小説の未来(20)

             人生に不可欠な娯楽

 

 人は生まれながらに娯楽を求めて生きていきます。つまり、欲を満たすこと、苦しみをいやすこと、が娯楽です。赤ちゃんは命をつなぐために目が見えなくとも嗅覚を使って母乳を必死になって求めます。そして、乳首を発見すると、チュ~、チュ~、チュ~とお乳を吸います。これも、娯楽行為の一つなのです。

 

 大人になれば、毎日の生活苦からくる精神的苦痛をいやすためにいろんな娯楽を求めていきます。言語中枢が発達した人間は、人類誕生以来、動物では作り出せない娯楽を膨大な数ほど作り出してきました。

 

 まだ、原始的な生活をしていた人々でも、日々娯楽を求めていました。気に食わない人がいれば、イジメたり、喧嘩したり、同志を募り集団暴行をして快楽を得ていました。

 

 徐々に、人間集団が拡大すると、大王が誕生し、奴隷制が発展していきますが、それに伴い、奴隷の苦痛は増大し、権力者に対する不満が増大していきました。そのころ、特に言語中枢が発達した人々は、創造主、神を中心とした宗教を創造しました。

 

 文字言語を持たない奴隷たちでしたが、神のお告げを音声言語で感情に訴えかけられた奴隷たちは、次第に、神のお告げを信じていくようになっていきました。

 

 この宗教は、奴隷の統治にはとても都合がいいものでした。創造主、神のお告げは、”現世の苦しみに耐えることができれば、死後は天国で幸せな暮らしができる、また、生まれ変わったときたときは、奴隷から解放される”というものでした。

 

 

 大王は、奴隷たちに宗教を広め、奴隷たちの苦痛を救っていきました。そして、大王は神の使者であることを認めさせていきました。次第に、奴隷たちは、大王を神と崇め奉るようになっていきました。

 

 文字言語が発達し、体系化された宗教の経典が創られると、世界的に宗教は奴隷統治のための最強の道具として利用されるようになりました。そして、奴隷にとって不可欠となった宗教娯楽は、現代にいたっても、日常生活に浸透し存続しているのです。

 

 宗教娯楽は不可欠な娯楽なのですが、科学が進歩していくと、次から次に宗教以上の娯楽が作り出されていきました。言語は、ついに、最強の娯楽アイテムといえる”お金”を作り出しました。

 

 お金は、記号に過ぎなかったのですが、高知能者たちは、奴隷にわかりやすくするために、貨幣を作ってあげました。奴隷たちは、偶像崇拝するがごとく貨幣を神以上に崇拝するようになっていきました。

 

 貨幣は、一部の奴隷たちの生活を豊かにしていきましたが、一方、多くの奴隷たちを苦しめる悪魔になっていきました。というのは、マネーゲーム娯楽は高知能者に有利なゲームだったからです。高知能者は勝者となり、低知能者は敗者となっていきました。

 

 

 

春日信彦
作家:春日信彦
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