葬式で芽生えた恋

第1章( 2 / 36 )

私は車に道具を積んで準備します。

「でも、どうして僕なんですか?」と聞きました。と言うのは当番は普通2人います

もう一人は、来ていません。そして会社には妻が臨月を迎えている事をあらかじめ

お話してありました。普通呼ぶ時は、もう一人を呼ぶはずなんだが聞いてみると

「高山さんご指名でした」「先方は依然お世話になったと言う事でしたよ」と言うと

「指名ならしょうがないか」と言って亡くなった方の名前を確認しました。

亡くなった方は、福田米子さんと言う方でした。この名前に覚えはないけど

しかも、住所も全然葬儀をやった覚えがない場所なんだけどとにかく向かいました。

私は、地図を見ながら目的地に向かいます。そこに着いたのが6時半でした。

車から降りて見ると凄い家です。住宅と言うより大邸宅と言った感じです。

一般の人とは次元の違うようないわゆる超金持ち今風に言うと超セレブです。

『こんな家庭は自分的には苦手だな』と思いながら中に入って行きました。

玄関の引き戸が普通の家の倍くらいあります。少し開いているので声を掛けました。

「ごめん下さい」と言うと中から男性が出てきて「高山さんお久しぶりです」と言い

スリッパを出してくれました。お顔を良く拝見すると以前私がお世話させて頂いた

小宮さんでした。

 

 

 

第1章( 3 / 36 )

私は、「小宮さん久しぶりです。ところでこちらは?」と言うとその小宮さんは

「今回お亡くなりになった米子さんはうちの亡くなった母のいとこです。」と言いました。

それで、ご遺族も高山さんと面識があったので指名で連絡が着たようでした。

それにしても大きい家です、玄関だけでうちのアパートのダイニングキッチンより大きい

入って来て廊下を通り10畳以上のダイニングの前を通り応接間に入りました。

約12畳くらいの広さがあります。

この仕事をしているとつい部屋の大きさが気になります。何故なら祭壇の飾りや向き等

重要になってきますので部屋の間取りは、常に頭の中にいれます。

応接間に入るとそこには

喪主でありご主人の福田茂夫さん(78歳) その長男福田 茂さん(38歳)

長女福田孝子さん(47歳) 二女福田光子さん(45歳) 3女福田朝子さん(42歳)

以上ご家族5人に先ほどの小宮 毅さん(50歳)と私の7人で打ち合わせします。

ご主人とご長男は小宮さんのお母さんの葬儀で面識はありました。

小宮さんが「それでは、葬儀の打ち合わせしましょう。」と言ってくれました。

葬儀社にとっては間に入ってくれる方がいらっしゃると話が楽になります。

とりあえず、ご家族全員に名刺を配りました。「担当させて頂きます、高山です」と

一人ずつごあいさつをしました。

 

第1章( 4 / 36 )

この家は、かなりの資産家でとにかく出来るだけの事はやってあげたいとの事で

お部屋は12畳の和室があります。そこに一番高い祭壇を飾りたいとおっしゃっています

それ以外の備品や商品についても最高級なものでやりたいので

喪主のご主人は私を見て優しそうな声で「後は、高山さんにお任せしますからよろしく」と

だけ言ってくれました。

私は、その家にふさわしい棺や骨壷まで最高な商品を揃えました。

後は、お姉さんたちがいろいろ無理難題を言って来るのをご説明する感じです。

例えば、雨が降った時の為にお寺の駐車場をすべてテントで埋め尽くす事が出来ないか

とか出棺の時に国道を交通規制掛ける事は出来ないのかとか言っています。

そのたびにお金はなんとかするからお願いしますと何かにつけてお金の話です。

結局最終的には、ご長男の意見でそういう事はなしになり後は祭壇やお花で綺麗に

飾り付けして送りましょうと言う事になりました。

それから、こちらの娘さんがすべてが福田姓なのは長女と3女が出戻りです。

唯一独身を貫いているのが二女の光子だけでした。

この光子さんも家から出て一人でマンション暮らしです。

こちらに住んでいるのは、ご両親と長男夫婦とその息子それに長女と3女です。

 

 

第1章( 5 / 36 )

その時は、長男の嫁さんである福田直子さん(37歳)とその息子の守くん(5歳)は

自宅にはいませんでした。

私は、打ち合わせが終わると会社に電話を入れて一旦社に戻り準備に向かいます。

会社に着くとすでに祭壇がトラックに載せてあります。ワンボックスカーの方をあけると

棺が載せてあり久しぶりに見る5面彫りの底板意外すべて鳳凰の彫刻が入っている

棺です。私は久しぶりに見る棺だなと言って蓋も開けて中身を確認しました。

 

祭壇の準備に今回5人で行きました。何故なら途中警察からご遺体の引き取りの

連絡が入るので設営の途中に2人抜けてご遺体の引き取りに行きます。

準備に行った時はまだご遺体も帰ってないので近所や親戚の方もいなくて作業も

とてもやりやすいです。特に家の中の祭壇準備は中に人がいるととてもやりづらくて

作業自体がかなり遅れます。

祭壇の飾り付けも一通り終わりそうな頃ご遺族の様子があわただしくなりました。

ご長男が私の方に駆け寄り警察から電話があり「引き取りのお時間ですから」との事

私は、もう一人と一緒にワンボックスカーに乗り込み病院に向かいます。

普通は警察ですけど今回は、運ばれた病院で検死をしたようです。

病院に着くと地下駐車場に入りました。警備の方に霊安室の出入り口を開けて貰い

そこに車をつけます。

 

パヤオ
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