生きるということ、働くということ

話( 7 / 12 )

7.3つの”そう”と共に生きる(1)

「ぶーすかさんは、いいですね。」

「ぶーすかさんは、本当に悩みがないでしょう。」

 

こんなことを、職場でよく言われます。

ぶーすかの部だけではなく、他の部に行っても言われるのですから、

相当数の人が、そう思っているのだと思われます。

 

その裏側には、


「暇そう」


「呑気そう」


「何も考えていなさそう」


という「3つの”そう”」が混じり合っているようなのです。

 

答えは決まって、

「そうそう、ぶーすかは、この職場で一番暇です。」

「何も考えていないですよ。とても呑気に仕事をしています。」

 

では何故周囲に、そう映ってしまうのか。自己分析してみることにしました。

最近は、昔と比べてパソコンにひたすら向かい、

「朝から晩まで、パソコンをカチャカチャ打っているだけ」

という前の部長の言っている通りの生活に変わりました。

 

若かった頃の上司からの指示をチーム内で相談し合って、意見を出し合い、

お互いの顔色を伺いながら、実践していたものです。

近頃は、その辺のところはメールなどで送受信しあって、

決められたフォームの中に、ただ打ち込み、いくつかのチームの意見を

ガチャンコして繋げて、上司に送り返す。会話の必要もなくなりました。

 

さらに「じゃぁ、それをメールで送っておいてもらえる。」

なんて言っておけば、添付されたファイルによって、責任の所在もはっきりします。

転送という便利な道具を使って、何かあった時に

「それは、あの人が作ったファイルなんだよなぁ。それを送っただけで・・・」と、

自分自身の保身も確保できると、ある意味、一石二鳥と考える輩が増えてきたようにも感じます。

文字に記せば、読むと20秒。

ところが、そのことを会って打ち合わせれば30分はかかるでしょう。

ここの効率をどう考えるのか。

 

ぶーすかの周りにも、「忙しいからメールで送っておいてもらえますか。」

と軽々しく発言する人が結構います。

話( 8 / 12 )

8.3つの”そう”と共に生きる(2)

それはそれでいいとは思っているのですが、ちょっとした無駄とも思える会話を

楽しむことが、実は仕事の効率を上げているような気がしてなりません。

同じ職場の人同士の他愛もない会話と素振りが、

お互いの仕事の内容の理解を深めているような気もするのです。

 

仕事に忙殺されることが多くなったせいか、行員同士の言い合いも多くなりました。

いつしか言葉を交わすこともなくなってくるのでしょう。

ぶーすかも一概ではありません。

「呑気そう」と言われているぶーすかでさえ、隣に座っているひずみんから、

電話中に「べらんめぇ口調、禁止っ!」というメモを渡されます。

ぶ「こちらに聞いてくる質問のレベルが違うんだよ。課長はいねぇのかよ。」

聞けば、そこにお客が座っていると言います。

カチッと頭にきて、思わず口をついて出た言葉だったのです。

なのに課長が忙しいからと聞けず、本部に電話をしてくる。

どうして課長がいるのに、顧客対応に出ないのか?

こちらから電話を代わってもらって、「悪いけど、そこに座っている客の対応をしてもらえる?」

そして、また5~6分後にきちんと終わったのか確認もする。

そんなことも出来なくなってしまったのか・・・。

営業店の課長に、どうして顧客対応してねと依頼しなくてはいけないのか。

何がどうなってしまったのかも分かりません。

話がそれましたが、まさしくコミュニケーションが取れていない証なのだと思います。

 

無駄話が、職場の人間関係を救う。

無駄話が、仕事の効率を向上させる。

 

ちょっと、大げさではありますが、そんな考え方の姿が

「呑気そう」「暇そう」「何も考えていなさそう」とうつるのかもしれません。

 

能力主義とか効率主義、実力主義の世界なんて言われ、

仕事は個人経営みたいなものですと言い切る人がいますが、

果たしてそれでいいのでしょうか。

行員同士や顧客との関係が冷たくなってきているのは、

きっと言葉足らずで、お互いのココロが真の意味で伝わらないからでしょうね。

 

「呑気そう」「暇そう」「何も考えていなさそう」と

周りににうつる自分を、もう少し続けてみてもいいのではと思っているこの頃です。

話( 9 / 12 )

9.若手行員だった頃を思い出して(1)

さて、今日は自分の若い頃を、若手行員との電話で思い出したので、それを1つ。

ある営業店で大きなミスが起きました。

書くと長くなるので、「大きなミス」ということで止めておくことにしましょう。

とは言っても気になる読者の方のために一言で表すとするなら、

保険に入ったはずなのに、「死んだら保険がききません。」

 

?????????

 

正直な感想ですね。完済する年齢が違っているために保険が効かなくなってしまったのです。

「お客さんが死んだら、その事実が発覚する。」

そんな怖いことが起きてしまったんですね。

まぁ、もちろん間違っているので修正をしなくてはいけない訳ですが・・・、

当の本人(担当者)としては、とても気にかかることでして、

多分ぶーすかだって、その事実を知ったら血の気が引くでしょう。

3年目の子が起こしてしまった大きなミス・・・。

 

ぶーすかの元に一報が入ってから対処するために、まず事実確認を行うこととなったのですが、

既にその3年目の子には、そのミスが前にいた支店から伝わっていました。

6月に仕掛かっていたようですが、7月に他の支店へ転勤。

引継で、その重要な事実を引き継がなかったために、後任者のミスを引き起こしたのです。

保険部署からも連絡が入るし、前の店からも連絡が入るし、そこにぶーすかからも・・・。

本人としても分からないながらに、大変なことが起きていることが認識できるようです。

 

話していると、最初は「いやぁ・・・、覚えていません。」とそらすのですが、

「こうじゃないのか?」と優しく諭すように言うと、やっと記憶を取り戻したように言い出すのです。

「そうだったかもしれません。」

 

そんな話をしばらくしていました。担当者も3年目ですから業務も慣れた頃で強気でした。

担「でも保証会社だって保証してるんだから、僕悪くないっすよ。」
ぶ「お前の言う事はよく分かる。そもそもな・・・。」

話( 10 / 12 )

10.若手行員だった頃を思い出して(2)

ぶ「そもそも、君みたいな3年目の担当に責任なんてないんだよ。検印をする人がいるんだから。」
担「初めてですからね。きちんと責任は取りますよ。」
ぶ「だからな、責任なんていうのは、担当者にはないのと一緒。担当は作業員なんですよ。担当は書類の形式を整えるので精一杯。それをカバーしてくれるのが、君の上席なわけ。」
担「・・・・。」
ぶ「もちろん間違えないように仕事をしてもらうのがベターだよ。でも、色々なことを考えながらするだろ?」
担「はい。」
ぶ「そんな担当に完璧を求めてはいけないんだよ。」
担「はい。」

 

ぶ「そうは言っても、こう言っているぶーすかだって、君の頃に結構どっかんどっかんミスをやっているからね。」
担「そうなんですか?」
ぶ「そうだよ。ぶーすかなんかね、A社の積立の定期を契約していたのに、その積立金を全然関係ないB社から落としていたんだからね。
担「え?そんなことありえるんですか?」
ぶ「って、思うだろ。今の君と一緒だよ。みんながスルーしちゃうと大変なことになるわけ。」
担「僕だったら、そんなのしたら、マジで焦ります。」
ぶ「俺だって焦ったって。目の前が真っ白とはこのことだと・・・。なんせ1年間気付かなかったからね。」
担「え~~。」
ぶ「満期が来ましたよって言ったって、そんなのしてたっけって。」

 

まだいい加減な事務の会社も結構あって、その隙間にはまってしまったんですね、すべてが・・・。

落とされている方も気づかなかったし・・・。もちろん大変でした。

違う会社から勝手に預金を引き落としているんですからね。

原因は、ぶーすかが親切のつもりで代筆で書いた口座番号。

これを書き間違えたのです。そしたら、たまたま他の会社の口座番号に合致したのです。

偶然もいいとこ、宝くじだったら億を稼げてしまうかもっっ。

 

担「そんなことは、ぶーすかさんなんてしないと思っていました。」
ぶ「電話で話していると、そう聞こえるのかもしれないけど、俺だって人間さぁ。」
担「はは・・・(笑)。」
ぶ「ただ、その代り間違えは真摯に受け止めないとね。」
担「はい。」
ぶ「どうせ、あれだろ。なんで間違ったんだとか。ミスで大変だとしか言われていないんだろ。」
担「はい・・・。」
ぶ「それじゃ、しょうがないんだよな。」
担「じゃぁ、なぜ、ぶーすかさんは、僕に電話してきたんですか?」

 

ぶ「それはな、今営業店を担っているのは、君みたいな若手が中心なんだよ。」
担「はい。」
ぶ「どういう原因で起きたのか把握しておかないと、他でも同じことが起きるかもしれないよね。」
担「はい。」
ぶ「もし改善されて少しでも楽になるなら、その方がいいだろ。」
担「そうですね。」
ぶ「だから怒りにきたのではなくて、どこで困ったのか聞いておきたかったわけよ。」
担「はい。」

 

ぶ「ただね、よく覚えておかなくてはいけないのはね・・・。」
担「えぇ。」
ぶ「今3年目だろ。仕事にも慣れて少し分かってきたところだからさ、なんで先輩が働かないで、俺ばっかり働いているんだよって思う頃だと思うんだよね。俺がそうだったから・・・。って、思っているだろ?」
担「確かにそうかもしれません。」
ぶ「そして、自分の仕事を知っているんじゃないかと勘違いするのも、この時期なんですよ。」
担「はい。」
ぶ「だけど、こういうミスが起きた時は、担当者では何もカバーできないんだよ。大きな口をいくら叩いてもね・・・。」
担「はい。」
ぶ「だからさ、今回の件では、あちこちから色々と聞かれて大変な思いをしているんだろうけど、いい経験になったと思うよ。2度と同じミスを犯さないようになると思うしね・・・。でもミスを起こしたということはさ、仕事をしている証拠だから・・・、思いっきりやっていいんじゃない。仕事をしなければ、ミスは起きないでしょ。歩かなければ転ばないんだよ。」
担「はい、分かりました。」
ぶ「しっかりと”シン”を持って仕事してな。”シン”はさ、自分の中の仕事に対する”芯”とさ、相手に対する思いやりのココロの”心”だね。きっと出来るよ。信じるのも”シン”か、うはは。」

 

いつしか担当者の声は涙声になっていました。

 

ぶ「おいおい、そこで泣いていると、俺がいじめられているみたいに思われちゃうだろ(笑)。」
担「すいません、一生懸命頑張ります。」
ぶ「だね、元気出して、笑顔で頑張ってくれよ。きっとお客だって大丈夫なはずだから。後は君がいた支店の支店長や副支店長が何とかしてくれるはずだから。」
担「はい。」

 

副支店長とも別途電話で話し、対処方法を他の部とも話し合いの上、決定しました。

夜に客との交渉も無事に終わったとの報告が入り、胸を撫で下ろしたのでした。

きっと転勤して何も出来ずに気にしていた担当者のもとにも連絡が入ったことでしょう。

担当者が10年後や15年後に若手担当者に、そんな話を聞かせてあげる日々がくるように・・・。

kobat
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