神理の書 1

神理の書 1( 3 / 7 )

 

         時代に抗(あらが)えない真理

                                                                    『 真理 』 といえども、

時代の移り変わりによっては、

次第にその輝きを失い、

かつては尊ばれたその価値さえが、

いつか忘れ去られてさえしまうものです。

 

それは、たとえ 『 真理 』 とされるものでも、

所詮は、人の為(な)し事の所以(ゆえん)ゆえの、

どうにも致し方の無いことなのです。

 

それもこれも、そうもした原因の元を質(ただ)せば、

万事に亘(わた)って諸事万端、

悉(ことごと)くも思い為し、且(か)つ行ない尽くせぬ、

人の人たる本来以(も)っての、

 つまりは 『 至りなさ 』 のゆえなのですから。

神理の書 1( 4 / 7 )

 

               限り有る地平

                                                                   私たち人の現世観は、

常に時代に束縛(そくばく)され、

絶えず時代とともに移り変わり、

定めがたくも限られたものにすぎません。

ですから、たとえこの先どこまで捗々(はかばか)しく、

目覚ましくも著(いちじる)しい、

一長足の飛躍的進化を遂(と)げようとも、

その時代時代に望み得る地平線の、その限りを、

断じてもけっして、

超えられようことなどの叶いようはずもないのです。

 

果たして、そうでもあればこそ、

私たちは、その与えられた時代時代を、

努めて望ましくも生き延びるより他ないのです。

神理の書 1( 5 / 7 )

 

             有限を尽くす努め

                                                                   『 有限 』 にして 『 卑小 』 且(か)つ 『 儚い 』

そんな存在にすぎない私たちが、

『 無限 』 にして 『 尊大 』 かつ 『 永久 』

を、たとえどれほど強くも切実に望もうと、

それの実際に叶えられようことなどの、

一縷(いちる)の希(のぞみ)ほどにもありえません。

 

さては、その現実を弁(わきま)えずしては、

この世にあることすらの徒(いたずら)に、

ただ虚(むな)しいばかりに煩(わざら)わしく、

嘆(なげ)かわしくも恨(うら)めしいのみに、

思い遣(や)られてならないことともなりましょう。

神理の書 1( 6 / 7 )

 

                                                                  それゆえ 『 知足(ちそく) 』、 

すなわち 『 足(た)るを知る 』 ことこその、

この世を生きるに欠かせない、

まさに肝要必定(かんようひつじょう)の、

『 教訓 』 にして 『 戒(いまし)め 』 にも、

他ならないに違いないのです。

 

しかし、断じてもけっして、

『 大望を抱(いだ)かず、努めて小利口にも小さく纏(まと)まれ 』

などと、誤解されてなどなりません。

 

それよりむしろ、

『 大いに限界の限りを験(ため)し、有らん限りを尽くせ 』

とこそ、正しくも解されるべきなのですから。

 

shinrikyusai
作家:主代 宗元
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