たぶん、どこかへ行きたかった。
遠い、遠い昔、オレには「行きたい場所」があった。
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「行きたい場所」
きっと、いまもあるのだろう。
目には見えない星たちのように、オレの身体の中には、いまでも「行きたい場所」があるはずだ。
36才の夏
富士山に登った。山頂という目標に向かって、ただひたすら歩みを進めている時、オレの全身に、「ありのままの現実」が飛び込んできた。
放置されて枯れてしまった観葉植物のように、オレの足下には、オレが枯らしてしまった、たくさんの思いが転がっていた。
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