小説の未来(22)

 いわば、高度な盗作ということです。だからと言って、人間の小説に劣るということではありません。むしろ、人間以上の小説を書くと言っても過言ではありません。

 

 

 それでは、人間小説家は必要ないということになりますが、そうとはならないのです。そこで、人間とAIの本質的な違いを今一度検証してみましょう。人間の言語中枢は、記号関数と非記号関数からなっています。一方、AIは、記号関数のみからできています。

 

 

 無限の創造が可能といわれるAIですが、あくまでも、人が与えた記号関数の世界での話です。例えば、AI将棋は、瞬時に無限の組み合わせができます。だから、プロ棋士にも勝てるのです。

 AIが人より優秀であるためには、ある条件が必要となります。将棋の例でいえば、将棋の”不変のルール”です。将棋のように、ルールが不変の場合、AIは人間よりはるかに優秀なのです。

 

 一方、人間には、非記号関数というものがあるのです。これは、概念と言っていいかもしれません。この非記号関数が、新たな記号関数を創造していくのです。言い換えれば、新たなルールを作り出していくのです。

 

 

 簡潔に言えば、人間は、新たなルールを作り、そのルールに基づいた創造ができます。一方、AIは、与えられたルールに基づいた創造はできますが、独自にルールを作り出し、そのルールに基づいた創造はできないということです。

 

              共生

 

 人間小説家には、今までにない新たなルールを作り出し、奇想天外な小説を書くことができるのです。だから、AIが高度に進化して、人間よりも優秀な小説を書いても、人間の独創性の価値は存在するのです。

 

 

 将棋のように、一定のルールに基づいた創造では、人間はAIにかないません。でも、そのルールを作り出したのは、人間なのです。だから、今後、AIの優秀さを人間がいかに利用していくかが大切になっていくのではないでしょうか?

 

 

 小説にも同じことがいえるように思えます。今後、AI小説家が、人間小説家を凌駕していけば、人間小説家は不要になっていきます。でも、人間小説家は、今までにない新しいルールを考え出し、奇想天外な創造ができるのです。

 新しいルール、新しい記号関数、を創造するのは、人間です。AIに頼る社会になっても、人間の独創性を発揮し、AIを進化さ、共生していけば、よいのではないでしょうか?

 

 

 人間小説家は、AI小説家を良きライバルとして、切磋琢磨し、奇想天外な作品を創造して、人間の創造価値を高めていけばいいと思います。そういう意味で、人間小説家は、生き残っていけるでしょう。

 

春日信彦
作家:春日信彦
小説の未来(22)
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