たどり着いた場所は貴方の胸の中

2章( 5 / 6 )

苦悩

欲求不満は日を追うごとに速度をあげた。


竜を独り占めできないもどかしさ。


なんで妻子持ちなんか好きになってしまったんだろう?


独占欲が人一倍強いわたしなのに?


正しい判断が出来なくなっている。


わたしも妻であり、母なのに。


このまま破滅の道を歩むのだろうか?


それもまた一つの人生なのか?


冷静に考えてみたら、奥さんを嫌う理由がみつからなかったのだ。


見えない敵にパンチを繰り出してるような気になって仕方なかった。


そう、会った事も話した事もない相手を嫌いになるなんて馬鹿げてるような気がしてきて、
わたしは大胆な行動に出ました。


自分から奥さんのブログに近づいたのです。


「はじめまして、いつもブログ楽しく読ませて頂いてます」


「ありがとうございます、年齢が近い方からのコメントとても嬉しいです」


(なにが嬉しいんだか?あんたの棒姉妹なんだよ、わたしは)


少しだけ会話してみてわかった事は奥さんとわたしは同じ男を愛したと言う事だけだった。


「ねぇ、竜?もしわたしが竜の奥さんと違う形で知り合えてたら友達になれたかな?」


「友達?100%無理だね、アイツと美英は絶対に合わねえよ」


奥さんが楽しそうに記事を書いているのをみているうちに、
わたしもブログを書いてみたくなりました。


それもただ書くだけではなく、内容を見せる為にね。


奥さんがわたしのブログに訪問できるように、幾重にも伏線を張り巡らせました。


そして来た事がわかるようにアクセス解析をブログに設置したのです。


飛んで火にいる秋のブタ。


案の定、それらしい人物が現れました。


そのアクセス数は気持ちが悪くなるほどの多さで、


女の執念を酷く感じました。


ブロガーの中には、わたしの事を奥さんに知らせる暇人もいました。


人の不幸は蜜の味なんでしょうね?


わたしは竜に内緒でブログをコソコソと書きました。


世の中には別れたくても別れられない夫婦が何組いるのだろう?


憎しみ合いながらも別れられない夫婦が何組いるんだろう?


子供の為だけに別れられない夫婦が何組いるんだろう?



2章( 6 / 6 )

苛立ち

竜の奥さんがわたしのブログに訪問するようになって一週間が経ちました。


わたしと友人とでランチをしていた時に竜から電話が入りました。


珍しいなと思いました。


「もしもし?」


「美英、ブログやってるのか?」


沈んだ声で竜が訪ねてきた。


(もうバレたのか、早いな)


「うん、やってるよ」


「・・・・」


「それがどうしたの?」


平静を装い訪ね返した。


「嫁が美英のブログを見つけて騒いでるんだよ」


(ああ、知ってるよ)


「ふぅ~~ん、それで?」


「すぐにブログ辞めてくれ、なんでこんな事をわざわざするんだ?
俺たちの関係を壊したいのか?」


「今はランチ中だから退会できないけど、家に帰って退会すればいいんでしょ?」


「ああ、そうしてくれ」


友人が心配してたので事情を説明すると、


「美英さんは熱いよね~、わたしなんか情熱を燃やすものなんか何もないからさ~」


「そうだよね~、年甲斐もなく、自分でもよくやるよって思ってるよ」


ランチを終え家に帰り、早速ブログの退会手続きを済ませた。


面白くなかった。

 

記事を一つ一つ消去しながらムカムカしていた。

 

竜との思い出が消えていく。


なんでわたしだけがブログを辞めなくちゃならないの?


日陰の身だから?


大手を振って陽を浴びてる奥さんが憎くて仕方なかった。


(いなくなれ、竜のそばから)


わたしはやり場のない怒りを竜にぶつけるようになっていきました。


こんなに嫌な女にさせたのは竜のせいなんだから。


「早く家から追い出してよ、あんな女」


「早く離婚してよ、いつまでわたしを待たせる気なの?」


「・・・・・」


「もう辞めてくれ、俺を傷つけて、俺を攻撃して何が楽しいんだ?」


「アンタ約束したよね?わたしを幸せにするって、わたしに言ったよね?」


竜は黙ったまま何も言わなくなってしまった。


わたしは今まで誰にも心を開けなかった。


心を開いて傷つくのが怖かったからだ。


そんなわたしの心を開いてしまった竜。


もう竜を失う事はできない。


竜はわたしの体の一部なのだ。


そう、失えば生きてはいけない。


わたしはどうしたらいいのだろう。


もう後戻りは出来ない。


このまま進むしかない。


自分のブログは仕方なく辞めたが、奥さんのブログはコソコソと読みにいってた、だが、
ある日を境に更新さえれなくなっていた。


どうしたんだろう?


嫌いなヤツなのに気になって仕方がなかった。


竜に尋ねて怖くなった。


それって、わたしのせいなの?



yukinko
作家:yukinko
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