星の子 ピカリ

 

朝になり、元気くんは目が覚めるなり、机の上のグローブを見てみましたが、

ピカリの姿はありませんでした。


「せっかく仲良くなれそうだったのにな」


と心にポッカリ穴のあいたような気持ちで、学校に行きました。


授業中も、窓の外を眺めてはため息ばかり。


(この空のどこかにピカリがいるのかな)


目をこらしてみても、白い雲とさんさんと輝くお日様しか見えませんでした。


だけど、悲しい気分でいても、お腹は減ります。


給食の時間がやってきました。


今日の給食は、皮肉にもアンパン。


ピカリの言ったことが思い出されます。

(今日はアンパン食べたくないな~)

とアンパンを手に取ったとき、


「あれ~?あんこが入ってない~!」

 


「私のも入ってない!」

 


「僕のも!」

 


「せんせ~~、アンパンなのにあんこが入ってませ~ん!」

 

教室で次々と湧きあがる声。


元気くんも、もしやとアンパンを割ってみると・・・・


見事に何も入っていないのです!

あんこのあるべきところが、空っぽのがらんどう。

これでは、あんぱんではなく「カラパン」です。

先生は、慌てて給食室に行き、給食のおばさんは、このパンが作られているパン屋さんに問い合わせました。

すると、パン屋さんでもアンパンのあんこがこつぜんと消えているというのです!


小さな町は、この不思議な事件に大騒ぎになりました。


パン屋さんがあんこをいれて焼いても焼いても、パンを割るといれたはずのあんこがなくなっているのです。


町中のみんなが首をかしげる中、心当たりのある人が一人いました。

元気くんです。

元気くんは、自分がピカリを怒らせたから、町中のアンパンが空っぽになったのだと思い、青い顔をしていました。


(どうしよう・・・僕のせいだ・・・)

「元気くん、顔色悪いけど、どうしたの?」


元気くんの真っ青な顔を見て、クラスメイトの林 だいきくんが声をかけてくれました。


だいきくんは、元気くんが体育の時間に、頭をひっぱたいた子です。

「実は・・・僕・・・」

元気くんはだいきくんに全て話してみました。

だいきくんは、最後まで真剣に聞いてくれました。

そして、

「よし、なくなってしまったものは、僕たちで作ろう」

と言って、黒板の前に立ち、クラスのみんなに元気くんの話を説明してくれました。

 

そして最後に


「これから、みんなでアンパンをつくるぞ!」

と大きな声で言いました。

その声にみんなは

「えいえい、お~!」

で答えました。


それからクラスの半分の子達は、和菓子屋を営むとんちゃんちに行き、とんちゃんのおじいちゃんを連れてきました。

もう半分の子達は、町のパン屋に行き、パンを作り続けて30年のおじさんを連れてきました。

学校の調理実習室で、みんなであんことパン生地を作ります。

その様子はもうてんやわんや。お祭りのようです。

先生方は、ニコニコとその様子を見ています。

あんことパン生地がそろい、全員であんこを優しくパン生地で包みます。

元気くんも、クラスのみんなも、先生も、とんちゃんのおじいちゃんも、パン屋のおじさんも、みんな優しい気持ちでいっぱいでした。

お日様の光も優しくなってきた頃、みんなの優しい気持ちがつまったアンパンをオーブンに。

みんなは、オーブンの前に集まり、今日のパン作りの話をぺちゃくちゃと始めました。


「あんこって作るの大変だね」


「パンも生地をこねるのが難しかったよ」


「でも楽しかったね」


「元気くんのおかげだね」


「いい匂いがしてきたよ」

 

しばらくすると、

「チーン」

小気味よい音が、調理実習室に響きました。


元気くんとだいきくんがオーブンを開き、こんがりとおいしそうに焼けたアンパンの並んだ天板を取りだしました。

見た目は、おいしそうな普通のアンパン。

さて、中身は・・・・


元気くんが、一口かじると、甘~いあんこの風味が、口いっぱいに広がります。


「やった~~!!」

その声に、みんな次々と天板に手を伸ばしアンパンをほおばりました。

「おいしい~!」


「やったね~!」


みんなの笑顔が咲きます。

ほくほくのパン生地に包まれたあんこ。

元気くんは、自分がほくほくの温かい友達に包まれたあんこみたいだと思いました。


そして、初めて

「友達って、すごくいいな」

と思いました。

 

そこにいるみんなが、ひとつになり、温かい気持ちでアンパンをほおばっていると、

暗くなりかけていた空から、ピカ~っとものすごい光の玉が、調理実習室に飛び込んできました。

ピカリです。


ピカリは、みんなで焼き上げたアンパンに手を伸ばすと


「元気くん、あんこの大切さわかった?」


とアンパンにかじりつきました。


「わかったよ!ピカリ!友達は宝だよ。この世の宝だよ!」


「そうだよ!あんこもともだちも、このよのたからだよ。わすれないで」


と言うと、くるりと一回転して、光の粉を舞き散らしながら

 


♪ともだち ともだち このよのたから


♪いいことばいに わるいことは はんぶんに


♪ともだち ともだち たいせつに


と、みんなの頭の上を飛び跳ね、踊りました。


みんなもつられて踊ります。

子供たちも、先生も、おじいちゃんも、おじさんも

みんなでみんなで踊ります。


すると、ピカリは、

「あんぱん、ごちそうさま!」

と言って、またピカ~っと光をはなって、空の彼方に飛んでいってしまいました。


そのひ、小さな町には、あんぱんの雨が降ってきて

町中、甘~い匂いに包まれました。

誰でも、みんな、幸せそうに アンパンを食べていて

空には、星がピカリと光っていたんだって。

 

subaru
作家:subaru
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