俺の退職 Season 2(無職から起業まで)

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第一話 失業中にいったい何を考えていたんだ( 5 / 7 )

再就職支援会社に楽観的FPが暗示してくれた俺の未来は、なんもしなくても食べていくには何とかなるらしい

俺は会社をリストラされたあと、会社が親切にも提供してくれた再就職支援会社にしばらく通った。退職後落ち着かない気持ちを静めるのにここは居心地が良かった。その居心地が良い場所で俺はひとりの個性的なFP(ファイナンシャルプランナー)に会うことができ、彼の講座を聞くことで次第に『俺はひょっとしてもう勤めなくてもいいのではないか』『勤めるよりも自由な生き方があるのではないか』に思考の舵が切られていくのを感じるに至った。


再就職支援会社では講座と求人検索が主な提供内容。その中に将来必要になるお金についてFPが語る言葉に俺は夢中になっていた。 彼はこんなことを言った。

 「年金は繰り下げも繰り上げもできます。繰り下げするとその後毎年の受取額は増えます。一方繰り上げは60歳以降で可能になりますが毎年の年金受取額は減ります」ここまではあたりまえの解説。その次に彼は、

 「私はまだ50歳だけど60になったら年金を繰り上げ受給して、そしてそのお金で遊びますよ!」

ここは再就職支援会社なのだが、彼は『そんなことより生活資金が既にあるならもっと自由に楽しむ道を探すべきなのではないか』と俺に別世界があることを諭してくれたのだ。


 もしかして彼は大金持ちだからそうできるのか? いくら蓄えがあれば繰り上げた年金と貯蓄で「遊んで暮らす」ことができるのか? 私の興味は膨らむばかり。その講座が終わった後、彼にすり寄り「自分が今持つ資金と年金受取額と、それに毎年のざっくりな家計を説明するから先生がさっき言っていたような暮らしが可能かどうか相談させて欲しい!」と上目遣いに尋ねてみた。そしてオーケー。 翌週に彼の事務所に行った。


『先生の講座はよく聞いていましたよ』という証拠を見せた方が印象がいいだろうとライフプランニングシートに資金と予想家計費を書き込んだものも用意した。

そして俺の説明が始まる前にもかかわらず「これなら大丈夫だろうと思うよ」「このシートに書いてあるのが正解ならね」と 彼は言ってのけた。


その後は雑談に終始したけど何を話したかすっかり忘れ「大丈夫だろう」だけがやたらと頭にこびりついた。

ここで得た結論は、 もう俺のお金的には大丈夫領域にあるようだから収入目当ての考えは一番でなくてもいい。だとしたら、俺はもう収入を得るためにまた会社に勤めて働く必要はどこにあるのだろう。以前のようなマトモな額の収入は不要だとしたら、そんな不要を得るために楽しくもない働き方をして何になるのか?このような新たな考えが頭にこびりついて離れなくなってしまった。


その出来事があった翌月、俺の失業期間はついに終わりを迎えた。つまり再就職先探しはもうおしまいにして、その代わり『何してこれから暮らそうかな』を探す無職時代に突入した。

 

家族はもう俺が再就職しないことへの諦めを悟ったみたいだけど、俺の気持ちはそうじゃない『これから何か始めるぞ』そう心に決めた52歳の秋であった。

第一話 失業中にいったい何を考えていたんだ( 6 / 7 )

再就職する気が失せたワケとは、まさにハングリー精神の喪失だった。これはその後の起業にも影響した

およそ半年に及ぶ長い失業時代を通じて俺は再就職の意義を考え続けてきた。
勤めるに限らず仕事をし続けることはとても意義があると思っていたが、再就職支援会社に通う間に、その会社の目的とは真逆に勤めて働く意義に疑問を持ち始めた。

会社員の前半は技術者で社会的成功を収めることが働く目的だった。俺は優秀な技術者になって会社にも社会にも貢献することだけ考えて夜遅くまで働くことを厭わなかった。それが意にそぐわぬ社内異動を食らった後、俺の心は不良になり、働く目的は二の次になって「お金を稼ぐことが最優先!」と心を入れ替えた。

しかしイザ失業となると心の不安定感は強かった。それが考え込んでいる間にだんだん変化し、もうこの期に及んで「稼ぐため」という気分は下がり、給料は少し低いとしてもやりがいのある仕事に就きたい、そんな気持ちが増してきた。しかしそこから先が俺のいけないところで具体的な仕事の的がつかめないまま時が過ぎていった。

失業開始から約半年を経て「預金取り崩し生活は怖くない」と妙に自信がついた出来事があった。前の話題に書いたように自分で計算し俺ん家のライフプランを相談したFP(ファイナンシャルプランナー)が「大丈夫だろ」とお墨付きをつけたことが俺の自信を確定にしたことだった。

この自信こそが俺をダメにした。ちなみに「ダメ」というのは世間一般の考える常識的大人としてはダメなことだ。決してゴミのようにダメなことではない。
俺は「やりがい」や他からに立派な大人だと見られるために会社勤めしなくてもいいと思ってしまった。一旦そう思ってしまうともう再就職はまったく頭から消え去り、代わりに自分で好きなことして起業したい欲望が頭をもたげてきた。こんな気になったのはは将来の生活資金を貯めてしまったからに他ならない。まさにハングリー精神がこのとき俺が手放してしまったものだったのだ。

俺の会社員生活時代に一番欠けていたことは『俺のやりたい事がやれない』。
この自分の不幸な生き方を俺自身で何とか改革しなければならない。幸いにして将来の生活費に懸念が薄らいだ今となっては「やりたい事をやる」に焦点を当て、それを実現するためには起業するのがベストでは?と俺は考えはじめた。

そんな空想をし始めると俺はもう止まらない「俺が嫌いなことはただの一つも今後はやらない」これは絶対そうすると勝手に決めた。
俺の嫌いではないことの中から、自分のやりたい事を、やりたい時に、やりたい方法でやる。ま、あまり喧嘩腰もできないだろうから、このうち1つだけは妥協してもいいけど、2つ以上妥協することは絶対にしないぞ。だんだん鼻息荒くなった。

きっと儲けを高く望まないならできるだろう。
さらに、競合する相手がいなければできるに違いない。
もっと言えば、俺にしかできなければ、簡単に俺にその仕事が来るんだ。
つまり安い収入で誰もが尻込みするような仕事を「請け負いますよ」となればそれは受注できる。

俺は上述したように将来の生活費を貯めて心配が薄らいだのが一つ目のハングリー精神を無くした要因だが、それに連れて「俺を他人がどう見られようとも俺が楽しければそれでいい」と考えるようになったことは二つ目のハングリー精神精神の喪失になったと思う。

俺はふつうの会社員が大事に考えていること二つも手放してしまった!これから俺は自由になる。
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大庭夏男
作家:大庭夏男
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