私が外来でかかっていた、もとの主治医の先生は、たいへん怒りっぽい先生でした。先生は激怒して言いました。「君は重症だ。五年は入院してもらう。」
しかし、ふとんをかぶって部屋でうずくまる私に、先生は優しかった。「君には好きな人がいたのだね。」と先生は言いました。
三か月後、絶望が私を待っていました。
私は統合失調症です。この病気には、陽性症状と陰性症状があります。
入院したあと、私は明るかった。友達ができ、部屋でひたすら哲学の図を書き、先生に明るく、「毎日楽しいです。」と言いました。
先生は、洗濯物をたくさんかかえて笑う私に、にっこり笑ってくれたかと思うと、マキさん、調子悪いね、デパケン(精神病薬)増やそうか、と言ったりしました。
先生は、これが陽性症状(気分が高揚する)であると知っておられたのでしょう。あんなにショックなことがありながら笑う私を悲しく見ていたのでしょう。
やがて、地獄がやってきました。
私は失った恋にやっと気がつき、わんわん泣きました。決して返ってこない、愛する人へのメール、あの人は、卑怯にも、私の最後の愛のメッセージを、受け取るだけ受け取り、決して返事はしなかった。
恋を失った。しかも、それは、人生最大の恋だったと、陰性症状(気分が落下する)とともに知る、地獄。しかも、私にはもう一つ地獄がありました。
私は一生、この病院に閉じ込められるという強迫観念がきていたのです。
狭い病棟に押し込められ、看護師同伴で一日わずか五分売店に行くだけの日々が三か月続いていたのです。