翌朝、叶は、目が覚めた後、枕元を見てみた。枕元には、
クリスマス仕様のラッピングがされた箱があった。
「箱はちゃんと置いてあるけど・・・やっぱり、昨日の事は
夢だったのかな?」
そう思いながら、箱を開けてみた。すると、
本当に犬の人形が入っていた!!
「え!!嘘!?夢じゃなかったんだ!!ありがとう!!
〝サンタクロースパイ〟さん!!」と言った。
その直後、叶の部屋に叶の母親が入ってくる。
「叶!もう朝ご飯、出来てるわよ~!!」と
母親は言う。そこには、母親が置いていないどころか、
買ってすらない犬の人形が置いてあった。ちなみに、それは〝チワワ〟の人形だ。
そう、霧河は、小さな女の子が好きそうな種類をチョイスしていたのだ。
「お母さん!サンタさんってホントにいるんだね!!」
叶の母は、
「まさか!私も買った覚えのないモノなのに!!何で?それと、
この娘、何で今年は〝○○が欲しい〟って言わなかったんだろ?
まぁ良いわ!不思議な事が起こったけど、叶も喜んでるし!!」
もちろん、いつもなら、霧河の幼い頃に亡くなった霧河の両親と
同じく、叶の母親が、叶が寝ている最中に密かに叶の枕元に
叶の欲しいモノを置いていた。だが、今年だけは違い、
母親すらも覚えのない事なので、母親もとても驚いている。だが、叶は、霧河に言われた約束通り、
「黒い服を着たスパイのお兄さんからもらった」とまでは言っていない。
ここで時間を遡ろう。クリスマスの夜、霧河は、叶に犬の人形を渡した後も、たくさんの家のたくさんの子供達にプレゼントを渡していた。2軒目~4軒目までは何事もなく渡せたが、5軒目の子供にプレゼントを渡した直後にもまた、子供が起きてしまった。
というより、今回は、霧河がドジを踏んで、その子の暗い部屋の中で、
その子が片づけそびれて床に転がったままだったフィギュアを
ゴキブリと見間違えて驚いて、慌てて思いっきりコケて大きな音を立てて、同時に、叫んでしまった事により、
起こしてしまったのだ。
「ワ~ッ!!」と子供が叫ぶ。
(マ、マズい・・・!!)と思い、急いで子供の口を霧河が
手で抑え、「シ~ッ!!」と言う。
そう、
この子は調査をしていた時、
「〝グロリアスライダー〟の変身セットが欲しい」と
言っていた男の子だ。
豆電球を点けた。
そして、男の子と話す。
「兄ちゃん、どうやって入ってきたの?」
霧河は、金属の棒を取り出し、
「あ~、コレ使って」と言う。
「ふ~ん」
「でも、絶対、真似しちゃダメだよ!!!それと、俺の事も、
たとえ親だろうと、他の人には言っちゃいけないよ!!!」
「は~い」
「ありがとう!!!」
「この部屋を見ても分かるけど、君は戦隊ヒーローやアニメが
凄く好きなんだね!!」
「うん!!」
「やっぱりね!!そうだよね~!!」
「でも、兄ちゃんさ、一体何者なの?」
「俺?俺はね、〝サンタクロースパイ〟さ!!」
「ロース・・・パイ・・・何か美味そうな響き!!」
またさっきと同じ事を言われた。しかし、
二度目はズッコケはしても、驚いたりはしない。
「そ、そうかな?(笑)でも、俺の事は、
絶対、たたえお父さんとお母さんには言っちゃダメだよ!!!」
「うん!!!」
霧河は男の子に聞いた。
「君はいつから何をきっかけに特撮を好きになったの?」
「特撮・・・?何それ?」
「あ~、特撮っていうのは、今言った、戦隊ヒーローとかもそうなんだけど、特殊撮影、つまり、色々と工夫して撮影して、実際にはありえない事を本当にやっているように見せてる映像の事だよ」
「へ~!そうなんだ~!!色々工夫して作ってるなんて凄いな~!!でも、〝グロリアスライダー〟とか凄くカッコ良いもんな~!!
俺は、テレビのチャンネルを変えてたまたまやってるとこ
観てみたら面白くて、それからずっと好きだよ!!」
「そうか。〝グロリアスライダー〟・・・か。懐かしいな~」
「え?兄ちゃん、〝グロリアスライダー〟知ってんの?」
「あぁ!!もちろんさ!!!かなり昔からある超長寿シリーズだもん!!俺も、子供の頃はめっちゃハマったよ!!!」
「そっか~!!それに、今じゃいっぱいシリーズ出てるからな~!!すげぇよな~!!」
「あぁ!そうだよな!!あのバッサバッサ敵を斬ったり
殴り倒すところ、毎週、観ててめっちゃワクワクしてたよ!!
カッケーったらありゃしねぇ!!!男のロマンさ!!!」
「ところで兄ちゃんはさ、初代のヤツだったら、どのシーンが
一番好きだった?」
「ん~、最終回の、主人公が〝正義が勝つのは正しいからじゃない。守りたい人達のために誰よりも必死だからだ!!〟って
言うシーンかな?」
「あ~!分かる!!マジカッコ良い台詞だった!!!」
「だろ?!惚れるよな!!シビれるよな!!
てか、その年で初代まで観ただなんて、君はモノ好きだな!!!」
「うん!!まぁね!!俺、〝グロリアスライダー〟
めっちゃ好きだから、DVDとかでも観たんだよ!!!」
「へ~!!良い趣味してんな!!!」
「へっへへ~ん!!!