星を見つけた君ハートを見つけた僕

第3章 回想( 2 / 11 )

「おう、勇次もありがとうな。ちょっと相談に乗ってくれ」
「うん」と勇次は今日も口数が少ない。相変わらずだな。
「どうなっているんだよ。あの桜さんって言ったっけ?その後、どうなの?」
「それがさ、何度電話をかけても出てくれないんだよ。メールにも返事がないしね」
「お前さ、嫌われたんじゃないの?」と総司郎。よく切れる刀でずばりと切りつけられたようなセリフだった。
「やっぱりそうなのかな?」と考え込んでいると、勇次が、
「彼女に嫌われる事をしてないなら、嫌われてはいないよ。何か事情があるんだよ」と鋭いナイスフォローな指摘をしてくれた。
「勇次はそう思ってくれるか?」と僕。
「そうだよな。勇次はやっぱり目の付け所が違うな」と短絡的思考の総司郎が応えた。
 今の僕には全く余裕がないし、客観的に見ることが出来てない事も分かっているので、こいつらのこの考えは本当に嬉しかった。コップに注いだコーラの泡の音まで聞こえそうな静寂で苦しんでいた自分はもういなかった。僕の心臓の音のほうが大きくなっていた。勇次の声よりも…。
「じゃ、何だろう?どう言う事なんだろう?怪我したとかかな?病気になったとか?」と少し焦りが後押ししてネガティブな発想を展開してしまった。
「それじゃ、連絡つかないな。病院では携帯が使えないしね」と総司郎。
「可能性としてはそれもあるけど、携帯の料金切れと言う事も考えられるね」といつもより饒舌な勇次がまたもや論理的なロジックを展開してくれた。
「おおっ!それだそれ。そうに決まっているよ」と総司郎も同調していった。
「じゃ、もしそうだとして、今の俺に何が出来るかな?」

第3章 回想( 3 / 11 )

「そうだな。料金切れでも受信は可能だろうからメールでしゃべりまくるのがいいんじゃないか?」と総司郎。
「僕もそう思う」と勇次。
「おおっ!そうだよな。料金切れだよな。な~んだ、そうだよな」と言って自分を慰めていたら、総司郎が手を出した。
「ほれ、何かないか?」
「すまんすまん。自己中野郎になっていたぜ。ごめんごめん。ありがとな。この借りはいつか返すから。出世払いって事でよろしく!」
「それってどういう意味?」
「さあ?親父が良く言っているセリフなんだ」
「お前は親父の子供って言う事か?」なんて親父臭い会話の締めくくりだった。
「じゃ、今から桜にメールするから、退散してくれよな」とちょっと失礼だが、焦りから来る桜への思いを彼らもわかってくれているみたいで、笑顔でこう返してくれた。
「お邪魔虫にはなりたくね~な、勇次」
「うん。じゃ、また」
 と皮肉っぽい冗談も置き土産に、二人は帰って行った。この時の僕にとっては最高の置き土産に感じた。ありがとう。



第3章 回想( 4 / 11 )

 早速メールを送ることに決めたが、何を送れば良いのか?少し戸惑った。
 実際にはそれ程深く桜のことを知っているわけではないのだ。ここは一つ、彼女のハートを鷲掴みにする何か?を送らないといけない。
 そこで思いついたのが、彼女の一番の趣味でもあり、僕の一番の趣味でもある詩を共通の話題として思いついた。よし、これだ!ありきたりだがそれが一番だと思った。

 早速詩を作ろうと思い、桜との記憶の引き出しを手探りし、それに自分の気持ちというスパイスを振りかけながら一つの作品を創り上げた。

 そして、先頭にこの文章を追記する。

「桜!覚えているかい?沖縄で知り合った栗原俊介です。どうして返事がないのか?と思っていますが、そんな事は携帯電話の料金に聞いてくれって言われるの じゃないかと思って、聞かないね。とにかくもう一度僕が桜に告白すれば良い事だと思うし、これからの僕が送る詩たちに気持ちを込めますので、返事が出来る ようになれば、その時よろしく!」
「じゃ、この詩を読んでください」

第3章 回想( 5 / 11 )

「星をみつけた」vol.1

    「星をみつけた」

    旅先の沖縄で 見付けたんだよ
    波を掻き分け 波を飛び越えて
    「星見つけたよ」 の言葉と共に
    瞳煌めかせた君と 足の取れたヒトデ

    砂に足を取られて 転ぶ君
    慌てて隣に駆けつける 俺
    笑って起きる君に ドキッとした

    「それ怪我してるね」 が最初の言葉
    「そう4本足よ」 という返事
    「違うよ 君の膝小僧だよ」
    それが君との 始まり

    「今年の秋に 一緒に星を見付けようよ」

    I will find out a star in your hand.
    I will find out a star in your eyes.



星兎心
作家:星兎心
星を見つけた君ハートを見つけた僕
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