小説の未来(11)

観念世界を作る小説言語

 

 小説言語も娯楽に役立つと述べましたが、そのほかに小説言語は、言語中枢を刺激することによって、感性を超越した観念世界の構築に役立っています。この観念世界は、五感とリンクしたものだけではなく、国家や社会という抽象的な観念世界をも含みます。

 

感性を超越した言語とリンクする観念世界は、映像で構築されるゲーム世界とは異質なものと言えます。確かに、ゲームにおける映像は、観念の創造にも役に立つと思われますが、抽象的な観念世界の構築には、言語の方が役に立つと思っています。

 

言語世界を考えてみると、小説以外にいろんな世界があります。物理学、化学、数学、生物学、医学などの自然科学も、経済学、法律学、商学、心理学、などの社会科学も言語世界と言えます。でも、それらに共通して言えることは、現実的な実用性が重んじられた言語世界ということです。

でも、小説は、まったくと言っていいほど、実用性は期待されていません。この小説を読めば、こういうことに役立つというような実用性は、まったくと言っていいほど小説にはないのです。むしろ、ゲームの方が、はるかに実用性があります。たとえば、ゲームが利用された数学や英語の学習教材です。

 

小説は、あくまでも言語で構築された架空の世界を読者に提供するにすぎません。そして、読者は、小説によって刺激を受けた言語中枢で独自の観念世界を自分勝手に作ればそれでいいのです。

関数的言語ゲーム

 

 そこで、小説はゲームと言えるかどうかですが、わたしは、科学も芸術もスポーツもゲームと認識しています。小説は主に心理の世界を描くわけですから、ゲームとは無縁のように思われますが、私は、言語で構成されている作品を関数的言語ゲームと呼んでいます。皆さんが何度も学校で経験された試験も典型的な関数的言語ゲームです。

 

 多くの方は何らかのゲームを楽しんだことがあると思いますが、それでは、どういうものをゲームと呼んでいるのでしょうか?

 

 簡単に言えば、ゲームとは、“一定のルールに従った遊び”と言っていいのではないでしょうか。小説や試験にもルールがあるのか、ということになりますが、もちろん関数的ルールがあるのです。

一般的には、視聴覚を使った映像ゲームが主流なので、小説や試験のように言語から構成される作品は、ゲームではないように思われます。でも、それらは、れっきとした関数的言語ゲームなのです。

 

 小説は観念世界を作り上げる言語集合体と述べましたが、観念の言語集合体においても関数的ルールが存在し、それらのルールに従って小説も構成されているのです。試験やクイズでは、問題と正解との一対一の関係があり、まさに関数的言語ゲームの典型と言えるのです。

 

 言い方を変えれば、脳機能には、関数的ルールがあり、脳機能によって生産された言語作品もイメージ作品もサウンド作品も関数的記号ゲームと呼べるのです。一般的に、明確なルールが設定された作品がゲームと呼ばれているのです。

春日信彦
作家:春日信彦
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