パンチラ闘争

三人は「ハハハ・・・」と笑うと松島が言った。「なんですか?パンチラ禁止反対デモって?聞いたことないよな」菊池も怪訝な顔をすると尋ねた。「もっと分かりやすく話してくんないかな~、さっぱりわかんないよ」三人はコーラを飲み始めた。大島は正座するとかしこまった顔で話しはじめた。「実はITC48の解散が決定したんだ。これは教頭の命令だ。解散の理由は男子生徒がパンチラを見て、頭がパンチラになり、学力が低下した、と言うことだ。まったく、ばかげた話だけど、教頭が言うからしょうがない。

 

そこで、男子生徒にパンチラは悪でなく、健全なものであると、デモをやってほしいわけだ。諸君、デモをやってくれ、頼む、ITC48の再結成のために一肌脱いでくれ。お願い!」大島は両手を合わせた。三人は話がピンと来なかったが、ITC48が解散すれば、パンチラが見られなくなるのは困ると思った。「ITC48が解散、困るよな~、パンチラを楽しみに、学校に行っているようなもんだからな~」菊池がぼやいた。

 

「そうだろ~、困るだろ~、パンチラ禁止反対のデモをやってくれ!この通り!」大島は両手を合わせ、頭を下げた。「そこまで言われるとな~、やらないことも無いけど、三人でやるのか?」菊池は一応承諾した。「おい、おい、三人じゃ、デモになんないだろ。せめて、100人はいないとな」大島は大きく出た。「ひぇ~、100人、むりっす、10人ぐらいということでどう?」菊池は大島の顔を覗いた。

 

「ダメ、100人以上よ、そのくらいじゃないと、教頭を叩きのめせないじゃないか。頼むから、100人集めてくれよ」大島は決死の覚悟で頼んだ。「100人か、大島の頼みだし、焼肉も食わせてもらったし、やってみるか、だけど、もし、100人以上集めたら、御褒美がほしいな」菊池はニコッとした。大島は顔をしかめて訊ねた。「どんな、御褒美がいいの?」

 

「そうだな~、キス!がいいな~、な、みんな」菊池は松島と佐藤に笑顔でサインを送った。二人は大きく頷いた。大島は横山と八神を一瞥すると「よし、口以外にキス一回、これで手を打とう、横山、八神もいいよな」大島は同意を求めると、二人もゆっくり頷いた。「そこで、デモの決行日は8月15日、教職員会議の日だ。午後1時半から午後3時まであるから、午後2時からデモ開始と行こう。諸君のデモにITC48の運命がかかっている。よろしく~~」大島は笑顔を作ってウインクした。

 

 菊池、佐藤、松島、三人は参加者を集める段取りを話し合うために、菊池の家に集まった。デモ参加者はサッカーグランドに集合し、そこから職員室に向かってデモ行進をすることにした。野球部、サッカー部、バスケ部、各部員に参加を依頼することは即座に決まったが、100人以上集めるには他の部員にも声をかける必要があった。佐藤は卓球部、テニス部、バドミントン部、剣道部、柔道部の部員に声をかけ、松島は化学部、ギター部、吹奏楽部、美術部に声をかけることにした。

 

野球部キャプテンの菊池は交流試合をしたことのある他校の野球部に声をかけることにした。福岡市内だけでなく、北九州市、久留米市、小郡市、佐賀市、唐津市、鳥栖市、伊万里市、長崎市、佐世保市、熊本市、八代市の中学にも声をかけることにした。「今、糸島中学でパンチラ禁止になってしまえば、お前の学校もパンチラ禁止になってしまう。だから、パンチラ禁止反対デモを一致団結して、一緒にやろうじゃないか!」と菊池は他校の部長に声をかけた。

 

 デモの呼びかけは8月10日から行うことにした。夏休み中とはいえ、早くから行うと教頭の耳に入る恐れがあったからだ。三人は5日間、二度、三度と参加の声かけを繰り返すことにした。他校の参加者がやってくることも想定して、筑前前原駅から糸島中学までの道案内を野球部とサッカー部の一年生にやらせることにした。“パンチラ禁止反対”のプラカードを各部3個ずつ作ることにした。

 

 デモ決行日、8月15日、午後1時、三人はサッカーグランドに集まった。そのとき、野球部1年生2人、サッカー部1年生3人がやってきた。この三人は道案内をさせるために呼んでいた。佐藤と松島は不安であった。二人で必死になって参加を頼んだが、デモの話をうわの空に聞いていたからだ。菊池は他校からの参加を期待していなかったが、近くの中学から5人ほど来てくれることを願った。

 午後1時半、本校の生徒が15人ほど集まった。まだ時間があるとはいえ、菊池は大島に100人以上集めると約束したてまえ、少し、不安になった。道案内の一年生を配置につかせた。徐々に、野球部、サッカー部、バスケ部、卓球部、剣道部、柔道部の顔ぶれが裏門から入っていた。ざっと、数えて50人は超えているようであった。菊池は少し笑みが出てきた。後、15分ほどで50人以上集まってくれるよう心の中で祈った。

 

 職員室から菊池のところに野田先生がやってきた。「今日は試合でもやるのか?」野田先生は菊池に尋ねた。「はい、サッカーの交流試合があります。彼らは応援です」菊池は機転を利かせて嘘をついた。野田先生は納得した顔で職員室に戻っていった。野球部の道案内が他校の生徒を20人ほど引き連れてきた。さらに、サッカー部の道案内も大勢の他校の生徒を案内して来た。数え切れないほどの生徒がやってきた。すでに、100人は突破した。菊池は嬉しくて涙が出そうであった。

 

 本校の生徒も100人近く集まっていた。他校の生徒は200人以上集まっていた。案内役は信じられないほど集まった参加者をサッカーグランドに誘導し、プラカードを手に持って立っている9人のリーダーの後ろに整列させた。整列が終えると、三人は集団の前方に立ち、佐藤がプラスチックの黄色のビールケースに上がりデモの挨拶を始めた。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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