これから書くことは大事なことなので、勘違いから取返しがつき難い事態にならないように、ここで伝えたい。それは年金に係わる知らないとエライことになり得る話。
50歳を超えると年金見込み額がキチンと端数なしで印刷された「ねんきん定期便」が届く。それ以前の年齢でもときどき郵送されてくる。『俺の年金受取額はけっこう多いな』ほくそ笑む俺、しかし危うく俺はその印刷された額に心踊らされて、誤解したまま退職へ向かうところだった。今思い出しても恐ろしい「年金受取額の勘違い」をするところだった。
それは俺の46歳第一回会社退職のときだった。
俺は会社を自己都合退職した。しかもその先の勤め口が決まらないまま会社を飛び出した。一応退職後の生活はなんとかなるつもり。少し前に見た「ねんきん定期便」に印刷されていた数字を頼りにすれば苦しいけど老後は何とか生き延びられそう。そんな気がした。
俺は安心して家族に「俺の退職」を宣言したけど、家族へ与えたショックはものすごくてさすがに俺も気持ちも萎えてしまった。この気分の萎えが功を奏したのか、俺は奮起して転職したから偶然にも難を逃れたものの、もしあのままねんきん定期便に書かれた数字に期待を寄せて就職を遅らせていたなら恐怖は現実になっていただろう。そのワケは、このときのねんきん定期便に書いてあった数字は、会社を勤め続けたら受け取れる額。決してその額が確保されたわけではありません。コレたいへん重要デス。
そんな大事なこと知らなかったから、次に郵送されて来たねんきん定期便の新たな数字を見て俺は絶対に青冷めたことは間違いない。まさに間一髪、家族の厳しい目に促され、第一回目退職でそのまんまリタイアの道に突っ走らなくてほんとによかったと胸なでおろす俺だった。
この話のからくりをもう一度整理して書くとこうなる。
ねんきん定期便に書いてある年金見込み額は、それが作成された時点で年金機構が認識している俺の年収がそのまんま60歳到達まで「続いた」として機械的に計算された数字なのだ。
年金機構は個人の今後の収入は想像もつかない。でも巷の人は自分の将来いくら年金受け取るのか知りたいだろうし、巷の多くの人は60歳ぐらいまではだいたい勤めを続けるだろうから、ほぼ今までと同じとして機械的に計算しても当たらずと言え遠からずの見込み額になる。
しかし俺は今まで稼いでいた会社を辞め、それ以降アテの無いふうてん暮らしになる気分が当時あった。もしその道を進めば収入なんてあっても少しだろう。すると次回のねんきん定期便で年金機構が計算する新しい収入データは低く変わってしまうから、当然新しい年金受取見込み額は激減する。この理屈を俺は転職した後に知ったから救われた。
第二回目のリストラ退職では、もはやねんきん定期便の数字をアテにせず、地元の年金事務所に直接駆け込み、目の前で今後の収入がゼロになった場合の見込み額を計算してもらった。退職や転職で収入が大きく落ちた場合、年金見込み額はガクッと落ちのが実際だ。
年金というものは会社に勤めている間はそれなりに増えるけど、いくら稼いでも上限がそんなに高いわけではない。しかも会社を辞めると収入無いのに国民年金は60歳が来るまで夫婦二人前払わなければならない。しかも受取額は60歳まで勤続した場合よりガクッと減る。さらに会社員は年金についてほとんど知識を得る興味も機会も乏しい。だからほとんどの会社員は年金の仕組みを知らないらしい。
そこへ「ねんきん定期便」という頼もしいご連絡が郵送されて来れば、ひょっとして「俺今からでもアーリーリタイアで南国の浜辺でビール片手に昼寝暮らしできるんじゃね!」と踊る人も出るかもだけど、それは勘違いだ。定年退職でもそれ以前の早期退職でも、再就職予定であっても辞める前に地元の年金事務所で今後の収入見込みを話してその場で見込み額の計算しなおしをお願いすることを俺は推奨する。