サンタクロースパイ

19.またドジった!!!

ここで時間を遡ろう。クリスマスの夜、霧河は、叶に犬の人形を渡した後も、たくさんの家のたくさんの子供達にプレゼントを渡していた。2軒目~4軒目までは何事もなく渡せたが、5軒目の子供にプレゼントを渡した直後にもまた、子供が起きてしまった。



というより、今回は、霧河がドジを踏んで、その子の暗い部屋の中で、

その子が片づけそびれて床に転がったままだったフィギュアを

ゴキブリと見間違えて驚いて、慌てて思いっきりコケて大きな音を立てて、同時に、叫んでしまった事により、

起こしてしまったのだ。



「ワ~ッ!!」と子供が叫ぶ。



(マ、マズい・・・!!)と思い、急いで子供の口を霧河が

手で抑え、「シ~ッ!!」と言う。



そう、

この子は調査をしていた時、

「〝グロリアスライダー〟の変身セットが欲しい」と

言っていた男の子だ。



豆電球を点けた。

20.男の子との会話

そして、男の子と話す。



「兄ちゃん、どうやって入ってきたの?」



霧河は、金属の棒を取り出し、

「あ~、コレ使って」と言う。

「ふ~ん」



「でも、絶対、真似しちゃダメだよ!!!それと、俺の事も、

たとえ親だろうと、他の人には言っちゃいけないよ!!!」

「は~い」

「ありがとう!!!」



「この部屋を見ても分かるけど、君は戦隊ヒーローやアニメが

凄く好きなんだね!!」

「うん!!」

「やっぱりね!!そうだよね~!!」

「でも、兄ちゃんさ、一体何者なの?」

「俺?俺はね、〝サンタクロースパイ〟さ!!」

「ロース・・・パイ・・・何か美味そうな響き!!」

またさっきと同じ事を言われた。しかし、

二度目はズッコケはしても、驚いたりはしない。



「そ、そうかな?(笑)でも、俺の事は、

絶対、たたえお父さんとお母さんには言っちゃダメだよ!!!」

「うん!!!」

21.〝特撮〟について

霧河は男の子に聞いた。



「君はいつから何をきっかけに特撮を好きになったの?」

「特撮・・・?何それ?」

「あ~、特撮っていうのは、今言った、戦隊ヒーローとかもそうなんだけど、特殊撮影、つまり、色々と工夫して撮影して、実際にはありえない事を本当にやっているように見せてる映像の事だよ」

「へ~!そうなんだ~!!色々工夫して作ってるなんて凄いな~!!でも、〝グロリアスライダー〟とか凄くカッコ良いもんな~!!

俺は、テレビのチャンネルを変えてたまたまやってるとこ

観てみたら面白くて、それからずっと好きだよ!!」



「そうか。〝グロリアスライダー〟・・・か。懐かしいな~」

「え?兄ちゃん、〝グロリアスライダー〟知ってんの?」

「あぁ!!もちろんさ!!!かなり昔からある超長寿シリーズだもん!!俺も、子供の頃はめっちゃハマったよ!!!」

「そっか~!!それに、今じゃいっぱいシリーズ出てるからな~!!すげぇよな~!!」

「あぁ!そうだよな!!あのバッサバッサ敵を斬ったり

殴り倒すところ、毎週、観ててめっちゃワクワクしてたよ!!

カッケーったらありゃしねぇ!!!男のロマンさ!!!」



「ところで兄ちゃんはさ、初代のヤツだったら、どのシーンが

一番好きだった?」

「ん~、最終回の、主人公が〝正義が勝つのは正しいからじゃない。守りたい人達のために誰よりも必死だからだ!!〟って

言うシーンかな?」

「あ~!分かる!!マジカッコ良い台詞だった!!!」

「だろ?!惚れるよな!!シビれるよな!!

てか、その年で初代まで観ただなんて、君はモノ好きだな!!!」

「うん!!まぁね!!俺、〝グロリアスライダー〟

めっちゃ好きだから、DVDとかでも観たんだよ!!!」

「へ~!!良い趣味してんな!!!」

「へっへへ~ん!!!

22.忘れていた想い

そうして2人は〝グロリアスライダー〟の魅力を語り合った。



すると霧河が

「俺も昔は、あんなたくさんの人を助けて、

たくさんの人から愛されるカッケー男になりたかったんだけどな~・・・」と言った。



「え?何言ってんの?もうなってんじゃん」

「え?いやいや、冗談はやめてくれよ(笑)。

俺はあんな強くないし、あんなに大勢の人を助けたりなんかも

出来ないよ」

「いや!兄ちゃんはもう、たくさんの人を助けてる!!だって、

ちゃんと、俺にもクリスマスプレゼントくれたし、いつも俺だけ

じゃなくて、他の人達にもプレゼントをあげてるんだろ?!」

「ま、まぁ、そうだけど・・・でも、こんなの、俺が自己満足で

やってるだけだし、本当はやっちゃいけない事だしね」

「いいや!兄ちゃんは、〝サンタクロース〟っていうヒーロー

だよ!!!たくさんの人達に、プレゼントだけじゃなくて、夢や

希望まであげてんじゃん!!!超カッケ―ヒーローじゃん!!!」

「・・・・・・!!!」



霧河は感動し、両親の事を思い出した。

(そうだ。俺がまだサンタさんを信じてた頃も、俺にとって

サンタさんは、自分の寝てる間に姿を見せずにプレゼントをくれるヒーローのようなカッコ良い存在だった。

でも、死んだ後だったけど、いつも、

プレゼントをくれてたのが実は父さんと母さんだって

知ってからは、父さんと母さんが俺にとってのヒーローに

なったんだ。こんな大切な事、すっかり忘れてしまうなんて、

俺は・・・・・・)



その時抱いた感情が蘇り、霧河は泣いた。



「に、兄ちゃん・・・どうしたの?突然泣いて・・・」



それに対し、

「あ、いや、〝グロリアスライダー〟がカッコ良過ぎて、

思い出したら涙が出てきたんだよ」と嘘をついた。



「何だよそれ(笑)。でも、感動シーンもいっぱいあるよな!!!」

「うん!!!」

COLK
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