夜の街を歩いていると、もう一つの目が、オレを見ている気がする。
もう一つの目は、オレのことを道端に咲いている小さな花のように見ている。
とても穏やかで、やさしく、それでいてどこか冷めている。
オレは、どうしたらいいのかわからなくなる。
自然にあるべきだという気持ちと、不自然にあるべきだという気持ちが混在している。
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たぶん、どこかへ行きたかった。
遠い、遠い昔、オレには「行きたい場所」があった。
「行きたい場所」
きっと、いまもあるのだろう。
目には見えない星たちのように、オレの身体の中には、いまでも「行きたい場所」があるはずだ。
36才の夏
富士山に登った。山頂という目標に向かって、ただひたすら歩みを進めている時、オレの全身に、「ありのままの現実」が飛び込んできた。
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