小説の未来(11)

ゲームをここまで拡大解釈すると、きっと、勝敗とか得点があるものじゃないとゲームと呼べないのではないか、と反論される方もいるでしょう。確かに、ほとんどのゲームは、勝敗が決まるゲームか得点を競うゲームです。

 

 試験は、得点が算出されるのでゲームと言っても違和感がありませんが、小説には、勝敗も得点もありません。それじゃ、小説は、ゲームと呼べないように思えますが、私が考える言語ゲームは、関数ゲームなのです。

 

 小説言語ゲームには、勝敗や得点がなくとも、関数的ルールが存在しているという意味でゲームなのです。試験言語ゲームであれば、問題に対し正解が対応するという関数ルールが設定されています。

小説言語ゲームにおいて、どのような内容を関数的ルールと呼ぶかと言いますと、作者が作り出した言語と読者の言語中枢に内在する言語との関数的ルールです。作者は、ある程度の予測をたてた言語を読者に提供しています。そして、読者は、予測に応じたような言語反応を示すのです。

 

 まさに、この点が関数的ゲームなのです。小説言語ゲームは、作者と読者との関数的ゲームなのです。小説は試験のような〇✖関数形式ではないので、得点を出すことはできませんが、知性、感情における関数的ルールを利用して作者と読者間で心理ゲームを楽しむことができるのです。

 

 説明が不十分だったかもしれませんが、一見複雑で法則性がないように思われている人の感情や知識にも、れっきとした一定の関数的ルールがあるということなのです。だから、読者は、言語を利用した心理ゲームを楽しむことができるのです。

 

 小説言語ゲームは、もっとも複雑な関数的知能・心理ゲームだと思っています。だから、無限に娯楽を創造することができる言語ゲームだとも思っています。若い皆さん、ぜひ、小説言語ゲームに挑戦していただきたいと思います。

 

春日信彦
作家:春日信彦
小説の未来(11)
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