コンピューターの罠

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第一章 盤面の迷宮( 7 / 10 )

 

 そのコンピューターのそんな情報の処理の仕方、プログラムの組み方を考えると、一連の事の流れは自然な感じになる。

 わたしとこのコンピューターは電気的に結ばれ、一つの電気的系を成しているのでないか!?

 電動式パチンコ台というこのロボット機械は、わたしと電気的に一体になって動き回っている!?

 途方もないこと!?

 その時、わたしの心に浮かんできたことは、生体センサー、ポリグラフコンピューター、洗脳装置といったことだった。

 

 ここでの生体センサーとは、かなり限局された世界で取り上げられる生体センサーで、アメリカの数学者が開発した装置である。

 それは、人の生体に電波発信器付きの小さな金属片を埋め込み、その人の生体の電気活動で変調する電波を、コンピューターを使って常に解析するという装置である。

 センサー自体は、きわめて単純、単なる金属片である。

 驚くべき事だが、それによるコンピューターの解析では、その人が喜怒哀楽のどんな心理状態にあるか、何か数学的計算をしているか、あるいは、犯罪と関わるような何かを考え始めているようだとか、その人の心理状態のだいたいの推定のみならず、その人の運動状態、走っているか、歩いているか、じっとしているのかといったことから、その人の姿勢、さらには、その人の見ているおおよその形態まで解ったとされる。

 それで、その生体センサーを、刑期を終えて出所する人の体に埋め込んで、容易に取り出せないよう、心臓の近くとか、中枢神経の近くに入れて、その人が再び、犯罪と関わるような何かを考えている可能性が高ければ、即、対応しようというようなことが、その装置の使い道として提案された。

 プライバシーなど欠片もない、使い道に窮する、恐るべき威力を持った装置である。しかし、こっそり、やたら乱用される可能性だってある。

 それから、ポリグラフコンピューターという装置がある。

  これは人の心理状態を、皮膚電流の変化や、心拍、呼吸といった生理的変化から解析していく装置だが、その歴史は古く、ほとんどコンピューターの歴史と言っていいぐらい昔からある物である。

 普通、コンピューターは、プログラムでガードしたつもりでも、そのプログラムの中身を人に読まれてしまうと、全く無力になり、ただの機械と化してしまう。例えば、パスワードを読まれたりした場合である。

 そこで、コンピューター本体に、そのポリグラフコンピューターを付属させて人の心理内容を解析し、人が、コンピューター本体を使って何か悪さをしそうだと判断したら、そのコンピューター本体の作動を止めるなり、人の意図に対抗してコンピューター本体を守るために使われたりする。

 それで、このポリグラフコンピューターは、人が容易にコンピューターに悪戯できないよう、人の意図に対抗してコンピューターを人から守るものとして万能コンピューターと言われることがある。

  例えば、将棋をするコンピューターがある。しかし、次々と人を手玉にとるその強力なコンピューターでも、一端、人にはめ手を見つけられてしまうと、いともたやすく何度でも人に同じ手で負けてしまう。

  そこで、そのポリグラフコンピューターを、将棋をするコンピューターに付属させ、人が、何かはめ手でコンピューターを打ち負かそうと謀りだしたら、その意図を読みとり通常と違う手を打って人に対抗する というような形で使われたりする。

 それから、洗脳装置、人とコンピューターが一体となった装置といったら、まずそれだ。

  人が何か気にいらないことを考えていそうだったら、即、苦痛を与えるなんて使われ方をする。が、そんな情報はめったに出てこない。

 ジョージ・オーエルの、人類の近未来の悪夢を描いた小説、寡占勢力がグローバルに支配する「1984」の世界では、そんな装置が、支配する側と、支配される側を分かつ武器となっている。

 その様な技術は、1948年ごろには既に開発されていて、それを目の当たりにしたジョージ・オーエルは、その48の数字を逆にして、「1984」と、この年代の頃には、悪くすれば世界の政治的現実はこうなっていてもおかしくないとその小説を書いたとされる。

 コンピューターによる諜報解析の技術が、一方的に使用され、やがて、人の洗脳の世界へと繋がっていく世界である。

 

  電動式パチンコ台を制御するコンピューターは、わたしが手を強く握ったり、弱めたりしたことを識別し、その事に反応してきたのではあるまいか!?

 人がハンドルの金具に触れると、その情報が即コンピューターに流れ込むように、わたしの生体の電気情報も、同時に、そのコンピューターと直結していることが考えられる。

 それ等の情報に対し、同一のフローで反応する図が見てとれる。

 その可能性を考えさえすれば、それまでの盤面の成り行きは最も自然な感じで捉えられる。偶然とも、ものの弾みとも違う、現象通りはっきり形を成すものとなる。

 巷にそんな情報が滅多に出ることはない、かなり統制され半ば隠されたような、そんな回路がこのコンピューターには組まれているのでないか!?

 その時、わたしは、事の流れの中で、その可能性を意識せざるを得なかった。

 いつの間にか意識に染みついた夢中な電動式パチンコへの思い、人の気を引き、熱中させる盤面の展開、が、結局、金ばかりする人を翻弄する手強さ、単純な機械の動きと違う何かが、そこにあったのではないか。

 そうとすれば、電動式パチンコ台というコンピューターロボットは、単にプログラムされた通常のロボットと言われる機械とはまるで違う仕組みになっている。

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和賀 登
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