~勇者が行く~(1)

本編( 8 / 11 )

外伝(肆)

外伝(肆)

 

 ~魔王が行く~

ある日、それは遠く離れた世界で「勇者」が生まれたちょうどその日。
とある村で一人の少年が産声をあげた。

 

1:誕生〔0歳:LEVEL1〕
出生届の間違いで、「魔王」という名にされてしまった。お役所さん、そりゃないよ。

生きてるだけで後ろ指差されるという僕の悲惨な人生が、いま始まった。

魔王が現れた。

 

2:暗黒〔0歳:LEVEL1〕
オムツからヨダレ掛けまで、全てが黒に統一されている僕のコスチューム。
「魔王=黒」という安直な考え方はやめてほしいですお母さん。

あと、息子に「様」を付けるほどノリノリなのもキッツいですお母さん。

魔王は参っている。

 

3:苦悩〔1歳:LEVEL1〕
今日は僕の誕生日。 でも母さん、誕生日を「黒ミサ」と呼ぶのはやめてください。

ところで、いま食卓に並んでる肉は何の肉ですか? …怖くて食べられない。

魔王は日に日にやつれていく。

 

4:些細〔1歳:LEVEL1〕
今更だけど、もし役所のミスがなかったら、僕はどんな名前になっていたんだろう?
気になった僕は、母さんの日記をコッソリと覗いてみることにした。
『役所の手違いで、大事な息子が「魔王」なんて名前にされてしまった。可哀想に。』
母さん…だったらなんで、出生時からノリノリだったの…?
『私は「魔皇」と書いたのに…。』

ミスって…その程度…?

魔王は恨む相手が違った。

 

5:謝罪〔1歳:LEVEL1〕
母の日記を読み、今まで憎むべき人を誤っていたことに気づいた夏の昼下がり。
お役所さんに罪は無いのに、僕はずっと恨んでた…。 やはり一度謝っておきたい。
そう思った僕は役所へと向かった。 今のこの気持ちを、担当だった人に伝え…

母さんの、仕業ですか?

役所は滅んでいた。

 

6:会話〔2歳:LEVEL1〕
生まれて二年が経ち、僕もやっと流暢に言葉が話せるようになった。
というわけで、出生時から気になっている「ある疑問」を母にぶつけてみたのです。
魔王「母さん、僕には父さんはいないの? 見かけないってことはやっぱり…」
母「…そう、今はもう…いないんですよ…。」
魔王「そ、そっか…。 あ、じゃあさ、父さんってどんな人だったの?知りたいよ!」
母「ウフフ。とっても素敵な人でしたよ。」
魔王「ホントに?例えばどこらへんが??(わくわく!)」

母「名前が。」

そこに愛はありましたか?

父の名は「嗟嘆(サタン)」だった。

 

7:驚愕〔2歳:LEVEL1〕
父さんはもういないと告げられ、さすがにショックだった僕。どこまで薄幸なんだか。
もし父が正常な人間だったら、共に協力して母さんを倒そうと思っていたのに…。
魔王「ところで母さん、父さんはいつまでこの家にいたの?」
母「あ~、ちょうど一年くらい前まででしょうか。」
魔王「えっ!じゃあ僕も会ったことあるの!?でも覚えてないよ僕!!」
母「あの人、あんまり帰って来ませんでしたから…。」
魔王「あぁ…お仕事が忙しかったんだね…。 そっか、一度も会えなかったのか…。」
母「いいえ?去年の誕生日に、一度だけ会ってるはずですよ?」
魔王「…へ?」


魔王「Σ( ̄□ ̄;)!!」

もしかして、僕は父さんを食べましたか?

魔王の肩書きに「父食い疑惑」が加わった。

 

8:反抗〔2歳:LEVEL1〕
去年の誕生日、無理矢理食べさせられたお肉が父さんかもしれないだなんて…。
もうホントにグレてやりたい。でもそれじゃ母さんの思惑通りなので、絶対グレない!
魔王「母さんが魔王好きなのはわかったけど、僕は絶対にならないからね!」
母「えぇっ!は、反抗期!?反抗期ですか魔王様!? やったー!第一歩☆」
魔王「そんな一歩は踏み出してないから!僕は善良な人間になりたいの!」
母「ん~、まあいいんじゃないですか?」
魔王「…へ? い、いいの!?ホントにいいの!?」
母「「善良を装う魔王」というのも、新しくて素敵ですよ。」
魔王「えっ!なんで「魔王」は確定なの!?てゆーか「装う」て!違うから!!」
母「よーし!方向性の決まった魔王様を祝って、今日はお赤飯にしましょうね!」
魔王「いや、祝わないでいいから!「魔王」なんかになる気は無いから!!」
母「まずはニワトリを絞っ…」
魔王「血の赤なの!?」

こんな残念な親がいるなんて、僕だけだと思う。
勇者はクシャミが出た。

 

9:毒舌〔2歳:LEVEL1〕
2歳になったのにちっとも嬉しくないのは、絶対に母さんのせいだと思う。
だから僕は、精一杯の毒舌で母さんを傷つけてやることにしたんだ。
母「魔王様、今年の「貢物」は何がいいですか?何でもおっしゃってください。」

魔王「「お母さん」が欲しい。」
母「も、もう!この子ったら☆」

むしろ逆効果だった。

 

10:敵増〔2歳:LEVEL1〕
最近、母さんの暴走が日に日に激しくなっている気がする。
なぜなら母さんの部屋を訪れたら、机の上にこんな原稿が置いてあったからです。

『急募!! 「資格:強くてたくましい方」、「時給:応相談」、「職種:四天王」』

て、敵が増える…。

もはや逃げられない。

 

11:謎人〔2歳:LEVEL1〕
広告は意外にも反響があり、20人も集まった。これから面接があるそうです。
でも、仮にも「四天王」が「アルバイト」というのはいかがなものだろう?
魔王「それでは次の方どうぞ。」
男「ヌシが魔王か。ほぉ、なかなか良い面構えをしておるな。」
母「あ、アナタ!魔王様に向かってなんという口の利き方を…!」
男「女は黙っていろ。ワシは今、このスイカと話しておるのだ。」
魔王「えっ?スイカ??」
男「2歳でその体躯…さすがは「戦闘族バルク」と言ったところか。良いスイカだ!」
魔王「ち、違いますよ!?僕はスイカなんかじゃ…」
男「フッ、照れるな。その瞳の奥に輝きしスイカ…実に素晴らしい!ガッハッハー!」
魔王「・・・・・・・・。」

こんな人ばっかりです。

類が友を呼んでた。

 

12:忠誠〔2歳:LEVEL1〕
面接に来たのは予想通りアホな人ばっかりで、結局全員不採用になった。
でも数日後、意外な理由から「四天王」は集まることになるのです。
声「たのもぉ~!!魔王様はおられますかー!?」
…ガチャッ。(扉)
魔王「…ハイ、どちらさんですか?宗教の勧誘ならウチはもう「邪教」に…」
男1「我が名は「鴉(カラス)」。是非ともアナタ様の家臣にしていただきたい!」
魔王「は…? えっ、なんですかいきなり??」
女「私は「華緒(はなお)」。我らはアナタのお父上…嗟嘆様に救われた人間です!」
男2「この「黒猫」も是非!嗟嘆様に誓った忠誠、今後はアナタ様に捧げまする!」
魔王「と、父さん…? そっか、父さんは素晴らしい人だったのか…良かった…。」
男女「我ら、「嗟嘆四天王」!!」
魔王「えっ!? いやいや、三人しかいないじゃん!もう一人は!?」
鴉「最初から三人ですが、心は「四天王」です!」
魔王「いや、心構えの問題じゃ無いと思うよ!?」
華緒「そんなことは気にせずに!共に嗟嘆様のカタキを探し、そして討ちましょう!」

僕もカタキに入るのでしょうか?

魔王は事実の隠蔽を決めた。

 

13:迷惑〔2歳:LEVEL1〕
突如現れた「四天王」。 命を狙われても困るので、手なずけることにした。
できることなら深い忠誠を誓わせ、共に手を取り母さんを倒したいものです。
鴉「ま、魔王様!大変です!「義勇軍」と名乗る騎士団が、急に攻めて参りました!」
魔王「えっ!なんで!?僕はまだ何もしてないのに…なんでなの!?」
母「あぁ、それはワタクシめが…」
魔王「な、何か変な情報でも流したの!?勝手なことしないでよ!」
母「雇いました。」
魔王「もっと大迷惑だよ!!」
母「荒波に揉まれてこそ、真の「魔王」は育つと思いまして…つい…」
魔王「「つい…」じゃないから!育つ前に死んじゃうから!!」

母「つい、全宇宙に求人を…。」

こ、このアマァ…!!

魔王は覚醒し始めた。

 

14:晩餐〔3歳:LEVEL3〕
一年が過ぎ、僕は3歳になった。 母が雇った刺客との戦闘でレベルも上がった。
家臣達も懐いてきたので、ぼちぼち復讐に乗り出してもいいのかもしれない。
僕と四天王…四人がかりなら、なんとか寝首くらいは掻けそうな気がするのだ。
魔王(期は熟した。今夜、母を討つよ。 これが奴の最後の晩餐となろう。)
鴉(ハッ!)
華緒(あっ、来られましたよ!)
母「さぁ魔王様、黒ミサの準備が整いましたよ。」
魔王「ああ、わかった…すぐ行く。」

鴉「おぉ、これはスゴいご馳走だ!」
華緒「わぁ~!見たことも無いお料理がイッパイですねぇ!」
魔王「そうか、お前達にとっては珍しいものなんだね。 僕は以前に食べ…」


魔王「Σ( ̄□ ̄;)!!」

ま、まさか…。

そういえば黒猫を見かけない。

 

15:旅立〔5歳:LEVEL7〕
そして月日は流れ…気づけば俺は、すっかり母親の邪気に毒されていた。
まぁ「魔王」になってやる気はサラサラ無いのだが、生真面目に生きる気も失せた。
こうなったらこの星を離れ、奴の目の届かぬ地で自由に破壊を楽しもうと思う。
華緒「ま、魔王様!どこへ行かれるおつもりですか!?」
魔王「俺は旅に出る。お前らも、後は好きにしろ。」
華緒「そ、そんな…!」
鴉「で、でしたら我々も…我々もご一緒させてください!」
華緒「もはや我々は、アナタ様に忠誠を誓った身…離れるわけには参りません!」
魔王「お前ら…。」
家臣達「お願いします!お願いします魔王様!!」
魔王「…だったらその呼び方はやめろ。俺は「魔王」になる気なんぞ無いんでな。」
鴉「で、では…!!」
魔王「フッ、好きにしろ。バカどもめが…。」
華緒「あ、あの~…ところで、「魔王様」でなければ今後はどうお呼びすれば…?」
魔王「「魔」の「王」…意味合い的にはいいのだが、「魔王」の職との区別が欲しい。」
鴉「ならば、「古代語」で「魔の王」を意味する言葉ではいかがでしょう?」
魔王「古代語か…なるほどな。いいだろう!」

魔王「さぁ準備はできたか!? 行くぞお前達!!」
家臣達「ハッ!!」

魔王「俺の名は「ユーザック(王)・シャガ(魔)」!「ユーシャ様」と呼ぶがいい!!」

そして「魔王」は、「侵略者」となった。

 

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第五章

第五章

 

226:進級〔8歳:LEVEL5〕
春…。 8歳になった俺は、今日から五号生として学校に通うことになる。
去年は始業式をサボッてえらい目に遭ったので、今回は真面目に出席しよう。
もしも戦闘になったなら、今年は俺がみんなを守ってやるべきなのかもしれない。
それが去年地獄を見せた奴らへの、当然の報いだと思っているからだ。

…などと考えながら、急いで学校へ向かっている。

勇者は寝過ごした。

 

227:遠足〔8歳:LEVEL5〕
大量の転入生を迎え、今年もなんとか定員に達した我らが冒険科。
おかげでクラスメイトも、盗子、姫ちゃん、巫菜子、博打以外は誰が誰だかわからん。
まぁ早速訪れる春の遠足で、そのウチのかなりの人数は消えるんだろうがな。
ちなみに今年は生徒会を脅して学園祭を中止にさせたため、春行事は遠足だけだ。
教師「今回の遠足は、「クラス対抗宝探し」をやってもらいます。」
勇者「宝探しか…確か一昨年もやったな。 なんだ、ネタ切れなのか?」
教師「いいえ、少し違うんですよ。今年のは前回のような「ゲーム」ではありません。」
盗子「ゲームじゃないってことは…実際にどこかにある何かを探せってこと?」
教師「ハイ、幻と言われている「蒼茫(そうぼう)海賊団」の財宝を」
巫菜子「ん~、沈没船かぁ~。結構大変そうだね。(めんどくせーなオイ…。)」

教師「奪ってきてください。」
生徒「現役から!?」

クラスで対抗どころじゃない。

 

228:先制〔8歳:LEVEL5〕
今回の春遠足の目的は、どうやら「海賊」から宝を奪うことらしい。
確かに海賊は悪党だが、それから宝を奪う行為は悪じゃないのかと問い詰めたい。
勇者「今回のクラス対抗は、各学年のA~C組同士が手を組み戦う三つ巴戦だ。」
弓絵「キャー!キャー! 勇者センパーイ☆カッコいいですぅ~☆」
勇者「というわけで、今回A組連合軍の指揮を執ることになった勇者だ。よろしく。」
少年1「あぁん?ちょっと待てや! リーダーつったらやっぱ六号…ぐわっ!
勇者「俺達は「同志」だ。手を取り合って頑張ろう。」
盗子「まったくもって説得力が無いよ!」
芋子「ワタイは芋さえ食えればなんでもいいわ。」
盗子「そういう集まりじゃないから!」
博打「ところでブラザー、敵の戦力分析はもう済んでるのかい?」
勇者「正直C軍はカスばかり…つまり敵は、暗殺美率いるB軍ということになる。」
栗子「あ、あの、あの…」
姫「あの世。」
勇者「ん~、賢二。」
盗子「コラそこ!勝手に連想ゲーム始めない!」
巫菜子「えっと、どうしたの栗子ちゃん?(気ぃ遣わせんじゃねーよクソガキが。)」
栗子「あ、あの…まままずは、その「海賊船」を探すのがせ先決な気がしまりまり!」
勇者「フッ、甘いな。お前は暗殺美の姑息さを全然わかっていない。」
栗子「で、でも…!」
勇者「まぁ座れ、わからんと言うなら今からその意味を教えてやる。」
栗子「え? あ、ハイ…あうっ!

画鋲の攻撃。
栗子はお尻に2のダメージ。

 

229:魅了〔8歳:LEVEL5〕
予想通り先制攻撃を仕掛けてきた暗殺美。 しかし画鋲なんていつの間に…。
やはり今回は、海賊船より邪魔者の駆除が先らしい。大きな戦になりそうな予感だ。
と考えていた遠足当日、早速刺客の魔の手は迫ってきた。 しかも、すんごい量で。
勇者「くっ!まさか集合場所(学校)が即戦場になるとは思わなかったぜ…!」
歌憐「みんなー!今日はカレンちゃんのために集まってくれてありがとー♪」
C軍男子「うぉおおおお!カレンちゃーん!!」
勇者「って、なぬっ!? なぜB軍の歌憐の取り巻きにC軍が…!?」
弓絵「「歌姫」の能力ですよ先輩☆半端な男子は一瞬で釣られるらしいです~!」
盗子「ど、どうするの勇者!? 人数違うし、それにあの子の歌声は…。」
勇者「まぁ歌は問題なかろう。要はあの音痴な歌を聴かねばいいんだ。」
弓絵「先輩違いますぅー!歌憐の歌には色んなバージョンがあるんですー!」
盗子「えっ!バージョンて…どゆこと!?」
弓絵「盗子先輩には教えませーん!」
巫菜子「じゃあ私には教えてくれる?(教えなかったらブッ殺すぞ小娘!)」
弓絵「えとですねー、「攻撃」「防御」「統制」とか、いっぱい種類があるんですぅ~!」
盗子「ムッキィー!結局アタシにも聞こえてるしー!」
歌憐「じゃあ最初は、いつものあのバラードいっちゃうねー♪」
C軍男子「イェーーーーイ!!」
勇者「お、オープニングからバラード…なんて盛り上がりづらいコンサートなんだ!」

歌憐「それでは聴いてください…「LaLaLa乱打戦」♪」

曲名がバラードじゃない。

 

230:妨害〔8歳:LEVEL5〕
歌憐の能力により、敵の数が一気に増えた。いくら雑魚でもこの量は少々キツい。
しかも、こうしてる間に暗殺美に先を越されるかもしれない。 なんとかせねば。
勇者「チッ、これを全部相手してるとなると…時間が足りん!」
盗子「あ!そうだ栗子、何かいい機械とか無いの? ホラ、歌を邪魔するような…。」
栗子「まま任せてくらはい!わ私が「妨害用拡声器」を作っちゃってましたですよ!」
勇者「おぉ、さすがは「機関技師」! …だが、一体誰が使うんだ?」
芋子「えー、イヤだわ栗子~。ワタイは歌なんて歌えないわよ~。」
盗子「えっ!なにその感じ!? その「実はノリノリよ☆」みたいな感じは!?」

衣装もバッチリ決まっている。

勇者「…つまり、任せていいわけだな?芋っ子よ。」
芋子「仕方ないわね、やったるわ。「皇女」でも庶民の歌謡曲くらい知ってるわよ。」
歌憐「ララララ~乱闘~♪」
C軍「乱闘ー!!」
勇者「ヤバい、始まっちまったぞ! 急げ芋っ子!!」
盗子「って、これのどこが「バラード」なんだよ!」
芋子「あー…ゴホッ、ゴホン。  いぃーーーしやぁ~~きイモ~~♪」
歌憐「!!?」
C軍男子「な、なんだ!?」
盗子「えっ!? た、確かに邪魔できてるけどソレって歌謡曲なの!?」
芋子「おイモ~おイモ~♪ おイモ~だよ~♪」
C軍男子「はぁ!?何言ってんだよテメェ!おイモじゃねーよ!!」
芋子「おイモだYO!」
C軍男子「え、あっ…HEY YO!」
芋子「お芋、食いたいYO!」
C軍男子「く、食いたいYO!」

もう、何がなんだか。

芋子はライブを乗っ取った。

 

231:逃亡〔8歳:LEVEL5〕
芋子のライブジャックにより、なんとか歌憐の攻撃を回避することに成功。
というわけで学校の敵は芋子に任せ、俺達は港へ急ぐことにしたのだった。
勇者「よし、さっさと港へ行くぞ!遠足は今日一日しかないんだ!」
弓絵「船旅ですねー☆ 新婚旅行は南の島がいいですぅ~!」
盗子「違うから!海賊船を探しに行くの!」
弓絵「はぁ~。つまんない人ですね~盗子先輩って。」
盗子「べ、別にいいじゃん!ユーモアなんて別にいらな…」
弓絵「存在が。」
盗子「ムッキィー!やっぱアンタが一番ムカツクー!!」
巫菜子「あれ?そういえば今日は姫ちゃんは…?(サボりかよあの天然は?)」
勇者「む?まぁいいさ。 こんな危険な遠足、無理して参加することもない。」
栗子「ばば博打さんも途中からみ見かけませんでよ?」
勇者「あの野郎ぉ…!!」

~その頃、博打は…~
タッタッタッタッ…(走)
博打「フッ、「三十六計逃ぐるに如かず」ってね。俺にはまだ果たすべき使命が…」
声「おっと、逃がさないでござるよ少年!」
博打「!!」
法足「さぁ食らうがいいでござる!束縛の大奥義、「忍法:大王蜘蛛縛り」を!!」
博打「…くっ! なら俺は、かつて世界を滅ぼした必殺ビームを絞り出してやるぜ!」

世紀の「嘘つき対決」が始まった。

 

232:石化〔8歳:LEVEL5〕
博打の野郎は逃げたが、未だ無傷な我らがA軍。今のところは順調な感じだ。
来るべきB軍との全面戦争に向け、少しでも多くの仲間と共に向かいたいものだ。
などと考えていると、当然の如く次の刺客が現れた。 まぁ、楽勝な相手なのだが。
勇者「ほぉ…次の相手はお前ってわけだな? 俺に逆らう気なのか土男流よ!!」
土男流「し、師匠ー!悪いけど今の私はB軍の一員なんだー!」
メカ盗子「ソシテ アタシハ 「オニイチャン」ノ イチイン。」
盗子「そんな物騒な組織は要らないよ!!」
勇者「う~む…よし、お前に任せるぞ栗子。俺達には時間も人的余裕も無いんだ。」
栗子「えぇええっ!?な、なななんで私の出番だったりしちゃいますか!?」
勇者「相手はロボだ。「機関技師」なら気合いでバラせ。」
メカ盗子「ロボチガウ。」
勇者「特に顔の部分を重点的に。」
盗子「なんで!?」
土男流「ま、待ってくれ!たとえ師匠でも見逃すわけには…!」
勇者「そうか、短い付き合いだったな…。 お前はホント、いい弟子だったのに…。」
土男流「い、イヤだー!やっぱり通っていいから私を見捨てないでくれー!!」

都合のいい弟子だ。

土男流「…というわけで、すまないが一人で死んでほしいんだ栗子先輩ー!!」
栗子「ひ、ひぇええええっ!!」
メカ盗子「クラエ ヒッサツ ビーム ア…ネジ トレタ。」
土男流「うわー! く、首が落ちそうだよトーコちゃーん!?」
メカ盗子「ウ ウチクビ モード?」
土男流「違うんだー!そんな自分を不利にしちゃうような形態は無いんだー!」
栗子「はわわわ!えええっと、そ、それは多分こっちのネジででですよ!」

~一時間後~
栗子「ん、んと、後は多分…ハイ! これで全体の整備も終わりましたよ☆」
土男流「わーい!助かったぜ先輩ー! もうアンタは敵じゃないぜー!」
メカ盗子「アリガト。 モウ コウゲキ シナイ。 アンタ オンジン。」
栗子「えへ、えへへ☆ か、機関技師として当然の事をしただけだってばさー☆」
土男流「あ、そうだ!栗子先輩にお茶を出してやるんだトーコちゃん!」
メカ盗子「ア、 キガ ツカナ カッタ。 イマ ツクル。」
栗子「えっ!まま、まさかそんな機能までと搭載しちゃってやがるですか!?」

メカ盗子「デル ワキカラ。」
栗子「Σ( ̄▽ ̄;) ワキ!?」

栗子は石になった。

 

233:眠宝〔8歳:LEVEL5〕
土男流は栗子に任せ、港へと続く林道に入ると、そこには大きな分かれ道があった。
確か左が近道だが、両方とも港には出られるはずだ。 さて、どっちを選ぶか…。
巫菜子「土の荒れ方から見て…多分B軍は左だね。(チッ、やっぱ近い方かよ。)」
勇者「ならばお前らは右へ行け。 俺が敵を食い止める、その間に抜き去るんだ。」
盗子「えっ!まさか一人でB軍を…100人以上を相手にする気!?死んじゃうよ!」
勇者「放せ!こうしてる間も惜しいんだ! 俺は一刻も早く…」
盗子「イヤッ!!」
勇者「お前から離れたい!!」
盗子「そっちがメインなの!?」
巫菜子「でも勇者君、行ったところで追いつけるの?(もう遅ぇだろがよボケが!)」
勇者「フッ、この俺のお手製…「謎の遠足リュック」に不可能は無い!」
盗子「リュック!? 五年目にしてついにベールを脱ぐの!?」
勇者「今まで散々驚いた。これ以上ビックリするなど有り得んわ!見るがいい!!」

姫「…ほぇ?」
勇者「ビックリーー!!!」

謎は深まるばかりだ。

 

234:再会〔8歳:LEVEL5〕
もはや暗黙の了解なのか、今回も期待を裏切ってくれた我が遠足リュック。
おかげでせっかくの秘策がフイに…。 だがまぁ、姫ちゃんが可愛いから許す。
勇者「くっ!万事休すか…!」
姫「あ~、じゃあ私が連れてってあげるよ。」
盗子「あっ!それって「天使草」!? 確かに空飛んで最短距離を行けば…!」
勇者「よし、じゃあ頼むぞ姫ちゃん!剣がデカいぶん重いだろうが、頑張ってくれ!」
姫「むー、〔砲撃〕!」
一同「え゛っ!?」

天使草はフェイクだった。

勇者「今なら賢二の気持ちがあああぁぁぁぁぁ……!!

キラン☆(青空に一点の光)

姫「行っちゃった…。」
盗子「自分が撃ち込んだんじゃん!」
弓絵「違いますよ勇者センパーイ!弓絵の実家はそっちじゃないですぅー!」
巫菜子「ま、まぁとりあえず…行こっか?(敵がいねーなら楽でいーや。)」
霊魅「うふふ…。 残念だけど…ここから先は通しませんよ…。」
盗子「れ、霊魅!?ここにはアンタが張ってたの!?ってか一人で!?」
弓絵「こっちは100人もいるんですよー?先輩一人で何ができるんですかー?」
霊魅「あらあら…。「霊媒師」をナメたらダメですよ…。」
銃志「動くなよテメェ、俺に近づくと…死ヌぜ?」
盗子「えっ!? なんでそいつが…!?」

〔霊媒師〕
「死霊」を召喚する能力を持つ謎深き職業。
「偽魂(ぎこん)」という核を媒体として霊を呼び寄せる。
偽魂を壊すか術者を倒すまで、その死霊は消せない。

霊魅「退けば良し…退かないなら…うふふ…。」
盗子「へ、へーんだ! そんな奴が何さ!?その程度の雑魚が何人いたって…」

ゴップリン「オヒサシブリ。」
盗子「いやーーーーん!!」

どうでもいいが盗子も雑魚だ。

 

〔砲撃(ほうげき)〕
魔法士:LEVEL5の魔法。(消費MP8)
砲弾等を撃ちっ放す魔法。反動や着地の問題上、人間に使うなんてそんなバカな。
 

 

235:機会〔8歳:LEVEL5〕
どわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
勇者「好いた者の手にかかり死ぬ…か。悪くないかもし…んでたまるかぁーー!!」
声「ん?おぉ、勇者ではないか。人力飛行に挑戦とはまた随分と無謀な試みだな。」
勇者「ぬぉっ!? お、お前は夏の…ちょ、ちょうどいい!助けてくれ鬼ババア!!」
麗華「…ごきげんよう。」
美咲「クエェ。」
勇者「嘘だ嘘だ嘘だ!鬼じゃない!天使だ!女神だ!女神ババア!」
麗華「この期に及んで大した度胸だと少々感銘すら受けるぞ、潰れトマト。」
勇者「わわ悪かった!だから「十数秒後の俺」を的確に表現するのはやめてくれ!」
麗華「やれやれ…。 まぁいい、乗れ。」

勇者は一命を取り留めた。

勇者「ふ、ふぅ~…。 ありがとう、感謝する。だが礼は言わんぞ!!」
麗華「まったく…お前の半分は「意地っ張り」でできてるのか?」
勇者「そんなことより、貴様はこんな中空で何をしてるんだ? 魔界にでも帰ぶっ!
麗華「うむ。 少々急用ができてな、「エリン大陸」へと向かっている最中だ。」
勇者「た、大陸…!?」
麗華「そうだ。 お前も聞いたことくらいはあるだろう?」
勇者「大陸…。」

麗華「来るか?」
勇者「へっ!?」
麗華「ワシも色々と忙しい身だ。お前のような微少な力とて、足しになる日もあろう。」
勇者「だ、誰が美少年だ!!」
麗華「えらく都合のいい聞き間違いだな。というかそれならなぜ怒る?」
勇者「大陸…広い世界…強大な敵…。」
麗華「まぁ返事は今すぐでなくてもいい。考える時間くらいくれてやろう…2秒間。」
勇者「短い!!」

勇者は旅立ちの機会を与えられた。

 

236:妨害〔8歳:LEVEL5〕
ナイスタイミングで俺を助けた麗華は、なんと大陸への出撃を求めてきた。
「旅立ち」と言えば「勇者」として避けては通れぬもの。それに大陸には憧れもある。
行ったところで特に目的は無いが、こんな片田舎で一生を終えるよりはマシか…。
勇者「…よ、よし!行ってやろうじゃねーか! そして無理矢理にでも名を残す!」
麗華「生きて帰れるという保証は無いが…いいのか?」
勇者「フッ。そんな保証など、生まれて此の方一度も手にした記憶は無いが?」
麗華「好いた者への別れも済ませられんが?」
勇者「ぐぉっ…! いや、いい。離れて深まる愛もあるさ。(ひ、姫ちゃーーん!!)」
麗華「そうか。ならば…」
声「おやおや、いけませんねぇ勇者君。」
勇&麗「!!?」
教師「家に帰るまでが遠足ですよ…っと!」

勇者は突き落とされた。

勇者「ぶ、ブッ殺ぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!」

教師「フフッ、まぁこの高度なら大丈夫でしょう。」
麗華「あ、貴方は化け物ですか!神出鬼没にも限度というものがあります!」
教師「いやいや、今の彼の消えっぷりもなかなかでしたよ。」
麗華「貴方が落としたんです!」
教師「ダメですよ麗華君、あの子は巣立つにはまだ早すぎる。」
麗華「し、しかし! 「奴の方」には別段危険な症状は…!」
教師「ん~、そうでもないのですよ。思想に少々危険な部分がありまして。」
麗華「それも貴方の責任な気が…。」
教師「ま、とりあえずもうしばらくは…ね?」
麗華「…わかりました。貴方がそう言うのであれば。」

勇者の意思は無視なのか。

 

237:乗船〔8歳:LEVEL5〕
突き落とされた後、気合いで着地したのは、なにやら変わった形をした船上だった。
もしやこれが「蒼茫海賊団」の船…? どうやら俺は、図らずも勝ってしまったらしい。
蒼茫海賊団は幻の如く滅多に目撃もされず、噂が一人歩きしたような存在と聞く。
きっと大層な宝を持っているに違いない。 よし、とりあえず隠れて様子を窺おう。
勇者(とはいえ、着地時に随分とデカい音がしたからなぁ…あ、やっぱ来たぜ。)
船員「おかしいな…。確か大きな物音がしたと思ったんだが…むぐっ!?
勇者「騒ぐな。騒げば貴様はサメも食わん程にぐっちゃぐちゃな代物に変わるぞ。」
船員「き、貴様…こんなことをして、ただで済むと思っているのか…?」
勇者「フン、ほざくな!海賊風情が偉そうに!」
船員「か、海賊!? フザけるな!我らは「海軍」だ!!」
勇者「お…?」

勇者は国家権力を敵に回した。

船員「海軍に楯突くとは、もはやA級犯罪…。名を名乗れ小僧!捕えてくれるわ!」
勇者「フッ、名乗る程のモンじゃない。」
船員「いや、使いどころ間違ってるぞそのセリフ!そんな謙遜は求めてない!」
勇者「黙れ礼儀知らずめが!人に名を聞く時はまず自分からだろうが!」
船員「そ、そう言われればそうだな。 えっと、私の名は…」
勇者「興味無い。」
船員「なら聞くなよ!!」
勇者「ケッ、海軍がなんだってんだ!そんなのこの俺様がブッ潰してやるよ!!」
船員「な、なんだと…!?」

勇者「この宿敵様がなぁ!!」

宿敵は前科一犯になった。

 

238:混乱〔8歳:LEVEL5〕
海軍を撒くのに時間がかかり、なんとか港に着いた頃には既に夕刻だった。
危うく国家を敵に回しかけたが、顔は見られてないのでまぁ問題は無いだろう。
港には盗子達の姿もあった。どうやら生き残ったらしい。 チッ、しぶとい奴らめ。
勇者「そうかみんな生きてたか。じゃあ俺と別れてから何があったか教えてくれ。」
盗子「あぁ…うぅ…。」
巫菜子「うぐぅ~…。」
勇者「む?やけに放心状態だなお前ら。何か衝撃的なことでもあったのか?」
盗子「ご、ゴップリンが…。」
勇者「ゴップリン!? ば、バカな!奴は俺が倒したはずだ!」
巫菜子「お化けが…攻撃が…。」
勇者「まさか化けて出やがったのか!?しかも攻撃って、一体どんな!?」
栗子「わ、ワキから…。」
勇者「ワキ!?ワキからなのか!?そんな微妙な部位からどんな攻撃を!?」
栗子「もう…飲めな…。」
勇者「飲ますのか!?」
栗子「お、お気持ち…だけで…。」
勇者「お気持ちは嬉しいのか!?」

勇者はその晩、妙な夢にうなされた。

 

239:家族〔8歳:LEVEL5〕
結局、どの組も海賊団は発見できずに終わった春の遠足。続きはきっと秋だろう。
今回も普通に疲れたし、とりあえず帰って大人しく寝ることにする。
勇者「ふぅ~…、ただいまー。」
チョメ「ポピュッパ☆」
勇者「よしよしチョメ太郎。 出迎えは嬉しいが、とりあえずそのバズーカは降ろせ。」
チョメ「ポプゥ~…。」
義母「あ、おっ帰り勇者ちゃ~ん☆ 超ひっさしぶりって感じぃ~?」
勇者「む?なんだ、来てたのかカマハハ。オカマバーは休みか?」
血子「今日はお義母様に料理を習ってたんだよ☆」
勇者「そしてお前はいつまで居る気なんだ血子?」
父「あぁ、やはり一家団欒はいいなぁ…☆」
勇者「何が一家だ!四割が魔物じゃねーか!!」
血子「ひ、酷いよダーリン! オカマは魔物じゃないよ!お義母様に謝って!」
勇者「お前が謝れよ!!」
父「よーし、じゃあ家族が全員揃ったところで話がある。 母さん、よろしく。」
義母「えっとね~、この夏はみんなで旅行に行こうかなってゆーかぁ~?」
血子「旅行!ダーリンと旅行! 血子は大賛成ーー☆」
チョメ「ポピュパッポプ!」
勇者「俺は却下。 こんな濃すぎる奴らとの旅なんて、休まるどころか逆に疲れる。」
義母「でも~、このメンツじゃなきゃ行けないしぃ~。値段も超安いんだけど~。」
勇者「このメンツってことは…家族を対象にした旅ってことか? あざとい商売だな。」
血子「なんてプランなの?お義母様。」

義母「「一家心中」。」
勇&血「縁起でもない!!」

帰りの交通費が要らない。

 

240:旅行〔8歳:LEVEL5〕
夏休み。 今年の夏は、半ば無理矢理に家族旅行へ連れて行かれることになった。
しかもプラン名は「一家心中」…。 果たして俺達は、無事に帰れるのだろうか。
案奈「あ、皆様ァ~。本日は当車をご利用いただき~誠にありがとうございまァす。」
勇者「おぉ、お前か案奈。偶然じゃないか。 お前が今日のガイドなのか?」
運転手「ゲホッ、ゴホッ! ぞ、ぞじで私が今回の運転手で…ゲハッ!!」
勇者「な、なんで俺が会う運転手は不安要素のある奴ばかりなんだ…。」
案奈「ちなみに~ワタクシは10歳~、運転手は享年86歳で~ございまァす。」
血子「享年て!!」
案奈「尚~、条例により~、火薬~ガソリンなどの危険物は~…」
勇者(チッ、持ち込み禁止か!だがチョメ太郎は絶対持ってる…マズいぞ!)
案奈「車内で~販売しておりまァす。」
勇者「取り締まれよ!!」
案奈「また~、悪路につき~、状況により止むを得ず~…」
勇者「あぁ、急停車する場合があるってんだろ?」
案奈「心停止する場合が~ございまァす。」
血子「誰が!!?」

運転手「・・・・・・・・。」
勇&血「まさかっ!!」

これで金を取る気か。

 

241:施設〔8歳:LEVEL5〕
今回もまた運転手に問題があったため、例の如く親父の運転で大獣車は走った。
そして着いたのは「一家団ランド」という施設。一見アットホームそうだが、しかし…。
勇者「オイ案奈、ここは一体どんなスポットなんだ?嫌な予感しかしないのだが…。」
案奈「首吊り~、飛び込み~、その他各種アトラクションが~充実しておりまァす。」
血子「一回こっきりで人生終わりじゃん!いくつも楽しんでらんないじゃん!!」
少年「ねぇパパ、ここに来ればママに会えるってホント?」
父親「ああ、すぐに会えるよ…すぐに…。」
血子「騙されてる!騙されてるよボウヤ!?」
父「感動の光景だな…。父さんちょっと泣けてきたぞ。」
血子「血子も泣きそうだよ違った意味で!!」
勇者「こんな負の感情が渦巻く所に、俺達は一体何をしに…。」
義母「てゆーか~、アタシもうお腹すいちゃったんだけどぉ~?」
案奈「え~、この先にレストランがありまして~…」
勇者「やれやれ…どうせ毒入りの食べ物でも売ってんだろ?」
案奈「餓死するまで~監禁されまァす。」
勇者「せめて商売しろよ!!」
血子「だ、大丈夫だよダーリン!血子が頑張ってお弁当作ってきたから!」
勇者「おぉ、やるじゃないか血子…って、これは何ていう料理だ?」
血子「えっとね、「ミミゴー」ってゆーの。 こんな大きいのは結構貴重なんだよ☆」
勇者「へぇ~。 だがそんな貴重品、どこで手に入れたんだ?」
血子「えへへ☆ 学校で☆」
勇者「学校…?」

ほ、邦壱…。

的確な推理だった。

 

242:最期〔8歳:LEVEL5〕
なんとも怪しい遊園地「一家団ランド」。出口とか無さそうな雰囲気でイッパイだ。
もともと期待なんぞしていなかったが、まさかこれ程までに酷い旅とは思わなんだ。
勇者「コラ親父!なんでこんな不気味な場所まで連れて来たんだ!?目的は!?」
父「はっはっは! 目的もなにも、そんなの家族で楽しむために決まっとろうが。」
勇者「楽しめねーから言ってんだよ!」
父「ワガママを言うな勇者。 最後の…家族旅行…なんだから…。」
勇者「最期になりそうなのはテメェのせいじゃねーか!」
義母「ねぇ勇者ちゃん。あの「お化け屋敷」なんだけど~、超入ってみたくな~い?」
血子「えぇ~!こ、怖いよ!化け物がいるんでしょ!?」
勇者「化け物が何を言うか。」
血子「違うもん!血子はただのキュートな根っこだもん!お化け怖いー!!」
勇者「ったく…。 騒ぐな血子、こんなのは所詮子供騙し…」
看板『霊魅のドキドキお化け屋敷』
勇者「本物かも!!」
義母「ん~、じゃあアレは~?あのメリーなんとかってゆーの。」
勇者「む?「メリーゴーランド」のことか?」
血子「ち、違うよダーリン!「メリーゴートゥヘル」って書いてある!」
勇者「まともなアトラクションは無いのかよ! このフリーパスチケットの意味は!?」
父「やれやれ…。 じゃあ最初は穏やかに「観覧車」でも乗ってみるか?」
チョメ「ポピュッパー!ポピュッパップー!!」
勇者「言っとくがチョメ太郎、勘で乱射するから「勘乱射」ってわけじゃないぞ。」
チョメ「ポ、ポピュッ!?」
血子(どうするダーリン?きっとその観覧車にも何かあるよ?)
勇者「…俺は行くぞ。 逃げ回るのは、性分じゃないからな。」

閉園時間まで生き延びれば、それで済むんだ。

勇者は「24時間営業」の事実を知らない。

 

243:真剣〔8歳:LEVEL5〕
結局、親父の提案に従い観覧車に乗った俺達。二人乗りなので俺は親父と乗った。
親父は最初は大人げなくはしゃいでいたが、途中から次第に静かになっていった。
うるさいのも嫌だが、嵐の前には静けさが訪れるというし…かなり不安で仕方ない。
父「思えば、こうしてお前と落ち着いて話すのも久しぶりだな…。」
勇者「久しぶり? 俺の記憶が確かなら、恐らく人生で初の経験だと思うが?」
父「そうか…確かにそうかもしれんな。」
勇者「? どうした親父、いつになく神妙な顔つきだが…。」
父「今日はちょっと、お前に大事な話があってな。」
勇者「大事な話? 悪いが貴様なんぞと結婚してやる気は無いぞ?」
父「ちゃかすな勇者。 父さん、シリアスモードは五分が限界なんだ。」
勇者「な、難儀な生き様だな…。」
父「母さんのことだ。」
勇者「母さ…ま、まさか俺の…ホントの母親のことか!?」
父「お前は何故か聞いてこなかったから、今まで話さなかったんだが…。」
勇者「どうせろくでもない事実が待ってると思ってな。怖くて聞けなかった。」
父「まずは結論から言おう。 お前の母はもう…既に、亡くなっている。」
勇者「…そうか。 だがまぁ一度も抱かれたこともない母だ、特に感慨も無いな。」
父「そう言ってやるな。 自分の死を覚悟のうえ、お前を産んだんだからな…。」
勇者「えっ…。」
父「お前のその「勇者」って名前だがな、考えたのは実は…母さんなんだよ。」
勇者「なっ!俺の名は、親父がRPG好きって理由で付けられたんじゃ…!?」
父「母さんがRPG好きだったんだ。」
勇者「同じか!そのフザけた事実は揺るがないのか!!」
父「…む? 気づけばもう一周か、早いな…。」
勇者「おぉ、言われてみればそうだな。意外にも何事も無くてビックリだぞ。」
父「違うぞ勇者、こういう時はこう言うんだ。 「時間が…止まればいいのに…。」。」
勇者「お、親父!?いきなり何を言い出すんだ!?」
父「すると男は言う、「じゃあ魔法…かけてやろうか?」。 そして見つめ合う二人!」
勇者「なんだそのクサいセリフは!?顔から出た業火で世を焼き尽くせそうだぞ!」
父「そして二人は熱いキッス! オゥ、なんたる定番!しっかしロマンティーック!!」
勇者「間違えるな!そんな定番はモテない妄想野郎どもによる悲しみの産物だ!」
父「いや、待てよ?その前に停電で止まるという展開もありがち!ありがっちー!」

そういえば…五分経ったな…。

副作用が出るほど苦痛なのか。

 

244:苦悩〔8歳:LEVEL5〕
観覧車の中で、親父に衝撃の真実を中途半端に聞かされた。ホント中途半端に。
正直気にはなったが、その後回復した親父は何一つ覚えていなかったので諦めた。
まぁ死んだと聞かされた以上、我が未来には関係あるまい。 別にいいか…な…。
勇者「ふぅ~、なんとか夕方まで生き延びたな…。 ぼちぼち帰らないか親父?」
父「今夜は…帰したくない!」
勇者「まだ続いてたんかい!!」
案奈「あ、出口は~館内各所に~合計五ヶ所ございまァす。」
勇者「おぉ、ちゃんと出口はあったのか。 一応外に帰す気はあったのだな。」
案奈「アタリは一つで~ございまァす。」
勇者「残りは何だ!!?」
父「さぁ行け勇者よ!ちゃんとアタリの出口を探してくるんだぞ!」
勇者「チッ、偉そうに…。 わかったよ、俺も帰れなきゃ困るんでな。」
父「アタリが出たらもう一本だ!」
血子「アイスじゃあるまいし!」
勇者「…やれやれ。もう相手にするな血子、行くぞ。チョメ太郎もだ。」
血子「あ、うん!」
チョメ「ポピュッパー!」

タタタタタッ…(走)

父「…勇者にな、母親の話をしたんだ。」
義母「ま、マ~ジでぇ~? なにも今日する話じゃなくな~い?あったま悪ぅ~。」
父「うぬぅ~…。」
義母「ねぇパパちゃ~ん、この家族旅行の目的~…」
父「言うな、これでも反省してるんだ。折角の…そして最後の旅行だったのにな…。」

義母「…って、何だっけぇ~?」
父(母親役…間違えたかな…?)

まだ疑問形なのか。

 

245:意表〔8歳:LEVEL5〕
「一家団欒」を掲げた旅行も見事失敗に終わった夏は過ぎ、秋がやってきた。
明日は遠足…恐らくは春に引き続き「蒼茫海賊団」を探すことになるのだろう。
教師「春は残念な結果に終わりましたが、気づけば秋遠足の時期になりましたね。」
勇者「なぁ先公、そういやその海賊団ってのは滅多に目撃されないんだよな?」
教師「ええ。まぁ春遠足の少し前に彗星の如く現れた新参の海賊ですからね。」
盗子「つい最近じゃん! だったら目撃されなくて当然なんじゃないの?」
勇者「うむ。少なくともそんな短期間でなぜ「幻」とまで言われるのかはわからんな。」
教師「あ~。 実はその船、消えたり飛んだりするらしいのですよ。」
勇者「なっ!? バカな!今の技術で船ごと消えるとか飛ぶとか有り得んだろ!?」
姫「クルック~。」
勇者「ハト!? そうか、マジックか!」
盗子(ヤバい!通じ合ってきてる!!)
教師「しかも彼らは、そんな船を持ちながらほとんど港を襲わないのです。」
盗子「ふ~ん、確かに変だね。でも「ほとんど」ってことは少しは襲ってるんでしょ?」
教師「ハイ、食い逃げとか。」
盗子「ショボッ!それが「海賊」のやること!?ただの小悪党じゃん!」
教師「ですが、彼らの技術力は未知数…。脅威となる前に潰すのが得策なのです。」
博打「疑わしくば滅せよ…か。相変わらず恐ろしい思想だぜティーチャー…。」
巫菜子「宝を奪えって話は建て前だったわけだね…。(まぁどのみち悪だけどな。)」
教師「ん~、大体こんな感じですかね。 みなさん、わかりましたか?」
生徒「ハーイ!」

教師「というわけで、明日は「イモ掘り」に行きます。」
生徒「どういうわけで!?」

前フリはフェイクだった。

 

246:懐古〔8歳:LEVEL5〕
秋の遠足は三年ぶりの「イモ掘り」らしい。あの思わせぶりな会話は何だったんだ。
てっきりまた海賊探しだと思って心の準備をしてたってのに…やれやれだよ。
教師「今回は五号生同士の親睦を深めるイモ掘りです。仲良くしてくださいねー。」
勇者「チッ、まぁそういうことなら仕方ない。不本意ではあるが一時休戦といくか。」
暗殺美「不本意なのはこっちの方さ。死ねや。」
巫菜子「ま、まあまあ。とりあえず獣車の中では…ね?(とばっちり食うだろうが!)」
盗子「ところでさ、今日はどこ行くの?オナラ魔人のイモ園は燃えちゃったよね?」
勇者「そうだな、激しく燃えたよな。」
姫「バケツリレーの甲斐も無かったよね。」
盗子「撒いてたのは灯油じゃん!」
教師「燃えたんじゃありません。燃やしたんです。」
盗子「冷静に開き直らないで!! …って、やっぱ先生が着火したんかい!」
教師「別に気にしてませんよ。もう済んだことですから。」
盗子「アンタ加害者じゃん!!」
教師「実はあの時燃やさなければ、土の病気であの土地は永久に死んでいた…。」
盗子「そ、そうだったの!?」
教師「…というのはどうでしょう?」
盗子「いま考えたんかい!!」
勇者「まぁ落ち着け盗子。 それよりもホラ、到着前にマスクを装着しとくべきだ。」
盗子「あっ! そ、そだったね。前回は勇者…死にかけたんだもんね…。」
勇者「そうだな…。「ガスマスク」じゃなくて「デスマスク」だったからな…。」

「だった」で済めばいいのだが。

 

247:遭遇〔8歳:LEVEL5〕
走ること数時間。俺達はオナラ魔人のいるイモ園へと到着した。 既に少し臭い。
よし、ならば俺もマスクを装着し、ニオイに備えるとするか。 もう嗅ぎたくな…え゛?
勇者「フッ…。ひ、久しぶりだなオナラ魔人。去年の秋にボコして以来か。」
オナラ「だ、誰だ貴様!?私に銀行強盗の友人はいないぞ!(プ~)」
勇者「ウルサイ!この「目出し帽」はオヤジの差し金…グハッ!やっぱ臭ェ!!」
盗子「が、頑張って勇者!見た目が滑稽すぎて同情しきれないけども!」
暗殺美「というかよく考えるさ勇者!それ鼻にも穴あるから被る意味無いさ!」
オナラ「ところで、キミらは何しに来たんだね? 私は入園を許した覚えは…」
教師「おやおや、今日はいい感じに乾燥してますね~。」
オナラ「や、やめてくれ!もう燃やさないでくれ!!」
勇者「グフッ…ま、まぁ諦めろ。 コイツに目を付けられた時点で…む?」
ブロロロロロ…。(上空から)
暗殺美「な、何さこの音は!?空の上から…!?」
勇者「空飛ぶ船…ま、まさかコレが「蒼茫海賊団」!?」

~その頃、船内では~
少女「腹減ったニャー!もう耐えられニャいのニャー!死ぬぅうううう!」
少年「ライ殿、お願いだから我慢して欲しいッス!食糧街はもう少し先なんスから!」
ライ「あっ!イモ園!イモ園があるニャ!ここを襲うのニャ「下端(カタン)」!」
下端「駄目ッスよ!船長は犯罪事は嫌いなんスから!」
ライ「うーるーさーいー!海賊団ニャんだし悪事の一つ二つは仕方ニャいのニャ!」
下端「せ、船長~。もう自分には止められないッス~。」

賢二「いや、でもここは臭いから…。」

なんと!賢二は生きていた。

 

248:躊躇〔8歳:LEVEL5〕
突如上空に現れた海賊船。恐らく「蒼茫海賊団」と見て間違いは無いだろう。
幻とか言われてる割にはヤケに堂々と出て来たので驚いたが、これはチャンスだ。
ここで奴らを一網打尽にし、この「学園校の蒼き竜巻」の名を世に轟かせてやる。
盗子「ど、どうするの勇者!?真っ直ぐこっち向かって来てるけど!」
勇者「どうするもこうするも、どうしたりこうしたりだ!」
盗子「サッパリわかんないよ!!」
姫「…深いね。」
盗子「深いの!?」
暗殺美「まぁとりあえず、空から引きずり降ろさなきゃ話にならないのは確かさ。」
勇者「そうだな…。 オイ先公、何かいい案は無いのか?たまには頭貸しやがれ。」
教師「さぁ~?名前でも呼べば降りて来るかもしれませんよ? フフフ。」
勇者「へ…?」

~その頃、甲板では~
下端「船長!なにやらイモ園には誰かいるようッス!どうするッスか?」
ライ「きっとイモ泥棒ニャ!けしからん奴らニャ!」
賢二「どの口がそんなセリフを!?」
太郎「遠足か何かじゃないの?」
賢二「えっ…アレッ!?ななななんでみんながいるの!?」
剣次「どうした賢者殿?お仲間でもいたのか?」
賢二「あ、ハイ。 仲間というか悪魔というか…。」
剣次「悪魔…そうか、この異臭はそのせいか。」
賢二「いや、それは悪魔に失礼かと。」
剣次「で、どうする?殺るなら手伝うぜ?」
賢二「…だ、ダメですよ!僕の友達なんですから!!」

賢二は一瞬ためらった。

 

249:再会〔8歳:LEVEL5〕
色々と考えた結果、やはり海賊船は砲撃して撃ち落すことにした。バズーカあるし。
まぁそれで倒せるとは思えないが、うまくやれば着陸させることはできるだろう。
そして奴らを一網打尽にし、この「学園校の蒼き隼」の名を世に轟かせてやる。
勇者「よし、野郎どもバズーカを用意し…む?なんだあの白い布は…?」
姫「あ~、今日はいい天気だしね。」
盗子「洗濯物!?「白旗」って意味じゃないの!?」
勇者「ば、バカな! 仮にも「海賊」と名乗る奴らが、戦わずして降参などと…!」
盗子「あっ、出て来たよ!誰か出てき…うぇっ!?」
賢二「白旗ですー!降参なので撃たないでー!」
暗殺美「えっ!ああああアンタは…!!」
勇者「お前…生きていたのか!!」
賢二「勇者君!みんなー!会いたかったよー!!」

勇者「カルロス!!」
賢二「だから賢二だってば!!」

感動の再会もブチ壊しだ。

剣次「おぉ、勇者じゃねーか!」
勇者「カルロス!」
賢二「えぇっ!?」

剣次の本名だった。

 

250:談笑〔8歳:LEVEL5〕
賢二達の登場でゴタゴタしたため、結局遠足は中途半端な感じで終了した。
その夜、俺は再会したカルロスを家に招待した。 親父とも話したいだろうからな。
父「いやぁ~、久しぶりだなカルロス。もうアレはどれくらい前の話かなぁ?」
勇者「まだ俺が二歳ぐらいの頃か。 確か一ヶ月程ウチにいて、剣とかも習ったな。」
剣次「あ~、あん時は参ったぜ。 まさか放浪中に宇宙船が墜落するとはねぇ。」
父「それにしても、しばらく会わん間に海賊になってるとは驚いたな。 ハハハ!」
勇者「あ、そういや船は先公が調べたいとか言ってたが…その間どこに住むんだ?」
剣次「その点は問題ねぇよ。みんなまとめて間借りさせてくれるって人がいてさ。」
勇者「ほぉ、また随分と奇特なヤツがいたもんだな。あんな騒がしそうな連中を…」
(「ちょっ、アンタ何してんの!?ここは血子の部屋…って、なんでおコタ持参!?」)
(「ん~。 ちょいと狭いけど、まぁミカン箱よりはマシにゃ。」)
(「うわっ!しかも他にもいる! 三人も集まって何!?何する気なのよ!?」)
(「あ、自分のことはお構いなくッス!」)
(「いや、お構いなくとか言われても!居るだけで迷惑なんだってば!」)
(「じゃあ僕には、お構って。」)
(「あつかましいよ!!」)

聞こえない。俺には何も聞こえない。

勇者は現実から目を背けた。

 

251:再考〔8歳:LEVEL5〕
遠足も終わり、体育祭の季節となった。 まぁ今年は五号生だし、優勝は堅いかな。
勇者「体育祭が終わりゃもう冬…なんか今年は一年が早いな。」
盗子「冬か~…あっ、そうだ!冬といえばちょっと気になることがあったんだよ!」
勇者「安心しろ、俺はお前は気にならない。」
盗子「気にしてよ!四六時中気にしててよ! …って、「極秘書庫」のことだよ!」
賢二「あ~。 前に言ってたね、侵入して先生に怒られたって。」
勇者「極秘書庫? あの「歴史全書」とかいう、親父が書いた小説があった所か?」
盗子「それなんだけどさ、その本ってホントに…小説なのかなぁ?」
勇者「あん?何を言ってるんだ、冗談は顔と体と心と魂だけにしろ。」
盗子「全部じゃん!存在全部じゃん! …って、だってさ、ベビルん時にホラ…。」
賢二「あっ、そっか! その時聞いた話では「式神」で守るほど重要な場所って…!」
盗子「でしょでしょ?そんな場所に、ただの小説置いとくって絶対おかしくない?」
勇者「…なるほど、これは検証の余地があるな。 よし!今から行くぞ!」
盗&賢「うげっ!?」

盗子は余計なことを言った。

~放課後~
勇者「…というわけで、今から侵入する。心の準備はできたか?」
盗子「イヤッ!イヤだよ!絶対にイヤァーー!!」
賢二「僕も先生に殺されかねないようなことはしたくないよー!」
勇者「ありがとう、やっぱお前らは親友だ。」
二人「話を聞いてーー!!」
剣次「安心しなよ賢者殿、式神とやらはこの俺がチャッチャと片付けてやるからさ。」
賢二「だ、ダメですよ剣次さん!アナタ利用されてるんですよ!?気づいて!」
勇者「さぁ入るぞ。先公にバレたら厄介だからな。」
二人「「厄介」で済めばいいなぁ…。」

今度こそ死刑かもしれない。

 

252:歴史〔8歳:LEVEL5〕
カルロスの助けを受け、俺達は再び極秘書庫に侵入することができた。
もしあの本が真の歴史書なのだとしたら、「魔王」と「勇者」は実在したことになる。
となれば、解明しないわけにはいかない。 たとえ(盗子の)命を危険に晒そうとも。
剣次「じゃ、俺はもう帰るぜ。何する気かわかんねぇけど頑張れよな。」
勇者「ああ、手間かけたなカルロス。」
盗子「こ、こうなったら腹を決めるしかないね!」
賢二「もしバレたら首をキメられるけどね…。」
勇者「見つけたぞ「歴史全書」。 さぁ読め賢二、さっさと読んでさっさと逃げるぞ。」
賢二「うん…オッケー! えっと~…新星暦523年、突如現れた「魔王」により…」
勇者「その概要部分は前回読んだ。だからもう本編に入ってくれ。」
賢二「あ、そうなんだ。 じゃあねぇ…。」

ある日、とある小さな島で一匹の「霊獣」が生まれた。
その名は「マオ」。恐るべき魔力を秘めた霊獣だった。

マオには実体が無かった。
そして、実体が無ければ力も発揮できなかった。
そこでマオは、契約者たる人間に力を貸すことで肉体を得ることにした。

マオが目を付けた者の名は、「終(おわり)」。
終はちっちゃな頃から悪ガキで、15で不良と呼ばれていた。

新星歴523年のことだった。

勇者「20年前…結構最近のはずなのに、俺達が知らないのは何故だ…?」
盗子「ん~。 真面目な話のはずなのに、妙にフザけてる気がするのは何故…?」

マオの憑いた終が世界を征服するのには、一年とかからなかった。
人々は恐怖にプルプル震え、チワワのモノマネが流行した。

だが新星歴526年、世界を救う五人の戦士が現れた。
「勇者:凱空(ガイク)」と「四勇将(しゆうしょう)」だった。

賢二「あっ、出て来たね「勇者」さん。」
勇者「うむ。 一体どんな活躍をしたのかが気になるところだぜ、同じ「勇者」として。」

凱空は四勇将と共に、魔王城へと乗り込んだ。
「武闘王:拳造(けんぞう)」は、荒々しい拳技で魔王軍を蹴散らした。
そして「剣豪:秋臼(アキウス)」は、華麗な剣技で終を追い込んだ。

その間凱空は、必死に四葉のクローバーを探していた。

マオ封じを試みたのは、「退魔導士:妃后(ひこ)」。
妃后は自らの体内にマオを封印しようと術を練った。

凱空「お前は純血の退魔導士だから、多分耐えられる!つーか耐えて!」
妃后「あ、うん!任せてよ凱空君!」


妃后「…ギブ。」

妃后、途中でアッサリ断念。
だがマオを半分奪われた終は、魔力もまた半分に。

そこで「賢者:無印(むいん)」、氷の柱に終を封印。


めでたしめでたし。

盗子「な、なんだか最後の方はすんごい投げやりなんだけど…。」
賢二「それになんだか、肝心の勇者さんだけちっとも活躍してないんだけど…。」
勇者「いや、待て!まだ続きがある! きっとこっからに違いない!」

…と、そう単純な話でもなかった。
なぜなら、妃后が死ねばマオは甦るはずだからだ。

そのため、凱空達はまだ休むことはできなかった。
失われた太古の退魔術書、「天地封印術典」の解読が急務となった。
そこで凱空と四勇将は、必死にその作業に取り組んだ。


サッパリわからなかった。

仕方なく凱空達は、とりあえず無人島へと移住した。
終を封じた氷柱も、人知れずその場に移した。
そしてその事実を誰にも知られぬよう、その島を外界から隔離した。


この計画を「隔離計画」、島の名を「カクリ島」と呼んだ。

盗子「か、カクリ島!?ここじゃん!この島じゃん!!」
勇者「むー。この島だって話になるとやっぱ現実味に欠けるな…。 どう思う盗子?」
盗子「わっかんないけど、やっぱこんな部屋に隠してあるくらいだしさ~。」
勇者「賢二、お前は?」
賢二「でもその割に、今日の警備は手薄だったよね?」
勇者「お前は?」
教師「死にますか?」
三人「うわぁーーーー!!」

三人はしばらく投獄された。

 

253:計画〔8歳:LEVEL5〕
俺達が地下牢(学校なのに!)から釈放された頃には、もう体育祭は終わっていた。
半月にも及ぶ獄中生活と説教はさすがに辛かったが、そのぶん得たものはあった。
そこまでするということは、やはりあの本は本物なのだ。 この島には…何かある!
勇者「…というわけで、今日から色々と調べようと思う。 協力頼めるか?」
盗子「イヤッ!イヤだよ!もう牢獄なんて絶対にイヤァーー!!」
賢二「次こそホントに命が危険っぽいから、僕も手伝えないよ…ゴメン。」
勇者「ありがとう、そう言ってくれると思ってた。」
二人「だから話を聞いてーー!!」

~物陰~
教師「ホラ、あんなこと言ってる。困ったことをしてくれましたねぇお馬鹿さん。」
剣次「す、すまねぇ!まさかそんな事情があるとは思わなかったんだよ!」
教師「シッ、声が大きい。 ウッカリが過ぎると牢獄行きですよ?」
父「そう責めるな…確かにカルロスはちょっと馬鹿だが、根は良い馬鹿だ。」
剣次「いや、どうせなら「馬鹿」の部分から否定してくれよ…。」
教師「もし邪魔でもされたら終わりなんですからね。今後は頼みますよ?」
剣次「わかってる。もうウッカリはしねぇよ。」
父「安心しろ、その点は私もなんとかフォローする。」
教師「まぁアナタがそう言うのなら…。じゃあお任せしますよ? …凱空さん。」

父「うむ。」

剣次「なっ!? アンタが凱空なグベヴォバブボッ!!

勇者は親の名も知らないのか。

 

254:執着〔8歳:LEVEL5〕
冬になった。本来ならば「地獄の雪山登山」の時期だ。 だが今年は行く気は無い。
なぜなら、俺には「隔離計画」について調べるという重要な作業があるからだ。
勇者「どうだ盗子、あれから何かわかったことはあるか?」
盗子「それがさ、バレたらマズいから聞き込みとかもできなくてさ~。」
勇者「賢二、お前は?」
賢二「とりあえず街の図書館では何の収穫も無かったよ。」
勇者「お前は?」
教師「ホント死にますか?」
三人「うわぁーーーー!!」

三人は再び投獄された。

 

255:一年〔8歳:LEVEL5〕
流れるように時は過ぎ、もう一年が終わろうとしている。今年は異様に早かった。
特に秋後半と冬の記憶が一切闇に包まれている…というか、実際闇の中に居た。
だが、俺は懲りない。たとえまた(盗子が)捕まろうとも、絶対に秘密を暴いてやる。
たとえ(賢二が)死にかけようとも、絶対に真実を解き明かしてやるのだ。

もうじき春が来る。そして、ついに俺は六号生になる。

今年の卒業生はゼロだった。

 

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本編( 10 / 11 )

外伝(伍)

外伝(伍)

 

外伝:賢二が行くⅡ〔1〕
僕が地球から打ち上げられて、早いもので一年近い月日が流れてしまいました。
もしあの日に太郎さんの帰省が無かったらと考えると、もう怖くてたまりません。
そう、僕は再び宇宙船に突っ込んだため死なずに済んだのです。良かったぁ…。
太郎「一年か…。 なんだかんだで結構ここでの生活にも慣れたよね、賢者君。」
賢二「ん~、けどやっぱ僕は地球がいいです。太郎さんは帰りたくないんですか?」
太郎「いや、まぁ帰りたいのは山々なんだけどね~。 でも…」
でも先の衝撃で宇宙船が故障してしまい、僕達は仕方なく不時着したのです。
その後、僕らは「義勇軍」という戦士団に拾われて今日までやってきました。

兵士「た、大変です賢者殿!是非お力を!」

そしてまた、こんな感じです。

太郎の呼び方が悪い。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔2〕
またもや「賢者」と勘違いされ、一応なんとか取り繕ってきた一年間。
もう、いい加減地球に帰りたい。 だから僕は総大将さんに訴えることにしたのです。
賢二「あ、あの~…総大将さん?ちょっとお話が…。」
総大将「おっと、いいタイミングで来たな賢者。ちょうどオメェに話があったんだよ。」
賢二「えっ!じゃ、じゃあついに僕を地球に…!?」
総大将「ああ。地球の方に行ってもらうわ。」
賢二「わーい!やったぁー!!」
総大将「頑張れよ、お前の活躍にゃ期待してる。」
賢二「…ん? 地球…「の方」??」
総大将「チッ、気づきやがったか。」
賢二「典型的な詐欺の手口ですよ!」
総大将「このミッションが成功すりゃ、オメェに「少佐」の位を…」
賢二「いや、そんなますます帰れなくなるポジションは要りませんから!」
総大将「ヘッ、謙虚な奴め。」
賢二「謙虚じゃなくて!ホントに要らないんですってば! 僕は地球に…!」
総大将「やれやれ…。んじゃ、まぁ活躍次第では考えてやるよ。これでどうよ?」
賢二「ハァ~。 それでその…今度の敵ってどんな人なんですか?」
総大将「おぉ!やってくれるってか!」
賢二「これで最後ですからね!死ぬ気でやりますよもう!」

総大将「じゃあ頼んだわ、「ユーザック」。」
賢二「死んでもイヤですぅー!!」

違った意味で涙の再会だ。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔3〕
何の因果か、またユーシャさんと戦うハメになりました。今度こそ死にそうです。
まだ「ユーザック襲来」という無線が入っただけみたいですが、到着は確実だとか。
というわけで僕は、到着予定地に彼を迎え撃ちに行くことになっちゃったのでした。
賢二「ハァ…。どうせなら僕、地球の土になりたかったな…。」
太郎「まぁ大丈夫だよ賢者君、肉片が残るって保証も無いし。」
賢二「それってフォローになって無いですよ太郎さん…。」
太郎「そだね…。」
声「ち、チィーーッス!賢者大尉はこちらッスかー!?」
賢二「いや、もう「大尉」とか言われるのホント苦痛なんで…。」
少年「自分、「戦士」の「下端(カタン)」ッス!今日からお世話になるッス!」
賢二「そういえば総大将さんが、今日から「賢者小隊」を名乗れって…。」
太郎「マジで!? いや~良かった、賢者君だけじゃ心もとなかったんだよね~。」
下端「えっ!じゃあ今までお二人でやってきたんスか!? スッゲー!」
賢二「それは僕のセリフですよ!太郎さん職業「遊び人」じゃないですか!」
下端「しかも遊びながら!?」

伝説はこうして作られる。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔4〕
数日後。 旅立った僕ら三人は、ユーシャさんが来るという惑星に到着しました。
確かに地球方面ではあるけれど、やっぱり距離はかけ離れてます。 詐欺だー!
賢二「ふぅ~、やっと着きましたね~。」
太郎「まだ今んとこ平気そうだね。どうやら先に着けたみたいだ。」
賢二「確か到着予定地は「キャプテン岬」でしたよね?どこにあるのかなぁ…?」
下端「賢者大尉、だったらまずは村人に話でも聞いてみたらどうッスかね?」
村人A「け、賢者!? というとアナタ様が、あの魔竜「ウザキ」を倒した…!?」
太郎(…そんなことあったっけ?)
賢二(あ、ホラ、行ったら既に老衰で死んでた…。)
村人B「村長ー! あの悪星「サマラ」を滅ぼした大賢者殿が来てくれましたぞー!」
太郎(…そんなことあったっけ?)
賢二(あ、ホラ、到着寸前に隕石群がドカーンて…。)
下端「スゲーっす!こんな所にまで名が轟いてるなんて、やっぱスゲーっす!」
賢二(な、なんか噂ばかりが一人歩きしてますね…。)
太郎(というか全力疾走してるよね。)
村長「おぉ、おヌシが賢者殿か! こりゃ思ったよりガキ…ガキじゃないお方で。」
賢二「そんな中途半端なフォローならむしろ要らないです。」
村長「よーし!皆の者、宴の準備じゃー!!」
賢二「いやいや!そんなことしてる余裕は無いですから!」
村長「大丈夫、準備だけじゃ。」
賢二「えぇっ!?」

功績の割に扱いは悪い。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔5〕
その後、感じの悪い村長さんに教えられて「キャプテン岬」へと向かった僕達。
するとそこでは、なにやら4・5人の集団がモメていました。 い、嫌な予感が…。
少女「ウーニャーー!た、助けてくれニャのニャーー!!」
賢二「なんかこの先の展開が大体読めたんですが…。」
太郎「あ、猫耳少女だ。 一部の層に絶大な人気を誇るという…。」
少女「アタチは「王佐」の「ライ」!追われてるから助けてくれると嬉しいニャ!」
下端「「王佐」ってことは王の補佐役ッス!これは見過ごせないッスね大尉!」
賢二(できれば見過ごしたいなぁ…。)
敵A「もう逃がさないぜ猫娘! お前は高く売れるんだ、大人しく捕まりやがれ!」
ライ「アタチら「猫耳族」は、居るだけで幸福を呼び込むって言われてるのニャ。」
賢二「いま思いっきり災難を呼ばれてるだけに、全然信憑性無いんですが…。」
太郎「…よし、やろうよ賢者君!助けよう!」
下端「そうッス!自分も曲がったことは大嫌いッス!」
ライ「えっ!ホントかニャ!?」
太郎「これで当分遊ぶ金には困らないよ!」
ライ「ニャんですと!?」
賢二「な、何を言ってるんですか太郎さん! 僕らは…」
太郎(多分、宇宙船も買えるよ?)
賢二(!!)

こんな時、僕が勇者君だったらなぁ…。

たぶん笑顔で即決だ。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔6〕
悩んだ結果、僕はライさんを助けることに決めました。こうなりゃヤケですよ!
賢二「えっと、「義勇軍:大尉」の名に懸けて悪事は許せません。ごめんなさい。」
敵B「ぎ、義勇軍!?そうか、テメェらが宇宙警察気取りの偽善軍隊か!」
下端「さすがッス大尉!怒りの矛先を自分に向けて彼女を守るなんて!」
賢二(えっ…はわわわわ!!)
敵C「生意気な小僧だ!この俺様が射殺してくれる!!」
賢二「うわっ!じゃあ防御!防御魔法を…んっと、えっと、てっ…「鉄壁」!!」

賢二は〔鉄壁〕を唱えた。
賢二達の前に鉄の防御壁が現れた。

下端「大尉、自分が突撃するッス!指示が欲しいッス!」
賢二「じゃあ突進したり曲がったりして相手をかく乱して! その隙に僕が魔法で…」
下端「自分、曲がったことは大嫌いッス!」
賢二「そこは曲がってよ!」
太郎「ほ~れ、フリフリ~。」
ライ「ニャアン☆じゃらさニャいで~!猫じゃらさニャいでぇ~!」
賢二「戦ってよ!!」

どのみち戦力外だ。

 

〔鉄壁(てっぺき)〕
魔法士:LEVEL7の魔法。(消費MP8~∞(※維持したぶん消費する))
一定時間鉄壁の守備を誇る。ペナルティーエリア外からのシュートは決めさせない。
 

 

外伝:賢二が行くⅡ〔7〕
下端君は融通が利かず、太郎さんはヤル気が無く、やっぱりピンチな今回のバトル。
僕だってまだまだ弱いのに、一人で戦闘なんてあんまりですよ神様…。 うぅぅ…。
賢二「どどどどうしよう!防御ばっかじゃ勝てないのに…!」
太郎「まだまだ修行不足だね、賢者君。」
賢二「アナタだけには言われたくないですよ!」
太郎「ゴメン。こう見えても僕、レベル40。」
賢二「えっ、ホントに!?じゃあ実は強いんですか!?」
太郎「強いよ、特にカードゲーム。」
賢二「あぁ…そういえば「遊び人」…。」
敵D「オラオラオラオラー!いつまで閉じこもってやがるんだ!出て来やがれ!!」
敵B「どぉりゃああああ!!」
下端「ヤバいッス大尉!敵の集中攻撃で鉄壁が悲鳴を上げてるッスよ!」
ライ「ニ゛ャー!怖いニャー!早くニャんとかするニャー!」
賢二「くっ!こ、こうなったら…!」

こうなったら、あの魔法を使うしかない。いま僕が知る中で最強の魔法…〔雷撃〕を。

失敗するとアフロになる。

 

〔雷撃(らいげき)〕
魔法士:LEVEL20の魔法。(消費MP32)
「雷雲」「雷光」「雷鳴」に次いで唱えることで、敵一体に強烈な雷を落とす魔法。
 

 

外伝:賢二が行くⅡ〔8〕
敵の猛攻により、もう鉄壁も限界に近づいてきました。攻撃しなきゃ負けちゃいます。
本来「雷撃」は僕のレベルで使える魔法じゃないけど…でも、やるしかないんです!
賢二「「鉄壁」解除! 今から雷を落とす術式に入ります、みんな離れて!」
ライ「きゃみニャり!? 嫌ニャ!おヘソが取られるニャー!」
敵A「やっと出て来たかガキどもめ。どうやら観念したようだな、手こずらせやがっ…」
賢二「僕は負けませんよ! 「術式:雷撃」第一の魔法…立ち込めろ「雷雲」!」

賢二は〔雷雲〕を唱えた。

ゴゴゴゴゴ…(雷雲)
敵B「なっ!? なんだこの…ドス黒い雲は…!?」
賢二「次なるは第二の魔法…閃け「雷光」!」

賢二は〔雷光〕を唱えた。

ピカアアァッ!!(雷光)
敵C「ぐわっ!目が…目がぁあああ!!」
賢二「そして準備段階最後の魔法…轟け〔雷鳴〕!」

だがMPが足りない。

 

〔雷雲(らいうん)〕
魔法士:LEVEL4の魔法。(消費MP8)
黒々とした雷雲を呼び寄せる魔法。良く晴れた日に使うと全国の主婦に嫌われる。
 

 

〔雷光(らいこう)〕
魔法士:LEVEL5の魔法。(消費MP8)
目がくらむ程の雷光が閃く魔法。カツラのオヤジは一瞬焦る。
 

 

〔雷鳴(らいめい)〕
魔法士:LEVEL6の魔法。(消費MP8)
耳をつんざく雷鳴が轟く魔法。下痢気味の敵は精神的に追い詰められる。
 

 

外伝:賢二が行くⅡ〔9〕
まるで狙いすましたかのようにMPが切れました。 ハイ、もうダメです。ご臨終です。
太郎「あれ…? MPって結構増えたんじゃなかったっけ?」
賢二「多分「鉄壁」を維持しすぎたのが…。」
太郎「…ひょっとして、結構ヤバい?」
賢二「さよなら太郎さん…。」
太郎「いつもながら潔い諦めっぷりだね…。」
敵B「ケッ、ビビらせやがって! だがもうネタ切れのようだな!死ねぇえええ!!」
声〔砂煙〕「そうはさせるかよ!交われ対なる斜道、「十字軌跡(クロスロード)」!」
敵A「なっ…くはっ!
敵B「ガフッ!
敵C「ぶへっ!
敵D「うぎゃああ!!
賢二「!!?」

声〔砂煙〕「ヘッ、久しぶりだな賢者殿…。元気そうでなによりだぜ。」
賢二「あ、アナタは…!」
いったんCMでーす。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔10〕
死を覚悟した瞬間、まさかの助けが入りました。 そう、お気づきの通りあの人です。
おかげで敵も全滅し、ピクピクしてます。どうやら今回もまた生き延びられたみたい。
賢二「け、剣次さん!やっと電報が届いたんですね!」
下端「スゲーっす!あんな剣技は初めて見たッス!」
剣次「ったく、暗号なんか使いやがってバカ太郎!あんなん解読できるかっての!」
太郎「へ?あ~無理無理。 アレ、最後の方は適当だから。」
賢二「そんな命懸けの適当はヤメてください!!」
剣次「まぁ賢者殿の武勇伝を追ったら着けたがな。 やっぱさすがだぜこの人は。」
賢二(剣次さんも相変わらずだなぁ…。)
ライ「ふニャ~、助かったニャ~。猫に小判とはこのことニャ~。」
賢二「いや、全然違いますよ!?」
剣次「ん?なんだこの猫娘は? 晩飯のオカズか?」
ライ「ニャんですと!?」
賢二「ちょっと成り行きで助けたんですよ。 さぁライさん、もう大丈夫なんで…」
ライ「ニャにを言ってるニャ!アタチは一生狙われ続ける身ニャのニャ!」
太郎「あ~、じゃあ…一緒に来れば?」
ライ「ニャ…!? いいのかニャ!?」
賢二「た、太郎さん!勝手にそんなこと決めちゃ…!」
太郎「別にいいじゃん。隊員は多いに越したこと無いって。」
ライ「わーい!ありがとニャー!」
太郎「売れば高いしね。」
ライ「そんニャ馬鹿ニャ!?」

太郎は本気だ。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔11〕
話の流れで、ライさんを仲間にするかどうするかという状況になってしまいました。
確かに仲間が増えるのは助かるけど、それは戦える人の場合であって彼女は…。
賢二「う~ん、でも任務の方がかえって危険だしなぁ~。」
ライ「お願いニャ!もう独りは嫌ニャのニャ! あと、おコタでヌクヌクしたいのニャ!」
太郎「とりあえず最後のは却下だね。」
ライ「ニャんてこったい!」
下端「どうするッスか大尉?あまり悩んでる時間は…。」
賢二「…ハァ。 わかりました、一緒に行きましょう。やっぱ僕は放っとけませんよ。」
ライ「ほ、ホントかニャ!? ありがとニャ、えっと…誰だっけニャ?」
賢二「僕は賢二、なぜかリーダーってことになってます。どうぞヨロシクです。」

ライ「アタチはライ…「ライ(佐)・ユーザック(王)」。 よろしくニャ☆」

Σ( ̄▽ ̄;)!?

ユーザックが現れた。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔12〕
なんとも驚いたライさんの名前。まさか他にもユーザックって名の人が居るとは…。
あれ?ということは、彼女がターゲット? いや、情報が間違って回ってるのかなぁ?
ガガ…ガッ…。(無線)
賢二「あ、無線だ。ちょうどいいから聞いてみますね。 …ハイ、賢二ですどうぞ。」
総大将「おっ、賢者か。 どうよ?ライ・ユーザックはもう捕まえたか?」
賢二「うぇっ!? ゆ、ユーザックって「シャガさん」のことじゃなかったんですか!?」
総大将「あ?いくら俺でもあんな化けモンに小隊ぶつけるほど鬼じゃねぇぜオイ。」
賢二「ま、まだ見つけてませんが…そのライって人はどう危険なんです…か?」
総大将「あ~、奴は「猫耳族」ってんだが、オメェ聞いたことあるか?」
賢二「あ、ハイ。確か居るだけで幸せを呼び込むとかどうとか。」
総大将「けどそいつぁ逆なんだわ。居るだけで特大の不幸を招く超レア物。」
賢二「え゛。」
総大将「今までに国を三つ潰してる。しかもタチの悪ぃことに、本人に自覚は無ぇ。」
賢二「じゃあもしかして…その人の場合、一種の「生体兵器」として高額だとか…?」
総大将「あ~、そうらしいな。 だから見つけてもあんま関わらずさっさと消せな。」
賢二「えっ!消すんですか!? 捕獲じゃダメなんですか!?」
総大将「バッカ、んな疫病神なんて持って来んじゃねぇっての。 じゃあな。」
…プツッ。
賢二「そ、総大将さん!?総大将さん!?」
ライ「どうしたニャ?歓迎会でも開くって話かニャ?」
太郎(なんとなく察したよ賢者君。キミもピンチが好きだね~。)
賢二(特大の不幸を招く…か…。)

こんな時、僕が勇者君だったらなぁ…。

たぶん笑顔でメッタ斬りだ。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔13〕
勘違いではなく、ホントにライさんがターゲットだったようです。 なんてこったいです。
でも仲間にするって言っちゃったし、それに殺すなんて僕にはできそうにないし…。
賢二「えっと、悲しいお知らせがあります。どうやら僕らの大将もアナタの敵みたい。」
ライ「ニャんですと!? そんニャのあんまりニャー!捨て猫されるのは嫌ニャー!」
賢二「というわけで、僕は今ここで…大尉の位を捨てようと思います。」
ライ「ニャッ!?」
下端「マジっすか!?そんなことしたら今度は軍に追われるハメになるッスよ!?」
賢二「ハイ、だから強制はしません。僕一人でもなんとかしてみますよ。」
太郎「な、なんか急に男になったね。 すんごい涙目なのが不安だけども。」
剣次「詳しい話はわからねぇが、まぁヤル時はヤル人だぜこの人は。」
賢二「…さぁみなさん、どうしますか?」
太郎「僕は別にいいよ。どうせ逃げる気だったし、やっぱ見捨てたら後味悪いしね。」
剣次「俺も行くぜ。そんなカッコいい真似、賢者殿一人にゃさせられねぇよ。」
下端「じ、自分も行くッス!自分、これまで以上に大尉を尊敬したッスから!」
ライ「ありがとニャ賢者ー!とっても嬉しいニャー!」
賢二「み、みんな…。」

真の動機は、死んでも言えない雰囲気です。

目的地は地球だ。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔14〕
ライさんのため、そして地球に帰るため、僕は軍を抜けて逃げることにしました。
もう後戻りはできません。宇宙的犯罪者になろうとも、僕は生きて地球に帰ります!
下端「ところで大尉…あ、賢者殿、逃げるにしてもどう逃げる気ッスか?」
賢二「そうなんですよね…。僕らが乗ってきた宇宙船は三人乗りだし…。」
ライ「あ、それは大丈夫ニャ!さっきの奴らの船はデカかったニャ!」
賢二「いや、でも犯罪事はイヤだなぁ…。」
ライ「気にすることニャいニャ。世の中とは弱肉強食ニャものニャ。」
太郎「いいこと言うじゃん、資金源。」
ライ「売らニャいでー!!」

~数分後~
賢二「こ、これって…海賊船ですよね、見るからに。。」
下端「これは…そ、「ソボー海賊団」の旗ッスよ!しかも船体は超最新型ッス!」
剣次「ソボー…確か船長はかなりの強豪って聞くぜ? 俺でも勝てるかどうか…。」
賢二「よ、よりにもよってそんな人を敵に回すなんて…。」
ライ「見張りだったさっきの奴ら以外、みんニャ温泉行ってるはずニャ。問題ニャし!」
太郎「じゃあ急がないとね。 大丈夫、運転の方は僕がなんとかするよ。」
下端「最新型は操作も難しいと思うッスけど、大丈夫ッスか?」
太郎「なんとかする。」
ライ「故障したらどうする気ニャ?」
太郎「なんとかなる。」
剣次「燃料は足りるのか?」
太郎「…なんとかなれ。」

「なれ」とか言われても…。

運転はゲーセン仕込みだ。

 

外伝:賢二が行くⅡ〔15〕
不本意ながら、僕らは海賊船を奪取して逃げることになりました。ホントはイヤです。
でも、生き延びるのを最優先と考えて、ここは妥協するしかないのだと思います。
太郎「えっと、こことここはこうで、ここは…あ、こんな機能まで付いてるのか~。」
賢二「へぇ~、結構詳しいんですね太郎さん。 僕にも手伝えることはありますか?」
太郎「そうだねぇ~。 んじゃ、コイン入れて。」
賢二「…へ?」
太郎「あれ?ツッコミ無し? 「ゲーセンかよ!」みたいな。」
賢二「げーせん…?何ですかそれ? どこかの星にある何かですか?」
太郎「あ~知らない…まぁその方がいいかもね。 多分、運転任せられなくなる。」
賢二「どういう意味ですか!?」
ライ「ところで、この船の名前は何にするニャ? こういうのは形から入るべきニャ。」
下端「名前ッスか~。どうせならカッコいい名前がいいッスね!」
剣次「ん~、元が「ソボー号」なだけに、「蒼茫(そうぼう)号」ってのはどうだ?」
賢二「そうぼう?それはどんな意味なんですか?」
剣次「見渡す限り青々として広い…あの星のためにあるような言葉さ。」
賢二「地球の…。 そうなんですか、結構いいですね!」
ライ「ふ~ん。 じゃあ、そうと決まれば早速行くニャ! それ行け蒼茫海賊団!!」
賢二「えっ!僕らも海賊なの!?」
下端「船体に大きく書いてあるッスからね、「海賊団」って。 仕方ないッスよ船長。」
賢二「って、当たり前のように「船長」とか呼ばないでよ! 僕は船長なんて…」
太郎「じゃあ僕がやろうか?」
賢二「頑張ります。」

太郎はちょっぴりヘコんだ。

~数日後~
声「あーっ!食い逃げだぁー! 捕まえてくれーー!!」

ダダダダダッ!(逃走)
賢二「ご、ごめんなさいごめんなさい! 全ては貧乏が悪いんですー!」
剣次「いいから走れ賢者殿!捕まるぞ!」
太郎「気にすることないよ。むしろ「海賊」なんだから悪さしてナンボじゃん?」
賢二「それにしてはスケールが小さ過ぎですよ!」
下端「ということは船長、もっとデカい悪事がご希望ッスか!? さすがッス!!」
賢二「いや、そうじゃないけども!」
ライ「ニャッ!あの店先にミカン発見ニャ!」
賢二「だからダメですってばー!!」

もう、こんな生活はコリゴリです。 早くあの学校に帰り…微妙です。

賢二の居場所に平和は無い。

 

第六章へ

本編( 11 / 11 )

第六章

第六章

 

256:始業〔9歳:LEVEL5〕
春…。 9歳になった俺は、今日から六号生として学校に通うことになる。
やはり最後ということで、今年はちゃんと始業式にも出られるよう早起きした。
今まで散々ビビらされた分、ここで校長に仕返しでもしてやらねば気が済まない。
勇者「…なのに、なんでまだ始まらないんだーー!!」
盗子「お、落ち着いて勇者!とりあえずそのマシンガンは仕舞ってくれる!?」
勇者「くそぉ…俺がこの時のために、どんだけ準備してきたと思ってやがるんだ!」
暗殺美「よく考えるさ!校長に一矢報いるなら卒業式でもオッケーなはずさ!」
賢二「た、確かに三時間は待たされ過ぎだけど、きっと何か理由があるんだって!」
姫「きっとポックリ逝っちゃったんだよ。」
盗子「物騒なことをサラッと言わないでよ!」
放送「えー、大変長らくお待たせいたしました。 これより44年度始業式を…」
賢二「あっ、始まるよ勇者君!だから落ち着いて!」
放送「…始めるにあたり、まずは校長先生のお色直しを…」
勇者「結婚式かよ!! つーかまだ一度も登場してねぇじゃねーか!」
姫「じゃあ次はお焼香だね。」
盗子「それは結婚式じゃないよ!?対極に位置する行事だよ!?」
勇者「さっさと出て来やがれ校長!今日は貴様が地獄を見る番だ!!」

~その頃、舞台袖では~
校長「妃后の子…あの子は相当マズいな。もはやマオに汚染されきる寸前だ。」
教師「ハイ。 半身とはいえ、やはり子供には荷の勝ち過ぎる存在のようです。」
校長「…ならば計画は変更だ。早速明日にでも術式に取り掛かれ。」
教師「なっ! で、ですが「霊体封印術」の解読はまだ…!」
校長「仕方ない。「肉体封印術」の方を用い、あの子の肉体ごと封印するんだ。」
教師「しかし…!!」
物騒な計画が動き出した。

 

257:手掛〔9歳:LEVEL5〕
春の行事といえば、まずは遠足がある。 俺達にとっては最後の春遠足だ。
きっと無謀な冒険を強いられるはずなので、気を引き締めてかからねばなるまい。
…などと思っていた矢先、何故かしばらく学校は休みになると告げられた。
これは何か裏があるに違いない。「勇者」の勘がそう言っている。
勇者「というわけで、わざわざ我が家へ来てもらった理由は他でも無い。探るぞ。」
賢二「な、なんでキミは、いつもそうやって自分から危険に飛び込んでいくの…?」
盗子「イヤッ!イヤだよ!今度こそ絶対にイヤァーー!!」
勇者「やれやれ…まぁとりあえず落ち着け。 血子、お茶を。」
血子「あ、うん。 隣のでいい?それともお向かいさん?」
勇者「いや、「おっちゃん」じゃないから。」
賢二「でもさ、探るって言ったって手掛かりは何も…」
声「ふぅ~…ったく、どこ行ったんだあの人は?参ったぜ…。」
勇者「む? どうしたカルロス、誰か探してるのか?」
剣次「うぉっ!? な、なんでもないぜ勇者!別に凱空さんなんか探しちゃいない!」
勇者「凱空!?お前、凱空を知ってるのか!?」
盗子「てゆーか、この辺に住んでる人なの!?」
剣次「だ、だから違うっての! そんなことより勇者、親父さん知らないか?」
勇者「親父が凱空なのか!!?」
剣次「ぐはっ!ウッカリ!!」
勇者「うわっ!ガッカリ!!」
剣次っ!シッカリ!!

 

258:馬鹿〔9歳:LEVEL5〕
うっかり漏らしたカルロスの一言により、なんと親父が「凱空」なのだと判明した。
だがそういや親父は「歴史全書」を知っていた…。いま思えば可能性はあったのだ。
勇者「親父が…そうか親父が…。」
盗子「まさかあの勇者親父が元「勇者」だなんて、ビックリだね!」
賢二「僕は親の名前を知らなかった勇者君にビックリだけどね。」
勇者「…この話はとりあえず後回しでいい。 まずは計画通り学校へと急ぐぞ。」
剣次「いや、悪ぃがここは通せねぇ。 学校はもっと…な、なんでもねぇが。」
勇者「そうか、やはり学校で何かが起こってやがるのか!」
剣次「Σ( ̄□ ̄;)!!」
盗子(ちょ、ちょっとバラし過ぎじゃない?もしかして作戦なんじゃ…?)
賢二(彼はいつでも真剣にお馬鹿さんだよ。)
剣次「恨むなら自分を恨めよな。 全ては事実を知ったお前が悪いんだ。」
盗子「アンタが教えたんじゃん!!」
勇者「ならば押し通る!! 食らえ「刀神流操剣術」、壱の秘剣「一刀両断剣」!!」
剣次「おっと甘いぜ! 絡み合え十字の呪縛!「束縛十字(ソクバクロス)」!!」
勇者は魔剣を封じられた。
勇者「くっ…! さすがはカルロス、一筋縄にはいかんか!」
剣次「ヘッ、お前も腕を上げたじゃねぇか。」
勇者「だがいいのか?こっちにはお前が崇拝する賢二…「賢者」がいるんだぜ?」
賢二(えっ!なんでここで僕が出てくるの!?)
勇者(コイツは単純バカだ、脅せば脅すほど素直にビックリする。お前も脅せ。)
剣次「た、確かに賢者殿には勝てるかわからねぇ…。 だが俺は…!」
賢二「どいてください剣次さん!でないと…必殺魔法「大吹雪」が火を噴きますよ!」
盗子(アホ賢二! いくらハッタリったって、「火を噴く吹雪」ってどんなだよ!!)
賢二(あ゛…。)

剣次「なんてこった!!」
剣次は素直にビックリした。

 

259:真相〔9歳:LEVEL5〕
カルロスが下手なハッタリに驚いている間に、俺はコッソリと我が家から逃走した。
よし、急いで学校へ向かうとしよう。 結局一人になってしまったが、まぁ仕方ない。
勇者「さてと、やはりここは追っ手を撒くため山道から…むっ!?き、貴様は…!」
父「なんだ勇者、父さんの後を追ってきたのか?そんなに父のオッパイが恋し…」
勇者「親父…いや、「元勇者:凱空」か。 貴様は学校じゃなかったんだな。」
父「なぬ!? やれやれ、カルロスもとんだウッカリ者だな…父さんマイッチング!」
勇者「フンッ、狸が。 バレるとわかっていたから、わざわざここで張ってたんだろ?」
父「…そうか、ならば話は早い。 早速本題に入ろうか。」
親父はシリアスモードに入った。
父「もう「歴史全書」は一通り読んだな? じゃあその後日談から聞いてもらおう。」
勇者「できるだけ早く話せよな。また途中で壊れられちゃたまらん。」
父「…マオの半身を己に封じてから約十年後、妃后は一人の子を産んだ。」
勇者「ひこ…確か魔を滅するという「退魔導士」の女か。それがどうかしたのか?」
父「その日を境に、それまで妃后の内にあったマオの邪気が完全に消えた。」
勇者「…ってことは、もしや子供の方に受け継がれたとか?」
父「そう、マオは彼女の子供に乗り移ったのだ。」
勇者「むー。 だがそれは十年も前の話だろ?それで今が大丈夫ならもう…。」
父「いいや。 いくら妃后の子とはいえ、子供の身で耐え切れる程マオは甘くない。」
勇者「どういうことだ?」
父「十年の時をかけ、マオは少しずつ子供の精神を侵食していった。」
勇者「侵食…! ってことは、そいつはもうじきマオに乗っ取られるってことか!?」
父「そうだ。 そしてそうなる前に、その子もろともマオを封じる。それが…」
勇者「それが「隔離計画」の最終目的ってわけか…。」
父「勇者よ。 私がなぜ今、お前にこの話をしたかわかるか?」
勇者「!! ま、まさか…まさかそれは俺…」

父「姫だ。」
勇者「じゃなかった!!」
勇者は読み違えた。

 

260:変調〔9歳:LEVEL5〕
親父の口から語られた、衝撃の真実。 なんと、姫ちゃんの中にマオが居るらしい。
勇者「バッ、バカな! 姫ちゃんは「天使草」を使えるほど純粋なんだぞバカ!!」
父「だが確実に、あの子は蝕まれている。お前は彼女の変調に気づかんのか?」
勇者「変調?そんなものは無い! 姫ちゃんは昔から何も変わっちゃ…」

「よろしくね勇者君、私は「姫」っていうの。」
「…ん? あ!ごめんね、間違えちゃった。 そうだよね、違うよね。」

勇者「そういえば…最初は今ほど寡黙ではなかったかも…。」
父「精神に異常をきたしている結果だ。 そして近年、特にその進行が著しい。」
勇者「だ…だから封印するってのか!?姫ちゃんもろとも!? フザけんな!!」

父「おフザけ大好きぃーー!!」
勇者「時間切れか!こんなタイミングで時間切れか!!」
父「いま学校では封印の準備が行われている。 私はお前を…一生離さない!」
勇者「プロポーズかよ!! どけ!その術は俺が命に代えても阻止してやる!!」
父「ここは通さん!私は父さん! …プッ☆」
勇者「ブッ殺す!!」
父「行かせんぞ! どうしても行くと言うのなら、この偉大な父の屍を越えぶっ!!

勇者の躊躇ない攻撃。
父の威厳は傷ついた。

 

261:反復〔9歳:LEVEL5〕
計画の全貌が明かされ、姫ちゃんが危ないとわかった今、じっとしてはいられない。
さっさとクソ親父を血祭りに上げて、颯爽と姫君を助けに向かってこそ「勇者」だろう。
勇者「さぁ親父、命が惜しくば黙って俺を通しやがれコラ。」
父「私に…父に手を上げるとは…! 後悔してやる!!」
勇者「お前がすんのかよ!させるんじゃねーのかよ!!」
父「フッ、息子に後悔なんぞ絶対にさせない…それが親の使命だ。」
勇者「いや、貴様の子に生まれた時から俺の後悔は始まったぞ。」
父「まぁ、アレだ。 とにかくここは通さんし、私は父さん! …プッ☆」
勇者「ほんとブッ殺す!!」
父「行かせんぞ! どうしても行くと言うのなら、この偉大な父の屍を越えぶっ!!
しばらくコレを繰り返した。
~その頃、勇者の家では~
剣次「荒れた大地も軽やかに駆け抜けろ!「自転十字(モトクロス)」!」
賢二「・・・・・・・・。」
剣次「あ~、何だっけかな~。ド忘れしちまったよ!「十字謎解(クロスワード)」!」
賢二「・・・・・・・・。」
剣次「ぐっ…! 何故だ!?何故こんだけ技出して手応えが無ぇんだ!?」

盗子(…ねぇ、行こっか?)
賢二(うん、そだね…。)
剣次は〔映像〕に夢中だ。

 

262:奥義〔9歳:LEVEL5〕
その後まるでデジャヴの如きやりとりを繰り返し、俺達はようやく戦闘へと突入した。
だが魔剣はカルロスに封じられたため、しばらくは使えそうにない…どうするか。
父「フフッ、どうやらその剣は使えんようだな。 そんな状態で闘えるのか?」
勇者「ケッ! 貴様を撒くくらい、剣など無くてもなんら問題は無いわ!」
父「ほぉ、ならば見せてもらおうか!」
勇者「あっ!水着のネェちゃん!」
父「ナメるな勇者!そんなヌルい手に引っ掛かる父と思ってか!!」
勇者「…が、脱ぎだした!!」
父「なんですと!?」
勇者「くたばれエロ親父!食らえ、謎の秘奥義「鶴の仇返し」!!」
父「ぬっ!木陰に隠れて一体何を…!?」
勇者「私がハタを織っている間…決して中を見るなよこの野郎。」
父「ひ、卑怯な!見るなと言われると見たくなるのが人の性じゃないか!」
勇者「かたかたかった~ん。かたかたかった~ん…。」
父「鳥!?鳥のシルエットが…!? ヤバい、気になる!」
勇者(さぁ見るんだ親父!その瞬間に俺は逃げるがな!!)
なぜこの隙に逃げないのか。
父「うぉおおお!ダメだ、もう辛抱たまらーーん!! …ハッ!!」
勇者「…ついに見てしまいましたね、バカ野郎。」
父「し、しまった!私としたことが、そんな「影絵」に引っ掛かるなんて…!」
勇者「こうなってはもうここには居られねぇ…。さよ~なら~ん。 パタパタパタ~。」
父「あぁ、ゴメンよ鶴さん…私が見ちゃったばっかりに…ってバカ!騙されんわ!!」
勇者「くっ!さすがは親父…やるな!!」
とんだバカ親子だ。

 

263:恨無〔9歳:LEVEL5〕
親父と闘い始めて一時間が経過したが、戦闘は依然として平行線を辿っていた。
するとそんな時、親父が穏やかに語りかけてきた。心理戦でも仕掛ける気だろうか。
父「勇者よ。 仮にここを抜けられたとして、お前は一体どうする気なのだ?」
勇者「何を?決まってんじゃねーか!姫ちゃんの封印を阻止するんだよ!」
父「だがそうしたところで、いずれ彼女はマオのモノになるのだぞ?」
勇者「バカを言うな!姫ちゃんは俺とくっつくんだ!」
父「いや、そういう意味じゃなくてだな。」
勇者「大丈夫!こういう時は結構なんとかなるのが世の常だ!」
父「だがもしならなかったら、マオが復活して世界はおっかなびっくりだぞ?」
勇者「そんな時に無理矢理なんとかするのが「勇者」の役目だ!任せやがれ!」
父「…そうか、もはや話し合いでは解決せんようだな。」
勇者「ああ。 とうわけで…こうなったら”アレ”で決めるしかないとは思わないか?」
父「なるほどな…。 いいだろう!だが負けても恨みっこ無しだぞ!?」
勇者「無論だ! じゃあいくぞ!!」

勇者「ジャン!!」
父「ケン!!」
意外と簡単な方法だった。
父「ブフォン!!
息子の急所攻撃。
親父はムスコに痛恨の一撃を受けた。

 

264:親心〔9歳:LEVEL5〕
幻の禁じ手を繰り出し、なんとか親父に勝利した俺。 後味は悪いが勝ちは勝ちだ。
父「あぅ…う゛がぁ…。」
勇者「悪く思うなよ親父、恨むなら自分の教育方針を恨んでくれ。」
父「ま゛、待で…勇者…。」
勇者「学校までは恐らく二十分…急がねばマズいな。 よし、猛ダッシュだ!」
父「ぐ゛っ……がふっ。」
勇者は父の屍を乗り越えた。
声「オイオイ…人にあんだけ釘刺しといて、結局アンタの答えはそれかよ?」
父「む゛っ…お゛、おぉカルロスか。油断したらこのザマ…情けない話だ。」
剣次「ヘヘッ、嘘つくなよ凱空さん。本気出しゃガキなんて一捻りだろうに。」
父「…まぁ、息子に後悔なんぞ絶対にさせないのが…親の使命だからな。」
剣次「それで世界が滅びようともか?フッ、随分と無責任な「勇者」だなアンタも。」
父「息子の天命に賭けてみたくなった。最後には親のエゴが勝ってしまったよ。」
親父はカッコ良く締めようとした。
剣次「立てるか?」
父「ダメかも…。」
だが失敗した。

 

265:激怒〔9歳:LEVEL5〕
重傷を負った親父を残し、俺は学校へと向かって走った。そして間も無く到着だ。
途中、カルロスを振り切ってきたという盗子達とも合流。事の顛末も軽く説明した。
勇者「というわけで、恐らく先公が最大の敵となるだろう。 覚悟はいいか?」
盗子「し、死ぬのはイヤだけど…そういう事情ならしょうがないよね!」
賢二「あっ!学校が見えてきたよ! 校庭に誰かいる!!」
勇者「その儀式、待ったぁーーー!!」
教師「えっ、勇者君!?なぜキミがここに…!?」
勇者「姫ちゃんを守るため、貴様を倒しにやって来た!大人しく死にやがれ!!」
教師「…やれやれ、凱空さんも困った人だ。 やはり彼も人の親でしたか。」
姫「ゆ、勇者く…えぐっ。」
勇者「姫ちゃん、泣いて…泣いてるのか!? 先公ぉ、貴様ぁあああああ!!」
勇者は教師に斬りかかった。
姫「うぐっ、えぅっ…。」
賢二「えっと、えっと、どどどどうすればいいのかなぁ…!?」
盗子「も、もう大丈夫だよ姫! だから泣かないで!ね?」

姫「しゃっくりが止まらないよ。」
盗&賢「紛らわしいよ!!」
勇者は死に急いだ。

 

266:無敵〔9歳:LEVEL5〕
姫ちゃんを救うべく颯爽と現れた俺だったが、不覚にも先公にボコボコにされた。
やはりコイツは人間じゃない。 まさかこの俺が、こんなにアッサリやられるとは…。
勇者「うぐっ…! そ、そんな杖ごとき…に…!!」
教師「フフッ、まだまだ甘いですねぇ勇者君。剣なら勝てるとでも思ったんですか?」
盗子(あ、あの勇者が赤子扱い…。 やっぱヤバいよ!絶対勝てっこないよ!)
賢二(だったら、先に術式を行う「術士」を狙った方がいいかもね!)
教師「ほぉ~、私を狙うとはいい度胸ですねぇ。」
盗子「なんで聞こえてんのさこの地獄耳ーー!! って、先生が術士なの!?」
賢二「えっ!? でも先生は「幻魔導士」であって「魔法士」じゃなはっ!?
〔獄炎殺〕が賢二の頬をかすめた。
教師「おや?幻魔導士は幻魔術しか使えない…とでも?」
賢二「ぎょ、ぎょへぇええええ!!!」
盗子(そうだ!この隙に杖を奪えば…! よし、「盗賊の腕輪」を付け…アレッ!?)
教師「コレをお探しで?」
盗子「う゛ぇえええっ!!?」
この敵に死角は無い。

 

〔獄炎殺(ごくえんさつ)〕
魔法士:LEVEL50の魔法。(消費MP50)
地獄の業火で敵一体を焼き殺す高等魔法。どんなお肉もたちまちウェルダンだ。
 

 

267:絶望〔9歳:LEVEL5〕
全てにおいて俺達の上を行く先公。 もうこれ以上打つ手は無いのだろうか…。
教師「フフッ。 万能無敵のこの私に勝つなんて不可能ですよ。諦めてくださいな。」
盗子「もう…ダメなのかな…。」
勇者「だったら! だったらなんとかできないのか!?万能なんだろオイ!?」
教師「あ゛…。」
賢二「何か他の方法は無いんですか!?ホントにそれしか無いんですか先生!?」
教師「…マオだけ封印できる術さえ解読済みだったら、コレを使えたんですがね。」
盗子「な、ナニその怪しげな液体!?」
教師「私が長年かけて作った「魔法薬」です。コレなら強制的にマオを追い出せる。」
勇者「それが前に言ってた魔法薬…。 じゃ、じゃあ頼む!それを姫ちゃんに…!」
教師「…ダメです。 マオを再び世に放つわけにはいきません。」
勇者「そんなっ…!」

姫「結構苦いね。」
教師「そんなっ…!!」
姫はいい飲みっぷりを見せた。

 

268:復活〔9歳:LEVEL5〕
死角は皆無かと思われた先公だったが、姫ちゃんにアッサリと意表を突かれた。
すると数秒後、彼女の中から黒い霧のようなモノがこんにちは。 恐らくコレが…!
姫「あうぅ~…。(パタッ)」
勇者「ひ、姫ちゃん! 大丈夫か!?平気か!?お元気か!?」
盗子「大丈夫!気を失ってるだけ…ってゆーか、スヤスヤ寝てるよ!神経太っ!」
霧「ふぅ~、やっと出られたよ~。」
勇者「…貴様がマオか?」
マオ「うん、そうだよ。」
「霊獣:マオ」が現れた。
姫の影響が少し残っている。
教師「な、なんてこと…恐れていたことが…。」
マオ「困っちゃったね。」
盗子「アンタは別に困んないよ!?」
姫の影響が色濃く残っている。
父「うわぉ! ふ、復活しとるぅーー!!」
勇者「あ、生きてたのか親父。意外とタフだな。」
マオ「久しぶりだね、「勇者」の人。 相変わらずウザい感じだね。」
父「お前は何か…雰囲気が変わったな。」
マオ「正直、自分でも戸惑ってるよ。」
賢二(やっぱり不本意なんだ…。)
盗子「あっ、そうだ!復活しちゃってもさ、体が無ければ悪さはできないんじゃ…!」
マオ「問題無いよ。 もう新しい器…その資格持つ者の、邪悪な波動は感じてるよ。」
一同「!!!」
みんな一斉に勇者を見た。

 

269:撤収〔9歳:LEVEL5〕
ついに復活したマオ。そして俺を見守るみんな…って、なんで俺を!?俺が何を!?
勇者「オイ!なにこっち見てんだよテメェら!?ブッた斬るぞ!!」
賢二「いや、僕達は…別に…。」
盗子「も、もしも強い強い勇者が乗っ取られたら大変だなぁ~って、ね?」
父「その点は安心していいぞ。マオは合意無き者に憑依することはできん。」
勇者「じゃあなんでお前までこっち見たんだよ!?」
父「…見ろ勇者、一番星だ。」
勇者「ありゃ太陽だよ!!いい加減自然な誤魔化し方を覚えやがれ!」
マオ「さて、これ以上時間潰すのもアレがアレな感じだし…そろそろ行くよ。」
教師「ま、待ちなさい!アナタをこの島から出すわけには…!!」
マオ「それができれば苦労は無い…。 そうだよね、先生?」
教師「くっ…!」
勇者「まぁいいさ。 俺に倒されるまでの僅かの命…せいぜい楽しむがいい。」
マオ「じゃあ毎日お祭りするよ。」
盗子「そりゃ楽しみすぎだよ!!まぁ世界滅亡よりはマシだけども!」
マオ「毎日が「後の祭り」だよ。」
盗子「そんな悔やまれる毎日は楽しくないよ!?」
賢二「なんかキャラに威圧感が無さ過ぎて、こっちも恐怖におののきづらいよね…。」
マオ「んじゃ、もう行くよ。 でもサヨナラは言わないよ。」
勇者「ああ。きっとまた会える。」
盗子「いやいやいや!それは友情を伴う場合の別れ方だよ!?」
マオ「あ~。 じゃあ…待ってる!私、待ってるから!!」
勇者「三年経ったら迎えに行く!」
盗子「愛し合ってるの!?」
マオ「というわけで、サラバだよ脆弱なる者ども! またねー☆」
マオは妙に軽いノリで去っていった。
盗子「行っちゃったね…「緊迫感」の「き」の字も残さずに…。」
賢二「でも代わりにホラ、「脱力感」がこんなに…。」
勇者「気を抜いてる余裕は無いぞお前ら。俺達が今すべきこと…わかってるだろ?」
賢二「…大丈夫、わかってるよ。」
盗子「アタシもわかってる。」

父「・・・・・・・・。」
教師「・・・・・・・・。」


「逃げるぞ。」「うん。」
三人は翌朝、海岸に打ち上げられた。

 

270:旅立〔9歳:LEVEL7〕
マオの半身が姫ちゃんから解放されて半年後、世界は再び闇に沈みつつあった。
奴と結託した者の名は、「魔王:ユーザック・シャガ」。とんでもない化け物だと聞く。
現在そいつは「メジ大陸」を拠点とし、残りの四大陸にも勢力を広げているらしい。
父「…行くのか、勇者よ。」
勇者「ああ。」
そんな中、俺は大陸への旅立ちを決めた。 なぜなら俺は「勇者」だからだ。
勇者「じゃあな親父。 帰ってきたら貴様を殺す…忘れるなよ?」
父「ハッハッハ! お前ごときがこの私を倒せるかな?」
教師「さぁ勇者君、そろそろ行かないと夜が明けてしまいますよ。」
勇者「それにしても、貴様らが止めんとは驚きだな。絶対止めると思ったんだが。」
教師「もはやマオは解き放たれた…こうなった以上、誰かが止めねばなりません。」
勇者「お前らも相当強いんだろ?自分が行こうとは思わないのか?」
教師「面倒です。」
勇者「言い切るなよ…。」
父「過保護が過ぎると強い子は育たんからな。ここは若い世代に任せるべきだ。」
教師「マオの半身たるキミを死地へ向かわせるのは、やはり少々心配ですが…ね。」
勇者「安心しろよ先公、俺はマオに乗っ取られる程ヤワじゃない。ナメんなコラ。」
父「お前の場合、なぜか妙に同調している。何か面白い結果が出るやもしれんな。」
教師「そうですね。そこに賭けているからこそ、キミを行かせるようなものですよ。」
勇者「フッ、ホントは他にも何か企みがありそうだが…まぁいい。時間も無いしな。」
父「「ギマイ大陸」へ行くことがあったら、「終末の丘」に寄れ。母さんの墓がある。」
勇者「…わかった。チョメ太郎や血子の世話は頼んだぞ。」
父「うむ。行ってこい。」
あのあと親父から聞いた話によると、俺は親父と終との間にできた子供らしい。
氷中の終に次第に惹かれ、見惚れてたら熱視線で氷が溶けたとか言ってたっけ…。
そんなバカな話があるかとは思ったが、まぁあの親父に何を言っても仕方あるまい。
たとえ親がなんであろうと、自分がなんであろうと、俺は行くんだ。 なぜなら俺は…
盗子「ゆ~うしゃ、こんな夜更けにどこ行く気~?」
勇者「と、盗子!? なぜお前がここに!?」
賢二「水臭いよ勇者君、サヨナラも言わずに行こうとするなんて。」
勇者「賢二!それに姫ちゃんまで…!」
姫「ゴメンね勇者君、あのとき私が苦いとか言っちゃったから…。」
勇者「も、問題は「飲んじゃった行為」なんだが…。 いや、あれで良かったんだ。」
賢二(マオが抜けても、やっぱ基本は天然なんだなぁ姫さんて…。)
勇者「すまんなお前達、こんな時間にわざわざ見送りに…って、何だその荷物は?」
姫「んとね、勇者君が行くなら私も行くよ。そのための「療法士」だよ。」
盗子「旅にはお金も要るよね~。だったら「盗賊」は必要じゃないかな~?」
賢二「きっと中には剣を通さない敵もいるよね。「魔法士」は重宝すると思うよ。」
勇者「お、おまえら…。」

勇者「断る!!」
三人「えぇっ!?」

勇者「…だが、どうしてもってんなら連れてってやる!」
盗子「あっ…☆ う、うん!!」
賢二「なんだかうまいこと立場を逆転されちゃったね…アハハ。」
姫「修学旅行だね☆」
盗子「あ、それいいかも!」
勇者「よーし野郎ども、家に帰るまでが修学旅行だ! 死んでも帰るぞー!!」
三人「オォーーー!!」


なぜなら「俺達」は、「勇者」だからだ。

こうして勇者達は旅立った。



行く先に何があるのか、それはわからない。
行く先で何が起こるのか、それはわからない。

だがそれでも、勇者は行く。


未開の荒野を、勇者が行く。
まだ見ぬ明日を、勇者が行く。
邪魔する者はブッた斬り、勇者が行く。



勇者が行くのだ。







〔キャスト〕

勇者
賢二
盗子


宿敵 霊魅
弓絵 暗殺美
邦壱 巫菜子
銃志 武史
芋子
峰夢's 余命一年之助
法足 栗子
寒来 土男流
案奈 博打
美風 歌憐
メカ盗子 血子


ユーザック・シャガ(魔王)
麗華
戦仕

勇者義母 校長 ペルペロス
ゴップリン オナラ魔人 女医
スイカ割り魔人 太郎(ビブ) 剣次(カルロス)
洗馬巣 黄錬邪 群青錬邪
桃錬邪 ベビル 海竜
古館 美咲 魔王母
華緒 黒猫
ライ・ユーザック 下端 総大将(義勇軍)


チョメ太郎
教師
勇者父(凱空)





その他の適当な人々








〔ナレーション〕

オチの人







〔キャラクターデザイン〕

画家







〔キャラクター提供〕
(登場順・敬称略)

ゴリガン(暗殺美) てん(邦壱)
妖狐(巫菜子) Clown(銃志)
柳瀬あき(武史・美風) 匿名希望(芋子)
こよまま(白) せもし(峰夢's)
ささ(余命一年之助) SHINTA(栗子)
ほっけ(寒来) ワフ(土男流)
minami(案奈) ムラサメ(博打)
ゴウ(歌憐) 小倉優子(メカ盗子)








〔スペシャルサンクス〕

読んでくれやがった全ての雑魚ども












盗子「ギャー!出たー!何か変な怪獣が出たぁーー!!」




勇者「チッ…! 舵取りは任せたぞ賢二、コイツは俺が殺る!!」




賢二「はわわわ!え、えっと!面舵イッパイイッパイ!!」




姫「大丈夫だよ、傷は私が治すよ! むー、「転覆」!!」






一同「うわぁあああああああああああああ!!








〔制作・著作〕

創造主

























つづく。


勇者「続くんかい!!」

「第一部:完」だ。

 

第二部へ
創造主
~勇者が行く~(1)
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