分のあそこを見つめている。女はにやりと笑うとそそり立った黄色い棒をぎゅっと両手で握り締めた。

 

 

 拓也、危機一髪

 

今日は別荘に行く約束の日である。足は重たいが開き直って出かけることにした。タクシーを拾うとさやかたちのマンションに向かった。ドアの前に立つとなぜか気分は晴れていた。インターホンに指を置き、すぐにノブを回すと鍵は解除されていた。ドアを開けると甲高いかわいい声が拓也の耳に飛び込んできた。さやかは異常にウキウキしている。「拓也、今日は小雨みたい。だけど、大雨にはならないそうよ。良かったわ」今まで見せたことのない異様な笑顔を拓也にぶつけた。

 

「タクシーがもう来るわ、降りましょう」さやかは拓也をせきたてた。タクシーに乗ると、後ろの二人は拓也の興味を無視した新人AV女優の話題で休むことなくさえずっていた。拓也は印象派の絵が飾られていると言う別荘のことを考えていると、いつの間にか眠ってしまった。「あそこね、あそこの大きな和風の建物。運転手さん、そこで降ろして。拓也、着いたわよ」さやかはカードで支払うと現金でチップを渡した。

 

三人は車を降りると、旅館のように大きな建物に足がすくんだ。「デカイ、あ、大きいわね」アンナは丁寧な言葉に言い換えた。つつじを両袖にした約50メートルはある道の先に、小さな冠木門が見えた。建物を護衛するように周りを取り囲んだ白い壁を眺めながらしばらく歩いて行くと、桂小五郎と書かれた高級な表札が冠木門の脇にあった。「お父様は、桂小五郎さんと言うんだね」拓也は歴史に出てくる名前と同じ事に気づき小さく頷いた。

 

春日信彦
作家:春日信彦
拓也、危機一髪!
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