チッチとミーコ( 10 / 29 )
こんにちはー
「こんにちはー」
親戚の家の玄関を威勢よく開けると
真っ先に出てくるのはいつも猫だ。
小さな子供のいる家に行くと
真っ先に出てくるのがその子供
というのと同じだ。
結局、年を取っても猫の知能程度は
人間の幼児と同じくらいなのだろう。
しかし猫が出てくる時、柱の陰から
こそーっと覗き込む姿には笑ってしまう。
目が合うと目をそらし、他の所を見る。
で、こちらが知らん顔をしていると
またこそーっとこちらを覗き込む。
そこで再び目を合わせてやると
慌てて他の場所に目をやる。きっと
自分が目をそらせば、自分の姿が相手に
見えなくなるとでも思っているのだろう。
その行為が実に愛くるしい。
チッチとミーコ( 11 / 29 )
猫に好かれない日
自他共に認める猫好きではある。
だが、猫を飼うほどの甲斐性を
ぼくは持ち合わせてはいない。
猫の方もそれを察しているのか
ぼくの猫可愛がりに対して
曖昧にグルグル言うだけで
心からの愛情表現をしてこない。
ノラなんかは特に敏感で、きっと
「こいつに媚びを売っても、何の
得もない」とでも思っているのだろう。
「チ、チ、チ」と呼んでも
立ち止まろうともしない。
今日なんかは偉そうに、「フー」
などと威嚇してくるヤツもいた。
まあ、眺めているだけでも
充分に楽しめるヤツらではある。
しかしせっかく、せっかく
同じ場所にいるのだから
少しは袖触れ合ったって
少しは会話があったって
いいじゃないか。
ぼくはいつもヤツらに
そのへんを察してもらいたいのだ。
少しは心を開いてほしいのだ。
まあ、今日のことは許してやろう。
だけど次回だけは餌を持っていても
やらんからな。とりあえずそれを
今日のバツということにしておくぞ。