「ア・・・アレ・・・・・・!?」とカメラを調整していたカメラマンが言った。
「ん?どうした?」
「ここに雨澤君と思わしき人の姿が映ってます!!!」
「何だって!?」
「え!?」と、驚いた雨澤が言った。
カメラマンは、録画したその数秒の映像を再生し、阪部や
他のスタッフ達に見せた。
「アレ!?本当だ!!!それに、声まで入ってる!!!」
「阪部君、本当に雨澤君は、死んだのか!?」
「はい」
「そうか。念のため、もう一度撮ってみよう。雨澤君、
そこにいるなら、カメラを意識しながら適当に動いたり喋ったりしてみてくれ」
「はい」と、カメラマンに声は届かないが、雨澤はそう答えた。
「本当だ!!!やっぱり撮れてる!!!姿も声も、生きてる人間と全く同じように入ってる!!!」
「でも、何でカメラには雨澤の姿も声も入るんでしょうね」と、阪部が言った。
「さぁ?それは分からないけど、今、こうして、我々の眼には見えない雨澤君がカメラには映っていて、声も入っているという事は、〝雨澤君が死んで幽霊になった〟というのは、
本当のようだね」
「はい」と阪部が答えた。
「とても残念だよ・・・・・・」
「あ!!!」
「どうしたんですか?」と阪部が聞いた。
「でも、こうやって、雨澤君の姿も声も、カメラに収められるなら、雨澤君は、俳優を続けられるんじゃないのか!?」
「え!?」
「まぁ、共演者達は、姿も見えない、声も聞こえない雨澤君と演技をするのは大変だけど、色々工夫すれば・・・・・・」
「分かりました!!!やります!!!」と雨澤が答えた。
「え!?」と、阪部が驚いた。
「どうした?阪部君」とプロデューサーが聞く。
「コイツ、今、〝やります〟って言いました」と阪部が答える。
「そうなのか」
「はい」
「でも、お願いしたい事が1つだけあります」と、雨澤が言った。
「あの、コイツ、今、〝お願いしたい事が1つだけあります〟と言いました」と阪部がスタッフ達に言った。
「え?」
「僕が死んだ事を世間には公表しないでください」と雨澤が言う。
その事をまた阪部が雨澤の代わりにスタッフ達に伝える。
「コイツ、ファンの人達に自分が死んだ事を言わないで欲しいみたいです」
「そうなのか!?」