~勇者が行く~(1)

本編( 2 / 11 )

外伝(壱)

外伝(壱)

 

外伝1-1:賢二
僕の名は賢二。これは将来立派な「賢者」になれるようにと付けられた名前。
でも「ゃ」の分、何かが足りないんじゃないかと思うと、ちょっぴり不満なこの名前。
そういえばまだお父さんがいた頃、こんな話をしたことがあったなぁ…。
賢二父「賢二、賢一に果たせなかった夢…お前には期待しているぞ!」
賢二「えっ!?やっぱりいたの「賢一」って!?」
賢二父「あぁ…だが何故か6年前に謎の失踪を…な…。」
賢二「そうなんだ…。 うん、わかった!賢一お兄ちゃんの分まで僕頑張るよ!」

賢二父「…お兄ちゃん?」
賢二「お姉ちゃん!?」

家出の理由は明白だ。

 

外伝1-2:盗子
アタシは盗子。まだまだ修行中だけど、世界一の「盗賊」を目指す可憐な乙女☆
母「盗子、アンタも将来は立派な盗賊になれるように頑張んだよ!」
盗子「もっちろんそのつもりだよ☆ 母ちゃんの子として生まれた時からね!」

母「いや、盗んできたんだけどね。」
盗子「えっ、ええええっ!?」

サラッと言ったが重罪だ。

 

外伝1-3:チョメ太郎
ポピピペップ…ポピュッパ!!

意味がわからない。

 

外伝1-4:姫
私は姫だよ。将来は「療法士」っていう、回復の魔導士になるのが夢だよ。
天然系?そんなことないよ。山椒は小粒でピリリと辛いです。

将来は立派な山椒になるのが夢だよ。

意味がわからない。

 

外伝1-5:勇者父
私は勇者の父。息子勇者を愛し、また勇者に愛される唯一の存在だ。
今日も二人は仲良し。やはりいつまでたっても自分の子というのは可愛いものだ。
父「おーい勇者、今日は久しぶりに父さんが背中流してやるぞー!」
勇者「あぁ、頼む…ってなんで「鉄の爪」装備してんだよ!?」
父「頑固な汚れもこれでバッチリ☆」
勇者「殺す気かっ!」

フッ、照れやがって。

勇者は呪われている。

 

外伝1-6:教師
私は冒険科の担任教師。ここだけの話、名は「凶死(きょうし)」といいます。
出身地は魔k…ゴ、ゴホン。名前以外は基本的に謎ということにしておきます。

みなさんに「冒険への知識」と、ちょっとした「不吉」を運ぶのがお仕事です。

後者はただの趣味だ。

 

外伝1-7:ベンガル
宿敵「いや、「ライバル」だから!!」

どうでもいい。

 

外伝1-8:賢二
学校入学直後のお話。僕はあの「悪魔」のせいで死ぬ程怖い体験したのです。
それは、勇者君にそそのかされて「秘密の部屋」に忍び込んだときのこと。
部屋の中には巨大な化け物「ペルペロス」。そして早速口に咥えられちゃった僕…。
賢二「た、助けて勇者くーん!食べられちゃうよー!!」
勇者「なに!?「僕に構わず逃げてくれ」だって!?賢二…お前って奴は!!」
賢二「え゛っ!?い、言ってない!言ってないよー!?」
勇者「ありがとう賢二。お前のことは…忘れたい!!」
賢二「えっ、えええ!?「忘れない」じゃないの!?せ、せめて覚え…バタン!

勇者はホントに忘れた。

 

外伝1-9:盗子
私は未来の大盗賊・盗子。今のところはまだまだ未熟な修行中の身だけどね。
勇者「たぶん…ここら辺だな…。」

勇者はタンスを開けた。
勇者は「盗子の帽子」を手に入れた。

でもとりあえず、今は周りにアタシより凄腕の盗賊はいないのが自慢かな☆
勇者「ここにもきっと何かが…。」

勇者は机の引き出しを開けた。
勇者は「盗子のペンダント」を手に入れた。

勇者「他には…無いな。よし、帰るか。」
あーあ。学校無いとやることも無いなー。みんな何してんのかなぁー?

「勇者」も立派な「盗賊」だ。

 

外伝1-10:姫
私はよく「天然少女」とか言われるよ。なんか、みんなとはちょっと違うんだって。

仲間ハズレは寂しいよ。私も「養殖」で生まれたかったよ。

そういう意味じゃない。

 

外伝1-11:勇者の義母
えっとぉ~アタシは~、勇者ちゃんの…義母?「ママハハ」ってゆーの?そんな感じ。
でもさ、別にパパちゃんと結婚してるとかじゃないんだよねぇ~、実は。
なんてゆーの?ホラ、「押しかけ女房」ってゆーの?うん、まぁそんな感じなの~。
出会い?んとね~、ちょっと話すと長くなっちゃうんだけどぉ~。 えっとねぇ~。

あれは…そう、あれはまだアタシが「オカマバー」で働(以下略)

義母ですらなかった。

 

外伝1-12:ゴップリン
コンド コソハ チャント キテヨ…?

保証は無い。

 

外伝1-13:賢二
え?「今年度を振り返って」と「来年度への抱負」…ですか?そうですねぇ~…。
思い出したくもない出来事が多すぎて困るのですが、中には楽しかったことも…
楽しかった…ことも?楽し…来年度こそは楽し…

贅沢は言いません、死ななければいいです。

保証は無い。

 

外伝1-14:盗子
ん?「今年度を振り返って」と「来年度への抱負」??う~ん、やっぱ死にたくな…

保証は無い。

 

外伝1-15:姫
…ほぇ?「今年度を振り返って」と「来年度への抱負」?するの?

来年はもっと背が伸びるといいよ。

たくましいくらい着眼点が違う。

 

第二章へ

本編( 3 / 11 )

第二章

第二章

 

46:進級〔5歳:LEVEL1〕
春…。 5歳になった俺は、今日から二号生として学校に通うことになる。
新しい生活の始まりだ。何かが変わることへの期待で胸が高鳴る始業式。

校長「みなさん進級おめでとう。早速みなさんには殺し合いをしてもらいます。」

不安が高まる始業式。

 

47:補充〔5歳:LEVEL1〕
新学年に上がった俺は、A~CのうちのA組に配属された。みんなも一緒だ。
残りの二組には大量の転入生。どうやら毎年こうやって人数を確保しているらしい。
人数が減っては転入生を募り、それを繰り返す…なんとも恐ろしい学校だ。
数年後、俺達「オリジナル」のうち何人が残り、無事卒業でき…

そういえば、昨年度は「卒業式」が無かった気がする。

なにげに五年目だった。

 

48:反応〔5歳:LEVEL1〕
今は春だ。つまり早速「あの行事」の…そう、遠足の季節なのだ。
転入生らは去年を知らんので、どうやら楽しみにしているようだ。雑魚どもめが。
その点「オリジナル」の連中は違う。賢二、盗子、宿敵…皆がプルプル震えている。
そう、これが本来の反応。この俺ですら多少の不安があるほどなんだよコラ!

姫「遠足楽しみだね勇者君!わくわく!」

俺もまだまだ修行が足りねぇ…。

勇者の自尊心に痛恨の一撃。

 

49:入島〔5歳:LEVEL1〕
遠足の行き先は、もはや当たり前の如く「ゴップリン島」。
去年は辿り着くことすらできなかった俺だが、今年は意外にもすんなり上陸できた。
よーし、今年こそはゴップリンを倒し、「勇者」としての第一歩を踏み出してやるぜ!
危険?いや、大丈夫。この通り武器ならリュックの中にたんまりと…

たんまりと…オヤツが…。

親父が要らぬ気を使っていた。

 

50:失敗〔5歳:LEVEL1〕
ゴップリン島…最初は違う名だったが、奴に支配されこの名にされてしまった島。
街には様々な「ゴップリングッズ」を売る土産物屋が立ち並んでいた。
「ゴップリンTシャツ」?「ゴップリンフィギュア」?こんな悪趣味なもの誰が買うか!
あ゛ぁ?「ゴップリン饅頭」?ふざけるな!こんなものが…美味い!買いだ!

勇者は「ゴップリン饅頭」を手に入れた。

勇者の「すばやさ」が3下がった。
帰りに買うべきだった。

 

51:選抜〔5歳:LEVEL1〕
自由行動の時間も終わり、ついに「ゴップリンの洞窟」に乗り込む時間がやってきた。
だが全員で乗り込むには人数が多すぎるため、まずは少人数が選抜されることに。
勇者「俺は行くぜ。逃げるわけにはいかんからな…「勇者」として!」
教師「おぉ勇者君、素晴らしいです。他にはいませんか?もしいないとなると…」
宿敵(…ハッ!そうかわかったぞ!これはもはや心理戦…)
盗子(えっ、どういうこと!?)
宿敵(こういう時に勇気を出せないような人は、冒険科には不必要。ということは…)
賢二(そ、そっか!となると逆に手を上げていない人が…!)
宿敵(ああ、僕の読みに間違いは無い。一緒に生き残ろう、友よ!)
盗&賢(うん!!)

こうして4人の戦士が選ばれた。

宿敵は2人の友を失った。

 

52:作戦〔5歳:LEVEL1〕
いよいよ敵の根城に突撃することになった俺、盗子、賢二、宿敵の四人。
なんとも心もとないパーティーだが、まぁいないよりはマシだろう。
宿敵「さ、さぁ!とりあえず戦力分析でもして戦いに備えようじゃないか!ね?ね?」
盗子「仮に生き延びてもアンタは死刑だけどね。」
宿敵「ひっ、ひえぇー!!」
賢二「えっと、僕は「魔法士」だから攻撃魔法もちょっとは…でもMP少ないよ?」
盗子「あ、アタシは「盗賊」だから盗むことしか…。」
宿敵「僕は「魔獣使い」なんだが、今のところ誰も懐いてくれなくて…。」
勇者「いま俺に出来るのは、せいぜい「お菓子屋さん」くらいだな…。」
盗子「わっ!何さそのリュック一杯のオヤツは!?」
勇者「文句なら親父に言ってくれ。俺はちゃんと大量の武器を…!」
盗子「なっ…く、クソ親父ー!勇者親父のクソ親父ィーー!!」

父「なんだと失敬な!」
一同「キターーーー!!!」

幸か不幸か「勇者父」が仲間に加わった。

 

53:意外〔5歳:LEVEL1〕
またもやついて来やがったクソ親父。その執念にはもうなんだか脱帽だ。
勇者「な、なんで親父が来てんだよ!またついて来やがったのかこの野郎!」
父「いや、ちょっとタバコ屋に行く途中で道を間違えてだなぁ…。」
勇者「どう間違えたら海まで越えんだよ!」
父「そしたらこの島で偶然気の合う人と出会ってしまい、気づけばここに…。」
勇者「言い訳が毎回苦しいんだよこの嘘つき親父!」
父「嘘なもんかい失敬な!」

父「ねぇ、ゴプさん?」
ゴップリン「ハジメマシテ。」
一同「うわぁーーー!!!」

ゴップリンが現れた。

 

54:不意〔5歳:LEVEL1〕
洞窟奥にいるのかと思ったら、いきなり親父と共に現れたゴップリン。ぶったまげた。
だがこれはチャンスだ。奴は油断している…まさか俺達が刺客だとは思っていまい。
父「ぐぼっ! ゆ、勇者…なん…で…?」
勇者(テメェは油断ならねぇ。ことが済むまで寝てるがいい。)
盗子(勇者、ナイス判断!)
賢二(確かにこの人なら口を滑らせかねないからね…。)
宿敵(今なら「不意打ち計画」でいける!もしかしたら勝てるかも!)
ゴプ「トコロデ オマエラ、ナニシニ キタンダ?」

姫「アナタを倒しに来たよ。」

姫が現れた。
姫はまず「計画」をブッ倒した。

 

55:開戦〔5歳:LEVEL1〕
突如現れた姫ちゃんにより俺達の目的がバレてしまった。 でも、可愛いから許す!
ゴプ「ホォ、オレヲ タオス ダト? イイ ドキョウダ!」
勇者「チッ、やるしかねぇか…! まずは俺が行く、お前らは援護しろ!」
一同「い、イエッサー!!」

勇者は武器を装備していない。
装備するものを選んでください。

・うまい棒
・チョコバット
・ポッキー
勇者「しまった!駄菓子しか持ってない!」
盗子「死ねっ!!」
宿敵「くっ…!賢二君、とりあえず防御魔法だ!」
賢二「う、うん!えっと…「絶壁」!!」

賢二は〔絶壁〕を唱えた。
ゴップリンの後頭部が微妙に歪んだ。

盗子「えぇっ!?そういう効果なの!?」
勇者「う~ん、3点!」
賢二「ジョークじゃないよ!ただの失敗だよー!」
ゴプ「オ、オレノ アタマガー!!」

だが地味に効いている。

 

〔絶壁(ぜっぺき)〕
魔法士:LEVEL5の魔法。(消費MP5)
絶壁を出現させ、攻撃を1・2回防ぐ魔法。だが術者が使用レベルに満たないと…。
 

 

56:魔剣〔5歳:LEVEL1〕
賢二が余計なことをしたおかげで、敵は怒って本気モードに。 チッ、余計なことを!
ゴプ「キサマラー!ユルサン!コロスッ!!コノ 魔剣デ コロスッ!!」

ゴップリンは「ゴップリンの魔剣」を取り出した。

勇者「うわっ!な…なんて剣なんだ!」
ゴップリン「ハッハッハ!ビビッタカ コゾウ!?」
勇者「なんて趣味の悪いデザインなんだ!」
ゴプ「ソコニカヨ!! …アッ!」

盗子はゴップリンの手から剣を盗んだ。

盗子「勇者!早く受け取ってー!この鞘ヌルヌルしてて気持ち悪いー!」
勇者「ナイス盗子!これで攻撃ができる!」
ゴプ「フッ、ザンネン ダッタナ。 ソノ 魔剣ハ 邪悪ナモノ ニシカ ヌケナ…」
勇者「ふむ。なかなか斬れそうな刃だな。」
ゴプ「ヌイトルゥーーー!!」

勇者は「ゴップリンの魔剣」を装備した。

 

57:不覚〔5歳:LEVEL1〕
初めて役に立った盗子のおかげで、俺は武器を装備することができた。
「魔剣」だろうが何だろうが自由に使いこなす…それが「俺流勇者道」だ!
勇者「さぁ死ねゴップリン!親父を殺すため編み出した、この剣技を食らうがいい!」
ゴプ「マ、マテ!コイツガ ドウナッテモ イイノカ!?」
盗子「ゆ、勇者~!ゴメンー!」

盗子が人質に取られた。

勇者「構わん!死ねぇーー!!」
ゴ&盗「ナニィーーーーッ!!?」
勇者「食らえ!勇者スペシャル・ミラクル・ウルトラ・エクセレント・ローリンぐわっ!

ゴップリンの攻撃。
勇者に29のダメージ。

如何せん名前が長すぎた。

 

58:回復〔5歳:LEVEL1〕
必殺技のネーミングに凝りすぎたせいで、せっかくのチャンスをフイにしてしまった。
今後「伝説」となる俺の人生にこんな汚点は残せない。なんとか誤魔化さねば…。
勇者「ぐっ、やはり人質を取られていては…!」
盗子「嘘つけ!取って付けたような言い訳すなー!!」
姫「勇者君、私が傷を治すよ。そのための「療法士」だよ。」
ゴプ「オット!ソウハ サセルカァー!」
賢二「あ、危ない!」
姫「えっと、回復回復…むー!「死滅」!」

姫は間違って〔死滅〕を唱えた。
その名の通り「死の呪文」だ。

勇者「なにぃーー!!?」

ミス!勇者は間一髪で避けた。

ゴプ「グッ、グヘェエエエエ!!

ゴップリンがとばっちりを受けた。

 

〔死滅(しめつ)〕
魔法士:LEVEL50の魔法。(消費MP70)
敵一体を死に至らしめる高等魔術。だが熟練の術士でも成功させるのは難しい。
 

 

59:不完〔5歳:LEVEL1〕
姫ちゃんのうっかりミスのおかげで、危うく死ぬところだった俺。さすがにビビッた。
一体どう間違えたら「回復系魔法」と「絶命系魔法」を間違えるのだろうか…。
盗子「やった!ゴップリンに命中したよー!」
賢二「で、でもなんで「療法士」の姫さんが「魔法士」の…しかも高等魔術を…?」
姫「不思議なこともあるものだね。」
宿敵「ま、まるでヒトゴトのように…。」
勇者「殺す気…! ま、まぁいい。許しちゃう。」
盗子「わーん!扱いが違うー!違いすぎるー!」
ゴプ「グッ…。ナ、ナンテ コッタ…。」
勇者「む!貴様まだ生きてやがったのか!」
賢二「やっぱさすがに術が不完全だったんだよ!」
勇者「こうなったらやはり勇者スペシャル・ミラクル…」
盗子「懲りろよ!」
ゴプ「マ、マテ!モウイイ…オレノ マケダ…。」

ゴップリンは降伏した。

 

60:決着〔5歳:LEVEL1〕
意外にもあっさりと降伏したゴップリンは、おもむろに自分の想いを語り始めた。
コイツ、ホントは人間と仲良くなりたかったらしい。最初は歩み寄ろうとしたようだ。
しかし、ただ「魔物」というだけで怖がられ、自暴自棄になり思わず支配を…。
ゴプ「ヤハリ ナカマ トイウノハ イイモノ ダナ…。 ウラヤマシイ ヨ…。」
勇者「ゴップリン…。」
コイツはコイツで辛かったのかもしれない。そう思った。


ザシュッ!(斬)
思っただけだった。

 

61:昇格〔5歳:LEVEL1〕
俺のトドメも綺麗に決まり、やっとこさゴップリンを葬り去ることに成功した。
ということで俺達は、しばらくその歓喜の余韻に浸ったのだった。
一同「やったー!勝ったー!(というか生き延びたー!)」

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
勇者はレベル2になった。

「非道」が3上がった。
あと他のパラメータも適当に上がった。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

盗子はレベルが上がった。
盗子はレベル2になった。

盗子は盗みがうまくなった気がした。
(気のせいかもしれない。)

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

賢二はレベルが上がった。
賢二はレベル2になった。

パラメータが上がったり下がったりした。
(基本的には下がった。)

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

姫はレベルが上がった。
姫はレベル2になった。

姫は「天然」が5上がった。
納豆が少しだけ好きになった。


宿敵…は何もしてないので変化無し。

 

62:用事〔5歳:LEVEL2〕
ひとしきり喜びを分かち合った俺達。ぼちぼち外に出た方がいいのかもしれない。
宿敵「さぁ勇者君、敵も倒したことだしそろそろみんなの所に戻ろうか。」
勇者「なんだ、まだいたのかこの役立たずめ。」
宿敵「そ、そんな…。」
勇者「悪いが俺にはまだ勇者としてやるべきことが残ってる。盗子、付き合え。」
盗子「えっ!こんなところで愛の告白!?イヤン☆」
勇者「死ね。」
盗子「わーん!ひどすぎるぅー!」

~数分後~
勇者「…さて、用事も済んだことだし…戻るか。」

洞窟はすっかりカラになった。

 

63:正直〔5歳:LEVEL2〕
財宝をたんまり抱えた俺達は、皆と合流しようと出口付近まで来てみた。
すると、なにやら外から級友どもの話し声が聞こえてきたのだ。
少女A「あれから…もう随分経つね…。や、やっぱり…。」
少年A「チックショー!勇者達まで…あのクソ怪物めー!」
少女B「盗子ちゃん、姫ちゃん…ううう。」
少年B「もう許せねぇ!あの野郎ブッ殺してやる!」

出るに出られない。

教師「みなさんその意気です。さぁ、第二班出陣といこうじゃありませんか!」

生徒「イヤです!」

みんな正直な子だ。

 

64:離島〔5歳:LEVEL2〕
外にいた奴らは、俺達が死んだと思って勝手に悲しんでいた。
だが、カタキ討ちよりも自分の命が大事らしい。まぁ当然といえば当然なのだが…。
勇者「て、テメェら…!」
教師「なっ…!!」
生徒「出たぁーーー!!」
賢二「ち、違うよ!幽霊じゃないよー!」
教師(…あ、もしもし?さっきの話ですが…ハイ、「慰霊祭」じゃなくて「祝勝会」に。)
教師「いやぁ~、さすがはみなさん!私は信じてましたよ!」
勇者「まる聞こえだよ!勝手に殺すな!」
教師「ホントにすみませんでした。じゃあ次からは責任持って殺しますね。」
盗子「えぇ!そこに謝るの!?意味違うってば!」
教師「さーて、そろそろ帰りましょうかー!」
勇者達「誤魔化すなー!!」

こうして勇者は島を後にした。

忘れ去られた親父を残して。

 

65:転職〔5歳:LEVEL2〕
奇跡的にも死者を出すことなく終わった春の遠足。
翌日俺がボケーッとしていると、宿敵のやつが深刻そうな顔で話しかけてきた。
宿敵「あのさ、勇者君…」
勇者「断る!!」
宿敵「いや、まだ何も…」
勇者「「もっと戦闘向きの職業に転職したいんだが、何がいい?」…だろ?」
宿敵「えっ!なんでわかるんだい!?」
勇者「俺は空気の読める男だ。」
宿敵「読めすぎだよ!不自然だ!」
勇者「行けばいいじゃん、天職探しに。」
宿敵「え?」
勇者「特に出番とか無いし。」
宿敵「え゛?」
一同「逝ってらっしゃい。」
宿敵「えええええっ!?」

宿敵は追い出され旅立った。

 

66:初夏〔5歳:LEVEL2〕
春も過ぎ行き、初夏。 最近はだんだんと転入生らの顔も覚えてきた。
少女「私は「霊媒師」の霊魅(れみ)。勇者君、アナタの後ろに霊が見える…。」
勇者「貴様、初めての挨拶に不気味なオプションを付けるな。」
霊魅「だって…見えるんだもの…。」
勇者「きっと天国の級友達が俺に期待し、応援してるんだろ。フッ。」
霊魅「・・・・・・・・。」
勇者「黙るな!そこで黙るな!」
霊魅「いっぱいいる…。」
勇者「まぁたくさん逝ったからな。」
霊魅「うごめいてる…。」
勇者「だからイヤな表現をするなってば!」
霊魅「宿敵君も…」
勇者「宿敵もいるのか!?もう!?」

霊魅「じきに…。」
勇者「あぁ…じきにか…。」

結構どうでもいい。

 

67:宿題〔5歳:LEVEL2〕
明日から夏休み。きっと今年もろくでもない宿題が出されることだろう。やれやれだ。
教師「去年の「魔獣狩り」は危険すぎたので、今年は「昆虫採集」に変更ですよ。」
生徒「やったー!」
勇者「…いや待て、そんなうまい話があるわけない!気づくんだ貴様ら!」
生徒「ハッ!!」
盗子「そういえば最近…西の小島で巨大昆虫が大量発生してるとか…。」
賢二「あぁ…確かそれで村が壊滅の危機だとか…。」
教師「そうなんですか?じゃあそれで。」
生徒「やってもうたーー!!」

今年の夏も休めない。

 

68:計画〔5歳:LEVEL2〕
宿題発表の後、俺は仲間を募り宿題攻略の作戦を立てることにした。
集めたのは賢二、盗子、姫ちゃんの三人。他の奴らはまだ実力わからんので却下。
勇者「やはり「勇者」としては、全昆虫を駆除するべきだと思うんだが…」
盗子「無理!絶対無理!」
勇者「あぁ、俺もお前は無理。」
盗子「わーん!死んでやるー!」
賢二「こ、こっぴどい…。」
姫「楽しいピクニックになりそうだね。」
盗子「楽しくないしそもそもピクニックじゃなーい!」
勇者「楽しみだな、ピクニック…。」
盗子「ヒイキだー!」

作戦を決めてください。




・強気に攻めろ
・頭を使え
・逃げ回れ
・運良く生き残れ

 

69:選択〔5歳:LEVEL2〕
話し合いの結果、夏休み初日に早速旅立つことにした俺達。
どうせやらねばならんのなら、早めに済ますに越したことはないからだ。
その朝、俺が一足先に港に向かうと、そこには既に他グループの奴らも数人いた。
勇者「よぉ!お前らも今日発つのか?」
少年「ああ。逃げるなら今だ。」

その手もあった。

 

70:集合〔5歳:LEVEL2〕
学校を恐れた奴らは大陸行きの船で逃げて行った。家族とかどうするのだろうか。
盗子「やっほー!勇者おまたせー!」
賢二「ごめん、ちょっと遅れちゃった。」
勇者「死ねばいい。」
姫「自転車に乗り遅れちゃった。ごめんね。」
勇者「それは大変だったな。許しちゃう。」
盗子「だから扱いが違…ってゆーか自転車には乗り遅れないよ!」
賢二「あ、ちょっと勇者君!先生がいる…。」
賢二が指差す方向を見ると、そこには確かに教師の姿が。でも一体何しに…。


チュドーーーン!!(バズーカ砲)

あ、あの方向には…。

船の残骸がある。

 

71:出港〔5歳:LEVEL2〕
教師が張る港を後にし、俺達を乗せた船は港を出た。
勇者「まぁみんな安心しろ。俺のこの武器さえあれば何も心配は要らん。」
盗子「でもさ、また前みたく親父にリュックいじられてるなんてことが…。」
勇者「フッ、大丈夫だ。そうならぬよう親父には昨夜、一服盛っておいた。」
盗子「マジでー?まぁあの親父なら猛毒盛っても死ななそうだけどね!アハ☆」
勇者「ああ、死ななかったよ。」
盗子「猛毒盛ったのかよ!」
勇者「てなわけで、今回は準備万端な俺の武器コレクションを見よ!」

チョメ太郎「…ポピュ?」

とんだ伏兵が現れた。

 

72:持物〔5歳:LEVEL2〕
武器の代わりにリュックに詰まっていたチョメ太郎。寝相とかそういう次元じゃない。
おかげで俺の作戦はすべてパー。あとは他の奴らに期待するしかないわけだ。
盗子「アタシ「盗賊の腕輪」を持ってきたよ。コレがあれば素早さ上がるんだから!」
勇者「攻撃に役立つものは?」
盗子「はぁ?それってさ、か弱い女の子に期待するもの?」
勇者「帰れ。」
賢二「僕は「魔導符」を持ってきたよ。家財道具とかいくつか売ったんだよ!」

〔魔導符〕
書かれた呪文を読み上げることで、
未修得の魔法であってもMP消費のみで使うことが出来る呪符。
ただし、一度使うとなくなる。

勇者「MPは?」
賢二「足りない…。」
勇者「死ね。」

姫は手ブラだ。

 

73:到着〔5歳:LEVEL2〕
西の小島に到着。大発生と聞いていたのだが、とりあえず港に敵の姿は無かった。
恐らく壊滅的被害を被っているという「ニシコ村」にでも陣取っているのだろう。
勇者「よーし、んじゃ早速戦地へと赴くか!」
盗子「ちょーっと待ったー! あのさ、先に港町で武器とか調達した方が良くない?」
勇者「なるほど、それもそうだな…盗子のクセに生意気な。」
盗子「なにをー!?」
賢二「MPを増幅できる道具さえ売ってれば…。」
姫「私もハチミツとか買いたいよ。」
盗子「木に塗る気かよ!」
勇者「そうか!昆虫なだけに!」
賢二「うぅ~ん…ま、まぁ確かに相手は昆虫だから何かの役には立つかも…。」
勇者「というわけだ。とりあえずハチミツ屋を探すぞ。」
姫「パンも忘れずにね。」
盗子「やっぱアンタ用かよ!」

大好物だった。

 

74:遭遇〔5歳:LEVEL2〕
街にはろくなアイテムが無く、結局ハチミツとパンだけを購入した俺達。
仕方なくそのまま村を目指して歩いていると、途中の山道で行き倒れに遭遇した。
勇者「貴様、ニシコ村の村人か?つーか生きてるか?」
村人「返事が無い。ただの屍のようだ。」
盗子「返事しちゃってるよ!むしろ元気そうだよ!」
賢二「大丈夫なんですか?虫達に酷いことされたんじゃ…。」
村人「ええ、かなりヤバいです。死ぬかもしれません…虫野郎どもめ…くっ!」
盗子「えっ…!ね、ねぇ大丈夫!?ねぇ!?」

村人「水虫が死ぬほど痒くて。」
盗子「死んでしまえ!」

ただの無駄骨のようだ。

 

75:村話〔5歳:LEVEL2〕
妙にナメた態度の村人を救った俺達は、とりあえずそいつに村の話を聞いてみた。
勇者「んで?状況はそんなにヤバいのか?」
村人「ハイ、かなり痒いです。」
勇者「水虫の話じゃねーよ!村のことだ!」
村人「あー、そっちの話ですか。もう完全に占領されちゃいましたよ。」
勇者「やはりそうか。急がねばならんな。」
賢二「でも、ある程度対策を立てないと…。敵はどんな虫なんですか?」

村人「水虫です。」
それが最期の言葉となった。

 

76:苦悩〔5歳:LEVEL2〕
村人を看取った俺達は歩を進め、とりあえず村が視界に入る丘までやってきた。
村周辺には奇怪ないでたちの怪物どもがウジャウジャと…。しかもバカデカい!
勇者「それにしても可哀想な村人だった。カタキは…俺が討ってやるからな!」
盗子「えっ、ひょっとして昆虫達に罪着せた!?着せちゃった!?」
勇者「さて、どう攻めるか。俺には背負ってた「ゴップリンの魔剣」しか無いし…。」
賢二「な、なんか集団行動だね…あれじゃ攻め込んだ瞬間にリンチされちゃうよ。」
盗子「でも、あれだけの数を一気に倒す方法なんて…」
ジャキン!
勇者「ジャキン!?」
盗子「な、何の音!?もしかして敵!?」
ガコン!カチッ!

チョメ太郎は武器を構えた。

・対空迎撃用ミサイル
・対戦車用バズーカ
・32連発ロケットランチャー
一同「どっから出したーー!!?」
チョメ太郎「ポピュッパーー!!」

チュドーーン!!(大爆発)

昆虫軍は滅んだ。(村ごと)

 

77:新敵〔5歳:LEVEL2〕
チョメ太郎のおかげで跡形も無くフッ飛んでしまった俺達の宿題。
仕方なくその旨を教師に話すため学校を訪れると、教師は思わぬことを口にした。
勇者「あのさ、昆虫のことなんだが…」
教師「わかってます、全滅ですよね。でも大丈夫、新ターゲットは決まりましたから。」
賢二「やっぱり宿題は無くならないんだ…ハァ。」
盗子「んで?今度のターゲットは誰なの?」
教師「いや、実はまだハッキリとした正体はわからないのですが…」
勇者「まぁいいさ。どんな奴が相手でもこの俺がブッた斬ってやる!」

教師「敵は、「ニシコ村民惨殺グループ」です。」

勇者は貝のように口を閉ざした。

 

78:心霊〔5歳:LEVEL2〕
宿題の件は心の奥深くにしまうことにした俺達。まぁ多分バレないだろう。
というわけで予想より早く宿題が片付いたため、この夏は遊ぶことができそうだ。
プルルルル…ガチャッ(電話)
勇者「あ、盗子か?俺だ。 今日は「肝試し」やるからみんなを学校に連れて来い。」
盗子「ちょっ…イヤだよ!絶対イヤ!アタシそういうの無理なんだよー!」
勇者「前にも言ったろう?俺もお前は無理。」
盗子「死ね!アンタなんか霊に呪い殺されちゃえ!」
霊魅「霊をナメたらダメですよ…。」
勇者「そうだぞこの野郎!…ってちょっと待て!どうやって電話に割り込んだ!?」
霊魅「だから霊をナメるなと…。」
盗子「えっ!霊の力なの!?そんなことまで出来るの!?」
霊魅「ええ…。ハンドパワーです…。」
盗子「霊じゃないじゃん!思いっきりマジックとかトリックの世界じゃん!」
霊魅「というわけで…肝試しとかやめた方がいいですよ…。では…がちゃ…。」
盗子「えっ!今、口で言ったよ!?「がちゃ」って口で!」

ある意味霊より怖い。

 

79:背後〔5歳:LEVEL2〕
結局肝試しを決行することになった俺、賢二、盗子、姫ちゃん、霊魅の五人。
霊魅の存在は未だに謎だが…まぁいい。とりあえず盗子のビビリ具合いが面白い。
盗子「ほ、ホラ、よく言うじゃん?どこの学校も大抵昔は戦場だったとかで霊が…。」
勇者「何を言ってる?今でもれっきとした戦場じゃないか、生々しく。」
賢二「そうだね…ここほど心当たりのあるスポットもそうは無いよね…。」
姫「夜は墓場で運動会だね。」
盗子「あり得ない!そんな楽しそうな死後はあり得ないー!」
勇者「あれ?お前の後ろに一人…」
盗子「ギャー!ど、どこ!?ヤダヤダヤダやめてぇー!」
勇者「あっはっは!バーカ、騙されやがって雑魚めが。」
霊魅「うふふ…。勇者君って冗談がうまいのね…。」
盗子「む、ムキィー!!」

霊魅「一人どころじゃないものね…。」

これから運動会だ。

 

80:来秋〔5歳:LEVEL2〕
夏休みは終わりを告げ、新学期になった。また命懸けの生活が始まる。
教師「みなさん、お久しぶりです。意外にも生存者多くて先生ビックリです。」
盗子「アタシらはその感想にビックリだよ!」
教師「…あれ?おかしいですね、宿題は早々に無くなったはずなのに何人か…」
勇者「テメェだよ!テメェが港でバズーカで…!」
教師「アレは不幸な事故でしたね…。今でも思い出すと茶柱が熱くなりますよ。」
盗子「それを言うなら「目頭」!「しら」しか合ってな…てゆーか事故じゃ無いし!」
教師「あぁ、もうじき遠足ですねぇ…。」
盗子「事故で合ってました!それに茶柱も合ってます!」
教師「まぁ茶柱よりも「人柱」の方が好きですけどね。」

校舎はそういう造りだ。

 

81:遠足〔5歳:LEVEL2〕
秋だ。 というわけで、遠足の季節だ。果たして春のようにうまくいくだろうか…。
教師「みなさんお待ちかねの秋の遠足、今年は「イモ掘り」になりましたよ。」
勇者(フッ、今度はイモか…い、イモ!?)
賢二(敵の想像がつかない…。)
盗子(まさか「殺人イモ」とか!?あり得ない!あり得ないよ!)
姫「きっと「オナラ魔人」とかだよ。プー。」
盗子(イヤ!絶対イヤ!でもなんかいそうで怖いよー!)

教師「敵はオナラ魔人です。」
一同「やっぱりイターーー!!」

とりあえず名付け親は鬼だ。

 

82:芋園〔5歳:LEVEL2〕
今日は遠足の日。敵の正体も定かでないまま、俺達はイモ園に到着した。
園長「みなさん、こんにちは。今日は楽しんでいってくださいね。」
生徒「よろしくお願いしまーす。」

園長「私が園長のオナラ魔人です。」
生徒「園長なのかよ!!」

一同は「ガスマスク」を装着した。
だが勇者だけ「覆面レスラー」になっていた。

親父の差し金だった。

 

83:死闘〔5歳:LEVEL2〕
なんとイモ園の園長だったオナラ魔人。魔人が普通に商売してるとは思わなんだ。
勇者「貴様…魔人の分際で園長とはいい身分じゃねぇか!ブッた斬る!」
オナラ「やかましい!謎の覆面レスラーに言われたかないわい!(プ~)」
勇者「誰が好き好んでこんな…グフッ!臭ェ!!」
オナラ「失敬な!私のオナラはフローラルだ!(プ~)」
勇者「それはそれでイヤだろ!…って喋る度にさりげなく屁をこくな!」
オナラ「おっと、これはすまない。ちょっとマナー違反だったな。(スゥ~)」
勇者「だからってすかすな!音は無くとも臭っ…つーか痛い!目が割れる!」
姫「新しい宴会芸だね。」
勇者「違うから!そもそも宴会で目を割っても笑えな…グェ!」
姫「…新しくはないってこと?」
勇者「そこじゃない!俺が言いたいのは芸じゃな…ぬおぉっ!」

他のみんなはイモ掘りに夢中だ。

 

84:焼芋〔5歳:LEVEL2〕
姿の見えない敵(ニオイ)に苦戦中の俺。あまりの臭さに戦闘どころじゃない。
これ以上は命に関わる…そう思った時、先公が意外な言葉を口にした。
教師「さて、散々イモも採りましたし…そろそろ帰りましょうか。」
勇者「ちょっと待て!まだ敵は倒してな…グハッ!くっさい!」
教師「あぁ、いいですよ。入園料は払うことにしましたから。」
勇者「それで敵扱いかよ!」
オナラ「今年もそのつもりだったんかい!この悪徳教師め!」
教師「そんなに褒めても何も出ませんよ?」
オナラ「褒めとらんわい!」
教師「あ、そうだ。折角ですし、焼きイモを堪能してから帰りましょう。」
オナラ「…やれやれ。じゃあ焼き場まで行きましょう。だいたい五分くらい歩けば…」
姫「面倒だから畑ごと焼こうよ。」
オナラ「お、お嬢ちゃん…物騒なことを本気の眼差しで言わないで…。」

姫「…え?」

既に畑は灯油臭い。

 

85:盲点〔5歳:LEVEL2〕
畑ごと焼きイモを焼こうとした姫ちゃん。「面倒だから」と言い切ったあたりが素敵だ。
盗子「ちょ、ちょっと姫!過激すぎるってば!アンタのイメージじゃないってば!」
賢二「こ、これは「天然」という一言で片付けられるレベルじゃない気が…。」
勇者「それに気づくんだ!そもそも焼きイモに灯油は使わない!」
姫「あー…そこは盲点だったよ。」
教師「まあまあ、勇者君。もういいじゃないですか。」
勇者「そう…だな。」

もう燃えてる。

 

86:炎上〔5歳:LEVEL2〕
どういうわけか気づけば燃えていたイモ畑。
よく見るとついでに生徒も2・3人燃えているが、この際細かいことは気にしない。
姫「綺麗なキャンプファイヤーだね。」
勇者「違うぞ姫ちゃん、焼畑農業だ。」
オナラ「どっちも違うわ! くそっ、こうなったら…!」
勇者「あぁ、「屁をこいてガス爆発」とかそういうベタなオチは却下な。」
オナラ「くっ、しまった!最大の見せ場を奪われた!」
盗子「絶対やめて!そんな遺族が泣くに泣けない死因はイヤ!」
オナラ「あ、あぁ…私のイモ畑が…。この先私は一体…一体どうやって…」
勇者「すまんな園長、これも運命だ。」
オナラ「どうやって屁をこけばいいんだ…。」
勇者「そこかよ!もっと経済的に困れよ!」
盗子「つーか仮にも「オナラ魔人」がイモに頼るってどうよ!?」

教師「…さて、そろそろ帰りましょうか。」
生徒「はーい。」

焼くだけ焼いて食べずに帰宅。

 

87:鼻曲〔5歳:LEVEL2〕
オナラにまみれた遠足の翌日、俺は学校を休んで病院へと向かった。
なぜならあの刺激臭を嗅いで以来、嗅覚が全く機能しなくなったからだ。
女医「あら、久しぶりね勇者君。どうしたの?」
勇者「なにやら嗅覚細胞が反抗期でな。まぁとにかくさっさと治すがいい。」
女医「あら怖い。 まぁとりあえず、詳しく調べてみましょうか。」

~数分後~
勇者「で、どうなんだヤブ医者?治せねぇとかぬかしたらブッた斬るぞ?」
女医「あ~、鼻の方は大丈夫。2・3日すれば治るわよ。 ただ…」
勇者「…ただ?」

女医「口が悪いわ。」

生まれつきだった。

 

88:秋祭〔5歳:LEVEL2〕
遠足は終わった。しかし秋にはもう一つの悪の行事…そう、「体育祭」があるのだ。
教師「えー、体育祭なんですが、今年は二学年一組で行われることになりました。」
賢二(あぁ…今年は秋までもった人が少なかったんだね…。)
教師「みなさんは一号生とペアなので、あっちの教室で作戦会議してきてください。」
勇者「ちょっと待て!ウチは六年制なんだ、バランス考えたら相手は五号生だろ!」
教師「まぁよく言うじゃないですか、「若い時の苦労で勝手に死ね」って。」
勇者「言わねーよ!こんな組分け納得いかん、断固抗議するぞ!」
盗子「アタシも納得いかない!さぁ、みんなも行くよー!」
生徒「オォーー!」
教師「未だかつて、校長に逆らって生き延びた人間が…いるとでも?」

盗子「一号生の教室にっ!」
生徒「オォーーー!!」

盗子は〔応変〕を覚えた。

 

〔応変(おうへん)〕
盗賊:LEVEL2の特技。(消費MP0)
一瞬で考えをアッサリ変える。アッサリというか、むしろチャッカリ。時としてウッカリ。
 

 

89:会議〔5歳:LEVEL2〕
体育祭についての作戦会議を行うため、俺達二号生は一号生の教室を訪れた。
ガラガラガラ…(扉)
勇者「よーし、よく聞け貴様ら!俺が二号生総番の…」
少女「キャー!勇者先輩だー!キャーキャー☆」
勇者「オイそこ、やかましい!黙らんと上下の唇を縫い合わすぞ!?」
少女「えっ、名前ですかぁー?照れちゃいますぅ~☆」
勇者「いや、これっぽっちも聞いてねーよ!」
少女「「弓撃士(きゅうげきし)」の「弓絵」でーす!勇者先輩の大ファンですぅー☆」
盗子「ちょ、ちょっとアンタ!初対面で馴れ馴れしいんじゃない?ウザッ!」
勇者「ああ、確かにウザいな。」
弓絵「盗子先輩…ウザいとか言われてますよ?」
盗子「アンタのことだよ!」
勇者「いや、お前のことだよ。」
盗子「…ぐっすん。」
勇者「ところで、他の奴らはどうしたんだ? まさかもう帰ったのか…?」
弓絵「そうでーす!もう還っちゃいましたぁー!(土に)」

弓絵はうまいこと言った。

 

90:題目〔5歳:LEVEL2〕
今年は大勢消えたと聞いてはいたが、まさか一号生が残り一人だとは思わなんだ。
勇者「一号生は一人か…これで「二学年一組」とか言われてもなぁオイ…。」
弓絵「え?好きなタイプですかぁー?ズバリ勇者先輩でーす☆」
盗子「聞いてないよ!アグレッシブにも程があるよ!」
勇者「まぁいい、とりあえず作戦会議に入るぞ。 賢二、プログラムを。」
賢二「えっと、まずは「騎馬戦」、次は「打撃戦」…「銃撃戦」…「肉弾戦」…。」
盗子「あり得ない!そんな物騒な体育祭はあり得ないよ!」
勇者「はっはっは。賢二、冗談は盗子の顔だけにしてくれ。」
盗子「うわーん!なんでアタシなのー!?」
賢二「冗談だったらどれだけ幸せなことか…。」
姫「晴れるといいよね。」

予報では「血の雨」だ。

 

91:精進〔5歳:LEVEL2〕
いよいよ始まった二度目の体育祭。 どうでもいいが校長の話が長すぎる。
賢二「あうぅ~…僕、もうダメかも…。」
盗子「ちょっ…頑張んなよ賢二!貧血で倒れるなんて恥ずかしすぎだよ!?」
勇者「フッ、雑魚めが。日頃の精進が足らんからそういうことになるんだよ!」

~3日経過~
校長「…で、あるからして……」
勇者「・・・・・・・・。」


パタッ。

パーティーは全滅した。

 

92:昏睡〔5歳:LEVEL2〕
目が覚めたら病院にいた。 見渡す限り生徒の山…皆が貧血というのが恐ろしい。
女医「あら勇者君、お目覚め?」
勇者「まったく酷い目に遭ったぜ。まぁ貧血じゃ死ぬことはないだろうがな。」
女医「それがねぇ…そうでもないのよ。一人だけ昏睡状態の人がいてね…。」
勇者「あん?俺より悪いのか?一番粘ったのは俺だったと思うんだが…。」
女医「キミもよく知る人物よ…。」
勇者「ま、まさか…姫ちゃんじゃねぇだろうな!?助けろよ!絶対助けろよ!」

女医「校長先生。」

死んでよし。

 

93:雪遊〔5歳:LEVEL2〕
秋が過ぎ、冬。 昨夜は大雪が降ったので、校庭は一面の銀世界と化していた。
勇者「よーし、野郎ども外へ出ろ!雪遊びするぞー!」
賢二「えぇ~。さ、寒いよ勇者君~…。」
勇者「賢二よ、雪ダルマ作るのと火ダルマになるの、どっちがいい?」
賢二「それはもはや二択じゃないよ…。」
勇者「血ダルマって線もあるがな。」
賢二「す、素直に雪合戦でもやろうよ…。」

勇者「準備はいいか?雪合戦始めるぞー!負けたチームは春まで雪ダルマだ!」

命懸けの遊びが始まった。

 

94:三対〔5歳:LEVEL2〕
こうして始まったクラス内対抗雪合戦。「勇者」として勝負事には負けられない。
最初は各組十人で始めた争いも、気づけば三人ずつを残して他はくたばっていた。
〔勇者チーム〕
勇者「敵の大将は所詮賢二…悪運続きもここまでだ!仕留めるぞ!」
弓絵「え、将来の夢ですかぁー?もちろん勇者先輩のお嫁さんでーす☆」
勇者「まさか人数合わせで入れた、一号生のお前が残るとはな…。」
姫「きっと名前が「雪絵」だからだよ。いっぱしの雪ん子だよ。」
弓絵「私は「弓絵」ですぅー!」
姫「そうとも言うよね。」
勇者「姫ちゃん、そりゃちょっと失礼だよ。雪絵に謝るべきだ。」
弓絵「弓絵…勇者先輩のために雪絵になります!」
〔賢二チーム〕
賢二「好戦的なのは勇者君だけ…なんとか彼を封じればとりあえず死なない!」
盗子「それだったら任せといて!アタシのお色気攻撃でイチコロよん☆」
賢二「…霊魅さん、何かいい案ないですか?」
盗子「スルーかよ!」
霊魅「アナタの隣を霊がスルー。」
盗子「いやぁあああああっ!!」

勇者組「いくぞぉーーーー!!」
賢二組「負けるかぁーーー!!」


ゴゴゴゴゴゴ…

ズザァアアアアアアッ!!(雪崩)

 

95:救助〔5歳:LEVEL2〕
「大雪×大声=雪崩」という定番方程式にやられ、アッサリ雪崩に飲まれた俺達。
どうやら裏山に積もった雪がすべて校庭に流れ込んだようだ。
なんとか自力で這い出せたのは俺、賢二、霊魅のみ。他の奴らは見当たらない。
勇者「くっ、早く助けないと姫ちゃんが…!他はともかく姫ちゃんがー!!」
霊魅「今日は霊界も大漁でしょうね…。」
勇者「賢二、何かいい魔法は無いのか!?たまには根性見せやがれ!」
賢二「む~…そうだ!夏休みに覚えた炎系魔法…「灼熱」!!」

賢二は〔灼熱〕を唱えた。

 

〔灼熱(しゃくねつ)〕
魔法士:LEVEL2の魔法。(消費MP2)
熱い日差しが降り注ぐ夏の魔法。こんがり焼けてビーチでモテモテだ。
 

 

96:絶望〔5歳:LEVEL2〕
賢二なんぞをアテにした俺がバカだった。早くなんとかしなければ姫ちゃんが…。
…ゴボッ!
勇者「姫ちゃんか!?」
盗&弓「ぷっはーーー!!」
盗子「ゲホッゲホッ! わーん!死ぬかと思ったよー!」
弓絵「寒いですぅ~!先輩の愛で暖めてくださ~い☆」
勇者「・・・・・・・・。」
その後一時間以上探したのだが、結局…姫ちゃんが発見されることはなかった…。

勇者は絶望に包まれた。

姫「イチゴ味しか無かったよ~。」
一同「シロップ買ってたんかい!!」

雪は食い物じゃない。

 

97:雪山〔5歳:LEVEL2〕
明日は冬の行事「地獄の雪山登山」がある。
去年は雪が降らず中止になったのだが、今年はちゃんと降ったので大丈夫だろう。
教師「明日はお待ちかねの雪山登山です。みなさんハリキッて遭難しましょうね!」
勇者「誰がするか!そもそも遭難なんて狙ってするもんじゃねーよ!」
教師「そこを狙うのがプロの腕ってやつですよ。」
盗子「だから狙わないでいいから!てゆーか何のプロだよ!?」
賢二「と、ところで今回の目的…いや、むしろ敵は?」
姫「きっと「ユキダルマン」とかだよ。」
盗子「うわ~、いそうだよ…ベタベタな感じだけどメチャメチャそれっぽいよ…。」

教師「敵は「スイカ割り魔人」です。」

夏にやれ。

 

98:荷造〔5歳:LEVEL2〕
今日は雪山へ行く。この真冬にスイカ割りだとかぬかしてるアホを殺しに行くのだ。
というわけで昨夜は荷造りに励んだ俺。今回こそは失敗は許されない。
まぁ親父とチョメ太郎は鎖で縛っといたので、さすがに大丈夫だとは思うのだが…。
勇者「よう盗子!今日も朝からウザい顔だな!」
盗子「失敬な!死ねっ!!…って、あれ?今日は手ブラ?」
勇者「やってもうたーー!!」

リュックは玄関先だ。

 

99:持物〔5歳:LEVEL2〕
せっかくちゃんと準備したのに、肝心のリュックを忘れてきてしまった俺。
おかげで作戦はすべてパー。今回も他の奴らに期待するしかないようだ。
盗子「アタシ「盗賊の指輪」を持ってきたよ。コレがあれば盗み効率上がるんだよ!」
勇者「攻撃に役立つものは?」
盗子「あ~、アタシは武闘派じゃないから。」
勇者「帰れ。」
賢二「今回は使える「魔導符」を持ってきたよ。僕のMPでもなんとかなるやつを!」
勇者「効果は?」
賢二「増毛…。」
勇者「死ね。」
姫「シロップならなんでもござれだよ。」
勇者「…グッジョブ!」
霊魅「背後霊なら山ほど…」
勇者「要らん!」
弓絵「愛なら誰にも負けません☆」
勇者「なぜここに!?学年違うだろ!」
父「まったくだ。」
勇者「お前こそだよ!なんでいるんだよ!?」
チョメ太郎「…ポピュ?」
勇者「お前もだよ!」
教師「今日は特別ゲストがいます。」
勇者「誰だよ!?」
オナラ魔人「プ~。」
一同「お前かよーーー!!!

屁で挨拶て。

 

100:登山〔5歳:LEVEL2〕
臭いのを乗せた我らが大獣車はひた走り、とりあえず雪山のふもとに到着した。
だが既にこの時点で大半の奴らはグロッキー状態。俺も鼻がもげそうだ。
勇者「んで?これから俺達は何すりゃいいんだ?」
教師「雪道からだと時間が掛かるので、この絶壁を素手で登ってください。」
盗子「無理!絶対無理ー!」
教師「じゃあ気合いで。」
賢二「先生、それは解決策になってないです!」
父「じゃあアロハで。」
勇者「服装は聞いてない!しかもアロハて!」
オナラ「じゃあ「オナラジェット」で。」
盗子「死んでもイヤ!てゆーか死んじゃう!!」
チョメ「ポピュッパ!」
勇者「わからない!」

~その頃、山頂では…~

スイカ「粗茶だが。」
姫「ヌルいね。」

なぜか和んでいた。

 

101:飛翔〔5歳:LEVEL2〕
ふと気づけば姫ちゃんがいない。まさか一人で上に…つーかどうやって!?
勇者「急いで登るぞ!オイ賢二、空飛ぶ魔法とか無いのか!?」
賢二「あ、あるにはあるけど…。」
勇者「なら早く!モタモタしてて姫ちゃんに何かあったら殺すぞオナラ魔人を!」
オナラ「え゛っ、なんで私を!?」
勇者「臭いから。」
賢二「じゃ、じゃあ心置きなく…「飛翔」!!」

賢二は〔飛翔〕を唱えた。

盗子「うわっ、はっやー!やるじゃん賢二!」
賢二「でも…止まり方知らないんだ…。」
盗子「え゛。」
勇者「よし頂上だ!飛び移るぞ盗子!」
賢二「えっと、僕は一体どうしたら…!?」
勇者「さらば賢二、お前は立派な星になれ!」
賢二「え゛!?えええええぇぇぇぇぇぇ…」

キラン☆

勇者は賢二を「思い出」に変えた。

 

〔飛翔(ひしょう)〕
魔法士:LEVEL5の魔法。(消費MP3)
味方1グループを垂直上昇させる魔法。 飛んで飛んで飛んで、回って回って回る。
 

 

102:対面〔5歳:LEVEL2〕
宇宙へと旅立った賢二に別れを告げ、俺達は敵のいる山頂に降り立った。
賢二…お前の犠牲は無駄にしない。時々なんとなく、星空を見上げてやるからな…。
勇者「で、貴様がスイカ割り魔人だな?」
スイカ「いかにも。」
盗子「うわっ、スイカだ!頭がスイカ!!」
勇者「スイカのくせに「スイカ割り魔人」とは大胆な奴め。」
スイカ「よく来たな小僧ども。四方を断崖に囲まれたこの地…逃げ場は無いぞ?」
勇者「俺は逃げも隠れもせん!賢二のカタキは俺が討つ!」
盗子「勇者、違うよ!賢二は自爆だよ!」
姫「あ~、勇者君いらっしゃい。ヌルいお茶はいかが?」
勇者「姫ちゃん、無事だったか! …それじゃ一杯もらおうか。」
盗子「飲むのかよ!そんな場合じゃないっしょ!?」
スイカ「あぁ、ワシも一杯。」
盗子「お前もかよ!もっと緊張感とか大事にしようよ!」

スイカ「では死んでもらおうか。」
盗子「アタシもお茶ね!とびっきりヌルく☆」

小一時間程くつろいだ。

 

103:目隠〔5歳:LEVEL2〕
もう十分くつろいだ。これ以上まったりしてたら闘う前に凍え死ぬ。
スイカ「よし、勝負だ!ルールは単純、どちらかのスイカが割れるまで闘うのみ!」
勇者「一緒にするな!俺の頭はスイカじゃない!」
スイカ「じゃあお互いの…心のスイカを砕くまで。」
勇者「持ってねーよ!」
スイカ「ええい、もう始めるぞ! とりあえずワシが先攻で…目隠しを…」
勇者「(目隠し…?フッ、閃いたぜ!)わかった、俺は動かん!かかって来い!」
スイカ「さぁギャラリー達よ、スイカの位置を教えるがいい!」
盗子「だぁ~れが敵のアンタに…(ハッ、そうだ!姫、嘘の誘導してやろうよ!)」
姫「(あ~、了解。)えっと、三丁目の魚屋さんを右だよ。」
盗子「嘘にも程があるよ!!」
スイカ「フン、やれやれ…まぁいいわ。ワシほどの達人となれば、気配で…」
勇者「(敵前で自ら視覚を奪うとは自殺行為よ!)死ねぇーー!!」

ササッ!(避)
勇者「なっ!避けただと!?」
スイカ「フッ、ナメるでない!その程度の企みが見抜けぬワシではないわ!!」
勇者「・・・・・・・・。」
スイカ「まだまだ甘いな若造!ガッハッハー!(谷底に落ちながら)」

ダイナミックに避けすぎた。

 

104:無事〔5歳:LEVEL2〕
結局自爆しやがったスイカ割り魔人。強いのか弱いのかすらわからなかった。
教師「いや~、みなさんお疲れ様でした。さすがですね~。」
生徒「ブラボー!」
勇者「テメェらいつの間に…って、どうやって!?」
教師「エレベーターで。」
盗子「そんなんあったの!?山なのに!?」
姫「あ~、私もそのインベーダーで来たんだよ。」
盗子「違うよ!インベーダーじゃなくてエレベーターだよ!」
姫「ちょっとした宇宙旅行だったよ。」
盗子「もしやホントのインベーダー!?」
勇者「つーかそもそも今日は「登山」じゃなかったのか?それをエレベーターて…。」
教師「まぁいいじゃないですか。みなさんが無事でホントに良かったですよ。」

賢二のことにはノータッチだ。

 

105:一年〔5歳:LEVEL2〕
季節は巡り、冬は終わりを告げようとしていた。
思い返してみると、様々なことがあった一年間。短かったようで…長かった…。

春:宿敵が旅立っていった…が、結構どうでもいい。
夏:チョメ太郎が村を一つ滅ぼした…が、まぁバレてないようなので別にいい。
秋:姫ちゃんがイモ園を焼け跡に変えた…が、可愛いから許す。
冬:賢二が星になった…が、きっとアイツは恒星じゃないから見えない。

もうじき春が来る。そして俺は三号生になる。

これといって希望は無い。

 

外伝(弐)へ

本編( 4 / 11 )

外伝(弐)

外伝(弐)

 

外伝:宿敵が行く〔1〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「戦士」でもやってみようかと、「戦士道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの~、すみませ…」
師範「戦士心得~、ひとーつ!」
弟子「頑丈だけにー、序盤は重宝ー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「力任せにー、敵を討つー!」
師範「でもー、最終的にはー!」
弟子「ただのー、ノロマ扱いー!」
師範「そこをー、突っ込まれたらー!」
弟子「ば、ばーか!鎧が重てぇんだよ!」
師範「ある日ー、ふと気づくー!」
弟子「ひょっとして、俺の役割って…壁?」
師範「精一杯ー、強がってー!」
弟子「MP?なにそれ、うまいの?」
師範「よくよくー、考えるとー!」
弟子「職業「戦士」って…アバウトすぎだよ…。」

…帰ろう。

「戦士」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔2〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「剣士」でもやってみようかと、「剣士道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの~、すみませ…」
師範「剣士心得~、ひとーつ!」
弟子「登場はー、颯爽とした感じでー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「華麗に舞いー、見えない速さで斬りつけるー!」
師範「剣を鞘にー、納めるとー!」
弟子「服だけパラッと斬れ…できねーよ!」
師範「敵がー、女だった場合はー!」
弟子「くっ、女を斬るわけには…!」
師範「一度でいいからー、言ってみたいセリフはー!」
弟子「安心しろ、峰打ちだ。」
師範「剣が光ればー!」
弟子「前歯もキラリー!」

…帰ろう。

「剣士」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔3〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「武闘家」でもやってみようかと、「武闘家道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの~、すみませ…」
師範「武闘家心得~、ひとーつ!」
弟子「素早い動きでー、先制攻撃ー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「飛び出すぜー、会心の一撃ー!」
師範「素早さをー、求めるあまりー!」
弟子「やっべ、俺って超薄着じゃん!防具じゃなくてコレただの着物じゃん!」
師範「武道全般ー、できるのにー!」
弟子「寝技使ってる奴って、見たことないよね…。」
師範「カッコよくー、キメてみてー!」
弟子「案ずるな、急所は外しておいた。」
師範「心の中ではー!」
弟子「うっわ、コイツ効いてねーよ!どうしよー!?」
師範「ちょっぴりー、誇らしげにー!」
弟子「拳で魔物に挑むって…俺、スゴくねぇ?」
師範「人から言わせればー!」
弟子「俺、バカじゃねぇ?」

…帰ろう。

「武闘家」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔4〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「盗賊」でもやってみようかと、「盗賊道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの~、すみませ…」
師範「盗賊心得~、ひとーつ!」
弟子「ちょこまか動きー、こっそり盗むー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「ナイフ片手にー、戦闘だってー!」
師範「おもむろにー、ぶっちゃけてー!」
弟子「でも正直、魔物にナイフってのは無謀だよな…。」
師範「時々ー、納得いかないのはー!」
弟子「スライムが金持ってるのって…どうだろう?」
師範「山田の給食費盗んだ奴ー、手ェあげろー!」
弟子「お、俺じゃねぇって!なんでみんなこっち見てんだよ!?」
師範「いいえー、奴はとんでもないものを盗んでいきましたー!」
弟子「貴女の心でーす!」
師範「ルーパーン!」
弟子「とっつぁーん!」

…帰ろう。

「盗賊」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔5〕
ダメだ…ろくな職業が無い…。天職なんて、見つからないかもしれない…。
そう思いながら川原をフラフラしていると、僕は一人の老人に声を掛けられた。
老師「ワシはある職業の師範なんじゃが…おヌシ、名は何と言う?」
宿敵「え、僕ですか?僕の名は「宿敵」と書いて「ライバル」。孤高の無職です。」
老師「いやはや…まさに我が「好敵手」の職を継ぐに相応しい名じゃないか。」
宿敵「こ、好敵手…?一体どんな職業なんですか?」

〔好敵手〕
闘う相手に合わせ、同じ職種に様変わりする職業。
その性質から「モノマネ師」と呼ばれることもある。
各職の力を発揮できるかどうかは、センスが問われるところ。

宿敵「な、なんて僕向きの職業なんだ…これならすべての人のライバルだ!」
老師「じゃろ?ならば話が早い。ついて参れ。」
宿敵「は、ハイ師匠!」
老師「まずは「営業」からじゃ。」
宿敵「え゛。」

大抵は「芸人」で終わる。

 

 

 

外伝:賢二が行く〔1〕
賢二「…う、う~ん……ハッ!こ、ここは!?」
異星人「…コーヒーじゃだめ?」
賢二「いや、「ここア」じゃなくて!」
異星人「んじゃ、コーヒーでいいよね。もしくは死んでもらうよ。」
賢二「こ、コーヒーを!(その二択なの!?)」
僕は賢二。どういうわけか今、宇宙船らしきものに乗っています。 なぜ!?
確か魔法「飛翔」で…うぅ、思い出せない…。そしてなんだか思い出したくもない…。
賢二「あ、助けていただいたようで…ありがとうございます。僕は賢二です。」
異星人「あぁ別にいいよ。僕の名は「ビブ」、略して「太郎」でいいから。」
賢二「いや、略す必要無いし!むしろ略せてないし!」
太郎「それにしても危なかったね。もう少し寝てたら食べちゃってたところだよ。」
賢二「しょ、食人種!?」
太郎「あ~心配いらないよ、老人とかは食べないから。」
賢二「フォローになってないですから!僕はバリバリ子供だし!」
太郎「…ジュルッ。」
賢二「う、ウソです!僕はもうお爺ちゃんですー!残尿感たっぷりですー!」
太郎「ははは。大丈夫、キミは大事なモルモッ…客人だからね。」

僕はもう…ダメかもしれません…。

結局死ぬかもしれない。

 

外伝:賢二が行く〔2〕
なんか嫌な色した惑星が見えてきました。どうやらもうじき着きそうです。
変な改造とかされるくらいなら、いっそのこと楽にしてもらいたい気がします。
賢二「あの~、そういえば…お仲間さんとかは乗ってないんですか?」
太郎「・・・・・・・・。」
賢二「あ、ごめんなさい。なんか余計なこと聞いちゃったみたいで…。」
太郎「僕以外の人達は、みんな「宇宙病」って病にかかっちゃってさ…。」
賢二「そうなんですか…。お悔やみ申し上げます。」
太郎「あ、いや別にそれで死んだわけじゃないんだ。そうじゃなくて…」
賢二「…え?」
太郎「どうしようかと悩んでいたら、一人の女の子が乗ってきてさ…」
賢二「お、女の子?」
太郎「「私が治すよ。」とか言ったあと「むー!「死滅」!」って…。ううう…。」

広い宇宙には、似たような人っているものですね…。

Yeah!めっちゃ本人。

 

外伝:賢二が行く〔3〕
僕を乗せたインベーダーは、とうとう太郎さんの星に到着しちゃいました。
うん、年貢の納め時です。もう人生で何度年貢を納めたかなんて覚えてません。
太郎「とりあえず王様の所に挨拶行くから、キミもついて来て。ほら、客人だし。」
賢二「なんか悪い予感しかしないのは…僕の気のせいですか?」
~王の間~
太郎「王様、地球からモルモッ…客人を捕ら…じゃなくて、招待したのですが…。」
王「あぁ客人、すまんが忙しいのだ。とりあえず名乗って、後はクソして寝るがいい。」
賢二「え!?えっと、賢二と申します。どうせ食べるならおいしく食べてください…。」
王「…む?なにぃ、「賢者」!?賢者と言えば地球では最高位の…!だ、大臣!」
大臣「ハイ!賢者殿の力なら、奴を…「ユーザック」を倒せるかも知れませぬぞ!」
賢二「あ、ち、違いますよ?僕は「賢二」で「ゃ」が足りな…」
王「頼んだぞ賢者殿!供をつけるゆえ、すぐにでも旅立ってくだされ!」
大臣「これでこの国も安泰ですな!ワッハッハ!」
賢二「い、いや違います!違いますってばー!」
王「宴じゃー!戦士の旅立ちじゃー!」
衛兵「ワァアアアアアア!!(歓声)」

どえらいことになりました。

より一層死ぬかもしれない。

 

外伝:賢二が行く〔4〕
勘違いから賢者にされてしまいました。もうこのまま賢者ぶっていくしかありません。
もしバレたら、今夜のメインディッシュとして食卓に並ぶ自信アリです。
剣士「ほぉ~、アンタが賢者殿か。なんだ、まだガキじゃねぇかよ。」
賢二「アナタがお供の剣士さんですね。はじめまして、賢二です。」
剣士「はぁ?賢者の賢二?ハッハッハ!中途半端に「ゃ」が足りねぇでやんの!」
賢二「ぐっすん。そうなんです…。 あ、そういえばアナタのお名前は?」

剣士「ん?「剣次(けんじ)」。」

目糞が鼻糞を笑った。

 

外伝:賢二が行く〔5〕
太郎さんと剣次さんをお供に、僕は宇宙侵略者「ユーザック」討伐に出発しました。
その敵さんは残虐非道、目的達成のためなら手段も問わない悪党だそうです。
なんだか勇者君ぽくて懐かしいですが、あんな人が二人もいたら僕は自殺します。
太郎「ここだよ、奴の城。じゃ、僕はここまでってことで。さいなら~!」
賢二「早速逃げたー!」
剣次「まぁいいじゃねぇか賢者殿。とりあえず突入の作戦でも練ろうぜ。」
ユーザック「なんだ貴様ら?」
賢二「早速キター!!」
ユーザック「いったい何しに来やがった?敵だとかぬかしたらブッた斬るぞ!?」
賢二「えっと…申し訳ありませんが、この剣次さんがアナタを倒しますよ!」
ユーザック「ほほぉ、上等じゃねぇか!んで、どいつがその「ケンジ」だよ?」
賢二「しまたー!二人ともケンジだー!」
ユーザック「俺の名は「ユーザック・シャガ」、「ユーシャ様」と呼ぶがいい雑魚ども!」

まるっきり勇者君です。

勇者はクシャミが出た。

 

外伝:賢二が行く〔6〕
闘い始めて小一時間。剣次さんとユーシャさんのバトルは未だ白熱しております。
剣次「燃えさかる十字の火炎を身に纏え!「十字炎斬(クロスファイア)」!」
ユーシャ「ぬるいわ!その程度で俺に勝とうとは笑止!秘奥義「暗黒乱舞」!」
剣次「くっ!ならば…虚空に鮮血をブチ撒けろ!「血染十字(ブラッディクロス)」!」
ユーシャ「フッ、なかなかやるな!では俺も本気を出そう!裏奥義「暗黒竜殺剣」!」
剣次「うおおぉ!音速を越え、走れ九つの軌道!「3×3十字(サザンクロス)」!」
ユーシャ「もう茶番は終わりだ!食らうがいい、究極奥義「暗黒滅殺波動」!」

~さらに二時間後~
剣次「ボーイさん、華麗に引っこ抜け!「食卓十字(テーブルクロス)」!」
ユーシャ「超絶究極裏の裏奥義「暗黒歌謡曲(アコースティック.ver)」!」
剣次「今年はお人形さんが欲しいです!「白髭十字(サンタクロス)」!」
ユーシャ「超絶究極裏の裏のそのまた裏奥義「暗黒高校時代~あの頃俺は~」!」

いい加減飽きてほしいです。

命の前にネタが尽きる。

 

外伝:賢二が行く〔7〕
結局4時間ブッ通しでネタ合戦に明け暮れた二人は、現在ぐったり中です。
今ならあの魔法で捕えられます。たまにはこういうオイシイ役もいいですよね…?
賢二「えっと、いいとこ取りでごめんなさい…「束縛」!」

賢二は〔束縛〕を唱えた。
ユーザックを捕まえた。

ユーシャ「くっ、この俺がガキごときに捕まるとは…許さん!絶対許さーん!」
賢二「許さないとか言われても困りますよ。僕だって命懸けなんで…。」
ユーシャ「もしまた会ったらその時は…体中を殴打して、めった刺しにして…」
賢二「う゛っ…。」
ユーシャ「手足をそぎ落としてダルマにして、更に分割してダルマ落としで遊んで…」
剣次「賢者殿、気にするこたねぇぞ。どーせコイツは一生獄中の身だ。」
ユーシャ「それを模して作ったオモチャが大当たりして、そして俺は大金持ちに…」
賢二(うわー…、だんだん方向性がズレていく…。)
ユーシャ「その後は可愛いネェちゃんに囲まれなが…ハッ!と、とにかく殺す!!」

賢二は束縛を解いた。

 

〔束縛(そくばく)〕
魔法士:LEVEL1の魔法。(消費MP2)
敵一体を縛り上げ、自由を奪う魔法。あんまり強いと恋人に嫌われる。
 

 

外伝:賢二が行く〔8〕
僕が臆病なせいで、ユーシャさんを取り逃がしてしまいました。
せっかくのチャンスをフイに…今度は剣次さんに殺されるかもしれません。
剣次「…な~るほどね。さすが賢者殿だ、俺とは頭のデキが違うぜ。」
賢二「…へ?(あれ?怒るんじゃないの??)」
剣次「もし捕えてたら、仲間が助けに来て戦争→国民に大被害…っつーことだろ?」
賢二「え?あっ、いや…僕は別にそういうつもりじゃ…。」
剣次「謙遜すんなって~!まったく腰の低い英雄だぜアンタは。イカスよ!」

~その頃~
部下「ユーシャ様、今後の侵略の方はいかがいたしましょうか?」
ユーシャ「もういい、次の星を探すぞ。 ここはもう…飽きた。下がれ。」
部下「え?いや、しかし…この星にはまだまだ利用価値が…。」
ユーシャ「下がれと言っている!それとも貴様…ダルマ落とされたいのか!?」
部下「ハッ!失礼しました!(だ、ダルマ!?)」
ユーシャ「地球から来た賢者か…なかなかキレる男だったな…。」
誤解の連鎖が。

 

外伝:賢二が行く〔9〕
一応敵を追い払うことができたということで、城に帰った僕らは大歓迎されました。
王「おぉ賢者よ、死んでしまうとは情けない。」
賢二「え゛?」
大臣「王様、違いますぞ!パターンBです!「万が一、生きてたらバージョン」の!」
王「あ゛…。よ、よくやった賢者殿、そして剣次よ。なんとなく褒めてつかわす。」
賢二「…ありがとうございます。とっても嬉しくないです。」
剣次「フッ、俺は何もしてねぇさ。すべては賢者殿の功績ってやつだよ。」
賢二「け、剣次さん…。(この人は…純粋なのかアホなのか…)」
太郎「いや~、さすがは賢者君!キミならやってくれると僕は信じてたよ!」

賢二は〔絶壁〕を唱えた。
太郎の後頭部が微妙に歪んだ。

太郎「う、うひゃー!」
賢二「フーンだ!」
王「では賢者よ、何でも好きな褒美を取らそう。欲しい物を言うがいい。」
賢二「えっと…物はいらないので、その代わりに地球に帰してください。」
王「う~む…そうか。残念だが引き止めるのは無理そうだな…。 よし、帰れ!!」

まさか…自力で?

今度の敵は「成層圏」だ。

 

外伝:賢二が行く〔10〕
なんとか頼み込み宇宙船を貰った僕は、太郎さんの案内で地球へと出発しました。
でも惑星を発ってからもう三ヶ月くらい経ったのに、全く着く気配が無いのです。
賢二「あの~…太郎さん、一体どうなってるんでしょうか?」
太郎「う~ん、どうも頭が歪んだせいか方向感覚がイマイチ…。」
賢二「ご、ごめんなさい。ペルペロス事件以来、置いてけぼりがトラウマでつい…。」
太郎「なんとか治せないかなぁ?でないと、あと2秒で燃料が切れるよ。」
賢二「2秒て!もうどうしようもない状況じゃないですか!」
太郎「まぁいいじゃん。とりあえずやってくれる?」
賢二「ハァ…じゃあとりあえずやってみますね。 よーし、「絶壁」!」

賢二は〔絶壁〕を唱えた。

太郎の頭があり得ない形になった。

太郎「ぱ…ぱらっぽぷ。」
賢二「た、太郎さーーん!!」

えっと、みなさんサヨウナラ…。

賢二は覚悟を決めた。

 

第三章へ

本編( 5 / 11 )

第三章

第三章

 

106:進級〔6歳:LEVEL2〕
春…。 6歳になった俺は、今日から三号生として学校に通うことになる。
これから始業式…なのだが、三年目ともなると大体言われることの予想はつく。

校長「みなさん進級おめでとう。早速みなさんを殺します。」
勇者「そうきたかー!!」

勇者は意表を突かれた。

 

107:暗殺〔6歳:LEVEL2〕
昨年度は結局2クラスにまで減ったのだが、今年も転入生で補ったようだ。
俺は今年もA組。他の奴らも大体一緒だが、中には去年B組だった奴もいた。
勇者「オリジナルもだいぶ減ったな…。一体最後には何人残…ぬおっ!

画鋲の攻撃。
勇者はお尻に2のダメージ。

勇者「くっ、誰だ!?一見地味だが、なにげに痛いこの攻撃の主は!?」
少女「私は「暗殺者」の「暗殺美(あさみ)」。アンタだけは絶対に許さないのさ!」
勇者「ほぉ…この俺を敵に回すと?上等だ!かかって来やがれこの「鉄砲玉」!」
暗殺美「死ねやぁ!おらぁ!!…って違うさ!私は華麗な「暗殺者」なのさ!」
勇者「ふむふむ。じゃあ、一体誰の依頼なんだ?お前と一緒にそいつもブッた斬る。」
暗殺美「フン!依頼者なんていないさ。た、ただ私は…賢二君のカタキを…。」
勇者「…む?なんだお前、賢二ごときに惚れてたのか?」
暗殺美「べ、べべべ別にそんなんじゃないさ!あんな男はミジンコ以下さ!」
勇者「で、どこら辺が好きなんだ?」
暗殺美「んとね、優しいところかな…って、何言わせるさ!!」
勇者「(面白い生き物だな…。)フゥ、まぁ座れ。賢二の好みのタイプを教えてやる。」
暗殺美「え、ホントに!?って、べべ別にそんなの聞きたくな…はうっ!

画鋲(×5)の攻撃。
暗殺美はお尻に痛恨の一撃。

 

108:挨拶〔6歳:LEVEL2〕
春…言わずと知れた遠足の時期。だが今年のは、今までとは少し違うらしい。
というのも、今年は学年ごとではなく、全学年を混ぜて班分けするようなのだ。
そういったわけで、放課後は各班ごとの作戦会議ということになった。
勇者「ウチのクラスからは俺とお前だけか…。ま、よかったよ。」
盗子「え、ホントに!?ホントに良かった!?わーい☆」
勇者「ああ。心底どうでもよかった。」
盗子「そっちかよ!死ね!」
少年「ベベンベン♪我が名は「邦壱(ほういち)」~いぃ~。よろしく願うぅ~。」
盗子「アンタは隣の…B組の「琵琶法師」だよね?よ、よろしく。」
邦壱「耳の一つや二つは~、いらんぜよ~。ベベンベン♪」
勇者「いや、大事にしろよ。」
少女「私はC組の「巫女」、「巫菜子(みなこ)」。よろしくね☆(あ~、挨拶ダリィ~。)」
勇者「巫女?なんか「霊媒師」とカブッてないか?」
巫菜子「え?そ、そんなことないよー。(んだこの野郎…私に喧嘩売ろうっての?)」
盗子「う~ん、確か霊媒師が操るのは「死霊」で、巫女は「精霊」…じゃなかった?」
巫菜子「ピンポーン!説明ありがと☆(私のセリフ盗るんじゃねーよこのブスが!)」
少年「俺は四号B組、「魔銃士」の「銃志(じゅうし)」。俺に近づくと…死ヌぜ?」
盗子(あ、聞いたことある。極度の神経過敏で、人が近づくだけで発砲するとか…。)
銃志「おっとそこ!勝手に動くな!俺に近づくな!近づくと撃つzバキューン!!
勇者「って言い終える前に撃つなよ!つーか近づいてきたのはそっちだろ!」
少年「えっと、僕は二号C組の…」
銃志「ハイそこ動いたー!バキューン!バキュバキューン!!
少年「ぎゃーーー!!
勇者「くっ、誰かそいつを止めろ!誰か流れ弾とか当たってねーか!?」
盗子「アタシは平気、この人が助けてくれたから…。」
銃志「邪魔するなー!テメェも撃…ぐはっ!
少年「峰打ちだ。 俺は六号A組、「武士」の「武史(たけし)」…盗子は俺が守る!」
盗子「…へ? えええええええっ!?」
勇者「変わった趣味だな…同情するよ。」
盗子「どういう意味さ!?」
武史「盗子、いい女になったな…。母さんの若い頃(写真で見た)に、よく似てる。」
盗子「え!もしかしてお兄ちゃんとか!?し、知らないよ?聞いてないよー!?」
勇者「あー、そういやお前って…盗まれ子じゃん?」
盗子「そういえば!!」
少女「ワタイは一号B組の「皇女(こうじょ)」、「芋子(いもこ)」。みんな敬うべき。」
勇者「皇女?ありえんな、オーラが無い。お前のような奴は芋でも食ってろ。」
芋子「くぅ、人が気にしていることを…。」
少年「ぼ、僕は五号A組の「白(ハク)」。職業は「もやし」です。」
盗子「もやして!そんな職業聞いたこと無いよ!てゆーか肌…白っ!」
白「頑張って四年間生き抜いてきました。ちなみに太陽が苦手です。」
勇者「なっ!?お、オリジナルなのか!?一体どうやって…。」
盗子「ところで、さっきの二号C組の子って…誰だったんだろうね?」
少年「その謎は、「探偵士」であるこの私が解明してみせようじゃないか!」
武史「お前はB組の…確か「峰夢's(ホームズ)」。お手並み拝見ってやつだな。」
峰夢's「そもそもこの事件は、10年前のあの日まで遡ります。」
盗子「遡らせないよ!何時間語る気だよ!」
武史「さすがは盗子!ナイスツッコミ!」
峰夢's「ズバリ犯人は、そこでノビてる魔銃士の少年だー!!」
盗子「知ってるよ!みんな見てたし!てゆーかアタシの疑問はそこじゃないし!」
武史「いいぞ盗子!的確な指摘だぜ!」
勇者「ウザいくらいにシスコンだな…。」
芋子「芋、食いたい…。」
盗子「やっぱ食いたいのかよ!」
邦壱「どうでもいいが~、挨拶長すぎ~。ベベンベン♪」
ドタバタしすぎだった。

 

109:帳尻〔6歳:LEVEL2〕
とっても不安なメンバーと行くことになった今回の遠足。内戦で死ぬかもしれない。
盗子「あのさ、そういえば今回の遠足の目的って…何だっけ?敵は誰?」
勇者「む?そういや聞いてないなー…誰なんだろな?」
巫菜子「あ、今年は敵とかじゃなくて「宝探し」らしいよ☆(ったくウゼーよな~。)」
武史「そう。各班対抗の宝探しで、見つけられなかった班員は…ま、わかるだろ?」
勇者「フッ、やれやれ。「命懸け」って意味では例年通りか。」
峰夢's「遠足の目的?その謎は、この私が解明してみせようじゃないか!」
盗子「ワンテンポ遅いよ!もうわかった後だよ!」
白「晴れなきゃいいな…死んじゃうし。」
盗子「今までどうやって生きてきたんだよ!」
芋子「芋、食いたい…。」
盗子「もういいから食ってきなよ!」
勇者「俺、盗子、邦壱、巫菜子、武史、芋子、白、峰夢's…8人か。まぁ頑張ろうぜ!」
盗子「…あれ?確かもう一人…」
銃志「ん、うぅん…ハッ!て、テメェらよくも俺を…! 全員ブッ殺す!!」


ザシュッ!(斬)

勇者「8人だ。」

勇者は帳尻を合わせた。

 

110:減人〔6歳:LEVEL2〕
そしていよいよ遠足当日。今回の目的は宝探しらしいが、宝が何かは知らない。
探索の舞台はここ、ゴップリン島。この地なら他の敵はもういないので気は楽だ。
教師「ではみなさん、これから36チーム対抗の宝探し合戦を始めてもらいます。」
勇者「36チーム…なるほど、各組10人だな。ウチは8人だが…まぁ問題無いか。」
盗子「ゆ、勇者…白は晴れたから休むって…。」
勇者「7人か…。」
盗子「ゆ、勇者…邦壱は行水修行で中耳炎になったから休むって…。」
勇者「耳なんかいらねーって言ってたくせに…。」
武史「残るは6人…となると、リーダーでも決めて団結していくべきじゃないか?」
芋子「リーダーなんて、「皇女」であるワタイ以外にはいないと思うわ。」
勇者「黙れ芋っ子。お前は芋でも食ってろ。」
芋子「…もぐもぐ。」
盗子「今日は持参かよ!」
峰夢's「リーダー選びですか。それならばこの私にお任せあれ!」
巫菜子「んじゃ、峰夢'sさんヨロシク~☆(んなの誰だっていいよ、ったく。)」
峰夢's「みんなをまとめられるようなリーダー格の人間…それは…」
勇者(フン、そんなの俺に決まってんだろが。)
盗子(なんだかんだで今までは勇者だったよね…。)
武史(盗子以外に考えられねぇ。そしてその盗子は俺が守る!)
巫菜子(早く決めやがれこの探偵気取りめが。ウゼー!)
芋子(芋、うまい…。)
峰夢's「リーダーは…」

峰夢's「この中にいる!!」
一同「早く選べよ!!」

二秒後、5人になった。

 

111:武装〔6歳:LEVEL2〕
まだ何も始めてないのに、5人になっちまった我がチーム。これ以上は減らせない。
探すべき宝は校章付きの「武具玉」。島のどこかに30個隠されているらしい。

〔武具玉(ぶぐだま)〕
「変化(へんげ)」と唱えると、何かの武器に変わる魔法の玉。
どんな武器に変わるかは使うまでわからない。
色は赤色で、他にも青色の「防具玉」、黄色の「道具玉」などがある。
一度変化させてしまったら、もう玉には戻せない。

勇者「ま、とりあえず最初は島民に聞き込みでもして回るか。」
盗子「だね。冒険の基本だね☆」
島民「おぉ、これはこれは…!我が島の英雄、勇者殿ではありませんか!」
勇者「オイ島民、実は今、学校指定の武具玉を探してるんだが…。」
島民「おや、これですか?ハイどうぞ。」
盗子「早っ!もう終わり!?こんなんでいいの!?」
巫菜子「やったー☆(んだよこの展開…。バカにしてんのかよコラ。)」
武史「そういやこの玉って…どんな玉なんだっけか?」
芋子「「変身」って言えば武器になるって、爺やが言ってた。」
勇者「爺や?芋っ子のクセに生意気な!」
芋子「ワタイは皇女だもの。爺やくらいいるわよ…女だけど。」
盗子「婆やじゃん!」
勇者「ん…あれ?「変化」じゃなかったか?」

武具玉は槍に変化した。

 

112:卑怯〔6歳:LEVEL2〕
うっかり唱えてしまった「変化」。もう玉には戻らないので、一からやり直しになった。
だがその後は全く見つからず、気づけばもう夕方近くになっていた。 ヤバい!
勇者「仕方ない、作戦変更だ。港付近に陣を張り、宝を持ってきたチームを討つ!」
盗子「えっ、そんな卑怯な!アンタ一応「勇者」なんだからもっと正々堂々と…」
勇者「俺は「次世代型勇者」だ。そんな古臭い定義を俺に押し付けるな。」
芋子「ワタイは「次世代型皇女」。芋がとことん好き。」
盗子「アンタにゃ聞いてないよ!」
巫菜子「あ、誰か来たよ!しかも武具玉も持ってる!(よっしゃカモだぜ!)」
勇者「よーし、オイ貴様らちょっと待て!その武具玉は俺達がいただく!」
武史「そうはさせねぇ!お前なんかに盗子は渡さない!」
盗子「今はそんな話してないよ!てゆーか貰ってほしいよ!」
少年「くっ、まさかこんな展開になるとは…!!」
勇者「死ぬ前に一つだけ言わせてやる。その武具玉…どこで手に入れた?」

少年「ど、道具屋で買った。」
勇者「走れぇーーーー!!」

勇者は道具屋へと急いだ。

 

113:同志〔6歳:LEVEL2〕
結局道具屋で購入できた武具玉。売ってたり島民が持ってたり…わけわからん。
勇者「まったく…。あの先公、宝探しの定義を根本から間違えてやがるぜ。」
盗子「まぁ、ある意味盲点ではあったけどね。」
巫菜子「さ、それじゃ早いとこ港に戻ろっか☆(早く帰りてーよ、ったく。)」
盗子「そだね。集合時間守らないと、あの先生何するかわかんないしね。」
武史「俺は集合時間よりも盗子を守る。」
芋子「そしてワタイは芋を食う。」
勇者「戦闘があったらヤバかったな、このメンバー…むっ!?ま、まさか…」

眼前に敵(4グループ)が現れた。
明らかに武具玉を狙っている。

勇者「フッ、やはり考えることは皆おなじか…。いいだろう、かかって来い!」
巫菜子「よ、よーし!みんな頑張ろ☆(マジで?めんどくせーよコンチクショー!)」
盗子「わーん!やっぱ結局は戦うんだー!」
武史「みんな任せろ!盗子は俺が守る!」
芋子「そしてワタイは芋を食う。」

戦力外が多すぎる。

 

114:武士〔6歳:LEVEL2〕
武具玉を狙って現れた敵…しかも4チーム。この戦力じゃかなりキツそうだ。
勇者「一組ずつブッ潰すにしても、四組となると…ちっ、間に合うか微妙だぜ。」
武史「いや、ここは俺一人でいい。盗子を集合に遅れさせるわけにはいかねぇ。」
勇者「む?お前一人で戦うっつーのか?しかし…」
盗子「無茶だよお兄ちゃん!ただでさえポッと出のキャラは死にやすいのに!」
武史「これでも俺は六号生…お前らより3年も長く生きてる。信用しやがれ。」
勇者「…わかった、お前に任せよう。」
盗子「ゆ、勇者!?ちょっ…止めてよ勇者ー!」
武史「だが勘違いするなよ?お前のような奴に盗子は…盗子だけは絶対に…」
敵組A「かかれー!!」
武史「やらん!!」
勇者「いらん。」
盗子「即答すなー!」
勇者「よしお前ら、ここはシスコンに任せて港へ急ぐぞ!」

勇者は先を急いだ。

敵組B「くっ!逃がすかーー!!」
武史「おっと待ちな!安心しろよ、お前らは俺がまとめて相手してやるぜ。」
敵組C「邪魔しないで!さっさとどかないとリンチよ!?」
武史「ここから先は絶対に通さねぇ!逆らう奴は我が「武士道」の前に華と散れ!」
敵組D「武士道だと?そんなカビ臭ぇモンに誰が負けるかよー!」
武史「フン!武士道をナメんなよガキども!盗子は俺が幸せにする!」

武史はマシンガンを構えた。
武士道もへったくれも無かった。

 

115:思違〔6歳:LEVEL2〕
敵は武史に任せ、ダッシュで港に向かっている俺達。
なんとか時間には間に合いそうなのだが、盗子が取り乱してやかましい。
盗子「うぐっ、お兄ちゃん…まだ会ったばっかなのに…。死んじゃイヤだよー!!」
勇者「大丈夫だ盗子、心配するな。アイツならきっと立派に…」
ダダダダダダダーーーーン!! ダーン…ダーン……(銃声)
勇者「立派に散ったさ…。」
盗子「お兄ちゃーーーーん!!」

今のは武史の銃声だ。

武史「妹を助けるために、一人残った兄…。うん、いい話だ。絶対ポイントアップだ。」
残兵「くっ、卑怯者…!な、なにが…武士道…だ…。(ガクッ)」
武史「きっと盗子は「お兄ちゃん素敵☆」と思っているに…違いない!」

盗子は「死んだ」と思っている。

 

116:後付〔6歳:LEVEL2〕
今年の遠足では、全校生徒の約6分の1が消え去った。なかなかのハイペースだ。
一応これで春の行事は終わったので、あとは夏休みを待つだけなのだが…。
盗子「でもさ、確か四号生からは春の「文化祭」に参加するんじゃなかったっけ?」
勇者「なんだ、その取って付けたような後付け調行事は?初めて聞いたぞ。」
盗子「う、うん。アタシもそう思ったんだけど、なんか触れちゃいけない気がして…。」
姫「まさに「学園七転び」だね。」
勇者「姫ちゃん、それを言うなら「七曲り」だ。」
盗子「違うよ「七不思議」だよ!」
勇者「まぁいいや。 ところで、そいつは一体どんな行事なんだ?」
盗子「あ~、確か「人気投票」をやるらしいよ。」

なるほど、俺のための行事か。
勇者は自信家だった。

 

117:頭下〔6歳:LEVEL2〕
今年の夏休みの宿題は、「地域の歴史調べ」。いつになく真面目な題材だ。
命懸けじゃないので一安心ではあるのだが、なんだか少しつまらない。
だがまぁ、将来歴史に名を刻む者として、歴史を知っておくのも悪くはないだろう。
勇者「う~む…。やはり俺は、こんな小島の歴史には興味が無い。他を探す!」
盗子「はぁ?アンタまさか、大陸の歴史とか調べる気?大変だよ?正気?」
勇者「俺は「まさか」とお前が大っ嫌いだ。」
盗子「もうホント死ね!!…って、今まで何度も言ってんじゃん「まさか」って!」
というわけで俺は、泣き叫ぶ盗子の首根っこを掴んで図書館へと向かった。
だがしかし、なぜか大陸の歴史にまつわる本は一切置かれていなかったのだ。
仕方なく俺は、図書委員に頭を下げ、「極秘書」の保管庫に入れてもらうことにした。

図書委員「だ、誰だ!?この先は誰も…グエッ!

勇者は頭の下げ方を知らない。

 

118:歴史〔6歳:LEVEL2〕
優しい警備員の親切のおかげで、俺達は極秘書庫に侵入することができた。
勇者「厳重な警備ではなかったにしろ、この重苦しい雰囲気…やはり何かあるな。」
盗子「ね、ねぇ?もしかしてアタシも…「共犯」ってことになるのかなぁ…?」
勇者「バーカ、安心しろ。俺もそこまで鬼じゃねーよ。 お前は「主犯」だ。」
盗子「鬼ぃーー!!」
そんなこんなで早速歴史書を探し始めた俺達。しかしなかなか見つからない。
だが諦めかけたその時、転んだ拍子に偶然それらしい本を見つけたのである。
勇者「う~む、「歴史全書」か…知らん名だな。 まぁいい、読めよ盗子。」
盗子「あ、うん。えっとねぇ~…新星歴523年、突如現れた…えっ!?」

新星暦523年、突如現れた「魔王」により、世界は絶望の闇に包まれた。

勇者「なっ、魔王!?魔王がいたってのか!?初めて知ったぞ!」
盗子「523年っていうと…今から18年前だね。」

大陸は瞬く間に魔物に支配された。
破壊、殺人、ピンポンダッシュ…。
人々は皆絶望し、そして死を覚悟した。

勇者「今、明らかに場違いなのが一つ混じってたよな…?」
盗子「う、うん…。」

しかし、希望の灯はまだ消えてはいなかった。
その三年後、世界を救う者…そう、「勇者」が現れたのである。

勇者「キター!」
盗子「やっぱ「勇者」がキター!」

その者の名は、「勇者:凱空(ガイク)」。
凱空は、後に「四勇将(しゆうしょう)」と呼ばれる四人の戦士達と共に…

教師「・・・・・・・・。(拳をポキポキ鳴らせながら)」

二人「悪魔がキターーー!!!」

勇者はつまみ出された。

 

119:若頃〔6歳:LEVEL2〕
先公に邪魔されたため、一旦引き下がることにした俺達。まぁ命には代えられん。
しかし、どうにも気になって仕方がなかった俺は、家に帰って親父に聞いてみた。
勇者「オイ親父、ちょっと聞きたいことがある。」
父「ん? あぁ、サイズは上から…」
勇者「誰がテメェのスリーサイズを聞いたよ!?」
父「父さん結構巨乳だぞ?」
勇者「知るか!つーか嘘つくな!!」
父「3番、父さん。頑張って絞ります!」
勇者「一体何のコンテストだよ!?絞るな!そもそも何を出す気だ!」
父「お前は私の父乳で育ったのだ。」
勇者「…ハァ。 最後に、息子に遺す言葉はあるか?(抜刀しながら)」
父「じょ、冗談だ冗談!お前はその手を血…いや、父乳に染める気か!?」
勇者「いい加減「乳」から離れやがれ!俺は「歴史全書」のことが知りたいんだよ!」
父「なっ!歴史全書!? お、お前その本…どこで見つけたんだ!?」
勇者「学校の極秘書庫で見た。まぁ途中までしか読んでないが…知ってるのか?」
父「歴史全書か…懐かしいな。あの本は私が若い頃…」
勇者「親父も読んだことあるのか!?じゃ、じゃあ続きを教えてくれよ!頼む!!」

父「頑張って書いた。」
勇者「小説だったのかよ!!」

宿題はフリダシに戻った。

 

120:海開〔6歳:LEVEL2〕
「歴史全書」が的外れだったため、結局大陸の歴史調べは諦めた俺。
仕方なく皆と同じ課題にしたら早く片付いたため、今日はみんなと海へと来てみた。
勇者「海か…。普段がアレだと、イマイチこういう平和は退屈だなぁ…。」
盗子「勇者ぁ~ん☆ どう?どう?アタシの悩殺水着姿にメロメロ~??」
勇者「失せろ6歳児め。目が萎える。」
盗子「うわーん!ひどすぎるよー!」
勇者「そんなことより姫ちゃ…あ、いた。 なんだ、随分沖にいるなぁ…心配だ。」
盗子「い、いいんだ…。どうせアタシなんて「そんなこと」扱い…うぐっ。」
姫「勇者くーん、大変だよ~。」
勇者「ど、どうした姫ちゃん!?まさか足でもつったのか!?」
盗子「あ、あれ?なんか沖が大騒ぎだよ?」
姫「すごいよー、フカヒレが浮いてるよー。」
勇者「姫ちゃん、それは食材名だ!つまり今はサメの恐怖におののくべき状況だ!」
盗子「姫ぇー!逃げてー!食べられちゃうよー!」
姫「やったね。食べられるんだね。」
勇者「ち、違うぞ姫ちゃん!今のは「可能」じゃなくて「受動」の意味だ!」
姫「・・・・・・・・あ~、あれは美味しいよね、「ジュドン」。」
盗子「だ、ダメだよ勇者!全然通じてないよ!適当に誤魔化そうとしてるよー!」
勇者「くっ、ダメだ!この距離じゃ……姫ちゃーーーーん!!」


ドゴッ!(殴)
サメ「キッ、キェエエエエエエッ!!
勇者「なっ、あの巨大サメを一撃で…!? だ、誰だ!?水しぶきで見えんぞ!」
?「フッ、久しいな小僧ども。」
盗子「えっ、誰!?アタシらの知ってる人!?」

スイカ「ヌシらのスイカは壮健か?」
勇&盗「微妙なのがキター!!」

スイカ割り魔人が現れた。

 

121:西瓜〔6歳:LEVEL2〕
どういうわけか、投身自殺したはずのスイカ割り魔人が現れた夏の昼下がり。
勇者「い、生きていたのか貴様!あの高さから落ちて…!」
スイカ「フッ、ワシのスイカを並のスイカと一緒にするな!強度はなんと0.5倍!」
勇者「半分じゃねーか!」
盗子「え、えっとぉ~…せっかくのお休みだし、今回は仲良くしちゃったりしない??」
スイカ「ナメるな!一度狙った標的を見逃すほど、ワシは甘くないわ!」
姫「塩をかければ甘くなるよ。」
盗子「なるかー!」
スイカ「喧嘩は嫌い。」
盗子「なっちゃったー!!」
スイカ「…とまぁ冗談はさておき、早速勝負に入ろうか。互いのスイカに懸けて!」
勇者「ケッ、相変わらず勝手な奴…って、だからスイカなんて持ってねーっての!」
スイカ「隠すな、ワシには聞こえるぞ?ヌシが内に秘めし…熱きスイカの鼓動が!」
勇者「…フゥ、もういいよ。やるならとっととやろうぜ。 さぁ、何やるんだ?」

スイカ「ビーチバレーだ。」
勇&盗「スイカは!?」

スイカは売り切れだった。

 

122:大会〔6歳:LEVEL2〕
こうして行うこととなったビーチバレー決戦。
しかし、ただやってもつまらんということで、他の参加者も募り大会にすることに。
結局8チームが集まったので、三回勝てば優勝のトーナメント戦となったのである。
勇者「くっ!いくらチーム分けはクジ引きとはいえ、まさかお前とはな…。」
弓絵「頑張りましょうね勇者先輩!夫婦初の共同作業ですねー☆」
勇者「(放っておこう…。)…さて、一回戦目は貴様らか。 まずは名を名乗れ!!」
芋子「ワタイは芋子。今日も元気に芋を食う。」
老婆「私は芋子様専属の執事「洗馬巣(セバス)」。「セバスちゃん」で結構ですぞ。」
勇者「フンッ、誰がババアに「ちゃん」付けなんかしてやるかよ。このシワの塊め!」
洗馬巣「ひ、ひどい…。 執事洗馬巣、250年ぶりに痛んだ乙女心…。」
勇者「にひゃっ…化け物かよ!」
芋子「任せて爺や。お前のカタキはこのワタイが…ワタイが芋を食う!!」
父「あ、ども。私がこの大会の審判を務めます、勇者の父です。みなさんヨロシク。」
弓絵「あっ、初めましてお義父様ぁー!未来の嫁でーっす☆」
勇者「誰がお前なんかを嫁に…! オイ親父、貴様からも何か言ってやってくれ。」
父「孫の名前は「英雄」がいいです。」
勇者「乗っかるなよ!」
芋子「芋、食いたい…。」
父「では早速始めましょう。 両チーム、試合前にグローブを合わせて!」
勇者「グローブなんかしてねーよ!何の試合だよ!」
芋子「ねぇ爺や、ところで…芋は?」
洗馬巣「芋ですか?それなら試合に勝った後たんまりと…。」
芋子「試合に負けたらダメなの?」
洗馬巣「いえいえ、仮に負けてもたんまりと!」

芋子「じゃあワタイは負けでいい。」
一同「…え゛?」

勇者は不戦勝で勝った。

 

123:敗北〔6歳:LEVEL2〕
戦わずして勝ち上がった一回戦。結局奴らは何の為に参加したのだろうか。
勇者「次の相手は…貴様か盗子!今回ばかりは手加減せんぞ!」
盗子「なにさ!いつも決まってこっぴどいじゃん!」
弓絵「あ、盗子先輩だー。いい加減、勇者先輩に付きまとうのやめませんかぁ~?」
盗子「アンタにゃ言われたかないよ!」
武史「安心しろ、盗子は俺が守る!そのためだけに俺はいる!」
盗子「今日はゲームに集中してよ!アタシのことはどうでもいいから!」
勇者「あぁ、確かにどうでもいいな。」
盗子「はみゅーん!!」
父「それでは両チーム、準備はいいかな?」
弓絵「大丈夫でーす!お嫁にはいつでも行けますぅー!」
盗子「そんな準備は今いらないよ!」
武史(よし盗子、サーブにはこのボールを使え。これで奴らは一撃KOだぜ!)
盗子(えっ、なにこのボール?魔球でも打てるとか??)
武史(打った瞬間爆発する。)
盗子「アタシがヤバいじゃん!!」

~その頃、第二コートでは~
審判「試合終了ー!!」
スイカ「ノォーーーーーッ!!」

スイカは負けちゃってた。

 

124:先取〔6歳:LEVEL2〕
そして始まった準決勝。勇者として、こんな奴らに負けるわけにはいかない。
盗子「食らえー!超高速盗っ人サーブ!!」
武史「いいぞ盗子!名前の割にまったくもって速くないあたりが逆にナイスだ!」
勇者「行ったぞ弓絵、レシーブだ!」
弓絵「ハーイ勇者先輩!うまく受けれたら付き合ってくださーい☆」
勇者「(スルーして…っと。)よっ、トスッ!ナイスアシスト俺!」
武史「よし、ここは俺に任せろ盗子!お前の操は俺が守る!」
盗子「そんなピンチは今きてないよ!」
勇者「さぁいけ!アターーック!!」

弓絵「勇者先輩、ずっと好きでした☆」
勇者「そのアタックじゃねーよ!!」

スイカは帰り支度をしている。

 

125:花火〔6歳:LEVEL2〕
気づけば負けていたスイカ割り魔人。言いだしっぺとしての自覚が足りなすぎだ。
というわけで、もはや続ける理由の無くなった大会は途中で切り上げることにした。
そして俺達は、夜になるのを待って花火大会へと向かったのである。
勇者「花火か…なかなか綺麗なもんじゃねーか。」
盗子「(チャーンス!このロマンチックに便乗して素敵な告白を…!)あ、あのさ…」
勇者「お前も見習え、この潰れ顔め。」
盗子「うっさいわ!死ねっ!!」
少年「ダメだよキミ、簡単に「死ね」とか言っちゃ。」
勇者「む?なんだ貴様…名を名乗れ!」
少年「僕の名は「余命一年之助」、略して「余一(よいち)」。職業は「闘癌士」だ。」
勇者「まったくもって幸の無い名前だな。」
盗子「それに「トウガンシ」って…何? 聞いたこと無い職業だけど…。」
余一「主に「胃ガン」などと闘っている。」
盗子「ただの病人じゃん!」
余一「もう…長くないかも…しれない…」
盗子「あ、そっ、そうなんだ…。」
余一「…と言われ続けて十余年。」
盗子「大健闘じゃん!!」
余一「ちなみに唯一の、オリジナル六号生。」

大健闘だった。

 

126:遠足〔6歳:LEVEL2〕
あっという間に夏は過ぎ去り、そして学園生活における3度目の秋がやってきた。
クラスの奴らの瞳は皆、綺麗な「諦めの色」をしている。もはや見慣れた色だ。
その原因となる秋の遠足なのだが、どうやらまた例年とは違った形になるらしい。
教師「えー。実は、大陸の留置所から囚人4名が脱獄したという情報が入りました。」
盗子「ま、まさかそいつらを捕まえろとか…」
勇者「言うんだろうな。」
教師「囚人、ゲットだぜ!」
盗子「言い方変えても同じだよ!」
教師「大丈夫です。この島に上陸したのは、そのうち2名だけという話ですし。」
盗子「う~ん、まぁ少しはいっか。 んで、ちなみにその人達は何した人なの?」
教師「ちょっとした大量殺人です。」
盗子「大事件じゃん!」
教師「というわけで、今回の遠足は「近所で囚人探し」です。みなさん頑張って!」

もはや「遠足」ではない。

 

127:前夜〔6歳:LEVEL2〕
明日の遠足は、この島での囚人探し。なんだ、俺達は「なんでも屋」か。
聞くところによると、敵は「五錬邪(ごれんじゃ)」という悪党集団のメンバーらしい。
五錬邪は各人、赤・黒・黄・桃・群青色(一人だけ微妙)の仮面を纏っているそうだ。
今のところ知っているのはこれだけ。だが明日までにはもう少し調べておきたい。
そう思った俺は、例の如く家に帰って親父に聞いてみることにした。
勇者「ただいまー。」
黄錬邪「おかえりー。」
勇者「出たぁーーー!!」

「黄錬邪」が現れた。

だが何故かエプロン姿だ。

 

128:過去〔6歳:LEVEL2〕
どういうわけか我が家にいた黄色仮面の女。コイツが「黄錬邪」に違いない。
しかし何故こんな所に…。 やはり俺に安息の地は無いのだろうか。
勇者「き、貴様…なぜここにいる!?それに親父…親父は!?親父ぃー!」
黄錬邪「フフッ、叫んでも無駄よ。 今の彼に、キミの声など届かない。」
勇者「くっ、親父はどこだ!」
黄錬邪「お風呂。」
勇者「バスタイムかよ!!」
父「ふぃ~、いい湯だっ…おぉ勇者、帰ったか。 見ろ、父さん湯上りタマゴ肌だぞ。」
勇者「コラ親父、これは一体どういうこった!?」
父「なんだ、わからんのか? つまりお肌がまるでタマ…」
勇者「そこに抱いた疑問じゃねーよ!なぜ脱獄囚がここにいるかって聞いてんだ!」

父「だって父さん、初代「赤錬邪」だし。」
勇者「マジで!?」

親父は意外な過去を持っていた。

 

129:正義〔6歳:LEVEL2〕
親父によると、「五錬邪」はそもそも親父が10歳の頃に作った組織なのだそうだ。
どう見ても悪党のような名なのだが、一応正義の味方として活躍していたらしい。
勇者「ふーん、そうなのか。 で、ちなみにどんな正義の活動してたんだ?」
父「あー、主に「ゴミ掃除」とか?」
勇者「ショボッ!そりゃ「正義」じゃなくて「善意」のレベルだろ!」
黄錬邪「時給とか結構渋かったですよね。」
勇者「金は取るなよ!バイト感覚か!」
そんなふざけた活動をしていたという、「自称:正義の味方」だったっぽい五錬邪。
だが親父の脱退と共に、組織は悪の道へと走り始めたのだと黄錬邪は言った。
勇者「なるほどな。「五錬邪」なのに脱獄囚は四人というのが気になっていたが…。」
父「うむ。黄錬邪はむしろ彼らの悪事を止めようとしていた側だからな。」
黄錬邪「では挨拶も済みましたし、私はそろそろ彼らを探しに…」
父「まぁ待つんだ黄錬邪、私も行こう。時は一刻を争う。」
勇者「へぇ~、ヤル時はヤルんだな親父も…」

父「明日はゴミの日だし。」
勇者「そっちの活動かよ!!」

時給は出ない。

 

130:出直〔6歳:LEVEL2〕
黄錬邪は一応敵じゃないようなので、まぁとりあえず一安心。
彼女の調べによると、敵は東の「六つ子洞窟」付近にいる可能性が高いそうだ。
というわけで俺は、仲間を募り黄錬邪とは違う角度から敵を追い詰めることにした。
俺達はまずクジ引きで組分けをし、手分けして敵を探すことにしたのである。
勇者「ふぅ~、やれやれ。まさか貴様らなんぞとチームになるとはな…。」
暗殺美「愚痴りたいのはこっちの方さ!アンタは私の敵なのにさ!」
巫菜子「ま、まあまあ!仲良くしよーよ☆(ったくウゼー奴らと当たっちまったよ。)」
勇者「…ところで、そろそろ出てきたらどうなんだ?そこにいるんだろ五錬邪?」
巫菜子「えっ!敵はもう側にいるの!?(なんでわかんだよコイツ!?)」
勇者「パターンを読んでみた。」
暗殺美「んなもん読むなや!! 常識外れにも程があるさ!」
勇者「さぁ、とにかく出て来い!とっととブッた斬ってくれるわ!!」

・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・。

勇者「ふぅ~、やれやれ。まさか貴様らなんぞとチー…」
暗殺美「無かったことにすんなや!!」

勇者は勝手にTake2に入った。

 

131:危機〔6歳:LEVEL2〕
毎度の展開を考えると敵はすぐに現れると思ったのだが、今回は違ったようだ。
だがまぁ他の五つの穴のうちのどれかでは、恐らくもう戦闘は始まっているだろう。
う~む…ハズレを引いたと言うべきか、アタリを引いたと言うべきか。
勇者「行き止まりか…。どうやらここにはいなかったようだな。戻って他の穴に…」
声「うっぎゃあああああああああ!!
暗殺美「悲鳴!?壁の向こうから聞こえるさ!きっと隣の穴に敵がいるのさ!」
勇者「この色気もへったくれも無い叫び声は…盗子か!!」

~その時、隣の洞窟では~
群青錬邪「ケッ、逃げ足だきゃ一人前な小娘だぜ…。いい加減諦めやがれ!」
盗子「い、イヤだー!死にたくないよー!!」
少年「大丈夫でござる!悪党の好きにはさせないでござるよ!」
盗子「えっ!?やった、もう一人生きてたー! …って、誰だっけ??」
少年「拙者は二号A組の「法足(ハッタリ)」。歴代最強と呼ばれし「忍者」でござる!」
群青「さ、最強…!? そうか、歯ごたえのある奴もいやがったのか!」
法足「伝説の秘奥義、「忍法:木の葉乱舞」を食らうがいいでござる!」
盗子「わーい、いいぞー!やっちゃえマッタリー!」
法足「ハッタリでござる!」
盗子「あ、ご、ゴメン!やっちゃってよハッタリ君!」

法足「ハッタリでござる!(すべてが)」
盗子「アタシ、死ぬかも!!」

盗子は大ピンチだ。

 

132:精霊〔6歳:LEVEL2〕
隣の穴から盗子の絶叫が聞こえた。どうやらあっちは相当の修羅場らしい。
面倒は面倒だが、「勇者」として手柄を上げるためには行かねばなるまい。
勇者「くっ!助けに行こうにも、今から入り口まで戻ってちゃ間に合わん!」
暗殺美「でもこの岩壁は砕けそうにないさ。やっぱり戻らないと…。」
巫菜子「(チッ、しゃーねーなー。) ううん、大丈夫!私に任せて!」
勇者「む?何か妙案でもあるのか!?」
巫菜子「(いいから黙って見てろやボケが!) さぁ、いでよ「大地の精霊」!!」

巫菜子は「大地の精霊」を呼び出した。
精霊の力により、岩壁はまるで扉のように開いた。

暗殺美「ワオ!スゴいさ!アッと言う間に繋がっちゃったさ!」
勇者「ほぉ、精霊ごときがなかなかヤルじゃねーか。」

岩壁は閉じた。

暗殺美「どわっ!閉じた!閉じちゃったさ!」
巫菜子「だ、大地の精霊は神経質なんだよー!(チッ、余計なこと言いやがって!)」
勇者「くっ! わ、わかったよ…。もう一度呼んでくれ巫菜子。」
巫菜子「う、うん!わかったからちゃんと謝ってね!(ったく、めんどクセーなー。)」
暗殺美「よーし、キチンと謝るさ勇者!事態は切迫してるのさ!」

巫菜子は「大地の精霊」を呼び出した。
精霊は勇者に土下座を求めた。

勇者「勝負だこの野郎!!」
暗&巫「挑むなー!!」

盗子よりもプライドが大事だ。

 

133:既遅〔6歳:LEVEL2〕
結局なんとか精霊を言いくるめ、再び岩壁を開かせた俺達。これで助けに行ける!
ということで早速助太刀に向かったのだが、どうやら少しばかり遅かったようだ。
辺りを見回すと、既に息絶えたような奴らが4人ほど転がっていた。
勇者「お…オイ、盗子…盗子ぉーー!! 死んだのか!?生きてないのか!?」
暗殺美「どっちも同じ意味さ!」
巫菜子「ひ、酷い…こんなのって…。(ったく、ザコどもめが。)」
暗殺美「あっ!大丈夫、盗子は気を失ってるだけさ!」
勇者「なにっ!?おぉ、そうか!無事だったのか!!             …チッ。」
盗子(な、なんだろう今の舌打ちは…)
群青「おっと、まだ仲間がいやがったのか。そのガキはひとまず命拾いしたな。」
勇者「貴様…許さんぞ!貴様の首を盗子の墓前に捧げてやる!!」
暗殺美「違うさ勇者!盗子はまだ生きてるさ!」
勇者「くっ、かわいそうに…こんな顔にされちまって…。 なんて酷い奴なんだ!!」
群青「いや…お前の方が酷いよ。」

顔は無傷だ。

 

134:開戦〔6歳:LEVEL2〕
盗子ネタでの一人遊びにもいい加減飽きてきたので、ぼちぼち戦い始めることに。
勇者「さぁ、お遊びもここまでだ!この勇者が今から貴様を倒す!」
群青「!! そうか、テメェはあの人の…。おもしれぇ!来いやぁあああ!!」
勇者「いいだろう!その群青の仮面を赤に染めてくれるわ!!」
暗殺美「待つさ勇者!こういう暗闇は「暗殺者」のテリトリーさ!」
勇者「む? よし、ならば任せてやる!行けぇーーー!!」
暗殺美「私は華麗な暗殺者…闇に紛れて敵を討つさ!」

暗殺美の攻撃。

勇者に20のダメージ。

 

135:瀕死〔6歳:LEVEL2〕
いきなり不意打ちをかましてきやがった暗殺美。この期に及んでなんて奴だ。
勇者「ぐっ、テメェ…この俺を攻撃するとはどういう了見だコラ!?」
暗殺美「ちょっとどさくさに紛れてみただけさ。」
勇者「言い訳になってねーよ!」
群青「じゃれあってるんじゃねーよガキども!さっさと死にやがれ!!」
勇者「なっ!速っ…ぐわっ!

群青錬邪の攻撃。
勇者は瀕死のダメージを受けた。

結構大ピンチだ。

勇者「ぐはあああっ!! (ヤベェ…死ぬ…!)」
姫「大丈夫だよ勇者君、私が傷を治すよ。」
勇者「ひ、姫…ちゃん?一体どうやって…ここに…?」
姫「送料は着払いだよ。」
勇者「郵送で!?」
姫「早速治すよ。 むー、「治療」!」

姫は〔治療〕を唱えた。
盗子の傷が治った。

姫「やった、大成功。」
勇者「い、いや、俺を…俺を…。」
盗子「う、う~ん…ハッ!勇者!?大丈夫!?」
勇者「それにしても…姫ちゃん、知らぬ間に回復魔法…覚えたん…だな…。」
姫「こんな日もあるんだね。」
盗子「えっ、マグレ!?」
姫「当たらぬも八卦、当たれば儲けだよ。」
盗子「そりゃ占い…てゆーか「儲け」て!回復ってそれ程ギャンブルじゃないよ!」
姫「じゃ、いくよー。 むー!死め」
勇者「ちょ、ちょっと待て!今、明らかに間違ってたぞ!」
姫「あ~、ウッカリしちゃってたよ。えへへ。」
盗子「笑って許される問題じゃないよ!」
勇者「許しちゃう。」
盗子「命懸けで!?」
姫「じゃ、今度こそいくよー。」
勇者(6年か…短い人生だったな…。)

姫は〔治療〕を唱えた。
勇者は傷が治った。

だが寿命は縮んだ気がした。

 

〔治療(ちりょう)〕
療法士:LEVEL2の魔法。(消費MP3)
味方一人のHPをいくらか回復させる魔法。 痛いの痛いの飛んでく~。
 

 

136:強敵〔6歳:LEVEL2〕
いろんな意味でなんとか一命を取り留めた俺。だが戦況は芳しくない。敵は強い!
群青「ケッ、何度回復しようとも無駄だ。テメェらじゃ俺には勝てねぇよ。」
盗子「こ、今回の敵はなんか…今までとは違うね…。」
勇者「ああ、冗談が通じない。」
盗子「そこ!?いや、まぁそうだけど!そうじゃなくてホラ、強さとかさぁ!」
勇者「強さは俺の方が上だ!それは今から証明してやる!!」

勇者の攻撃。

暗殺美は30のダメージ。

暗殺美「しっ、しまっ…!」
勇者「借りは返したぞ!」
盗子「そんなの後でやってよ!」
群青「フンッ、その「後」なんてのは無ぇんだよ!!」

群青錬邪の連続攻撃。

勇者は20のダメージ。
盗子は30のダメージ。
暗殺美は30のダメージ。
巫菜子は間一髪で避けた。
姫はどこにいるのか。

巫菜子「ふぅ、危なかっ…え?……血…?(なっ…なにぃ!?)」
群青「ホォ、なかなかの身のこなしだが…次は頬に傷くらいじゃ済まないぜ?」
巫菜子「……あっ…うぅ…。」
群青「おっと、ビビッて声も出なくなったか小娘? グハハハハ!!」
巫菜子「・・・・・・・・。」


(-_-メ)ブチッ!(切)
群青「…ん゛?」
勇者「む!? (なんだ、急に雰囲気が変わったようだが…。)」

巫菜子「ブッ殺す!!!
一同「え゛っ!?」

巫菜子が本性を現した。

 

137:本性〔6歳:LEVEL2〕
血を見た途端、巫菜子がキレやがった。普段がブリッコなだけに変化が著しい。
巫菜子「もーいい!もーどうにでもなりやがれー!!ブッ殺してやるぁあああ!!」
暗殺美「ちょ、ちょっと落ち着くさ巫菜子!」
姫「粗茶ですが。」
盗子「それは落ち着きすぎだよ!」
群青「ケッ、ガキがいきがったところで所詮は雑魚…」
巫菜子「んだとぉ!?ならやってやるよ!出て来やがれ「大地の精霊」ども!!」

巫菜子は「大地の精霊」を呼んだ。

精霊はシカトぶっこいた。

巫菜子「な、なんで出て来ねぇんだよドチクショウがぁー!!」
暗殺美「まぁそんな呼び方じゃヘソも曲げるわさ。」
巫菜子「じゃあいいよ!みんなまとめてコイツ(銃)でハチの巣にしてやるぜ!」
暗殺美「勝手にまとめんじゃないさ!撃つのは敵と勇者だけでいいさ!」
勇者「いや、俺も省けよ!今は一応味方だ!」
暗殺美「フン、アンタなんか死ねばいいのさ!賢二君のカタキめ!」
勇者「つーか「巫女」が銃なんて振り回すな!その手に持った「錫杖」は飾りかよ!」
巫菜子「飾りだよ!!」
暗殺美「言い切ったよ!」
勇者「言い切るなよ!」
巫菜子「ウルセーよ!!」
勇者「ウルセーとはなんだ!」
暗殺美「ウルセーは無いわさ!」
群青「お、オイ…」
三人「ウルセーよ!!!」

群青錬邪はキレられた。
だが釈然としなかった。

 

138:約束〔6歳:LEVEL2〕
本来のキャラを忘れ、ブチ切れ続ける巫菜子。もはや敵よりタチが悪い。
巫菜子「ブッ殺ぉおおおおおおおっす!!」
盗子「勇者、早くなんとかして!とりあえず巫菜子を止めて!」
勇者「よし、任せろ!!」

勇者の容赦ない攻撃。
巫菜子に瀕死のダメージを与えた。

巫菜子「…ガッ……。(ぐったり)」
勇者「止めたぞ。」
盗子「止めすぎだよ!息の根まで止まりそうだよ!」
群青「オイ…もういいか?」
盗子「えっ!待っててくれてたの!?ひょっとしてヒーロー物のお約束!?」

群青「おかげで十分な氣は練れた。」

自分の都合だった。

 

139:窮地〔6歳:LEVEL2〕
ちゃっかり氣なんぞ練っていやがった群青錬邪。なんとも大ピンチだ。
一応まだ準備中のようなのだが、どんな技だかわからんだけに迂闊には動けない。
群青「さぁ、もうじき出来上がるぜ?必殺、「群青大氣砲」がなぁ!!」
勇者「(くっ、なんてデカい氣だ…!これじゃ逃げようも防ぎようも……無い!!)

~その頃、別の穴で黄錬邪の手作り弁当を食べていた親父は…~
父「ッ!!!」
黄錬邪「ど、どうかしましたかレッド!?」
父「い、いや、ちょっとイヤな予感が…な…。(なんてこった!死ぬほどマズイ!)」
黄錬邪「そうですか、気になりますね…。」
父「あ、ああ…だから食事はこの辺で切り上げないと危険だ!(私が!)」
黄錬邪「そうですね!じゃあ食べながら助けに向かいましょう!」
父「え゛っ!?あ゛っ…よ、よーし!父さん今いくぞ勇者ー!!(あの世に…)」

親父も大ピンチだった。

 

140:流星〔6歳:LEVEL2〕
次第に完成に近づいていく群青錬邪の必殺技。だが打開策は未だ思いつかない。
群青「ぬぉおおおおおあああああああっ!!」
勇者「や…ヤバいぞ!空気的にもうじき発射のお時間だ!」
姫「やっぱり夏は花火だよね。 ターマちゃーん!」
盗子「花火なんかじゃないってば!」
勇者「それに「タマちゃん」じゃなくて「たまや」だし、そもそも今は秋だ!」
法足「…やれやれ。ぼちぼち拙者の出番でござるかな?」
盗子「えっ、生きてたのアンタ!?どうやって!?」
法足「フフッ。拙者もハッタリだけで生き抜いてきたわけではないでござる。」
盗子「そ、そっか!そうだよね!」
法足「うまくいったでござるよ、「忍法:死んだフリ」。」
盗子「そんなのだけは使えるのかよ!」
勇者「う~む…よし!やはり放つ前に殺るぞ!どのみち動かねば勝機は無い!」
法足「ならば拙者に任せるでござる! 究極奥義、「忍法:天翔る大流星群」!!」
盗子「絶対嘘だー!そんな壮大な名前、絶対ハッタリだよぉー!」


チュドーーーン!!(激突)
群青「グエッ!
盗子「まっ、マジで!?」

突如何かが降ってきた。
群青錬邪はプチッと潰れた。

盗子「まさか、ホント…に?」
法足「ハッタリでござる!えっへん!」
盗子「威張って言うセリフじゃないよ!」
勇者「な、なんだコリャ? 宇宙…船?」
?「ゲホッ、ゴホッ! うへー!死ぬかと思ったー!!」
暗殺美「えっ!ああああアンタは…!!」
勇者「お前…生きていたのか!!」
?「あっ!勇者君!?みんなー!会いたかったよー!!」

勇者「カルロス!!」
賢二「賢二だよ!!」

賢二が帰ってきた。

 

141:背後〔6歳:LEVEL2〕
凄まじく都合のいいタイミングで降ってきた賢二。生意気にもファインプレーだ。
勇者「い、生きてたのか賢二!よかったよ!」
賢二「…どうせ「どうでもよかった」とか言うんでしょ?僕にはわかっ…」
勇者「死んでりゃよかった。」
賢二「いくらなんでも酷すぎだよ!」
群青「ぐっ、うぐぐぅ…貴様…ら…グハッ!」
勇者「む?まだ生きてやがったのかこの平面ガエルめ。 ならば、とっととトドメを…」
?「おっと、それ以上動くと首が落ちるよ?」
勇者「ッ!!?」

桃錬邪が現れた。
勇者は首にナイフを突き付けられている。

勇者「き、貴様…いつの間に…後ろに…!?」
姫「いま流行りの背後霊ゴッコだね。」
勇者「ひ、姫ちゃん…今はそんな悠長な…」
桃錬邪「次の鬼はアンタね。」
盗子「乗っかるのかよ!アンタはノリノリ…てゆーかまさかホントに流行ってる!?」
桃錬邪「フフッ。アタシは群青ほど余裕無くはないんでね。冗談くらいは言うさ。」
父〔岩陰〕(フゥ、やっと着い…むっ、あれは桃錬邪!?いかん!勇者が危ない!)
勇者「…殺せ。」
盗子「ゆ、勇者!?」
賢二「そんな…!」
勇者「この二人を。」
盗&賢「自分は!?」
桃錬邪「あ~、残念ながら期待には添えないね。 この場は群青を連れて退くよ。」
勇者「なに?なぜこんなチャンスをみすみす…」
桃錬邪「別に深い意味は無いさ。ただ初代レッドが来ると…チョイと厄介なんでね。」
勇者「む?なんだ貴様、まさかあんな奴を恐れているのか?」
父「(よーし、登場チャーンス!)おっと、悪いがもうここに…」

桃錬邪「いや、ウザいから。」

親父は泣きながら帰った。

 

142:撤収〔6歳:LEVEL2〕
絶好の攻撃チャンスを捨て、敢えて逃げるという桃錬邪。 恐るべし親父のウザさ。
そういやさっきその親父の声が聞こえた気がしたが、見当あたらんので気にしない。
桃錬邪「というわけでアタシらは帰るとするよ。 じゃあねボウヤ達。」
群青「お、覚えていやが…れ…!!」
勇者「バカが逃がすか!首からナイフが外れればこっちのもんだ!」
桃錬邪「まぁ焦るなよ。時期がくればまた会うことになるさ。 いずれ…ね…。」
勇者「なっ!待ちやが…」
プッシュウウウウウッ…!(煙幕)
勇者「チッ、煙幕か…!」
暗殺美「五錬邪…なかなか手強い奴らだったさ…。」
法足「でござったな…。」
勇者「フンッ、いつでも来るがいいさ。 次こそはこの俺がブッた斬ってくれる!!」
盗子「勇者…☆」

スゥウウウウゥゥゥ…(晴れていく煙)

桃錬邪「あ゛。」
一同「まだいたんかい!!」

桃錬邪はまだいた。

親父はもういない。

 

143:昇格〔6歳:LEVEL2〕
肝心な去り際をしくじり、心なしか恥ずかしそうに去っていった桃錬邪。
結局倒すことはできなかったが、まぁこの戦力で追い返せただけでも良しとしよう。
一同「今回はちょっと…ヤバかった…。」

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
勇者はレベル3になった。

強くなった。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

盗子はレベルが上がった。
盗子はレベル3になった。

強くなった。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

姫はレベルが上がった。
姫はレベル3になった。

なぜか強くなった。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

賢二はレベルが上がった。
賢二はレベル3になった。

強くなれ。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

暗殺美はレベルが上がった。
暗殺美はレベル2になった。

勇者しか攻撃してないのに。

いぃぃよぉお~!ポンポンッ!(効果音)

巫菜子はレベルが上がった。
巫菜子はレベル2になった。

だが先程から目を覚まさない。

 

144:三種〔6歳:LEVEL3〕
遠足も終わり、今度は体育祭がやってくる。 俺達の中で、秋は最も忙しい季節だ。
教師「えー。今年の種目は、「借り物競争」「対抗リレー」「タマ入れ」の三つです。」
勇者「む?なんだ、今年は三競技しかないのか?やけに少ないな。」
盗子「多分、三つ以上やると犠牲者数がヤバいからだろうね…。」
教師「まぁ、ただ多ければいいというものじゃないですよ。要は質ですから。」
賢二「質ですか…。具体的にはどういうことなんでしょうか?」
教師「まず「借り物競争」競技者は、リアリティを追求して家や命を抵当に入れます。」
盗子「一体何を借りる気だよ!?てゆーか競技後にすぐ返すってば!」
教師「また「対抗リレー」では、規定時間内に渡さないとバトンが爆発します。」
勇者「爆弾持ったチームメイトに追われるのか…。もはや誰が敵だかわからんな。」
姫「鬼ゴッコだね。頑張って逃げなきゃだね。」
賢二「この場合は逃げる方がある意味「鬼」だよね、味方見殺しだし…。」
教師「そして「タマ入れ」は、カゴの代わりに代表者を掲げ、銃弾をブチ込みます。」
盗子「そっちのタマかよ!物騒なのにも程があるよ!」
勇者「同情するよ、代表者。(賢二の肩に手を置きながら)」
賢二「やっぱり僕なんだね…。」
教師「どうですか?いい質でしょ?」
勇者「いや、「悪質」だよ。」

教師は(タチ)が悪い。

 

145:開会〔6歳:LEVEL3〕
そして始まった体育祭。 ぼちぼち一度くらい優勝しておきたいものだ。
まずはとりあえず、去年苦しんだ開会式を乗り越えなければならない。頑張ろう。
司会「プログラム1、「校長先生のお話」。」
勇者「さて、今年は一体何日粘るのやら。去年は三日だったしなぁ…。」
盗子「まさか…四日とか?」
校長「ガンバレ!」
司会「続きましてー…」
勇&盗「四文字!?」
司会「「選手宣誓」。生徒代表、六号生武史君。」
勇者「武史か…。なんかろくなこと言いそうにないのが見て取れるようだ。」
盗子「そ、そんなことないよ!お兄ちゃんだってきっと、ヤル時はヤル男だよ!」
武史「宣誓!我々選手一同は!」
盗子「ホラ!普通じゃん!(よかったー!)」
武史「スポーツマンシップに乗っ取ったり、乗っ取らなかったり!」
盗子「曖昧かよ!そこは素直に乗っ取れよ!」
武史「時として、豪華客船を乗っ取ったり!」
盗子「それはダメだってば!人の物は盗っちゃダメだよ!」
勇者「フン、「盗賊」が何を言うか。」
盗子「くっ…!」
武史「正々堂々! 盗子を守ることを…」
盗子「誓うな!!」
賢二「こんな痛いお兄さんがいたんだね、盗子さん…。」
盗子「うぐっ…。」
司会「では次は、「ラジオ体操」です。」
チャーン♪チャーラララララ♪チャーン♪チャーラララララ♪(前奏)
放送「腕をー、前から上に上げさせて「動くなテメェら!動くと撃つぞコラ!」からー。」
生徒「え!?あっ…う、動くなテメェら!動くと撃つぞコラ!」
放送「手足を撃つぞー!いち、に、さん、死ぬ?にぃ、に、さん、死ね!」

二時間続いた。

 

146:借物〔6歳:LEVEL3〕
ラジオ体操には時間を食ったが、今年は一応無事に開会式は突破できた。
第一競技は「借り物競争」。 一見簡単そうに見えるが、恐らく一筋縄にはいくまい。
勇者「俺の借り物は…む?なんだコリャ? う~む…よし、親父に頼もう!」
父「おぉ、父さんに用か! じゃあ借り物は「尊敬する人」か?「ナイスガイ」か?」
勇者「安心しろ、死にはしまい。」
父「…え゛?」

紙には「内臓」と書かれている。

〔Case:盗子〕
盗子「えっと、借り物は何かなぁ~?」

『ギロチン』

盗子「誰が持ってんだよ!!」

実は校長室にある。

〔Case:芋子〕
芋子「ワタイの借り物は…あ!これはワタイ、既に持ってるわ。このまま行こっと。」

『華』

芋子「ワタイほど華のある皇女はいないわ。」

失格。

〔Case:暗殺美〕
暗殺美「ったく、めんどいさ。 さて借り物は…」

『大好きな人』

暗殺美「いやぁ~ん☆ムリムリ絶対ムリィ~☆」

キャラがキモい。

〔Case:武史〕
武史「どれどれ、俺のは何…」

『豪華客船』

武史「そんなっ!」

時として乗っ取ったり。

〔Case:賢二〕
賢二「なんか嫌な予感しかしないんだけど…。」

『探さないで下さい。』

賢二「僕に…どうしろと…。」

賢二は警察に通報した。

 

147:見殺〔6歳:LEVEL3〕
借り物競争は予想通り一筋縄にはいかず、得点は低次元での大混戦となった。
そして次は「対抗リレー」。この競技の敵は、他の組ではなく「バトン」となるだろう。
父「ゆ、勇者…いくら要らん臓器とはいえ、校庭で盲腸の無麻酔摘出はどうかと…。」
勇者「まぁいいじゃないか。おかげで全校で唯一、俺にだけ得点が入ったんだ。」
盗子「あ、あのさ…とりあえず勇者親父、早く縫合しないと死ぬと思うよ?」
父「うわぉ!まだ開いとる!!」
勇者「…さて、次の「対抗リレー」は各組四人選抜だが…誰を選ぶべきだろうな。」
賢二「うーん。足が速い人じゃないと、バトンつなぐ前に爆破だしねぇ…。」
少年「足の速さなら、この「飛脚」の「韋駄郎(いだろう)」に任せてくれ!」
勇者「うむ!じゃあ順番は、1:盗子、2:韋駄郎、3:俺、4:賢二で決まりだな!」
盗&賢「決まりなの!?」」
勇者「この場で死ぬか?」
盗&賢「決まりだよね!!」

教師「じゃあ、位置についてー! よーい…! チュドーーン!!(バズーカ砲)」
少年達「うっぎゃあああ!!
賢二「えぇぇっ!?当てた!?なんで狙ったの今!?」
勇者「今ので3チームは消えたな…。」
盗子「ひょえぇええ!!し、死にたくないよぉーー!!」

盗子は脅威の逃げ足を見せた。

勇者「おぉ、さすがは盗っ人。やはり逃げ足は速いな。」
盗子「バトーン!早くバトン受け取ってぇー!!」
韋駄郎「よし、ナイスタッチ! 行くぜ!うぉおおおおおおおっ!!」

韋駄郎は風になった。

賢二「速っ!これなら他のチームに抜かれる心配はまず無いよ!」
盗子「あ、あとは…ぜぇ、ぜぇ、時間との勝負…だね…。」
勇者「いいぞ!よくやった韋駄郎!さぁ、タッチだ!!」
韋駄郎「うん!後は任せ…え゛っ!?」

勇者は半周先を走っている。

 

148:急変〔6歳:LEVEL3〕
韋駄郎の奴が弾け飛んだおかげで、リレーの一位は六号生に獲られてしまった。
というわけで、優勝するためには次の「タマ入れ」を獲る必要性が出てきたわけだ。
武史「ハッハッハ!やはり残ったか三号生…さすがは盗子のクラスだぜ!」
勇者「確かに盗子も少しは頑張った。だが、今から大活躍するのはこの賢二だ!」
賢二「さよなら現世…。」
武史「なるほど、そいつがお前らの「標的」か。ウチのは標的は余一だぜ?」
勇者「おぉ、そりゃ何の惜しみも無いな。」
賢二「六号生にも、なんか僕と似たような扱いの人がいるんだね…。」
盗子「あ~、確か「闘癌士」とかいう妙な職業の奴で…」
余一「最近は「肺ガン」とも闘っている。」
盗子「体育祭出てる場合なの!?」
武史「よし、勝負だ勇者!お前には負けねーぞ! 盗子は絶対に渡さない!!」
勇者「フッ、悪いがこっちも渡す気は無い。俺にとってもコイツは大事な…」
盗子「えぇっ!?ゆ、勇者、それって…それって…☆」

勇者「大事な標的だし。」
盗子「いつアタシになったの!?」

勇者は武史を脅す気だ。

 

149:脅迫〔6歳:LEVEL3〕
急遽「標的」を盗子に変更してみた俺。 これで武史を脅せば間違いなく不戦勝だ。
勇者「さぁ棄権しろよ武史。さもないと、大事な妹がハチの巣になるぞ?」
武史「なっ!?」
姫「ハチミツ…」
盗子「獲れないから!!」
余一「僕らのことは気にせず、棄権すべきだ。 命って、大事だから…。」
勇者「お前が言うと、重いんだか軽いんだかわからんセリフだな。」
盗子「お、お兄ちゃん…。」
武史「くっ、仕方ない。愛する盗子のためだ…。」
勇者「ハッキリ言え。でないと伝わらんぞ?」
武史「き、棄権するよ…。」
勇者「よっしゃー!!」

三号生が優勝を決めた

…かに見えた。

教師「閉会式は五日間です。」
一同「そんなっ!!」

全員リタイアした。

 

150:奪還〔6歳:LEVEL3〕
まさかのリタイアにより、体育祭の優勝はチャラになってしまった。やれやれだ。
そして季節は冬。本来ならば「地獄の雪山登山」の季節のはずなのだが…。
教師「残念ながら、今年の雪山登山は諸事情により中止になりました。」
生徒「ぃやっほーーい!!」
姫「カキ氷…。」
賢二「姫さん、そもそも雪はカキ氷との素材じゃないよ…。」
教師「実は今年の夏、我が校の「極秘書庫」から一冊の本が盗まれました。」
勇者「む? あ~、まぁあのセキュリティじゃ盗まれても仕方ないだろうな。」
教師「いえ、本来あそこは強力な「式神」によって守られている場所なんですよ。」
盗子「えっ?でもアタシらが行った時には図書委員しかいなかったよ?」
勇者「つまり、俺らが入ったのはちょうど犯行直後だったっつーわけだな?」
賢二「つまり、その強力な式神を倒して本を奪った人が…今回の敵…と?」
盗子「つまり、雪山登山を無くす代わりに、その本の奪還作業にあたれ…と?」
姫「つまり、カキ氷はおあずけってこと?」
教師「そうです、カキ氷はおあずけです。」
盗子「そこだけ答えるの!?」
教師「奪還すべき本の名は…「拷問大全集」です。」

なぜそんな本が。

 

151:秋味〔6歳:LEVEL3〕
今年の冬は雪山登山ではなく、本泥棒を捕まえるという役目が与えられた。
先公らの調べによると、敵の正体は「ベビル」という名の「怪盗」らしい。
というわけで俺達は、例の如く作戦会議から入ることにしたのである。
ちなみに「怪盗」と「盗賊」の違いは、「怪盗=泥棒」「盗賊=強盗」みたいなもんだ。
勇者「敵の名前はわかったものの、居場所がわからんのではどうしようも無いな。」
賢二「僕はまだそういう魔法は覚えてないし…。」
少女「あ、ああああのぉ~…。」
盗子「ん?誰アンタ? バッヂからして一号生みたいだけど…。」
少女「わ、わた、わた…」
姫「わたあめ。」
勇者「め…めぐすり?」
盗子「コラそこ!勝手にシリトリ始めない!」
芋子「あ~、この子はあがり性なのよね。あんまイジめないでくれる?」
勇者「む? なんだ芋っ子、お前の知り合いか?」
少女「わ、わ私は「機関技師(カラクリぎし)」の、「栗子(くりこ)」と申し上げました!」
賢二「なんか緊張のあまり敬語がおかしくなっちゃったね。」
勇者「今度は栗か。今年の一号生は芋やら栗やら秋の味覚が満載だな。」
盗子「ところでさ、一号生のアンタらがわざわざ何しに来たわけ?」
芋子「今回は、一号生と三号生はペアなのよ。だからワタイは…芋、食いたい。」
盗子「肝心なとこを芋に持ってかれないでよ!まぁ内容は大体わかったけども!」
栗子「そ、それでこんな物を作ってきたんです。ぜぜ是非とも使えばいいじゃん!」
勇者「なんだか釈然としない敬語だが…まぁいい。 なんだコレは?」
栗子「べ、ベビルさんにだけ反応するコンパスです。」
勇者「随分とピンポイントだなオイ。」

どうやって作ったのか。

 

152:六本〔6歳:LEVEL3〕
栗子の珍妙な機械のおかげで、敵は北の「六本森」にいることがわかった。
そこで俺達は翌日、適当にチームを組んで現地へと赴いたのである。
勇者「ここが「六本森」か。なんだか暗くて薄気味の悪い場所だな。」
姫「1、2、3、4、5、6…7……8……あぅぅ、騙されちゃった。」
盗子「数えるまでもないよ!木が六本の「森」なんてあり得ないでしょうが!」
賢二「まぁ名付けた人も名付けた人だけどね。」
勇者「任せろ姫ちゃん!今から俺の手により、この森は生まれ変わる!」
盗子「ま、まさかブッた斬る気!?そんな暇ないってばー!」
勇者「いくぜ相棒(魔剣)よ!姫ちゃんのために立派な「キコリ」になろう!!」
賢二「結構すんなりと「勇者」を捨てるんだね…。」

勇者は力を込めて木を斬りつけた。

「ゴップリンの魔剣」はアッサリ折れた。

勇者「なんだとぉーーーー!?」
盗子「バカバカバカーー!これから戦闘だってのに剣を折るなんてバカーー!!」
賢二「しかも折れた魔剣は泉の底に…って、えっ!?」

ピカァアアアアア!(光)

泉の精「旅人よ、もしかして今…剣を落とされましたか?」

突如「泉の精」が現れた。
その手には三本の剣が握られている。

そして頭には、折れた魔剣が刺さっている。

 

153:駆引〔6歳:LEVEL3〕
剣を泉に落としたら、「泉の精」が湧いて出た。まるでどこかで聞いたような話だ。
ただその剣が頭に刺さっているだけに、落としたことを認めていいのか悪いのか。
泉の精「アナタが落としたのは、この「金の剣」ですか?それとも「銀の剣」ですか?」
盗子(うわー、やっぱりそうキター! ゆ、勇者…わかってる?わかってる??)
勇者(ああ、わかってる。こういう時に欲深な奴は、いい目を見ないのが世の常だ。)
泉の精「それともこの「肩叩き剣」ですか?」
勇者「ちょっと待て!なんだその人をナメきったような名の剣は!?」
泉の精「かつて伝説の「勇者」が使ったとされる剣です。」
勇者「それを落とした。」
盗子「アッサリ釣られたー!!」
泉の精「彼は大層なお爺ちゃん子だったそうです。」
勇者「そっちか!そう使っちゃってたか!!」

ミス!勇者は選択をしくじった。

泉の精「ホントにコレでいいんですか?ファイナルアンサー?」
盗子(やた!ラストチャンスあったよ勇者!今度こそうまくやってよね!?)

勇者「貴様を倒して全部いただく。」

勇者は「金の剣」を無理矢理奪った。
勇者は「銀の剣」を無理矢理奪った。
勇者は「肩叩き剣」も一応奪った。

勇者は「ゴップリンの魔剣」を失った。

別にどうでも良かった。

 

154:願望〔6歳:LEVEL3〕
「ゴップリンの魔剣」は失ったが、代わりに三本の剣を手に入れた俺。豊作豊作。
攻撃力はイマイチわからんが、まぁ最悪売って新しいのを買えばいいだけの話だ。
勇者「さて、武器も増えたことだし…気を取り直していくか!」
盗子「そうだね!頑張んなきゃね!」
勇者「どれどれ、あと何本…」
盗子「そっちかよ!まだキコる気なの!?」
勇者「当たり前だ!俺は姫ちゃんとの約束は死んでも守る!!」
姫「疲れたから早く帰ろうよ。」
勇者「よーし帰るぞ!俺は今すぐ帰るぞー!!」
賢二「ダメだって!敵を倒してからだって! えっと、栗子さん…敵の場所わかる?」
栗子「は、ははははい!も、もうちょっと行った先の木陰にいたらいいですね!」
賢二「いや、そんな「願望」っぽく言われても!」
芋子「芋、食いたい。」
賢二「ホントに願望を言われても!」
盗子「アタシの願望を言うなら、今回の敵は前ほど強くなきゃいいなってことだね。」
勇者「うむ。まぁ確かに五錬邪は強すぎたし…」
?「あ・れ・は~ダレ~だ?ダレ~だ?ダレ~だ?」
勇者「むっ!なんだ、どこからともなく不気味な歌声が…!?」
盗子「な、なんかスゴ~く嫌な予感が…。」
?「あ・れ・は~ベビ~ル♪ ベビ~ルさ~ん♪ベビ~ルさ~ん♪」

一同「・・・・・・・・。」

勇者「…貴様がベビルか?」
ベビル「なぜわかった!?」

今度の敵はアホそうだ。

 

155:呪縛〔6歳:LEVEL3〕
まるでどこかからパクッてきたようなテーマ曲と共に現れた、今回の敵「ベビル」。
どう見ても強そうには見えないが、手加減してやろうなんて気は毛頭無い。
ベビル「なるほど、キミらはあの学校の子達だな?ベビルさんわかっちゃったぞ!」
勇者「貴様には聞きたいことが山ほどある。死にたくなくば、大人しく死ね!!」
盗子「ゆ、勇者!ちょっと言葉がおかしいよ!」
勇者「安心しろ、お前の顔ほどじゃない。」
盗子「ひっどーーい!うわーん!!」
暗殺美「気にするなさ盗子!もう見慣れたさ!」
盗子「フォローになってないよー!うわーん!!」
ベビル「そうか、そうやってフザけて惑わす作戦か!でもベビルさん騙されないぞ!」
賢二「勇者君、今ある剣はどれも細身だけど…大丈夫そう?」
勇者「全然問題ない。むしろ前の魔剣はデカくて使い勝手が悪かった。」
暗殺美「だったらもっと早くに替えとけばよかったのにさ。アホめ。」
勇者「さぁ、いくぞベビル!我が剣技の前に血肉をブチ撒けろ!!」

勇者は「ゴップリンの魔剣」を構えた。

勇者「な゛っ…!?」
盗子「えぇっ!?な、なんでその剣がそこにあるわけ!?」
賢二「き、きっと何かの間違いだよ!だってアレは泉に…というか折れたはず…!」
勇者「…フンッ!!」

勇者は魔剣を放り投げた。

勇者「さ、さぁ!気を取り直していくぞこの野郎!!」
ベビル「おフザけはもう終わりか!?ベビルさんはまだ騙されてないぞ!?」

勇者は「ゴップリンの魔剣」を構えた。

魔剣は呪われていたようだ。

 

156:魔本〔6歳:LEVEL3〕
呪われた魔剣のおかげで、せっかく入手した新しい剣が使えない。やれやれだ。
まぁ別にコレでも一応闘えるのだが、この大振りじゃ使えない技が山ほどあるのだ。
勇者「チッ、仕方ねぇか…。まぁ貴様程度には丁度いいハンデだがな!」
ベビル「おっと、甘いよ?甘すぎ! この「拷問大全集」をナメたら死んじゃうぞ!?」

〔拷問大全集〕
様々な拷問器具が描かれた魔の絵本。
本を手に名を呼べば、その器具を召喚することができる。

勇者「うわっ!な…なんて本なんだ!」
ベビル「ひっひっひ!ビビッた?ビビッた??」
勇者「なんて趣味の悪いデザインなんだ!」
ベビル「そこにかよ!! …あっ!」

盗子はベビルの手から本を盗んだ。

盗子「勇者!早く受け取ってー!こんなおっかない本なんて持ってたくないよー!」
勇者「ナイス盗子!コイツで逆に攻撃できる!」
ベビル「フフン!残念だったねー! その本は邪悪な者にしか開けな…」
勇者「ふむ。なかなか難しそうな本だな。」
ベビル「開いとるぅーーー!!」

勇者は「拷問大全集」を読んでいる。

 

157:悪夢〔6歳:LEVEL3〕
久々に役に立った盗子のおかげで、俺は「拷問大全集」を手に入れることができた。
「魔本」だろうが何だろうが自由に使いこなす…それが「俺流勇者道」だ!
勇者「さぁ死ねベビル!この俺が選びに選んだ、極悪の拷問を食らうがいい!」
ベビル「ま、待て!コイツがどうなってもいいの!?」
盗子「ゆ、勇者~!ゴメンー!」

盗子が人質に取られた。

勇者「構わん!死ねぇーー!!」
ベビル「ナニィーーーーッ!!?」
盗子「やっぱりーーーー!!!」
勇者「終わりの見えぬ絶望に溺れるがいい! いでよ、「悪夢の虜」!!」

〔悪夢の虜(エンドレス・ナイトメア)〕
世にも恐ろしい悪夢を見せ続けるという、枕を模した拷問器具。
この拷問を受けた者は、うなされ、寝言で自白するという。
ほのかにオッサンのニオイがする。

勇者「おやすみ。」
ベビル「絶対イヤ!」

そりゃそうだ。

 

158:問題〔6歳:LEVEL3〕
この俺としたことが、戦闘中に「枕」を出してしまうとは迂闊だった。使えやしない。
だが、俺はすぐに他の拷問器具に切り替えたりはしなかった。いや、できなかった。
なぜなら、どの器具を出しても必ず持ち上がってくる問題に気づいてしまったからだ。
勇者「くっ…しまった!俺はなんて大きな間違いを…!」
盗子「そうだね、使い勝手悪すぎるよねソレ。」
勇者「違う、そんなことじゃない!問題はもっと根本的な所にあるんだ!!」
暗殺美「あん?なにさ、他にどんな問題が…」
勇者「そもそも俺達は…何を自白させればいいんだ!?」
盗&暗「ハッ!そういえばっ!!」
賢二「べ、別に無理して拷問しなくてもいいと思うんだけど…。」
栗子「あ、あああのぉ~…! わ、わた、わた…」
姫「わたしぶね。」
勇者「ね…ねこじゃらし?」
盗子「だからシリトリは始めなくていいから!」
栗子「わわ私、思うんですが…。」
勇者「む?なんだ、言ってみろ。だが…くだらんことを言ったらブッた斬るぞ?」
栗子「お、思わないんですよ!わわ私は全然、なんにも思わないでしょ!?」
賢二「いや、「でしょ!?」とか聞かれても!」
芋子「ったく、この子はイジめないでって言ったのに。今度やったら芋食うわよ?」
賢二「いやいや、全然脅しになってないよソレ!」
ベビル「…あのさぁ、そっち一段落するまでベビルさん寝てていい?疲れちゃった。」
勇者「ん?あぁ、なんか悪いな。じゃあコレでも使うがいいさ。」
ベビル「あ~、ありがと。助かるよ。」

勇者は「悪夢の虜」を手渡した。
ベビルはうなされている。

 

159:迂闊〔6歳:LEVEL3〕
まんまと罠に掛かったベビル。これほどうまくいくと、かえって不安になるから困る。
盗子「なんか、今までの中で一番アホな敵だよね。」
賢二「いや、そう思わせといて実はスゴいとか…」
ベビル「もう食べられないよぉ~☆」
賢二「…なさそうだね。」
暗殺美「てゆーか「悪夢」見てるはずなのに、妙に幸せそうな寝言なのは何故さ?」
勇者「あ~、ところで、さっき栗子は何を言いかけたんだ?言ってみろ。」
栗子「あ、はははい!そのぉ~…べ、ベビルさんはどうみても強そうに見えなくて…」
勇者「そんなのは一目瞭然。 ハイ、ブッた斬ります。」
栗子「だ、だからそのっ!つ、強い「式神」を倒したひ、人が他に…いるのではと…。」
勇者「…なるほど。 命拾いしたな。」
栗子「よよよ良かった…。死なずに済みやがりました…。」
盗子「じゃあその「協力者」を自白させようよ。 ちょうど今あの枕を…えぇっ!?」
ベビル「うにゅう~…ハッ!アレッ!?寝てた!?ベビルさん寝ちゃってた!?」

「悪夢の虜」は消滅した。

勇者「う~む…。 どうやら俺のレベルでは10分が限界のようだな。」
ベビル「ひっひっひ!惜しかったね!枕なんてセンス悪いの選んでるからだぞ~!」
勇者「あん!?じゃあテメェならどれ選んだってんだよコラ!?」
ベビル「えっ?ん~…あ、コレあたりかなぁ?」
勇者「というわけで「バプロフの鈴」!」
ベビル「わーーーっ!!」

〔バプロフの鈴〕
「条件反射」という能力を備えた鈴。
この鈴の音を聞いた者は、空腹に耐え切れず自白するという。
オプションとして「ヨダレ掛け」がついてくる。

チリリーン♪チリリーン♪(鈴の音)
勇者「さぁどうだベビル!?」

ベビル「お腹が減った!」
勇者「同感だ!!」

勇者は「耳栓」をし忘れた。

 

160:定食〔6歳:LEVEL3〕
ウッカリ腹が減ってしまったので、仕方なくみんなで定食屋へと向かった。
店主「ヘイ!8名様いらっしゃーい!」
勇者「おいオヤジ、とりあえず全員に「子供酒」をくれ。」
店主「あいよー。」

〔子供酒(こどもざけ)〕
子供用に作られた、中毒性も依存性も無い安全なお酒。
水を飲めば一瞬で分解される特殊なアルコールを使用している。

勇者「んで、俺は「獣焼き定食」を頼む。」
盗子「あ~、アタシもそれでいいや。」
ベビル「じゃあベビルさんは「特製定食」でいいぞ。」
姫「私は「カキ氷定食」。」
盗子「そんなんメニューに無いから!」
店主「お客さん、通だねぇ~!」
盗子「隠しメニュー!?」
賢二「えっと、僕は「日替わり定食」でいいです。」
暗殺美「じゃ、じゃあ私も一緒のが…い、一緒ので、いいさ☆」
店主「ハイ、「カキ定」追加ね~。」
暗殺美「そっちじゃないさ!!」
芋子「じゃあワタイは「芋定」で。」
勇者「ならばお前は「栗定食」だな?」
栗子「えっ、えぇぇっ!?」
店主「あいよ、子供酒お待ち~!」
勇者「おぉ、来たか。 よーし、じゃあとりあえず乾杯といくかー!」
一同「オッケー☆」
勇者「では、我ら仲間の今後の生き残りを祈ってぇ~…カンパーイ!」
一同「カンパ~イ☆」

ベビルは敵だ。

 

161:別口〔6歳:LEVEL3〕
酒も少し入り、ベビルの奴もだいぶ油断してきたように見える。よし、作戦通りだ!
そこで俺は、酔いが回る前に例の「協力者」の名を聞き出してやることにした。
勇者「ところでベビル、「極秘書庫」に入った時に「式神」を倒したのは誰なんだ?」
ベビル「式神…?ベビルさんが入った時には、そんなのいなかったぞ?」
盗子「えっ!じゃあ先に誰かが倒したってこと!?」
ベビル「あーそういえば、ベビルさんが帰る頃に少年少女の声が聞こえたぞ。」
勇者「それは多分俺達だな。 そうか、別クチだったか…。」
姫「もしくは別バラだね。」
勇者「そうか!敵は甘いのか!」
盗子「違うよ勇者!そんなに甘くはないはずだよ!」
賢二「と、盗子さん!?ツッコミが中途半端だよ!?」
栗子「ちょちょちょっと酔いが回ってき、きてるみたいでやんすね…。」

~数分後~
芋子「おやっさん、芋焼酎おかわり。」
店主「あいよー!」
姫「そして芋焼酎おかえり。」
勇者「いよぉー!おっかえりー!!」
盗子「ご飯にするー?お風呂にするー??」
暗殺美「いやーん!盗子ちゃんてば新婚さんみたーい☆」
賢二「もうみんなベロンベロンだね…。」
ベビル「あ~、ところでベビルさんの「特製定食」だけまだ来てないんだけど…?」
店主「あっ、ちょうど今できやしたー! はいよー!」
ベビル「よーし!いっただっきまーす☆」
勇者「おぉ、なかなかうまそうだなこの野郎め!」
店主「なんたってウチのお勧めだからね、「毒製定食」。」

ベビルはピクピクしている。

 

162:仰天〔6歳:LEVEL3〕
まさかの「毒製定食」に瀕死状態のベビル。店のオヤジはウッカリしていたようだ。
聞き違えるのはわからんでもないが、そんなのがメニューにあるのは間違ってる。
賢二「え、えっと…どうする?このままじゃベビルさん死んじゃいそうだけど…。」
勇者「どうするもこうするも~、そんなん決まってんだろーがー!」
盗子「そうだー!決まってんだろーがー!」
姫「…ゥイック。」
賢二「決まってるって…どう決まって?」
勇者「………決まってんだろーがー!」
賢二「えっ!な、なに今の間は!?ひょっとして何も考えてない!?」
暗殺美「気にしない気にしなーい☆ 屍なんて乗り越えていくものだよー☆」
賢二「いや、まだ「屍の一歩手前」なんだけど…。」
勇者「つーわけで、こんな奴ほっといて飲も…」
?「ダメだよ!!」
勇者「…あ゛ん? オイ…この俺様に指図するたぁ~どこのどいつだコラァ!?」

姫「今ならまだ間に合うよ!魔法で解毒して…うん、大丈夫!私は「療法士」だよ!」
一同「え゛っ…え゛え゛ぇっ!!?」

姫が急にシャキシャキとしはじめた。
みんなの酔いは一気に醒めた。

勇者「ひ…姫ちゃん?」
姫「まずは私が「解毒」の魔法をかけるよ!そしたら勇者君は心肺蘇生を!」
勇者「え、あっ…お、おう!」
賢二「姫さんは酔うと…シッカリするんだね…。」
盗子「これぞ「お酒マジック」…って感じ?」

姫「じゃあいくよー! むー!「死滅」!!」

姫は〔死滅〕を唱えた。
「お酒マジック」にも限界があった。

 

163:卒業〔6歳:LEVEL3〕
あの後ベビルはピクリとも動かなくなったため、そのまま定食屋に放置してきた。
まぁ姫ちゃんの「死滅」はレベル的に不完全だから死んだかどうかはわからんが。
そして今日は卒業式。 どうやら今年は五年ぶりに卒業生が出たらしい。二人もだ。
校長「まずは一人目…余命一年之助君、卒業おめでとう。」
余一「ありがとうございます。」
校長「この先に希望がありそうには見えませんが、とりあえず頑張ってください。」
余一「そ、そんなっ…!」
校長「そして武史君、卒業おめでとう。」
武史「何度も言わせるな!俺は卒業なんかしねぇからな!来期も盗子を守…!」
校長「…ん?(「人生」を卒業しますか?)」
武史「あ、ありがとうございます…。」

校長は目で殺した。

 

164:送辞〔6歳:LEVEL3〕
卒業式はまだ続く。 次は在校生による「送辞」のお時間だ。
一号生「卒業生のみなさん、卒業…よくできたね。」
在校生「よくできたね!」
二号生「短い間でしたが、大変お世話になりました。」
在校生「お世話になりました!」
三号生「思い返せば、様々なことがありましたね。」
在校生「思い出したくもないですが!」
四号生「春…。 みんなで行った、地獄の宝探し。」
在校生「むしろ地獄!」
五号生「ゴール際での争いは、とても醜かったです。」
在校生「血生臭かったです!」
一号生「秋…。 遠足を中止して行われた、五錬邪の討伐。」
在校生「殺す気かっ!」
二号生「活躍したのは、主に三号生でした。」
三号生「テメェら何してやがった!?」
在校生「何してやがった!?」
三号生「冬…。 テメェら何してやがった!?」
在校生「何してやがった!?」
四号生「そして今日、卒業式。」
在校生「卒業式!」
五号生「次のプログラム「闘辞」は、「答辞」の間違いでは…?」

間違いではない。

 

165:終業〔6歳:LEVEL3〕
そして「闘辞」が始まった。「闘辞」とは、卒業生vs在校生のガチンコバトルらしい。
勇者「敵はわずか二人!しかも片方は生まれついての手負いだ!殺れるぞ!」
在校生「オーーー!!」
武史「お前らなんぞに負けられるかー!」
賢二「わー!マシンガン取り出したー!」
余一「病気なんかに負けられゲフッ!」
盗子「うぎゃー!血ぃ吐いたー!!」

教師「…校長、やはりベビルは単独犯だった模様です。」
校長「だろうな。もし式神を倒すような奴なら、名が割れるようなヘマはしまい。」
教師「敵の目的はやはり…」
校長「我が「学園校」…いや、この「カクリ島」の秘密を知る者、そう多くはない。」
教師「しばらくは…様子を見ます。」

結局、武史の粘りにより二人には逃げられてしまった。俺もまだまだ甘いようだ。
もうじき春が来る。そして俺は四号生になる。

残りはまだ三年もある。

 

外伝(参)へ
創造主
~勇者が行く~(1)
0
  • 0円
  • ダウンロード

3 / 14

  • 最初のページ
  • 前のページ
  • 次のページ
  • 最後のページ
  • ダウンロード
  • 設定

    文字サイズ

    フォント