「他の友達と帰るの?」
「違うの。帰る方向が同じなのは私だけだし、待ってても黙って帰っちゃう」
「普段もそんな感じ?」
「学校ではあんまり話しない。でも家の近くで会うと翔太君の方から話し掛けてくる」
ケヤさんは思い当たったように、深くうなづいた。
「女の子と仲良いのを見られるのが恥ずかしい時期なのね」
「そうなのかな。しつこくして嫌われるのも嫌だし、どうすればいいか分からないの」
「一人で帰るのは危ないのよ。事件や事故に巻き込まれやすいから」
ケヤさんはなぜか楽しそうに言う、
「うん。家が遠くの人は大勢で帰るように言われてる。でも私の家は学校に近いし、通学路は商店街だから、
何かあってもすぐに人が呼べるし……」
「いいのよ。本当は危なくなくても。近所だと向こうから話し掛けてくるってことは、嫌われているわけじゃ
ないってことよ。だったら、言い訳があればいいの」
「言い訳?」
「そう。一緒に帰る言い訳。一人で帰るの怖いからって言えばいいの」
「それでいいの?」
「ええ。友達に言い訳できるでしょ? 美咲が怖がるから一緒に帰ってるんだって」
「なんか、私が臆病みたい」