パンチラ闘争

大島は二人に作戦の話をすることにした。大島の部屋に集まった三人は作戦会議に入った。「横山、八神、よく聞いてよ。女神が私たちを救うために、ありがたい啓示を下さったの。それはね、男子生徒のパンチラ禁止反対デモ!デモをやらせるのよ、男子生徒に!男子生徒の要求だったら、グループと小嶋先生は関係ないじゃない。小嶋先生は安泰ってわけ!名案でしょ~」大島はドヤ顔で二人を見つめた。

 

二人は顔を見合わせ頷いたが、横山が怪訝そうに話した。「デモなんて、男子生徒がやるかな~、無理じゃない」八神も「やらないと思う」とぼそりと言った。「二人とも、何、弱気なこと言ってるのよ。話を聞いて、デモのリーダー三人は決まっているの。野球部の菊池、サッカー部の佐藤、バスケ部の松島、この三人をリーダー格にして、デモ隊を結成させるの。三人にデモに参加する生徒を集めさせるってわけ」大島は二人のキョトンとした顔を見つめていた。

 

「え!三人がデモのリーダーになるって言ったの?」八神は信じられない顔をして叫んだ。大島は笑顔を作ると「それがね~、今からお願いするのよ。二人にも協力してもらわないとね」大島は両手を合わせた。「お願いしても、無理だと思うけど」横山は顔をゆがめた。「きっと、うまくいくって!八神は松島に、横山は佐藤にお願いしてほしいの。菊池は私ね。来週の日曜日、八神の焼肉飯店で三人を招待して焼肉パーティーをやるのよ。話は私がつけるから、協力して」大島はまた、両手を合わせた。

日曜日、大島たちは三人の席を準備してじっと待っていた。11時55分、三人はそろって店に飛び込んできた。三人は笑顔を見せ、手を振ると、大島たちの席に向かった。「来てくれてありがとう。こっちに座って、今日はおごりだから、死ぬほど食べて、奥から松島君、佐藤君、菊池君ね」それぞれ、八神、横山、大島の正面に座った。「私たちが焼くから、どんどん食べて、ロース、カルビ、タン、バラ、ピーマン、たまねぎ、カボチャ、どれから焼こうかな~、まずは、ロースかな」大島はとびっきりの演技をすると、大島、横山、八神は正面の彼氏に肉を焼き始めた。

 

三人はしばらく無言で肉を口に放り込んだ。食べたことの無いような高級な肉に眼を丸くして、「うまい、うまい」と口をそろえて満足そうな笑みを浮かべていた。「うまいだろ~、これは伊万里牛だぞ」大島は三人のアホ面をしばらく眺めていた。大島はタイミングを計って、話を切り出した。「みんな、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ」菊池が口を止めて大島を見つめた。

 

大島は話を続けた。「今日集まってもらったのは、まあ~、なんと言うか、デモをやってほしいだな。三人がリーダー格になって、参加者を集めてほしいんだ。やってくれるかな~」大島はあいまいな言い方をしてしまった。「デモか、脱原発のデモだろ!まあ、焼肉食わせてもらったことだし、やってもいいよ。どこでやるんだ」菊池はやる気を見せた。大島は気まずい顔をして、「いやね~、脱原発じゃなくて、パンチラ禁止反対のデモをやってほしいんだな、どうだろう、みんな」

三人は「ハハハ・・・」と笑うと松島が言った。「なんですか?パンチラ禁止反対デモって?聞いたことないよな」菊池も怪訝な顔をすると尋ねた。「もっと分かりやすく話してくんないかな~、さっぱりわかんないよ」三人はコーラを飲み始めた。大島は正座するとかしこまった顔で話しはじめた。「実はITC48の解散が決定したんだ。これは教頭の命令だ。解散の理由は男子生徒がパンチラを見て、頭がパンチラになり、学力が低下した、と言うことだ。まったく、ばかげた話だけど、教頭が言うからしょうがない。

 

そこで、男子生徒にパンチラは悪でなく、健全なものであると、デモをやってほしいわけだ。諸君、デモをやってくれ、頼む、ITC48の再結成のために一肌脱いでくれ。お願い!」大島は両手を合わせた。三人は話がピンと来なかったが、ITC48が解散すれば、パンチラが見られなくなるのは困ると思った。「ITC48が解散、困るよな~、パンチラを楽しみに、学校に行っているようなもんだからな~」菊池がぼやいた。

 

「そうだろ~、困るだろ~、パンチラ禁止反対のデモをやってくれ!この通り!」大島は両手を合わせ、頭を下げた。「そこまで言われるとな~、やらないことも無いけど、三人でやるのか?」菊池は一応承諾した。「おい、おい、三人じゃ、デモになんないだろ。せめて、100人はいないとな」大島は大きく出た。「ひぇ~、100人、むりっす、10人ぐらいということでどう?」菊池は大島の顔を覗いた。

 

「ダメ、100人以上よ、そのくらいじゃないと、教頭を叩きのめせないじゃないか。頼むから、100人集めてくれよ」大島は決死の覚悟で頼んだ。「100人か、大島の頼みだし、焼肉も食わせてもらったし、やってみるか、だけど、もし、100人以上集めたら、御褒美がほしいな」菊池はニコッとした。大島は顔をしかめて訊ねた。「どんな、御褒美がいいの?」

 

「そうだな~、キス!がいいな~、な、みんな」菊池は松島と佐藤に笑顔でサインを送った。二人は大きく頷いた。大島は横山と八神を一瞥すると「よし、口以外にキス一回、これで手を打とう、横山、八神もいいよな」大島は同意を求めると、二人もゆっくり頷いた。「そこで、デモの決行日は8月15日、教職員会議の日だ。午後1時半から午後3時まであるから、午後2時からデモ開始と行こう。諸君のデモにITC48の運命がかかっている。よろしく~~」大島は笑顔を作ってウインクした。

 

 菊池、佐藤、松島、三人は参加者を集める段取りを話し合うために、菊池の家に集まった。デモ参加者はサッカーグランドに集合し、そこから職員室に向かってデモ行進をすることにした。野球部、サッカー部、バスケ部、各部員に参加を依頼することは即座に決まったが、100人以上集めるには他の部員にも声をかける必要があった。佐藤は卓球部、テニス部、バドミントン部、剣道部、柔道部の部員に声をかけ、松島は化学部、ギター部、吹奏楽部、美術部に声をかけることにした。

 

春日信彦
作家:春日信彦
パンチラ闘争
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