星の子 ピカリ

 

 

真っ黒い 絨毯にちりばめた ビーズ玉のようにキラキラ光る星たち。

 

その中で ひときわ輝く星を探してごらん。


きっと 見つかるから。

 

 

 

ある海辺の小さな町。小さな港に小さな山。子犬が小さなあくびをすると、小さな赤ちゃんが笑う。

そんなのどかな町。

 

その町の中心にある、小さな小学校の窓からは、キラキラと輝く海と、大海原を渡る外国の船、真っ白いかもめが風に乗って競争をしている、素敵な景色が見えました。

 

机に両肘をついて、教室の窓から雲の数を数えている少年がいます。

 

彼は「南 元気」くん。その名の通り元気いっぱいの小学二年の男の子。

元気くんは、とにかくわんぱくでいたずら好き。

たくさんのお友達と、楽しく遊ぶのが大好きです。

ところが、元気くんは、小さい時から体も大きく力も強いので、二年生になった頃から、

ちょっとお友達と子猫がじゃれあうようにして遊んでいただけでも、いじめているように見られたり、

ただ遊ぼうとしただけなのに、怖がられて泣かれてしまったり・・・。


いつしか、みんなから「暴れん坊元気」と言われるようになり、おもしろくない日々を送っていました。

 

セミの大合唱も耳に慣れてきた夏のある日。

元気くんにとって、最低最悪ともいえる事件が続きました。

ひとつは、二時間目の体育の時間。

運動場で並んでいると、元気くんの前に並んでいるこの頭に、見るだけで痒くなりそうな、大きな黒と白のしましま模様の蚊がとまっていました。

元気くんは、そのこの為にも大きな手で思わず「ばっち~~ん」と蚊を、いや、蚊のとまっている頭を叩きました。

「やった!」

不運な蚊は、ポロリとどこかに落ちてしまいましたが、ビックリしたのは、突然元気くんに頭を叩かれたその子です。

「うわ~~ん」

と大声で泣いてしまいました。

「蚊がとまってたんだよ」

という元気くんの言うことに、誰も耳を貸してくれず、先生に注意されてしまいました。

 


そして、ふたつめは掃除の時間です。

虫大好きな元気くんは、ゴミ捨て場の近くの木に、せみの抜け殻がたくさんついているのを見つけました。

せみの抜け殻は、陽に透かすときれいな蜜色で、元気くんにとっては、宝石のなる木をみつけたようなものです。

たくさん帽子の中にとって、満ち足りた気持ちで眺めていると、向こうから隣のクラスの女の子が歩いてくるのが見えました。

元気くんは良い気持ちと良い笑顔で

「おい!ブローチやるよ!」

と言って、女の子の洋服の胸の部分に、せみの抜け殻をつけました。

つけられた女の子は、この世の中で虫が一番嫌いな子だったので

「ぎゃ~~~~~」

海に浮かぶ船にも届きそうな、空を羽ばたくかもめも落っこちそうな、大きな声で叫びました。


ここでも元気くんの優しさは裏目にでてしまいました。

 

 

その日、天気とは裏腹に暗い気持ちで家に帰った元気くんは、食欲もなく、おやつにと用意された大好物のアンパンにも手をつけず、ベッドにもぐりこんでしまいました。

「なんだよ!みんなで僕を悪者にして!」

布団に守られた自分だけの世界。暖かい世界で悔しくて泣いているうちに、いつのまにか眠ってしまいました。


元気くんが眠っている間,外では気持ちのいい潮風がピタリととまり、夕日が真っ赤に海と空を染め、いつもと違う何かが起こりそうな、不思議な夕方を彩っていました。

 


元気くんが 目をさますと、辺りはもう、夏の夜に包まれていました。

 

目をこすりこすり 部屋を見まわし、窓のほうをみました。


外にはお月さまがポッカリ浮かんで 優しい光をはなっています。


泣きはらした目でぼんやり四角い空をみていると、ひとつの星がチカチカッと


サインか何かのようにまたたいたようにみえました。


かと思うと、その星がものすごい勢いで、元気くんの所に向かってくるのです!


「流れ星!!」


と元気くんが窓をあけたとたん、キラキラとまばゆい閃光に包まれた、丸っこいものが部屋に飛び込んできました。


あまりの眩しさに、元気くんはしばらく目をあけることができませんでしたが、部屋の中で何かが動いている気配がします。

勇気をだして目をあけてみると・・・

つるんとした頭に、小さな体、キラキラと輝く手のひらサイズの何かが、元気くんのベッドの上でキョロキョロ辺りをみまわしていました。


「ぎょっ!君は宇宙人??」


元気くんが、素っ頓狂な声で聞くと、キラキラ輝く丸っこい生き物は、小さな目をパチクリさせて

「ぼくは、ほしのこ、ピカリだよ」

と言いました。

「星の子?なんで星の子が僕の部屋に落ちてきたんだ?」

元気くんは、夢の延長のような気持ちで、ワクワクして聞きました。


「ぼくは、まだいちにんまえのほしじゃないんだ。いちにんまえのほしになるには、しあわせなきもちを、いっぱいつくらないといけないんだ」

と、小さな手足をバタバタさせて、ピカリがいいました。

そして、バタバタさせすぎて、ベッドの上から落っこちてしまいました。

「ハハハ!なんだかしらないけど、おもしろそうだな!」

と元気くんが言ったとき、「ピピピ~~~~」と奇妙な音がして

「ぼく、とおくからきたから、おなかがへってるんだ。なにかたべるものないかな?」

とピカリがいいました。

元気くんもおやつを食べてなかったので、お腹がペコペコでした。

だから、さっき食べなかったあんぱんをピカリとはんぶんこしました。

「僕は南 元気。よかったらうちに泊ってもいいよ」

とあんぱんをほおばりながら元気くんが言うと、ピカリはあんぱんを見るのも、食べるのも初めてのようで、

「これ!すごくおいしい!すごく、あまい!」

と、自分の体とそう変わらない大きさのあんぱんにかじりついています。

まるであんぱんと戦ってるかのような、そんなピカリがおかしくて、元気くんは昼間あったいやな出来事を、すっかり忘れてしまいました。

 

次の日の朝、元気くんは不思議な、新しい気持ちで目覚めました。

丸っこくてキラキラ光る、どこか憎めない星の子「ピカリ」がやってきて、あんぱんを食べてから「またくるよ」と言って飛んでいったことを、思い出しました。

「あれは、夢だったのかなあ」

 

と、机の上を見ると机の上に置かれたグローブの中に、光をはなっていない白いピカリが眠っていました。


(みんな、いつも僕の言うこと信じてくれないけど、ピカリを見せたら僕のこと見直して、信じてくれるかな)


元気くんは、そ~っとピカリをハンカチで包み、ズボンのポケットにいれて、学校に行きました。

 


今日も、夏らしく、太陽が王様のように空で輝いています。

元気くんは、学校に着くと、一番最初に会ったクラスメイトに

「おはよう!すごいものみせたあげるよ!」

と声をかけました。

すると、その子は

「どうせ、くだらないものか気持ち悪いものでしょ!」

と逃げていってしまいました。


そのあとも、何人もの子に声をかけましたが、誰も聞く耳もってくれません。


元気くんは、悔しくて腹がたって、その日一日怖い顔をして過ごしました。

そんな元気くんを見て、クラスメイトは余計怖がり近づこうとはしませんでした。


心に炎を持ったまま、元気くんは家に帰り、ポケットのハンカチの中から、ピカリを取りだしました。

ピカリは、まだ真っ白いまま眠っています。

その間に、元気くんはおこづかいでアンパンをひとつ買ってきて、ジッとピカリを見ていました。

「こいつ、ほんとに可愛くて面白いやつだなぁ」

元気くんの心の炎がすこしづつ消えていきます。


そして陽が落ちだした頃、真っ白なピカリが、だんだん金色に光り始めました。

元気くんは、待ってましたとばかりに

「おい!ピカリ!遊ぼうぜ!」

とピカリを起こしました。


「う~~ん、おはよう、げんきくん。おなかがすいたなぁ」


昨日と同じく、小さな目をパチクリとさせてピカリが目を覚ましました。


「アンパンがあるよ!」

元気くんがワクワクしながら、アンパンを差しだすと


「アンパン!アンパン!このよのたから!」

とピカリは小躍りし、アンパンにかじりつきました。


ピカリはアンパンを半分、ぺろりと食べてお腹をボールのようにふくらませています。


「あはは!お腹もまんまるだぞ!ピカリ、何かして遊ぼうよ!」

元気くんが言うと


「いいよ!じゃあ、きょうのきもちダンスをしよう!」

ピカリはくるりんと一回転して、部屋中をピョンピョンと飛び跳ねはじめました。

 


♪あんぱん あんぱん このよのたから

♪いいことは ばいに  いやなことは いいことに

♪あんぱん あんぱん このよのたから


♪まいにちを あんぱんみたいに あまくしよう

 

ピカリは部屋の、あっちからこっち、そっちからあっち、ピョンピョン踊りながら

歌っています。


ピカリの歌を聞いていると、元気くんの体も自然に動き出しました。


「つぎは、げんきくんのきもちダンスだよ!」


ピカリがいうと、元気くんの口から勝手に今日の気持ちがでてきます。


♪みんな わかってくれないよ

♪みんなしんじてくれないよ


♪ぼくは ひとり ひとりでいいんだ

♪ともだちなんて いらないよ


元気くんの歌を聞いて、ピカリが動きを止めました。


「げんきくん、それどういうこと?」

真剣な目で聞くピカリに、元気くんも動きをとめて

「このまんまだよ!僕には友達なんかいらないんだ!」

と声を荒げていいました。

ピカリは、ピョンと元気くんの肩に乗り、光を強めながら


「そんなことないよ。ともだちはぜったい、ひつようなんだよ」

と言いました。


「いらないよ!友達なんかめんどくさいだけだ!」


元気くんが、心のモヤモヤを出し切るかのように大きな声で言うと


ピカリは、ピカ~ッと強く光り、


「ともだちのいない せいかつなんて、あんこのはいっていないあんぱんみたいに、さみしいもんなんだよ!」


と叫んで、窓からとんでいってしまいました。


机の上には、ピカリの残した半分のアンパンが、


いや、あんこの消えた半分のアンパンがコロンと転がっていました。

 

朝になり、元気くんは目が覚めるなり、机の上のグローブを見てみましたが、

ピカリの姿はありませんでした。


「せっかく仲良くなれそうだったのにな」


と心にポッカリ穴のあいたような気持ちで、学校に行きました。


授業中も、窓の外を眺めてはため息ばかり。


(この空のどこかにピカリがいるのかな)


目をこらしてみても、白い雲とさんさんと輝くお日様しか見えませんでした。


だけど、悲しい気分でいても、お腹は減ります。


給食の時間がやってきました。


今日の給食は、皮肉にもアンパン。


ピカリの言ったことが思い出されます。

(今日はアンパン食べたくないな~)

とアンパンを手に取ったとき、


「あれ~?あんこが入ってない~!」

 


「私のも入ってない!」

 


「僕のも!」

 


「せんせ~~、アンパンなのにあんこが入ってませ~ん!」

 

教室で次々と湧きあがる声。


元気くんも、もしやとアンパンを割ってみると・・・・


見事に何も入っていないのです!

あんこのあるべきところが、空っぽのがらんどう。

これでは、あんぱんではなく「カラパン」です。

先生は、慌てて給食室に行き、給食のおばさんは、このパンが作られているパン屋さんに問い合わせました。

すると、パン屋さんでもアンパンのあんこがこつぜんと消えているというのです!


小さな町は、この不思議な事件に大騒ぎになりました。


パン屋さんがあんこをいれて焼いても焼いても、パンを割るといれたはずのあんこがなくなっているのです。


町中のみんなが首をかしげる中、心当たりのある人が一人いました。

元気くんです。

元気くんは、自分がピカリを怒らせたから、町中のアンパンが空っぽになったのだと思い、青い顔をしていました。


(どうしよう・・・僕のせいだ・・・)

「元気くん、顔色悪いけど、どうしたの?」


元気くんの真っ青な顔を見て、クラスメイトの林 だいきくんが声をかけてくれました。


だいきくんは、元気くんが体育の時間に、頭をひっぱたいた子です。

「実は・・・僕・・・」

元気くんはだいきくんに全て話してみました。

だいきくんは、最後まで真剣に聞いてくれました。

そして、

「よし、なくなってしまったものは、僕たちで作ろう」

と言って、黒板の前に立ち、クラスのみんなに元気くんの話を説明してくれました。

 

そして最後に


「これから、みんなでアンパンをつくるぞ!」

と大きな声で言いました。

その声にみんなは

「えいえい、お~!」

で答えました。


それからクラスの半分の子達は、和菓子屋を営むとんちゃんちに行き、とんちゃんのおじいちゃんを連れてきました。

もう半分の子達は、町のパン屋に行き、パンを作り続けて30年のおじさんを連れてきました。

学校の調理実習室で、みんなであんことパン生地を作ります。

その様子はもうてんやわんや。お祭りのようです。

先生方は、ニコニコとその様子を見ています。

あんことパン生地がそろい、全員であんこを優しくパン生地で包みます。

元気くんも、クラスのみんなも、先生も、とんちゃんのおじいちゃんも、パン屋のおじさんも、みんな優しい気持ちでいっぱいでした。

お日様の光も優しくなってきた頃、みんなの優しい気持ちがつまったアンパンをオーブンに。

みんなは、オーブンの前に集まり、今日のパン作りの話をぺちゃくちゃと始めました。


「あんこって作るの大変だね」


「パンも生地をこねるのが難しかったよ」


「でも楽しかったね」


「元気くんのおかげだね」


「いい匂いがしてきたよ」

 

しばらくすると、

「チーン」

小気味よい音が、調理実習室に響きました。


元気くんとだいきくんがオーブンを開き、こんがりとおいしそうに焼けたアンパンの並んだ天板を取りだしました。

見た目は、おいしそうな普通のアンパン。

さて、中身は・・・・


元気くんが、一口かじると、甘~いあんこの風味が、口いっぱいに広がります。


「やった~~!!」

その声に、みんな次々と天板に手を伸ばしアンパンをほおばりました。

「おいしい~!」


「やったね~!」


みんなの笑顔が咲きます。

ほくほくのパン生地に包まれたあんこ。

元気くんは、自分がほくほくの温かい友達に包まれたあんこみたいだと思いました。


そして、初めて

「友達って、すごくいいな」

と思いました。

subaru
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