七、
「君は真面目過ぎるのだ」とカラスは言う。渡りは真面目ではないのだろうか。
ともあれ、冬の間カムチャツカから降りてくるワタリガラスのカラスは、いつでも立ち入り禁止の屋上で私を待っていてくれたので、それだけでも満足だったし、真面目か否かは特段問題ではなかった。へちゃむくれの私だけが知っている、世界最大の烏。その化身。化身なのだろうか。
「化身ではないよ」
「では、例えばです。カラスはこの場で鳥の姿に変わるのですか」
「それは出来るが、恥ずかしいからしない。同性とは言え、友人の前で裸になるような真似はご免なのだ」