葬式で芽生えた恋

第1章( 4 / 36 )

この家は、かなりの資産家でとにかく出来るだけの事はやってあげたいとの事で

お部屋は12畳の和室があります。そこに一番高い祭壇を飾りたいとおっしゃっています

それ以外の備品や商品についても最高級なものでやりたいので

喪主のご主人は私を見て優しそうな声で「後は、高山さんにお任せしますからよろしく」と

だけ言ってくれました。

私は、その家にふさわしい棺や骨壷まで最高な商品を揃えました。

後は、お姉さんたちがいろいろ無理難題を言って来るのをご説明する感じです。

例えば、雨が降った時の為にお寺の駐車場をすべてテントで埋め尽くす事が出来ないか

とか出棺の時に国道を交通規制掛ける事は出来ないのかとか言っています。

そのたびにお金はなんとかするからお願いしますと何かにつけてお金の話です。

結局最終的には、ご長男の意見でそういう事はなしになり後は祭壇やお花で綺麗に

飾り付けして送りましょうと言う事になりました。

それから、こちらの娘さんがすべてが福田姓なのは長女と3女が出戻りです。

唯一独身を貫いているのが二女の光子だけでした。

この光子さんも家から出て一人でマンション暮らしです。

こちらに住んでいるのは、ご両親と長男夫婦とその息子それに長女と3女です。

 

 

第1章( 5 / 36 )

その時は、長男の嫁さんである福田直子さん(37歳)とその息子の守くん(5歳)は

自宅にはいませんでした。

私は、打ち合わせが終わると会社に電話を入れて一旦社に戻り準備に向かいます。

会社に着くとすでに祭壇がトラックに載せてあります。ワンボックスカーの方をあけると

棺が載せてあり久しぶりに見る5面彫りの底板意外すべて鳳凰の彫刻が入っている

棺です。私は久しぶりに見る棺だなと言って蓋も開けて中身を確認しました。

 

祭壇の準備に今回5人で行きました。何故なら途中警察からご遺体の引き取りの

連絡が入るので設営の途中に2人抜けてご遺体の引き取りに行きます。

準備に行った時はまだご遺体も帰ってないので近所や親戚の方もいなくて作業も

とてもやりやすいです。特に家の中の祭壇準備は中に人がいるととてもやりづらくて

作業自体がかなり遅れます。

祭壇の飾り付けも一通り終わりそうな頃ご遺族の様子があわただしくなりました。

ご長男が私の方に駆け寄り警察から電話があり「引き取りのお時間ですから」との事

私は、もう一人と一緒にワンボックスカーに乗り込み病院に向かいます。

普通は警察ですけど今回は、運ばれた病院で検死をしたようです。

病院に着くと地下駐車場に入りました。警備の方に霊安室の出入り口を開けて貰い

そこに車をつけます。

 

第1章( 6 / 36 )

直子との出会い

車のバックドアをあけ棺をストレッチャーに乗せたまま霊安室の中に入れます。

まだ終わってないので2人で霊安室の中で待ちます。

ご遺体は、霊安室の隣にある剖検室と言うところにありました

そこから出すと綺麗に着替えも終わっていましたので

そのまま霊安室に案内してご遺族に焼香させます。

ご家族皆さんが焼香を終わろうとする時に最後に焼香された女性がいました。

私は、下の方を向いていたのでチラッとしか見ませんでしたが

明らかに若くて綺麗な感じの女性です。
焼香が終わるとそのままその場で棺に納めます。

棺を車に乗せる時もその女性はうつむいていて顔を確認できません。

しかも駐車場が地下ですから暗くて顔もはっきり判りません。

打ち合わせや自宅での設営している時は見かけなかった方です。

車に乗せたら喪主だけ後ろの席に乗って貰い残りの方は各々乗ってきた車で

自宅まで移動します。その時にご長男がその女性に「直子、こっちの車に乗って」

と言ってるのが聞こえます。

多分、ご家族だろうと言う感じでした。

 

第1章( 7 / 36 )

車は、自宅につきました。外の案内板や入り口の提灯などもすべて飾り終えています。

家の門の方には、ご近所の人や親戚の人が大勢います。

先ほどまでは、ご家族の方と身近な親戚の人が3人くらいしかいなかったのですが

今は、約30人位います。車から降りて後ろのシートのご主人を下ろしてそれから

バックドアを開けてストレッチャーを出して棺を家の中に入れます。

その時周りにいた年配の女性(いわゆるうるさいおばさんと称される人たち)が

棺の蓋を泣きわめきながら叩いています。しかも大勢で叩きます。

「棺を叩くのはやめて下さい。」と言ってもその人たちの泣きわめく声にかき消されて

私の声は完全に消されて誰も聞く人はいません。

祭壇の前に棺を安置するとゆっくり蓋をあけました。すると周りにいた人たちがどっと

棺の周りに集まって来て「ヨネちゃんなんで、」とか「どうしてこうなったの」と泣きながら

集まってきます。棺のすぐそばにいた私もつぶされそうでした。

それから、隣の部屋に行きご長男と食事の打ち合わせや翌日の打ち合わせ等を

しました。

 

そして一旦は会社に戻り翌日の準備やお通夜の料理の確認をします。

しばらくすると妻から電話があり今日とりあえず実家に帰るからとの事でした。

義姉が車で迎えに来て妻と娘を実家に連れて行くようです。

私もほっとしました。臨月の状態だからしばらく実家にいてくれると助かります。 

 

パヤオ
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