再婚

「いや、違うよ。言わないと誤解されるから打ち明けるよ。なぜか、女性不感症になって、勃起不全になってしまったんだよ。つまり、あそこが使い物にならなくなったんだ。情けないけど、どうしようもないんだ」拓也は誤解されるより、恥を掻くことを選んだ。アンナは勃起不全という言葉を聞いて、不吉な不安に駆られた。アンナはどのようにリアクションしたらいいか戸惑った。

 

「きっと、疲れているのよ、心配ないわ。しばらく、休養して、精がつくものでも食べれば、また、元気になるよ」アンナは顔を起こすと拓也をじっと見つめた。拓也の顔にはまったく精気がなかった。アンナは拓也の股間に右手を入れた。まったく萎えきったあそこをしばらく揉んだが、いっこうに硬くならなかった。アンナは一大事件であることを改めて実感した。アンナは拓也におやすみを言うと階下に降りていった。

 

さやかと亜紀はぐっすり寝入っていた。さやかの肩をつんつんと突付いて起こすと、さやかを隣の部屋に招いた。アンナは拓也の事件をどのように話していいか迷ったが、右手が感じたことをありのままに話すことにした。「さやか、大変なことになったよ。結婚はダメかもしれない。拓也のあそこが、ダメになったのよ」アンナは興奮していた。「アンナ、もう少し分かりやすく話してよ。ダメってどういうこと?」さやかはアンナを落ち着かせた。

「拓也は、女性不感症になって、勃起しなくなったの、Hができなくなったのよ」アンナは右手の感触を思い出していた。「女性不感症!きっと、彼女に振られたことが原因ね。アンナ、あきらめることは無いわ、災いを転じて福となす、って言うじゃない。今がチャンスよ、拓也をしっかり看病して、元気にしてあげることができれば、アンナは立派な妻ということじゃない。Hができなくても結婚するのよ」さやかは今こそ結婚すべきと激励した。

 

アンナは眉を下げて「もし、あそこが元気にならなかったら、子供ができないってことよね。子供、産みたいんだけど」アンナは淋しそうにつぶやいた。さやかはアンナの右肩をポンと叩くと「心配御無用!万が一、Hができなくても、子供は産めるのよ。拓也の精子を取り出して人工授精ができるの。だから、安心して」アンナはほんの少し笑顔を見せた。「分かったわ、拓也のために全力を尽くすわ。亜紀のためにもいいお母さんになって見せる」アンナは少し大きな声をだしてしまった。

 

突然、ふすまが開くと亜紀が立っていた。「オネ~チャンたちどうしたの?」亜紀は大きな声に起きてしまった。「ごめんね、起こしてしまって、亜紀ちゃん一緒に寝ようね、いい夢、見なくっちゃ」アンナは笑顔を作り亜紀の前で両膝をつくと、両肩を包むようにそっと手を添えた。アンナ、亜紀、さやかは川の字になって寝床についた。アンナは純白のウエディングドレスを身にまといバージンロードを歩く姿を思い浮かべ、そっと眼を閉じた。

 

春日信彦
作家:春日信彦
再婚
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