サンタクロースパイ

48.〝年明けパーティ〟の案内

―ここでまた、現在の〝喫茶窓際族〟に情景は戻る―



霧河が店長・窓河に「へ~!そうだったんですね!!

とっても良いお話ですね!!」と言った。

「そうか?(笑)」

「はい!!」



「〝窓河さん〟なんですね。何か、僕と苗字が似てますね」

「そうなの?お客さんは、なんて名前なんだい?」

「〝霧河竜令きりかわりゅうれい〟です」

「へ~!!確かに、苗字の方は俺と似てるな~!!」

「はい(笑)。何か親近感沸きます(笑)」

「苗字が似てるってだけでか?(笑)」

「いや、それだけじゃなくて、店長さん、いや、

窓河さんと僕が少し似ていると思って」

「そうか?どんなところが?」

「〝一人ぼっちだった〟ってところです」

「へ~。お客さん、いや、霧河さんも、一人ぼっちだったの?」

「はい。というより、今も、一人でいる事は多いし、

相変わらず一人が好きです」



「そうか~。そういや、さっき、〝幼い頃に両親を亡くした〟って言ってたな」

「はい。正直言うと、あの時から僕は、ずっと一人だと

思ってました。けど、最近、会社で突然、

倒れちゃって、その時、夢の中に両親が出てきて、

母が〝心配してくれる良い友達が出来た〟って言ってくれて、

目が覚めたら、お茶を持ってきてくれた仕事仲間に

〝自分の身体を大事にして〟って言ってもらえて、

〝僕はもう孤独じゃない〟って思ったんです」

「そうか」



「はい。何か夢を見る時は、〝これでもか〟ってぐらい、

両親が出てくる事が多いんです」

「そっか。それはきっと、霧河さんにとってそれぐらい、

〝思い入れのある大事な両親だった〟って事じゃないのかい?」

「そうなんでしょうかね?」

「ああ。そうに違いないさ!」



「確かにそうかもしれませんね。そういえば、それと、クリスマスだった昨日、帰った後、家族との思い出のアルバムを見て、

その後、両親から最後にもらったクリスマスプレゼントのギターで作った両親への感謝の気持ちを綴った曲を弾いたんです」

「へ~。凄いね!でも、そこまでするって事は、やっぱり絶対、

その両親が大好きなんだよ!!!」

「そうですね!!!」



「うん!!!てか、お客さん、ギター弾けるの?じゃあ、今度、元日に〝年明けパーティ〟ってのをやるんだけど、大事なモノなのに

悪いけど、もし、その日、仕事が休みなら、そのアコースティックギター、ウチで弾いてくれねぇか?エレキギターはさすがに

使える環境じゃないけど」

「え?はい。僕は良いですけど・・・」

「そうか!!!休みなんだな!!!ありがとな!!!」

「いえいえ。でも、個人経営のお店なのに、元日も開店するんですか?あと喫茶店で大きな音を出して大丈夫ですか?」

「うん。まぁ、元日にどっかに遊びに行って、ウチに寄る人も

多いんでね。それに、毎年、〝年明けパーティ〟をする時は、

〝今日はパーティなので、ライブをします。その音が苦手な人は、テイクアウトするか、また後日お越しください〟って看板を

店の前の看板の横に置くし、ウチの店の壁、映画館の壁みてぇに

大きな音も良く吸収するようになってるから、

あんま近所迷惑の事、考えなくて良いし」

「そうなんですね(笑)」



「ああ、掃除や手入れも、いつもしっかりやってるし、

小さな店で、別にゴージャスでも何でもねぇけど、さっき話した

ように、俺は、昔からギャンブル好きだけど、あの話のあと、

色々競馬の事とか勉強して、それが自分でも驚くくらい良く当たるようになったからな。定期的に工事してるから、

防音加工と頑丈さだけはあるぜ!!!」

「へ~!!!それは凄いですね!!!」

「だろ~?!」

「はい!!!〝年明けパーティ〟、とても楽しみです!!!」

「おう!!!サンキューな!!!」



その後、霧河はお勘定し、

「ごちそうさま」と言って、店を出ようとした。



だが・・・・・・



「あ~、そういえば、聞き忘れてたんですけど、このお店、

窓河さんが継ぐ前は、一体、なんてお名前だったんですか?」

「あ、あ~・・・そういや、それは、俺も覚えてねぇや(笑)。

ずっと昔の事だし、年のせいもある。悪いな」

「そうですか」



〝バタン〟

49.同僚に会った!!!

そして、霧河は店を出た。その後、街を歩きながら、

考え事をしていた。



(にしても、あの店の前の名前、何だったんだろう?気になるな。それと、まさか、コーンスープの時のあの言葉も、元々は、

あの人が別の人から言われた言葉だったとは。

あと、〝あの人が実は頑固で、しかも昔はぶっきらぼうだった〟

って事にも驚いた。今でも、喋り方こそ男らしいものの・・・

やっぱ、人って、変わるんだな。いや、というより、

人が人に変えられるんだ。

俺が、俺を育ててくれた親戚、それから、

実は意外と仲が良い事に自分でも気づかなかった同じ会社の社員、

プレゼントをあげて喜んでくれた子供達、それから、窓河さんも。皆、俺を変えてくれたんだ。大切な存在なんだ)



そうして歩いていると、偶然、会社の同僚達に会った。



そう、以前、霧河に居酒屋に誘った事がある男性社員達だった。

彼らは、全員で5人だった。



「ア、アレ?」

「ん、ん~?」

「霧河じゃねぇか~!!」

「お~!!君達こそ、どうしたの!?」

「いや、俺達、忘年会しようと思ってたんで、今日は、

皆で有休取ったんだ」



霧河は、あ然とし、固まった。

(良く5人も一斉に有休取れたな・・・・・・)と。



「なぁ霧河、今からゲーセンで遊ばねぇ?」

「ゲーセン?また?大人なのに。パチンコじゃなくて?」

「いや、童心に返りてぇ事だってあるだろ?」

「う、う~ん・・・まぁ、良いけど」

「よっしゃ~!!決まり~!!皆~!!霧河が一緒にゲーセンに行ってくれるってよ!!!」

すると一同が

「イェ~イ!!最高~!!!」と言った。



「そんなに喜ぶ事かな?(笑)僕一人が一緒に行く事になった

ぐらいで」

「何言ってんだよ!?お前だから嬉しいんじゃねぇか!!」

「そう?」

「ああ!!お前は俺達と一緒に遊んでくれる事、少ねぇだろ?特に、ゲーセンやパチンコみてぇなとこは1回も一緒に行った事ねぇし!!!」

「そうだけど・・・あの・・・」

「というワケで、行っきましょ~う!!!」

「しゃ~~~!!!」



「おい!皆、話、聞けよ!!ったく・・・強引だな~・・・」



だが、この時、霧河は、少し嬉しそうに笑い、

「まぁ、いっか!!!」と言った。

50.ゲームセンターにて

そして、

ゲームセンターで色んなゲームを遊ぶ。



霧河は、大好きな、「グロリアスライダー」の格闘ゲームばかり

プレイしていた。



〝ガチャガチャガチャガチャ〟



「お前、ホント、それ、好きだな~」

「いや、だって、そりゃ、僕の幼い頃からの憧れのヒーローなんだもん!!仕方ないじゃん!!」



そこで、同僚達は笑った。



「ブッ!!アッハッハッ!!」

「笑うな~!!何がおかしいっ!?」



すると・・・・・・



「いや~、悪りぃ悪りぃ。お前、ゲームが

そこまで上手いの意外過ぎてよ」と皆が言う。



確かに霧河はその時、そのゲームで一番強いはずの敵キャラを

ノーダメージで秒殺していた。



霧河は、少し顔を赤くしながら笑い、

「あ・・・ありがと・・・」と言った。



「しかしよ~、お前、そんなにゲームが上手いんなら、何でいつも俺達と一緒にゲーセン行かねぇんだよ」

「ちょっと皆、耳貸して」

「ん?」



「いや、ここで言うのも、アレなんだけど、僕、騒がしいところやハメを外してどこまでも暴れるような人が多いところ、

苦手なんだ」

「・・・・・・そうか」


51.飲み会

たっぷり遊んだ後、本日のメインイベントである呑み会を

するため、居酒屋へ向かった。



しかし、

向かう最中、悩んでいる中年の夫婦を見かけた。



「どうしたんだろ?」



その事に、同僚達は気づいていない。



「どうした?霧河」

「いや、何でもない・・・・・・」



そして、

居酒屋に着き、飲み会が始まった。



「カンパ~~~イ!!!」



しかし、

霧河は相変わらず、酒は飲まず、飲むのは

コーラやメロンソーダやオレンジジュースのような

ソフトドリンクばかりである。



「お前、やっぱ、そこは譲らねぇんだな~」

「ん?あ~、コレ?ごめん!!やっぱ、

どうしても、酒は、僕の口に合わないから飲めないんだよ」



やっぱり、本当の事は言いづらいし、もし、言うと、

同僚達に気を遣わせて、同時に、

かなり空気を重くしてしまうため、

「両親が相手の車の飲酒運転による交通事故で死んだ」という

トラウマがある事は言えない・・・・・・



「でも、霧河、今日は安心したよ」

「ん?何が?」

「いや、お前、俺達の遊びや飲み会の誘いは

断る事がめっちゃ多くて、

〝ひょっとしたら俺達、お前に嫌われてるんじゃないか?〟って

心配してたんだよ。前にお前抜きで呑み会に行った時も、

実は、俺達、そんな話、してたんだけど。だけど、

ゲーセンにしろ、パチンコにしろ、誘いに乗らない理由が

〝俺達が嫌われてるから〟じゃなくて良かったよ。ちゃんとした

理由があったんだな!!まぁ、さっき言ってたあの話を聞くと、

多分、居酒屋が苦手なのも、同じような理由だろうけど・・・」

「ん~・・・まぁ・・・そうだけど・・・」



「やっぱりな。でも、悪かったな。苦手なのに、何度も

付き合わせようとして・・・実際、今日はもう、

無理やり連れてきちまったし」

「あ~、いや~、僕の方こそ、いつも誘いを断ってばかりで

ごめんね!!それに、いつもは断ってるけど、今日は皆と遊んで

みて、凄く楽しかったし、今日の事は全部、良い思い出に

なったよ!!それに、ゲーセンも居酒屋も、確かに騒がしいけど、皆と一緒に楽しめば、意外と気にならなかったし!!!」

「そっか!!なら良かった!!!」

「うん!!!」

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