Z32

夜の街を歩いていると、もう一つの目が、オレを見ている気がする。

 

もう一つの目は、オレのことを道端に咲いている小さな花のように見ている。

 

とても穏やかで、やさしく、それでいてどこか冷めている。

 

オレは、どうしたらいいのかわからなくなる。

 

自然にあるべきだという気持ちと、不自然にあるべきだという気持ちが混在している。

 

 

 

 

たぶん、どこかへ行きたかった。

 

遠い、遠い昔、オレには「行きたい場所」があった。

きっと、いまもあるのだろう。

 

目には見えない星たちのように、オレの身体の中には、いまでも「行きたい場所」があるはずだ。

 

36才の夏

 

富士山に登った。山頂という目標に向かって、ただひたすら歩みを進めている時、オレの全身に、「ありのままの現実」が飛び込んできた。

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