パンチラ闘争

 午後1時半、本校の生徒が15人ほど集まった。まだ時間があるとはいえ、菊池は大島に100人以上集めると約束したてまえ、少し、不安になった。道案内の一年生を配置につかせた。徐々に、野球部、サッカー部、バスケ部、卓球部、剣道部、柔道部の顔ぶれが裏門から入っていた。ざっと、数えて50人は超えているようであった。菊池は少し笑みが出てきた。後、15分ほどで50人以上集まってくれるよう心の中で祈った。

 

 職員室から菊池のところに野田先生がやってきた。「今日は試合でもやるのか?」野田先生は菊池に尋ねた。「はい、サッカーの交流試合があります。彼らは応援です」菊池は機転を利かせて嘘をついた。野田先生は納得した顔で職員室に戻っていった。野球部の道案内が他校の生徒を20人ほど引き連れてきた。さらに、サッカー部の道案内も大勢の他校の生徒を案内して来た。数え切れないほどの生徒がやってきた。すでに、100人は突破した。菊池は嬉しくて涙が出そうであった。

 

 本校の生徒も100人近く集まっていた。他校の生徒は200人以上集まっていた。案内役は信じられないほど集まった参加者をサッカーグランドに誘導し、プラカードを手に持って立っている9人のリーダーの後ろに整列させた。整列が終えると、三人は集団の前方に立ち、佐藤がプラスチックの黄色のビールケースに上がりデモの挨拶を始めた。

 

「みんな、今日はパンチラ禁止反対デモに参加してくれてありがとう!今、一致団結して闘かおう!パンチラ禁止は憲法第21条“表現の自由”を踏みにじるものであり、男のロマンを蔑視するものだ!断固、パンチラ禁止に反対だ!左手を腰に、右手の拳骨を天空へ突き上げよう!パンチラ禁止ハンタ~イ!」佐藤がスローガンを叫ぶと、一斉にパンチラ禁止反対のシュプレヒコールが続いた。「パンチラ禁止ハンタ~イ!パンチラ禁止ハンタ~イ!」

 

 300人以上の参加者はプラカードの後に続き、職員室に向かってデモ行進を始めた。シュプレヒコールの声は次第に大きくなり、民家にまで響き渡っていた。学校周辺の家々からは大人子供が飛び出してきた。この騒ぎに眼を丸くしていた。そのころ、騒ぎに気づいた職員たちは窓際に集まり、デモ行進に唖然としていた。東国原先生と小嶋先生は二人見つめ合い、笑顔で拍手した。

 

 教頭は職員室を飛びだすと、校長室に飛び込んだ。窓際に立ってデモを見ていた校長に飛びついた教頭は、白目をむき、泡を吹いて床に崩れ落ちた。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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