小説の未来(22)

 以前にも述べましたが、存在の論理を簡単に言えば、表を認識した時、”同時に”、裏が存在する。作用と”同時に”反作用が存在する。有限は無限を内包し、同時に、無限は有限を内包する。この「同時に」という点が重要なのです。

 

 

 当然、喜怒哀楽にも「存在の論理」が内在します。だから、小説家は、作品を創造し続けるのです。小説家は、科学者ではありません。単なる、芸術家です。だから、実用性のある理論は展開しません。

 

 

 では、小説家は、何をやっているかというと、だれにも存在する”心における存在の論理”を、読者にわかりやすく、架空の世界を通して表現しているのです。ミステリー小説や恋愛小説は、典型的な作品なのです。

 

             AI小説家

 

 小説に”吾輩は猫である”がありますが、これは、だれが書いたのでしょうあか?天才猫が書いたのでしょうか?猫を取材した夏目漱石が書いたのでしょうか?夏目漱石を名乗った幽霊が書いたのでしょうか?

 

 

 おそらく、夏目漱石自身が書いたのでしょうが、彼は、喜怒哀楽のある人間です。小説は、人間が書くものなのです。これは、疑う余地がありません。でも、小説は、AIでも書くことができるのです。

 

 

 では、人間が書いた小説とAIが書いた小説は、どのように違うのでしょうか?AIが書く小説は、技術的な組み合わせで行います。喜怒哀楽の因果律を基に、小説家が創作した文を組み合わせるのです。

 

 いわば、高度な盗作ということです。だからと言って、人間の小説に劣るということではありません。むしろ、人間以上の小説を書くと言っても過言ではありません。

 

 

 それでは、人間小説家は必要ないということになりますが、そうとはならないのです。そこで、人間とAIの本質的な違いを今一度検証してみましょう。人間の言語中枢は、記号関数と非記号関数からなっています。一方、AIは、記号関数のみからできています。

 

 

 無限の創造が可能といわれるAIですが、あくまでも、人が与えた記号関数の世界での話です。例えば、AI将棋は、瞬時に無限の組み合わせができます。だから、プロ棋士にも勝てるのです。

 AIが人より優秀であるためには、ある条件が必要となります。将棋の例でいえば、将棋の”不変のルール”です。将棋のように、ルールが不変の場合、AIは人間よりはるかに優秀なのです。

 

 一方、人間には、非記号関数というものがあるのです。これは、概念と言っていいかもしれません。この非記号関数が、新たな記号関数を創造していくのです。言い換えれば、新たなルールを作り出していくのです。

 

 

 簡潔に言えば、人間は、新たなルールを作り、そのルールに基づいた創造ができます。一方、AIは、与えられたルールに基づいた創造はできますが、独自にルールを作り出し、そのルールに基づいた創造はできないということです。

 

春日信彦
作家:春日信彦
小説の未来(22)
0
  • 0円
  • ダウンロード

8 / 13

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • もくじ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント