シンシア

シンシア -6p-

 すると机上からブロック式(本物みたいな色付け)模型図が血塗られた、腐ったパラボラアンテナと共に上がってきた。

 志向センターポールが、ニースリーの建物に成っていた。
 ニースリーのHPが現れ、そしてパソコンに魔力が強制ダウンロードされた。

 好奇心旺盛な岡部美雪は、十一階で蝶の光に誘われて美術展に足を運んでいた。
 外とは、別世界で暖かく、時計が無く、心が落ち着くベージュと薄緑が使われている部屋だった。

 展内は、『モナリザ』や3D映像の宙に浮いた『自由の女神』やホログラフの『ラピュタ』『ネコバス』が浮遊していて芸術の枠を越えた世界だった。

「へー、たまには、いいものねっ、豪雨の時の雨宿りって。 私の為の貸し切り・・・ほほほほっ」
 シルバーフレームの眼鏡にモデルのプロポーション、美人家庭教師タイプの子だった。

 濃紺制服にスカートの美雪がある空間に目を止めた。
「あれっ、な〜に!?」
 床の一部が光ったのだった。
 気に成って、部屋の中央を確かめに歩み寄った。

 床には、一平方センチメートル位のダイヤの絵が描かれていた。
 興味深げに両膝を曲げ、右腕を伸ばし、人差し指の先で絵を触ってみた。
 すると虹の光が小さく広がり、三平方センチの絵に変わった。

「うわーっ」 小さな声を出し、驚いて目を見開いた。 笑みを浮かべた。 少女に成っていた。
 再度触れてみると、五センチのダイヤの絵に成り、ぼんやりと立体化し、フィルム状に。

『アラジンと魔法のランプ』のように舞い上がる。 踊る、ほほにキス、額にもキスをした。
 美雪は、目をつむり陶酔した。 心を許したのだった。
 フィルムは、一瞬にして黒光し、襲いかかった。
 シューシューと音を立てて口や鼻、体、足に幾重にも巻き付き、締め付けた。 ピクピクッ、ピクピクッと小刻みに動く。

 しかし、抵抗むなしく目がひっくり返った・・・。
 数秒で窒息死させられたのだった。
 床からプレートが上がってきた。
 タイトルは、『救いを求める人』
 横たわって右腕を伸ばし、手を開いている体勢の美雪だった。

 磨光ルージュは、アメリカの父と日本の母を持つクォーター(1/4)だった。
 功夫(クンフー)は、伯父さん(おじ)から教わっていた。
 身に付いたクンフーは、怪物達を次から次へと蹴り、殴り、倒し、消滅させていった。

 ある時は、ブルース・リー「アチョーオッ」、またある時は、ジャッキー・チェン「ハハァーッ、ハイハイッ、ハーッ」、またある時は、ジェット・リー「フッ、フー、フンッ」、と俳優のように多彩な技を繰り広げていた。

「さー、来い来いっ。 このキョンシーヤロー」 調子ついてもいた。
 血や肉、筋肉が躍動する。
 しかし、知らず知らずのうちに、腐死人は、いなく成っていた。 身構える。

「う〜ん。 ちぇっ、この程度か。 お前ら、この俺をおいて、いい気に成るなよっ。 フンッ」
 服やズボンの汚れを払い、ドアの方へ歩き始めた。

 強気な言葉を吐き捨て、部屋を出ようとした時だった。
「ね〜、まだ遊ぼうよっ。 貴方 強い奴 好きっ!?」 後ろから女の声がした。
 振り向くとチャイニーズルックの美女が立っていた。  
 思わず胸の谷間と腰まで切れたスリットに目がいく。

シンシア -7p-

魔口には、二匹ずつ植物型ゾンビが入っていて胴から上が外界に出ていた。
息つく暇も与えず六体がルージュに攻撃し続ける。 防御し、汗をかき、後退りをするしかなかった。
 左背中を切り裂く、左中指と小指を噛まれ、引きちぎられた。
 「うっ」
 左腕と右足をつかまれ、左側の首を噛まれた。
 「ゲ〜ッ、あアあアッ・・・」
綱引きされた。  叫ぶ暇を与えず胴体が真っ二つに引き裂かれた。
 グッシャキュ〜、プツ。  鈍く、変な、小さな音がする。
 口から血を吐き、即死させられた。 気が遠く成っていく。

「小バカにするからバチが当たるのよっ。 あ~あっ、床を汚しちゃって~。  フフッ」 ス~。
血が床に吸われ綺麗に無くなった。 
 可愛らしく美女は、首を傾けて微笑んでいた。 唇を右中指で拭く。

 ヤクザのやり手の若頭 早乙女 武士は、タバコをふかし、右手に銃を持って相手に向けていた。
「おい、そこに居るのは、判って居るんだよ。 早く出て来いよ。 関谷さん」
 落ちついた声に対して、落ちついた態度で ゆっくりと廊下から部屋の中央へ歩いて行く関谷 涼次刑事 二十七歳 だった。

「両手をゆっくりと上げて出て来いよ。 下手なマネをすると死ぬ事に成るよ・・・・・」
「・・・よっ、お久しぶり・・・」
「フフッ・・・」
「まっ、何を考えているのか判らないが、周りを見ても誰もいないし、俺を殺す事も出来るし」
「フフッ、面白いね〜」
「俺にも一服させてくれよ・・・ナッ」
「フフッ、いいだろう。 でも、ゆっくり動けよっ」

 両手でタバコとオイルライターを取り出し、一本取り 火をつけた。
「相変わらず、オイルの香りを楽しんでいるのか〜・・・フ〜、美味いね〜」
 互いに目を合わせて微笑んだ。

 「最後のは、美味いか」 改めて銃を構えた。
 キンキンッ、ブルブルブルー。 タバコの先が床に落ちる。 カンカラカン〜・・・・・・!?
 銃口の先も床に落ちた。 二人 眉をしかめ、床を見る。

 そして揃って二人共 天井を見た。 蛍光橙が有った。
 ドアがゆっくりと閉まる。
 行き成りドンヨリとした真っ黒い雲に変わり、生物みたいに動いた。 カシャ。 一瞬にして晴れる。    そこには、点対称の部屋があり、黒スーツの男がタバコを吸っていた。
 呆気に取られていた。

 ドアが開いて三人!? 入って来た。
 タバコを吸う。
 中国服の女とゾンビと羽と尾のある悪魔だった。
 話をしたりし、笑いながら一斉にタバコを吸い始める。

 キンキンキン、ナイフの通り雨に追われる破目に。
「うわっ」
「クソッ」
 パンパンパンッ、パリンパリンパシャー、銃を撃つ高柳。
 ドアを開けようとした。
「クソッ、バカな開かない」
「どいてろっ」
 ピンッ、手榴弾を投げた。
 ドアを破壊し、天井を見て出て行った。
 四人は、立って見送った。
「あ〜っ、私の蹴ったの〜」
 床には、槍のような長〜いヒールが刺さっていた。

 プロ級の技術を持っていた。 カウンター気味に右の拳が関谷のボディーブローに肝臓に入っていた。
「うううっ・・・」 ひざを付いた。
 間髪入れず左ショートフックを、関谷のあごに入れた。 一切 声を出させずに倒し寝かせる。

「チェッ、手間かかせやがってぇー、

シンシア -8p-

もっと素直にねろよっ!? ったく〜、タバコ落っちゃったじゃねーか」
 早乙女武士は、化け物や刑事をまいて白いヤマユリの絵が描かれた床の部屋に来ていた。

 対角線に有るドアを目指して歩いて行く。
 「おっとっとっ、ナニッ」
 中央付近で足に鉄筋の曲がった棒が絡んだ。
 驚いた表情を見せる。
 周りをみて また歩き始めた。

「おっとっと、ナンダー」
 鉄の曲がった棒が二本有った。
 睨んで周りを見た。
「人が折角 くつろいでいるのに気分を害して目を覚ませるなよ」
 強く吐き捨て再び大人のオシャブリに火を点けた。
 辺りを見る。
 白いヤマユリから真っ赤なオニユリに絵が変わる。

 床下が15ゲーム(数字並べゲーム) のように縦横無尽に動き早乙女の下に紅いバラの絵が止まった。
 全てが、オニユリから紅いバラの絵に換わる。
 そしてトゲが早乙女の体を森のように持ち上げた。

 「うっ、何だ、ナンダ〜!?」
 目の前に顔大のパネルボードが。
 「バラのトゲ」 上から下にめくれる。
「トゲ痛いよ」、「目の絵」、に「目がつむった絵」に変わる。
 行き成りトゲが出て来た。
「おっとー」 早乙女が右手でおさえる。

「おいっ、足元に注意しなよっ、すくわれるぞっ」
 軽く微笑んでから、銃で手榴弾を撃った。

 ドッカーン、バラの根元が爆発炎上した。
 下に落ちる早乙女。

 しかし、勢い衰えずトゲが襲い掛かって来た。
「ハッ、ハ〜」
 楽しむようにトゲを打ち続け、ドアの外へ出て右足で止める。
「フッ、もう お前らとのお遊びは、うんざりだ。 うざいんだよっ、バイバ〜イ」
 左手で手榴弾のピンを抜き、怪物目掛けて右手で投げた。
 左手を軽く左右に振り、右目でウィンクしておもむろに扉を閉める。
その後、血相を変えて笑いながら、廊下を必死に走って行ったのだった。  

 落差のある滝壺の下に居るような、視界がゼロ 降水量120%とも言える異常豪雨の中、催し物が行われるみたいに大勢の人々が集まって来ていた。
 ピンライトが上空に向かって当てられる。

陽炎県稲穂市高羽尾のニースリー・デボンが全国放送で映っていた。
 狭い街の中にパトカー、SWAT車、消防車、救急車、マスコミ車 まさに車の異種展示会だった。
 しかし、本当のところは、非常事態の戒厳令が敷かれていた。

 日頃 目にする事のない、選りすぐられたエキスパートのSWATが四人一組で七班に分けられ、三組がデパートに掛けられた渡り廊下に四組がデパート下に配置され、突入の合図を待っていた。

 戒厳令が敷かれたのは、各警察署に届けられた"レッドSOSメール" で関谷刑事を偽った携帯電話からのメールによる一報からだった。

 みんなとはぐれた美人ホステスの三浦可奈は、歩いては、ドアノブを回して戸を開き、歩いては、ドアノブを回して戸を開きという事を繰り返して人を探していた。
 そして、一人また五階に戻って来ていた。

 周りには、誰もいなく静かだった。

シンシア -9p-

 そのせいか知らず知らずに癒される香りと『キャン ユー セレブレート』のオルゴールに心と体が踊らされて行く。
 目に止まったステンドグラスやパイプオルガンに好奇心を持ち、誘われ、足を運ばされた。

 目の前に遠近法で可愛い教会の絵が描かれていた。 可奈は、ビックリして立ち止まっていた。
 行き成り後方で ガーと音がして振り向く。

 そこには、サクラダ・ファミリアと水芭蕉を足して二で割ったような未来的な可愛い教会の絵がコンクリートの床に描かれていて、間近で見ようと恐る恐る近付き二メートル程の絵の正面に立った。
 そして食い入るように見ていた。

 コンクリートに描かれた教会の絵が、前後左右高低にゆっくりと動き出し、クラシック風の未来型化粧台に立体化し出した。
 鏡に写る自分、丸みのおびた造り、数々の化粧品。
 座椅子に座り、口紅、マスカラ、ビューラー、パウダーやチークブラシ、パフを手馴れたように使っていった。 自分に陶酔する。

 しかし、床が後ろに動いていた。
 ナイフを内に備えた処刑台に。
 鏡に「綺麗な花には、トゲが似合う。  あれ、言葉違ったっけ。  アーハハッ、後ろ危ないわよ」
 可奈が振り向くと同時に扉が閉まった。

 静かにゆっくりと地中深く下がって行く。
 唖然。 しかし、彼女は、刺されなかった。 なぜならナイフは、紙で出来ていたからだった。
 優雅な棺桶の壁面が下がる。
 幾重にも重なった死人が可奈を見ていた。

 デジタルの数字がカウントダウンされる。
「六分間後に棺桶は、崩壊します」

 機械的アナウンスがされる。
 ギーギー、爪の引っ掻く音が耳にさわる。
「キャー、ア〜ア〜ッ・・・!?」
 可奈が一人 もう誰も居なかった。 孤独感、恐怖感、出来る事は、泣き叫び続けるしかなかった。

『五体満足』で今どきの『他人を見下す若者』 その典型的に合うのが荒波多 慶吾(あらはた けいご) 二十二歳だった。
 殺気を感じ取り、自己防衛の為に五十センチ弱の鉄パイプを持って歩いていた。

 そして慶吾は、ネオンが点滅しているドアの前に立っていた。
『メンタル クリニック』と書いてあった。 『中へ  どうぞ』と字が換わって中に入って行った。

 多種多様な機械があるように見受けられたが、カーテンで全ては、見えなかった。
 仕切られて道を歩いて中央に行った。
 床に五センチ位の除雪車のミニカーが落ちていた。 周りを見る。

「何だ何だ〜、いい機械ばかり多くても使える人がいないじゃ役立ずのスクラップだぜっ。
 ましてや可愛い看護婦さん一人もいないじゃ、病院の肩書きを持つ意味がないよっ、フッ」
そう吐き捨て、除雪車を強く蹴りつけた。
「挨拶一つも無しかよっ。  これじゃ、患者も来ないわっ」
 遠くでミニカーの壊れるカランコロン、カランコロン〜という音と、
「当ったり〜!?」という女性の声がする。

 カーテンや医療機器は、ホログラフィーみたいにスーと一瞬にして消え、ガーという音と共に数百!?数千!?という逆さの除雪車のミニカーが逆ピラミッド型を形成して下りて来た。

 カブト虫風の手に服やジーパンを引っ掛けられる。「おいおいっ、うわっ」
 鉄パイプを振り回して逆ピラミッド型の除雪車のバケモノを、わずかながら壊して入り口側に逃げる。
「俺は、周りの奴らと違うんだ、程度の低いお前らに負ける訳がない。 フッ」
 鼻で笑った瞬間に全てが消え、壁が右回りに床が左回りに

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
作家:MNALI PADORA
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