テレビを見ていたら、ゴルフ番組で石川 遼が打った玉が池の直ぐに近く、およそ20センチメートル位しか離れていない所で止まっている映像が映っていた。
「うっわ~、こりゃ~、凄い所に止まったな~」
俺は、面白がって笑っていた。
親父も笑っていた。
「ハハハハ~、ありゃ~、大変だ、ハハ~」
親父と一緒にテレビで笑っているのが、心底から嬉しかった。
母親も面倒を見ているのが疲れ加減で、また、いとこの結婚式もあって面倒をみていられなくなり、親父の事を第一に考えて再入院をする事になった。
面会では、痩せては、いるものの食欲があり、少し太ったみたいだった。
良い事だ。 牛乳や温泉卵が好きでデザートには、バニラアイスを好んで食べた。
口も冗舌で病院の食事は、味が薄いんだよな~とか、薬がおお過ぎるんだよとか、先生には、内緒で痛み止めも隠して持ってきてあるんだと口数も多く話をしていた。
健康状態が良いみたいで何よりだった。
亡くなってみると、いい親父でしたという風に成るのだろう、いくら余り良いイメージが無くても。
思い返してみれば、鬼みたいな男で誉められたイメージがない、いつも厳しい顔をしていて笑っている印象がない、まさしく親の背中を見て歩んで来た感じがする。
世の中が厳しいから、この育てられ方が合っているのかも・・・!?
俺は、最後に《今までありがとうございました》と言うのであろうか、《お疲れさんでした》と言うのであろうか!?
病院に届け物をしに訪れると夕食が終わっていた。
「おっ、ありがとうな」
会話をし合っていく、母親が親父のひげを剃る、歯磨きの道具を渡す、持って来た下着を渡し、洗濯をするのに下着を袋に入れる。
「ご飯 食べたんか?」
「イヤッ、まだ」
「そうか、これっ食べろや」
そう言って先生に見つかったチョコレートと黒飴を出してくれた。
「隠れて食べていたのに先生に見つかっちゃった」
先生は、
「おっ、チョコレートを食べられるように成ったか」
と言う話しだった。
机の上には、買ったお茶とミネラルウォーターがあった。
「おまんらに来て貰うと嬉しいよ」
そう言っていた。
院内の廊下にある棚に、食事のトレイを入れに歩いて来た。
「ほらっ、もうちょっとナースステーションまで」
俺は、気合いの言葉を吐き捨てるとエレベーターの所までプッ、プッ、プッと昔のポンポン船みたいに屁をしりながら、痩せた親父が歩いて来た。
こいつ元気いいな~と俺は、思った。
エレベーターの扉が開く、そして母と俺は、乗り込んだ。
「ま・た・な」
お互いに顔を見合った。
扉が閉まる。
駐車場の車に乗る時に夜空の星達を見上げた。
反りが合わない親父。
(・・・親父が長生きしますように・・・)
(・・・いつしか、そちらに行ったら、親父、また一緒にウォーキングをしようぜ・・・)
m(;;)m
(・・・また一緒に呑もうぜ・・・)
m(._.)m
(・・・また一緒に家族で銭湯に入ろうぜ・・・)
m(_ _)m
あなたは、俺を男にしてくれた。
貴方達は、人間として家族を守るのか・・・!?
それとも、孤独に死んで行くのか・・・!?
人のせいにするな、選択を決めるのは、貴方一人だ。
ああ・・・っ、この人達に神!?の導きを・・・・・・。