夜空に願い事を・・・ (Make a wish in the night sky ...)

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  台所から母親がするすると小走りに歩いて来た。
「今、揺れた!?  地震あった~・・・!?」
「いいやっ!?・・・」 
  思わず直ぐにテレビを見た、上部に地震情報のテロップが出るはず。
  しかし、待てど待てどテロップは、出なかった。
  チャンネルを変えても出てなかった。
「地震なんか、ないよ~!?  ネ~、疲れていると揺れたように感じることが、あるよ~。 そういう時は、行動を少しゆっくりにするか、体を休めるといいよ~」
「ん~、分かった~」
  俺は、母親が少し疲れているのかもと思い心配になった。

  下が畳じゃなく水の上なら、ラッコが横に成って寝ているみたいに楽ちん気分な体勢で、テレビを見ていた。
(お前  器用にエサをちぎっては、食べるな~、そうガッツいて食べるなよ。
  お前も負け時にご飯を食べないとな~、お薬も飲まないと・・・病にまけるなよっ・・・・・・)
  俺は、そういう風に親父を見て楽しんでいた。

  見ていて母親は、親父を愛しているのだろう、献身的だった。
  親父が弱音を吐いても、物を取ってくれ、作ってくれといっても素直に応じ、馬鹿な事を言っては、家庭内を明るくした。
  俺は、多少  頭が悪くても人当たりの良い元気な文句を言わない母親みたいな女性が好きで尊敬に値した。

  親父が入院中でも店は、大人の溜まり場に成っていた。
  仕事意外でも話しをしに集まり、お茶を飲み、喫茶店を思わせる雰囲気で母親達は、和気あいあいと時間を過ごしていた。
  ストレス解消には、良いのかな~と俺は、思った。

  日本シリーズを掛けた巨人と中日戦でツーアウトからピッチャーが打って塁に出た。
  その時にふと思った。
  親父なら、言うだろう《ヒットを打って塁に出るな》と大きな声で怒鳴るように言うだろう。 なぜなら、ピッチャーが疲れるという理由から。

  また、病院に入った時に  こうも言っていた。 顔をくしゃ×2にしながら、《人とケンカをするな!?》と。 俺に言わせれば・・・ちゃぶ台をひっくり返す勢いで怒ってばかりいた昔ながらの親父の印象が強いから、説得力がないなと俺は、思った。

  普段は、ブスッとした顔をして笑う事のない親父が笑っていた。
  それは、夕食が終わり食卓上の使用した物を台所へ運ぶ時に起こった。
  全部運んでから、親父のはんてんの襟を軽くひっぱり
「おっ、これもか、動かないぞ、運べないな~」
と言った時に仏頂面の親父の顔が笑顔に変わった。
  そしたら母親が、
「お~、そうだ、そうだ、笑っていないとダメだ、笑う門には、福来たるというじゃないか」だって。

  俺が仕事から帰って家に入ると親父は、お店に居てパイプ椅子に座っていた。
「店に出て仕事をしろよっ」
って俺は、活気をつける為・親父に気合いを入れる為に言った。
  俺が銭湯に出ようとした時に親父の後ろ姿のスキンヘッドを軽く叩いた。
  すると今後  親父は、
「ちゃんと免許証を持ったか!?」
とチャッチボールをするように言い返してきた。
(元気がいいじゃな~い、親父。 その調子、その調子)

  テレビを見ていたら、ゴルフ番組で石川 遼が打った玉が池の直ぐに近く、およそ20センチメートル位しか離れていない所で止まっている映像が映っていた。
「うっわ~、こりゃ~、凄い所に止まったな~」
  俺は、面白がって笑っていた。
  親父も笑っていた。
「ハハハハ~、ありゃ~、大変だ、ハハ~」
  親父と一緒にテレビで笑っているのが、心底から嬉しかった。

  母親も面倒を見ているのが疲れ加減で、また、いとこの結婚式もあって面倒をみていられなくなり、親父の事を第一に考えて再入院をする事になった。
  面会では、痩せては、いるものの食欲があり、少し太ったみたいだった。
  良い事だ。 牛乳や温泉卵が好きでデザートには、バニラアイスを好んで食べた。

  口も冗舌で病院の食事は、味が薄いんだよな~とか、薬がおお過ぎるんだよとか、先生には、内緒で痛み止めも隠して持ってきてあるんだと口数も多く話をしていた。
  健康状態が良いみたいで何よりだった。

  亡くなってみると、いい親父でしたという風に成るのだろう、いくら余り良いイメージが無くても。
  思い返してみれば、鬼みたいな男で誉められたイメージがない、いつも厳しい顔をしていて笑っている印象がない、まさしく親の背中を見て歩んで来た感じがする。
  世の中が厳しいから、この育てられ方が合っているのかも・・・!?
  俺は、最後に《今までありがとうございました》と言うのであろうか、《お疲れさんでした》と言うのであろうか!?

  病院に届け物をしに訪れると夕食が終わっていた。
「おっ、ありがとうな」
  会話をし合っていく、母親が親父のひげを剃る、歯磨きの道具を渡す、持って来た下着を渡し、洗濯をするのに下着を袋に入れる。
「ご飯 食べたんか?」
「イヤッ、まだ」
「そうか、これっ食べろや」
  そう言って先生に見つかったチョコレートと黒飴を出してくれた。
「隠れて食べていたのに先生に見つかっちゃった」
  先生は、
「おっ、チョコレートを食べられるように成ったか」
  と言う話しだった。
  机の上には、買ったお茶とミネラルウォーターがあった。

「おまんらに来て貰うと嬉しいよ」
  そう言っていた。
  院内の廊下にある棚に、食事のトレイを入れに歩いて来た。
「ほらっ、もうちょっとナースステーションまで」
  俺は、気合いの言葉を吐き捨てるとエレベーターの所までプッ、プッ、プッと昔のポンポン船みたいに屁をしりながら、痩せた親父が歩いて来た。
  こいつ元気いいな~と俺は、思った。

  エレベーターの扉が開く、そして母と俺は、乗り込んだ。
「ま・た・な」
  お互いに顔を見合った。
  扉が閉まる。
  駐車場の車に乗る時に夜空の星達を見上げた。
  反りが合わない親父。
(・・・親父が長生きしますように・・・)

 

(・・・いつしか、そちらに行ったら、親父、また一緒にウォーキングをしようぜ・・・)

m(;;)m

(・・・また一緒に呑もうぜ・・・)

m(._.)m

(・・・また一緒に家族で銭湯に入ろうぜ・・・)

m(_ _)m

 

あなたは、俺を男にしてくれた。

 

貴方達は、人間として家族を守るのか・・・!?

それとも、孤独に死んで行くのか・・・!?

人のせいにするな、選択を決めるのは、貴方一人だ。

 

ああ・・・っ、この人達に神!?の導きを・・・・・・。

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迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
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