パンチラ闘争

「先生、なぜ、教頭はアイドル活動をそんなに嫌っているの。みんな成績はよくないけど、受験に向け一生懸命頑張ると決意したのよ。勉強頑張るから、三人で教頭にお願いに行くわ、いいでしょ」大島は涙しながら小嶋先生に訴えた。小嶋先生は会議での話を詳しくすることにした。「まって、活動禁止の理由は他にもあるのよ。それはパンチラなの。ITC48を男子生徒が応援するのはパンチラが目的で、このパンチラが学力低下の原因だというのよ。だから、どうすることもできなかったの」

 

「え!パンチラ、こんなのいまどき普通じゃない。教頭は横暴よ、パンチラのどこが悪いのよ」大島は大声を張り上げていた。「先生も、同感よ。パンチラが学力低下の原因なんてありえないと思うの。東国原先生も関係ないと言ってくれたの。嬉しかったわ。でも、現実に、男子生徒の偏差値は低いし、パンチラが教育委員会で問題になっているとまで言われると、先生、反論できなかったのよ。だから、本当の理由は男子生徒にあるの、悔しいけれど」小嶋先生は大島の悔しがっている顔をじっと見つめた。

 

大島はしばらく黙っていた。突然、眼を輝かせると明るい声で先生に言った。「分かりました。いま、グループは完全に解散します。先生、このことを教頭に伝えてください。横山、八神いいね、解散よ!」大島は笑顔を見せた。小嶋先生は笑顔を見せたが、「いいのね、本当に納得して、解散してくれるのね」小嶋先生は三人の気持ちを確かめた。「先生、心配しないで、もし、三人が勝手に活動を続ければ、先生はきっと追放されちゃうよ。教頭の思う壺じゃない。名案がひらめいたの!」大島は両脇に立っている横山と八神の肩をポンと叩いた。

大島は二人に作戦の話をすることにした。大島の部屋に集まった三人は作戦会議に入った。「横山、八神、よく聞いてよ。女神が私たちを救うために、ありがたい啓示を下さったの。それはね、男子生徒のパンチラ禁止反対デモ!デモをやらせるのよ、男子生徒に!男子生徒の要求だったら、グループと小嶋先生は関係ないじゃない。小嶋先生は安泰ってわけ!名案でしょ~」大島はドヤ顔で二人を見つめた。

 

二人は顔を見合わせ頷いたが、横山が怪訝そうに話した。「デモなんて、男子生徒がやるかな~、無理じゃない」八神も「やらないと思う」とぼそりと言った。「二人とも、何、弱気なこと言ってるのよ。話を聞いて、デモのリーダー三人は決まっているの。野球部の菊池、サッカー部の佐藤、バスケ部の松島、この三人をリーダー格にして、デモ隊を結成させるの。三人にデモに参加する生徒を集めさせるってわけ」大島は二人のキョトンとした顔を見つめていた。

 

「え!三人がデモのリーダーになるって言ったの?」八神は信じられない顔をして叫んだ。大島は笑顔を作ると「それがね~、今からお願いするのよ。二人にも協力してもらわないとね」大島は両手を合わせた。「お願いしても、無理だと思うけど」横山は顔をゆがめた。「きっと、うまくいくって!八神は松島に、横山は佐藤にお願いしてほしいの。菊池は私ね。来週の日曜日、八神の焼肉飯店で三人を招待して焼肉パーティーをやるのよ。話は私がつけるから、協力して」大島はまた、両手を合わせた。

日曜日、大島たちは三人の席を準備してじっと待っていた。11時55分、三人はそろって店に飛び込んできた。三人は笑顔を見せ、手を振ると、大島たちの席に向かった。「来てくれてありがとう。こっちに座って、今日はおごりだから、死ぬほど食べて、奥から松島君、佐藤君、菊池君ね」それぞれ、八神、横山、大島の正面に座った。「私たちが焼くから、どんどん食べて、ロース、カルビ、タン、バラ、ピーマン、たまねぎ、カボチャ、どれから焼こうかな~、まずは、ロースかな」大島はとびっきりの演技をすると、大島、横山、八神は正面の彼氏に肉を焼き始めた。

 

三人はしばらく無言で肉を口に放り込んだ。食べたことの無いような高級な肉に眼を丸くして、「うまい、うまい」と口をそろえて満足そうな笑みを浮かべていた。「うまいだろ~、これは伊万里牛だぞ」大島は三人のアホ面をしばらく眺めていた。大島はタイミングを計って、話を切り出した。「みんな、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ」菊池が口を止めて大島を見つめた。

 

大島は話を続けた。「今日集まってもらったのは、まあ~、なんと言うか、デモをやってほしいだな。三人がリーダー格になって、参加者を集めてほしいんだ。やってくれるかな~」大島はあいまいな言い方をしてしまった。「デモか、脱原発のデモだろ!まあ、焼肉食わせてもらったことだし、やってもいいよ。どこでやるんだ」菊池はやる気を見せた。大島は気まずい顔をして、「いやね~、脱原発じゃなくて、パンチラ禁止反対のデモをやってほしいんだな、どうだろう、みんな」

三人は「ハハハ・・・」と笑うと松島が言った。「なんですか?パンチラ禁止反対デモって?聞いたことないよな」菊池も怪訝な顔をすると尋ねた。「もっと分かりやすく話してくんないかな~、さっぱりわかんないよ」三人はコーラを飲み始めた。大島は正座するとかしこまった顔で話しはじめた。「実はITC48の解散が決定したんだ。これは教頭の命令だ。解散の理由は男子生徒がパンチラを見て、頭がパンチラになり、学力が低下した、と言うことだ。まったく、ばかげた話だけど、教頭が言うからしょうがない。

 

そこで、男子生徒にパンチラは悪でなく、健全なものであると、デモをやってほしいわけだ。諸君、デモをやってくれ、頼む、ITC48の再結成のために一肌脱いでくれ。お願い!」大島は両手を合わせた。三人は話がピンと来なかったが、ITC48が解散すれば、パンチラが見られなくなるのは困ると思った。「ITC48が解散、困るよな~、パンチラを楽しみに、学校に行っているようなもんだからな~」菊池がぼやいた。

 

「そうだろ~、困るだろ~、パンチラ禁止反対のデモをやってくれ!この通り!」大島は両手を合わせ、頭を下げた。「そこまで言われるとな~、やらないことも無いけど、三人でやるのか?」菊池は一応承諾した。「おい、おい、三人じゃ、デモになんないだろ。せめて、100人はいないとな」大島は大きく出た。「ひぇ~、100人、むりっす、10人ぐらいということでどう?」菊池は大島の顔を覗いた。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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